説明

横方向イオン合焦を行う平坦プレートのFAIMS

【課題】高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAIMS)において感度を分解能とを改善すること
【解決手段】高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAIMS)は、イオンの流れ方向に沿って幅が減少するギャップにより、互いに分離された少なくとも2つの合焦電極を含む。前記ギャップ内には電極アセンブリが配置されており、この電極アセンブリは、第1電極と第2電極とを含み、これら第1電極と第2電極のほぼ平坦な表面は互いに対向し、両者の間にほぼ均一な厚さの空間を構成している。使用中、第1電極および第2電極のうちの少なくとも1つの上、および前記少なくとも2つの合焦電極の上の各1つの上に設けられた電気コンタクトを介して、電気信号が印加される。これら電気信号は、第1電極と第2電極の間の空間にイオンを選択的に透過させ、選択的に透過したイオンを少なくとも2つの合焦電極のうちの1つから空間の中心部分に向けるための電極電界条件を空間内に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメトリー(FAIMS)に関し、より詳細には、横方向に向いたイオン合焦をサポートする平坦なプレートの電極幾何学的形状となっているFAIMSに関する。
【背景技術】
【0002】
高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメトリー(FAIMS)とは、大気圧で気相イオンを分離できる技術のことである。分析領域にイオンが導入され、この分析領域の両端には無線周波数(RF)波形が印加されているので、イオンは、高強度の電界と低強度の電界とを受ける。印加される波形は、短い時間t2の間続く高電圧成分V1と、より長い時間t1の間続く逆極性の、より低い電圧成分v2とを含む繰り返しパターンを含むような非対称形となっている。特にこの波形は、波形の各々の全サイクルの間の積分された電圧と時間の積、したがって電界−時間積がゼロとなるよう、例えばV12+V21=0、例えば10μsの間、+2000Vが続き、その後、20μsの間、−1000Vが続くような波形に合成される。より短い時間の間のピーク電圧V1、すなわち波形の高電圧部分は、「分散電圧」またはDVと称される。
【0003】
FAIMSでは低電界強度におけるイオンの移動度Kに対する高電界強度のイオンの移動度Khの差に基づき、イオンが分離される。換言すれば、これらイオンは印加される電界強度を関数とするKhの化合物に依存する挙動のため、分離される。イオンの移動度のこのような電界に応じた変化により、イオンは分析領域の壁に向けてドリフトされる。当該イオンをFAIMSに透過させるために、当該イオンの分析器の壁に向かうドリフトを補償するよう、適当な直流補償電圧CVが印加される。補償電圧を変えることにより、異なるイオンが選択的にFAIMSデバイスを透過させられる。
【0004】
一般に、FAIMSデバイス内で分析領域を構成する電極は、平坦な形状またはカーブした形状のいずれかにすることができ、例えばそれぞれ平行な平坦プレートの電極または同心状の円筒形電極とすることができる。同心状の円筒形構造は、平坦プレートの構造と比較して感度を高くすることができる。このようなより高い感度は、同心状円筒形電極のカーブした電極表面の間の分析領域で生じる二次元の大気圧イオン合焦効果に起因するものである。電極の間に電圧を印加しないとき、イオンの径方向の分布がFAIMS分析器にわたってほぼ均一になるはずである。しかしながら、DVおよびCVの印加中は、FAIMSの分析領域の環状空間にわたってイオンの径方向の分布が均一となることはない。当該イオンに対し、適当なDVおよびCVを印加した場合、これらイオンは電極間のバンド内で合焦された状態となり、FAIMS電極と衝突する結果、イオンの損失率が減少する。従って、このような二次元のイオン合焦効果の結果として、同心状円筒形FAIMSの分析領域を通過する当該イオンの透過効率が改善される。
【0005】
他方、平行な平坦プレート電極構造は、分解能をより高くする。所定の作動条件の組のもとで、同様な移動度特性を有するイオンを分離する度合いに関して、FAIMSデバイスの分解能が定められる。従って、高分解能のFAIMSデバイスは、同様な移動度特性を有する、レンジが比較的狭いタイプのイオンを選択的に透過するが、低分解能のFAIMSデバイスは、同様な移動度特性を有する、レンジが比較的広いタイプのイオンを選択的に透過する。同心状円筒形構造は、上記のようにイオンを合焦し、トラップする能力を有するので、平行な平坦プレート構造における分解能と比較して、同心状円筒形構造におけるFAIMSの分解能は、妥協が図られている。この合焦効果は、同心状円筒形電極の間の分析領域において、移動度特性のより広いレンジのイオンが同時に合焦されることを意味する。更に、細い電極を有する同心状円筒形FAIMSデバイスは、最強の合焦効果を有するが、イオンを分離する分解能は最低である。円筒形の曲率半径が大きくなるにつれ、合焦作用はより弱くなり、同様な高電界移動度特性のイオンを同時に合焦するFAIMSの能力も同様に低下する。このことは、最大達成分解能を有する平行な平坦プレート構造では、電極の半径が増加するにつれ、FAIMSの分解能も増加することを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
残念なことに、平行な平坦プレートのFAIMSデバイスの感度は、同心状円筒形構造と比較して低くなっている。その理由は、イオン平行な平坦プレートの間の分析領域を移動する際に、拡散、および小さいにしてもイオン間の反撥力によってイオンがプレートの幅方向に沿ったある方向に広がってしまうからである。換言すれば、イオンはほぼコリメート状のイオンビームとして平坦なプレートの電極間の空間内に導入されるが、電極のエッジに向かって急激に広がり、分析ギャップを通ってイオンの出口まで移動するようなイオンのシートを形成する。従って、これまでFAIMSデバイスの電極構造を選択するにあたり、従来技術では、感度と分解能との間で常に妥協を図らなければならなかった。
【0007】
