説明

横引き式ゲートの水密構造

【課題】横引き式ゲ−トの周縁側に取り付けられた両側部水密ゴムと断面形状が異なる下部水密ゴムが交わる両下部コーナー部に、側部水密ゴムに連接し且つ下部水密ゴムに連接する新規な下部コーナー部水密ゴムを取り付けることにより、断面形状が異なることによる両下部コーナー部からの水漏れを防いで水密性を高める。
【解決手段】横引き式ゲ−ト1に断面略P字型水密ゴム31から構成される側部水密ゴム4と断面略L字型水密ゴム51から構成される下部水密ゴム5を取り付け、両側部水密ゴム4と断面形状が異なる下部水密ゴム5が交わる両下部コーナー部に、側部水密ゴム4に連接し且つ下部水密ゴム5に連接する下部コーナー部水密ゴム6を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば海岸の防波堤開口部に設置されその開口部を開閉する横引き式ゲートに係り、特に、横引き式ゲ−トの周縁側に取り付けられた両側部水密ゴムと断面形状が異なる下部水密ゴムが交わる両下部コーナー部に、側部水密ゴムに連接し且つ下部水密ゴムに連接する新規な下部コーナー部水密ゴムを取り付けることにより、断面形状が異なることによる両下部コーナー部からの水漏れを防ぐ横引き式ゲートの水密構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横引き式ゲ−ト(通称:陸閘)は例えば海岸の防波堤開口部に設置される。通常この開口部は海側の船着き場と内陸側を結ぶ通路となっているが、高潮や津波等が予想される時は横引き式ゲ-トを閉鎖し内陸側への浸水を防止する。横引き式ゲ-トは、開口部の海側に設置され、開口部に対して左右横方向に移動して、その開口部を開閉する構造になっている。また、横引き式ゲ-トには閉じた開口部との水密を図るために、上部水密ゴム、両側部水密ゴム、及び下部水密ゴムがゲートの周縁側に取り付けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的に海岸の防波堤開口部の通路底面には横引き式ゲ-トの走行ロ−ラを案内する突起型レ−ルや下部水密101を確保するための段差Hが設けられ、これらが通行時の障害となっている(段差式水密構造:図6(A)参照)。
また、通常、下部水密ゴムを圧着し下部水密101を確保したり、走行抵抗低減のため圧着を解除するために扉体昇降装置102を設けるが、これらの装置で設備費の増加、構造の複雑化、操作の煩雑化などの原因となっている(扉体昇降式水密構造:図6(B)(C)参照)。
これらを解消する案として、図7に図示するように、防波堤開口部の通路面に突起型レールや段差を設けずに平坦面にする一方で、横引き式ゲ−トの下部水密に平坦面での水密性を高める断面略L字型水密ゴム111を使用し、両側部水密に側部戸当りとの水密性を高める断面略P字型水密ゴム112の使用が考えられるが、断面形状の異なる水密ゴムを単純に組み合わせた場合、下部コ−ナー部に△状の隙間113が発生し水密が確保出来ない。
また、側部水密の断面略P字型水密ゴムの下端114は底面に圧着させないと水密が確保出来ない。圧着するためには昇降装置が必要、昇降装置がない場合は取付け時点からゲート自重を利用し圧着することになるが、この場合は走行抵抗が大きくなり、また接触面の異常摩耗が発生し水密が保てなくなる。
