説明

横軸ポンプ装置

【課題】横軸ポンプのポンプ吸込口および吸込管を連結するとともに吸込管を支持するための吸込管ベースを設けることにより、吸込管貫通部にコンクリートを充填することなく横軸ポンプをポンプ設置床に固定することができる横軸ポンプ装置を提供する。
【解決手段】液体を揚水する横軸ポンプ1と、横軸ポンプ1に液体を流す流路を形成する吸込管6とを備えた横軸ポンプ装置において、横軸ポンプ1のポンプ吸込口1sおよび吸込管6を連結するとともに横軸ポンプ1をポンプ設置床111に固定するための吸込管ベース7をポンプ設置床111に形成された吸込管貫通部111hに設け、吸込管ベース7は、横軸ポンプ1のポンプ吸込口1sを連結する上部連結部8aと、吸込管6を連結する下部連結部8bと、横軸ポンプ1をポンプ設置床111に固定するためのベース部9と、ポンプ吸込口1sと吸込管6とを連通させる流路を内部に有する管胴部10とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や排水などの液体を揚排水する横軸ポンプ装置に係り、特にポンプケーシングから垂下する吸込管を支持するための吸込管ベースを備えた横軸ポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川水や排水などの液体を揚排水するポンプ装置には、ポンプケーシング内に収容された羽根車が吸込水位より上方に位置し、ポンプケーシングから垂下する吸込管によって吸込水槽内の液体を吸い上げる形式の横軸ポンプ装置がある。このような横軸ポンプ装置は、羽根車を収容したポンプケーシングをポンプ架台上に設置し、吸込管をポンプケーシングで吊り下げてポンプ設置床の貫通部を通して吸込水槽内に延ばし、その状態で吸込管貫通部からポンプ架台および下部ケーシングまでを一体に基礎(2次コンクリート)で埋設するようにしている。
【0003】
図14は、従来の横軸ポンプ装置を示す概略立面図である。図14に示すように、横軸ポンプ101は、吸込水槽110のポンプ設置床111上に据え付けられている。横軸ポンプ101は、横軸斜流ポンプからなり、羽根車102を支持するポンプ主軸103が水平方向(横方向)に延びた構成のものである。羽根車102を収容するポンプケーシング104は、ポンプ架台105上に設置されている。ポンプケーシング104は、上部ケーシング104aと下部ケーシング104bとから構成されており、上下に分離可能になっている。ポンプケーシング104の下端には吸込管106が接続されている。吸込管106は、ポンプケーシング104で吊り下げられており、ポンプ設置床111に形成された吸込管貫通部111hを通って吸込水槽内に延びている。そして、吸込管貫通部111h、ポンプ架台105および下部ケーシング104bは、一体に基礎(2次コンクリート)で埋設されている。ポンプ主軸103は減速機114に連結され、減速機114は原動機115に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−269374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の横軸ポンプ装置は、以下のような問題点がある。
(1)施工上の問題点
1)ポンプと電動機の一次芯出し後に、ポンプ上部ケーシングを組み立て、吸込管を接続した後にポンプと電動機の二次芯出しを行う。その後に基礎の配筋を組み(鉄筋で基礎の骨組みを作り)、吸込管貫通部を含めてポンプ基礎と一体でコンクリートを打設する。この時、ポンプケーシングで吸込管を吊り下げている構造のため、吸込管貫通部のコンクリート充填・硬化の影響で、ポンプケーシングが力を受けてしまい、ポンプ架台部やポンプケーシング自体が微少ながら変形してしまう。このため、基礎コンクリート打設前の二次芯出しの結果が変化してしまう。よって、ポンプ据付後の減速機の据付、減速機カップリングの芯出し作業は、ポンプ基礎コンクリートが十分硬化した後にしか行えず、コンクリート養生期間分、ポンプの据付工程が長くなる。
2)上記1)のような工程を経て基礎を打設するため、他の形式のポンプのようにポンプ設置前にコンクリート基礎を先行して行うことができない。そのため、工程の短縮ができない。
(2)維持管理上の問題点
