説明

横方向下部構造部材と技術的フロントパネルの取付け方法

本発明は、少なくとも1つの横方向の車体下部構造部材(12)と、横方向に対向配置された2つのレール(20)、及び横方向に対向配置された2つの部品(22)、特に自動車ヘッドライトを保持するための枢着部材を有するフレーム構造部材(18)の縦方向端部(16)に取付けられる技術的フロントパネル(14)とを、自動車(10)に取付けるための方法に関し、この方法は、フレーム構造部材(18)の横方向で対向する部品(22)上の垂直位置に、技術的フロントパネルを配置する少なくとも1つのステップと、上記部品(22)上で技術的フロントパネル(14)を横方向に位置決めするステップとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの横方向車体下部構造要素と、自動車のボディシェル構造要素の縦方向端部に取付けられる技術的フロントパネルとを、自動車に取付けるための方法に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、横方向に対向配置された2つのレールと、横方向に対向配置されたボディシェル構造要素の2つの部品とを有するボディシェル構造要素の縦方向端部に取付けられる技術的フロントパネルと、少なくとも1つの横方向の車体下部構造要素とを、自動車に取付けるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の取付け方法には多数の実施例が既知である。
【0004】
このような方法を用いた既知の実施方式では、車体下部構造要素が直方向上向きに取付けられる。
【0005】
例えば、自動車のレールから垂直方向に吊り下げられた要素又はティアドロップ型マウントの下方に、垂直方向上向きにクロスメンバを取付けることが公知である。
【0006】
同時に、自動車の車体下部構造要素上に載る技術的フロントパネルを取付けることができる。
【0007】
従って、特許文献1は、クロスメンバとこのクロスメンバに載る技術的フロントパネルとからなる組み立て体を垂直方向上向きに取付ける方法を開示している。
【0008】
場合によっては、技術的フロントパネルの横方向寸法により、垂直方向に直接取付けることが不可能である。これは例えば、技術的フロントパネルの横方向寸法がティアドロップ型マウントの横方向寸法より大きい場合である。
【0009】
このような状況では、車体下部構造要素を形成するクロスメンバ上に技術的フロントパネルを位置決めし、技術的フロントパネルを前方へ少しだけ傾けてから、ティアドロップ型マウントの下方にクロスメンバを取付け、次いで技術的フロントパネルをティアドロップ型マウントの前部に滑り込ませたら、最後に、ボディシェル構造要素に取付ける前に、ボディシェル構造要素の縦方向端部に対して技術的フロント面を整列させる。
【0010】
このような場合、技術的フロントパネルの最終位置は、車体下部構造要素上における事前の位置決めによって決定される。
【0011】
現代では、多くの自動車の技術的フロントパネルは、車体要素、特にフロントバンパ又はフェンダのための多数の取付け個所を有する。
【0012】
これらの取付け個所の最終位置決めは、自動車の最終的な美的外観にとって重要である。特に、バンパ又はフェンダは、ボンネット、フェンダ又はヘッドランプのようなボディ構造要素を支持し、且つバンパ又はフェンダが完璧に装着されなければならない自動車ボディシェル構造要素に対してきわめて正確に装着しなければならない。
【0013】
現在、車体下部構造要素のための位置クリアランスはきわめて不正確である。というのは、この要素が取付けられるティアドロップ型マウント自体が、自動車のボディシェル構造要素に対して過大なクリアランスでもって装着され、異なる座標系を使用しているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2838094号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、最小の位置決め公差を保証するために、技術的フロントパネルが、自動車のボディシェル構造要素に対して直接位置決め可能であることが望まれると同時に、製造ラインで大量組み立てするのに非常に適した、垂直方向上向きに行われる上記の取付け方法を維持することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するために、本発明は、ボディシェル構造要素に対する技術的フロントパネルの少なくとも2つの位置決めステップ、具体的には、技術的フロントパネルの垂直方向位置決めステップと、技術的フロントパネルの横方向の位置決めステップとを有する上記の方法を提案する。
【0017】
この目的を達成するために、本発明は、上記種類の方法であって、少なくとも、
・横方向軸を中心に技術的フロントパネルを旋回させることができ、且つ前記技術的フロントパネルを垂直方向に直線運動させることができる連結手段を介して、前記技術的フロントパネルを横方向車体下部構造要素上で位置決めする第1ステップと、