【0004】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、横引き式ゲ−トの周縁側に取り付けられた両側部水密ゴムと断面形状が異なる下部水密ゴムが交わる両下部コーナー部に、側部水密ゴムに連接し且つ下部水密ゴムに連接する新規な下部コーナー部水密ゴムを取り付けることにより、断面形状が異なる水密ゴムが交わる両下部コーナー部からの水漏れを防いで水密性を高めることのできる横引き式ゲ−トを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するために、この発明は、開口部を開閉する横引き式ゲートの両側部に開口部の両側の側部戸当りに水圧により密着する丸み状密着片と板状取付片とからなる断面略P字型水密ゴムから構成される側部水密ゴムを該ゲートの上下方向に取り付け、横引き式ゲ−トの下端側に上記開口部の底面と同一平面の底面に水圧により撓んで密着する傾斜板状密着片と板状取付片からなる断面略L字型水密ゴムから構成される下部水密ゴムを該ゲートの幅方向に取り付け、両側部水密ゴムと断面形状が異なる下部水密ゴムが交わる両下部コーナー部に、側部水密ゴムに連接し且つ下部水密ゴムに連接する下部コーナー部水密ゴムを取り付けると共に、当該下部コーナー部水密ゴムを、断面略P字型水密ゴムと上下で連接する同一断面形状の丸み状密着片と板状取付片とからなる断面略P字型コーナー片と、断面略L字型水密ゴムの板状取付片の端部と左右で連接する同一断面形状の板状コーナー取付片と、断面略P字型コーナー片の丸み状密着片の外周側に密着して設けられ上記開口部の下部側の側部戸当りに水圧により密着する側部補助密着片と、上記開口部の底面と同一平面の底面に水圧により撓んで密着し且つ断面略P字型コーナー片の丸み状密着片の外周側に周り込み該丸み状密着片の側部戸当りとの密着先端面と平面から見て同じ位置まで延設され断面略L字型水密ゴムの傾斜板状密着片の端部と左右で連接する同一断面形状の傾斜板状コーナー密着片と、から一体的に構成した手段よりなるものである。
【発明の効果】
【0006】
以上の記載より明らかなように、この発明に係る横引き式ゲートの水密構造によれば、次のような優れた効果を奏することができる。
(1)横引き式ゲ−トの周縁側に取り付けられた両側部水密ゴムと断面形状が異なる下部水密ゴムが交わる両下部コーナー部に、側部水密ゴムに連接し且つ下部水密ゴムに連接する新規な下部コーナー部水密ゴムを取り付けることにより、断面形状が異なる水密ゴムが交わる両下部コーナー部からの水漏れを防いで水密性を高めることができる。
(2)下部コーナー部水密ゴムは側部水密ゴムの断面略P字型水密ゴムに連接し且つ下部水密ゴムの断面略L字型水密ゴムに連接して下部コーナー部からの水漏れを防ぐために、横引き式ゲ−トの下部水密に断面略L字型水密ゴムを使用でき、横引き式ゲ−トの下部水密に使用する断面略L字型水密ゴムは底面と接触する傾斜板状密着片の撓みで底面の水密面に接するため接触圧力が低く、横引き式ゲ−トの移動時の摺動抵抗を小さくでき、横引き式ゲ−トの開閉のための移動をスムーズに行うことが可能となる。
(3)下部コーナー部水密ゴムは側部水密ゴムの断面略P字型水密ゴムに連接し且つ下部水密ゴムの断面略L字型水密ゴムに連接して下部コーナー部からの水漏れを防ぐために、下部水密に断面略L字型水密ゴムを使用でき、又側部水密に断面略P字型水密ゴムを使用できるので、断面略L字型水密ゴムは傾斜板状密着片に作用する水圧を利用して底面に押し付けて水密を図ることができ、断面略P字型水密ゴムは丸み状密着片が作用する水圧により少し潰れて開口部の側部戸当りに押し付けて水密を図ることができる。
(4)下部水密に断面略L字型水密ゴムを使用することで通路となる水密面を平坦に出来る為、陸閘通路部のバリアフリ−化が図れ、地元住民の生活により密着した施設となり得る。
(5)下部水密に断面略L字型水密ゴムを使用することでゲートを昇降させて水密ゴムを圧着する必要が無い。このためゲート昇降装置が不要となり設備費用の低減、扉体構造や操作装置が簡素化でき、設備の信頼性が向上する。
(6)電動操作する場合、扉体昇降装置があれば当然これも電動で操作するようになり制御系統が複雑化するが昇降装置がなければ操作系統も簡素化でき、操作制御設備の信頼性が向上する。
(7)請求項2のように、下部水密ゴムの傾斜板状密着片及び下部コーナー部水密ゴムの傾斜板状コーナー密着片の先端に底部補助密着片を設けた場合には、密着面積を広げて水密性をさらに高めることができる。
