説明

横開閉シャッター装置

【課題】本発明が解決しようとする課題は、床面に視認できる下レールを配置しない横開閉シャッター装置を提供することである。
【解決手段】本発明の横開閉シャッター装置は、吊り下げ用上レールにシャッター本体を吊り下げて摺動軌跡線に沿って摺動させて開閉する横開閉シャッター装置において、シャッター本体の上端縁近傍には複数の永久磁石要素から構成された永久磁石の列が上下方向に極性を揃えて設けられ、前記吊り下げ用上レールにも複数の永久磁石要素から構成された永久磁石の列が上下方向に極性を揃えて設けられており、前記シャッター本体の下端縁近傍には永久磁石が上下方向に極性を揃えて設けられており、床面側には該シャッター本体の摺動軌跡線に沿って永久磁石が上下方向に極性を揃えて設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面側に機械的案内部材としての下部ガイド用レールを備えず、天井面側にも機械的案内部材としての上部吊り下げ用レールを備えない横開閉シャッター装置に関し、具体的には、シャッター装置下部の床面側にはシャッター装置の摺動軌跡線に沿って複数の永久磁石要素から構成される永久磁石の列を対向配置し、さらには、シャッター上部にも複数の永久磁石要素から構成される永久磁石の列を対向配置して、上下共に走行ローラを備えず、機械的な摺動構造を用いない横開閉シャッター装置に関する。本発明において「摺動」との用語は、シャッター装置が床面或いはレールが機械的に接触して移動することを意味するものではなく、シャッター装置が床面に対して相対的に移動することを意味するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、横引きシャッターと呼ばれる横方向に開閉するシャッターは知られており、それを図8に示す。この横開閉シャッター200は、天井CLに設けられた吊り下げ用上レール220と床面FLに設けられた下レール230との間にシャッター本体210を吊し、下レール230に沿って案内摺動させるものである。このシャッター本体210の上下の用レール220,230は、何れも建物の一部に固定された上下のレール枠体221,231より構成されており、吊り下げ用上レール220にはレール222が設けられている。そのレール222には、走行ローラ223を介してシャッター本体210が吊り下げられている。下レール枠体231は、床面に設けられた上に開いたU字状の枠レールであり、そのU字状の下レール枠体231は、シャッター本体210下部に取り付けられたガイドローラ232の案内溝として機能する。これにより、シャッター本体210を手により左右に操作すれば、走行ローラ223に吊るされたシャッター本体210は、ガイドローラ232により案内されて左右に開閉される。
【0003】
このような、従来の横開閉シャッターは、床面側にはシャッター装置を機械的に案内摺動させる下レールを必須とするものであり、それが故にシャッター装置が開いている際には、下レール枠体231は、床面に対して開口したU字状溝が露出されるので、雨水が溜まったり、枯葉や塵埃が侵入・付着したりして汚損し、腐蝕することが懸念されていた。また、女性のハイヒールの踵が挟まって転倒する事故も発生している。そこで、シャッターの開放時には、下レール枠体231のU字状開放溝に蝶番機構を備えた開閉板を設けて閉じることにより問題を解決しようとするものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開平6−323072号公報)では、横引きシャッターの開放時において下部レール溝を封鎖して開口部を行き来する移動物、歩行者等の安全とレール溝の保全を図ることができると共に、非直線状の溝を有する下部レール溝にも対応することができる横引きシャッターの下部レール溝カバーを提供するとしている。これは、複数のパネルからなる横引きシャッターの下部を、下部レール溝に遊嵌し、かつ該下部レール溝の開放面を封鎖するカバー体を、上記下部レール溝の一側縁を回動支点として開閉自在に沿設すると共に、上記カバー体を、傾斜状に切込んで所要数のカバーピースに分割し、横引きシャッターの開放、閉鎖操作に連繋して、上記各カバーピースを起伏可能に構成している。
【0005】
また、特許文献2(特開平8−303159号公報)は、横引シャッターの下レールのUレールの開閉を自在とすることを目的とし、下レールのUレールを可動状に構成し、シャッターの開閉に応じてUレールを上下もしくは前後に逆転してU溝を閉塞もしくは開口自在としている。この横引シャッターのガイド用下レールは、敷設した断面凹状のレール基枠と、そのレール基枠の凹状部に嵌装する可動状のU状レールとよりなり、前記レール基枠の凹状部に、前記可動状U状レールをシャッターの開閉走行に応じてU状もしくは逆U状に上下を反転させて取付けるように設けたことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−323072号公報
