説明

横滑り量測定台の制御装置、ホイールアライメント検査通知装置、及び車両検査ライン装置

【課題】法定車両検査に用いられる横滑り量測定台を使用して、車両のホイールアライメントを簡易に検査し、車両の所有者に検査結果を通知する。
【解決手段】車両検査ラインに設けられ、被検査車両の進行方向と垂直な方向に移動する検査片を備え、前記検査片の移動量に基づき前記被検査車両の車輪の横滑り量を測定する横滑り量測定台と、横滑り量測定台に接続された制御装置と、制御装置に接続され、横滑り量測定台による測定結果を出力する出力手段と、を備えている。制御装置は、横滑り量測定台が検査した被検査車両から最初に得られた第1横滑り量の値を前輪の横滑り量の値とし、次に得られた第2横滑り量の値を後輪の横滑り量の値とする設定部と、設定部が設定した前輪の横滑り量の値と後輪の横滑り量を出力装置に送出する第2送出部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横滑り量測定台に設けられ、車両のホイールアライメントを簡易に検査する横滑り量測定台の制御装置、及び横滑り量測定台を用いて、車両のホイールアライメントの簡易な検査を行い、検査結果を通知するホイールアライメント検査通知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、車両の使用者に、車両についての定期的な検査が義務付けられている。法定の車両検査(以下、「法定検査」とする。)には、光軸や灯火類などの検査、制動装置類の検査、排気の検査等に加え、サイドスリップと呼ばれる車輪の横滑り量を測定する検査項目が含まれている。法定検査は、基本的には公的な車両検査場で行うが、所定の検査機器を備えた民間の指定工場でも行うことが可能となっている。
【0003】
車両は、各車輪に、所定のトー角、キャンバ角、キャスタ角、キングピン傾斜角などのホイールアライメントの値が予め設定されており、正規のホイールアライメントにおいて走行状態が最良となるように構成されている。一方、ホイールアライメントは、走行中に車輪が縁石等に当たるなどして、正規の値でなくなることがある。ホイールアライメントの不良は、走行中の車両のふらつきや、タイヤの偏磨耗や異常磨耗、振動の発生などを生じさせ、走行を不安定にさせる要因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−185962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、法定検査は、前輪の横滑り量の検査を義務付けているのみで、後輪については検査の義務がなかった。各指定工場等では、車両検査ラインに横滑り量検査装置を据え付けているが、据え付けられた横滑り量検査装置は、法定検査における前輪の横滑り量の検査にのみ使用されていた。
【0006】
正規のホイールアライメント修正は、ホイールアライメント修正装置を用いてホイールアライメントを検査し、その結果から修正を行い、正規な値に戻している。ホイールアライメント修正は、ホイールアライメントの重要性が広く認知されていないことから、利用者が少なく費用が高くなりがちで、それが更に、利用者を減少させて、更に費用が高くなるという悪循環になることがあった。
【0007】
又、従来は、ホイールアライメントの異常について簡易に検査する方法がなかった。法定検査は、前輪の横滑り量が保安基準を満たしていれば合格するため、後輪を含めた車輪全体でホイールアライメントに異常が生じることに気付きにくかった。そのため、タイヤに偏磨耗が生じていたり、走行中にハンドルがふられても、ホイールアライメントを修正するという発想に至らなかった。又、ホイールアライメントの構造は複雑であるため、検査数値を見ても、一般的に理解が難しかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決し、法定の車両検査に用いられる横滑り量測定台を使用して、車両のホイールアライメントを簡易に検査し、検査結果を車両の使用者に通知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一実施形態の横滑り量測定台の制御装置、横滑り量測定台を用いたホイールアライメント検査通知装置、及び車両検査ライン装置は次のように構成されている。
【0010】
横滑り量測定台の制御装置は、横滑り量測定台が検査した被検査車両から最初に得られた第1横滑り量の値を被検査車両の前輪の横滑り量の値とし、更に第1横滑り量の値の次に得られた第2横滑り量の値を被検査車両の後輪の横滑り量の値とする。
【0011】
