説明

横編機の複合針

【課題】摺動抵抗付与板部の湾曲部分の一側方の空間を塵埃の堆積によって他側方へ膨らみ難くして、空間内からの塵埃の除去作業を遅延させることができる横編機の複合針を提供する。
【解決手段】スライダー3に、スライダー基体31と、スライダー基体31に支持されてそれぞれ後方へ延びる2枚のブレード32,33と、各ブレード32,33のうちの一方に前端が一体に連設されて後方へ延び、ニードルプレートに湾曲部分371を摺接して摺動抵抗を付与する摺動抵抗付与板部37と、スライダー基体31に設けられ、摺動抵抗付与板部37の前端を一側方から固定する固定部43、及び後端を一側方から摺接させる摺接部44とを備えた複合針1を前提とする。そして、スライダー基体31に、固定部43と摺接部44とを湾曲部分371の上方を延びて連結する連結部311を設け、この連結部311は、湾曲部分371の一側方が切除されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機に用いられる複合針に関する。
【背景技術】
【0002】
横編機の編針として、互いに前後方向へ相対移動する針本体及びスライダーを備えた複合針が用いられることがある。この複合針は、横編機の針床の針溝間に収容されている。また、スライダーは、スライダー基体と、このスライダー基体に支持され、互いに重ね合わせた2枚のブレードとを有し、これらのブレードが針本体の歯口側(前側)を前後方向へ延びるスライダー溝に摺動自在に収容されている。この場合、各ブレードを針本体のフック先端の側面部分に当接させて進出することで左右に分岐させ、フックを越えて進出したブレード間に、これと対向する針床の編針を進出させることで、目移しを行うようにしている。
【0003】
しかし、スライダーを進出させて各ブレードを左右に開かせる複合針では、目移しなどを行う際に編糸がフックと擦れたりして各ブレード間に風綿等の塵埃が発生し易い。このため、塵埃が編針のフックに付着したりその周辺に堆積したりする。
【0004】
かかる点から、従来より、各ブレード間にゴミ取りプレートを設けたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3983737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フックに付着した塵埃やその周辺に堆積した塵埃は、ゴミ取りプレートの有無にかかわらず、針本体及びスライダーの前後方向への相対移動に伴って針本体の後側へ順次送られる傾向にある。
【0007】
その場合、各ブレードのうちの少なくとも一方に、スライダーの移動時に略円弧状に突出する湾曲部分を摺接させて摺動抵抗を付与する摺動抵抗付与板部が設けられることがある。この摺動抵抗付与板部の湾曲部分の一側方には、当該湾曲部分とスライダー本体又は他方のブレードとによって仕切られた空間が形成されている。この空間は、針本体の後側へ順次送られた塵埃が堆積し易く、堆積した塵埃によって湾曲部分の一側方へ膨らむ。しかし、この空間の一側方には、スライダー基体が存在するため、堆積した塵埃による空間の一側方への膨らみがスライダー基体との当接によって阻害されてしまう。これでは、空間が湾曲部分の他側方(空間とは逆方向)へ膨らんでしまい、湾曲部分の摺接抵抗が大きくなって、複合針の動きが悪くなる。このため、複合針の動きを円滑に保つ上で、堆積した塵埃によって空間が他側方へ膨らむ前に当該空間内から塵埃を除去する作業を行う必要がある。
【0008】
本発明の目的は、堆積した塵埃によって空間を他側方へ膨らみ難くして、空間内からの塵埃の除去作業を遅延させることができる横編機の複合針を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明では、横編機の針床の針溝間に収容されて互いに前後方向へ相対移動する針本体及びスライダーを備え、前記スライダーが、スライダー基体と、このスライダー基体に支持され、前記針本体の歯口側を前後方向へ延びるスライダー溝に摺動自在に収容されてそれぞれ後方へ延びる2枚のブレードと、この各ブレードのうちの少なくとも一方の後端に一体又は別体で連設されて後方へ延び、前記スライダーの移動時に略円弧状に湾曲する湾曲部分が摺接して摺動抵抗を付与する摺動抵抗付与板部と、前記スライダー基体に設けられ、前記摺動抵抗付与板部の前後両端のうちのいずれか一方を一側方から固定する固定部及び他方を一側方から摺接させる摺接部と、を有してなる複合針を前提とする。そして、前記スライダー基体に、前記固定部と前記摺接部とを前記湾曲部分の上方又は下方を延びて連結する連結部を設け、この連結部は、前記湾曲部分の一側方が切除されていることを特徴としている。