上記限界の少なくとも一部を克服する装置および方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴によれば、2つの非平行なエッジを有する第1電極を備え、前記2つの非平行なエッジは、前記第1電極の長手方向に沿って減少する幅を前記2つのエッジの間に構成し、前記第1電極は、前記2つのエッジによって境界が定められたほぼ平坦な第1電極表面を有し、2つの非平行なエッジを有する第2電極を更に備え、前記2つの非平行なエッジは、第2電極の長手方向に沿って減少する幅を前記エッジの間に構成し、前記第2電極は、前記2つのエッジによって境界が定められたほぼ平坦な第2電極表面を有し、前記第2電極は、前記第1電極に離間して対向する関係に配置され、前記第1電極表面と前記第2電極表面との間にほぼ均一な厚さの空間を有する電極アセンブリを構成し、前記第1電極の前記2つのエッジと前記第2電極の前記2つのエッジは、前記電極アセンブリの2つの横方向の境界を構成し、前記電極アセンブリは、第1方向に沿って減少する分離距離を前記境界の間に有し、前記空間は、前記第1方向に沿った前記電極アセンブリを通過するイオンの透過を使用中にサポートし、更に前記電極アセンブリの2つの横方向の境界の各々に隣接する少なくとも1つの合焦電極を含む少なくとも2つの合焦電極を備え、前記少なくとも2つの合焦電極の間の分離距離は、前記第1方向に沿って減少し、更に、非対称の波形の電圧を受けると共に、前記第1電極と前記第2電極との間に直流補償電圧を印加し、FAMES(高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ)原理に従ってイオンを分離するための電界を前記空間内に形成するための、前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも1つに設けられた電気コンタクトと、直流電圧を受け、前記2つの横方向の境界のうちの1つから離間し、前記空間のうちの中心部分に向かう方向にイオンを向けるための、前記少なくとも2つの合焦電極のうちの各1つの上に設けられた電気コンタクトとを備える、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAMES)が提供される。
【0009】
本発明の特徴によれば、第1方向に沿ってパワーが減少するギャップだけ互いに分離された少なくとも2つの合焦電極と、前記少なくとも2つの合焦電極の間の前記ギャップ内に配置された電極アセンブリとを備え、前記電極アセンブリは、等脚台形形状の周辺によって境界が定められ、ほぼ平坦となっている第1の辺を有する第1電極と、ほぼ同じ等脚台形の周辺によって境界が定められ、ほぼ平坦となっている第2の辺を有する第2電極とを備え、前記第2電極は、前記第1電極と離間して対向する関係に配置され、ほぼ均一な厚さの空間を前記第1の辺と前記第2の辺の間に構成し、前記空間は、使用中に前記第1方向に沿った前記電極アセンブリを通過するイオンの透過をサポートし、前記少なくとも2つの合焦電極の間の前記ギャップの減少する幅は、前記第1電極および前記第2電極の前記等脚台形の周辺にほぼ一致する、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAMES)が提供される。
【0010】
本発明に特徴によれば、第1方向に沿って幅が減少するギャップだけ、互いに離間する少なくとも2つの合焦電極と、前記少なくとも2つの合焦電極の間の前記ギャップ内に配置された電極アセンブリとを備える高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータであって、前記電極アセンブリは、ほぼ平坦な第1電極表面を有する第1電極と、ほぼ平坦な第2電極表面を有する第2電極とを備え、前記第2電極は、使用中に前記第1方向に沿った前記電極アセンブリを通過するイオンの透過をサポートするよう、前記第1電極表面と前記第2電極表面との間にほぼ均一の厚さの空間を構成するよう、前記第1電極と離間し、前記第1電極に対向する関係に配置されており、前記スペクトロメータは、前記第1電極表面と前記第2電極表面との間の前記空間にイオンを選択的に透過させ、前記透過されたイオンを前記少なくとも2つの合焦電極のうちの1つから前記空間の中心部分に向けさせる電界条件を、前記第1電極表面と前記第2電極表面との間の前記空間内に発生させる電気信号を前記少なくとも2つの合焦電極のうちの各1つで受信するための、前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも1つに設けられた電気コンタクトを更に含む、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAIMS)が提供される。
【0011】
本発明の特徴によれば、第1方向に沿って幅が減少する、平坦な第1電極表面と平坦な第2電極表面との間の空間内に導入される、複数の異なるイオン種を含むイオンを、第1方向に沿って提供するステップと、前記複数のイオン種から1つのイオン種を分離するよう、非対称波形の電圧と直流補償電圧の所定の組み合わせを、前記平坦な第1電極表面と前記平坦な第2電極表面との間に印加するステップと、前記空間の中心部分に前記1つのイオン種を向けるよう、直流電圧を少なくとも2つの横方向の合焦電極の間に印加するステップと、前記1つのイオン種の向きを定めるステップとを備える、イオンを分離するための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係わるFAIMS装置のための電極構造を示す簡略化された斜視図である。
【図2】図1の電極構造体を通過するイオンおよびガスの流れを示す電極構造体の簡略化された平面図である。
【図3】図1の電極構造体の長手方向に沿った異なる位置における直流電圧プロフィルを示す。
【図4】本発明の一実施形態に係わるFAIMS装置のための電極構造体を示す簡略化された斜視図である。
【図5】図4の電極構造体の簡略化された平面図である。
【図6】図4の電極構造体の長手方向に沿った異なる位置における直流電圧プロフィルを示す。
【図7A】本発明の一実施形態に係わる電極構造体のイオン入口端およびイオン出口端の第1コンフィギュレーションを側横断面図で示す。
