説明

樹状細胞を標的とするための組成物

【課題】 本発明は樹状細胞を標的とするための組成物に関する。
【解決手段】 本発明は特に、a) 1つもしくは複数の抗原;b) 抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメイン;およびc) a)およびb)を運ぶキャリアを含んでなる組成物に関する。本発明はさらに、このような抗DC-SIGN分子を含んでなる製剤、組成物およびデバイス、ならびに、それらを薬剤として、癌の治療、好ましくは黒色腫の治療に使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹状細胞を標的とするための組成物に関する。特に本発明は、抗原および樹状細胞標的化分子を有する膜小胞を含んでなる、ワクチン投与用組成物に関する。樹状細胞標的化分子は、DC-SIGNに結合する分子であることが適当である。本発明はさらに、このような抗DC-SIGN分子に関わる使用、製剤、組成物、およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
悪性黒色腫は、すべての皮膚癌のうちわずか4%を占めるに過ぎないにもかかわらず、皮膚癌関連死の原因の79%を占める[非特許文献1]。オーストラリアおよびニュージーランドは、黒色腫の発生率および死亡率が最も高く、その発生率は上昇傾向であることが報告されている[非特許文献2]。
【0003】
悪性黒色腫は、メラニン産生細胞であるメラノサイトの変異から生じる。メラノサイトは主として皮膚の表皮層に見いだされるので、結果として、そこが原発性黒色腫病変のもっともよく見られる部位である[非特許文献3]。原発病変は、メラノサイトの見られる、皮膚以外の部位、たとえば、口腔粘膜、鼻咽頭、副鼻腔、気管気管支樹、外陰部、膣、肛門、尿路、中枢神経系、および眼にも発生することがある[非特許文献4]。病気の広がりおよび重症度を評価するために病期分類システムが用いられるが、それは、原発腫瘍ならびに転移範囲の検査に基づくものである。スクリーニングの目的で信頼性のある血液マーカーは特定されていないので、診断は、身体診察および放射線技術から得られる測定結果に依る。こうした測定結果を用いて、総合的な病期分類(ステージ0からステージIV)および患者の予後診断を決定する。初期のステージ(0、IおよびII)では、原発腫瘍の転移は見られず、予後は非常に良好である。このような初期のステージは、主として、浸潤する腫瘍の深さに基づいて鑑別される。原発腫瘍がリンパ腺または周辺組織に転移しているが、遠隔リンパ節または他の臓器へは転移していないならば、その患者はステージIIIと診断される。黒色腫が遠く離れた(1つまたは複数の)臓器、または(1つまたは複数の)遠隔リンパ節に転移しているならば、黒色腫のステージIVと診断される[非特許文献5]。黒色腫の初期のステージはほとんどの場合、無症状であるため、患者が診断を受けるまでには、癌はたいてい進行期(ステージIIIまたはIV)となっており、したがって予後は不良である。
【0004】
皮膚黒色腫の早期発見とその後の適切な介入は、黒色腫患者の予後にもっとも多大な影響を与える。ステージ0-IIで発見された場合、推奨される治療は、手術によって原発腫瘍周辺から、原発腫瘍、皮膚および肉を取り除くことである。疾患がその早期であると認められ、しかも原発腫瘍が外科手術で摘出されれば、患者の97%は疾患の再発を示さない。腫瘍の不完全な切除は再発率が高く、再発病変を有する患者は長期治癒率が低くなるので、腫瘍を完全に摘出することが重要である[非特許文献6]。診断時の腫瘍浸潤の深さが、黒色腫からの生存をもっとも正確に予測する:黒色腫に関する生存率は、診断時のその深さに反比例する。原発黒色腫が深く浸潤している場合、より正確な病期分類のため、ならびに追加治療の必要性の決定に資するために、センチネルリンパ節生検が行われる。
【0005】
後期ステージ(IIIおよびIV)と診断された場合、悪性黒色腫のために残された治療の選択肢は満足できるものではなく、悪性黒色腫患者の長期生存は相対的にまれなこととなる[非特許文献7]。ステージIIIの患者については、通常、検査で黒色腫に対して陽性と出たリンパ節の周囲のリンパ節を切除する。患者が外科手術に医学的に耐えられない、または広がりすぎて切除不能な病変を有する場合、外科手術の代替法として放射線治療を用いることができる。手術後に陽性の辺縁または近接する辺縁を有する患者、またはリンパ節への転移が局所的な発症リスクを高めるような患者においては、術後放射線治療も考慮される[非特許文献8]。ステージIVの黒色腫に対する標準治療は、ダカルバジン(DTIC)による化学療法である[非特許文献9]。ステージIVの黒色腫のためにロムスチンおよびフォテムスチンなどの他の化学療法薬も認可されている[非特許文献10]。
【0006】
ハイリスクの黒色腫患者の治療に使用するために、2つの生物学的治療法:インターフェロンα-2bおよびIL-2がFDAの認可を受けている。インターフェロンα-2bは、病気の自然の経過を変えるために補助療法として処方され、一部の研究では、ハイリスクの悪性黒色腫を完全に切除した患者の再発率を低下させることが明らかになっている[非特許文献11]。しかしながら、その治療には52週間にわたる反復投与が必要であり、それはかなりの毒性および相当な費用を伴う[非特許文献12]。IL-2は、転移性黒色腫の患者に使用される免疫療法薬であり、低いが一貫して13-17%程度の奏効率を示す(7-9%部分寛解および6-8%完全寛解)[非特許文献13,14]。
【0007】
黒色腫は免疫原性の癌である。黒色腫患者では当然、多くの場合、多数の腫瘍浸潤リンパ球がみられるが、多くの研究によって、黒色腫細胞が、黒色腫特異的T細胞および抗体応答を誘導することができる抗原を、発現していることが報告されている[非特許文献15]。このことが、さまざまな黒色腫ワクチンの戦略案につながっており、そのうちのあるものは全細胞、細胞溶解物、タンパク質および他の特異的ペプチドからなる。樹状細胞に基づくワクチンは、ex vivoで抗原を取り込ませた樹状細胞を使用するものであって、腫瘍に対する患者の免疫応答を増強することを目指してテストされてきた。しかしながら、15年以上の研究にもかかわらず、臨床試験の他には、いまだに何の使用承認もなされていない[非特許文献16]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】AmericanCancerSociety. 2008 [2008 9月09日に掲載]; http://www.cancer.org/docroot/CRI/content/CRI_2_4_1X_What_are_the_key_statistics_for_melanoma_50.asp?sitearea=より入手可能
【非特許文献2】(AACR), A.I.o.H.a.W.A.a.A.A.o.c.r., Cancer in Australia 2001, in Cancer Series. 2004, AIHW: Canberra.
