説明

樹枝状高分子アクリレートを含むフォトクロミック物品

例えばレンズ等の光学物品のような物品であって、(a)フォトクロミックコーティングに適応させるのに好適な少なくとも1つの表面を有する硬質基材(例えば、熱硬化性基材又は熱可塑性基材等の透明な眼用基材)、及び(b)基材の前記表面の少なくとも一部上の、樹枝状高分子アクリレート(例えば、ポリエステルアクリレート)を含む透明なフォトクロミックコーティングであって、フォトクロミック量の少なくとも1種のフォトクロミック材料(例えば、有機フォトクロミック材料)を含む透明なフォトクロミックコーティングを含む、物品について説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2005年8月31日に出願された、仮特許出願番号60/712,946に対する優先権を主張する。この仮特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、新規のフォトクロミックコーティング、及びこのようなフォトクロミックコーティングが適用された物品に関する。より具体的には、本発明は、物品の表面上にこのようなフォトクロミックコーティングを有する光学物品(例えば、眼用レンズ等の眼用物品)に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
フォトクロミック物品は、その物品内にフォトクロミック材料を組み込むことによって調製されている。これは、例えばフォトクロミック材料を物品の調製に使用する重合性組成物中に組み込む等、フォトクロミック材料を物品の1つ以上の前駆体内に混合することによって達成されている。提案されている別の手法には、従来の膨潤法(例えば、熱拡散)により、物品の表面中及び表面下にフォトクロミック材料を吸収させる方法がある。このような物品は、フォトクロミック材料(例えば、有機フォトクロミック材料)が化学線に曝露すると通常の無色形態から有色形態へと物理的に変化し、化学線が除去されると元の無色形態に戻ることができるだけの十分な自由容積を物品内に有していることが報告されている。
【0004】
しかしながら、上記の方法が適用できない材料もある。このような材料は、市販のフォトクロミック用途に材料を適用できるだけの十分な自由体積を、材料のマトリックス内又は本体内(例えば、材料の表面のすぐ下の領域内)に有していないことが報告されている。このような材料には、従来のガラス(有機フォトクロミック材料関連);熱硬化性ポリマー(例えば、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、特にアリルジグリコールカーボネートモノマー(例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート))を含む組成物から調製されるもの)、及びそれらのコポリマー;高いガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー(例えば、一般的に知られている熱可塑性ビスフェノールA系ポリカーボネート);高度に架橋された光学ポリマー;及びその他のこのようなポリマー材料が含まれる。このような材料のフォトクロミック用途への使用を可能にするため、それらの表面にフォトクロミックコーティング(例えば有機コーティング)を適用することが提案されている。
【0005】
用途によっては、フォトクロミック物質を含有する放射線硬化性コーティング組成物を使用することが経済的に好ましくあり得る。これらのコーティング組成物は、選択する非フォトクロミック受容材料の表面に適用され、例えば、紫外線の照射等により硬化する。通常、放射線硬化性コーティング組成物は、硬化機構を開始させる光開始剤を含んでいる。一般的に、光開始剤化合物は、その構造に芳香族環を有しており、紫外光を有効に吸収する。更に、これらの化合物は、通常、放射線硬化性組成物における溶解性を向上させるために低分子量となっており、その結果、熱に曝露した場合には比較的揮発性となる。これらの特性は、光開始剤を含有する硬化性のコーティング組成物及び硬化済みのコーティング組成物が、硬化中及び硬化後に熱及び光に曝露すると、それぞれ、硬化した組成物の黄変を起こし得、そして不快な匂いを生じ得る。更には、未反応の光開始剤が硬化後も硬化済みコーティング組成物中に残留し、コーティングから滲出する可能性のあることも知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、例えば、硬化に光開始剤を必要としないか、必要となる光開始剤の量が放射線硬化性コーティング組成物の硬化で一般的に使用される量よりも少ない、フォトクロミック含有コーティング組成物(例えば、放射線硬化性コーティング組成物)を利用することが望ましい。更に、材料のマトリックス(コア)又は表面下領域内にフォトクロミック材料を組み込むことに受容的でない材料のフォトクロミックコーティングとして、このようなコーティング組成物を利用することも望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の簡単な要旨)
本発明の非限定的実施形態においては、(a)フォトクロミックコーティングに適応させるのに好適な少なくとも1つの表面を有する硬質基材、及び(b)前記硬質基材の表面の少なくとも一部上の、樹枝状高分子アクリレートを含む透明なフォトクロミックコーティングであって、フォトクロミック量の少なくとも1種のフォトクロミック材料を含む透明なフォトクロミックコーティングを含む物品が提供される。
【0008】
別の非限定的実施形態においては、(a)フォトクロミックコーティングに適応させることが可能な少なくとも1つの表面を有する光学硬質基材、及び(b)前記光学硬質基材の表面の少なくとも一部の上の、樹枝状ポリエステルアクリレートを含む透明なフォトクロミックコーティングであって、フォトクロミック量の少なくとも1種のフォトクロミック材料(例えば、有機フォトクロミック材料)を含む透明なフォトクロミックコーティングを含む光学物品が提供される。1つの非限定的実施形態において、光学物品は、例えばレンズ等の眼用物品である。
【0009】
本発明の更なる非限定的実施形態において、フォトクロミック眼用物品は更に、フォトクロミックコーティング上に耐摩耗性コーティング(例えば、オルガノシランを含むハードコーティング)を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本明細書(操作実施例を除く)において、特に指示がない限り、以下の説明及び特許請求の範囲で使用され得る成分の量及び範囲、反応条件等を表す全ての数字は、全例において「約」という用語で修飾されているものと理解されることとする。従って、特に反意的な指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは近似値であり、これらの近似値は、本発明のプロセスにより得られる結果並びに本発明の物品において求められる特性の結果によって変化し得る。少なくとも、そして添付の特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数の数値を考慮し、通常の丸め法を適用して少なくとも解釈されなければならない。更に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」、「an」、「said」及び「the」は、明示的且つ明確に一つの指示対象に限定しない限り、複数の指示対象も包含することが意図される。
【0011】
本発明の広義の適用範囲を記載する数値範囲及び数値パラメータは近似値であるものの、特定の実施例に記載の数値は、可能な限り正確に報告している。しかし、何れの数値も、それぞれの試験測定において見られる標準偏差から必然的に生じる幾らかの誤差を本来的に含んでいる。又、本明細書に列挙される何れの数値範囲も、その中に包含される部分範囲を包含するものとして意図されることが理解されなければならない。例えば、「1〜10」の範囲は、その記載した最小値1と記載した最大値10を含めたそれらの間の部分範囲;即ち、1以上の最小値又は10以下の最大値を含む範囲を包含するものとして意図される。開示した範囲は連続したものであるので、最小値と最大値の間の全ての値を包含する。特に明示的な指示がない限り、本出願において指定する種々の数値は、記載の通り近似値である。
【0012】
以下の説明及び特許請求の範囲で使用される以下の用語は、以下に示す意味を有する:
「アクリル」及び「アクリレート」という用語は、交換可能に使用され(交換可能に使用することで所期の意味が変更されない限り)、特に明確な指示がない限り、アクリル酸、低級アルキル置換アクリル酸(例えば、メタクリル酸、エタクリル酸等のC〜C置換アクリル酸)、及びこのようなアクリル酸の誘導体(例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のそれらのC〜Cアルキルエステル)を包含するものとして意図される。例えば「(メタ)アクリレートモノマー」という用語に関連して使用される「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」という用語は、記載の材料(例えば、モノマー材料)のアクリル/アクリレート形態及びメタクリル/メタクリレート形態の両方を包含するものとして意図される。
【0013】
硬化済み組成物又は硬化性組成物(例えば、特定の説明の「硬化済み組成物」)に関連して使用される「硬化」、「硬化済み」又は類似の用語は、硬化性組成物を形成する重合性成分及び/又は架橋性成分の少なくとも一部が、少なくとも部分的に重合及び/又は架橋されていることを意味するものとして意図される。非限定的実施形態において、架橋密度は完全架橋の5%〜100%の範囲となり得る。代替の非限定的実施形態において、この架橋密度は、全架橋の35%〜85%の範囲、例えば50%〜85%の範囲となり得る。この架橋密度は、前述の値(列挙した値を含む)の任意の組み合わせの間の範囲となり得る。
【0014】
「上に」、「付加した」、「添付した」、「結合した」、「接着した」又は同様の趣旨の用語は、記載の材料(例えばコーティング、フィルム又は層)が目的の表面に直接結合(重畳)しているか、又は対象の表面にその他1種以上のコーティング、フィルム又は層を介して間接的に結合していることを意味する。
【0015】
「眼用」という用語は、眼鏡用レンズ(例えば、矯正用レンズ、非矯正用レンズ、及び拡大レンズ)等があるがこれらに限定されない、目及び視覚に関連する要素及び物品を指す。
【0016】
例えば、フォトクロミック物品用の基材に関連して使用される「硬質」という用語は、指定の物品が自立形(self−standing)であることを意味する。
【0017】
「光学」、「光学コーティング」又は同様の趣旨の用語は、指定の基材、物品、材料又はコーティングが、少なくとも4%の光透過値を示し(入射光を透過し)、例えばHaze Gard Plus測定装置により550nmの波長で測定した場合に、1%未満のヘーズ値(例えば0.5%未満のヘーズ値)を示すことを意味する。光学基材には、着色基材、フォトクロミック基材、偏光基材、着色フォトクロミック基材、着色偏光基材が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
例えば、硬質基材という用語に関連して使用される「基材」という用語は、フォトクロミックコーティング(例えば、フォトクロミック高分子コーティング)に適応させることが可能な少なくとも1つの表面を有する物品を意味する。即ち、基材はフォトクロミックコーティングが適用され得る表面を有する。このような基材表面が有し得る形状の非限定的実施形態には、眼用レンズに使用される種々のベースカーブによって例示されるような凸形及び/又は凹形を含むがこれらに限定されない、丸形、平形、筒形、球体形、平面形、実質的に平面形、平凹及び/又は平凸形、湾曲形が含まれる。
【0019】
例えば、眼用の物品、コーティング、フィルム及び基材に関連して使用される「着色」という用語は、記載の材料が固定の光放射吸収剤を記載の材料上又は材料内に含むことを意味する。固定の光放射吸収剤の非限定的実施形態には、従来の着色染料、赤外線及び紫外線吸収材料が含まれるが、これらに限定されない。着色材料は、化学線に応じてそれほど変化することがない、可視光線の吸収スペクトルを有している。
【0020】
「化学線」という用語は、可視光線及び紫外光線の両方を包含する。
【0021】
例えば、フォトクロミックコーティングが耐磨耗性コーティングに適合する場合等に関連して使用される「適合する」という用語は、硬化済みのフォトクロミックコーティングが、その表面上に直接添付した耐磨耗性コーティング(例えばオルガノシラン含有ハードコード)を有することができ、且つ耐磨耗性コーティングが、従来のクロスハッチテープ剥離接着試験によって測定されるような通常の取扱い/摩耗条件で適用される表面に接着し、及び/又は耐磨耗性コーティングが、適用及び硬化後にクレージングを生じないことを意味する。
【0022】
「二色性材料」、「二色性染料」又は同様の趣旨の用語は、透過光の2つのo−v面偏光成分のうちの一方を他方よりも多く吸収する材料/染料を意味する。二色性材料/染料の非限定的実施形態には、インジゴイド、チオインジゴイド、メロシアニン、インダン、アゾ染料及びポリ(アゾ)染料、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、(ポリ)アントラキノン、アントラピリミジノン、ヨウ素、及びヨウ素酸塩が含まれる。