【図7B】本発明の一実施形態に係わる電極構造体のイオン入口端およびイオン出口端の第2コンフィギュレーションを側横断面図で示す。
【図8A】合焦電極の対向する表面の間の空間内に配置されたオプションの電気的絶縁材料の限界を仮想図で示す、図1の電極構造体の平面図である。
【図8B】合焦電極の対向する表面の間の空間内に配置されたオプションの電気的絶縁材料を示す、図1の電極構造体のイオン出口端の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、図中、同様な参照番号は同様な部品を示す。
【0014】
次の説明は、当業者が本発明を製造し、使用できるように記載したものであり、特定の用途およびその条件に関連して記載したものである。当業者には、開示した実施形態の種々の変形例が容易に明らかとなろう。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態および応用例に関して本願に記載した一般的な原理を適用することができる。従って、本発明は、開示した実施形態だけに限定されるものでなく、本願に開示した原理および特徴に合致する最も広い範囲に解すべきである。
【0015】
図1は、本発明の一実施例に係わるFAIMS装置のための電極構造を示す簡略化された斜視図である。全体が番号100で示されたこの電極構造体は、第1電極102と第2電極104とを備えた中心電極アセンブリを含む。第1電極102と第2電極104とは離間しており、第1電極102の内側に向いた平坦な第1電極の表面と第2電極104の内側に向いた平坦な第2電極表面との間にほぼ均一な厚さを有する空間120を構成している。この空間は、使用中にイオン入口端(イオン入力)とイオン出口端(イオン出力)との間でのイオンの透過をサポートするものである。簡潔にするために、図1ではFAIMS装置の従来の他の要素、例えばイオンソース、カーテンガス電極アセンブリ、イオン入口およびイオン出口オリフィス、電気コントローラ、キャリアガス供給システム、検出システムなどが省略されている。
【0016】
第1電極102および第2電極104の各々は、2つの非平行のエッジを有し、これらエッジは、両者の間にそれぞれの電極の長手方向に沿って狭くなる幅(w)を構成している。例えば第1電極102を検討すると、この幅はイオン入口端における最大値w1から、第1電極102の長さに沿った途中の中間値w2を経て、イオン出口端における最小値w3まで狭くなっている。この非限定的な例では、第1電極102および第2電極104の各1つは、等脚台形の形状をしているので、その幅はイオン入口端とイオン出口端の間で連続的に狭くなっている。オプションとして、その幅は不連続状またはステップ状に狭くなってもよいし、更にオプションとしてこの幅は、イオン入口端とイオン出口端との間で一定でないレートで狭くなってもよい。
【0017】
依然として図1を参照する。第1電極102の非平行エッジのうちの1つに第1合焦電極106が隣接しており、第1電極102の非平行エッジのうちの他方の1つに第2合焦電極108が隣接している。同様に、第2電極104の非平行エッジのうちの1つに第3合焦電極110が隣接しており、第2電極104の非平行エッジのうちの他方の1つに第4合焦電極112が隣接している。第1合焦電極106および第2合焦電極108は、両者の間に配置された電気的に絶縁性のスペーサ材料114、例えばPEEK(商標)により、第1電極102から電気的にアイソレートされている。同様に、第3合焦電極110および第4合焦電極112も、両者の間に配置された電気的に絶縁性のスペーサ材料114、例えばPEEK(商標)により、第2電極104から電気的にアイソレートされている。オプションとして、スペーサ材料を省略し、オープンギャップにより電極を互いに分離してもよい。
【0018】
電極102〜112は、図示されていない電気的に絶縁性の材料、例えばPEEK(商標)内に埋め込まれており、電極間の空間を通るキャリアガスの流れを生じさせるために、入口および出口を含むハウジング内に電極構造体全体が支持されている。図示されていない電気コントローラに結合し、このコントローラからの種々の電気信号を受信するために、電極102〜112の少なくとも一部に電気コンタクトが設けられている。オプションとして、電極102〜112の間のガスの温度に制御可能に影響を与え、および/または使用中に電極間102〜112の間でガス内に温度勾配を生じさせるために、温度コントローラを設けてもよい。
【0019】
図示されていない電気コントローラを使用して、平坦なプレート電極102および104に適当な電圧を印加することにより、FAIMSの原理に従い、イオンを分離するための電界条件を空間120内に設定する。FAIMSは、大気圧よりも高い値から、ミリトールレンジまでのワイドレンジの圧力値にわたって作動できることに注目すべきである。FAIMSでは、印加される電界強度に応じて、高電界移動度定数KHの化合物に依存した挙動に基づき、イオンが分離される。電界強度は、実際には、E/N(ここでEは、ボルト/cmを単位とする電界であり、Nは、極間ガスの分子密度である)であると理解すべきである。明らかに、より低いガス圧の条件では、低い電圧を印加することが適当であるが、同じE/Nの値に達する各ケースでは、より高いガス圧ではより高い電圧が必要となる。FAIMSデバイスにおけるイオンの挙動は、「電界強度が変化する条件」と簡略化されることが多い、変化するE/Nの条件下におけるイオンの移動度の変化に基づくものである。図1内のイオン移動方向に沿って電界の勾配が設定されることはないので、イオン入口端とイオン出口端との間でイオンをトランスポートするのにキャリアガス流が使用される。これとは異なり、イオン入口端とイオン出口端の間のイオン移動方向に沿って、イオンを加速するための電界を形成するよう、異なるセグメントに異なる電圧を印加することをサポートするよう、電極構造体の長さに沿って電極102〜112の少なくとも一部をセグメント化してもよい。当然ながら、ミリトール圧力値までFAIMSを作動させるには、セグメント化された電極を使用することが必要である。その理由は、空間120を通してイオンをトランスポートするには、キャリアガス圧は不充分であるからである。
【0020】