【非特許文献3】Cummins, D.L., et al., Cutaneous malignant melanoma. Mayo Clin Proc, 2006. 81(4): p. 500-7.
【非特許文献4】Chang, A.E., L.H. Karnell, and H.R. Menck, The National Cancer Data Base report on cutaneous and noncutaneous melanoma: a summary of 84,836 cases from the past decade. The American College of Surgeons Commission on Cancer and the American Cancer Society. Cancer, 1998. 83(8): p. 1664-78.
【非特許文献5】AmericanCancerSociety. 2008 06/05/2008 [2008 9月06日に掲載]; http://www.cancer.org/docroot/CRI/content/CRI_2_4_3X_How_is_melanoma_staged_50.asp?sitearea=. より入手可能
【非特許文献6】Balch, C.M., et al., New TNM melanoma staging system: linking biology and natural history to clinical outcomes. Semin Surg Oncol, 2003. 21(1): p. 43-52.
【非特許文献7】Atallah, E. and L. Flaherty, Treatment of metastatic malignant melanoma. Curr Treat Options Oncol, 2005. 6(3): p. 185-93.
【非特許文献8】Ang, K.K., et al., Postoperative radiotherapy for cutaneous melanoma of the head and neck region. Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1994. 30(4): p. 795-8.
【非特許文献9】Lens, M.B. and T.G. Eisen, Systemic chemotherapy in the treatment of malignant melanoma. Expert Opin Pharmacother, 2003. 4(12): p. 2205-11.
【非特許文献10】Spiro, T., L. Liu, and S. Gerson, New cytotoxic agents for the treatment of metastatic malignant melanoma: temozolomide and related alkylating agents in combination with guanine analogues to abrogate drug resistance. Forum (Genova), 2000. 10(3): p. 274-85.
【非特許文献11】Strannegard, O., F.B. Thoren, and E. Lundgren, [Interferon-alpha can improve the prognosis in high-risk melanoma. Combination of surgery, cytostatics and natural IFN-alpha doubled the survival rate]. Lakartidningen, 2008. 105(6): p. 358-61.
【非特許文献12】Hauschild, A., et al., Practical guidelines for the management of interferon-alpha-2b side effects in patients receiving adjuvant treatment for melanoma: expert opinion. Cancer, 2008. 112(5): p. 982-94.
【非特許文献13】Rosenberg, S.A., et al., Treatment of 283 consecutive patients with metastatic melanoma or renal cell cancer using high-dose bolus interleukin 2. JAMA, 1994. 271(12): p. 907-13.
【非特許文献14】Smith, F.O., et al., Treatment of metastatic melanoma using interleukin-2 alone or in conjunction with vaccines. Clin Cancer Res, 2008. 14(17): p. 5610-8.
【非特許文献15】van Houdt, I.S., et al., Favorable outcome in clinically stage II melanoma patients is associated with the presence of activated tumor infiltrating T-lymphocytes and preserved MHC class I antigen expression. Int J Cancer, 2008. 123(3): p. 609-15.
【非特許文献16】Danson, S. and P. Lorigan, Melanoma vaccines--they should work. Ann Oncol, 2006. 17(4): p. 539-41.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、有効な黒色腫治療が、依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある態様において、本発明は、
a) 1つもしくは複数の抗原;
b) 抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメイン;および
c) a)およびb)を運ぶキャリア
を含んでなる組成物を提供する。
【0011】
ある実施形態において、組成物は、さらにd) 免疫調節因子を含んでなる。適当な免疫調節因子は、たとえば、WO 2005/018610に記載されている。適当な免疫調節因子は、「危険シグナル」と呼ばれることもある。
【0012】
ある実施形態において、1つもしくは複数の抗原は、膜小胞(MV)に由来する。適切なのは、膜小胞が1つもしくは複数の膜結合抗原を有することであって、黒色腫分化抗原チロシナーゼ、gp100およびMART-1、または癌精巣抗原MAGE-A3、MAGE A-10、BAGE、GAGEおよびXAGEなどの腫瘍抗原が適当である。
【0013】
別の実施形態において、1つもしくは複数の抗原は、樹状細胞上に提示することが望ましい任意のポリペプチドから得られる。
【0014】
ある実施形態において、膜小胞は腫瘍細胞、好ましくは黒色腫細胞に由来する。数多くの黒色腫細胞株が利用できる。ある実施形態では、黒色腫細胞株MM200に由来する黒色腫細胞が使用される。別の実施形態では、黒色腫細胞を患者から採取することができる。ある実施形態において、その患者は悪性黒色腫患者である。別の実施形態において、腫瘍細胞は、たとえば、膀胱癌、乳癌、肺癌(NSCLCを含む)、肝臓癌、精上皮腫、および/または頭頸部癌などの、何らかの癌に由来する細胞株、または患者の細胞とすることができる。