【0010】
また、前記摺動抵抗付与板部を、前記各ブレードのうちの一方の後端にのみ連設することが好ましい。
【0011】
また、前記摺動抵抗付与板部の湾曲部分と前記スライダー基体の連結部との間に、隙間を設けることが好ましい。
【0012】
更に、前記摺接部、又は前記摺接部に摺接する前記摺動抵抗付与板部に、切欠部又は孔部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スライダー基体の固定部と摺接部とを連結する連結部は、湾曲部分の一側方を切除することで、塵埃の堆積による湾曲部分の一側方への空間の膨らみがスライダー基体によって阻害されることがない。これにより、空間が他側方へ膨らみ難くなって複合針の動きが円滑に保たれ、空間内からの塵埃の除去作業を遅延させることができる。
しかも、固定部と摺接部とを湾曲部分の上方又は下方を延びる連結部により連結することで、固定部と摺接部との前後方向の間隔を連結部の長さに応じて任意に設定することが可能となる。これにより、摺動抵抗付与板部の湾曲部分の前後長を長くすることができ、ニードルプレートに対する湾曲部分の摺動抵抗を容易に設定することができる。
【0014】
また、摺動抵抗付与板部を一方のブレードにのみ連設することで、摺動抵抗付与板部の湾曲部分の一側方の空間が、その一側方のニードルプレートまで拡張される。その上、空間内で堆積した塵埃がスライダーの摺動に伴って前後に移動する。このため、空間内の塵埃が逃げ易くなる上、空間へ塵埃が堆積しても当該空間を満たすまでに十分な時間を稼げる。これにより、空間内の塵埃の除去作業をより遅延させることができる。
【0015】
また、摺動抵抗付与板部の湾曲部分とスライダー基体の連結部との間に隙間を設けることで、空間に堆積した塵埃が隙間を介して排出され易く、空間内の塵埃の除去作業をさらに遅延させることができる。
【0016】
更に、摺接部、又は摺接部に摺接する摺動抵抗付与板部の前後両端のうちの他方に、切欠部又は孔部を設けることで、空間に塵埃が堆積しても、その堆積した塵埃が摺動抵抗付与板部の切欠部又は孔部から排出され易い。これにより、空間内の塵埃の除去作業をより一層遅延させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る横編機の複合針を針溝の並設方向から見た側面図である。
【図2】図1の複合針を分解した状態での側面図である。
【図3】(a)は図1の複合針のブレード付近の拡大図、(b)は複合針の摺動抵抗付与板部付近を針床側から見た底面図である。
【図4】第1の実施の形態の変形例を示し、(a)は複合針のブレード付近の拡大側面図、(b)は複合針の摺動抵抗付与板部付近の底面図である。
【図5】第1の実施の形態のその他の変形例を示し、(a)〜(c)はそれぞれ複合針のブレード付近の拡大側面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る横編機の複合針の側面図である。
【図7】図6の複合針を分解した状態での側面図である。
【図8】(a)は図6の複合針のブレード付近の拡大側面図、(b)は複合針の摺動抵抗付与板部付近の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の横編機の複合針の好適な実施の形態を図面と共に以下詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る複合針を針溝の並設方向から見た側面図、図2は複合針を分解した状態での側面図を示している。
【0020】
本発明の複合針1は、図示しない針床の長手方向(図1の紙面手前奥方向)に複数並設され、図示しないヤーンフィーダから編糸が供給される歯口gに対して前後方向(図1では左右方向)へ進退移動可能な状態で針溝10(図3の(b)に表れる)内に収容されている。また、複合針1は、針本体2とスライダー3とで構成されている。そして、針本体2とスライダー3とを前後方向へ相対移動させることで、スライダー3の前端のタング35が針本体2の前端のフック部21を開閉し、更にタング35がフック部21を超えて前方へ進出移動する。なお、以降の説明において、針本体2及びスライダー3のそれぞれの構成部材についても、歯口g側を前側、その逆側を後側と称することとする。
【0021】
針本体2は、前端にフック部21を有するフック部材22を備えている。また、スライダー3は、スライダー基体31と、このスライダー基体31に支持され、互いに重ね合わされた略同一形状の2枚のブレード32,33とを備えている。