平坦プレートの電極102と104との間には、非対称波形が印加されるので、図1に示されたデバイス内でのイオン分離分解能は極めて高い。第1〜第4合焦電極106〜112に印加される追加電圧は、イオンが幅方向に沿って広がり、かつデバイスから失われるのを防止するので、図1に示された電極構造体を使用して達成できるイオン透過効率は、合焦電極を用いない平坦プレートのFAIMSの透過効率よりも高くなっている。以下、より詳細に説明するように、第1〜第4合焦電極106〜112のうちの対向する電極間には、高いDC電圧が印加される結果、第1合焦電極106と第3合焦電極110との間の第2空間内、および第2電極108と第4電極112との間の第3空間内に、横方向の合焦電界が生じる。
【0021】
次に、図2を参照する。図1の電極構造の簡略化された平面図が示されている。図2に示された特定の非限定的な例では、電気コンタクトを介し、第1電極102に分散電圧(DV)と補償電圧(CV)との所定の組み合わせが印加され、第1合焦電極106および第2合焦電極108の各々の上の電気コンタクトを介して、高DC電圧が印加される。これら電極上の電気コンタクトは、無線周波数の非対称波形電源および直流電源を含む図示されていない1つ以上の電気コントローラに結合されている。
【0022】
第1電極102と第2電極104との間の空間120のうちのイオン入口端内に、イオンおよびガスが導入される。第1電極102と第2電極104とを含む中心電極アセンブリの長手方向に沿ってイオンが搬送されるにつれ、イオンは空間120の中心部分に向かって横方向に向けられるので、イオンは比較的細いバンドのイオンとして空間のイオン出口端から出る。対向する電極の種々のペアの間では、キャリアガスの流れに対するバリアはないので、ガスは実質的に電極構造体の幅を横断するよう、イオン入口端とイオン出口端との間の経路に沿って流れる。
【0023】
上記横方向の合焦効果の1つの結果として、イオンはイオン入口端にて空間120の比較的広い部分内に進入し、イオン密度、従ってイオン間の反撥力が最大値となるときに、イオンがある程度広がることを可能にする。イオンが空間120を通過するように移動するにつれ、イオンの一部は電極表面のうちの1つと衝突する問題を生じ、一部が失われる。イオン入口端とイオン出口端との間ではイオンの数が減少する空間120の中心部分に向かうイオンの合焦が増加する際に、イオン密度は許容できない値まで増加することはない。
【0024】
図3は、図1の電極構造の長手方向に沿った異なる位置におけるDC電圧プロフィルを示す。イオン入口端とイオン出口端の間の、電極構造長手方向に沿って延びる3本の点線A、BおよびCは、参考のために描かれたものであり、DC電圧プロフィル図内の電極位置A、BおよびCに対応する。イオン入口端の近く(図3の頂部)では、電極構造のエッジに向かう高DC電圧しか存在しないので、イオンは空間120内に導入された直後は比較的大きい容積の空間を占める。DC電圧図はイオンがイオン出口端に接近するにつれ、高DC電圧の結果、イオンが占める空間が徐々に小さくなることを示している。従って、高DC電圧は、イオンが電極構造を通過して点線Bの近くの空間120の中心部分に向かって流れるように、イオンの向きを定める。
【0025】
次に図4を参照すると、ここには本発明の一実施形態に係わるFAMES装置のための電極構造の簡略化された斜視図が示されている。全体が番号400で示されたこの電極構造体は、第1電極402と第2電極404とを備えた中心電極アセンブリを含む。第1電極402と第2電極404とは離間しており、第1電極402の内側に向いた平坦な第1電極の表面と第2電極404の内側に向いた平坦な第2電極表面との間にほぼ均一な厚さを有する空間420を構成している。この空間は、使用中にイオン入口端(イオン入力)とイオン出口端(イオン出力)との間でのイオンの透過をサポートするものである。簡潔にするために、図4ではFAIMS装置の従来の他の要素、例えばイオンソース、カーテンガス電極アセンブリ、イオン入口およびイオン出口オリフィス、電気コントローラ、キャリアガス供給システム、検出システムなどが省略されている。
【0026】
第1電極402および第2電極404の各々は、2つの非平行エッジを有し、これらエッジは両者の間にそれぞれの電極の長さに沿って狭くなる幅(w)を構成している。例えば第1電極402を検討すると、この幅はイオン入口端における最大値w1から、第1電極402の長さに沿った途中の中間値w2を経て、イオン出口端における最小値w3まで狭くなっている。この非限定的な例では、第1電極402および第2電極404の各1つは、等脚台形の形状をしているので、その幅はイオン入口端とイオン出口端の間で連続状に狭くなっている。オプションとして、その幅は不連続状またはステップ状に狭くなってもよい。更にオプションとしてこの幅は、イオン入口端とイオン出口端との間で一定でない率で狭くなってもよい。
【0027】
引き続き図4を参照する。第1合焦電極406の平坦な第3電極表面が、空間420に向き、これに隣接した状態で第1合焦電極406が配置されており、電極406は第1電極402および第2電極404の各々の非平行エッジのうちの1つからほぼ一定の距離に離間している。第2合焦電極408の平坦な第4電極表面が、空間420に向き、これに隣接した状態で第2合焦電極408が配置されており、この電極408は、第1電極402および第2電極404の各々の非平行エッジのうちの他方からほぼ一定の距離に離間している。第1合焦電極406と第2合焦電極408とは、第3電極の表面と第4電極の表面とが互いに向き合い、かつ互いに離間するように配置されている。更に第1電極表面および第2電極表面の各1つは、第3電極表面および第4電極表面の各1つとほぼ直交している。図4では、第1合焦電極406および第2合焦電極408は、あるギャップだけ第1電極402および第2電極404から離間している。オプションとして、第1合焦電極406および第2合焦電極408は、両者の間に配置された電気的に絶縁性のスペーサ材料(図示せず)、例えばPEEK(商標)によって第1電極402および第2電極404から電気的にアイソレートされている。
【0028】