吸込管と併せてポンプ下部ケーシングもコンクリ−トに埋没させてしまうため、ポンプの整備や更新時にポンプ下部ケーシングを取り外すことが容易でなく、ケーシングの整備や再利用ができない。そのため、ポンプ自体を更新せざるを得ない。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、横軸ポンプのポンプ吸込口および吸込管を連結するとともに吸込管を支持するための吸込管ベースを設けることにより、吸込管貫通部にコンクリートを充填することなく横軸ポンプをポンプ設置床に固定することができる横軸ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の横軸ポンプ装置は、液体を揚水する横軸ポンプと、該横軸ポンプに液体を流す流路を形成する吸込管とを備えた横軸ポンプ装置において、前記横軸ポンプのポンプ吸込口および前記吸込管を連結するとともに前記横軸ポンプをポンプ設置床に固定するための吸込管ベースを前記ポンプ設置床に形成された吸込管貫通部に設け、前記吸込管ベースは、前記横軸ポンプのポンプ吸込口を連結する上部連結部と、前記吸込管を連結する下部連結部と、前記横軸ポンプを前記ポンプ設置床に固定するためのベース部と、前記ポンプ吸込口と前記吸込管とを連通される流路を内部に有する管胴部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、横軸ポンプのポンプ吸込口および吸込管を連結するとともに吸込管を支持するための吸込管ベースをポンプ設置床の吸込管貫通部に設置している。吸込管ベースは、上端部に設けられた上部連結部と、下端部に設けられた下部連結部と、上部連結部と下部連結部とを接続する円筒状の管胴部と、管胴部の上部外周部から半径方向外側に延設されたベース部とを備えており、上部連結部に横軸ポンプのポンプ吸込口を連結し、下部連結部に吸込管を連結し、ベース部をポンプ設置床に固定することにより、吸込管ベースにより横軸ポンプをポンプ設置床に固定することができるとともに吸込管を支持することができる。これにより、ポンプ設置床の吸込管貫通部にコンクリートを充填する必要がなく、コンクリートの硬化時間待ちや、コンクリートの硬化によるケーシングへのストレスが無く、施工上の工程短縮と据付精度の向上が図れる。
【0009】
本発明の好ましい態様によれば、前記ベース部は前記管胴部の外周部から半径方向外方に延びる鍔状部材からなり、前記ベース部は、ベースプレートを介して前記ポンプ設置床に固定されることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、前記ベース部が前記ポンプ設置床に固定される部分にシール部材を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、ベース部が直接にポンプ設置床に固定される場合には、ベース部とポンプ設置床との間に丸ゴム等のシール部材を介装する。ベース部をベースプレートを介してポンプ設置床に固定する場合には、ベースプレートをポンプ設置床にアンカーボルト等によって固定し、この固定の際にベースプレートの位置決め(レベル出し)を行う。その後、ベース部を固定ボルト等によってベースプレートに固定する。ベース部とベースプレートとの間に吸水槽の水位上昇時におけるポンプ床部への浸水を防止するための丸ゴム等のシール部材を介装する。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、前記ベース部が前記ポンプ設置床に固定される部分と、前記管胴部の外周面または前記下部連結部との間には所定の間隔が形成されており、この間隔が形成された部分を利用して前記ベース部に点検口を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、吸込管ベースのベース部に点検口が形成されているため、従来であれば、目視点検できない吸込水槽状態、吸込管外面(没水状態にあり、腐食が懸念される部分)の点検が容易となり、予防保全による信頼性が向上する。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、前記管胴部および前記ベース部に補強用のリブを設けたことを特徴とする。
本発明によれば、吸込管を支持するために大きな力が加わるベース部および管胴部に補強用のリブを設けたため、変形を防止し、吸込管を安定して支持することができる。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記横軸ポンプのポンプ吐出部より分岐したバイパス配管を前記吸込管ベースを介して吸込水槽に戻すように構成したことを特徴とする。