(8)請求項3のように、下部コーナー部水密ゴムの傾斜板状コーナー密着片及び断面略P字型コーナー片の下面側に、水密の補助と傾斜板状コーナー密着片の捲れ込み防止用の底部補助片を設けた場合には、水密をさらに高めることができると共に、傾斜板状コーナー密着片の捲れ込みを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に記載の発明を実施するための最良の形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
【0008】
図において、横引き式ゲ−ト(通称:陸閘)1は、例えば海岸の防波堤2の開口部21に設置されその開口部21を開閉するゲートで、防波堤2の海側aに設置され、開口部21に対して左右横方向に移動距離Cの範囲で移動して、その開口部21を開閉する構造になっている。防波堤2の開口部21は例えば方形状の形状からなり、開口部21の全開時の開口幅はDであり、これを開閉する横引き式ゲ−ト1もこれよりも大きな方形状の形状からなっている。
【0009】
横引き式ゲ−ト1は、例えば四角形で板状のスキンプレート、スキンプレートの陸側bに臨む側の表面に周縁側及び内側に縦横に取り付けられた補強桁などから構成されている。横引き式ゲ−ト1のスキンプレートはこれらの補強桁によって補強されて剛性が高められている。
【0010】
横引き式ゲ−ト1の開口部21側と反対側の側端の上部及び下部には上部張出体11と下部張出体12がそれぞれ一体的に設けられている。上部張出体11の上端には後述の上部ガイドローラ13が取り付けられている。また、下部張出体12の下端側には後述の下部ガイドローラ14が取り付けられている。
【0011】
横引き式ゲ−ト1が設置される海側に面する防波堤2の開口部21の上端より少し上側の壁面には、横引き式ゲ−ト1の横移動をガイドする上部ガイドレール22が水平に取り付けられている。上部ガイドレール22は断面溝型になっていて、溝は下向きになっている。上部ガイドレール22は、防波堤2の海側に面する側の壁面に取り付けられた複数の取付片22aに連結されて吊持されている
【0012】
上部ガイドレール22の下向きの溝内には横引き式ゲ−ト1の上端側に適宜間隔で取り付けられた複数の上部ガイドローラ13が嵌合されている。上部ガイドローラ13は横引き式ゲ−ト1の上端から上方に垂直に取り付けられた垂直軸13aに回転自在に取り付けられている。横引き式ゲ−ト1は上端に取り付けられた上部ガイドローラ13が上部ガイドレール22の溝内を案内されることによって、傾くことなくスムーズに横移動される。
【0013】
横引き式ゲ−ト1の下端側には複数の下部ガイドローラ14が適宜間隔で取り付けられている。各下部ガイドローラ14は水平軸回りに回転自在に取り付けられている。また、各下部ガイドローラ14は横引き式ゲ−ト1の内部に取り付けられ、回転するローラの最下端側が横引き式ゲ−ト1の下端から僅かに突出するように取り付けられている。
【0014】
防波堤2の開口部21の通路底面を除く横引き式ゲ−ト1が横移動して開口部21を全開する側の底面には上部ガイドレール22に平行に下部ガイドレール23が敷設されている。下部ガイドレール23は横引き式ゲ−ト1の下部ガイドローラ14をガイドするレールで下部ガイドローラ14はこの下部ガイドレール23上を転動する。下部ガイドレール23の長さSは全開時の横引き式ゲ−ト1の待機位置での範囲であり、下部ガイドレール23はその上部側が底面より一部突起しているが、開口部21の通路底面には敷設されていないため、開口部21の通行時に障害となることはない。
【0015】
開口部21の反対側の下部ガイドレール23の端部側には全開ストッパー24が突設されていて、開口部21を全開した横引き式ゲ−ト1の下部張出体12の先端が全開ストッパー24に当接することで、横引き式ゲ−ト1がさらに開口部21より離れる側に横移動するのが防止されている。