【0023】
例えば、基材、フィルム及び/又はコーティングに関連して使用される「透明な」という用語は、記載の基材、コーティング及び/又はフィルムが、はっきり感知できるほど光を散乱することなく光を透過する特性を有し、それによって向こう側にあるものがはっきりと見えることを意味する。
【0024】
「デンドリマー」又は「樹枝状ポリマー」という用語は、少なくとも2世代にわたり広がる少なくとも2つの規則的な樹枝状(樹状)分岐と共有結合する多価コアを有する三次元ポリマーを意味する。各樹状分岐(又は世代)は、コア、又は前の分岐の世代から広がっており、各世代の各分岐は同じ数の反応部位を有し、その反応部位から次の世代の分岐(存在する場合)が広がるか、或いはその反応部位が、その分岐の最後の世代の末端反応部位の役割を果たす。デンドリマーは、対称であっても、非対称であってもよい。「デンドリマー」という用語は、デンドロン及び超分岐化分子を包含する。
【0025】
「デンドロン」という用語は、コアである中心部から出発する分岐、或いはコアに直接か又は結合部分を介してコアに結合することができる中心部から出発する分岐を有する、デンドリマーの一種を意味する。
【0026】
「樹枝状高分子アクリレート」という用語は、末端アクリル反応部位を有するように修飾されているデンドリマー(又は樹枝状ポリマー)を意味する。樹枝状ポリマーの末端アクリレート基の数は、広い範囲にわたって変化し得る。代替の非限定的実施形態において、末端アクリル基の割合は、樹枝状ポリマー上の末端反応部位の初期の数に対して5〜100%の範囲、例えば20〜90%の範囲、又は40〜80%の範囲(例えば45〜80%の範囲)となり得る。
【0027】
「樹枝状ポリエステルアクリレート」という用語(又は同様の趣旨の用語)は、樹枝状ポリエステル型巨大分子をアクリル化することにより、或いはアクリル化手順時にアクリル化される基を有する粘度降下材(例えば、1つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上のアルコール)を含む樹枝状ポリエステル型巨大分子をアクリル化することにより生成される組成物を意味する。
【0028】
「樹枝状ポリエステルアクリレートコーティング」という用語(又は同様の趣旨の用語)は、樹枝状ポリエステルアクリレートを含む組成物を硬化させることによって生成されるコーティングを意味する。
【0029】
「樹枝状ポリエステルアクリレートを含む組成物」という用語(又は同様の趣旨の用語)は、樹枝状ポリエステルアクリレート(又は複数の樹枝状ポリエステルアクリレートの混合物)、及び必要に応じてその他の少なくとも1種の放射線硬化性材料又は熱硬化性材料を含む組成物(例えば、樹枝状ポリエステルアクリレートと放射線硬化性及び/又は熱硬化性アクリル材料(例えば、(メタ)アクリルモノマー)との混合組成物)を意味する。更に、コーティング組成物に通常含まれる補助材料が、樹枝状ポリエステルアクリレートを含む組成物に含まれ得る。
【0030】
フォトクロミズムとは、フォトクロミック有機材料若しくはフォトクロミック無機材料(例えば、クロメン又はハロゲン化銀塩)、又はこのような材料を含む物品における可逆的な色の変化に関連する現象である。活性化紫外線及びその他の化学線の放射線源に曝露すると、フォトクロミック材料の色が変化し、例えば、より暗い色になる。活性化放射線が除去されたり放射が中止されたりすると、フォトクロミック材料は、元の色又は無色の状態に戻る。
【0031】
種々の有機フォトクロミック化合物に特徴的な、色の可逆的変化(例えば、可視光(一般的には400〜700nmの範囲と説明される)の電磁スペクトルに対する吸収スペクトルの変化)の原因であると考えられる機構については、既に説明されている。例えば、John C. Crano, 「Chromogenic Materials (Photochromic)」, Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版, 1993, pp.321−332を参照されたい。有機フォトクロミック化合物(例えばインドリノスピロピラン、インドリノスピロオキサジン、及びナフトピラン)の色の可逆的変化の原因である機構には、環状電子機構が関与していると考えられている。活性化紫外線に曝露すると、これらの有機フォトクロミック化合物は、無色の閉環形態から有色の開環形態へと変形する。
【0032】
本発明の非限定的実施形態によれば、硬質基材(例えば、光学硬質基材)の表面に適用され得る樹枝状高分子アクリレートを含む透明なフォトクロミックコーティングが提供される。デンドリマーについては、ポリマーの技術分野において既に説明されている。このような材料は、例えばアクリル化剤との反応等によって、末端反応性アクリル基を含むように変性させることが可能であり、このような樹枝状高分子アクリレートが本発明の透明なフォトクロミックコーティングの調製に使用され得る。樹枝状高分子アクリレートの非限定的な例には、エポキシド−アミンデンドリマー、カルボシラン系デンドリマー、アミドアミンデンドリマー、ポリスルフィドデンドリマー、ポリシロキサンデンドリマー、ポリアミノスルフィドデンドリマー、ポリエーテルデンドリマー、ポリチオエーテルデンドリマー、ポリエステルデンドリマー、ポリエステルアミドデンドリマー、ポリ(エーテルケトン)デンドリマー等から選択されるアクリレート変性デンドリマーが含まれる。
【0033】
非限定的実施形態において、デンドリマーは、アミドアミノポリマーであり、これはポリアミドアミン高密度星型高分子と呼ばれる。例えば米国特許第4,558,120号を参照されたい。このようなデンドリマーは、第’120号の第7欄第10〜15行目に列挙した式によって表され得る。このようなデンドリマー及びその調製方法の説明については、その説明が参考として本明細書で援用されている、第’120号の第2欄第39行目〜第9欄第18行目に記載されている。
【0034】
更なる非限定的実施形態において、デンドリマーは、エポキシドアミンポリマーである。このようなデンドリマーは、(a)第一級アミノ基の生成に好適な部分の第一級アミンへの反応;(b)1つのエポキシド部分を有し少なくとも第一級アミノ基の生成に好適な少なくとも1つの部分を有する分岐分子による、(a)で生成した第一アミノ部分への付加反応、及び(c)少なくとも置換又は非置換のアクリレートによるデンドリマーのアミノ官能基への付加反応によって特徴付けられる停止反応、の反応の連続の繰り返しによって調製され得る。停止反応は、(2,3−エポキシプロポキシ)(メタ)アクリレートを使用して行われ得る。エポキシドアミンデンドリマーは、米国特許’142号に記載されている。第5,760,142号の第1欄第65行目〜第3欄第56行目に記載の説明は、参考として本明細書で援用される。
【0035】
他の非限定的実施形態において、デンドリマーはカルボシラン系ポリマーである。このようなデンドリマーは、中央のシラン核、及び(a)中心核から外側に向けて広がる複数のカルボシラン分岐(それぞれの末端分岐はシラン末端を有する)を有するカルボシラン核、並びに(b)コア周辺のシラン末端から伸びる付加ポリマー鎖を含む。1つの非限定的実施形態において、付加ポリマー腕の数は、少なくとも48である。カルボシランデンドリマーについては、その説明が参考として本明細書で援用されている、米国特許第5,276,110号、具体的には第1欄第58行目〜第5欄第5行目に記載されている。
【0036】
別の非限定的実施形態において、デンドリマーは、ジイソプロパノールアミンと環状無水物の重縮合によって調製される。これらのデンドリマーは、DSM N.V.からHYBRANETMの名称で販売されており、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル末端基によって調製されている。HYBRANEデンドリマーの例には、市販のH1500(無変性)材料が含まれる。
【0037】
更なる非限定的実施形態において、デンドリマーは、ポリシロキサンポリマーであり、シランヒドロキシル化とケイ素の位置での塩化物置換の反復により調製され得る。これらのデンドリマーの特有の調製方法については、その説明全体が参考として本明細書で援用されている、Uchidaら, J. AM. Chem. Soc., 1990, 112, 7077−7079に記載されている。又、その説明が参考として本明細書で援用されている、米国特許第6,889,735 B2号の第5欄第60行目〜第6欄第13行目も参照されたい。
【0038】
本発明の非限定的実施形態によれば、樹枝状高分子アクリレートを含む組成物は、硬質基材のための透明なフォトクロミックコーティングを調製するために使用される。このようなフォトクロミックコーティング、及びそのコーティングを含む組成物を調製し硬質基材に適用する方法について、特に樹枝状ポリエステルアクリレートで調製されるフォトクロミックコーティングに関する以下の説明に関連して説明する。しかしながら、当業者は、このようなフォトクロミックコーティングを調製するためにアクリレート化物を使用したポリエステルデンドリマーの代わりに、上記で説明したデンドリマー(又はその後に開発されたデンドリマー)の何れをも容易に使用することが可能である。
【0039】
非アクリル性樹枝状ポリエステル型の巨大分子については、とりわけ、米国特許第5,418,301号、同第5,663,247号、同第6,225,404 B1号、及び米国特許出願公開第2002/0151652A1号等に記載されている。これらの巨大分子は、一般的には樹状構造を有する三次元分子である。本明細書で使用される「樹枝状ポリエステル型巨大分子」及び「樹枝状ポリエステル型オリゴマー」という用語(又は同様の趣旨の用語)は、超分岐化された樹枝状巨大分子及びデンドリマーを包含するものとして意図される。デンドリマーは、単分散又は実質的に単分散の超分岐化された樹枝状高分子と呼ぶことができる。
【0040】
超分岐化された樹枝状ポリエステル巨大分子は、通常1つ以上の反応部位又は反応官能基を有する開始剤又は核、及び多くの分岐層、並びに必要に応じて1つ以上のスペーシング層及び/又は鎖末端化分子の層を含む。連続した分岐層の複製は、通常は、分岐の重複度を増加させ、適切又は所望の場合、末端官能基の数を増加させる。この層は、通常、世代及び分岐デンドロンと呼ばれる。超分岐化された樹枝状巨大分子(デンドリマー)は、その説明が参考として本明細書で援用されている、米国特許第6,225,404 B1号の第6欄第8〜30行目に記載の式によって説明することができる。これらの式において、X及びYは、それぞれ4つ及び2つの反応性官能基を有する開始剤又は核であり、A、B及びCは3つ(A及びC)及び4つ(B)の反応性官能基を有する分岐鎖長延長剤であり、各分岐鎖長延長剤は、巨大分子において1つの分岐鎖世代を形成する。上述の式におけるTは、末端連鎖ストッパー又は好適な末端官能基又は末端部位である(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はエポキシド基)。
【0041】
デンドロンは、予め調製し、次いで核に付加させてもよい。デンドロンは、例えば、通常のエステル化温度での1つ以上のヒドロキシ官能性カルボン酸の縮合により、あるいは一官能性、二官能性、三官能性又は多官能性のカルボン酸に一官能性、二官能性、三官能性又は多官能性のアルコール又はエポキシドとのエステル結合を形成させることにより、或いはエステル結合、エーテル結合、及びその他の化学結合を形成する同様の手順により、調製され得る。デンドロンを生成するために使用される原材料は、少なくとも1つの、核又は開始剤と反応する末端反応部位を提供するように選択される。
【0042】
樹枝状ポリエステル型巨大分子は、一般的にエステル又はポリエステル部位から(必要に応じてエーテル又はポリエーテル部位と組み合わせて)合成される。この超分岐化された樹枝状巨大分子は、少なくとも1つの反応性のエポキシド基、ヒドロキシル基カルボキシル基、又は無水物基を有するモノマー核又はポリマー核を含み、その核には、1〜100個、一般的には1〜20個、例えば2〜8個の分岐世代、及び必要に応じて少なくとも1つの鎖長延長剤を有する少なくとも1つのスペーシング世代が追加され、その分岐世代は、少なくとも3つの反応基を含む少なくとも1つのモノマー又はポリマー分岐鎖長延長剤を含み、その反応基の1つはヒドロキシル基であり、そして少なくとも1つはカルボキシル基又は無水物基である。このスペーシング鎖長延長剤は、2つの反応基(1つはヒドロキシル基であり、そして1つはカルボキシル基又は無水物基である)を有する化合物であるか、或いはこのような化合物の内部エーテル(例えばラクトン成分)である。超分岐化された樹枝状巨大分子の末端鎖長延長剤官能基は、実質的にヒドロキシル基、カルボキシル基又は無水物基であり、この超分岐化された樹枝状巨大分子は、必要に応じて完全に又は部分的に、少なくとも1つのモノマー又はポリマー連鎖ストッパーによって連鎖停止され、及び/又は官能基化されている。
【0043】
樹枝状ポリエステル型巨大分子は、明確に定義された高分岐化巨大分子であり、これは中心核から放射状に広がり、考察の通り、段階的な繰り返しの分岐化反応の連続により合成される。この繰り返しの分岐化反応の連続により、一般的に、各世代に対して完全なシェルが保証され、そのため巨大分子は一般的に単分散となる。この樹枝状ポリエステル巨大分子の調製のための合成手順は、その大きさ、形状、界面/内面化学、可撓性及びトポロジーに対するほぼ完全な制御を提供する。この樹枝状ポリエステル巨大分子は、完全且つ対称な分岐及び不完全且つ非対称性の分岐を有し得る。