本発明によれば、横軸ポンプのポンプ吐出部より分岐した管理運転用のバイパス配管を吸込管ベースを介して吸込水槽に戻すように構成したため、従来のようにポンプ据付床面の構築済みの土木構造部に穴を開けてバイパス配管を通し、貫通部をコンクリートで充填する施工の必要がなく、土木強度(配筋)に影響を与えず、バイパス配管を配設することが可能となる。これにより、吐出弁を全閉とし、バイパス管より吸込水槽にもどす循環ラインを容易に構成し、吸込水槽にあまり水がない場合でも、実負荷(実流)での定期的な一定時間の管理運転(ポンプの状態チェック)が行えるようになり、この予防保全により、故障等を未然に防止することが可能となる。つまり、より信頼性の高い設備の構築が可能となる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、前記横軸ポンプは減速機を介して原動機に連結されており、前記吸込管ベースのベース部は、前記減速機を固定するための減速機用ベース部を一体に備えていることを特徴とする。
本発明によれば、吸込管ベース上に減速機を設置することができるため、横軸ポンプ,吸込管,吸込管ベース,減速機を一体で据え付けることができる。したがって、横軸ポンプと減速機との間の芯出し調整や、減速機基礎の打設が無くなり、さらなる据付工程の短縮が可能となる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記横軸ポンプは減速機を介して原動機に連結されており、前記横軸ポンプおよび前記減速機を共通ベース上に設置し、該共通ベースを前記ポンプ設置床に固定したことを特徴とする。
本発明によれば、横軸ポンプと減速機とを共通ベースにより一体で据え付けることが可能となり、横軸ポンプと減速機との間の芯出し調整や、減速機基礎の打設が無くなり、さらなる据付工程の短縮が可能となる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記横軸ポンプは減速機を介して原動機に連結されており、前記横軸ポンプの主軸と前記減速機の出力軸とを前記横軸ポンプのポンプケーシング内で連結して一体のポンプ軸を形成し、該一体のポンプ軸を前記減速機の出力側軸受により支持させたことを特徴とする。
本発明は、ポンプ主軸と減速機出力軸とをポンプケーシング内で連結して一体のポンプ軸とし、この一体のポンプ軸をポンプ外側にあって減速機に固定された外軸受により支持させるようにしたものである。これにより、減速機の出力側軸受をポンプ外軸受として供用使用する構造とし、ポンプ外軸受を省略することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)ポンプ設置床の吸込管貫通部をコンクリートで充填しないことにより、コンクリートの硬化時間待ちや、コンクリートの硬化によるケーシングへのストレスが無く、施工上の工程短縮と据付精度の向上が図れる。
(2)吸込水槽内で常時水気にさらされて、腐食が懸念される吸込管の交換の際に、従来のような吸込管貫通部の2次コンクリートのハツリ作業が無く、交換作業が容易となる。
(3)ポンプ設置床の吸込管貫通部に後から充填されるコンクリートでは、継ぎ目部から漏れの懸念があるが、吸込管ベースを用いたことにより、丸ゴム等のシール部材によって機械加工面でのシールが可能となり、水密機能を確実に発揮できる。
(4)吸込管ベースのベース部に点検口が形成されているため、従来であれば、目視点検できない吸込水槽状態、吸込管外面(没水状態にあり、腐食が懸念される部分)の点検が容易となり、予防保全による信頼性が向上する。
(5)横軸ポンプのポンプ吐出部より分岐したバイパス配管を吸込管ベースを介して吸込水槽に戻すように構成したため、従来のようにポンプ据付床面の土木構造に穴を開けてバイパス配管を通し、貫通部をコンクリートで充填する施工の必要がなく、土木強度(配筋)に影響を与えず、バイパス配管を配設することが可能であり、より信頼性の高い設備の構築が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の横軸ポンプ装置の第1の実施形態を示す立面図である。