【0016】
また、開口部21を挟んで下部ガイドレール23の延長線上の開口部21の側方底面には全閉ストッパー25が突設されていて、開口部21を全閉した横引き式ゲ−ト1の側端の下部が全開ストッパー24に当接することで、横引き式ゲ−ト1を所定の全閉位置で停止させると共に、横引き式ゲ−ト1が全閉した開口部21を再び開く側にさらに横移動するのが防止されている。
【0017】
高潮や津波等が予想される時は防波堤2の開口部21を閉じ内陸側への浸水を防止する横引き式ゲ-ト1には、閉じた開口部21からの水漏れを防いで水密を図るために、上部水密ゴム3、両側の側部水密ゴム4、下部水密ゴム5及び両側の下部コーナー部水密ゴム6が方形状のゲートの周縁側に連接状態で取り付けられている。
【0018】
上部水密ゴム3は横引き式ゲ−ト1の上端側からの水漏れを防ぐもので、横引き式ゲ−ト1の上端側の周縁側と開口部21の上辺の上側の防波堤2の壁面に形成される上部戸当りとの隙間に取り付けられている。上部水密ゴム3は断面略P字型水密ゴム31から形成されている。断面略P字型水密ゴム31は横引き式ゲ−ト1の上端側の周縁側の幅方向にその断面の長さ方向を向けて取り付けられている。
【0019】
上部水密ゴム3を構成する断面略P字型水密ゴム31は、開口部21の上部戸当りに密着する断面が例えば円形状で内部に例えば円形な中空部を有する丸み状密着片31aと、横引き式ゲ−ト1の上端側の周縁側の幅方向に取り付けられる板状取付片31bとから構成されている。断面略P字型水密ゴム31は、水圧により丸み状密着片31aが少し潰れた状態で開口部21の上部戸当りに圧着されて密着することで、横引き式ゲ−ト1の上端側の水漏れを防いで水密を図る構造になっている。
【0020】
側部水密ゴム4は横引き式ゲ−ト1の左右の側部からの水漏れを防ぐもので、横引き式ゲ−ト1の左右の側部の上下方向の周縁側と開口部21の左右の上下方向の側辺の外側方の防波堤2の壁面に形成される側部戸当り21aとの隙間に取り付けられている。下部水密ゴム5は前記の上部水密ゴム3と同一断面形状の断面略P字型水密ゴム41から形成されている。断面略P字型水密ゴム41は横引き式ゲ−ト1の左右の側部の周縁側の上下方向にその断面の長さ方向を向けて取り付けられている。
【0021】
側部水密ゴム4を構成する断面略P字型水密ゴム41は、開口部21の側部戸当り21aに密着する断面が例えば円形状で内部に例えば円形な中空部を有する丸み状密着片41aと、横引き式ゲ−ト1の左右の側部の周縁側の上下方向に取り付けられる板状取付片41bとから構成されている。断面略P字型水密ゴム41は、水圧により丸み状密着片41aが少し潰れた状態で開口部21の側部戸当り21aに圧着されて密着することで、横引き式ゲ−ト1の左右の側部の水漏れを防いで水密を図る構造になっている。
【0022】
上部水密ゴム3の左右両端と左右の側部水密ゴム4の上端とは、接着剤などによって一体化されている。上部水密ゴム3と側部水密ゴム4とは同一断面形状の断面略P字型水密ゴム31,41から構成されているため、上部水密ゴム3の左右両端を上側が突出する45度の角度で切断し、また、左右の側部水密ゴム4の上端を外側がそれぞれ突出する45度の角度で切断し、その切断面を同士を接合4aして一体化している。上部水密ゴム3の左右両端と左右の側部水密ゴム4の上端との上部コーナー部での接合は、共に同一断面形状の断面略P字型水密ゴム31,41の接合であるのでスムーズな接合となり、この上部コーナー部からの水漏れの虞はない。
【0023】
下部水密ゴム5は横引き式ゲ−ト1の下端側からの水漏れを防ぐもので、開口部21の底面より少し海側aに突出する横引き式ゲ−ト1の下端側の周縁側に取り付けられている。下部水密ゴム5は断面略L字型水密ゴム51から形成されている。断面略L字型水密ゴム51は横引き式ゲ−ト1の下端側の周縁側の幅方向にその断面の長さ方向を向けて取り付けられている。