・横方向軸を有する連結手段を中心として前方へ、技術的フロントパネルを旋回させる第2ステップと、
・車体下部構造要素と傾斜した位置にある技術的フロントパネルとを、自動車のところまで上方へ移動させる第3ステップと、
・少なくとも、技術的フロントパネルの上側エッジによって支持された第1手段が、ボディシェル構造要素の、横方向に対向配置された部品の少なくとも1つによって支持された相補的な第2手段に接するように、技術的フロントパネルを旋回させる第4ステップと、
・技術的フロントパネルを自動車上で後方に押すことによって、第1手段が第2手段上に乗り上げ、技術的フロントパネルが横方向の車体下部構造要素から持ち上げられる第5ステップと
を含むことを特徴とする方法を提案する。
【0018】
本方法は、技術的フロントパネルの上側エッジの側部の一方によって支持された縦方向フィンガを、ボディシェル構造要素の対向配置された部品の一方によって支持された相補的な第3手段に対して再整列させることにより、技術的フロントパネルを横方向に再センタリングする第6ステップをさらに含む。
【0019】
本発明は更に、上記方法を実行するための自動車に関する。
【0020】
本発明の他の特徴によれば、
−技術的フロントパネルが、特に自動車冷却要素を支持する中央部分と、この中央部分の両垂直エッジに固定された対向する側方部分と、上側エッジを有する上側クロスメンバとを備え、
−技術的フロントパネルのクロスメンバの上側エッジがその各端部に、案内要素又は「喉部」を有する第1手段を備え、この案内要素又は「喉部」が、後ろから前へ上向きに傾斜する面であって、ボディシェル構造要素の対向配置された部品の各々によって支持された第2手段を形成する対応する平面に沿って乗り上げる少なくとも1つの面を有し、
−技術的フロントパネルのクロスメンバの上側エッジの第1手段が、案内要素の前方に、ボディシェル構造要素の各部品によって支持された対応する平面に載る平面を有し、
−ボディシェル構造要素の部品の1つが、技術的フロントパネルのクロスメンバの上側エッジの側部によって支持されたフィンガと協働する基準要素、特にフィンガを受け入れる穿孔部か、又は横方向に接してフィンガの停止部となる平面を有する。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、後述の詳細な説明によって明らかになるであろう。この詳細な記載を理解するために、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による方法の最初のステップを示す概略縦断面図である。
【図2】本発明による方法の第2のステップを示す概略縦断面図である。
【図3】本発明による方法の第3のステップを示す概略縦断面図である。
【図4】本発明による方法の第4のステップを示す概略縦断面図である。
【図5】本発明による方法の第5のステップを示す概略縦断面図である。
【図6】本発明による方法の第4ステップを示す概略上面図である。
【図7】本発明による方法の第5のステップを示す概略上面図である。
【図8】本発明による方法の第6のステップを示す概略上面図である。
【図9】技術的フロントパネルの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
後続の記載では、同一の参照番号は同一の要素又は類似の機能を有する要素を示している。
【0024】
図1〜8は本発明による方法の種々のステップを示す。方法は、三面座標系「T」、「L」、「V」の方向を基準として説明される。「T」は横方向を、「L」は縦方向を、「V」は垂直方向をそれぞれ示す。
【0025】
公知のように、このような方法は、少なくとも1つの横方向の車体下部構造要素12、例えば下部クロスメンバと、ボディシェル構造要素18の一方の縦方向端部16に取付けられる技術的フロントパネル14とを、自動車10に取付けることを可能にする。
【0026】
公知のように、ボディシェル構造要素18は、横方向に対向配置された少なくとも2つのレール20と、ボディシェル構造要素18の、横方向に対向配置された2つの部品22、具体的には自動車のヘッドランプ(図示せず)を支持するための装着具セットとを備えている。各レール20は、各レールから垂直方向に懸吊されるティアドロップ型マウント24を支持しており、ティアドロップ型マウントの下端26は、取付けられた後の車体下部構造要素12を支持する。
【0027】
図1〜8、及びさらに詳細に図9に示すように、技術的フロントパネル14は中央部分28を備え、この中央部分は具体的には、例えばラジエータ30と電気式冷却ファンユニット32のような自動車冷却要素を支持する。中央部分28には、中央部分の両側の垂直エッジ36に固定される向かい合う側方部分34と、上側クロスメンバ38とが連結される。
【0028】
