説明

横型帯鋸盤

【課題】 切断部から落下する切粉が積層されて積み上がって大きな切粉の塊となることのない高い切粉排出性能を有する横型帯鋸盤の提供。
【解決手段】 基台3に設けた固定バイス装置に挟持固定された被削材に対して上下動自在な鋸刃ハウジング9を前記基台に設け、該鋸刃ハウジングに環状の帯鋸刃21を掛回した横型帯鋸盤1において、帯鋸刃の下方走行部下方の前記基台に切削液貯留室を設け、切削液貯留室上部に鋸刃走行ラインに直交する方向の梁部材43設け、該梁部材上に鋸刃走行ライン方向に跨いだ状態に固定バイス装置のバイスベッドを設け、被削材の切断部から落下する切粉を受けるチップコンベア31の切粉受け部33を切削液貯留室内の底部に設け、固定バイス装置における被削材支持位置と切粉受け部との間の間隔を前記切断部から落下する切粉が積層されて積み上がる高さに比して充分に大きく設けたことを特徴とする横型帯鋸盤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は横型帯鋸盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横型帯鋸盤には切断時に発生する切粉を機外に搬出するためのチップコンベアがオイルパン内に設けられている。このチップコンベアには、例えばスクリューを切粉の搬送手段に使用するスクリューコンベアや(例えば特許文献1)、一対のエンドレスチェーンの間に複数のスクレーパーを梯子状に設け、この梯子状のスクレーパーにより切粉受板上に落下した切粉を機外に掻き出すスクレーパー式のチップコンベア(例えば特許文献2)等が使用されている。
【特許文献1】特開平10−058273号公報
【特許文献2】特開平10−058274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記スクリューコンベアの場合、UまたはV字状の切粉搬送路内に回転可能に支持されたスクリューの上方に落下する切粉が積層されて積み上がって大きな塊となり、前記スクリューとこの大きな切粉の塊との間に隙間が生じてスクリューのみが空転して切粉が機外に搬送されなくなることがある。また、スクリューコンベアの場合、鋸刃直下の開口部が狭く切粉排出能率が小さいという問題がある。
【0004】
一方、スクレーパー式のチップコンベアの場合、スクレーパーの幅がスクリューコンベアの切粉収容ケースの開口部の幅より広くとれるので切粉の搬送能率が大きいという利点があるが、被切断材を固定する従来の本体バイスは、本体バイスを構成するベースプレートやスライドベースに固定されており、横型帯鋸盤切断部の下方に広い開口面積を採れる構造ではないため、チップコンベアの切粉搬送能率を大きくできないという問題がある。
【0005】
本発明は上述の如き問題を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、切断部から落下する切粉が積層されて積み上がって大きな切粉の塊となることのない高い切粉排出性能を有する横型帯鋸盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の横型帯鋸盤は、基台に設けた固定バイス装置に挟持固定された被削材に対して上下動自在な鋸刃ハウジングを前記基台に設けると共に、該鋸刃ハウジングに環状の帯鋸刃を回転走行自在に掛回した横型帯鋸盤において、前記帯鋸刃の下方走行部下方の前記基台に切削液貯留室を設け、該切削液貯留室上部に前記鋸刃走行ラインに直交する方向の複数の梁部材を一体的に設け、該複数の梁部材上に該梁部材を前記鋸刃走行ライン方向に跨いだ状態に前記被削材を挟持固定自在の固定バイス装置のバイスベッドを設け、前記被削材の切断部から落下する切粉を受け取って機外に排出するチップコンベアの切粉受け部を前記切削液貯留室内の底部に設け、前記固定バイス装置における被削材支持位置と前記切粉受け部との間の間隔を前記切断部から落下する切粉が積層されて積み上がる高さに比して充分に大きく設けたことを要旨とするものである。
【0007】