ホイールアライメント検査通知装置は、車両検査ラインに設けられ、被検査車両の進行方向と垂直な方向に移動する検査片を備え、検査片の移動量に基づき被検査車両の車輪の横滑り量を測定する横滑り量測定台と、横滑り量測定台に接続された制御装置と、制御装置に接続され、横滑り量測定台による測定結果を出力する出力手段と、を備えている。又、制御装置は、横滑り量測定台が検査した被検査車両から最初に得られた第1横滑り量の値を被検査車両の前輪の横滑り量の値とし、更に第1横滑り量の値の次に得られた第2横滑り量の値を被検査車両の後輪の横滑り量の値とする設定部と、設定部が設定した被検査車両の前輪の横滑り量の値と後輪の横滑り量を出力装置に送出する第2送出部と、を備えている。
【0012】
車両検査ライン装置は、前記ホイールアライメント検査通知装置を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、法定の車両検査に用いられる横滑り量測定台を使用して、法定検査の横滑り量を検査するとともに、車両のホイールアライメントの簡易な検査ができ、車両の所有者にホイールアライメントの検査結果を通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるホイールアライメント検査通知装置を示す斜視図。
【図2】同ホイールアライメント検査通知装置の構成を示すブロック図。
【図3】同ホイールアライメント検査通知装置に用いられる横滑り量測定台を示す平面図。
【図4】検査結果を記載した通知書の一部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるホイールアライメント検査通知装置10を示す斜視図、図2は、ホイールアライメント検査通知装置10の構成を示すブロック図、図3は、横滑り量測定台12を示す平面図、図4は、検査結果を記載した通知書の一部を示す平面図である。
【0016】
ホイールアライメント検査通知装置10は、図1に示すように、車両検査ライン22に設置された横滑り量測定台12と、制御装置14と、入力装置16と、表示装置(出力手段)18と、印刷装置(出力手段)20とを備えている。
【0017】
横滑り量測定台12は、法定の車両検査に用いられる横滑り量検査装置(サイドスリップ検査装置)に装着されている横滑り量測定台と同等の構成を備えており、指定工場などの車両検査ラインに据え付けられているものである。ここで法定の車両検査とは、道路運送車両法の保安基準に基づく検査をいう。
【0018】
横滑り量測定台12は、図3に示すように車両検査ライン22に据え付けられる枠体部32と、枠体部32に移動可能に設けられた検査片としての踏板36と、踏板36の移動量を検出する検出部38とを備えている。枠体部32は、枠状で細長く、長手方向を車両検査ライン22に対して垂直に配置して設けられている。踏板36は、枠体部32の左右に一対、長手方向に沿って移動自在に設けてある。横滑り量測定台12は、左右2つの踏板36が連動して作動する形式でも、左右の踏板36が個別に作動する形式のいずれでもよい。
【0019】
踏板36は、車両検査ライン22を図1に示すように被検査車両である車両30が進行すると、車両30の車輪が有するアライメントに従い移動する。検出部38は、踏板36と電気的、あるいは機械的に接続してあり、踏板36の移動量を検出し、踏板36の移動量から求められた車輪の横滑り量を制御装置14に送り出す。
【0020】
制御装置14は、コンピュータであり、図2に示すように、第1制御装置24と第2制御装置26とを備えている。第1制御装置24は、第1判定部25と、第1送出部27とを備え、法定の車両検査を処理する。第1判定部25は、送られてきた車輪の横滑り量と法定の保安基準値とを比較し、横滑り量の検査結果を判定する。第1送出部27は、車輪の横滑り量と第1判定部25で判定された判定結果を、表示装置18や印刷装置20に送り出す。
【0021】
第2制御装置26は、設定部29と、第2判定部31と、第2送出部33とを備え、ホイールアライメント(前後輪の整列状態)検査を行う。設定部29は、横滑り量測定台12から最初に送られてきた第1横滑り量の値を車両30の前輪54の横滑り量の値とし、更に、第1横滑り量の値の次に得られた第2横滑り量の値を車両30の後輪56の横滑り量の値として設定する。
【0022】
第2判定部31は、設定部29が設定した車両30の前輪54の横滑り量の値および後輪56の横滑り量と閾値とを比較し、車両30のホイールアライメントの良否を判定する。第2送出部33は、前輪54の横滑り量、後輪56の横滑り量、及び第2判定部31が判定した判定結果を、表示装置18や印刷装置20に送り出す。