本発明によれば、本発明による方法は図1に示す第1ステップを有する。このステップでは、技術的フロントパネルが、連結手段40を介して横方向の車体下部構造要素12上に位置決めされる。連結手段40は、技術的フロントパネルが横方向軸「T」を中心に旋回することを可能にし、よって、本明細書で後述するように、技術的フロントパネル14を垂直方向に直線運動させることができる。
【0029】
連結手段40は例えば、技術的フロントパネルの下側エッジ42によって支持された少なくとも1つのタブによってきわめて簡単に構成可能である。このタブは、車体下部構造要素12の上面44によって支持されたエラストマー材料からなるパッドに収容される。
【0030】
技術的フロントパネル14全体と車体下部構造要素12との組み立て体は、台車46によって組み立てライン上に取付けられるとき、自動車10の下方に搬入可能である。この台車は自動車の他の部品、例えばエンジン48を運ぶ。
【0031】
図2に示すように、本方法の第2ステップでは、横方向軸を有する連結手段40を中心として技術的フロントパネル14を前方へ旋回させる。このような構造により、技術的フロントパネル14と車体下部構造要素12からなる組み立て体を後で上昇させるとき、ティアドロップ型マウント24の横方向寸法より大きな横方向寸法を有する技術的フロントパネル14の部分がティアドロップ型マウントに接触することを防止することができる。
【0032】
次に、図3に示す第3ステップでは、車体下部構造要素12と傾斜した位置にある技術的フロントパネル14とを自動車10のところまで「V」方向に上方へ移動させることにより、要素12の上面44をティアドロップ型マウント26の下端に接触させる。
【0033】
図4に示す第4ステップでは、「T」方向の回りで「L」方向へ技術的フロントパネル14を旋回させ、技術的フロントパネル14の上側エッジ52によって支持された少なくとも第1手段50を、ボディシェル構造要素の、横方向に対向配置された部品22の少なくとも1つによって支持された相補的な第2手段54に接触させる。
【0034】
具体的には、図6〜8に示すように、技術的フロントパネル14のクロスメンバ38の上側エッジ52は各端部56に第1手段50を備えており、この第1手段の案内要素58又は「喉部」は、後ろから前へ上向き傾斜した少なくとも1つの面を有する。この面は、ボディシェル構造要素の対向配置された各部品22によって支持される第2手段を形成する対応する平面54に乗り上げる。
【0035】
有利には、図6〜8に示すように、技術的フロントパネル14のクロスメンバ38の上側エッジ52の第1手段50は、案内要素58の前方に、ボディシェル構造要素22の各部品によって支持された対応する平面54に載る平面60を有する。
【0036】
具体的には、第5ステップの間に、技術的フロントパネル14が自動車10上で後方へ押されることによって、第1手段50が第2手段54上に乗り上げ、横方向の車体下部構造要素から技術的フロントパネル14が持ち上がる。このような構造により、技術的フロントパネル14はボディシェル構造要素の対向配置された部品22に載ることができると同時に、車体下部構造要素12による支持から解放される。このステップでは、案内要素58は、ボディシェル構造要素の部品22の対応する部分の平面54と交差し、次いでこの平面54に載る第1手段50の平面60と交差する。
【0037】
従って、本発明は、技術的フロントパネル14の垂直位置を、車体下部構造要素12に対してではなく、ボディシェル構造要素の部品22に対して決定することができ、それによって技術的フロントパネルに取付けられるバンパ又はフェンダを、ボディシェル構造要素18に対してはるかに正確に位置決めすることができるという点で特に有利である。
【0038】
本発明による方法の別の特に革新的な特徴は、技術的フロントパネル14を横方向に位置決めすることができることである。
【0039】
図7に示すように、第5ステップの間に、「L」方向への技術的フロントパネルの前進運動は、縦方向フィンガ62の前進運動を生じる。この縦方向フィンガは、技術的フロントパネル14の上側エッジの一方の側部によって支持されている。
【0040】
従って、図8に示すように、本発明による方法はさらに第6ステップを有し、この第6ステップでは、ボディシェル構造要素の対向配置された部品22の一方によって支持された相補的な第3手段64に対して縦方向フィンガを再整列させることにより、技術的フロントパネル14を横方向に再センタリングする。
【0041】
相補的な手段64は例えば、技術的フロントパネル14のクロスメンバ38の上側エッジ52の側部によって支持されたフィンガ62と協働する基準要素、特にフィンガ62を受け入れる穿孔部、又は図示のように横方向においてフィンガ62に接して停止部となる平らな垂直面64である。
【0042】
このとき、再整列は、「T」方向に技術的フロントパネル14を横方向に押すことによって行われ、この場合、技術的フロントパネルは、従来技術によるいずれかの既知の手段により、特にねじ又はボルトを用いて、確実に固定することができる。
【0043】