【0015】
もう1つの実施形態において、抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、単一ドメイン抗体(dAb)であって、VH dAbフラグメントなどの重鎖dAbフラグメントが適当である。別の実施形態において、抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、VL dAbフラグメントなどの軽鎖dAbフラグメントである。ある実施形態において、抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書においてDMS5000と特定された特異的単一ドメイン抗体を含んでおり、これは、図12の配列番号1に記載のアミノ酸配列を含んでなる。別の実施形態において、抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、図12の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するDMS5000である。もう1つの実施形態において、抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含んでなる。他の実施形態において、抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1または配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインと、同じ結合特異性を有するものである。
【0016】
別の実施形態において、抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1または3に記載のアミノ酸配列と同一のCDR配列を有するものである。
【0017】
抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、ポリヒスチジンC末端尾部を追加して含んでいてもよい。たとえば、抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、図12の配列番号2に記載のアミノ酸配列を含んでなることが考えられる。このポリヒスチジンC末端尾部は、抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインを、その尾部を介して、キレート剤脂質3NTA-DTDAによって、膜小胞に連結することを可能にする。
【0018】
適当なキャリアとしては、任意の適当なデリバリー法、たとえば生分解性マイクロカプセルもしくは免疫刺激複合体(ISCOM)、コクリエート(cochleate)、リポソーム、遺伝子操作を受け弱毒化された生きたベクター、たとえばウイルスもしくは細菌、ならびに組換え(キメラ)ウイルス様粒子、たとえばブルータングがある。ヒトにおける他のキャリア系には、胃の酸性環境から抗原を保護する腸溶性カプセル、およびポリ乳酸-グリコール酸マイクロスフェアを含めることができる。適当な希釈剤は、0.2N NaHCO3および/または生理食塩水である。
【0019】
ある実施形態において、キャリアはリポソームである。リポソームはリポソーム成分を含有することが適当である。こうしたリポソーム成分は、リポソームの形成を可能にする。適当なリポソーム成分は、たとえばWO 2005/018610に記載されている。したがって、もう1つの実施形態において、リポソーム成分にはキレート剤脂質3(ニトリロ三酢酸)-ジテトラデシルアミン(3NTA-DTDA)が含まれる。他の実施形態において、リポソーム成分には、ニッケル、好ましくは硫酸ニッケル(NiSO4)の形をとるニッケル、も含まれる。NiSO4はポリヒスチジンC末端尾部とキレート剤脂質3NTA-DTDAとの相互作用を促進する。
【0020】
別の実施形態において、リポソーム成分には、脂質α-パルミトイル-β-オレイル-ホスファチジルコリン(POPC)が含まれる。
【0021】
ある実施形態において、リポソーム成分は、in vivo循環においてリポソームを長く存続させるために、ポリエチレングリコール(PEG)のような親水性ポリマーを組み入れることができる。
【0022】
別の実施形態において、免疫調節因子は、樹状細胞(DC)を刺激するサイトカインである。免疫調節因子はサイトカイン、インターフェロンγ(IFN-γ)が適当である。他の免疫調節因子には、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-10、インターロイキン-12、およびトランスフォーミング増殖因子βがある。
【0023】
ある実施形態において、組成物はワクチン組成物である。ある実施形態において、ワクチン組成物は、本明細書に記載の"Lipovaxin-MM"である。
【0024】
別の実施形態において、組成物はさらに、製薬上許容されるキャリアを含んでなる。組成物は静脈内投与用に調製されるのが適当である。
【0025】
別の態様において、本発明は、本発明の組成物を作製するための方法を提供するが、その方法は、
i) 膜小胞を調製すること;
ii) リポソーム成分を調製すること;
III) 膜小胞およびリポソーム成分を免疫調節因子と合わせること;
IV) 抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインを加えること
を含む。
【0026】
ある実施形態において、上記ステップはいかなる順序でも行うことができる。
【0027】
ある実施形態において、膜小胞の調製は、腫瘍細胞を増殖させ、超音波処理して、遠心により膜ペレットを調製しPBS中に再懸濁することによる。別の実施形態において、リポソーム成分は、POPCとNi-3NTA-DTDAを混合することにより調製される。また他の実施形態において、本方法はニッケルの添加を含む。
【0028】
もう1つの態様において、薬剤として使用するために、本発明にしたがって組成物が提供される。ある態様において、本発明の組成物は癌治療用である。癌は黒色腫であることが適当である。
【0029】
別の実施形態において、組成物は静脈内投与用である。
【0030】
別の態様において、本発明の組成物を投与することを含んでなる、被験体において腫瘍を治療するための方法が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】Lipovaxin-MMの模式図であって、MM200膜画分由来の脂質、POPCおよびさまざまな癌抗原が確認できることを示す。樹状細胞標的化ドメイン抗体(dAb)DMS5000も示されている。インターフェロンγは、主としてワクチンの外表面に結合しているように描かれている。
【図2】リポソーム中の3NTA-DTDA量および対応するdAbのモル比を増加させても、Lipovaxin-MMの標的化効果は増大しない。ヒトDC-SIGNを発現するTHP-1細胞を、抗ヒトDC-SIGNモノクローナル抗体とともに、またはさまざまな量の3NTA-DTDAおよび連結されたdAbを含有するLipovaxin-MMとともに、インキュベートした。図2は、Lipovaxin-MMの表面上の標的化分子の数を増やしてもワクチンの標的化は増加しなかったことを、FACS分析によって示す。