電極402〜408は、図示されていない電気的に絶縁性の材料、例えばPEEK(商標)内に埋め込まれており、電極構造全体は電極間の空間を通るキャリアガスの流れを生じさせるために、入口および出口を含むハウジング内に電極構造体全体が支持されている。図示されていない電気コントローラに結合し、このコントローラからの種々の電気信号を受信するために、電極402〜408の少なくとも一部に電気コンタクトが設けられている。オプションとして、電極402〜408の間のガスの温度に制御可能に影響を与え、および/または使用中に電極間402〜408の間でガス内に温度勾配を生じさせるために、温度コントローラを設けてもよい。
【0029】
図示されていない電気コントローラを使用して、平坦なプレート電極402および404に適当な電圧を印加することにより、FAIMSの原理に従い、イオンを分離するための電界条件を空間420内に設定する。FAIMSは、大気圧よりも高い値から、ミリトールレンジまでのワイドレンジの圧力値にわたって作動できることに注目すべきである。FAIMSでは、印加される電界強度に応じて、高電界移動度定数KHの化合物に依存した挙動に基づき、イオンが分離される。電界強度は実際には、E/N(ここでEはボルト/cmを単位とする電界であり、Nは、極間ガスの分子密度である)であると理解すべきである。明らかに、より低いガス圧の条件では、低い電圧を印加することが適当であるが、同じE/Nの値に達する各ケースでは、より高いガス圧ではより高い電圧が必要となる。FAIMSデバイスにおけるイオンの挙動は、「電界強度が変化する条件」と簡略化されることが多い、変化するE/Nの条件下におけるイオンの移動度の変化に基づくものである。図4内のイオン移動方向に沿って電界の勾配が設定されることはないので、イオン入口端とイオン出口端との間でイオンをトランスポートするのにキャリアガス流が使用される。これとは異なり、イオン入口端とイオン出口端の間のイオン移動方向に沿って、イオンを加速するための電界を形成するよう、異なるセグメントに異なる電圧を印加することをサポートするよう、電極構造体の長さに沿って電極402〜408の少なくとも一部をセグメント化してもよい。当然ながら、ミリトールの圧力値までFAIMSを作動させるには、セグメント化された電極を使用することが必要である。その理由は、空間120を通してイオンをトランスポートするには、キャリアガス圧は不充分であるからである。
【0030】
平坦プレートの電極402と404との間には、非対称波形が印加されるので、図4に示されたデバイス内でのイオン分離分解能は、極めて高い。第1合焦電極406および第2合焦電極408にそれぞれ印加される追加電圧は、イオンが幅に沿って広がり、かつデバイスから失われるのを防止するので、図4に示された電極構造体を使用して達成できるイオン透過効率は、合焦電極を用いない平坦プレートのFAIMSの透過効率よりも高くなっている。第1合焦電極406および第2合焦電極408の上のコンタクトを介して高DC電圧が印加される結果、横方向の合焦電界が形成され、この合焦電界は、イオンを空間420の中心部分に向ける。上記横方向の合焦効果の1つの結果として、イオンはイオン入口端にて空間420の比較的広い部分内に進入し、イオン密度、従ってイオン間の反撥力が最大値となるときに、イオンがある程度広がることを可能にする。イオンが空間420を通過するように移動するにつれ、イオンの一部は、電極表面のうちの1つと衝突する問題を生じ、一部が失われる。イオン入口端とイオン出口端との間ではイオンの数が減少する空間420の中心部分に向かうイオンの合焦が増加する際に、イオン密度が許容できない値まで増加することはない。
【0031】
次に、図5を参照する。ここには図4の電極構造の簡略化された平面図が示されている。図5に示された特定の非限定的な例では、電気コンタクトを介し、第1電極402に分散電圧(DV)と補償電圧(CV)との所定の組み合わせが印加され、第1合焦電極406および第2合焦電極408の各々の上の電気コンタクトを介して、高DC電圧が印加される。これら電極上の電気コンタクトは、無線周波数の非対称波形電源および直流電源を含む図示されていない1つ以上の電気コントローラに結合されている。
【0032】
第1電極402と第2電極404との間の空間420のうちのイオン入口端内に、イオンおよびガスが導入される。第1電極402と第2電極404を含む中心電極アセンブリの長手方向に沿ってイオンが搬送されるにつれ、イオンは空間420の中心部分に向かって横方向に向けられるので、イオンは比較的細いバンドのイオンとして空間のイオン出口端から出る。更に、第1合焦電極406と第2合焦電極408は、空間内のガス流に対する物理的バリアも形成し、ガスをイオン入口端に向かう方向に空間420の中心部分に向かって内側にジョウゴ状にする。しかしながら、電気絶縁材料が電極402と404と406と408を分離しないとき、ガスの一部は種々の電極の間のギャップを介して、空間420から流出し得る。オプションとして、電極402、404、406および408の少なくとも一部を改造して、スロットまたは他の開口部を設けるか、または電極を多孔質にすることにより、イオンではなくガスがFAMESセルの長手方向に沿ってFAMESセルの内側領域からポンプアウトできるようにしてもよい。例えば電極406および408の長手方向の少なくとも一部に沿ってスロットまたは他の開口部を設け、オプションとしてスロットまたは他の開口部を囲む電極材料がメッシュまたは他のガス透過性構造体をサポートし、この構造体を導電性として、電極406および408内にスロットまたは他の開口部が存在する結果生じる電界の乱れを最小にしてもよい。当然ながら、特定のトランスポート条件に対してスロットまたは開口部の幅、長さおよび/または形状を最適にすることができるが、温度が重要なファクターである。
【0033】
図6は、図4の電極構造の長手方向に沿った異なる位置におけるDC電圧プロフィルを示す。イオン入口端とイオン出口端の間の、電極構造長手方向に沿って延びる3本の点線A、BおよびCは、参考のために描かれたものであり、DC電圧プロフィル図内の電極位置A、BおよびCに対応する。イオン入口端の近く(図6の頂部)では、電極構造のエッジに向かう高DC電圧しか存在しないので、イオンは空間420内に導入された直後は比較的大きい容積の空間を占める。DC電圧図は、イオンがイオン出口端に接近するにつれ、高DC電圧の結果、イオンが占める空間が徐々に小さくなることを示している。従って、高DC電圧は、イオンが電極構造を通過して点線Bの近くの空間420の中心部分に向かって流れるように、イオンの向きを定める。