【図2】図2は、本発明の横軸ポンプ装置の第1の実施形態を示す平面図である。
【図3】図3は、吸込管ベースおよび吸込管の上部を示す要部拡大図である。
【図4】図4は、吸込管ベースのベース部とポンプ設置床との固定部を示す要部拡大断面図である。
【図5】図5は、ベースプレートの変形例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の横軸ポンプ装置の第2の実施形態を示す立面図である。
【図7】図7は、本発明の横軸ポンプ装置の第2の実施形態を示す平面図である。
【図8】図8は、本発明の横軸ポンプ装置の第3の実施形態を示す立面図である。
【図9】図9は、本発明の横軸ポンプ装置の第3の実施形態を示す平面図である。
【図10】図10は、本発明の横軸ポンプ装置に第4の実施形態を示す立面図である。
【図11】図11は、本発明の横軸ポンプ装置に第4の実施形態を示す平面図である。
【図12】図12は、図10および図11に示す横軸ポンプ装置に用いられている横軸ポンプの詳細構造を示す縦断面図である。
【図13】図13は、図12のXIII-XIII線断面図である。
【図14】図14は、従来の横軸ポンプ装置を示す概略立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る横軸ポンプ装置の実施形態について図1乃至図13を参照して説明する。図1乃至図13において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1および図2は、本発明の横軸ポンプ装置の第1の実施形態を示す概略図であり、図1は立面図であり、図2は平面図である。図1に示すように、横軸ポンプ1は吸込水槽110のポンプ設置床111上に据え付けられている。横軸ポンプ1は、横軸斜流ポンプからなり、羽根車2を支持するポンプ主軸3が水平方向(横方向)に延びた構成のものである。横軸ポンプ1は横軸軸流ポンプであってもよい。羽根車2を収容するポンプケーシング4は、ポンプ据付基礎5上に設置されている。ポンプケーシング4は、上部ケーシング4aと下部ケーシング4bとから構成されており、上下に分離可能になっている。横軸ポンプ1の下端部にあるポンプ吸込口1sには、吸込管6が連結されるようになっている。吸込管6は垂直に延び、その下端の吸込口6aは吸込水槽110内の液体中に位置している。
【0020】
本発明においては、横軸ポンプ1のポンプ吸込口1sおよび吸込管6を連結するとともに横軸ポンプ1をポンプ設置床111に固定するための吸込管ベース7を設けており、吸込管ベース7をポンプ設置床111に形成された吸込管貫通部111hに設置している。すなわち、吸込管ベース7は、横軸ポンプ1のポンプ吸込口1sを連結する上部連結部8aと、吸込管6を連結する下部連結部8bと、ポンプ設置床111にアンカーボルトにて固定するベース部9と、ポンプ吸込口1sと吸込管6とを連通させる流路を構成する円筒状の管胴部10とを備えている。吸込管ベース7の上部連結部8aには、横軸ポンプ1のポンプ吸込口1sがボルト接合により連結されている。また、吸込管ベース7の下部連結部8bには、吸込管6がボルト・ナット接合により連結されている。吸込管ベース7のベース部9は、シール部材を介してポンプ設置床111にアンカーボルトによって固定されている。
【0021】
図3は、吸込管ベース7および吸込管6の上部を示す要部拡大図である。図3に示すように、吸込管ベース7は、上端部に設けられた上部連結部8aと、下端部に設けられた下部連結部8bと、上部連結部8aと下部連結部8bとを接続する円筒状の管胴部10と、管胴部10の上部外周部から半径方向外側に延設された鍔状のベース部9とを備えている。管胴部10の内部は、ポンプ吸込口1sと吸込管6とを連通させる吸込流路の一部を構成している。上部連結部8aは、フランジ部になっており、横軸ポンプ1のポンプ吸込口1sに設けられたフランジ部1fとボルト接合されている。下部連結部8bは、同様にフランジ部になっており、吸込管6の上端に設けられたフランジ部6fとボルト・ナット接合されている。また、ベース部9はベースプレート13を介してポンプ設置床111に固定されている。前記管胴部10の外周部には、概略三角形状のプレートからなる補強用のリブ11が円周方向に間隔をおいて複数個設けられている。各リブ11は、管胴部10の外周部に接続されるとともにベース部9の下面および下部連結部8bの上面に接続されている。吸込管ベース7は、鋳鉄、構造用鋼などの機械的強度に優れた材料から構成されている。