【0023】
入力装置16は、被検査車両である車両30の車種、年式、登録番号、所有者の氏名などの車両30を特定する情報とともに、その他車両検査に必要とされる必要事項を入力する。更に、入力装置16は、選択手段としての選択スイッチ28を備えている。選択スイッチ28では、検査する内容が法定検査であるのか、ホイールアライメントの検査であるのかの選択が作業者から入力される。
【0024】
表示装置18は、例えば液晶表示装置やその他の平面表示装置からなる表示装置である。又、出力手段には、車両検査ライン22の近傍に設けられた数字などを表示する電光掲示板34も含まれる。表示装置18等は、制御装置14に接続され、制御装置14から出力された表示内容を表示する。表示装置18は、法定検査である前輪の横滑り量の検査結果を表示する機能を備えるとともに、車両30の前輪と後輪の双方で行った横滑り量の検査結果、及びこれらの値から判定した車両30のホイールアライメントの判定結果を表示する機能を備えている。
【0025】
印刷装置20は、複数の用紙から所望の用紙を選択し、制御装置14から送られてきた出力内容を、選択された所定の印刷用紙に印刷を行う。尚、印刷装置20での用紙の変更は、印刷に先立ち所定の用紙を人が印刷装置20に配置するものでもよい。
【0026】
印刷装置20は、法定の車両検査の結果を所定の用紙、例えば指定整備記録簿に印刷する機能を備えるとともに、ホイールアライメント検査により得られた検査結果を所定の印刷用紙40(図4参照。)に印刷する機能を備えている。尚、印刷装置20は、法定の車両検査出力用と、ホイールアライメント検査出力用を個別に用意して用いてもよい。
【0027】
ホイールアライメント検査通知装置10がホイールアライメント検査を行った場合、印刷装置20は、例えば次のようにして検査結果を出力する。ホイールアライメント検査の検査結果を印刷する印刷用紙40には、図4に示すような一般的な車両全体を示す図柄42が予め印刷されている。車両の図柄42には、前後輪は印刷されていない。又、印刷用紙40には、前輪、及び後輪の横滑り量の検査結果と、ホイールアライメントの検査結果の数値を記載する欄等が設けられている。
【0028】
ホイールアライメント検査が行われると、印刷用紙40に記載された車両の図柄42の位置に合わせて、前輪を表す図形44、及び後輪を表す図形46が印刷される。更に、図形44及び図形46は、それらの横滑り量の測定結果に応じた角度を、車両の図柄42の前後方向Aに対して傾斜させて印刷する。
【0029】
前輪を表す図形44、及び後輪を表す図形46の角度は、実際に測定された横滑り量の値より大きく傾かせて印刷用紙40に印刷することが、検査結果を視覚的に理解する上から好ましい。加えて、印刷用紙40には、各車輪に関して車両ごとに定められた横滑り量の許容範囲51を有する目盛り50と、測定された横滑り量の値を目盛り50に重ねて示す指針52を記載する。目盛り50は、ほぼ半円形で、許容範囲51と許容範囲外53が記してある。尚、同一の許容範囲51を有する車種ごとに、目盛り50を予め印刷した印刷用紙40を用意して用いてもよい。
【0030】
更に、印刷用紙40には、ホイールアライメント検査の検査結果が表す意味と、ホイールアライメントを構成する各要素、トー角、キャンバ角、キャスタ角、キングピン傾角についての定義やその重要性などを記載した欄が設けられている。又、車輪の向きを変化させた車両の図は、表示装置18に表示させてもよい。尚、印刷用紙40は、白紙であって、印刷装置20で印刷用紙40に車両の外形を含め全ての画像を印刷するようにしてもよい。
【0031】
次に、第1の実施形態にかかるホイールアライメント検査通知装置10の作動について説明する。まず、ホイールアライメント検査通知装置10を用いて法定検査を行う場合について説明する。
【0032】
車両30を車両検査ライン22の入り口に進入させたなら、選択スイッチ28を操作し、車両30について法定検査を行うか、ホイールアライメント検査を行うかの作業の内容を選択する。選択スイッチ28から、法定検査を行う旨の入力がなされたとすると、作業者(検査員)は入力装置16から、車両30の使用者名、登録番号、車種、年式等の車両30を特定するための各種情報を入力する。入力された情報は、制御装置14に送られるとともに、表示装置18で表示される。作業者は、表示装置18に表示された内容を確認する。その際、確認ボタンを表示装置18に表示させて、それを押すようにしてもよい。
【0033】