【0034】
図7Aは、本発明の一実施形態に係わる電極構造体のイオン入口端およびイオン出口端の第1構造を側横断面図で示す。特定の非限定的な例により、イオン化ソース、例えばエレクトロスプレーイオン化(ESI)ソースでイオンが発生され、これらイオンは、オリフィスを介して第1電極102と第2電極104との間の空間120内に導入される。特にイオンは第1電極と第2電極の対向する表面に平行な方向に沿って導入される。一部のイオンは、空間120を通ってイオン出口端まで進み、検出および別の分析のうちの1つのために別のオリフィスを通って抽出される。
【0035】
図7Bは、本発明の一実施形態に係わる電極構造体のイオン入口端およびイオン出口端の第2構造を側横断面図で示す。特定の非限定的な例としてイオン化ソース700、例えばESIソースにてイオンが発生され、これらイオンはカーテンガス電極702内のオリフィスを通って導入され、この場合、キャリアガス704の流れがイオンの解離を補助し、更に解離したイオンを第1電極102と第2電極104との間の空間120に搬送するのを助ける。一部のイオンは、空間120を通ってイオン出口端まで進み、検出および別の分析のうちの1つのために、別のオリフィスを通って抽出される。
【0036】
当然ながら、図4に示された電極構造のイオン入口端およびイオン出口端は、オプションとして図7Aまたは図7Bのように構成できる。更にオプションとして、別の適当なイオン入口端構造および/または別の適当なイオン出口端構造も使用できる。
【0037】
図1に示された特定の非限定的例では、空間120と第2空間と第3空間は、協働して、対向する電極102〜112の種々のペアの間に連続的な空間を構成することに注目することが重要である。ガスは、電極構造体の全幅にわたり、イオン入口端とイオン出口端との間の連続的空間を通って、阻害されることなく流れる。次に図8Aおよび8Bを参照する。ここには図1の電極構造のオプションの変形例が示されている。特に図8Aは、合焦電極の対向する表面の間の空間内に配置されたオプションの、電気的に絶縁性の材料800の限界(点線)を示す図1の電極構造の平面図である。絶縁材料の間の分離距離は、イオン入口端とイオン出口端との間で短くなっているので、電極アセンブリを通過するガスの流れは、電極102と第2電極104(図8Aには示されず)との間の空間の中心部分に向かって一般的に内側に向けられる。図8Bも参照すると、ここには図1の電極構造のイオン出口端の端面図が示されており、この図では、合焦電極の対向する表面の間の空間内に電気的絶縁性材料800が配置されている。図8Bに示されるように、出口端にある空間120からガスが出る際に通過する開口部は、電極構造の全幅と比較して狭くなっている。内部にイオンを連行するガスを、空間120の中心部分に向けることによって、更に電極構造を通過するイオンの透過効率が高くなっている。
【0038】
オプションとして、図1〜8を参照して説明した合焦電極は、別の作動モード、例えばRFだけのモードもサポートする。RF専用モードでは、合焦電極の少なくとも一部に交流(AC)RF波形が印加される。構造の長手方向に沿って電極がセグメント化されているとき、電極構造のセグメント化された第1部分はオプションとしてFAMES原理に従う作動をサポートするが、電極構造の別の部分はRF専用作動モードをサポートする。
【0039】
図1〜3に示された電極構造は、合焦電極の外側エッジがほぼ平行であり、電極構造の端部が電極構造のエッジの双方に直角となっている、全体がほぼ長方形の形状となっている。当然ながら、オプションとして図4に示される構造に類似するように平行としなくてもよい。更にオプションとして、電極構造の端部を凸状部分または凹状部分を有する形状にするか、または電極構造のエッジに対して直角以外の角度にしてもよい。更に、種々の電極の全体を導電性材料から形成してもよいし、または電気的に絶縁性の材料の上にコーティングされる電極ストリップとしてもよい。電極を形成するのに、オプションとして他の適当な材料、例えば導電性ガラスを使用してもよい。更に、これら電極は、対向する側に平行な平坦表面を有する、全体が薄いプレート状の電極が示されている。当然ながらこれら電極の裏面は、平坦にしなくてもよいし、または電極の表の面に平行にしなくてもよく、これら電極は、種々の図が示す特定の実施形態の比率よりも厚くしたり、薄くしたりすることもできる。
【0040】
上記以外の多数の実施形態を考えつくこともできる。
【符号の説明】
【0041】
100 電極構造体
102 第1電極
104 第2電極
106 第1合焦電極
108 第2合焦電極
110 第3合焦電極
112 第4合焦電極
114 スペーサ材料
120 空間
400 電極構造体
402 第1電極
404 第2電極
406 第1合焦電極
408 第2合焦電極
420 空間
800 絶縁性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの非平行なエッジを有する第1電極を備え、前記2つの非平行なエッジは、前記第1電極の長手方向に沿って減少する幅を前記2つのエッジの間に構成し、前記第1電極は、前記2つのエッジによって境界が定められたほぼ平坦な第1電極表面を有し、
2つの非平行なエッジを有する第2電極を更に備え、前記2つの非平行なエッジは、第2電極の長手方向に沿って減少する幅を前記エッジの間に構成し、前記第2電極は、前記2つのエッジによって境界が定められたほぼ平坦な第2電極表面を有し、前記第2電極は、前記第1電極に離間して対向する関係に配置され、前記第1電極表面と前記第2電極表面との間にほぼ均一な厚さの空間を有する電極アセンブリを構成し、前記第1電極の前記2つのエッジと前記第2電極の前記2つのエッジは、前記電極アセンブリの2つの横方向の境界を構成し、前記電極アセンブリは、第1方向に沿って減少する分離距離を前記境界の間に有し、前記空間は、前記第1方向に沿った前記電極アセンブリを通過するイオンの透過を使用中にサポートし、
更に前記電極アセンブリの2つの横方向の境界の各々に隣接する少なくとも1つの合焦電極を含む少なくとも2つの合焦電極を備え、前記少なくとも2つの合焦電極の間の分離距離は、前記第1方向に沿って減少し、