【0024】
下部水密ゴム5を構成する断面略L字型水密ゴム51は、開口部21より少し前方側つまり海側a寄りで開口部21の底面と段差のない同一平面の底面に軽く接触する断面が海側aに向けて斜め下向きに傾斜する傾斜板状密着片51aと、横引き式ゲ−ト1の下端側の周縁側の幅方向に取り付けられる上下向きの板状取付片51bとから構成されている。
【0025】
下部水密ゴム5の傾斜板状密着片51aは底面に軽く接触しており、横引き式ゲ−ト1の移動時の摺動抵抗を小さくしている。断面略L字型水密ゴム51は、傾斜板状密着片51aが水圧により少し撓んだ状態で開口部21より少し海側a寄りの開口部21の底面と段差のない同一平面の底面に圧着されて密着することで、横引き式ゲ−ト1の下端側の水漏れを防いで水密を図る構造になっている。
【0026】
両側部水密ゴム4と下部水密ゴム5が交わる両下部コーナー部は、前記の両上部コーナー部と異なり、両側部水密ゴム4と下部水密ゴム5の断面形状が異なるため、簡単に接合することができず、また水漏れを防ぐことができない。このため、両側部水密ゴム4と断面形状が異なる下部水密ゴム5が交わる両下部コーナー部には、側部水密ゴム4に連接6aし且つ下部水密ゴム5に連接6bして下部コーナー部からの水漏れを防ぐ新規な下部コーナー部水密ゴム6が取り付けられている。
【0027】
下部コーナー部水密ゴム6は、側部水密ゴム4の下端と上下で連接する断面略P字型コーナー片61と、下部水密ゴム5の板状取付片51bの端部と左右で連接する板状コーナー取付片62と、開口部21の側部戸当り21aの下部側と水圧により密着する側部補助密着片63と、下部水密ゴム5の傾斜板状密着片51aの端部と左右で連接する傾斜板状コーナー密着片64とから構成されている。断面略P字型コーナー片61、板状コーナー取付片62、側部補助密着片63及び傾斜板状コーナー密着片64から一体的に構成される下部コーナー部水密ゴム6は一体成形されて作られる。
【0028】
断面略P字型コーナー片61は側部水密ゴム4の断面略P字型水密ゴム41の断面形状と同一断面形状からなっている。断面略P字型コーナー片61は断面方向が上下向きになるように設けられている。即ち、断面略P字型コーナー片61は、開口部21の下部側の側部戸当り21aに水圧により密着する断面が例えば円形状で内部に例えば円形な中空部を有する丸み状密着片61aと、横引き式ゲ−ト1の左右の下部コーナー部の側部側の周縁側の上下方向に取り付けられる板状取付片61bとから構成されている。断面略P字型コーナー片61は、丸み状密着片61aが水圧により少し潰れた状態で開口部21の下部側の側部戸当り21aに圧着されて密着することで、横引き式ゲ−ト1の下部コーナー部の左右の側部の水漏れを防ぐ。
【0029】
断面略P字型コーナー片61の上端は、断面略P字型水密ゴム41の下端に例えば接着剤などによって一体的に連接されている。また、断面略P字型コーナー片61の下端は、開口部21の底面と同一平面の底面より少し上側の底面に非接触の位置に設けられている。横引き式ゲ−ト1の開閉移動時に断面略P字型コーナー片61の下端が底面に接触して開閉時の接触抵抗となるのが防がれている。断面略P字型コーナー片61の下端は、傾斜板状コーナー密着片64の傾斜上端側と略同じ高さになるように設けられている。
【0030】
板状コーナー取付片62は下部水密ゴム5の断面略L字型水密ゴム51の板状取付片51bと同一断面形状からなっている。板状コーナー取付片62の端部と下部水密ゴム5の断面略L字型水密ゴム51の板状取付片51bの端部とは、例えば接着剤によって一体的に連接されている。断面略P字型コーナー片61は断面方向が上下向きになるように設けられている。下部コーナー部水密ゴム6の板状コーナー取付片62は横引き式ゲ−ト1の下部コーナー部の下端側に取り付けられる。