【特許文献2】特開平8−303159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の横開閉シャッターにおいては、吊り下げ用及びガイド用の上下レールでは、レールと走行ローラとが機械的に接触状態で摺動するために機械的摺動音が発生する。そこで本発明が解決しようとする大きな課題は、吊り下げ用上レール部において機械的摺動機構を備えない横開閉シャッター装置を提供することである。本発明は、それにより、機械的な摺動機構を用いないことにより、その機械的摺動音をなくそうとするものである。
【0008】
さらに、以上の従来技術においては、上下に機械的な摺動機構を備え、床面に設置された下レールの上方開放溝部は蓋により閉じられるものの、床面の下レールそのものは存在しており、それを取り除くことはできないが故に、多少の段差が生じたり外観上の見栄えが損なわれたりすることは解消できていない。そこで、本発明が解決しようとする課題は、床面に視認できる下レールを配置しない横開閉シャッター装置を提供することである。
【0009】
さらに、本発明は、機械的な摺動機構として配置する下レールの摺動摩擦力によりシャッター装置の開閉に大きな力を要する点を解消するものである。また、本発明は、機械的な摺動機構として配置する下レールとそれをガイドするローラとの間のクリアランスにより発生するシャッター装置の横揺れを防止しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の横開閉シャッター装置は、吊り下げ用上レールにシャッター本体を吊り下げて軌跡線に沿って摺動させて開閉する横開閉シャッター装置において、該シャッター本体の上端縁近傍には複数の永久磁石要素から構成された永久磁石の列が上下方向に極性を揃えて設けられ、前記吊り下げ用上レールにも複数の永久磁石要素から構成された永久磁石の列が上下方向に極性を揃えて設けられており、
前記シャッター本体の上端縁近傍に設けた永久磁石の列の上下方向の極性と、前記吊り下げ用上レール内に配置した永久磁石の列の上下方向の極性は対向した極性となるよう、前記シャッター本体の上端縁近傍に設けた永久磁石の列の上下方向の極性が上がS極で下がN極であれば、前記吊り下げ用上レール内に配置した永久磁石の列の上下方向の極性は上がN極で下がS極とし、前者の極性が上がN極で下がS極であれば、後者の極性は上がS極で下がN極となるように構成したことを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の横開閉シャッター装置は、床面には、前記シャッター本体の摺動軌跡線に沿って永久磁石を上下方向に極性を揃えて設け、それに対向してシャッター本体の下端縁近傍にも複数の永久磁石要素から構成された永久磁石の列を上下方向に極性を揃えて設け、前記床面側に設けた永久磁石の列と前記シャッター本体に設けた永久磁石の列との反発力により前記シャッター本体を前記摺動軌跡線に沿って摺動させることを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の横開閉シャッター装置は、前記シャッター本体の摺動軌跡線に沿って床面側に配置された永久磁石の列は、該摺動軌跡線を挟んで所定距離だけ離して配置した2本の列として構成したことを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の横開閉シャッター装置は、前記床面側の永久磁石の列が1本の列状に配設され、且つ、それに対向したシャッター本体の下端縁近傍の永久磁石の列が2本の列状に配設されており、前記床面側の1本の永久磁石の列が、それに対向した前記シャッター本体の下端縁近傍の2本の永久磁石の列の間に配置されたことを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の横開閉シャッター装置は、前記床面に配置した永久磁石の列の上下方向の極性と、それに対向する前記シャッター本体の下端縁近傍に設けた永久磁石の列の上下方向の極性は対向した極性となるように、床面に配置した永久磁石の列のシャッター側に向いた極性がS極であれば、前記シャッター本体の下端縁近傍に設けた永久磁石の列の床面側に向いた極性もS極とし、前者の極性がN極であれば、後者の極性もN極となるように構成したことを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の横開閉シャッター装置は、前記吊り下げ用上レール内には、横揺れ防止用のローラを配置したことを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の横開閉シャッター装置は、前記シャッター本体は複数の短冊状シャッターユニットを繋げて構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上のような構成により、機械的な摺動機構を用いないために機械的摺動音を解消した静音化横開閉シャッター装置を提供することが可能なものである。