【0022】
フック部材22は、フック部21の後側に連設されたスライダー溝24を備え、このスライダー溝24によって、ブレード32,33の前端部を前後方向へ摺動自在に挿入して支持している。また、フック部材22は、その前後方向略中央部に支持面部25を備え、この支持面部25によって、後述するスライダー基体31の固定部43及び摺接部44の下面を摺動自在に支持している。更に、フック部材22は、その後端部に嵌合凹部26を備え、この嵌合凹部26によって、ニードルジャック23の前端より下方に突出する突起231を嵌合して連結している。また、ニードルジャック23は、フック部材22の嵌合凹部26から後方へ延びるアーム27を有している。このアーム27は、その後端を針溝10に当接させるように下方へ湾曲している。ニードルジャック23の前後方向中央部付近には、上方へ分岐して前方に延びる分岐アーム28が設けられている。この分岐アーム28の下方には、スライダー基体31の後端が抜け落ち不能に支持されている。
【0023】
ブレード32,33は、フック部材22の針幅方向中央位置において重ね合わされ、それぞれの前端にタング35が形成されている。
【0024】
図3の(a)は複合針1のブレード32,33付近の拡大側面図、(b)は複合針1摺動抵抗付与板部付近を針床側から見た底面図をそれぞれ示している。
図3の(a)及び(b)に示すように、スライダー3は、摺動抵抗付与板部37を備えている。この摺動抵抗付与板部37の前端は、各ブレード32,33のうちの一方(図3の(a)では紙面手前側)のブレード33の後端に一体に連設されて後方へ延びている。摺動抵抗付与板部37は、スライダー3の移動時に針幅方向他側方(図3の(b)では上方)のニードルプレート11に対し長手方向中央部が摺接するように略円弧状に湾曲する湾曲部分371を有し、この湾曲部分371の摺接によってスライダー3に摺動抵抗を付与している。この湾曲部分371は、針幅方向他側方へ膨らんでいる。また、スライダー3は、延設部38を備えている。この延設部38の前端は、他方(図3の(a)では紙面奥側)のブレード32の後端に一体に連設されて後方へ延びている。延設部38は、摺動抵抗付与板部37とほぼ同じ長さに設定されている。そして、摺動抵抗付与板部37の湾曲部分371の針幅方向一側方(図3の(b)では下方)には、湾曲部分371と延設部38とで仕切られた空間39が設けられている。以下の説明において、針幅方向他側方を単に他側方、針幅方向一側方を単に一側方という。
【0025】
また、スライダー溝24の後側には、支持面部25の針幅方向中央位置を前後方向へ延びるガイド溝41が連設されている。そして、延設部38の後部には、支持面部25の針幅方向中央位置にオフセット曲げしてガイド溝41の内部まで突出させた突起381が一体的に設けられている。この突起381は、ガイド溝41の内部に摺動自在に収容されている。
【0026】
スライダー基体31には、各ブレード32,33の後端を摺動抵抗付与板部37及び延設部38の前端と共に一側方から固定する固定部43が設けられている。また、スライダー基体31には、摺動抵抗付与板部37の後端を延設部38の後端を介して一側方から摺接させる摺接部44が設けられている。更に、スライダー基体31には、固定部43と摺接部44とを湾曲部分371の上方を前後方向へ延びて連結する連結部311が設けられている。そして、連結部311は、湾曲部分371の一側方が切除されている。これによって、塵埃の堆積による湾曲部分371の一側方への空間39の膨らみがスライダー基体31によって阻害されることがない。したがって、空間39が他側方へ膨らみ難くなって複合針1の動きが円滑に保たれ、空間39内からの塵埃の除去作業を遅延させることができる。
しかも、固定部43と摺接部44とを湾曲部分371の上方を前後方向へ延びる連結部311によって連結することで、固定部43と摺接部44との前後方向の間隔を連結部311の長さに応じて任意に設定することが可能となる。これにより、摺動抵抗付与板部37の湾曲部分371の前後長を長くすることができ、ニードルプレート11に対する湾曲部分371の摺動抵抗を容易に設定することができる。
【0027】
更に、摺動抵抗付与板部37の湾曲部分371とスライダー基体31の連結部311との間には、その両者371,311の上下間を前後方向へ延びる隙間40が設けられている。これにより、空間39に堆積した塵埃が隙間40を介して排出され易くなり、空間39内の塵埃の除去作業を遅延させる上で非常に有効なものとなる。
【0028】