【図3】Lipovaxin-MMとともにインキュベートしたヒト単球由来樹状細胞(moDC)のZ断面。ワクチンは、POPC、3NTA-DTDAおよびMM200膜小胞から作製されたが、膜小胞はBODIPY-500-510-C蛍光色素(緑色)を取り込みdAb DMS5000が連結されている。moDCは、BODIPY redスクシンイミジルエステル(赤色)で着色し、ワクチンとともに5時間インキュベートした後、顕微鏡検査した。細胞をカバースリップに載せた後、ただちに、共焦点顕微鏡下で観察した。Z断面は、ワクチンがmoDCの表面に結合すること(第1および第4画像)、ならびにそれが細胞内部に取り込まれること(第2および第3画像)を示す。
【図4】拡大アッセイ。リポソーム/MV融合物およびLipovaxin-MM(dAbが連結されている)を、プロテインA -ビオチンとともにインキュベートし、続いて蛍光色素AlexaFluor488とコンジュゲートしたストレプトアビジンとともにインキュベートした。フローサイトメトリーによる分析により、dAbを連結した粒子(右側)だけが蛍光色素と結合した。
【図5】蛍光化Lipovaxin-MMとヒト細胞ならびにトランスフェクトされた細胞株との結合。THP-1細胞、ヒトDC-SIGNを発現するトランスフェクトされたTHP-1細胞(THP-1/DC-SIGN)、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)、およびヒト単球由来樹状細胞(moDC)は、DC-SIGN発現、ならびに蛍光化Lipovaxin-MMとの結合能について評価した。THP-1/DC-SIGN細胞およびmoDCだけがDC-SIGNを発現し、Lipovaxin-MMと結合することができた。
【図6】Lipovaxin-MMに結合したIFN-γ活性の定量。Lipovaxin-MMのIFN-γ活性は、THP-1/DC-SIGN細胞上でのCD64の発現に基づいて測定した。細胞を、さまざまな濃度の用時調製Lipovaxin-MM、または取り込まれなかったIFN-γを遠心で除去したLipovaxin-MM(Lipovaxin-MM膜結合)とともに、37℃にて48時間インキュベートした。CD64のアップレギュレーションを、抗CD64 mAbを用いてフローサイトメトリーによって測定した。結果を平均±標準誤差として示す。
【図7】MM200膜小胞のウェスタンブロット分析。超音波処理によって細胞溶解物を調製した;MVは、本明細書に記載の標準的な操作手順に従って調製した。サンプルのタンパク質含量を測定し、次にサンプルをサンプルバッファーとともに煮沸し、プレキャストNuSepゲル(4-20%)にロードして、SDS-PAGEに供した。タンパク質をニトロセルロース膜上に移し、一晩ブロックした。膜を一次抗体でプローブし、洗浄してから、アルカリホスファターゼとコンジュゲートした二次抗体とともにインキュベートした。PromegaのWestern Blue安定化基質を用いてバンドを可視化した。MM200細胞から調製された細胞溶解物(左)およびMV(右)のいずれにおいても、Pan-カドヘリン、Melan Aおよびgp100が可視化された。
【図8】4℃で保存したLipovaxinの安定性:in vitroでのLipovaxin-MM(LV-MM)のDC-SIGNとの結合に及ぼす影響。LV-MMは4℃で保存し、さまざまな時点で分取された一定量について、THP-1/DC-SIGN細胞を用いて結合アッセイを行った。LV-MMはBODIPY-500-510-C色素で蛍光化した。4℃で4週間保存した後、LV-MMは、THP-1/DC-SIGN細胞上のDC-SIGNとの結合について安定であった。
【図9】4℃で保存したLipovaxin(LV-MM)の安定性:IFN-γ活性への影響。用時調製LV-MMおよび4℃にて保存したLV-MMのIFN-γ活性を、THP-1/DC-SIGN細胞上のCD64の発現に基づいて測定した。左側のグラフは、全体としてのLV-MMを示すのに対して、右側は、膜結合性でないIFN-γを遠心により除去したLV-MMを示す。細胞は、さまざまな濃度のLV-MMとともに、37℃にて48時間インキュベートした。CD64のアップレギュレーションを、抗CD64 mAbを用いてフローサイトメトリーにより測定した。結果を平均±標準誤差として示す。4℃で保存後、LV-MM中のIFN-γは第4週までの間は安定であった。しかしながら、LV-MMの膜結合性IFN-γの減少は、IFN-γが時間経過につれて膜から解離するようになることを示す。
【図10−1】Lipovaxin-MMのワクチン投与を受けたマカークザル由来の培養PBMCによるIFN-γおよびTNF-αの分泌。以下に概略を説明するスケジュールにしたがって、4匹のマカークザルからなる2グループ(AおよびB)に、Lipovaxin-MMを用いてワクチン投与した。ワクチン投与スケジュール期間中さまざまな時点で採血を行い、末梢血単核細胞(PBMC)を単離して、「ダミー」Lipovaxin-MM(IFN-γなし)(DLVあり)、もしくは抗-CD3 mAb(CD3)とともに、または刺激なしで、48時間培養した。培養上清を集め、BD CBA Non-Human Primate Th1/Th2 Cytokine Kitを用いて、IFN-γおよびTNF-α産生について分析した。SN = 上清。
【図10−2】Lipovaxin-MMのワクチン投与を受けたマカークザル由来の培養PBMCによるIFN-γおよびTNF-αの分泌。以下に概略を説明するスケジュールにしたがって、4匹のマカークザルからなる2グループ(AおよびB)に、Lipovaxin-MMを用いてワクチン投与した。ワクチン投与スケジュール期間中さまざまな時点で採血を行い、末梢血単核細胞(PBMC)を単離して、「ダミー」Lipovaxin-MM(IFN-γなし)(DLVあり)、もしくは抗-CD3 mAb(CD3)とともに、または刺激なしで、48時間培養した。培養上清を集め、BD CBA Non-Human Primate Th1/Th2 Cytokine Kitを用いて、IFN-γおよびTNF-α産生について分析した。SN = 上清。
【図11−1】Lipovaxin-MMを用いてワクチン投与したマカークザルにおける抗体産生。以下に概略を説明するスケジュールにしたがって、4匹のマカークザルからなる2グループ(AおよびB)に、Lipovaxin-MMを用いてワクチン投与した。ワクチン投与スケジュール期間中さまざまな時点で採血を行い、酵素結合免疫吸着測定法を実施して、全体としてのLipovaxin-MM(Lipovaxin)、Lipovaxin-MMのMM200膜小胞成分(MV)、およびドメイン抗体DMS5000(dAb)に特異的な抗体産生量を測定した。
【図11−2】Lipovaxin-MMを用いてワクチン投与したマカークザルにおける抗体産生。以下に概略を説明するスケジュールにしたがって、4匹のマカークザルからなる2グループ(AおよびB)に、Lipovaxin-MMを用いてワクチン投与した。ワクチン投与スケジュール期間中さまざまな時点で採血を行い、酵素結合免疫吸着測定法を実施して、全体としてのLipovaxin-MM(Lipovaxin)、Lipovaxin-MMのMM200膜小胞成分(MV)、およびドメイン抗体DMS5000(dAb)に特異的な抗体産生量を測定した。
【図12】DMS5000配列を示す。
【図13−1】Lipovaxin-MMプレ製剤成分の組成および特徴を記載した表を示す。
【図13−2】Lipovaxin-MMプレ製剤成分の組成および特徴を記載した表を示す。
【図13−3】Lipovaxin-MMプレ製剤成分の組成および特徴を記載した表を示す。