【0018】
さらに本発明は、以上のような構成により、床面に視認可能なガイド用下レールを設けることなく横開閉シャッター装置を提供することが可能なものである。
【0019】
さらに本発明は、以上のような構成により、床面に視認可能なガイド用下レールを設けることなく、シャッター本体の摺動軌跡線に沿って配設した永久磁石の列の反発力によりガイドしているために、極めて小さな力で摺動させることができる横開閉シャッター装置を提供することが可能なものである。
【0020】
さらに本発明は、床面に視認可能なガイド用下レールを設けていないにも拘わらず、シャッター装置の摺動方向と直交する方向に押したとしても、磁石の反発力により強固に反発して振れることがない横開閉シャッター装置を提供することが可能なものである。
【0021】
さらに本発明は、横開閉シャッター装置を開いてしまえば、床面に何らの痕跡もなくフラットな床面を提供することができるので、美観の維持に絶大な効果を発揮する。
【0022】
さらに本発明は、床面にガイド用下レールを設けていないので、枯葉や塵埃が溜まることもなく掃除が簡単であるし、不注意により足を取られたり、車椅子で不自由を感じたりすることもないものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)は本発明の横開閉シャッター装置の断面構成図であり、(B)は、短冊状シャッターユニットの断面図であり、(C)は別実施例の構成図である。
【図2】(A)は本発明の横開閉シャッター装置のシャッター本体の詳細構成図であり、(B)は(A)のB−B断面構成図である。
【図3】本発明の横開閉シャッター装置の各永久磁石の列の配置を示す詳細図である。
【図4】本発明の横開閉シャッター装置の全体構成を示す一部断面斜視図である。
【図5】本発明の横開閉シャッター装置の摺動軌跡線に沿って床面に配置した永久磁石の配置図の一例である。
【図6】(A)は本発明の横開閉シャッター装置の床面に配置する磁石ユニットの構成を示す斜視図であり、(B)はその磁石ユニットを床面側に配置する際の設置構成の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明の横開閉シャッター装置における永久磁石の機能説明図であり、(A)は床面に2列の永久磁石の列を配置し、(B)は床面に1列の永久磁石の列を配置したものである。
【図8】従来の横開閉シャッター装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。図1(A)は、本発明の横開閉シャッター装置の断面構成図である。以下、本発明の横開閉シャッター装置を具体的な実施例を基にして説明するが、発明の技術思想に反しない限り当業者が容易にできる変更は可能であり、本発明の技術的範囲に属するものである。
【0025】
本発明の横開閉シャッター装置100は、天井CLに横開閉シャッターの摺動軌跡線150(図3,図4等)に沿って吊り下げ用上レール120が設けられており、吊り下げ用上レール120にシャッター本体110を吊り下げて摺動軌跡線に沿って摺動させて開閉するものである。吊り下げ用上レール120には、その両側の下端部に一対の永久磁石要素122,122を、シャッター本体110を挟んで、複数個並べて永久磁石の列122,122,122・・・及び122,122,122・・・を構成し対向して列状に配置している。この永久磁石の列122,122,122・・・及び122,122,122・・・は、吊り下げ用上レール120に沿って2列が固定配置され、その永久磁石要素122の磁極を図1における上下方向に合わせて配置している。図示の実施例においては、全ての永久磁石要素122が上方にS極を向けて揃えて配置されている。この永久磁石の列122,122,122・・・及び122,122,122・・・は、各永久磁石要素122,122,122・・・が、隙間なく密着して隣接配置される必要がある。
【0026】
本発明のシャッター本体110の詳細な構成は、図2(A)及び(B)に示されており、シャッター本体110は、連結された複数の短冊状シャッターユニット101,101,101・・・から構成され、複数の短冊状シャッターユニット101,101,101・・・は相互に連接されている。この連接構造は、図1(B)に示すように、各短冊状シャッターユニット101に設けられた連接凸部102と連接凹部103により達成されている。