従って、本発明は、自動車のボディシェル構造要素18上で、技術的フロントパネル14を、垂直方向と横方向の両方に正確に位置決めすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの横方向の車体下部構造要素(12)と、横方向に対向配置された2つのレール(20)及び横方向に対向配置された2つの部品(22)を有するボディシェル構造要素(18)の縦方向端部(16)に取付けられる技術的フロントパネル(14)とを、自動車(10)に取付けるための方法であって、少なくとも
−横方向の軸(T)を中心に前記技術的フロントパネル(14)を旋回させることができ、且つ前記技術的フロントパネル(14)を垂直方向に直線運動させることができる連結手段(40)を介して、技術的フロントパネル(14)を横方向の車体下部構造要素(12)上で位置決めする第1ステップと、
−横方向軸を有する連結手段(40)を中心として前方へ、技術的フロントパネル(14)を旋回させる第2ステップと、
−車体下部構造要素(12)と、傾斜した位置にある技術的フロントパネル(14)とを、自動車(10)のところまで上方へ移動させる第3ステップと、
−少なくとも、技術的フロントパネル(14)の上側エッジ(52)によって支持された第1手段(50)が、ボディシェル構造要素(18)の、横方向に対向配置された部品(22)の少なくとも一方によって支持された相補的な第2手段(54)に接するように、技術的フロントパネル(14)を旋回させる第4ステップと、
−技術的フロントパネル(14)を自動車(10)上で後方に押すことによって、第1手段(50)が第2手段(54)上に乗り上げ、技術的フロントパネル(14)が横方向の車体下部構造要素(12)から持ち上がる第5ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
技術的フロントパネル(14)の上側エッジ(52)の側部(56)の一方によって支持された縦方向フィンガ(62)を、ボディシェル構造要素(18)の対向配置された部品(22)の一方によって支持された相補的な第3手段(64)に対して再整列させることにより、技術的フロントパネル(14)を横方向に再センタリングする第6ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の取付け方法。
【請求項3】
少なくとも1つのボディシェル構造要素(12)を具備し、このボディシェル構造要素の一方の縦方向端部(16)が、横方向に対向配置された2つのレール(20)と、横方向の車体下部構造要素(12)上で横方向軸(T)を中心として旋回する技術的フロントパネル(14)を受ける横方向に対向配置された2つの部品(22)とを備えている、請求項1又は2に記載の方法を実施するための自動車(10)であって、技術的フロントパネル(14)が、特に自動車冷却要素(30,32)を支持する中央部分(28)と、この中央部分(28)の垂直エッジ(36)に固定される向かい合う側方部分(34)と、上側エッジ(52)を有する上側クロスメンバ(38)とを備えていることを特徴とする自動車(10)。
【請求項4】
技術的フロントパネル(14)のクロスメンバ(38)の上側エッジ(52)の各端部が、案内要素(58)又は「喉部」を有する第1手段(50)を備え、この案内要素又は「喉部」が、後ろから前へ上向きに傾斜する面であって、且つボディシェル構造要素(18)の対向配置された部品(22)の各々によって支持された第2手段を形成する対応する平面(54)に沿って乗り上げる少なくとも1つの面を含むことを特徴とする、請求項3記載の自動車(10)。
【請求項5】
技術的フロントパネル(14)のクロスメンバ(38)の上側エッジ(52)の第1手段(50)が、案内要素(58)の前方に、ボディシェル構造要素(18)の部品(22)の各々によって支持された対応する平面(54)に載る平面(60)を有することを特徴とする、請求項4に記載の自動車(10)。
【請求項6】
ボディシェル構造要素の部品(22)の一方が、技術的フロントパネル(14)のクロスメンバ(38)の上側エッジの一方の側部(56)によって支持されたフィンガ(62)と協働する基準要素、特にフィンガを受け入れる穿孔部、又は横方向にフィンガ(62)に接して停止部となる平面(60)を有することを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の自動車(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−523390(P2010−523390A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501559(P2010−501559)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050496
【国際公開番号】WO2008/139071
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】