確認ボタン等により内容が確認されたなら、制御装置14は、入力装置16から入力された車両30に関する情報に基づき、法定検査に関する車両30の横滑り量(サイドスリップ量)の保安基準値を設定する。そして、入力装置16から検査開始のスイッチを操作し、検査開始の指示が表示装置18や電光掲示板34に表示されたなら、車両30を車両検査ラインに沿ってゆっくり前進させ、横滑り量測定台12の踏板36上を通過させる。
【0034】
車両30が車両検査ライン22に従って走行し踏板36の上を通ると、車両30の前輪54が踏板36を左右方向に移動させるので、検出部38が踏板36の移動量を検出し、移動量から求められた前輪54の横滑り量を第1制御装置24に送る。
【0035】
第1制御装置24に送られた横滑り量は、第1送出部27が電光掲示板34、表示装置18、印刷装置20に送出する。又、第1判定部25が、横滑り量と保安基準値とを比較し、法定検査の結果を判定する。判定結果は、第1送出部27が電光掲示板34、表示装置18、印刷装置20に送出する。
【0036】
表示装置18や印刷装置20は、それぞれ法定に従った所定の様式で検査結果を出力する。これにより、ホイールアライメント検査通知装置10を用いた車両30の横滑り量の法定検査は終了する。
【0037】
一方、ホイールアライメント検査通知装置10は、選択スイッチ28で、ホイールアライメントの検査が選択されると、車両30についてホイールアライメント検査を開始する。選択スイッチ28で、ホイールアライメント検査が選択され、検査開始のスイッチが入力されると、第2制御装置26が作動する。第2制御装置26は、記憶部35から、車両30に関する各種ホイールアライメントの数値を入手する。
【0038】
表示に従って車両30が車両検査ラインを進行して、横滑り量測定台12に車両30が乗り入れられると、第2制御装置26の設定部29は、最初に横滑り量測定台12が測定した第1横滑り量の値を、車両30の前輪54の横滑り量として設定する。
【0039】
更に、車両30が前進して、車両30の後輪56が横滑り量測定台12に乗り入れ、横滑り量測定台12で第1横滑り量の次に計測された第2横滑り量を、設定部29が、車両30の後輪56の横滑り量として設定する。
【0040】
設定部29で設定された、車両30の前輪54の横滑り量及び後輪56の横滑り量をそれぞれの閾値と比較し、車両30のホイールアライメントの良否を第2判定部31が判定する。第2判定部31による判定結果と、前輪54の横滑り量及び後輪56の横滑り量は、第2送出部33が表示装置18や印刷装置20に送り出す。
【0041】
印刷装置20では、車両30の前輪54の横滑り量の値と後輪56の横滑り量の値を受け取ると、目盛り50とともに、印刷用紙40の車両の図柄42に、前輪54及び後輪56に対応した図形44及び46を、図柄42の前後方向Aに対して、計測された横滑り量に基づいて向きを変化させて印刷する。また、表示装置18に、かかる図柄42と図形44、46とを表示させる。
【0042】
このように第1の実施形態にかかるホイールアライメント検査通知装置10は、ホイールアライメント検査を選択することにより車両30の車輪に関する情報が表示装置18や印刷装置20から出力され、目盛り50と指針52とから4輪全てのアライメントの状態が容易に把握できる。
【0043】
仮に、法定で定められた前輪54の横滑り量の測定結果が良好であっても、例えば後輪56の横滑り量の測定結果が規定値、すなわち許容範囲51を外れている場合も考えられる。その場合、実際のホイールアライメントに異常が生じていることを、印刷用紙40に印刷された指針52が許容範囲51を外れて、許容範囲外53を指していることから視覚的に容易に理解できる。又、許容範囲51は、車種毎に設定されるので、ホイールアライメントの狂いを正確に認知することができる。
【0044】
そして、法定検査では問題がなくとも、ホイールアライメントが正しく設定されていないことを確認し、車両30のホイールアライメントを、ホイールアライメント修正装置を用いて正式に調整を行うきっかけとなり、しかもホイールアライメントを整えることの重要性を改めて認識することができる。
【0045】
このように第1の実施形態のホイールアライメント検査通知装置10によれば、法定検査に用いられる横滑り量測定台12を使用して、車両30の前後輪の横滑り量を測定し、四輪の配列状態を目盛り50と指針52とから視覚的に表示し、今までホイールアライメントの重要性に注意を払わなかった車両の使用者が、その重要性に気づくきっかけとすることができる。
【0046】
又、従来法定検査にしか使用されていなかった横滑り量測定台12を、他の用途に利用でき、装置の利用効率が向上できる。更に、ホイールアライメント検査通知装置10の通知により、正確なホイールアライメント修正を行うこととなり、ホイールアライメント修正装置の稼動率が向上する。