【0027】
このように連結されたシャッター本体110は、吊り下げ用上レール120内に挿入されており、吊り下げ用上レール120側の固定配置された一対の永久磁石の列122,122,122・・・及び122,122,122・・・に対向して、複数の磁石要素123,123で構成された一対の永久磁石の列123,123,123・・・及び123,123,123・・・が設けられている。各永久磁石要素123,123は、各短冊状シャッターユニット101,101の上端部近傍に固定して設けられる。この場合、永久磁石要素123,123の上下方向の磁極の方向は、永久磁石の列122,122,122・・・及び122,122,122・・・の上下方向の磁極の方向と対向しており、反発力を生じる極性に設置される。つまり、図示の実施例においては、下方にS極を揃えて配置し、吊り下げ用上レール120側の永久磁石の列122,122,122・・・及び122,122,122・・・の上方のS極と、短冊状シャッターユニット101側の永久磁石の列123,123,123・・・の下方のS極とが対向している。これにより、シャッター本体110は、自重に抗して吊り下げ用上レール120内に浮上して吊り下げられ、小さな力の開閉動作により簡単に開閉できる。
【0028】
シャッター本体110を構成する短冊状シャッターユニット101,101の上端部には、適宜の数だけ支持部材125を介して横揺れ防止ローラ124,124が設けられている。これは、シャッター本体110が摺動軌跡線に沿って摺動する際に、摺動軌跡線の方向に直交する方向に揺れるのを防止するためのものである。また、シャッター本体110が、一対の永久磁石の列122,122,122・・・及び122,122,122・・・の上方のS極と、シャッターユニット101側の永久磁石の列123,123,123・・・の下方のS極との間の反発力でレール枠体121の天井面に追突することを防止するために縦揺れ防止ローラ126を適宜数設けることが望ましい。このような構成により、シャッター本体110は、レール枠体121内で機械的な摺動機構を設けずに、シャッターの摺動軌跡線に沿った摺動を可能とするものである。また、横揺れ防止ローラ124,124及び縦揺れ防止ローラ126とレール枠体121との摺接部分においても機械的摺動機構も設けないようにするためには、レール枠体121の天井面側に、永久磁石123,123の上方のN極と反発するように、下方にN極を配した永久磁石の列127,127,127・・・(図1(C)参照)を設けることも可能である。
【0029】
さらに、本発明は、床面に視認可能な下部ガイド用レールを備えない構成を達成するために、各々の短冊状シャッターユニット101の下端部には永久磁石要素141が設けられている。短冊状シャッターユニット101の最下端部は、床面FLから5〜10mm程度は成して吊り下げられている。床面FLに、横開閉シャッター装置100の摺動軌跡線150(図2(B),図3)に沿って一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・が埋設されている。そして、各々の短冊状シャッターユニット101の下端部には永久磁石要素141が設けられ、シャッター本体110としては、一列状に永久磁石の列141,141,141・・・が設けられている。場合によっては、この永久磁石要素141は、全ての短冊状シャッターユニット101に設ける必要はなく、飛び飛びに設けても良い。
【0030】
本実施例においては、短冊状シャッターユニット101の最下端部は、床面FLから5〜10mm程度離して吊り下げられている。この床面から短冊状シャッターユニット101の最下端部までの距離は、横開閉シャッター装置100の設計仕様として適宜選択可能なものである。ただし、この床面から短冊状シャッターユニット101の最下端部までの距離は、図7に関連して後述するように、一本の永久磁石の列141,141,141・・・の磁力線が、一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・の磁力線の間に挟まれるような関係に配置することが大切である。このような状態を磁力線がオーバーラップした状態と称する。このような状態は、磁力検知手段を用いて、床面上を摺動軌跡線を横切って磁力の強さを測定することによりピークを2回検知することになるので容易に検出することができる。そして、図7(A)及び(B)で示す磁力線がオーバーラップする上下の寸法が少ないとシャッター本体110の横揺れの阻止は難しい場合がある。
【0031】