【0022】
図4は、吸込管ベース7のベース部9とポンプ設置床111との固定部を示す要部拡大断面図である。図4に示すように、環状の鋼板からなるベースプレート13はアンカーボルト(一点鎖線で図示)14によってポンプ設置床111に固定されている。ベースプレート13をポンプ設置床111に固定する際には位置決め(レベル出し)を行う。そして、ベースプレート13上には吸込管ベース7のベース部9が載置されており、ベース部9はベース固定ボルト(一点鎖線で図示)15によってベースプレート13に固定されている。ベース部9とベースプレート13との間には丸ゴム等のシール部材16が介装されており、水密構造になっている。なお、ベースプレート13を設けずに、ベース部9をアンカーボルトによってポンプ設置床111に固定することもできる。この場合には、ベース部9とポンプ設置床111との間にシール部材が介装される。
【0023】
図5は、ベースプレート13の変形例を示す断面図である。図4に示すベースプレート13は平板状であったが、図5に示すベースプレート13は、コ字状の断面形状を有している。図5に示す例においては、ベース部9はボルト・ナット(一点鎖線で図示)17によってベースプレート13に固定される。
【0024】
本発明の吸込管ベース7においては、図3に示すように、ベース部9がベースプレート13に固定される部分と管胴部10の外周面または下部連結部8bとの間には、所定の間隔L(好ましくは200mm以上)が形成されており、ベース部9には、この間隔を利用して点検口9hが形成されている。そして、点検口9hから小型カメラ19を挿入して吸込水槽110や吸込管6を点検することが可能になっている。点検口9hには着脱可能な蓋18が設けられており、蓋18も水密構造になっている(図1参照)。
【0025】
図1および図2に示すように、横軸ポンプ1のポンプ吐出口1dには、吐出管20が接続されており、吐出管20には吐出弁21が設けられている。吐出管20には、吐出管20より分岐したバイパス配管22が設けられており、バイパス配管22は吸込管ベース7を介して吸込水槽110に戻すように構成されている。羽根車2を支持するポンプ主軸3は減速機24に連結されており、減速機24は原動機25に連結されている。減速機24および原動機25は、減速機・原動機据付基礎26上に設置されている。
【0026】
図1乃至図5に示す本発明の横軸ポンプ装置によれば、横軸ポンプ1のポンプ吸込口1sおよび吸込管6を連結するとともに横軸ポンプ1をポンプ設置床111に固定するための吸込管ベース7を設けたため、以下に列挙する効果が得られる。
(1)ポンプ設置床111の吸込管貫通部111hをコンクリートで充填しないことにより、コンクリートの硬化時間待ちや、コンクリートの硬化によるケーシングへのストレスが無く、施工上の工程短縮と据付精度の向上が図れる。
(2)吸込水槽110内で常時水気にさらされて、腐食が懸念される吸込管6の交換の際に、従来のような吸込管貫通部の2次コンクリートのハツリ作業が無く、交換作業が容易となる。
(3)ポンプ設置床111の吸込管貫通部111hに後から充填されるコンクリートでは、継ぎ目部から漏れの懸念があるが、吸込管ベース7を用いたことにより、丸ゴム等のシール部材によって機械加工面でのシールが可能となり、水密機能を確実に発揮できる。すなわち、従来のようにコンクリートを充填する場合、鉛直面で丸ゴム等を用いて水密性を確保することになるが、鉛直方向だと、接触面(コンクリート面)の精度や、丸ゴムの押しつけ施工が難しい等の課題があり、水密性の確保が困難であった。本構造によれば、面及び押し付け力の管理がしやすい水平面で丸ゴム等の防水・水密処置を行うことができ、確実な水密を行うことが可能になる。
(4)吸込管ベース7のベース部9に点検口9hが形成されているため、従来であれば、目視点検できない吸込水槽状態、吸込管外面(没水状態にあり、腐食が懸念される部分)の点検が容易となり、予防保全による信頼性が向上する。
(5)横軸ポンプ1のポンプ吐出部より分岐したバイパス配管22を吸込管ベース7を介して吸込水槽110に戻すように構成したため、従来のようにポンプ据付床面の土木構造に穴を開けてバイパス配管を通し、貫通部をコンクリートで充填する施工の必要がなく、土木強度(配筋)に影響を与えず、バイパス配管22を配設することが可能であり、より信頼性の高い設備の構築が可能である。