【0031】
側部補助密着片63は断面略P字型コーナー片61の丸み状密着片61aの外周側に密着して設けられている。この側部補助密着片63は水圧により開口部21の全閉時に横引き式ゲ−ト1の下部コーナー部が位置する上記開口部21の下部側の側部戸当り21aに密着して水密を図る構造になっている。側部補助密着片63の密着面は丸み状密着片61aの密着先端面と平面から見て同じ位置にあり、又側部戸当り21aと平行に形成されている。
【0032】
側部補助密着片63は、その上端が丸み状密着片61aの外周側に中間高さ位置に密着して設けられ、斜め下向きに傾斜する傾斜辺の傾斜下端は傾斜板状コーナー密着片64の上面に接している。つまり、側部補助密着片63は垂直辺、傾斜辺及び底辺からなる三角形状になっていて、垂直辺は丸み状密着片61aに密着して設けられ、底辺は傾斜板状コーナー密着片64の上面に密着して設けられている。
【0033】
傾斜板状コーナー密着片64は斜め下向きに形成されていて、その先端側の下面が上記開口部21の底面と同一平面の底面に軽く接触していて横引き式ゲ−ト1の移動時の摺動抵抗は小さくなっている。又傾斜板状コーナー密着片64の片方の端部は、断面略P字型コーナー片61の丸み状密着片61aの外周側に周り込み、さらに該丸み状密着片61aの側部戸当り21aとの密着先端面と平面から見て同じ位置まで延設されている。
【0034】
延設された傾斜板状コーナー密着片64の片方の端部が、水圧により開口部21の全閉時に横引き式ゲ−ト1の下部コーナー部が位置する上記開口部21の下部側の側部戸当り21aに密着し、又傾斜板状コーナー密着片64の先端側の下面が水圧により撓んで底面に密着することで、下部コーナー部からの水漏れを防いでいる。
【0035】
傾斜板状コーナー密着片64は、下部水密ゴム5の断面略L字型水密ゴム51の傾斜板状密着片51aと同一断面形状からなっている。傾斜板状コーナー密着片64の他方の端部と下部水密ゴム5を構成する断面略L字型水密ゴム51の傾斜板状密着片51aの端部とは、左右で例えば接着剤によって一体的に連接されている。
【0036】
下部水密ゴム5の断面略L字型水密ゴム51の傾斜板状密着片51aの先端には、密着面積を広げて水密性を高める底部補助密着片52が必要に応じて設けられる。同様に、下部コーナー部水密ゴム6の傾斜板状コーナー密着片64の先端には、密着面積を広げて水密性を高める底部補助密着片65が必要に応じて設けられる。底部補助密着片52,65には例えば厚みの薄い水密ゴムが使用される。
【0037】
下部コーナー部水密ゴム6の傾斜板状コーナー密着片64及び断面略P字型コーナー片61の下面側には、水密の補助と傾斜板状コーナー密着片64の捲れ込み防止用のコーナー底部補助片66が必要に応じて設けられる。コーナー底部補助片66には例えばスポンジゴムが使用される。
【0038】
次に、上記発明を実施するための最良の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
高潮や津波等が予想されて防波堤2の開口部21を閉鎖する必要が生じると、開口部21を全開状態にしていた横引き式ゲ−ト1を開口部21側に向けて横移動させる。移動中にあっては、横引き式ゲ−ト1の下部水密ゴム5を構成する断面略L字型水密ゴム51の傾斜板状密着片51aの先端側の下面は底面に軽く接触するのみであるため、摺動抵抗も小さく、移動の妨げとなることはない。
【0039】
横引き式ゲ−ト1は下端側に下部ガイドローラ14が取り付けられ、又全開位置の横引き式ゲ−ト1の底面には下部ガイドレール23が敷設されているため、横引き式ゲ−ト1の下部ガイドローラ14は下部ガイドレール23上に沿って途中まではスムーズに移動させることができる。また、横引き式ゲ−ト1は上端側の上部ガイドローラ13が上部ガイドレール22の溝内に嵌合されているので、傾いたりすることなく上部ガイドレール22に沿って移動させることができる。