固定部43は、その他側面(図3の(a)では紙面手前側面)に凹設された前後方向へ延びる溝431と、この溝431の前後方向略中間位置の上側に連設された略矩形状の凹部432とを備えている。溝431には、各ブレード32,33の後端が嵌挿されている。また、各ブレード32,33の後端には、凹部432に対し嵌合される凸部323,333がそれぞれ突設されている。そして、各ブレード32,33の後端は、固定部43の溝431に嵌挿された状態で、凸部323,333を凹部432に対し嵌合し、かしめ固定により摺動抵抗付与板部37及び延設部38の前端を伴って固定部43に固定されている。
【0029】
摺接部44は、その他側面に凹設された前後方向へ延びる溝441を備えている。この溝441には、摺動抵抗付与板部37及び延設部38の後端が嵌挿されている。また、溝441は、摺動抵抗付与板部37及び延設部38の後端との摺接部位を越えると、後方に行くに従い浅くなるように底面が湾曲している。
【0030】
また、支持面部25の後端には、上方へ突出する凸部29が設けられている。この凸部29の前面には、凹部291が設けられている。また、摺接部44には後方へ突出する凸部442が設けられている。そして、スライダー3をスライダー溝24の後退位置(図1に示す位置)に位置付けた際に、摺接部44の凸部442が凹部291に嵌合することで、分岐アーム28の下方でのスライダー基体31の後端支持と相俟って、スライダー3が針本体2に対して上方へ外れないように支持される。これらにより、針本体2がスライダー3に対し前後2箇所で拘束され、複合針1を針溝10から取り外したりする作業が円滑に行える。
【0031】
ここで、第1の実施の形態の変形例を図4に基づいて説明する。
図4の(a)は複合針のブレード付近の拡大側面図、(b)は複合針の摺動抵抗付与板部付近の底面図をそれぞれ示している。なお、摺動抵抗付与板部及び延設部を除くその他の構成は、第1の実施の形態と同じであるので、摺動抵抗付与板部及び延設部の構成についてのみ説明する。
【0032】
すなわち、図4に示すように、スライダー3は、摺動抵抗付与板部37を備えている。この摺動抵抗付与板部37の前端は、各ブレード32,33のうちの一方(図4の(a)では紙面奥側)のブレード32の後端に一体に連設されて後方へ延びている。また、他方(図4の(a)では紙面手前側)のブレード33は、固定部43で一方のブレード32と共に後端がかしめ固定されている。この場合、他方のブレード33の後端には延設部がない。
【0033】
この場合、摺動抵抗付与板部37の湾曲部分371の一側方(図4の(b)では下側)の空間39は、他方のブレード32(延設部)により区画されることなく、その一側方のニードルプレート11まで拡張されている。また、空間39に堆積した塵埃がスライダー3の移動に伴って摺動抵抗付与板部37とニードルプレート11との間で前後に移動し易くなる。このため、空間39内の塵埃が逃げ易くなる上、空間39へ塵埃が堆積しても当該空間39を満たすまでに十分な時間を稼げる。これにより、空間39内からの塵埃の除去をより遅延させることができる。
【0034】
なお、本実施の形態の変形例はこれに限らず、図5に示す変形例も含まれる。
図5の(a)〜(c)は複合針のブレード付近の拡大側面図をそれぞれ示している。(a)の変形例では、摺接部44には、当該摺接部44の略中央位置を幅方向に貫通する前後方向に長い略矩形状の孔部443を設けている。なお、孔部に代えて、摺接部の前縁に後方へ略凹字状に切り欠いた切欠部や、摺接部の下縁に上方へ略凹字状に切り欠いた切欠部が設けられていてもよい。
また、(b)の変形例では、摺動抵抗付与板部37の後端に前方へ略凹字状に切り欠いた切欠部372を設けている。
更に、(c)の変形例では、摺動抵抗付与板部37の前端部及び後端部にそれぞれ矩形状の孔部373を設けている。
これらの変形例においては、空間39に塵埃が堆積しても、その堆積した塵埃が摺動抵抗付与板部37の後端から孔部443,373又は切欠部372を介して排出され易い。これにより、空間39内の塵埃の除去作業をより一層遅延させることが可能となる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態を図6〜図8に基づいて説明する。
図6は本発明の第2の実施の形態に係る横編機の複合針の側面図を示している。また、図7は複合針を分解した状態での側面図を示している。更に、図8の(a)は複合針のブレード付近の拡大側面図、(b)は複合針の摺動抵抗付与板部付近の底面図をそれぞれ示している。なお、スライダー基体を除くその他の構成は、前記第1の実施の形態と同じであるので、スライダー基体の構成についてのみ説明する。