【0047】
尚、第1実施形態では、選択スイッチ28を用いて法定検査とホイールアライメント検査の実施を区分したが、選択スイッチ28を設けず、車両30に対して、法定検査とホイールアライメント検査を重ねて行ってもよい。この場合は、双方の結果が出力装置に出力されるものとする。
【0048】
次に、第2の実施形態のホイールアライメント検査通知装置10について説明する。前記実施形態では、ホイールアライメント検査通知装置10を一体で構成したが、第2の実施形態のホイールアライメント検査通知装置10は、一部を既に設置されている機器類を用いて構成している。
【0049】
横滑り量測定台12は、指定工場等に既に設置されているものとする。かかる横滑り量測定台12は、制御装置や表示装置等とともに、横滑り量検査装置を構成し、法定検査を行うに必要な条件を具備している。又、横滑り量測定台12に接続されている制御装置(「既設の制御装置」とも言う。)には、法定検査の作動プログラムが格納されているが、基本的に他の機能のプログラムは格納されていないものとする。又、横滑り量測定台12に接続されている表示装置等の出力機器類(「既設の表示装置等」とも言う。)は、法定検査の結果を表示する等、法定検査に要する出力を行う機能は備えているが、その他の機能は基本的に備えていないものとする。
【0050】
このような、指定工場等に既に横滑り量検査装置が設置されている状況において、ホイールアライメント検査通知のための新プログラムを用意し、新プログラムを既設の制御装置に組み入れる。新プログラムは、横滑り量測定台12が検出した横滑り量の値から被検査車両の前後輪の横滑り量を検査する制御プログラムである。新プログラムが既設の制御装置に組み込まれると、既設の制御装置に既に格納されているプログラムで第1制御装置24を構成し、新プログラムは、第2制御装置26を構成する。
【0051】
具体的には、新プログラムによる第2制御装置26は、被検査車両の検査が開始されると横滑り量測定台12から最初に得られた第1横滑り量の値を車両30の前輪54の横滑り量の値とし、第1横滑り量の値の次に得られた第2横滑り量の値を車両30の後輪56の横滑り量の値として設定する。
【0052】
そして、新プログラムを組み入れた制御装置14は、横滑り量測定台12から得られた結果に基づき、前輪54の検査結果を、法定検査の結果として出力するとともに、前後輪を合わせた横滑り量の値を、ホイールアライメントの簡易検査結果として出力する。結果の出力は、表示装置18を用いて検査結果を数値表示したり、印刷装置20で検査結果を印刷用紙に印刷する。
【0053】
又、指定工場に設置されていた従来の出力装置が、法定検査の出力にしか対応しておらず、ホイールアライメント検査通知が出力できない場合には、新たにプログラムを組み入れた制御装置14に、別途、既設の印刷装置で不足する機能を備えた新たな表示装置18や印刷装置20を接続させて所定の出力を行わせる。
【0054】
このように、ホイールアライメント検査に対応した新プログラムを別途用意し、既設の横滑り量測定台12に組み込まれているプログラムに追加し、又、必要とされる出力装置、例えばインクジェットプリンタや液晶表示装置等を用意し、既設の横滑り量測定台12に一部新たな機器類を追加して構成しても、第1の実施形態のホイールアライメント検査通知装置10と同様に機能し、ホイールアライメント検査通知装置10と同等の作用及び効果を得ることができる。更に、既存の設備を最大限活用して、ホイールアライメント検査を実施できるホイールアライメント検査通知装置10を構成できる。
【0055】
次に、本発明の第3の実施形態にかかるホイールアライメント検査通知装置10について説明する。この例では、ホイールアライメント検査通知装置10は、既設の横滑り量検査装置に、別途ホイールアライメント検査通知のために新制御装置を別途用意し、接続させる。すなわち、既設の制御装置は、第1制御装置24として機能し、新制御装置は、ホイールアライメント検査処理の第2制御装置26として機能する。第1制御装置24と第2制御装置26とを接続させて、制御装置14を構成する。
【0056】
又、ホイールアライメント検査通知に必要とされる出力装置、例えばインクジェットプリンタや液晶表示装置等を用意し、制御装置14に接続する。
【0057】
このようにホイールアライメント検査通知装置10を構成しても、第1実施形態のホイールアライメント検査通知装置10と同様、横滑り量測定台12を用いた既設の機器類で法定検査を従来通りに処理でき、一方新制御装置では、横滑り量測定台12からの結果に基づき、ホイールアライメント検査通知を行うことができる。