【0044】
ポリエステル型樹枝状巨大分子に対する中心開始分子の非限定的な例には、脂肪族、脂環式又は芳香族のジオール、トリオール、テトラオール、ソルビトール、マンニトール、ジペンタエリスリトール、二価、三価、又は多価のアルコールとアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド)の分子量2000未満の反応生成物が含まれる。適切なジオールの非限定的な例には、1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのダイマー、トリマー又はポリマー、2−アルキル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール(例えば、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2−ヒドロキシ−2−アルキル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ(ヒドロキシアルキル)−1,3−プロパンジオール、2−ヒドロキシアルコキシ−2−アルキル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ(ヒドロキシアルコキシ)−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、及びポリテトラヒドロフランが含まれる。この開始剤分子のアルキル基は一般的に、C〜C12アルキル基(例えば、C〜Cアルキル基)である。
【0045】
ポリエステル鎖長延長剤は、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する一官能性カルボン酸であり、例えば、ジメチロールプロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシ)プロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,β−ジヒドロキシプロピオン酸、ヘプトン酸、クエン酸、d−酒石酸又はl−酒石酸、或いはα−フェニルカルボン酸(例えば3,5−ジヒドロキシ安息香酸)が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
使用できる鎖末端化剤には、飽和一官能性カルボン酸、飽和脂肪酸、不飽和一官能性カルボン酸、芳香族一官能性カルボン酸(例えば、安息香酸)、及び二官能性又は多官能性のカルボン酸、或いはそれらの無水物が含まれるが、これらに限定されない。このような酸の非限定的な例には、ベヘン酸が含まれる。ポリエステル鎖長延長剤の末端ヒドロキシル基は、官能基の有無にかかわらず連鎖ストッパーと反応し得る。
【0047】
樹枝状ポリエステル型巨大分子は、Perstorp Specialty Chemicals(スウェーデン ペーシュトルプ)からBOLTORN(登録商標) H20樹枝状ポリマー、BOLTORN(登録商標) H30樹枝状ポリマー及びBOLTORN(登録商標) H40樹枝状ポリマーの名称で市販されており、これらの巨大分子は末端がヒドロキシ基で官能基化されている。これらの材料は、一般的に1,000〜4000の範囲の平均分子量を有する。このBOLTORN(登録商標) H20、BOLTORN(登録商標) H30、及びBOLTORN(登録商標) H40は、それぞれ、巨大分子の末端に平均で16個、32個及び64個のヒドロキシ基を有する。
【0048】
樹枝状ポリエステル巨大分子材料は、既知のエステル化技法によってアクリル化することにより、本明細書中に記載のフォトクロミックコーティングを調製するために使用される光学的品質の樹枝状ポリエステルアクリレート樹脂を形成するために使用される材料を提供し得る。例えば、国際公開第00/77070A2号及び同第00/64975号を参照されたい。
【0049】
樹枝状ポリエステル巨大分子のアクリル化、及びアクリル化された樹枝状ポリエステル巨大分子の回収及び精製は、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology (1980, 第1巻, pp.386−413)の論文「Acrylic Ester Polymers」に記載の方法のような、文献から周知である方法を使用して実施され得る。アクリル化は一般的に、例えばアクリル酸、メタクリル酸、又はクロトン酸(β−メタクリル酸)等とアクリル化される分子との直接反応(例えば、エステル化)、イソシアナト(メタ)アクリレートとの縮合、或いは前記アクリル酸に相当する無水物及び/又はハロゲン化物との直接反応であり、通常、ヒドロキシル基の前記酸、無水物、及び/又はハロゲン化物に対するモル比は一般的に1:0.1〜1:5の間、より一般的には1:0.5〜1:1.5の間である。アクリル化剤の他の非限定的な例には、エポキシド、又は無水官能性のアクリレート及びメタクリレート(例えばグリシジルメタクリレート)が含まれる。非限定的実施形態において、アクリル化剤は、化学量論的に過剰なモル量で使用される。
【0050】
アクリル化された樹枝状ポリエステル巨大分子の官能性アクリル酸基(例えばアクリル化されたヒドロキシル基)の比率は変わってもよく、一般的には最初のヒドロキシル基含有量に対して5〜100%の範囲である。代替の非限定的実施形態において、アクリル化された樹枝状ポリエステル巨大分子の官能性アクリル酸基の比率は、20〜90%の範囲、例えば40〜85%の範囲(例えば45〜80%)で変わってもよい。アクリル化されたヒドロキシル基の比率は、これらの比率の任意の組み合わせの範囲でもよい(列挙した比率を含む)。
【0051】
エステル化手順は、一般的に無極性有機溶媒溶液等の溶媒の存在下で行われる。このような溶媒の非限定的な例には、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレン、又はこのような溶媒の混合物が含まれるが、これらに限定されない。エステル化手順は、好都合には、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、リン酸、ナフタレンスルホン酸、ルイス酸(例えば、BF、AlCl、SnCl)、チタネート(例えば、チタン酸テトラブチル)、及び有機スズ化合物等があるがこれらに限定されない、触媒の存在下で実施される。一般的に、アクリル化手順は、50〜200℃の範囲の温度、例えば80〜150℃の範囲で行われる。アクリル化の温度は変えてもよく、一般的には選択される溶媒とアクリル化手順が実施される圧力により変化する。このアクリル化手順は、ラジカル重合開始剤(例えば、メチルエーテルヒドロキノン、ヒドロキノン、フェノチアジン、ジ−t−ブチルヒドロキノンがあるがこれらに限定されない)、及びこのような開始剤の混合物の存在下で実施され得る。
【0052】
国際特許公開第00/64975号の開示に従って、樹枝状高分子巨大分子(例えば樹枝状ポリエステル巨大分子)は一般的に強粘性液体であるため、アクリル化手順の前に1つ以上のヒドロキシル基を有し且つ2000未満の分子量(例えば60〜1500の範囲、又は100〜1000の範囲の分子量)を有する有機アルコール(例えば、脂肪族アルコール)と混合され得る。一般的に、このアルコールは、20℃〜50℃の範囲の温度で液体であるか、又はこの温度で樹枝状高分子巨大分子との液体混合物が得られる。アルコールはジオールであり得る。ジオールの非限定的実施形態には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール又は1,3−プロピレングリコール、ブタンジオール、或いはジグリコール、トリグリコール又はポリグリコール等が挙げられ、その例には、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又は1つ以上のエチレングリコール及び1つ以上のプロピレングリコールを含むポリマー等のグリコールポリマーが含まれる。樹枝状高分子巨大分子体とアルコールの重量比は変わってもよい。一般的に、樹枝状高分子巨大分子のアルコールに対する重量比は、90:10〜10:90の範囲で変わってもよい。代替の非限定的実施形態において、樹枝状高分子巨大分子のアルコールに対する重量比は、25:75〜75:25の間、又は40:60〜60:40の間で変化し得、例えば50:50である。樹枝状ポリエステル巨大分子及びアルコールの重量比は、列挙した値の間で変わってもよい(その列挙した値を含む)。この混合物のアクリル化により、少なくとも1つの樹枝状高分子アクリレート及び少なくとも1つのアクリレートモノマーを含むアクリレート化合物が生成する。
【0053】
非限定的実施形態において、放射線硬化性アクリルモノマー材料は、樹枝状ポリエステルアクリレートを含む組成に含まれてもよい。放射線硬化性アクリルモノマー材料の非限定的な例には、モノアクリレート、及びポリアクリレート(例えばジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、ペンタアクリレート)が含まれる。例えば単一のアクリル官能基を含むモノマー等のモノアクリレートには、ヒドロキシ置換モノアクリレート及びアルコキシシリルアルキルアクリレート(例えばトリアルコキシシリルプロピルメタクリレート)が含まれるが、これらに限定されない。1つの非限定的実施形態において、放射線硬化性モノマー材料は、ジアクリレート、トリアクリレート、及びこのようなポリアクリレートの混合物から選択される。
【0054】
樹枝状高分子アクリレートを含む組成物中における放射線硬化性アクリルモノマー材料の樹枝状高分子アクリレートに対する重量比は変わってもよく、一般的に硬化性混合物の物理的性質(例えば混合物の粘度、架橋度、及びコーティングの硬度)により変化する。非限定的実施形態において、樹枝状高分子アクリレートの放射線硬化性アクリルモノマー材料に対する重量比は、90:10〜10:90の範囲となり得る。代替の非限定的実施形態において、この重量比は、70:30〜30:70(例えば、40:60〜60:40の範囲、例えば50:50)の範囲となり得る。樹枝状ポリエステルアクリレートの放射線硬化性アクリルモノマー材料に対する重量比は、列挙した値の間で変わってもよい(その列挙した値を含む)。
【0055】
一般的に選択される放射線硬化性アクリルモノマー材料に対する樹枝状高分子アクリレートの重量比は、コーティングの物理特性とコーティングのフォトクロミック性能の間での所望されるバランスを提供するように選択される。一般的に、より軟質のコーティングは、フォトクロミック動力学的性能(例えば、活性化(活性化の程度と活性化までの時間)及びフォトクロミックの失活(退色までの時間))を高める。コーティングの硬度(軟度)は、当業者に周知の技法(例えば、Fischer微小硬度、ペンシル硬度、又はKnoop硬度)によって測定することができる。Fischer微小硬度値は、Fischerscope HCV Model−H−100装置(Fischer Technology, Inc.が販売)を使用して、2μm(ミクロン)の圧子(indentor)(Vickersダイヤモンド針)により、深さ100ミリニュートンの負荷、30回の負荷手順、及び負荷手順の間の0.5秒の休止の条件下で、試験サンプルの中心領域にて3回測定することによって得られ得る。
【0056】
アクリルモノマー材は、以下の一般化学式(I)で表され得:
R”−[OC(O)C(R’)=CH
式中、R”は2〜20個の炭素原子及び必要に応じて1〜20個のアルキレンオキシ結合を含有する脂肪族基又は芳香族基であり;R’は水素又は1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、nは1〜5の整数である。nが1より大きい場合、R”は、アクリル官能基を共に結合する連結基である。一般的に、R’は水素又はメチルであり、nは1〜3の範囲の整数である。ジアクリレート(nが2の場合)は、以下の一般化学式(II)で表され得:
【0057】
【化1】

式中、R及びRは同じであっても、異なってもよく、それぞれ、水素又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基(例えば、メチル)から選択され、Aは、例えば1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル連結基、例としては、アルキレン基、1つ以上のオキシアルキレン基[又は異なるオキシアルキレン基の混合物];或いは以下の一般化学式(III)であり:
【0058】
【化2】

式中、各Rは、水素、ヒドロキシ又は1〜4個の炭素原子のアルキル基(例えば、メチル)であり;Xはハロゲン原子(例えば、塩素)であり;aは0〜4の整数(例えば、0〜1)であり、ベンゼン環上で置換されたハロゲン原子の数を表し;k及びmは、0〜20の範囲の数(例えば、1〜15又は2〜10)である。k及びmの値は平均の数であり、計算で得た場合は、整数であっても、分数であってもよい。
【0059】
エポキシ基を有するアクリレートは、以下の一般化学式(IV)で表され得:
【0060】
【化3】