図3に各永久磁石の列の配置関係を詳細に示す。図3に示された実施例においては、床面に配置された複数の永久磁石要素151及び161が相互に密接して配置され、永久磁石の列151,151,151・・・及び、それと並列した永久磁石の列161,161,161・・・を形成しているが、短冊状シャッターユニット101の下端部に設けられた永久磁石要素141は、各短冊状シャッターユニット101に設けられてはいるものの、各永久磁石要素は相互に距離をおいて1列状に配置されている。つまり、複数の短冊状シャッターユニット101,101,101・・・から構成されるシャッター本体110に設けた永久磁石を相互に密着して配置することは困難であるし、各永久磁石要素141は相互に密着させる必要はない。設計によっては、永久磁石要素141は、全ての短冊状シャッターユニット101に設けなくとも良い。しかしながら、本発明の横開閉シャッター装置においては、床面に配置されたガイド用の永久磁石の列の配置においては、各永久磁石要素を相互に密着させて配置することが大切である。また、この場合の永久磁石の強さや配置間隔、及び永久磁石の列151,151,151・・・又は161,161,161・・・と永久磁石の列141,141,141・・・との距離は、横開閉シャッター装置100の揺れを阻止するのに必要な力によって設計的に決められるものである。
【0032】
図4は、本発明の横開閉シャッター装置100の全体構成を示す一部断面斜視図である。天井側に設けられたレール枠体121に多数の短冊状シャッターユニット101,101,101・・・から構成されるシャッター本体110が、永久磁石の列122,122,122・・・及び122,122,122・・・の上方のS極と、永久磁石123,123の下方のS極との間の反発力で吊り下げられており、短冊状シャッターユニット101の下端部には永久磁石要素141が設けられている。床面FLには、横開閉シャッター装置100の摺動軌跡線150を挟んで、一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・が相互に所定距離だけ離して配設されている。これにより、摺動軌跡線150に沿って横開閉シャッター装置100を押せば極めて小さな力で開閉することが可能である。それに対して、横開閉シャッター装置100を摺動軌跡線150の直交方向に押しても、シャッター本体110側の永久磁石の列141,141,141・・・に対する床面側の一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・からの反発力によりシャッター本体110の揺動が阻止されている。
【0033】
図5には、U字状の摺動軌跡線150に沿って、床面に設けた磁石列の配置構成を示している。この配置構成では、U字状の摺動軌跡線150に沿って、一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・が配置されているが、そのカーブ部152或いは153における磁石の配置が相違している。つまり、カーブ部152では、一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・が連続して配置されているが、カーブ部153では、一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・が配置されていない。このように、カーブ部153の床面に連続した一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・を形成しなくとも、シャッター本体110は、天井側に配置された吊り下げ用上レール120に沿って摺動するために、シャッター本体110が永久磁石の列の配設されていないカーブ部153の何れか側から一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・の間に導き入れられる。この導入を確実にするには、図示はしないが、カーブ部153の両側に配設された一対の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・の出入り側をラッパ状に配設すれば良い。
【0034】
図6(A)には、複数の永久磁石要素151を相互に密着して配列した磁石ユニット155を示している。磁石ユニット155は、例えば、アルミニウムや合成樹脂等の磁石に吸引されない材料で作られた断面4角形の直方体の筒状容器156であり、その内部に複数の永久磁石要素151,151,151・・・を挿入している。この筒状容器156の両端部は、適宜ビス等で止められた蓋157,157で磁石要素151が飛び出さないようにしている。本発明においては、この磁石ユニット155,155,155を、適当な固定バンド159,159,159・・・等で床面FL下部の構造物に取り付けて、一対の列状に配置している(図6(B))。図6(B)においては、この構造物の上に床面FLが配置されるが図示してはいない。