【図13−4】Lipovaxin-MMプレ製剤成分の組成および特徴を記載した表を示す。
【図13−5】Lipovaxin-MMプレ製剤成分の組成および特徴を記載した表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本明細書において、本発明は、明瞭かつ簡潔な明細を書き記すことができるよう、実施形態に準拠して説明される。本発明から離れることなく、実施形態をさまざまに組み合わせること、または分割することができる。
【0033】
特に指示しない限り、本明細書で使用されるあらゆる科学技術専門用語は、(たとえば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生化学分野の)当業者に、通常、理解されるのと同じ意味を有する。標準的な技術は、分子、遺伝、および生化学的方法(一般的に、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.、およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc.を参照されたいが、これらは参考として本明細書に含めるものとする)ならびに化学的方法のために使用される。
【0034】
本発明の組成物に使用される抗原として、腫瘍抗原がある。好都合にも、こうした抗原には、同一組織に由来する非腫瘍細胞と比較して腫瘍細胞上で示差的な発現をする抗原がある。示差的な発現には、たとえば、アップレギュレーション、選択的にスプライシングされた形などを含めることができる。腫瘍抗原には、いわゆる癌精巣抗原が含まれる。これは、精巣以外の正常組織/細胞には一般に発現しない、抗原/タンパク質である。しかしながら、こうした抗原は、膀胱癌、乳癌、肺癌とくに非小細胞肺癌(NSCLC)、肝臓癌、精上皮腫、黒色腫および/または頭頸部癌などの特定の癌/腫瘍に特異的に発現すると考えられており、好都合なことに、細胞傷害性T細胞により認識可能である。50個以上の癌精巣抗原がこれまでに報告されており、それらのうちの多くについて、Tリンパ球により認識される特異的エピトープが同定されている。本発明のある実施形態において、前記の1つもしくは複数の抗原は、任意の癌精巣抗原とすることができる。
【0035】
特徴のよく分かっている癌精巣抗原ファミリーが、MAGEファミリーであるが、これは12個の密接に関連した遺伝子、MAGE1、MAGE2、MAGE3、MAGE4、MAGE5、MAGE6、MAGE7、MAGE8、MAGE9、MAGE10、MAGE11、MAGE12を含んでおり、これらはX染色体上にあって、互いにコード配列中64から85%の相同性を有する(De Plaen, Immunogenetics 1994, 40: 5 (360-369))。これらは、MAGE A1、MAGE A2、MAGE A3、MAGE A4、MAGE A5、MAGE A6、MAGE A7、MAGE A8、MAGE A9、MAGE A10、MAGE A11、MAGE A12(MAGE Aファミリー)として知られることもある。他の2つのタンパク質群も、より離れた関連性ではあるが、MAGEファミリーに属している。これらはMAFE BおよびMAGE Cグループである。MAGE BファミリーにはMAGE Bl(MAGE XpIおよびDAM 10とも呼ばれる)、MAGE B2(MAGE Xp2およびDAM 6とも呼ばれる)、MAGE B3およびMAGE B4が含まれ、Mage Cファミリーには、これまでのところ、MAGE C 1およびMAGE C2が含まれる。
【0036】
ある実施形態において、本発明の組成物に用いる抗原は、黒色腫抗原である。適当な黒色腫抗原は、MAGE-1およびMAGE-3などの癌精巣抗原を含めて、T細胞によって認識される抗原である。こうした抗原は、他の腫瘍でも産生される。たとえば、MAGE-3は小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(non-SCLC)、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、結腸癌および乳癌にも見られる。MAGE-1も、乳癌、膠芽腫、神経芽細胞腫、SCLC、および甲状腺髄様癌で産生される。他の黒色腫抗原には、MART-1/Melan-A、チロシナーゼ、GP75およびGP100などの黒色腫細胞系列特異的分化抗原がある。他の適当な抗原としては、チロシナーゼ、BAGE、GAGE-1,2、GnT-V、p15がある。さらに、b-カテニン、MUM-1およびCDK4などの腫瘍特異的変異抗原が含まれる。
【0037】
樹状細胞特異的ICAM-3結合ノンインテグリン(DC-SIGNまたはCD209)は、マンノース特異的カルシウム依存性(C型)レクチンであるII型膜タンパク質である。DC-SIGNは、樹状細胞(DC)とT細胞との間の相互作用を仲介するが、それはたとえば、Soilleux, Clinical Science (2003), 104, 437-446により記載され、配列データはNM_021155 (mRNA) およびNP_066978 (タンパク質)で与えられる。
【0038】
好都合にも、本発明の抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、任意の抗体フォーマットで提示することができる。
【0039】
本明細書において抗体は、自然に抗体を産生する任意の種に由来するにしろ、組換えDNA技術により作製されるにせよ;血清、B細胞、ハイブリドーマ、トランスフェクトーマ、酵母または細菌から単離されるにせよ、いずれにしても、IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE、またはフラグメント(Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディなど)を表す。
【0040】
本明細書において「抗体フォーマット」は、抗原に対する結合特異性を構造に付与するために、1つもしくは複数の抗体可変ドメインを組み込むことができる、任意の適当なポリペプチド構造を表す。適当な抗体フォーマットは当技術分野でいろいろ知られており、たとえば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、前記の任意の抗原結合フラグメント(たとえば、Fvフラグメント(例としては、一本鎖Fv (scFv)、ジスルフィド結合Fv)、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2 フラグメント)、単一抗体可変ドメイン(たとえば、dAb、VH、VHH、VL)、および前記の任意の改変型(たとえば、ポリエチレングリコールまたは他のポリマーまたはヒト化VHHの共有結合付加により改変された型)などである。