式中、R及びRは同じであっても、異なってもよく、それぞれが水素又は1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基(例えば、メチル)から選択され;R及びRは2〜3個の炭素原子を含有するアルキレン基(例えば、エチレンオキシ及びプロピレンオキシ)であり、m及びnは0〜20の範囲の数、例えば0又は1〜15、或いは2〜10である。m及びnのうちの1つが0であり、他方が1である場合、残りのR基は、以下の一般化学式(V)の芳香族基:
【0061】
【化4】

例えば、2,2’−ジフェニレンプロパン基に由来する基であり得、このフェニル基は、C〜Cアルキル基又はハロゲン(例えばメチル及び/又は塩素)で置換され得る。
【0062】
以下に挙げるアクリルモノマー材料の非限定的な例において、上に定義した「アクリレート」という用語は、対応する低級アルキル置換アクリレート(例えば対応するメタクリレート)を含み、又その逆も同様である。例えば、ヒドロキシエチルアクリレートへの言及は、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルエタクリレート等を含み;エチレングリコールジアクリレートへの言及は、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジエタクリレート等を含む。アクリルモノマー材料の非限定的な例には、以下が含まれる:
ヒドロキシエチルアクリレート、
ヒドロキシプロピルアクリレート、
ヒドロキシブチルアクリレート、
ヒドロキシ−ポリ(アルキレンオキシ)アルキルアクリレート、
カプロラクトンアクリレート、
エチレングリコールジアクリレート、
ブタンジオールジアクリレート、
ヘキサンジオールジアクリレート、
ヘキサメチレンジアクリレート、
ジエチレングリコールジアクリレート、
トリエチレングリコールジアクリレート、
テトラエチレングリコールジアクリレート、
ポリエチレングリコールジアクリレート、
ジプロピレングリコールジアクリレート、
トリプロピレングリコールジアクリレート、
テトラプロピレングリコールジアクリレート、
ポリプロピレングリコールジアクリレート、
グリセリルエトキシレートジアクリレート、
グリセリルプロポキシレートジアクリレート、
トリメチロールプロパントリアクリレート
トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、
トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、
ネオペンチルグリコールジアクリレート、
ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、
ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート、
モノメトキシトリメチロールプロパンエトキシレートジアクリレート、
ペンタエリスリトールエトキシレートテトラアクリレート、
ペンタエリスリトールプロポキシレートテトラアクリレート、
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、
ジペンタエリスリトールエトキシレートペンタアクリレート、
ジペンタエリスリトールプロポキシレートペンタアクリレート、
ジ−トリメチロールプロパンエトキシレートテトラアクリレート、
2〜30個のエトキシ基を有するビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、
2〜30個のプロポキシ基を有するビスフェノールAプロポキシレートジアクリレート、
2〜30個のエトキシ基及びプロポキシ基の混合物を含有するビスフェノールAアルコキシル化ジアクリレート、
ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレート、
ビスフェノールAグリセロレート(1グリセロール/1フェノール)ジメタクリレート、
グリシジルアクリレート、
β−メチルグリシジルアクリレート、
ビスフェノールA−モノグリシジルエーテルアクリレート、
4−グリシジルオキシブチルメタクリレート、
3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、
3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、
3−(グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、及び
3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート。
【0063】
多くの放射線硬化性アクリル材料は、市販されており;市販されていない場合は、当業者に周知の手順によって調製され得る。市販のアクリレート材料の非限定的な例については、その開示内容が参考として本明細書で援用されている、米国特許第5,910,375号の特に第8欄第20〜55行目及び第10欄第5〜36行目に記載されている。市販されるアクリル材料は、種々の製造業者から販売されており、これには、SARTOMER、EBECRYL及びPHOTOMERの商品名で販売されものが含まれる。
【0064】
更なる非限定的実施形態において、以下の一般化学式(VI)で表される反応性二官能性アクリルモノマー材料は、樹枝状高分子アクリレートを含む組成に含まれ得:
【0065】
【化5】

式中、各Rは水素又はメチルであり、x、y及びzはそれぞれ正の数であり、x、y及びzの合計は9〜30の範囲である。一般化学式(VI)で表されるモノマーのより詳細な説明については、その開示内容が参考として本明細書で援用されている、米国特許第6,602,603号の第5欄第1〜25行目、及び同号第6欄第28〜37行目に記載されている。
【0066】
本発明の更に別の非限定的実施形態において、樹枝状高分子アクリレートを含む組成物は、(1)少なくとも1つのカーボネート基と少なくとも1つのヒドロキシル基とを含む少なくとも1つの材料(例えばカーボネート基を含むアルコール又はポリオール)、或いは少なくとも1つのカーボネート基と少なくとも1つのヒドロキシル基とを含むアクリルモノマー(例えばポリカーボネートポリオール)、及び(2)少なくとも1つのモノイソシアネート基と少なくとも1つの不飽和基を含む材料(例えばビニルエーテル基とイソシアン酸とを含むアクリルモノマーの反応生成物)の反応生成物を含み得る。このような反応生成物の詳細な説明については、その開示内容が参考として本明細書で援用されている、国際特許公開第03/037998A1号の第8頁32行〜第15頁16行、及び第15頁37行〜第22頁19行に記載されている。
【0067】
更なる非限定的実施形態においては、反応性モノマー/希釈剤(例えば放射線硬化性又は熱硬化性のエチレン官能基又はアリル官能基(アクリル官能基を除く)を含むモノマー)も、樹枝状高分子アクリレートを含む組成物中に存在し得る。このような材料の非限定的な例には、放射線硬化性ビニル化合物(例えばビニルエーテル)が含まれるが、これらに限定されない。一般的に、反応性モノマー/希釈剤は、組成物中に最大20重量%まで(例えば0〜10重量%の範囲)の量(樹脂固体に対して)で存在し得る。この反応性モノマー/希釈剤の量は、列挙した値を含む特定の量の間で任意に変わってもよい。使用する特定の量は、放射線硬化性アクリルモノマー材料に関連して説明した通り、硬化性組成物及びそれから得られるコーティングに所望される最終的な物理的性質により変化する。
【0068】
樹枝状ポリエステルアクリレートを含む放射線硬化性組成物で使用され得るビニルエーテル基を有する化合物には、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、及びアミノ基で置換された末端基を有するアルキルビニルエーテル;水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、及びアミノ基で置換された末端基を有するシクロアルキルビニルエーテル;ビニルエーテル基がアルキレン基と結合したモノビニルエーテル、ジビニルエーテル及びポリビニルエーテル、ならびにビニルエーテル基がアルキル基、シクロアルキル基、及び芳香族基から選択される置換基の有無にかかわらない少なくとも1つの基に、エーテル結合、ウレタン結合、及びエステル結合から選択される少なくとも1つの結合を介して結合したモノビニルエーテル、ジビニルエーテル及びポリビニルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。例えば、その開示内容が参考として本明細書で援用されている、米国特許第6,410,611 B1号の第19欄第26行目〜第20欄第27行目に記載のビニルエーテルを参照されたい。
【0069】
上述のアクリルモノマー及び反応性モノマー/希釈物等の量は、樹枝状高分子アクリレートを含む組成物中の重合性材料(樹脂固体)の総量に対する量であり、非重合性有機希釈物(例えば、溶媒、光開始剤、安定剤、可塑剤及びその他のこのような成分)のような他の非重合性成分は含まれない。フォトクロミックコーティング組成物を含む種々の成分の全ての合計は、当然100%に等しい。
【0070】
樹枝状高分子アクリレートを含む組成物は、それによって得られるフォトクロミックコーティングの有効性を高めるような添加剤(アジュバント)を含み得る。このような添加剤には、接着促進添加剤、紫外線安定剤、ヒンダードアミン安定剤、離型剤、粘性添加剤、流動性添加剤、平滑剤、湿潤剤、消泡剤、レオロジー改質剤、界面活性剤(例えば、フルオロ界面活性剤)、酸化防止剤が含まれるが、これらに限定されない。このような材料は当業者に周知である。市販の界面活性剤、酸化防止剤、及び安定剤の非限定的な例については、その開示内容が参考として本明細書で援用されている、米国特許第5,910,375号第10欄第43〜54行目に記載されている。このような添加物の他の非限定的な例には、シリコーン、変性シリコーン、シリコーンアクリレート、炭化水素及びフッ素含有化合物が含まれる。
【0071】
非限定的実施形態によれば、接着性を増強する量の少なくとも1種の接着促進材料(定着剤)を、樹枝状高分子アクリレートを含む硬化性組成物に組み入れてもよいことが企図される。接着を増強する量とは、樹枝状高分子アクリレートコーティングに適用される重畳されたオルガノシラン含有耐磨耗性コーティング(本明細書中に記載される)に対するフォトクロミック含有樹枝状高分子アクリレートコーティングの適合性が強化されることを意味する。一般的に、樹枝状高分子アクリレートを含む組成物を基材に適用する前に、その組成物に少なくとも1つの定着剤を(樹脂固体に対して)0.1〜20重量%組み入れてもよい。代替の非限定的実施形態においては、少なくとも1つの定着剤0.5〜16(例えば、0.5〜10)重量%、又は0.5〜8(例えば、5)重量%を樹枝状高分子アクリレート組成物中に組み入れてもよい。樹枝状ポリエステルアクリレート組成物中に組み入れられる定着剤の量は、上述の値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る(列挙した値を含む)。
【0072】
耐磨耗性コーティング(例えば、オルガノシラン材料を含む耐磨耗性コーティング)との適合性を高めるために樹枝状高分子アクリレートコーティング中に組み入れてもよい定着剤には、アミノオルガノシラン等の接着促進オルガノシラン材料、並びにシランカップリング剤、有機チタン酸カップリング剤、及び有機ジルコン酸カップリング剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
樹枝状高分子アクリレートを含むフォトクロミックコーティング組成物も、紫外線安定剤を含み得、この紫外線安定剤はUV吸収剤及び/又はヒンダードアミン光安定剤(HALS)であり得る。UV吸収剤の非限定的な例には、ベンゾトリアゾール及びヒドロキシベンゾフェノンが含まれる。UV吸収剤を使用する場合、適切な波長の十分なUV放射がコーティングを通過し、フォトクロミックコーティング内のフォトクロミック材料を活性化することが可能であるか注意されるべきである。HALS安定剤は、TINUVINの名称でCiba−Geigyから販売されている。使用される光安定剤の量は、組成物を安定化するのに有効な量(例えば有効量)であり、これは選択する特定の化合物により変化する。非限定的実施形態において、使用される光安定剤の量は、一般的に樹枝状高分子アクリレート組成物のモノマー/ポリマー成分100重量部に対して20重量部まである。又、UV吸収剤も有効量にて使用され、非限定的実施形態においては、一般的に樹枝状高分子アクリレート組成物100重量部に対して10重量部まで(例えば0.05〜5重量部)である。
【0074】
又、樹枝状高分子アクリレートを含むコーティング組成物を含む成分を溶解及び/又は分散させるため、溶媒もコーティング組成物中に存在し得る。一般的に、溶媒和する量(例えば、コーティング組成物中の固体成分を可溶化/分散するのに十分な量)の溶媒が使用される。非限定的実施形態において、コーティング組成物の総重量に対して10〜80重量%の溶媒材料が使用される。
【0075】
非限定的な溶媒には、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピルアルコール、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリジノン、N−ビニルピロリジノン、N−アセチルピロリジノン、N−ヒドロキシメチルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−(N−オクチル)ピロリジノン、N−(N−ドデシル)ピロリジノン、2−メトキシエチルエーテル、キシレン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、メタノール、プロピオン酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル及びジアルキルエーテル並びにそれらの誘導体(これらは、CELLOSOLVE産業溶媒及びこのような溶媒の混合物として販売されている)が含まれる。