【0040】
開口部21側に向けて横移動させた横引き式ゲ−ト1は、開口部21を徐々に狭めて行き、開口部21を完全に塞いだ状態になった頃に、移動先端側の側部の下部が全閉ストッパー25に当接して停止し、開口部21を全閉する。
【0041】
開口部21を全閉した横引き式ゲ−ト1の周縁側に取り付けられた上部水密ゴム3及び両側部水密ゴム4は、同一断面形状の断面略P字型水密ゴム31,41の丸み状密着片31a,41aの先端が開口部21の周縁側の上部戸当りや側部戸当り21aに接触する。また、横引き式ゲ−ト1の下部水密ゴム5は、断面略L字型水密ゴム51の傾斜板状密着片51aの先端側の下面が開口部21より少し海側a寄りの底面に軽く接触する。
【0042】
海側aの水位が上昇すると、開口部21を全閉した横引き式ゲ−ト1には水圧が作用して、その水圧により、横引き式ゲ−ト1の上部水密ゴム3及び両側部水密ゴム4を開口部21の周縁側の上部戸当りや側部戸当り21aに押し付ける。上部水密ゴム3及び両側部水密ゴム4を構成する断面略P字型水密ゴム31,41の丸み状密着片31a,41aは少し潰れた状態で開口部21の周縁側の上部戸当りや側部戸当り21aに密着して水漏れを防ぐ。
【0043】
開口部21を全閉した横引き式ゲ−ト1の下部水密ゴム5を構成する断面略L字型水密ゴム51の傾斜板状密着片51aは、水圧によって撓んで、下向きに傾斜する先端側の下面が開口部21より少し海側a寄りの底面に密着して水漏れを防ぐ。
【0044】
横引き式ゲ−ト1の両側部水密ゴム4と断面形状が異なる下部水密ゴム5とが交わる下部コーナー部には下部コーナー部水密ゴム6が取り付けられていて、下部コーナー部水密ゴム6の断面略P字型コーナー片61の丸み状密着片61aが水圧により少し潰れて開口部21の両下端側の側部戸当り21aに密着する。また、下部コーナー部水密ゴム6の傾斜板状コーナー密着片64の先端側の下面が水圧により撓んで、開口部21寄り少し海側aの底面に密着する。さらに、側部補助密着片63が水圧により開口部21の両下端側の側部戸当り21aに密着する。これにより、横引き式ゲ−ト1の両下部コーナー部は下部コーナー部水密ゴム6によって水漏れが防がれる。
【0045】
このようにして、横引き式ゲ−ト1の周縁側に取り付けた上部水密ゴム3、両側部水密ゴム4、下部水密ゴム5及び両下部コーナー部水密ゴム6によって水密が図られて、防波堤2の開口部21の陸側bに向けての浸水を防止することができる。
【0046】
なお、この発明は上記発明を実施するための最良の形態に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】(A)はこの発明を実施するための最良の形態を示す正面図である。 (B)は同図(A)のA−A矢視断面図である。
【図2】この発明を実施するための最良の形態を示す中間部分を省略した横引き式ゲ−トの四方水密式の水密ゴムの構成図である。
【図3】(A)はこの発明を実施するための最良の形態を示す左側の下部コーナー部の平断面図(同図(B)のB矢視断面図)である。 (B)は同図(A)のA矢視断面図である。 (C)は同図(B)の底面図(C矢視図)である。 (D)は同図(B)のD−D矢視断面図である。
【図4】(A)はこの発明を実施するための最良の形態を示す右側の下部コーナー部の平断面図(同図(B)のB矢視断面図)である。 (B)は同図(A)のA矢視断面図である。 (C)は同図(B)の底面図(C矢視図)である。 (D)は同図(B)のD−D矢視図である。
【図5】この発明を実施するための最良の形態を示す下部コーナー部水密ゴムの斜視図である。
【図6】(A)は従来の段差式水密構造の説明図である。 (B)は従来の扉体昇降式水密構造の全開、走行時の説明図である。 (C)は従来の扉体昇降式水密構造の全閉時の説明図である。