【0041】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という表現は、他のV領域もしくはドメインとは無関係に抗原またはエピトープと特異的に結合する、抗体可変ドメイン(VH、VHH、VL)を表す。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変領域もしくは可変ドメインを有するフォーマット(たとえば、ホモもしくはヘテロ多量体)として存在することが考えられるが、こうした他の領域もしくはドメインは、単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合には必要でない(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変ドメインとは無関係に抗原と結合する)。「ドメイン抗体」または「dAb」は、本明細書で使用される「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。「単一免疫グロブリン可変ドメイン」は本明細書で使用される「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。「単一抗体可変ドメイン」または「抗体単一可変ドメイン」は、本明細書で使用される「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。免疫グロブリン単一可変ドメインは、ある実施形態では、ヒト抗体可変ドメインであるが、齧歯類(たとえば、WO 00/29004に記載され、その内容は参考としてその全体を本明細書に含めるものとする)、テンジクザメおよびラクダ科動物VHH dAbなどの、他種に由来する単一抗体可変ドメインも含んでいる。ラクダ科動物VHHは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコを含めた種に由来する、免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドであって、これらの種は、自然に、軽鎖を欠いた重鎖抗体を産生する。該VHHはヒト化することができる。
【0042】
「ドメイン」は、タンパク質の残りの部分とは無関係な三次構造を有する、折り畳みタンパク質構造である。一般に、ドメインはタンパク質の個々の機能特性に与り、多くの場合、タンパク質の残りの部分および/またはドメインの機能の喪失なしに、他のタンパク質に付加、除去、または移動することができる。「単一抗体可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含んでなる、折り畳みポリペプチドドメインである。したがって、これには、完全な抗体可変ドメイン、および改変された可変ドメイン、たとえば、1つもしくは複数のループが、抗体可変ドメインに特有ではない配列で置き換えられた前記ドメイン、またはトランケートされ、もしくはNないしC末端エクステンションを含んでなる抗体可変ドメイン、ならびに全長ドメインの結合活性および特異性を少なくとも保持する、可変ドメインの折り畳みフラグメントが含まれる。
【0043】
dAbなどの抗原結合タンパク質の、抗原もしくはエピトープに対する特異的結合(結合特異性)は、たとえばスキャッチャード分析および/または競合的結合アッセイを含めた任意の適当なアッセイ、たとえば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法(ELISAおよびサンドウィッチ競合アッセイなど)、ならびにそれらのさまざまな変法によって測定することができる。
【0044】
相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域は、免疫グロブリン可変ドメインの領域である。具体的には、際立った可変性を示す単一抗体可変ドメインの配列領域、すなわちCDR(相補性決定領域)配列が存在する。CDRは、抗体可変ドメイン配列内の決まった位置にある。配列のCDR領域を決めるためのいくつかのシステムが、当業者によく知られている。ある実施形態において、本発明のCDR配列は、免疫学的に興味のあるタンパク質の配列に関するKabatデータベース(Kabat E.A., Wu,T.T., Perry, H., Gottesman, K. and Foeller, C. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. NIH Publication No. 91-3242)で定義される通りであるが、これは、一貫性のあるやり方で抗体の残基に番号を付けるための、標準的なナンバリング方式を与えるものである。本明細書に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン(dAb)は、相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含有する。
【0045】
本明細書に記載のVH(CDRH1など)およびVL(CDRL1など)(Vκ)dAbのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)のアミノ酸配列は、周知のKabatアミノ酸ナンバリング法およびCDRの定義に基づいて、容易に、当業者に明らかとなる。配列多様性に基づく、もっともよく使用される方法である、Kabatのナンバリング法によれば、重鎖CDR-H3は長さがさまざまであって、挿入物には、残基H100とH101の間で、Kまでの文字で番号が付けられる(すなわち、H100、H100A ... H100K、H101)。あるいはまた、CDRは、Chothiaの方式(構造ループ領域の位置に基づく)(Chothia et al., (1989) Conformations of immunoglobulin hypervariable regions; Nature 342 (6252), p877-883)を用いて、AbM(KabatとChothiaとの折衷)により、またはContact法(結晶構造、および抗原との接触残基の予測に基づく)によって、次のように決定することができる。CDRを決定するための適当な方法については、http://www.bioinf.org.uk/abs/を参照されたい。
【0046】
それぞれの残基に番号を付けたら、次に、以下のCDRの定義を当てはめることができる。
【0047】
Kabat :
CDR H1: 31-35/35A/35B
CDR H2: 50-65
CDR H3: 95-102
CDR L1: 24-34
CDR L2: 50-56
CDR L3: 89-97
Chothia:
CDR H1: 26-32
CDR H2: 52-56
CDR H3: 95-102
CDR L1: 24-34
CDR L2: 50-56
CDR L3: 89-97
AbM:
(Kabatナンバリングによる): (Chothiaナンバリングによる):
CDR H1: 26-35/35A/35B 26-35
CDR H2: 50-58 -
CDR H3: 95-102 -
CDR L1: 24-34 -
CDR L2: 50-56 -
CDR L3: 89-97 -
Contact
(Kabatナンバリングによる): (Chothiaナンバリングによる):
CDR H1: 30-35/35A/35B 30-35
CDR H2: 47-58 -
CDR H3: 93-101 -
CDR L1: 30-36 -
CDR L2: 46-55 -
CDR L3: 89-96 -
(“-“ は、Kabatと同じ番号であることを意味する)
本発明は、製薬上許容されるキャリアを必要に応じて追加して含有する、ワクチンまたは医薬組成物を提供する。
【0048】
多くの場合、本発明の組成物は、精製された形で、薬理学上適切なキャリアとともに使用されることになる。一般に、こうしたキャリアとしては、水溶液もしくはアルコール性/水溶液、乳濁液もしくは懸濁液、生理食塩水および/または緩衝溶液などが挙げられる。非経口溶媒には、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖加リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウムを含有する乳酸リンゲル液がある。懸濁液中でポリペプチド複合体を維持するために必要ならば、生理学上許容される適切な補助剤を、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸塩などの増粘剤から選択してもよい。