【0035】
以下、図7(A)及び(B)の説明においては、その方向関係は図面上の方向に従って説明するものとする。図7(A)及び(B)に、上下の各永久磁石要素141,151,161の配置関係の詳細が、各永久磁石の列の一部の永久磁石要素として示されており、(A)は、床面に2列の永久磁石の列を配置し、摺動軌跡線に沿って摺動するシャッター本体110には1列の永久磁石の列を配置したものである。
【0036】
図7(A)において明らかなように、シャッター本体110側の永久磁石要素141(又は永久磁石の列141,141,141・・・)の磁力線は、床面側の2列の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・の磁力線とは上下の方向において少しオーバーラップしている。このような磁極の関係で配置することにより、シャッター本体110側の永久磁石要素141(又は永久磁石の列141,141,141・・・)は、床面側の2列の永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・から同じ大きさの強力な力F,Fを受けることになり、図示の方向で左右への揺動が阻止される。しかし、図示の方向で、シャッター本体110側の永久磁石要素141(又は永久磁石の列141,141,141・・・)が図面の垂直方向に摺動することは何ら阻止されない。これにより、シャッター本体110を手により図示の垂直方向に操作すれば、走行ローラ123に吊るされたシャッター本体110は、床面の永久磁石の列151,151,151・・・と列161,161,161・・・との間を案内されて図示の垂直方向に開閉される。床面に配置された永久磁石の列151,151,151・・・と列161,161,161・・・との距離は、シャッター本体110の厚みにより変更可能であるが、一般的には30〜50mm程度の所定の距離を置いて配置されている。
【0037】
図7(B)は、床面に1列の永久磁石の列151,151,151・・・を配置し、摺動軌跡線に沿って摺動するシャッター本体110には2列の永久磁石の列141a,141a,141a・・・及び141b,141b,141b・・・を配置したものである。図7(B)においては、シャッター本体110側の2列の永久磁石の列141a,141a,141a・・・及び141b,141b,141b・・・の磁力線は、床面側の永久磁石の列151,151,151・・・の磁力線とは上下の方向において少しオーバーラップしている。このような磁極の関係で配置することにより、シャッター本体110側の2列の永久磁石の列141a,141a,141a・・・及び141b,141b,141b・・・は、床面側の1列の永久磁石の列151,151,151・・・から同じ大きさの強力な力F,Fを受けることになり、図示の方向で左右への揺動が阻止される。しかし、図示の方向で、シャッター本体110側の永久磁石の列141a,141a,141a・・・及び141b,141b,141b・・・が図面の垂直方向に摺動することは何ら阻止されない。これにより、シャッター本体110を手により図示の垂直方向に操作すれば、走行ローラ123に吊るされたシャッター本体110は、床面の永久磁石の列151,151,151・・・に沿って案内されて図示の垂直方向に開閉される。このような構成は、シャッター本体110の厚みが厚いものの場合に適切であり、シャッター本体110の厚みが十分に取れるものであれば自立が可能で転倒の危険性の低い構造とすることができ、天井面の吊り下げ用上レール120を設けない構成も可能である。
【0038】
このことから、対向させた永久磁石の列の配置は、1列に対しては2列、2列に対しては3列、3列に対しては4列等を配設することが容易に思いつくものである。つまり、一方の永久磁石の列をn本とした場合には、対向する他方の永久磁石の列は(n+1)本を配設するのが望ましいものである。
【0039】
本実施例において、各々の短冊状シャッターユニット101の下端部に設けられた永久磁石要素141は、上方に向けてS極を配置し下方を向けてN極が配置されている。図示した実施例では、ブロック状の磁石要素を用いているが、これに代えて複数の平板状の永久磁石を接着剤で張り合わせて構成しても良い。この永久磁石要素141は、各短冊状シャッターユニット101の最下端部から2〜4mm程度の距離で床面に近づけて設ける方が良い。
【0040】