【図7】この発明に係る下部コーナー部水密ゴムを使用しないで、側部水密ゴムに断面略P字型水密ゴムを使用し、下部水密ゴムに断面略L字型水密ゴムを使用した場合の水密ゴムの説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 横引き式ゲ−ト
11 上部張出体
12 下部張出体
13 上部ガイドローラ
13a 垂直軸
14 下部ガイドローラ
2 防波堤
21 開口部
21a 側部戸当り
22 上部ガイドレール
22a 取付片
23 下部ガイドレール
24 全開ストッパー
25 全閉ストッパー
3 上部水密ゴム
31 断面略P字型水密ゴム
31a 丸み状密着片
31b 板状取付片
4 側部水密ゴム
4a 接合
41 断面略P字型水密ゴム
41a 丸み状密着片
41b 板状取付片
5 下部水密ゴム
51 断面略L字型水密ゴム
51a 傾斜板状密着片
51b 板状取付片
52 底部補助密着片
6 下部コーナー部水密ゴム
6a 連接
6b 連接
61 断面略P字型コーナー片
61a 丸み状密着片
61b 板状取付片
62 板状コーナー取付片
63 側部補助密着片
64 傾斜板状コーナー密着片
65 底部補助密着片
66 コーナー底部補助片
a 海側
b 陸側
C 横引き式ゲ−トの移動距離
D 開口部の全開時の開口幅
S 下部ガイドレールの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉する横引き式ゲートの両側部に開口部の両側の側部戸当りに水圧により密着する丸み状密着片と板状取付片とからなる断面略P字型水密ゴムから構成される側部水密ゴムを該ゲートの上下方向に取り付け、横引き式ゲ−トの下端側に上記開口部の底面と同一平面の底面に水圧により撓んで密着する傾斜板状密着片と板状取付片からなる断面略L字型水密ゴムから構成される下部水密ゴムを該ゲートの幅方向に取り付け、両側部水密ゴムと断面形状が異なる下部水密ゴムが交わる両下部コーナー部に、側部水密ゴムに連接し且つ下部水密ゴムに連接する下部コーナー部水密ゴムを取り付けると共に、当該下部コーナー部水密ゴムを、断面略P字型水密ゴムと上下で連接する同一断面形状の丸み状密着片と板状取付片とからなる断面略P字型コーナー片と、断面略L字型水密ゴムの板状取付片の端部と左右で連接する同一断面形状の板状コーナー取付片と、断面略P字型コーナー片の丸み状密着片の外周側に密着して設けられ上記開口部の下部側の側部戸当りに水圧により密着する側部補助密着片と、上記開口部の底面と同一平面の底面に水圧により撓んで密着し且つ断面略P字型コーナー片の丸み状密着片の外周側に周り込み該丸み状密着片の側部戸当りとの密着先端面と平面から見て同じ位置まで延設され断面略L字型水密ゴムの傾斜板状密着片の端部と左右で連接する同一断面形状の傾斜板状コーナー密着片と、から一体的に構成したことを特徴とする横引き式ゲートの水密構造。
【請求項2】
下部水密ゴムの傾斜板状密着片及び下部コーナー部水密ゴムの傾斜板状コーナー密着片の先端に底部補助密着片を設けた請求項1記載の横引き式ゲートの水密構造。
【請求項3】
下部コーナー部水密ゴムの傾斜板状コーナー密着片及び断面略P字型コーナー片の下面側に、水密の補助と傾斜板状コーナー密着片の捲れ込み防止用の底部補助片を設けた請求項1記載の横引き式ゲートの水密構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−291759(P2007−291759A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121969(P2006−121969)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(501119757)国土交通省中部地方整備局長 (12)
【出願人】(000196473)西田鉄工株式会社 (9)
【Fターム(参考)】