【0027】
図6および図7は、本発明の横軸ポンプ装置の第2の実施形態を示す概略図であり、図6は立面図であり、図7は平面図である。図6および図7に示すように、本実施形態の吸込管ベース7は、上下部連結部8a,8b、ベース部9および管胴部10等に加えて、減速機24を設置するための減速機用ベース9aを備えている。すなわち、本実施形態の吸込管ベース7は、図3に示すベース部9に加えて減速機用ベース9aが一体化された減速機ベース一体型の吸込管ベースとして構成されている。そして、減速機用ベース9a上に減速機24が固定されている。また、原動機25は原動機据付基礎27上に設置されている。本実施形態におけるその他の構成は、図1および図2に示す実施形態と同様である。
【0028】
図6および図7に示す本発明の横軸ポンプ装置によれば、吸込管ベース7上に原動機25の回転速度を減速させる減速機24を設置することができるため、横軸ポンプ1,吸込管6,吸込管ベース7,減速機24を一体で据え付けることができる。したがって、横軸ポンプ1と減速機24との間の芯出し調整や、減速機基礎の打設が無くなり、据付工程の短縮が可能となる。
【0029】
図8および図9は、本発明の横軸ポンプ装置の第3の実施形態を示す概略図であり、図8は立面図であり、図9は平面図である。図8および図9に示すように、ポンプ設置床111上にはポンプベース据付基礎28が設けられており、ポンプベース据付基礎28上に鋼材からなるポンプ共通ベース29が設置されている。そして、ポンプ共通ベース29上に横軸ポンプ1が設置されるとともに減速機24が設置されている。すなわち、ポンプ共通ベース29上に、横軸ポンプ1と原動機25の回転速度を減速させる減速機24とが設置されている。本実施形態によれば、横軸ポンプ1と減速機とを共通ベース29により一体で据え付けることが可能となり、横軸ポンプ1と減速機24との間の芯出し調整や、減速機基礎の打設が無くなり、据付工程の短縮が可能となる。なお、原動機25は原動機据付基礎30上に設置されている。本実施形態におけるその他の構成は、図1および図2に示す実施形態と同様である。
【0030】
図10および図11は、本発明の横軸ポンプ装置に第4の実施形態を示す概略図であり、図10は立面図であり、図11は平面図である。図10および図11に示すように、本実施形態の吸込管ベース7は、上下部連結部8a,8b、ベース部9および管胴部10等に加えて、減速機24を設置するための減速機用ベース9aを備えている。すなわち、本実施形態の吸込管ベース7は、図3に示すベース部9に加えて減速機用ベース9aが一体化された減速機ベース一体型の吸込管ベースとして構成されている。そして、減速機用ベース9a上に減速機24が固定されている。また、原動機25は原動機据付基礎27上に設置されている。
【0031】
図12は、図10および図11に示す横軸ポンプ装置に用いられている横軸ポンプの詳細構造を示す縦断面図である。図12に示すように、ポンプケーシング4内には羽根車2が収容されており、羽根車2はポンプ主軸3により支持されている。ポンプ主軸3は、ポンプケーシング4内の水中軸受31aおよび中間軸受31bにより支持されている。ポンプ主軸3は、水中固定軸継手32により減速機出力軸33と接続されている。そして、減速機出力軸33は、減速機24に固定された外軸受34により支持されている。なお、符号24gは、減速機24の一部を構成する大歯車である。
【0032】
図13は、図12のXIII-XIII線断面図である。図13に示すように、ポンプケーシング4は、上部ケーシング4aと下部ケーシング4bとから構成されており、上下に分離可能になっている。前記中間軸受31bは、下部ケーシング4bに固定された中間軸受ケース35内に収容されている。
図12および図13に示すように、本実施形態の横軸ポンプ装置は、ポンプ主軸3と減速機出力軸33とをポンプケーシング4内で連結して一体のポンプ軸とし、この一体のポンプ軸をポンプ外側にあって減速機24に固定された外軸受34により支持させるようにしたものである。すなわち、減速機24の出力側軸受である外軸受34をポンプ外軸受として供用使用する構造とし、ポンプ外軸受を省略したものである。
【0033】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 横軸ポンプ