請求項2に記載の横型帯鋸盤は、請求項1に記載の横型帯鋸盤において、前記チップコンベアがスクレーパー式のチップコンベアであり、該スクレーパー式のチップコンベアの幅を前記切断部から落下する切粉が積層されて積み上がる切粉の塊に比して充分に大きい幅を有することを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チップコンベアの切粉受け部と固定バイス装置における削材支持位置(パスライン)との間隔を、切断部から落下する切粉が積層されて積み上がる高さに比して充分に大きく設けたので、切粉がチップコンベア上方に積み重なって大きな塊となり、チップコンベアで切粉が機外に搬送されなくなることがない。また、チップコンベアの幅が切断部から落下する切粉が積層されて塊状となる大きさに比して充分に大きい幅に設けることができるので、高速の切削にも充分対応することが可能な高い切粉排出性能を有する横型帯鋸盤を提供することができる。
【0009】
また、固定バイス装置取付用の梁部材上にバイスベッドを適宜な間隔おいて直交するように設けてあるので、鋸刃の下方の開口面積が広く採れる。その結果、チップコンベアの全幅を有効に利用でき、切粉排出効率が向上するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0011】
本発明に係る帯鋸盤として、図1、図2に示す横型帯鋸盤1を例にして説明する。
【0012】
この横型帯鋸盤1の底部には基台3が設けてあり、この基台3上の右側端部付近と左端部付近にはメインガイドポスト5およびサブガイドポスト7とがそれぞれ立設してある。なお、メインガイドポスト5とサブガイドポスト7の上部は連結板8により一体的に連結固定してある。
【0013】
前記メインガイドポスト5とサブガイドポスト7の側面にはそれぞれガイドレール10Aと10Bとが設けてあり、このガイドレール10A、10Bとに摺動自在に係合する係合部材12A、12Bを備えた鋸刃ハウジング9が前記メインガイドポスト5およびサブガイドポスト7に沿って上下動可能に設けてある。
【0014】
そして、メインガイドポスト5に沿って設けた油圧シリンダ11を図示しない制御装置により制御することにより鋸刃ハウジング9を適宜な速度で昇降制御できるように設けてある。
【0015】
前記鋸刃ハウジング9の右側には、駆動ホイール支持部13が設けてあり、左側には従動ホイールが支持部15が設けてある。この駆動ホイール支持部13と従動ホイールが支持部15とは連結部材17により一体的に連結されており、全体的には開口部19を下向きにしたコの字形をなしている。
【0016】
前記駆動ホイール支持部13と従動ホイールが支持部15の内部には、それぞれ駆動ホイール20Aと従動ホイール20B(図2参照)が回転自在に軸支してあり、この駆動ホイールと従動ホイールには、環状の帯鋸刃21が巻回してある。
【0017】
前記駆動ホイールを駆動モータ(図示省略)により、図1において反時計方向に回転駆動させることにより、帯鋸刃21の下方走行部が矢印23の方向へ回転走行されることになる。
【0018】
また、前記開口部19には、回転走行する帯鋸刃21の下方走行部の切れ歯側の向きを下向き(鉛直方向)にひねり起こすための、固定鋸刃ガイドアーム25と可動鋸刃ガイドアーム27とが前記連結部材17に設けてある。
【0019】
可動鋸刃ガイドアーム27は、前記帯鋸刃21の下方走行部に平行に設けた前記鋸刃ハウジング9の連結部材17に設けたガイド部材(図示省略)に移動自在に設けてあり、図示しない駆動手段により固定鋸刃ガイドアーム25に対して接近離反自在に設けてある。
【0020】
なお、前記従動ホイールが支持部15には従動ホイールを左方へ移動させて、駆動ホイールと従動ホイールに巻回された帯鋸刃21に適宜な張力を与えるためのテンションシリンダ(図示省略)が設けてある。
【0021】
前記基台3には、前記帯鋸刃21の被削材W.P.(Work Piece)の切断に関わる下方走行部の鋸刃走行ライン下方に切削液を貯留する鋸刃走行ライン38方向の長さがLで幅がWの切削液貯留室29が前記鋸刃走行ライン38に沿って設けてある。
【0022】