【0076】
樹枝状高分子アクリレート(例えば、樹枝状ポリエステルアクリレート)及びこのようなアクリレートを含む組成物は、光開始剤の使用の有無にかかわらず硬化させることが可能である。これらの材料は光開始剤が無くても硬化し得るが、少量の1つ以上の光開始剤を使用することにより、硬化速度を速め、より短い時間でより完璧な硬化を得ることができる。樹枝状高分子アクリル樹脂配合物を電子ビーム照射で硬化させる場合は、光開始剤は当然必要とされない。
【0077】
光開始剤を使用する場合、光開始剤は組成物の硬化を開始し、持続するのに十分な量(例えば、開始量又は光開始量)で存在する。光開始剤は、望ましくは硬化プロセスを開始させるのに必要な最少量で使用される。代替の非限定的実施形態において、光開始剤は、樹枝状高分子アクリレートを含む硬化性組成物中の放射線硬化性重合可能成分の総重量に対して0.1〜10重量%、例えば、0.5〜6重量%、より一般的には0.5〜1重量%の量で存在する。
【0078】
光開始剤は当業者で周知である。フリーラジカル開始剤である光開始剤は、その作用の様式に基づいて2つの主要な群に分類される。開裂型光開始剤には、アセトフェノン、α−アミノアルキルフェノン、ベンゾインエーテル、ベンゾイルオキシム、アシルホスフィンオキシド、及びビスアシルホスフィンオキシドが含まれるが、これらに限定されない。引き抜き型光開始剤には、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントラキノン、カンファーキノン、フルオロン、及びケトクマリンが含まれるが、これらに限定されない。引き抜き型光開始剤は、アミン及び引き抜きのための不安定な水素原子を提供するために添加される他の水素供与性材料等の物質の存在下でより良好に機能する。典型的な水素供与体は、酸素又は窒素に対してα位置の活性水素を有するか(例えば、アルコール、エーテル及び第三アミン)、又は硫黄に直接結合した活性水素原子を有する(例えば、チオール)。このような添加材料の非存在下においても、尚、モノマー、オリゴマー、又は系のその他の成分からの水素の引き抜きにより、光開始は生じ得る。
【0079】
使用され得る光重合開始剤の非限定的な例には、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、フルオロン(例えば、Spectra Group Limitedが販売する開始剤であるH−Nuシリーズ)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオキサントン、α−アミノアルキルフェノン(例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、アシルホスフィンオキシド(例えば、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド);ビスアシルホスフィンオキシド(例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及びビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド);フェニル−4−オクチルオキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ドデシルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−(2−テトラデカノール)オキシフェニル)−ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート及びこれらの光重合開始剤の混合物が含まれる。市販の光開始剤の例については、その開示内容が参考として本明細書で援用されている、米国特許第5,910,375号の第10欄第38〜43行目、及び米国特許第6,271,339 B1号の第11欄第24〜65行目に記載されている。
【0080】
光開始剤に加えて、樹枝状ポリエステルアクリレートを含む硬化性組成物には、熱開始剤(例えばペルオキシ型又はアゾ型の開始剤)又はコーティング組成物中にあって他の反応性モノマーの硬化を助ける触媒も含まれ得る。このような更なる開始剤/触媒の選択(及び量)は、使用される反応性モノマー/希釈剤の反応開始に必要な条件により変化し、このような反応開始に必要な条件は、当業者に周知である。
【0081】
樹枝状高分子アクリレートを含む硬化性フォトクロミックコーティング組成物は、混合及びブレンドを促進する温度で組成物の成分を混合することによって調製される。その後、その組成物は、当業者に認知され、周知である技法(例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング)、或いは上塗りの調製で使用される方法により、硬質基材へ適用することができる。このような方法は、米国特許第4,873,029号に記載されている。
【0082】
フォトクロミックコーティングを基材の表面に適用する前に、この基材の表面は、清浄な表面及び基材へのフォトクロミックコーティングの接着性を高める表面を提供するために、多くの場合洗浄され処理される。一般的に使用される効果的な洗浄及び処理には、限定されないが、石鹸/洗剤水溶液での超音波洗浄、有機溶媒の水性混合物(例えば、イソプロパノール:水又はエタノール:水の50:50混合物)での洗浄、UV処理、活性ガス処理(例えば、低温プラズマ又はコロナ放電による処理)、及び基材表面のヒドロキシル化を生じる化学的処理(例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属水溶液による表面のエッチング)が含まれ、この溶液はフルオロ界面活性剤を含み得る。一般的に、この水酸化アルカリ金属溶液は、希釈水溶液(例えば、水酸化アルカリ金属が5〜40重量%、より典型的には10〜15重量%、例えば12重量%)である。例えば、ポリマー有機材料の表面処理について記載された米国特許第3,971,872号第3欄第13〜25行目、同第4,904,525号第6欄第10〜48行目、及び同第5,104,692号第13欄第10〜59行目を参照されたい。このような開示内容は、参考として本明細書で援用されている。
【0083】
非限定的実施形態において、基材の表面処理に低温プラズマ処理を使用することが可能である。この方法は、重畳されたフィルム又はコーティングの接着性を表面処理によって強化し、そして例えば、物品の残りの部分に影響を及ぼすことなく表面を粗面化及び/又は化学的に変性させること等により物理的表面を変える清浄且つ効果的な方法である。不活性ガス(例えばアルゴン等)及び反応性ガス(例えば、酸素)がプラズマガスとして使用されている。不活性ガスは表面を粗面化し、一方酸素等の反応性ガスは、(例えば表面上にヒドロキシル部位又はカルボキシル単位を生成することにより)プラズマに曝露された表面を粗面化しわずかに化学的に変性させる。表面の粗面化及び/又は化学変性の度合いは、プラズマガス及びプラズマ装置の動作条件(処理時間の長さが挙げられる)により異なる。
【0084】
非限定的実施形態においては、フォトクロミックコーティングの適用前に、下塗りを基材の表面に適用することも可能である。下塗りは、基材とフォトクロミックコーティングとの間に挿入され、フォトクロミックコーティングを含む成分と基材との相互作用を防ぐ(及び逆の場合も同様)のためのバリアコーティングとして、並びに/或いはコーティングの基材への接着性を高める接着層としての役割を果たす。下塗りは、コーティングを適用する当業者に周知の従来の方法(例えば、スプレーコーティング、スピンコーティング、スプレッドコーティング、カーテンコーティング、ロールコーティング又はディップコーティング)の何れかによって基材へ適用することができ、この基材の洗浄済みの未処理表面、又は洗浄済みの処理済み表面(例えば、化学的に処理された表面)に適用することができる。下塗りは当業者に周知である。適切な下塗りの選択は、使用される基材及び特定のフォトクロミックコーティングにより変化する。
【0085】
下塗りの厚さは、単分子層の1層分又は複数層分であり得る。非限定的実施形態において、下塗りの厚さは0.1〜10ミクロンの範囲となり得る。代替の非限定的実施形態において、下塗りの厚さは0.1〜2又は3ミクロンの範囲となり得る。下塗りの厚さは、上述の値(列挙した値を含む)の任意の組み合わせの間で変わってもよい。代替の非限定的実施形態において、下塗りは、米国特許第6,150,430号に記載のような有機官能性シランを含む組成物であり、又は米国特許第6,025,026号に記載されているような実質的に有機シロキサンを含まない組成物である。
【0086】
樹枝状高分子アクリレート(例えば、樹枝状ポリエステルアクリレート)を含むフォトクロミックコーティング組成物は、それをUV放射線(例えば200〜450ナノメートルの範囲の放射線)に曝露させることによって(又は、UV放射線が使用されない場合、電子ビーム加工によって)硬化させてもよい。1つの非限定的実施形態において、UVへの曝露は、コーティング(例えば、その上にコーティングが適用されている基材)を所定の速度で移動するコンベヤ上にて、市販のUVランプ又はエキシマーランプ下を通過させることにより実施され得る。この放射線は、可視光及び紫外光の両方のスペクトルを含んでいてもよい。この放射線は単色性であっても多色性であってもよく、非干渉性であっても干渉性であってもよく、樹枝状高分子アクリレートを含むフォトクロミック組成物の重合性成分による重合を開始させるのに十分な強度であるべきである。硬化プロセスは、一般的に酸素(例えば空気)を硬化プロセスから排除して行う方がより効果的である。酸素の排除は、硬化プロセスの間、塗布されたフィルム上に窒素ブランケットを使用することにより達成され得る。
【0087】
光重合に使用する硬化放射線源は、紫外光及び/又は可視光の放射源から選択される。放射線源は、水銀ランプ、FeI及び/又はGaIでドーピングされた水銀ランプ、殺菌ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、メタルハライドランプ、又はこれらのランプの組み合わせであり得る。一般的に、光開始剤の吸収スペクトルは、最も高い硬化効率を得るために光源の電球(例えば、H球、D球、Q球及び/又はV球)のスペクトル出力に適合させる。光源に対する硬化性コーティングの曝露時間は、光源の波長及び強度、光開始剤、及びコーティングの厚さにより変化する。一般的に、曝露時間は、コーティングを実質的に硬化するのに十分であるか、又は後に熱硬化を行うための物理的な処理を可能にするのに十分に硬化されたコーティングを調製するために十分な時間となる。紫外線放射硬化又は電子ビーム放射硬化のために必要とされる時間は、一般的に熱硬化よりも短く(例えば、5秒間〜5分間)、放射線の強度(出力)により変化する。
【0088】
使用する特定の硬化条件は変えてもよい。一般的に、硬化条件は、選択する特定の基材、フォトクロミックコーティング配合物中の重合性成分、及び使用される触媒/開始剤のタイプ、又は電子ビーム放射の場合であれば電子ビームの強度により変化する。光重合関連の当業者は、使用する適切な硬化条件を容易に決めることができる。
【0089】
あまり望ましくないが、樹枝状ポリエステルアクリレートを含有するフォトクロミックコーティング組成物を熱により硬化させてもよい。例えば、アゾ型又はペルオキシ型のフリーラジカル熱開始剤をコーティング組成物中に組み入れ、そのコーティングを赤外線加熱によって硬化させてもよく、コーティング(例えばコーティングを含む基材)を、コーティングを硬化させるのに十分な温度に維持された従来式のオーブン(例えば対流式オーブン)の中に置くことによって硬化させてもよい。熱開始剤は、得られたコーティングを変色させないもの、又は重合性コーティング組成物中に組み入れられたフォトクロミック材料を分解しないものが好ましい。熱硬化プロセスは、フォトクロミックコーティングを、室温から、基材及びフォトクロミック材料がその加熱によってダメージを受ける温度より低い温度まで加熱する手順を包含し得る。例えば、一般的な熱硬化サイクルは、コーティング配合物を室温(22℃)から85℃〜125℃の範囲の温度まで、2分間〜20分間の間にわたって加熱する手順を包含し得る。
【0090】
好適な有機ペルオキシ化合物の非限定的な例には、ペルオキシモノカーボネートエステル(例えば、第三級ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート);ペルオキシジカーボネートエステル(例えば、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(第二ブチル)ペルオキシジカーボネート、及びジイソプロピルペルオキシジカーボネート);ジアシルペルオキシド(例えば、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、プロピオニルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド);ペルオキシエステル(例えば、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクチレート、及びt−ブチルペルオキシイソブチレート);メチルエチルケトンペルオキシド;並びにアセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシドが含まれる。