更に、非対称の波形の電圧を受けると共に、前記第1電極と前記第2電極との間に直流補償電圧を印加し、FAMES(高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ)原理に従ってイオンを分離するための電界を前記空間内に形成するための、前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも1つに設けられた電気コンタクトと、
直流電圧を受け、前記2つの横方向の境界のうちの1つから離間し、前記空間のうちの中心部分に向かう方向にイオンを向けるための、前記少なくとも2つの合焦電極のうちの各1つの上に設けられた電気コンタクトとを備える、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAMES)。
【請求項2】
前記第1電極表面と前記第2電極表面との間の空間がイオン入口端およびイオン出口端を有し、前記2つの横方向境界の間の前記イオン入口端の幅が前記2つの横方向境界の間の前記イオン出口端の幅よりも広くなっている、請求項1に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項3】
イオン入口およびイオン出口を備え、前記イオン入口端は、前記イオン出口よりも前記イオン入口のほうの近くに配置されており、前記イオン出口端は、前記イオン入口よりも前記イオン出口のほうの近くに配置されており、前記電極アセンブリの前記2つの横方向の間の分離距離は、前記イオン入口と前記イオン出口との間で連続的に増加している、請求項2に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項4】
前記少なくとも2つの合焦電極は、前記電極アセンブリの前記2つの横方向境界に隣接して配置された第1合焦電極、および前記電極アセンブリの前記2つの横方向境界の他方の1つに隣接して配置された第2合焦電極を備え、前記第1合焦電極は、平坦な第3電極表面を有し、前記第2合焦電極は、平坦な第4電極表面を有し、前記第3電極表面は、前記第4電極表面に対向して配置され、両電極表面の間に空間が配置されている、請求項2に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項5】
前記第1電極表面および前記第2電極表面のうちの各1つは、前記第3電極表面および前記第3電極表面のうちの各1つに直交している、請求項4に記載の、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項6】
前記第1合焦電極は、複数の第1合焦電極セグメントを備え、前記第2合焦電極は、複数の第2合焦電極セグメントを備え、使用中、前記第1合焦電極セグメントおよび前記第2合焦電極セグメントの対応するペアには、異なる電圧が印加され、前記空間のうちの前記イオン入口端と前記イオン出口端との間で前記第1方向に沿って延びる電界勾配を発生する、請求項4に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項7】
前記少なくとも2つの合焦電極は、前記第1電極の前記2つの非平行エッジの対向するエッジに各1つが隣接するように配置された第1合焦電極および第2合焦電極と、前記第2電極の2つの非平行エッジの対向するエッジに各1つが隣接するように配置された第3合焦電極および第4合焦電極とを備える、請求項2に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項8】
前記第1合焦電極は、前記第1電極表面とほぼ同一平面上にある平坦な第3電極表面を有し、前記第2合焦電極は、前記第1電極表面とほぼ同一平面上にある平坦な第4電極表面を有し、前記第3合焦電極は、前記第2電極表面とほぼ同一平坦上にある平坦な第5電極表面を有し、前記第4合焦電極は、前記第2電極表面とほぼ同一平面上にある平坦な第6電極表面を有する、請求項7に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項9】
前記第3電極表面と前記第5電極表面とは、両者の間に第2空間を構成し、前記第4電極表面と前記第6電極表面とは、両者の間に第3空間を構成し、前記空間と前記第2空間と前記第3空間とは、連続する空間を協働して構成する、請求項8に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項10】
前記第1電極と前記第2電極の各々は、これら電極のそれぞれの長手方向に沿ってセグメント化されており、それぞれの長手方向の第1部分に沿ったFAIMSモードでの作動をサポートすると共に、それぞれの長手方向の第2部分に沿った無線周波数専用(RF専用)モードでの作動をサポートする、請求項2に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項11】
第1方向に沿って幅が狭くなるギャップだけ互いに分離された少なくとも2つの合焦電極と、前記少なくとも2つの合焦電極の間の前記ギャップ内に配置された電極アセンブリとを備え、前記電極アセンブリは、
等脚台形形状の周辺によって境界が定められ、ほぼ平坦となっている第1の辺を有する第1電極と、
ほぼ同じ等脚台形の周辺によって境界が定められ、ほぼ平坦となっている第2の辺を有する第2電極とを備え、前記第2電極は、前記第1電極と離間して対向する関係に配置され、ほぼ均一な厚さの空間を前記第1の辺と前記第2の辺の間に構成し、前記空間は、使用中に前記第1方向に沿った前記電極アセンブリを通過するイオンの透過をサポートし、
前記少なくとも2つの合焦電極の間の前記ギャップの減少する幅は、前記第1電極および前記第2電極の前記等脚台形の周辺にほぼ一致する、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAMES)。
【請求項12】
前記第1電極表面と前記第2電極表面との間の空間は、イオン入口端およびイオン出口端を有し、前記2つの横方向境界の間の前記イオン入口端の幅は、前記2つの横方向境界の間の前記イオン出口端の幅よりも広くなっている、請求項11に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項13】