なお、鋸刃走行ライン38は、切削液貯留室29の長手方向のほぼ中心を通過するように設定されている(図4参照)。
【0023】
切削液貯留室29には、被削材W.P.の切断部から落下する切粉を受け取って機外に排出するチップコンベア31の切粉受け部33が前記切削液貯留室29内の底部に設けてある。
【0024】
この切粉受け部33で受け取った切粉は切削液貯留室29の外部に設けたチップコンベア31の切粉排出部35へ右上がりに伸びるチップコンベア31により搬出され、切削液貯留室29の外部に設けた切粉収納容器(図示省略)内に落下するように設けてある。
【0025】
上述のチップコンベア31には、例えば、特開平10−58274、または特開平04−183553に記載されるような公知のスクレーパー式のチップコンベアを使用することが望ましい。
【0026】
なお、図1、図5に示されるように、切削液貯留室29の左方には切削液貯留室29の左側上部から前記チップコンベア31の切粉受け部33の上部へ右下がりに傾斜する斜板37が設けてあり、鋸刃切断部で生じる切粉が全てが前記切粉受け部33に落下するようになっている。
【0027】
図4、図7を参照するに、基台3に一体的に設けた切削液貯留室29の上部右側には、切削液貯留室29の上方を通過する鋸刃走行ライン38に直交する方向に3枚のメインガイドポスト取付用の梁部材39(A、B、C)が適宜な間隔で切削液貯留室29に一体的に設けてある。
【0028】
上述のメインガイドポスト取付用の梁部材39(A、B、C)の手前側(図4では下側)端部は、前記横型帯鋸盤1の正面側に相当する基台3の手前側端部から切削液貯留室29側に緩やかに傾斜する斜面40に一体的に接合されている。
【0029】
同様に、切削液貯留室29の上部左側には、切削液貯留室29の上方を通過する鋸刃走行ライン38に直交する方向に2枚のサブガイドポスト取付用の梁部材41(A、B)が適宜な間隔で切削液貯留室29に一体的に設けてあり、かつ梁部材41(A、B)の手前側(図4では下側)端部は前記斜面40に一体的に接合されている。
【0030】
上述の梁部材39(A、B、C)の手前側端部上面には、前記メインガイドポスト5が立設してあり、前記梁部材41(A、B)の手前側端部上面には、前記サブガイドポスト7が立設してある。
【0031】
前記3枚の梁部材39の最も左側の梁部材39Aと、前記2枚の梁部材41の右側の梁部材41Bとの間には、後述する固定バイス装置50取付用の3枚の梁部材43(A、B、C)が、これらの梁部材と平行に切削液貯留室29の両端上部に適宜な間隔をおいて一体的に設けてある。すなわち、鋸刃走行ライン38に直交する方向に適宜な間隔をおいて3枚の梁部材43(A、B、C)が設けてある。
【0032】
図1、図4に示すように、3枚の梁部材43の最も右側の梁部材43Cの左側端面位置(図4において左側)は、固定バイス装置50の固定バイスジョー51の基準面(被削材W.P.に対する当接面)同一になるように設けてある。
【0033】
上述の固定バイス装置50としては、本願出願人の考案である実公平06−023386号公報に記載の「横型鋸盤におけるバイス装置」を使用することが望ましい。
【0034】
上述のバイス装置はいわゆる「割りバイス」とも呼ばれるものであり、被削材の切断部の直近を挟持固定可能なものであり、図3に示すように、鋸刃走行方向に平行に延びる一対のバイスベッド45(A、B)の一端側上面に固定した固定バイスジョー51の背部に、帯鋸刃21を案内する前記固定鋸刃ガイドアーム25が上下に出入自在の空間部を設けると共に、前記帯鋸刃21が通過自在のスリット47Aを固定バイスジョー51に設け、この固定バイスジョー51と協働して前記被削材W.P.を挟持固定する移動自在の可動バイスジョー53を駆動する油圧シリンダ54を前記バイスベッド45の他端部に設け、この可動バイスジョー53に前記鋸刃21が通過自在のスリット47Bを設け、被削材W.P.の切断部を支持する切断材受けプレート55を前記可動バイスジョー53の移動方向に延伸して設け、前記切断材受けプレート55の上面に、前記帯鋸刃21が侵入自在の溝部(図示省略)を設けた構成である。