【0091】
適切なアゾビス(有機ニトリル)化合物の非限定的な例には、アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、並びにこのようなアゾ熱開始剤の混合物が含まれる。
【0092】
熱硬化条件又はUV/電子ビーム硬化条件で、物理的に処理可能であるが完全には硬化していないコーティングが生成される場合、フォトクロミックコーティングを完全に硬化するために硬化後に熱処理を行われ得る。完全にフィルムを硬化するための硬化後熱処理手順には、通常、212°F(100℃)のオーブンでの0.5〜3時間にわたる加熱が適切である。更に企図される実施形態において、フォトクロミック樹枝状高分子アクリレートコーティングは、熱開始剤と光開始剤との組み合わせで硬化させてもよい。
【0093】
フォトクロミック樹枝状高分子アクリレートコーティングを適用する硬質基材は変えてもよい。このような基材は、フォトクロミックコーティングに適応させる少なくとも1つの表面を有するものである。このような硬質基材の非限定的な例には、紙、ガラス、セラミック、木製物、石製物、織物、金属、及び有機ポリマー材料が含まれる。選択する特定の基材は、硬質基材とフォトクロミックコーティングの両方を必要とする、特定の用途によって変化する。非限定的実施形態において、基材は、光学基材、例えばレンズ等の透明基材である。眼用レンズ等のレンズの非限定的な例には、平面レンズ、半完成レンズ、完成レンズ、単一視レンズ、半製品の単一視レンズ、累進多焦点レンズ、及び完成単一視レンズが含まれる。
【0094】
本発明のフォトクロミック物品の調製で使用され得る高分子基材には、有機高分子材料及びガラスが含まれる。本明細書で使用される「ガラス」という用語は、高分子物質(例えば、高分子シリケート)として定義される。ガラス基材は、意図される目的に対して好適であれば任意のタイプのものでよいが、望ましくは、透明で色の薄い透明ガラス(周知の石英ガラス)、特にソーダ石灰石英ガラスである。種々の石英ガラスの性質及び組成物は、当該技術分野で周知である。ガラス基材は、熱焼戻し又は化学焼戻しの何れかによって強化されているものであり得る。樹枝状高分子アクリレートを含むフォトクロミックコーティングを有する物品の調製に使用できる高分子有機基材は、フォトクロミック樹枝状高分子アクリレートコーティングと化学的に適合し、並びにこのようなコーティングに適応させる表面を有するような、現在知られている(又は後に発見される)任意のプラスチック材料である。高分子有機基材の非限定的な例には、光学基材として有用であることが当該技術分野で認知される合成樹脂、例えば眼用レンズ等の光学用途のための光学的に透明な注型品を調製するために使用される有機光学樹脂等が含まれる。
【0095】
非限定的実施形態において、高分子有機基材として使用され得る有機基材には、その開示内容が参考として本明細書で援用されている、米国特許第5,658,501号の第15欄第28行目〜第16欄第17行目に開示されているモノマー及びモノマーの混合物から調製されるポリマー(即ち、ホモポリマー及びコポリマー)がある。このような有機基材は、熱可塑性又は熱硬化性の高分子基材、例えば、一般的に1.48〜1.74の範囲の屈折率を有する透明基材であってもよい。
【0096】
このようなモノマー及びポリマーの非限定的な例には、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー(例えば、PPG Industries, Inc.によりCR−39の商標で市販されるモノマーであるアリルジグリコールカーボネート、例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート));ポリウレア−ポリウレタン(ポリウレアウレタン)ポリマー(例えば、ポリウレタンプレポリマーとジアミン硬化剤との反応によって調製される)(その開示内容が参考として本明細書で援用されている、米国特許第6,127,505号の第1欄第59行目〜第6欄第5行目に記載)、PPG Industries, Inc.によりTRIVEXの商標で市販されるこのような1つのポリウレアウレタンポリマーの組成物;アクリル官能性モノマー(例えば、ポリオール(メタ)アクリロイル末端カーボネートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、エトキシ化フェノールメタクリレートモノマー、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、ウレタンアクリレートモノマー、及びポリ(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート)モノマーがあるがこれらに限定されない);ジイソプロペニルベンゼンモノマー;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(塩化ビニル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;ポリチオウレタン(例えば、Mitsui Toatsu Chemicals, Inc.のMR−6、MR−7、及びMR−8光学用樹脂等の材料が含まれるがこれらに限定されない);ビスフェノールA及びホスゲンから誘導されるカーボネート結合樹脂等の熱可塑性ポリカーボネート(このような物質の1つはLEXANの商標で販売);ポリエステル(例えばMYLARの商標で市販される物質);ポリ(エチレンテレフタレート);ポリビニルブチラール;ポリ(メチルメタクリレート)(例えばPLEXIGLASの商標で市販されている物質)、及び多官能性イソシアネートとポリチオール又はポリエピスルフィドモノマー(ホモポリマー化或いはポリチオールとのコポリマー化及び/又はターポリマー化の何れかによる)、ポリイソシアネート、ポリイソチオシアネート、及び必要に応じてエチレン性不飽和モノマー又はハロゲン化芳香族含有ビニルモノマーとの反応によって調製されるポリマー、が含まれる。また、このようなモノマーのコポリマー及び記載されたポリマーのブレンド、並びに他のポリマーとのコポリマーも意図される(例えば相互侵入網目生成物を形成するため)。非限定的実施形態において、有機高分子基材は基材の表面に適用されたフォトクロミック高分子コーティングに対して化学的適合性を有し、光学用途の場合、基材は好ましくは透明である。
【0097】
本発明のフォトクロミック物品を調製するために使用される高分子有機基材は、その表面上に保護コーティング(例えば耐磨耗性コーティング)を有し得る。例えば、市販の熱可塑性ポリカーボネート光学レンズは、その表面が傷つき、磨耗し、又は磨り減りやすいため、一般的にはその表面に耐磨耗性コーティング(例えばハードコート)を予め適用して販売されている。このようなレンズの例には、Gentexポリカーボネートレンズ(Gentex Opticsが販売)が含まれ、このレンズはポリカーボネート表面にハードコートが予め塗布されて販売される。本開示及び特許請求の範囲で使用される「高分子有機基材」という用語(又は同様の趣旨の用語)又はこのような基材の「表面」という用語は、高分子有機基材自体又は基材上にコーティングを有するこのような基材の何れかを包含するものとして意図される。従って、本開示中又は特許請求の範囲の中で、下塗り又はフォトクロミック高分子コーティングを基材表面へ塗布することに言及がなされた場合、このような言及は、このようなコーティングを高分子有機基材それ自体又は基材表面上のコーティング(例えば、耐磨耗性コーティング)に適用することを含む。そのため、「基材」という用語は、その表面上にコーティングを有する基材を含む。このようなコーティングは、任意の好適なコーティング(フォトクロミックコーティングを除く)であり得、これには、例えば、耐磨耗性コーティング(ハードコート)(例えば、任意の保護コーティング)、又はこの基材がその一部である物品に対して1つ以上の更なる機能特性(例えば、1つ以上の光調整機能)を提供するその他のコーティングがあるが、これらに限定されない。
【0098】
非限定的実施形態において、基材は、そのマトリックス内又はその基材の表面の少なくとも一部の上に、固定色、偏光材料又は偏光層、或いは他の1つ以上の機能特性を提供する材料を有し得る。また、基材は、そのマトリックス内に光調整機能を有し得、また光学基材の表面の少なくとも一部の上に光調整機能を有し得ることも意図される。後者の場合、その光学基材内及び光学基材上の光調整機能は、互い及び樹枝状高分子アクリレートを含むフォトクロミックコーティングを相互補完する。例えば、基材マトリックスは、固定色を有し得、そしてその表面は偏光材料又は偏光層を有し得る。
【0099】
樹枝状高分子アクリレートを含むフォトクロミックコーティングは、基材の1つ以上の表面の一部だけに適用されてもよいが、一般的には、基材の少なくとも1つの表面の全面に適用される。基材の選択される表面に適用されるフォトクロミックコーティングの量は、硬化コーティングが紫外線(UV)照射に曝露された場合に、光学濃度における所望の変化(ΔOD)を示すコーティングを生成するために十分なフォトクロミック材料の量を提供する量、即ちフォトクロミック量である。非限定的実施形態において、30秒のUV曝露後に22℃(72°F)で測定される光学濃度の変化は、少なくとも0.05であり、一般的には少なくとも0.15であり、例えば少なくとも0.20である。非限定的実施形態において、15分のUV曝露後の光学濃度の変化は、少なくとも0.10であり、一般的には少なくとも0.50であり、例えば少なくとも0.70である。
【0100】
代替の非限定的実施形態において、フォトクロミックコーティングで使用される有効なフォトクロミック材料の量は、コーティングを生成するために使用されるモノマー/樹脂の総重量に対して、0.5〜40.0重量%の範囲となり得る。一般的には、フォトクロミックコーティング内の有効なフォトクロミック材料の濃度は、1.0〜30重量%の範囲で変えてもよく、一般的には3〜20重量%の範囲となり、例えば3〜10重量%の範囲となり得る(コーティングを生成するために使用されるモノマー/樹脂の総量に対して)。コーティング中のフォトクロミック材料の量は、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲となり得る(列挙した値を含む)。
【0101】
硬質基材の表面に適用される、樹枝状高分子アクリレートを含むフォトクロミックコーティングの厚みは変えることができる。非限定的実施形態において、フォトクロミックコーティングは少なくとも3ミクロンの厚みを有している。代替の非限定的実施形態において、フォトクロミックコーティングは、少なくとも5ミクロン、一般には少なくとも10ミクロン、例えば少なくとも20又は30ミクロンの厚みを有している。1つの非限定的実施形態において、適用されるフォトクロミックコーティングは200ミクロン以下の厚みを有している。代替の非限定的実施形態において、適用されるフォトクロミックコーティングの厚みは、100ミクロン以下であり、一般的には50ミクロン以下であり、例えば40ミクロン以下である。フォトクロミックコーティングの厚みは、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲となり得る(列挙した値を含む)。例えば、適用されるフォトクロミックコーティングの厚みは、5〜50ミクロン、(例えば、10ミクロン、又は20〜40ミクロン)の範囲となり得る。適用されるフォトクロミックコーティングは、外観上の欠陥(例えば、ひっかき傷、穴、しみ、割れ目、ひび)を有さないことが好ましい。
【0102】
フォトクロミックコーティングに利用され得るフォトクロミック材料(例えば、フォトクロミック色素/化合物又はこのような色素/化合物を含有する組成物)は、無機及び/又は有機フォトクロミック化合物並びに/或いは現在当業者に既知である(又は後に発見される)このような有機フォトクロミック化合物を含有する物質である。選択する特定のフォトクロミック材料(例えば、化合物)は、最終的な用途及びその用途のために所望される色又は色相により変化する。複数のフォトクロミック化合物が組み合わせて使用される場合、一般に、これらは望ましい色又は色相を呈するために相互補完するように選択される。
【0103】
通常、フォトクロミックコーティングで使用される有機フォトクロミック化合物は、300〜1000nmの間(例えば400〜700nmの間)の可視スペクトル内に少なくとも1つの活性化吸収極大を有する。有機フォトクロミック材料は、例えば溶解又は分散により、樹枝状高分子アクリレートを含むコーティング配合物に組み込まれ、活性化された場合(例えば、紫外線照射に曝露した場合)に着色する。
【0104】