【0058】
次に、第4の実施形態のホイールアライメント検査通知装置を説明する。この例では、既設の制御装置に代えて取り替える、新しい制御装置14を別途用意する。制御装置14には、法定の横滑り量検査を処理する第1制御装置24と、ホイールアライメント検査処理の第2制御装置26とを備えている。又、出力装置として、法定検査の検査結果とホイールアライメント検査通知の双方に対応した機能を有する表示装置18や印刷装置20を用意する。
【0059】
指定工場等で既設の横滑り量検査装置を備えている場合、既設の横滑り量検査装置の制御装置を新たな制御装置14に取り替える。また、別途表示装置18と印刷装置20を、既設の表示装置に追加して接続する。尚、既設の表示装置等と、新たな表示装置等とが機能的に重複する場合は、既設の表示装置等を外してもよい。
【0060】
このようにホイールアライメント検査通知装置10を構成しても、第1の実施形態のホイールアライメント検査通知装置10と同様に機能し、ホイールアライメント検査通知装置10と同等の作用及び効果を得ることができる。更に、既存の設備を活用して、ホイールアライメント検査通知装置10を構成できる。又、既設の制御装置に代えて新たな制御装置14を接続するので、設定作業が容易である。
【0061】
更に、本発明の第5実施形態について説明する。この例は、前記第1から第4実施形態にかかるホイールアライメント検査通知装置10のいずれかを、車両検査ライン装置に組み込んで、車両検査ライン装置を構成する。車両検査ライン装置は、被検査車両の制動検査、速度検査、排気検査、光軸検査等を含み、その中に前記実施形態にかかるホイールアライメント検査通知装置のいずれかを組み付ける。
【0062】
このようにして車両検査ライン装置を構成すると、車両検査ライン装置を設置して検査ラインを工場内に設置すると、検査ラインにおいて、法定検査が従来どおり実施できるとともに、かかる検査ラインを用いて、ホイールアライメントの簡易検査を実施し、その検査結果を車両の所有者に通知することができる。
【0063】
検査結果により、ホイールアライメントが正規の値を有していないことが判明したなら、正規なホイールアライメント検査をホイールアライメント修正機で行い、ホイールアライメントを修正するように薦めることができる。
【0064】
尚、本発明の横滑り量測定台の制御装置、ホイールアライメント検査通知装置、及び車両検査ライン装置は、前記第1から第5実施形態に限るものではない。例えば、表示装置18や印刷装置20は、前記例に限らず他の構成を有するものでもよい。又、制御装置14と表示装置18等との接続は、有線に限らず、無線通信で行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、横滑り量測定台を用いて車両のホイールアライメントを簡易に検査するホイールアライメント検査通知装置に利用できる。
【符号の説明】
【0066】
10…ホイールアライメント検査通知装置、12…横滑り量測定台、14…制御装置、16…入力装置、18…表示装置、20…印刷装置、22…車両検査ライン、24…第1制御装置、25…判定部、26…第2制御装置、27…送出部、28…選択スイッチ、29…設定部、30…車両、31…判定部、33…送出部、35…記憶部、38…検出部、40…印刷用紙、42…図柄、44…図形、46…図形、52…指針、54…前輪、56…後輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両検査ラインに設けられ、被検査車両の進行方向と垂直な方向に移動する検査片を備え、前記検査片の移動量に基づき前記被検査車両の車輪の横滑り量を測定する横滑り量測定台に接続される制御装置であり、
前記横滑り量測定台が測定した前記被検査車両から最初に得られた第1横滑り量の値を前記被検査車両の前輪の横滑り量の値とし、更に前記第1横滑り量の値の次に得られた第2横滑り量の値を前記被検査車両の後輪の横滑り量の値とすることを特徴とする横滑り量測定台の制御装置。
【請求項2】
車両検査ラインに設けられ、被検査車両の進行方向と垂直な方向に移動する検査片を備え、前記検査片の移動量に基づき前記被検査車両の車輪の横滑り量を測定する横滑り量測定台と、
前記横滑り量測定台に接続された制御装置と、
前記制御装置に接続され、前記横滑り量測定台による測定結果を出力する出力手段と、を備え、
前記制御装置は、前記横滑り量測定台が検査した前記被検査車両から最初に得られた第1横滑り量の値を前記被検査車両の前輪の横滑り量の値とし、更に前記第1横滑り量の値の次に得られた第2横滑り量の値を前記被検査車両の後輪の横滑り量の値とする設定部と、