【0035】
上記構成において、前記切削液貯留室29の固定バイス装置50取付用の前記3枚の梁部材43(A、B、C)上に固定バイス装置50のバイスベッド45(A、B)が固定してあるので、チップコンベア31の切粉受け部33と、固定バイス装置50における被削材支持位置(パスライン)との間隔Hを、切断部から落下する切粉が積層されて積み上がる高さに比して充分に大きくまたは広く採れるため、切粉が塊となって搬出不能となることなく高速の切削にも充分対応することが可能となった。
【0036】
また、前記梁部材43(A、B、C)上に前記バイスベッド45(A、B)を適宜な間隔おいて直交するように設けてあるので、帯鋸刃21の下方の開口面積が広く採れる。その結果、チップコンベア31の全幅を有効に利用でき、切粉排出効率が向上するという効果がある。
【0037】
なお、スクレーパー式のチップコンベアを使用する場合には、その幅が400mm以上であれば切粉が塊となって搬出不能にならないことは実験的に解っている。
【0038】
また、前記固定鋸刃ガイドアーム25と可動鋸刃ガイドアーム27との間には被削材W.P.に対する帯鋸刃21の接近速度を切削条件に対応した切込み速度に切換えることができる急速接近装置60が設けてある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る横型帯鋸盤における概略的説明図。
【図2】図1の右側面図の概略的説明図。
【図3】図1におけるA−A断面の説明図。
【図4】図1におけるB−B断面の説明図。
【図5】図4の正面図の説明図。
【図6】図4における右側面図の説明図。
【図7】図4の斜視図を説明する説明図。
【符号の説明】
【0040】
1 横型帯鋸盤
3 基台
5 メインガイドポスト
7 サブガイドポスト
8 連結板
9 鋸刃ハウジング
10A、10B ガイドレール
11 油圧シリンダ
12A、12B 係合部材
13 駆動ホイール支持部
15 従動ホイールが支持部
17 連結部材
19 開口部
20A 駆動ホイール
20B 従動ホイール
21 帯鋸刃
23 矢印
25 固定鋸刃ガイドアーム
27 可動鋸刃ガイドアーム
29 切削液貯留室
31 チップコンベア
33 切粉受け部
35 切粉排出部
37 斜板
38 鋸刃走行ライン
39(A、B、C) 梁部材
40 斜面
41(A、B) 梁部材
43(A、B、C) 梁部材
45 バイスベッド
47A スリット
50 固定バイス装置
51 固定バイスジョー
53 可動バイスジョー
54 油圧シリンダ
55 切断材受けプレート
60 急速接近装置
W.P. 被削材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に設けた固定バイス装置に挟持固定された被削材に対して上下動自在な鋸刃ハウジングを前記基台に設けると共に、該鋸刃ハウジングに環状の帯鋸刃を回転走行自在に掛回した横型帯鋸盤において、前記帯鋸刃の下方走行部下方の前記基台に切削液貯留室を設け、該切削液貯留室上部に前記鋸刃走行ラインに直交する方向の複数の梁部材を一体的に設け、該複数の梁部材上に該梁部材を前記鋸刃走行ライン方向に跨いだ状態に前記被削材を挟持固定自在の固定バイス装置のバイスベッドを設け、前記被削材の切断部から落下する切粉を受け取って機外に排出するチップコンベアの切粉受け部を前記切削液貯留室内の底部に設け、前記固定バイス装置における被削材支持位置と前記切粉受け部との間の間隔を前記切断部から落下する切粉が積層されて積み上がる高さに比して充分に大きく設けたことを特徴とする横型帯鋸盤。
【請求項2】
請求項1に記載の横型帯鋸盤において、前記チップコンベアがスクレーパー式のチップコンベアであり、該スクレーパー式のチップコンベアの幅を前記切断部から落下する切粉が積層されて積み上がる切粉の塊に比して充分に大きい幅を有することを特徴とする横型帯鋸盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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