無機フォトクロミック材料には、一般的に、ハロゲン化銀、ハロゲン化カドミウム、及び/又はハロゲン化銅の微結晶が含まれる。一般的に、このハロゲン化物材料は、塩化物又は臭化物である。他の無機フォトクロミック材料は、鉱物ガラス(例えば、ケイ酸ソーダガラス)へのユーロピウム(II)及び/又はセリウム(III)の添加によって調製され得る。非限定的実施形態において、無機フォトクロミック材料は溶融ガラスに添加され、高分子フォトクロミックコーティングを形成するために使用されるコーティング組成物中に組み込まれる粒子へと形成される。このような無機フォトクロミック材料については、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 第4版, 第6巻, pp.322−325に記載されている。尚、この開示は参照により本明細書中に援用されているものとする。
【0105】
フォトクロミックコーティングで使用され得る有機フォトクロミック化合物の非限定的な例には、ピラン(例えばベンゾピラン)、クロメン(例えばナフトピラン、例としてはナフト[1,2−b]ピラン、ナフト[2,1−b]ピラン、スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン、フェナントロピラン、キノピラン及びインデノ縮合ナフトピラン)、その開示内容が参考として本明細書で援用されている、米国特許第5,645,767号の第1欄第10行目〜第12欄第57行目、及び米国特許第5,658,501号の第1欄第64行目〜第13欄第36行目に開示されるものが含まれる。使用され得る有機フォトクロミック化合物の更なる非限定的な例には、オキサジン(例えばベンゾオキサジン、ナフトオキサジン及びスピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン)が含まれる。更なる非限定的実施形態において、使用され得る更なるフォトクロミック材料には、例えば米国特許第3,361,706号に記載のフォトクロミック金属ジチゾネート(例えば、水銀ジチゾネート);その開示内容が参考として本明細書で援用されている、米国特許第4,931,220号第20欄第5行目〜第21欄第38行目に記載のフルギド及びフルジミド(例えば、3−フリル及び3−チエニルフルギド及びフルジミド);米国特許出願第2003/0174560号段落[0025]〜[0086]に記載のジアリールエテン;及び任意の前述のフォトクロミック材料/化合物の混合物が含まれる。
【0106】
有機フォトクロミック化合物、重合性フォトクロミック化合物、及び補足的なフォトクロミック化合物の更なる非限定的な例は、以下の米国特許に記載される:
米国特許第5,166,345号第3欄第36行目〜第14欄第3行目;
米国特許第5,236,958号第1欄第45行目〜第6欄第65行目;
米国特許第5,252,742号第1欄第45行目〜第6欄第65行目;
米国特許第5,359,085号第5欄第25行目〜第19欄第55行目;
米国特許第5,488,119号第1欄第29行目〜第7欄第65行目;
米国特許第5,821,287号第3欄第5行目〜第11欄第39行目;
米国特許第5,869,658号第2欄第5行目〜第4欄第37行目、及び同第11欄第36〜57行目;
米国特許第6,113,814号第2欄第23行目〜第23欄第29行目;
米国特許第6,153,126号第2欄第18行目〜第8欄第60行目;
米国特許第6,296,785号第2欄第47行目〜第31欄第5行目;
米国特許第6,348,604号第3欄第26行目〜第17欄第15行目;
米国特許第6,353,102号第1欄第62行目〜第11欄第64行目;及び
米国特許第6,630,597号第2欄第24行目〜第4欄第32行目、及び同第9欄第3〜17行目。
上記の開示内容は、参考として本明細書で援用されている。更に、フォトクロミック顔料等の有機フォトクロミック材料及び金属酸化物に包被されたフォトクロミック化合物がフォトクロミックコーティングに使用され得ることが意図される。例えば、米国特許第4,166,043号及び同第4,367,170号に記載の材料を参照されたい。
【0107】
フォトクロミックコーティングは少なくとも1種のフォトクロミック材料を含む。代替の非限定的実施形態において、フォトクロミックコーティングは二種以上のフォトクロミック材料の混合物を含み得る。フォトクロミック材料の混合物を使用することにより、活性化されたある特定の色(例えば、中間灰色に近い色、又は中間茶色に近い色)を得ることができる。例えば、ほぼ中間の灰色及びほぼ中間の茶色を規定するパラメータについて記載されている、米国特許第5,645,767号第12欄第66行目〜第13欄第19行目を参照されたい。このような開示内容は、参考として本明細書で援用されている。
【0108】
医学的な理由から、或いはファッション上の理由から(例えばより美的な結果を得るために)、(化学的及び色調的に)適合する色相(例えば、色素)がフォトクロミックコーティング配合物に加えられても、プラスチック基材に適用されてもよい。選択する特定の色素は変えられ得、そして上述の必要性及び達成されるべき結果により変化し得る。非限定的実施形態において、色素は、使用されるフォトクロミック材料が活性化された場合に得られる色を補完するように(例えば、より自然な色相を達成する、又は特定の波長もしくは入射光を吸収するように)選択され得る。別の非限定的実施形態において、色素は、フォトクロミックコーティングが活性化されていない状態にある場合に所望の色相を基材及び/又はコーティングに提供するように選択してもよい。
【0109】
更に意図される非限定的実施形態においては、耐磨耗性コーティングをフォトクロミック樹枝状高分子アクリレートコーティング上に重ねてもよい(例えば、重畳され得る)。耐磨耗性コーティング(ハードコート)、特にオルガノシラン材料を含む耐磨耗性コーティングは、磨耗、擦過等から表面を保護するために使用される。ハードコート又はシラン系ハードコートと呼ばれることが多いオルガノシラン含有耐磨耗性コーティングは、当該技術分野で周知であり、種々の製造業者(例えば、SDC Coatings, Inc.及びPPG Industries, Inc.)から市販されている。オルガノシランハードコーティングについて開示する米国特許第4,756,973号第5欄第1〜45行目、並びに同第5,462,806号第1欄第58行目〜第2欄第8行目及び第3欄第52行目〜第5欄第50行目を参照されたい。このような開示内容は、参考として本明細書で援用されている。ハードコーティングについて開示する米国特許第4,731,264号、同第5,134,191号、同第5,231,156号、同第6,808,812号、及び国際特許出願公開第94/20581号も参照されたい。
【0110】
耐磨耗性及び耐ひっかき性を提供する他のコーティング(例えば、多官能性アクリルハードコーティング、メラミン系ハードコーティング、ウレタン系ハードコーティング、アルキド系コーティング、シリカゾル系ハードコーティング、或いは他の有機又は無機/有機ハイブリッドハードコーティング)も耐磨耗性コーティングとして使用され得る。
【0111】
非限定的実施形態において、ハードコートは以下の実験式X:
SiW
[式中、Rはグリシドキシ(C〜C20)アルキルであり、望ましくはグリシドキシ(C〜C10)アルキルであり、より望ましくはグリシドキシ(C〜C)アルキルであり;Wは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルコキシ、C〜Cアシルオキシ、フェノキシ、C〜Cアルキルフェノキシ、又はC〜Cアルコキシフェノキシであり、このハロゲンはブロモ、クロロ又はフルオロである]によって表される少なくとも1つのオルガノシランモノマーを、固体として計算して、35〜95重量%含む組成物から調製され得る。一般的には、Wは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルコキシ、C〜Cアシルオキシ、フェノキシ、C〜Cアルキルフェノキシ、又はC〜Cアルコキシフェノキシであり、このハロゲンはクロロ又はフルオロである。1つの非限定的実施形態において、Wはヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルコキシ、C〜Cアシルオキシ、フェノキシ、C〜Cアルキルフェノキシ、又はC〜Cアルコキシフェノキシである。
【0112】
一般化学式Xで表されるシランモノマーの非限定的な例としては:グリシドキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、このようなシランモノマーの加水分解物、並びにこのようなシランモノマーとその加水分解物との混合物が含まれる。
【0113】
耐磨耗性コーティング(ハードコート)は、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング等の従来の塗布法によって、フォトクロミックコーティングに塗布することができる。耐磨耗性コーティングの厚さは変わってもよい。1つの非限定的実施形態において、耐磨耗性コーティングの厚さは0.5〜10ミクロンの範囲となり得る。ハードコート(例えば、オルガノシランハードコート)を適用する前に、フォトクロミックコーティング又はハードコートを適用するコーティングに対してハードコートへの受容性及びハードコートとの接着性を高めるための処理を行われ得る。例えば、前述のプラズマ及びコロナ放電処理等の処理を使用することが可能である。
【0114】
更なる非限定的実施形態において、更なるコーティング(例えば、反射防止コーティング)がハードコート層に適用され得る。反射防止コーティングの非限定的な例は、米国特許第6,175,450号及び国際特許公開第00/33111号に記載されている。
【0115】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に説明されるが、これらの実施例は、その多数の調整と変更が当業者に明らかであるように、例示としてのみ意図されるものである。本実施例中、百分率は他に指定のない限り重量%を示すものとする。モノマー、触媒、開始剤等の材料が、ある実施例において括弧内の小文字によって識別され、更に別の実施例においても使用される場合、それらの材料はその後の実施例において同じ小文字で識別される。
【0116】
以下の実施例において、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)から調製した72mm平面レンズを使用した。
【実施例】
【0117】
(実施例1)
試験用平面レンズを石けん水で洗浄し、乾燥させた後、Plasmatech装置を使用して、100ワットの出力レベルで1分間、100ml/分の速度で酸素をPlasmatech装置の真空チャンバー内に導入しながら酸素プラズマで処理した。次いで、このレンズを脱イオン水ですすぎ、空気乾燥した。フォトクロミック樹枝状ポリエステルアクリレートコーティング組成物を、プラズマ処理されたレンズにスピンコーティングによって塗布し(乾燥前重量の目標値:0.18グラム)、コーティングされたレンズをEYE紫外線装置のコンベヤベルト上に設置し、レンズを約30秒間紫外線光(V球)に曝露することにより硬化させた。コーティング組成物の成分とその量を表Iに一覧する。フォトクロミックコーティングの厚みは、約30ミクロンであった。
【0118】
【表1】

(a)NXT−7022は、16個の末端水酸基を有するポリエステルポリオールをメタクリル化することによって調製され、その平均約85〜90%がメタクリレート基に変換された樹枝状ポリエステルメタクリレートであることが納入業者により報告されている。
(b)Ciba−Geigyが販売する酸化防止剤。
(c)日立化成工業株式会社が販売するFA−711MMヒンダードアミン光安定剤。
(d)UV照射によって活性化された場合に、コーティングに灰色の色相を与えるよう設計された割合のナフトピランフォトクロミック材料の混合物。
(e)3M Companyが販売するフッ素化界面活性剤。
(f)[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド]光開始剤(Ciba−Geigyが販売するIrgacure 819)。
(g)Aldrichが販売するジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド)光開始剤。
【0119】
(1)フォトクロミック材料をN−メチルピロリジノンと混合した。その混合物を約1時間60℃で攪拌した。次に、コーティング組成物の残りの成分(NXT−7022樹脂とFC−431を除く)の全てを加え、得られた混合物(溶液A)を十分混合するまで室温で攪拌した。その後、NXT−7022樹脂とFC−431を溶液Aに混合し、得られたコーティング組成物を十分混合するまで攪拌した。
【0120】
試験レンズを紫外線光に曝露すると、色の変化が認められた。UV光の光源を取り除くと、レンズは本来の透明な状態に戻った。2個の試験レンズについて、光学ベンチ上で72°F(22℃)にてフォトクロミック応答の試験を行った。レンズに対する30秒間での光学濃度値の変化(ΔOD)(例えば、非活性状態又は退色状態から活性状態又は暗色状態への光学濃度の変化)の平均値は0.300であり、900秒での光学濃度値の変化の平均値は0.765であった。平均退色速度(退色時間−フォトピックT1/2)は209秒であり、第二平均退色速度(退色時間−第二フォトピックT1/2)は743秒であった。光学濃度の変化(ΔOD)は、以下の式に従って求める:ΔOD=log(%Tb/%Ta):ここで、%Tbは、退色状態における透過率%であり、%Taは、活性化状態における透過率%であり、対数の底は10である。退色速度(T1/2)は、活性化されたレンズのΔODが、活性化放射線の放射源を取り除いた後で、ΔODの最大値の1/2に達するまでの時間間隔(秒)である。第二退色速度(第二T1/2)は、活性化されたレンズのΔODが活性化放射線の放射源を取り除いた後で、ΔODの最大値の1/4に達するまでの時間間隔(秒)である。