1d ポンプ吐出口
1f フランジ部
1s ポンプ吸込口
2 羽根車
3 ポンプ主軸
4 ポンプケーシング
4a 上部ケーシング
4b 下部ケーシング
5 ポンプ据付基礎
6 吸込管
6a 吸込口
6f フランジ部
7 吸込管ベース
8a 上部連結部
8b 下部連結部
9 ベース部
9a 減速機用ベース
9h 点検口
10 管胴部
11 リブ
13 ベースプレート
14 アンカーボルト
15 ベース固定ボルト
16 シール部材
17 ボルト・ナット
18 蓋
19 小型カメラ
20 吐出管
21 吐出弁
22 バイパス配管
24 減速機
24g 大歯車
25 原動機
26 減速機・原動機据付基礎
27 原動機据付基礎
28 ポンプベース据付基礎
29 ポンプ共通ベース
30 原動機据付基礎
31a 水中軸受
31b 中間軸受
32 水中固定軸継手
33 減速機出力軸
34 外軸受
35 中間軸受ケース
110 吸込水槽
111 ポンプ設置床
111h 吸込管貫通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を揚水する横軸ポンプと、該横軸ポンプに液体を流す流路を形成する吸込管とを備えた横軸ポンプ装置において、
前記横軸ポンプのポンプ吸込口および前記吸込管を連結するとともに前記横軸ポンプをポンプ設置床に固定するための吸込管ベースを前記ポンプ設置床に形成された吸込管貫通部に設け、
前記吸込管ベースは、前記横軸ポンプのポンプ吸込口を連結する上部連結部と、前記吸込管を連結する下部連結部と、前記横軸ポンプを前記ポンプ設置床に固定するためのベース部と、前記ポンプ吸込口と前記吸込管とを連通させる流路を内部に有する管胴部とを備えたことを特徴とする横軸ポンプ装置。
【請求項2】
前記ベース部は前記管胴部の外周部から半径方向外方に延びる鍔状部材からなり、前記ベース部は、ベースプレートを介して前記ポンプ設置床に固定されることを特徴とする請求項1記載の横軸ポンプ装置。
【請求項3】
前記ベース部が前記ポンプ設置床に固定される部分にシール部材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の横軸ポンプ装置。
【請求項4】
前記ベース部が前記ポンプ設置床に固定される部分と、前記管胴部の外周面または前記下部連結部との間には所定の間隔が形成されており、この間隔が形成された部分を利用して前記ベース部に点検口を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の横軸ポンプ装置。
【請求項5】
前記管胴部および前記ベース部に補強用のリブを設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の横軸ポンプ装置。
【請求項6】
前記横軸ポンプのポンプ吐出部より分岐したバイパス配管を前記吸込管ベースを介して吸込水槽に戻すように構成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の横軸ポンプ装置。
【請求項7】
前記横軸ポンプは減速機を介して原動機に連結されており、前記吸込管ベースのベース部は、前記減速機を固定するための減速機用ベース部を一体に備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の横軸ポンプ装置。
【請求項8】
前記横軸ポンプは減速機を介して原動機に連結されており、前記横軸ポンプおよび前記減速機を共通ベース上に設置し、該共通ベースを前記ポンプ設置床に固定したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の横軸ポンプ装置。
【請求項9】
前記横軸ポンプは減速機を介して原動機に連結されており、前記横軸ポンプの主軸と前記減速機の出力軸とを前記横軸ポンプのポンプケーシング内で連結して一体のポンプ軸を形成し、該一体のポンプ軸を前記減速機の出力側軸受により支持させたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の横軸ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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