一方、永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・は、床面下5〜10mm程度に埋設され、横開閉シャッター装置100の摺動軌跡線150(図2(B),図3)に沿って所定距離を離して並列に設けられている。床面下に埋設された永久磁石の列151,151,151・・・及び161,161,161・・・の各永久磁石は、図1に示した実施例では、同極を向けて配置した複数個の永久磁石要素から構成された永久磁石ユニットを列状に並べて形成しているが、ブロック状の永久磁石要素に代えて、2枚以上の薄板上の永久磁石を接着剤で張り合わせて構成しても良いし、ユニット構成としなくても良い。ただし、複数の磁石要素は、密着させて配設する必要があり、また、各短冊状シャッターユニット101の下端部に設けられた永久磁石141の上下方向の極性と反対の極性、つまり、図示した実施例では、上方に向けてN極を配置し下方を向けてS極を配置する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の横開閉シャッター装置は、建物に取り付ける横開閉シャッターに利用可能なことは当然であるが、各種機械装置等の横開閉シャッター装置にも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0042】
CL 天井
FL 床面
100 横開閉シャッター装置
110 シャッター本体
101 短冊状シャッターユニット
120 吊り下げ用上レール
121 レール枠体
122,123,127 永久磁石要素(その列が永久磁石の列)
124 横揺れ防止ローラ
125 支持部材
126 縦揺れ防止ローラ
141,151,161 永久磁石要素(その列が永久磁石の列)
155 磁石ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り下げ用上レールにシャッター本体を吊り下げて摺動軌跡線に沿って摺動させて開閉する横開閉シャッター装置において、該シャッター本体の上端縁近傍には複数の永久磁石要素から構成された永久磁石の列が上下方向に極性を揃えて設けられ、前記吊り下げ用上レールにも複数の永久磁石要素から構成された永久磁石の列が上下方向に極性を揃えて設けられており、
前記シャッター本体の上端縁近傍に設けた永久磁石の列の上下方向の極性と、前記吊り下げ用上レール内に配置した永久磁石の列の上下方向の極性は対向した極性となるよう、前記シャッター本体の上端縁近傍に設けた永久磁石の列の上下方向の極性が上がS極で下がN極であれば、前記吊り下げ用上レール内に配置した永久磁石の列の上下方向の極性は上がN極で下がS極とし、前者の極性が上がN極で下がS極であれば、後者の極性は上がS極で下がN極となるように構成したことを特徴とする横開閉シャッター装置。
【請求項2】
床面には、前記シャッター本体の摺動軌跡線に沿って複数の永久磁石要素から構成された永久磁石の列を上下方向に極性を揃えて設け、それに対向してシャッター本体の下端縁近傍にも複数の永久磁石要素から構成された永久磁石の列を上下方向に極性を揃えて設け、前記床面側に設けた永久磁石の列と前記シャッター本体に設けた永久磁石の列との反発力により前記シャッター本体を前記摺動軌跡線に沿って摺動させることを特徴とする請求項1記載の横開閉シャッター装置。
【請求項3】
前記シャッター本体の摺動軌跡線に沿って床面側に配置された永久磁石の列は、該摺動軌跡線を挟んで所定距離だけ離して配置した2本の列として構成したことを特徴とする請求項2記載の横開閉シャッター装置。
【請求項4】
前記床面側の永久磁石の列が1本の列状に配設され、且つ、それに対向したシャッター本体の下端縁近傍の永久磁石の列が2本の列状に配設されており、前記床面側の1本の永久磁石の列が、それに対向した前記シャッター本体の下端縁近傍の2本の永久磁石の列の間に配置されたことを特徴とする請求項2記載の横開閉シャッター装置。
【請求項5】
前記床面に配置した永久磁石の列の上下方向の極性と、それに対向する前記シャッター本体の下端縁近傍に設けた永久磁石の列の上下方向の極性は対向した極性となるように、床面に配置した永久磁石の列のシャッター側に向いた極性がS極であれば、前記シャッター本体の下端縁近傍に設けた永久磁石の列の床面側に向いた極性もS極とし、前者の極性がN極であれば、後者の極性もN極となるように構成したことを特徴とする請求項2乃至請求項4の内の一つの請求項に記載の横開閉シャッター装置。
【請求項6】
前記吊り下げ用上レール内には、横揺れ防止用のローラを配置したことを特徴とする請求項1乃至5の内の一つの請求項に記載の横開閉シャッター装置。
【請求項7】
前記シャッター本体は複数の短冊状シャッターユニットを繋げて構成したことを特徴とする請求項1乃至6の内の一つの請求項に記載の横開閉シャッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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