【0121】
(実施例2)
コーティング組成物に使用される樹脂が、NXT−7022樹枝状ポリエステルメタクリレート70重量%及び1分子当たり約30個のエトキシ部位を有するビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート30重量%を含むことを除いて、実施例1の手順に従った。
【0122】
試験レンズを紫外線光に曝露すると、色の変化が認められた。UV光の光源を取り除くと、レンズは本来の透明な状態に戻った。試験レンズに対し、光学ベンチ上で72°F(22℃)にてフォトクロミック応答の試験を行った。レンズに対する30秒での光学濃度値の変化(ΔOD)の平均値は0.462であり、900秒での光学濃度値の変化の平均値は0.717であった。平均退色速度(退色時間−フォトピックT1/2)は57秒であり、第二平均退色速度(退色時間−第二フォトピックT1/2)は159秒であった。
【0123】
(実施例3)
コーティング組成物に使用される樹脂が、NXT−7022樹枝状ポリエステルメタクリレート50重量%及び1分子当たり約30個のエトキシ部位を有するビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート50重量%を含むことを除いて、実施例1の手順に従った。試験レンズに対し、光学ベンチ上で72°F(22℃)にてフォトクロミック応答の試験を行った。レンズに対する30秒での光学濃度値の変化(ΔOD)の平均値は0.570であり、900秒での光学濃度値の変化の平均値は0.744であった。平均退色速度(退色時間−フォトピックT1/2)は37秒であり、第二平均退色速度(退色時間−第二フォトピックT1/2)は86秒であった。
【0124】
(実施例4)
コーティング組成物に使用される樹脂が、NXT−7022樹枝状ポリエステルメタクリレート30重量%と、1分子当たり約30個のエトキシ部位を有するビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート70重量%を含むことを除いて、実施例1の手順に従った。試験レンズに対し、光学ベンチ上で72°F(22℃)にてフォトクロミック応答の試験を行った。レンズに対する30秒での光学濃度値の変化(ΔOD)の平均値は0.601であり、900秒での光学濃度値の変化の平均値は0.707であった。平均退色速度(退色時間−フォトピックT1/2)は28秒であり、第二平均退色速度(退色時間−第二フォトピックT1/2)は60秒であった。
【0125】
(実施例5)
表IIに記載されたコーティング組成物を使用したことを除いて、実施例1の手順に従った。
【0126】
【表2】

(h)PRO−5249は、その供給業者によってネオペンチルグリコール−2−プロポキシル化ジアクリレートと樹枝状ポリエステルアクリレートとの50/50ブレンドであり、ここで16個の末端ヒドロキシル基のうちの約13個がアクリル化されていることが報告される。
(i)ジオールとイソシアネートエチルメタクリレートとの反応によるPC−1122(ポリヘキサメチレンジカーボネートであると納入業者(Stahl)によって報告されている脂肪族ポリカーボネートジオール)のジメタクリレート
(j)Ciba−Geigyが販売するTINUVIN−622ヒンダードアミン光安定剤
(k)UV照射によって活性化された場合に、コーティングに灰色の色相を与えるよう設計された割合のナフトピランフォトクロミック材料の混合物。
【0127】
試験レンズに対し、光学ベンチ上で72°F(22℃)にてフォトクロミック応答の試験を行った。レンズに対する30秒での光学濃度値の変化(ΔOD)の平均値は0.506であり、900秒での光学濃度値の変化の平均値は0.789であった。平均退色速度(退色時間−フォトピックT1/2)は79秒であり、第二平均退色速度(退色時間−第二フォトピックT1/2)は233秒であった。
【0128】
(実施例6)
コーティング組成物に使用される樹脂が、45重量%のPRO−5249及び55重量%のPC−1122DMAを含むことを除いて、実施例5の手順に従った。試験レンズに対し、光学ベンチ上で72°F(22℃)にてフォトクロミック応答の試験を行った。レンズに対する30秒での光学濃度値の変化(ΔOD)の平均値は0.542であった;900秒での光学濃度値の変化の平均値は0.794であった。平均退色速度(退色時間−フォトピックT1/2)は67秒であり、第二平均退色速度(退色時間−第二フォトピックT1/2)は190秒であった。
【0129】
以上において、本発明をその特定の実施形態の具体的な詳細を参照して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に含まれる場合を除いて、このような詳細が本発明の適用範囲を制限するものと見なされることが意図されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フォトクロミックコーティングに適応させるのに好適な少なくとも1つの表面を有する硬質基材、及び
(b)該基材の該表面の少なくとも一部の上の、樹枝状高分子アクリレートを含む透明なフォトクロミックコーティングであって、該コーティングは、フォトクロミック量の少なくとも1種のフォトクロミック材料を含む、透明なフォトクロミックコーティング
を含む物品。
【請求項2】
前記樹枝状高分子アクリレートが、エポキシドアミンデンドリマー、カルボシラン系デンドリマー、アミドアミンデンドリマー、ポリスルフィドデンドリマー、ポリシロキサンデンドリマー、ポリアミノスルフィドデンドリマー、ポリエーテルデンドリマー、ポリチオエーテルデンドリマー、ポリエステルデンドリマー、ポリエステルアミドデンドリマー、又はポリ(エーテルケトン)デンドリマーから選択されるアクリレート変性デンドリマーから選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記樹枝状高分子アクリレートが樹枝状ポリエステルアクリレートである、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記基材が、アリルジグリコールカーボネートモノマーを含む重合性組成物から調製された基材、アクリル官能性モノマーを含む重合性組成物から調製された基材、熱可塑性ポリカーボネートを含む組成物から調製された基材、ポリ(尿素ウレタン)を含む組成物から調製された基材、ポリチオウレタンを含む組成物から調製された基材、ポリウレタンを含む組成物から調製された基材、或いは多官能性イソシアネート及び/又は多官能性イソチオシアナートとポリチオールモノマー又はポリエピスルフィドモノマーとの反応生成物を含む組成物から調製された基材から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記樹枝状ポリエステルアクリレートが、樹枝状ポリエステル巨大分子及び2000未満の分子量を有する有機アルコールをアクリル化することによって調製される液体組成物から調製される、請求項3に記載の物品。
【請求項6】
前記透明フォトクロミックコーティングが、樹枝状ポリエステルアクリレートを含む硬化性コーティング組成物、及びその他の少なくとも1種の放射線硬化性アクリル材料から調製される、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記その他の少なくとも1種の放射線硬化性アクリル材料が、モノアクリレート及びポリアクリレートから選択される、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記ポリアクリレートが、ジアクリレート、トリアクリレート、又はジアクリレート及びトリアクリレートの混合物である、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記その他の放射線硬化性アクリルモノマー材料に対する前記樹枝状ポリエステルアクリレートの重量比が、90:10〜10:90の範囲である、請求項6に記載の物品。
【請求項10】
前記その他の放射線硬化性アクリルモノマー材料に対する前記樹枝状ポリエステルアクリレートの重量比が、70:30〜30:70の範囲である、請求項6に記載の物品。
【請求項11】
前記フォトクロミックコーティングの調製に使用される前記硬化性組成物が更に、アクリル官能基以外の重合性基を含むその他の少なくとも1種の放射線硬化性モノマー材料を含み、該その他の少なくとも1種の放射線硬化性モノマー材料が該組成物の20重量%までの量で存在する、請求項6に記載の物品。
【請求項12】
前記フォトクロミック材料が少なくとも1種の有機フォトクロミック材料を含む、請求項1に記載の物品
【請求項13】
前記有機フォトクロミック材料が、ピラン、クロメン、オキサジン、フルギド、フルギミド、金属ジチゾネート、ジアリールエテン、及びこのような有機フォトクロミック材料の混合物を含む材料から選択される、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
(a)フォトクロミックコーティングに適応させることが可能な少なくとも1つの表面を有する光学硬質基材、及び
(b)該基材の該表面の少なくとも一部上の、樹枝状高分子ポリエステルアクリレートを含む透明なフォトクロミックコーティングであって、該コーティングは、フォトクロミック量の少なくとも1種のフォトクロミック材料を含む、透明なフォトクロミックコーティング
を含む光学物品。
【請求項15】
前記光学硬質基材が、アリルジグリコールカーボネートモノマーを含む重合性組成物から調製された基材、アクリル官能性モノマーを含む重合性組成物から調製された基材、熱可塑性ポリカーボネートを含む組成物から調製された基材、ポリ(尿素ウレタン)を含む組成物から調製された基材、ポリチオウレタンを含む組成物から調製された基材、ポリウレタンを含む組成物から調製された基材、或いは多官能性イソシアネート及び/又は多官能性イソチオシアネートとポリチオールモノマー又はポリエピスルフィドモノマーとの反応生成物を含む組成物から調製された基材から選択される、請求項14に記載の光学物品。
【請求項16】
前記樹枝状ポリエステルアクリレートが、樹枝状ポリエステル巨大分子及び2000未満の分子量を有する有機アルコールをアクリル化することによって調製される液体組成物から調製される、請求項15に記載の光学物品。
【請求項17】
前記フォトクロミックコーティングの調製に使用される前記硬化性コーティング組成物が、樹枝状ポリエステルアクリレート及びその他の少なくとも1種の放射線硬化性アクリル材料を含む、請求項15に記載の光学物品。
【請求項18】
前記その他の少なくとも1種の放射線硬化性アクリル材料が、モノアクリレート及びポリアクリレートから選択される、請求項17に記載の光学物品。
【請求項19】
前記ポリアクリレートが、ジアクリレート、トリアクリレート、又はジアクリレート及びトリアクリレートの混合物である、請求項18に記載の光学物品。
【請求項20】
前記その他の放射線硬化性アクリレートに対する前記樹枝状ポリエステルアクリレートの重量比が、90:10〜10:90の範囲である、請求項18に記載の光学物品。
【請求項21】
前記フォトクロミック材料が、ピラン、クロメン、オキサジン、フルギド、ジアリールエテン、及びこのような有機フォトクロミック材料の混合物を含むフォトクロミック材料から選択される有機フォトクロミック材料である、請求項15に記載の光学物品。
【請求項22】
前記クロメンが、ナフト[1,2−b]ピラン、ナフト[2,1−b]ピラン、スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン、フェナントロピラン、キノピラン、又はインデノ縮合ナフトピランから選択されるナフトピランであり、前記オキサジンがナフトオキサジン又はスピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジンから選択される、請求項21に記載の光学物品。
【請求項23】
前記物品がレンズである、請求項21に記載の光学物品。
【請求項24】
前記レンズが、平面レンズ、半完成レンズ、完成レンズ、単一視レンズ、半完成単一視レンズ、累進多焦点レンズ、及び完成単一視レンズから選択される、請求項23の光学物品。
【請求項25】
前記レンズが更に、前記フォトクロミックコーティング上に耐磨耗性コーティングを含む、請求項23に記載の光学物品。
【請求項26】
前記耐磨耗性コーティングがオルガノシランを含む、請求項25に記載の光学物品。
【請求項27】
前記硬質基材が、1.48〜1.74の範囲の屈折率を有する、熱硬化性材料又は熱可塑性材料から選択される有機高分子基材である、請求項24に記載の光学物品。

【公表番号】特表2009−506193(P2009−506193A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529113(P2008−529113)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/032794
【国際公開番号】WO2007/027479
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】