前記設定部が設定した前記被検査車両の前記前輪の横滑り量の値と前記後輪の横滑り量を前記出力装置に送出する第2送出部と、を備えたことを特徴とするホイールアライメント検査通知装置。
【請求項3】
車両検査ラインに設けられ、被検査車両の進行方向と垂直な方向に移動する検査片を備え、前記検査片の移動量に基づき前記被検査車両の車輪の横滑り量を測定する横滑り量測定台と、
前記横滑り量測定台に接続された、第1制御手段と第2制御手段とを有する制御装置と、
前記制御装置に接続され、前記第1制御手段による結果と前記第2制御手段による結果を出力する出力手段と、を備え、
前記第1制御装置は、前記横滑り量測定台が検査した前記被検査車両から最初に得られた第1横滑り量の値を前記出力手段に法定検査の結果として送出する第1送出部とを備え、
前記第2制御手段は、前記横滑り量測定台が検査した前記被検査車両から最初に得られた第1横滑り量の値を前記被検査車両の前輪の横滑り量の値とし、更に前記第1横滑り量の値の次に得られた第2横滑り量の値を前記被検査車両の後輪の横滑り量の値とする設定部と、前記設定部が設定した前記被検査車両の前記前輪の横滑り量の値と前記後輪の横滑り量を前記出力装置に送出する第2送出部とを備えたことを特徴とするホイールアライメント検査通知装置。
【請求項4】
車両検査ラインに設けられ、被検査車両の進行方向と垂直な方向に移動する検査片を備え、前記検査片の移動量に基づき前記被検査車両の車輪の横滑り量を測定する横滑り量測定台と、
前記横滑り量測定台に接続された、第1制御手段と第2制御手段とを有する制御装置と、
前記制御装置に接続され、前記被検査車両に法定検査を行うか、前記被検査車両のホイールアライメント検査を行うかを選択する選択手段と、
前記制御装置に接続され、前記第1制御手段による前記法定検査の結果と前記第2制御手段によるホイールアライメント検査の結果を出力する出力手段と、を備え、
前記第1制御装置は、前記選択手段により法定検査が選択されると、前記横滑り量測定台が検査した前記被検査車両の横滑り量の値と、保安基準値とを比較し、前記被検査車両の横滑り量の結果を判定する第1判定部と、前記第1判定部が判定した結果を前記出力手段に法定検査の結果として送出する第1送出部とを備え、
前記第2制御手段は、前記選択手段により前記ホイールアライメント検査が選択されると、前記横滑り量測定台が検査した前記被検査車両から最初に得られた第1横滑り量の値を前記被検査車両の前輪の横滑り量の値とし、更に前記第1横滑り量の値の次に得られた第2横滑り量の値を前記被検査車両の後輪の横滑り量の値とする設定部と、前記設定部が設定した前記被検査車両の前記前輪の横滑り量の値と前記後輪の横滑り量をそれぞれの閾値と比較し、前記被検査車両のホイールアライメントの良否を判定する第2判定部と、前記第2判定部が判定した判定結果を前記出力装置に送出する第2送出部とを備えたことを特徴とするホイールアライメント検査通知装置。
【請求項5】
前記出力手段は、前記制御装装置から送出される結果を表示する表示装置、及び又は前記結果を印刷する印刷装置であり、
前記印刷装置は、前記第2制御手段からの検査結果について、車両の外形を表す車両外形図に、前記第2制御手段からの検査結果による、前記被検査車両の前輪の横滑り量を前記車両外形図の前輪に、かつ前記被検査車両の後輪の横滑り量を前記被検査車両の後輪に、それぞれの横滑り量に従って前記被検査車両に対する角度を変更して示すことを特徴とする請求項3又は4に記載のホイールアライメント検査通知装置。
【請求項6】
前記横滑り量測定台は、法定の車両検査に適合した測定台であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のホイールアライメント検査通知装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載のホイールアライメント検査通知装置を備えたことを特徴とする車両検査ライン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104810(P2013−104810A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249612(P2011−249612)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000252816)株式会社イヤサカ (3)
【出願人】(594084549)彌榮精機株式会社 (6)