イオン入口およびイオン出口を備え、前記イオン入口端は、前記イオン出口よりも前記イオン入口のほうにより近く配置されており、前記イオン出口端は、前記イオン入口よりも前記イオン出口のほうにより近く配置されており、前記電極アセンブリの前記2つの横方向の間の分離距離は、前記イオン入口と前記イオン出口との間で連続的に増加している、請求項12に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項14】
前記少なくとも2つの合焦電極は、前記空間の対向する側の各々に配置された第1合焦電極と、第2合焦電極とを含み、よって前記第1合焦電極上の平坦な第3電極表面は、前記第2合焦電極上の平坦な第4電極表面に対向し、この表面から離間し、前記第3電極表面および前記第4電極表面により、前記空間の横方向の境界が定められている、請求項12に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項15】
前記第1電極表面および前記第2電極表面のうちの各1つは、前記第3電極表面および前記第3電極表面のうちの各1つに直交している、請求項14に記載の、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項16】
前記第1合焦電極は、複数の第1合焦電極セグメントを備え、前記第2合焦電極は、複数の第2合焦電極セグメントを備え、使用中、前記第1合焦電極セグメントおよび前記第2合焦電極セグメントの対応するペアには、異なる電圧が印加され、前記空間のうちの前記イオン入口端と前記イオン出口端との間で前記第1方向に沿って延びる電界勾配を発生する、請求項14に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項17】
前記少なくとも2つの合焦電極は、前記第1電極の対向するエッジに各1つが隣接するように配置された第1合焦電極および第2合焦電極と、前記第2電極の対向するエッジに各1つが隣接するように配置された第3合焦電極および第4合焦電極とを備える、請求項12に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項18】
前記第1合焦電極は、前記第1電極表面とほぼ同一平面上にある平坦な第3電極表面を有し、前記第2合焦電極は、前記第1電極表面とほぼ同一平面上にある平坦な第4電極表面を有し、前記第3合焦電極は、前記第2電極表面とほぼ同一平坦上にある平坦な第5電極表面を有し、前記第4合焦電極は、前記第2電極表面とほぼ同一平面上にある平坦な第6電極表面を有する、請求項17に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項19】
前記第3電極表面と前記第5電極表面とは、両者の間に第2空間を構成し、前記第4電極表面と前記第6電極表面とは、両者の間に第3空間を構成し、前記空間と前記第2空間と前記第3空間とは、連続する空間を協働して構成する、請求項18に記載の高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項20】
第1方向に沿って幅が減少するギャップだけ、互いに離間する少なくとも2つの合焦電極と、
前記少なくとも2つの合焦電極の間の前記ギャップ内に配置された電極アセンブリとを備える高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータであって、
前記電極アセンブリは、
ほぼ平坦な第1電極表面を有する第1電極と、
ほぼ平坦な第2電極表面を有する第2電極とを備え、前記第2電極は、使用中に前記第1方向に沿った前記電極アセンブリを通過するイオンの透過をサポートするよう、前記第1電極表面と前記第2電極表面との間にほぼ均一の厚さの空間を構成するよう、前記第1電極と離間し、前記第1電極に対向する関係に配置されており、
前記スペクトロメータは、前記第1電極表面と前記第2電極表面との間の前記空間にイオンを選択的に透過させ、前記透過されたイオンを前記少なくとも2つの合焦電極のうちの1つから前記空間の中心部分に向けさせる電界条件を、前記第1電極表面と前記第2電極表面との間の前記空間内に発生させる電気信号を前記少なくとも2つの合焦電極のうちの各1つで受信するための、前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも1つに設けられた電気コンタクトを更に含む、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ(FAIMS)。
【請求項21】
ガスが前記空間から外側に流れることができるようにする開口部が、前記少なくとも2つの合焦電極のうちの少なくとも1つの内部に構成されている、請求項20に記載の、高電界非対称波形イオン移動度スペクトロメータ。
【請求項22】
第1方向に沿って幅が狭くなる、平坦な第1電極表面と平坦な第2電極表面との間の空間内に導入される、複数の異なるイオン種を含むイオンを、第1方向に沿って提供するステップと、
前記複数のイオン種から1つのイオン種を分離するよう、非対称波形の電圧と直流補償電圧の所定の組み合わせを、前記平坦な第1電極表面と前記平坦な第2電極表面との間に印加するステップと、
前記空間の中心部分に前記1つのイオン種を向けるよう、直流電圧を少なくとも2つの横方向の合焦電極の間に印加するステップと、
前記1つのイオン種の向きを定めるステップとを備える、イオンを分離するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2012−512506(P2012−512506A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540907(P2011−540907)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067571
【国際公開番号】WO2010/068808
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】