【0049】
静脈注射用溶媒には、水分および栄養補充液、ならびに電解質補充液、たとえば、ブドウ糖加リンゲル液をベースにした溶媒がある。防腐剤および他の添加物、たとえば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤および不活性ガスも含有することができる(Mack (1982) Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Edition)。持続放出製剤を含めて、さまざまな、適当な製剤を使用することができる。
【0050】
本発明の組成物は、個別に投与される組成物として使用することも、他の薬剤と併用することもできる。医薬組成物には、投与前にプールするか否かにかかわらず、本発明の組成物と併用する、さまざまな細胞毒性薬もしくは他の薬剤の「カクテル」、または異なる特異性を有する組成物、たとえば、異なる標的抗原またはエピトープを用いて選択されたリガンドを含んでなる組成物、もしくは異なる免疫調節因子を含んでなる組成物の組み合わせも含めることができる。
【0051】
本発明の医薬組成物の投与経路は、当業者によく知られているいかなる経路であってもよい。治療(免疫療法を含むがそれに限らない)のために、選定された本発明の組成物を、標準的方法によって任意の患者に投与することができる。
【0052】
投与は、任意の適当な方法で行うことができるが、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、経肺経路、あるいはまた、適切なものとして、カテーテルによる直接注入などがある。投与量および投与回数は、患者の年齢、性別および状態、他の薬物の同時投与、禁忌、ならびに臨床医が考慮すべき他のパラメーターによって決まる。投与は、適応があれば、局所(たとえば、肺投与による肺への局所投与、たとえば、鼻内投与)でも全身投与でもよい。
【0053】
本発明の組成物に使用する抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインは、保存のために凍結乾燥し、使用前に適当なキャリア中で再構成することができる。この方法は、従来の免疫グロブリンでは有効であることが分かっており、技術分野で周知の凍結乾燥および再構成技術を用いることができる。当業者には当然のことであるが、凍結乾燥および再構成は、さまざまな程度の抗体活性の損失をもたらす可能性があるので(たとえば、従来の免疫グロブリンでは、IgM抗体のほうがIgG抗体より活性損失が大きくなる傾向がある)、使用レベルは、損失を補うために上方に調整する必要があるかもしれない。
【0054】
本発明の組成物もしくはそのカクテルは、予防的および/または治療的処置のために、投与することができる。特定の治療への応用において、選定された細胞集団の、少なくとも一部の阻害、抑制、調節、死滅、または他の測定可能なパラメーターを達成するのに十分な量が、「治療上有効な用量」として定義される。こうした投薬を達成するために必要な量は、疾病の重症度および患者自身の免疫系の全般的状態によって決まってくる。予防的適用を目的として、本発明の組成物を含有する組成物、もしくはそのカクテルはまた、疾病の発症を予防する、阻止する、または遅らせるために(たとえば、寛解もしくは無活動を持続させるために、または急性期を予防するために)、同様またはやや少ない投与量で投与することができる。熟練した臨床医は、疾病を治療、抑制もしくは予防するために適当な投与間隔を決定することができる。
【0055】
本明細書に記載の組成物を用いて実施される処置または治療法は、1つもしくは複数の症状が、治療前にあった同じ症状と比較して、または同様の組成物で治療されなかった個体(ヒトもしくはモデル動物)の同じ症状もしくは他の適当な対照と比較して、軽減(たとえば、少なくとも10%、または臨床評価尺度で少なくとも1ポイントだけ)されれば、「有効」と見なされる。症状は、当然、標的とする疾病もしくは障害によってさまざまであるが、当業者はこれを測定することができる。こうした症状は、たとえば、疾病もしくは障害に関する1つもしくは複数の生化学的指標のレベル(たとえば、疾病と相関する酵素もしくは代謝産物のレベル、病的細胞の数など)をモニターすること、身体症状(たとえば炎症、腫瘍の大きさなど)をモニターすること、または一般に認められた臨床評価尺度によって、測定することができる。少なくとも10%、または所定の評価尺度で1ポイント以上、疾病もしくは障害の症状が持続的に(たとえば、1日もしくは2日以上、またはもっと長期間)軽減されることが、「有効な」治療の指標となる。同様に、本明細書に記載の組成物を用いて行われる予防は、1つもしくは複数の症状の発現または重症度が、その組成物で処置されなかった同様の個体(ヒトもしくは動物モデル)の同様の症状と比較して、遅らせられる、軽減される、またはなくなるならば、「有効」である。
【0056】
本発明の組成物は、哺乳類において選定した標的細胞集団の改変、不活化、死滅または除去を助けるために、予防的および治療的環境において使用することができる。
【0057】
本発明の組成物は、1つもしくは複数の追加の治療薬または活性薬剤とともに投与および/または製剤することができる。組成物を追加の治療薬とともに投与する場合、その組成物は、追加薬剤投与の前、それと同時、またはその後に、投与することができる。一般に、組成物および追加薬剤は、治療効果の重なりをもたらすように投与される。
【0058】
本明細書の「用量」という用語は、1回ですべて被験体に投与される組成物の量(単位用量)、または決まった時間間隔で2回以上投与される組成物の量を表す。たとえば、用量は、1日(24時間)の間に被験体に投与される組成物の量(1日用量)、2日、1週間、2週間、3週間、または1ヶ月以上の間に被験体に投与される組成物の量(たとえば、単回投与、または複数回投与による)を表す。投与間隔は、任意の望ましい時間とすることができる。
【0059】
組成物は、癌、特に黒色腫に罹っている患者への投与用、およびそうした患者の治療用であることが適当である。
【0060】
本明細書の「治療する」または「治療」という用語は、疾病の発症もしくは疾病の症状を止めること、疾病の進行もしくは疾病の症状を抑制すること、または疾病もしくは疾病の症状を快方に向かわせることを意味する。
【0061】
有効な黒色腫ワクチン/免疫療法の探求は、癌に対抗する内在する免疫機能を強化し、癌に対する免疫寛容を打ち破り、さらに腫瘍細胞の破壊を促すために、治療的ワクチン投与によって、改めて免疫系を巧みに操ることができるという原則に基づく[17]。DCが、腫瘍の破壊にとって重要な、T細胞による適応免疫応答の開始において中心的な役割を担っていることが、現在、認められている[18]。DCは免疫応答を形成する能力が独特である。一方では、適応免疫応答を開始させることができるが、他方では、自己抗原に対する寛容を維持する原因となる。2タイプの免疫応答のどちらが開始されるかは、抗原取り込み時にDCが受け取るシグナルに、大いに左右される。したがって、黒色腫を含めて、癌免疫療法のためのワクチン戦略は、in vivoおよびex vivoでの、この特異的な抗原提示細胞サブセットへの癌抗原のデリバリーが焦点となる。
【0062】