【0036】
すなわち、図6〜図8に示すように、スライダー基体51には、固定部43と摺接部52とが設けられている。また、スライダー基体51は、固定部43と摺接部52とを連結する連結部511を備えている。この連結部511は、湾曲部分371の下方を前後方向へ延びている。そして、連結部511は、湾曲部分371の一側方((図8の(b)では下方)が切除されている。これによって、塵埃の堆積による湾曲部分371の一側方への空間39の膨らみがスライダー基体51によって阻害されることがない。したがって、空間39が他側方へ膨らみ難くなって複合針1の動きが円滑に保たれ、空間39内からの塵埃の除去作業を遅延させることができる。
【0037】
摺動抵抗付与板部37の湾曲部分371とスライダー基体51の連結部511との間には、その両者371,511の上下間を前後方向へ延びる隙間40が設けられている。また、摺接部52は、その他側面より一側方に凹む段部521を備えている。
この場合、摺動抵抗付与板部37の後端が延設部38の後端を介して摺接部52の段部521に対し摺接している。
【0038】
なお、本発明は、前記各実施の形態及び各変形例に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記各実施の形態では、一方のブレード33の後端に摺動抵抗付与板部37の前端を一体に連設し、他方のブレード32の後端に延設部38の前端を一体に連設したが、各ブレードとは別体の摺動抵抗付与板部及び延設部を用意し、各ブレードの後端に、摺動抵抗付与板部及び延設部の前端がそれぞれ別体に連設されていてもよい。また、各ブレードとは別体の摺動抵抗付与板部を用意し、いずれか一方のブレードの後端に、摺動抵抗付与板部の前端が互いに重ね合わせた状態で別体に連設されていてもよい。
【0039】
更に、前記各実施の形態及び各変形例では、連結部311,511の前側に固定部43を、後側に摺接部44,52をそれぞれ設けたが、連結部の後側に固定部が、前側に摺接部がそれぞれ設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 複合針
10 針溝
11 ニードルプレート
2 針本体
3 スライダー
31 スライダー基体
311 連結部
32,33 ブレード
37 摺動抵抗付与板部
371 湾曲部分
372 切欠部
373 孔部
40 隙間
43 固定部
44 摺接部
442 孔部
51 スライダー基体
511 連結部
52 摺接部
g 歯口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横編機の針床の針溝間に収容されて互いに前後方向へ相対移動する針本体及びスライダーを備え、前記スライダーが、スライダー基体と、このスライダー基体に支持され、前記針本体の歯口側を前後方向へ延びるスライダー溝に摺動自在に収容されてそれぞれ後方へ延びる2枚のブレードと、この各ブレードのうちの少なくとも一方の後端に一体又は別体で連設されて後方へ延び、前記スライダーの移動時に略円弧状に湾曲する湾曲部分が摺接して摺動抵抗を付与する摺動抵抗付与板部と、前記スライダー基体に設けられ、前記摺動抵抗付与板部の前後両端のうちのいずれか一方を一側方から固定する固定部及び他方を一側方から摺接させる摺接部と、を有してなる複合針において、
前記スライダー基体は、前記固定部と前記摺接部とを前記湾曲部分の上方又は下方を延びて連結する連結部を備え、
前記連結部は、前記湾曲部分の一側方が切除されていることを特徴とする横編機の複合針。
【請求項2】
前記摺動抵抗付与板部は、前記各ブレードのうちの一方の後端にのみ連設されている請求項1に記載の横編機の複合針。
【請求項3】
前記摺動抵抗付与板部の湾曲部分と前記スライダー基体の連結部との間には、隙間が設けられている請求項1又は請求項2に記載の横編機の複合針。
【請求項4】
前記摺接部、又は前記摺接部に摺接する前記摺動抵抗付与板部には、切欠部又は孔部が設けられている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の横編機の複合針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−112918(P2013−112918A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261862(P2011−261862)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】