ある実施形態において、本発明は、悪性黒色腫に対するLipovaxin(Lipovaxin-MM)を提供するが、これは、悪性黒色腫に対する多価の樹状細胞(DC)標的化リポソームワクチン/免疫療法である。この実施形態では、本明細書に記載のように、ワクチンは6つの成分:MM200黒色腫細胞から調製された膜小胞(MV)、DC-SIGN特異的ドメイン抗体(dAb)DMS5000、キレート剤脂質3(ニトリロ三酢酸)-ジテトラデシルアミン(3NTA-DTDA)、硫酸ニッケル(NiSO4)、サイトカインのインターフェロンγ(IFN-γ)、および脂質αパルミトイルβオレオイルホスファチジルコリン(POPC)から調製される。
【0063】
MM200黒色腫細胞の膜画分は、黒色腫関連腫瘍抗原などの膜結合抗原を保有するMVを形成する。VH dAbフラグメントであるDMS5000は、ヒトDCマーカーであるDC-SIGNを認識し、DCへのワクチンの特異的デリバリーを可能にする。DMS5000は、ポリヒスチジンC末端尾部を介して、キレート剤脂質3NTA-DTDAによって膜小胞に連結されており、この相互作用はNiSO4の存在に依存する。小胞膜への3NTA-DTDAの挿入は、キャリア脂質POPCの含有によって増強される。サイトカインIFN-γは、DCが必要なエフェクター機能を果たすためにDCに与えられるべき刺激シグナルを与える。
【0064】
Lipovaxin-MMは、悪性黒色腫のためのリポソームワクチン/免疫療法であって、これはin vivoで、ヒトDCの表面上のDC-SIGNに向けて、その抗原性の積荷(カーゴ)を特異的に標的化することによって作用するものである。DC-SIGNは、エンドサイトーシスの受容体であって、ワクチンのDC-SIGNへの結合が、ワクチン-DC-SIGN複合体のDCによる内在化をもたらす。ワクチンは、サイトカインIFN-γも載せており、これはDCの成熟を刺激する。したがって、Lipovaxin-MMは、DCが抗原性物質を受け取ってプロセシングするのと同時に、サイトカインがDCに刺激シグナルを与えられるようにデザインされたので、DCに、適当なワクチン特異的な刺激によるT細胞応答を引き起こす、より高い可能性を与える。親DCのex vivo操作は必要なく、それはこれまで試みられた既存のDC標的化黒色腫ワクチンを超える大きな利点である。in vitroでのヒトDCとLipovaxin-MMの共培養は、ワクチンの内在化、ならびにいくつかのDC成熟マーカー(CD64、CD40、CD86、CD80およびHLA-ABC、ならびにそれほどではないがHLA-DRなど)のアップレギュレーションをもたらす。
【0065】
Lipovaxin-MMは、黒色腫細胞由来膜画分から得られる黒色腫抗原のプールを、DCに向けて標的化するが、一方、同時に、標的化されたDCの最適な成熟を確実にするために適当な刺激シグナルを伝える。本明細書に記載の製剤において、Lipovaxin-MMは、Pan-カドヘリンのような一般的な細胞膜マーカー、ならびに黒色腫関連タンパク質を保有する。少なくとも3つの上記タンパク質 - gp100、チロシナーゼ、およびMART-1 - の存在は、ワクチンにおいて確認された。多数の未同定のMM200膜結合黒色腫抗原も、ワクチンを構成する膜小胞中に存在する可能性が高いので、複合的な抗原プールのDCへのデリバリーが可能となり、したがって、ワクチン抗原の選択は、特定の黒色腫分化、または癌精巣(CT)抗原に限定されない。Lipovaxin-MMに使用されるMM200黒色腫細胞の膜画分の二次元SDS-PAGE分析から、700を超える異なるタンパク質成分の存在が明らかになった。
【0066】
DCの成熟は、腫瘍の進行にともなって報告される現象であるT細胞アネルギーを克服するために必須である[19, 20]。これを達成するために、複数のDCエフェクター機能を調節するIFN-γ[21]が製剤中に組み入れられた。このサイトカインは、物理的にワクチンに結合しているので、DCは、抗原性カーゴがDCに到達すると同時に、適当な刺激シグナルを受け取る。
【0067】
Lipovaxin-MMに不可欠な膜小胞は、その表面上に、Hisタグ付き組換えVH dAb (DMS5000)のコピーを多数保有しているが、このDMS5000は、C型レクチンであるヒトDC表面マーカーDC-SIGN(DC特異的細胞間接着分子3結合ノンインテグリン)を特異的に標的とする能力で選抜されたものである。DC-SIGNはヒトDCにより特異的に発現される[22]。DC-SIGNはDC分化の際に誘導され、DCが成熟すると中程度にダウンレギュレートされて[23]、病原体の捕捉および取り込みに関与するが、この病原体の大きさは、ウイルス(HIV、C型肝炎ウイルス(HCV)、エボラウイルス、デング熱ウイルス)のような非常に小さな病原体から、それよりはるかに大きい細菌、真菌、および寄生虫まで多岐にわたる[24]。DC-SIGNは、リガンドが結合すると速やかに内在化されるが[25]、in vitro研究から、ヒトDC上のDC-SIGNに標的化された抗原は速やかに取り込まれて、リソソームに運ばれ、MHCクラスIおよびクラスIIの双方の関与でT細胞に提示されることが明らかになっている[26]。Lipovaxin-MM戦略は多目的キレート剤脂質を利用するが、このキレート剤脂質によって、Hisタグ付き分子(抗体もしくは抗体フラグメントなど)は、その付け足される分子をさらに化学修飾する必要なしに、リポソームもしくは膜小胞の表面と結合することが可能になる。in vitroでDMS5000は、DMS5000結合リポソームのヒトDC-SIGN発現細胞への標的化デリバリーを可能にする。このデリバリーはDMS5000依存性で、ヒトDC-SIGNに特異的である。共焦点顕微鏡による蛍光タグ付きLipovaxin-MMに関する本発明者らの研究は、in vitroで、ワクチンのヒトDCとの結合に続いてワクチンの内在化が起こることを確認した。Lipovaxin-MMによって運ばれた抗原のプロセシングが次に起こると予想される。移植マウスモデル(ヒト免疫細胞を移植されたマウス)を用いて、DC-SIGNを介するヒトDCへの抗原のin vivo標的化が、刺激性免疫応答を引き起こし、移植された腫瘍の増殖を抑制することが最近報告されており、このことは、この受容体が癌抗原デリバリーのための有効な標的であるという考えを支持する[27]。
【0068】
黒色腫ワクチンに関する具体的な説明が本明細書で与えられるが、当然のことながら、本発明の組成物および方法は、他の腫瘍、特に抗原性腫瘍、たとえば、膀胱癌、乳癌、肺癌、具体的には小細胞肺癌(SCLC)もしくは非小細胞肺癌(non-SCLC)、肝臓癌、精上皮腫、黒色腫、および/または頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、結腸癌、乳癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、ならびに甲状腺髄様癌などの治療に適合するよう改変することができる。
【0069】
例証のみを目的として、以下の実施例において本発明をさらに説明する。
【0070】
(実施例)
1) 物理的、化学的および製薬学的性質および製剤
A) 原薬 - 背景
Lipovaxin-MMは、4つの出発「プレ製剤成分」を構成する6成分から調製される。Lipovaxin-MMプレ製剤成分の組成および特徴を図13中の表に示す。
【0071】
膜小胞
ワクチンの多数の抗原は、溶解したMM200黒色腫細胞の膜画分から得られる。MM200細胞株は、もともと43歳女性から摘出された原発性黒色腫より単離された、黒色腫細胞株である。この細胞株のHLAタイピング(A1,3; B7,35; DR2,4)、染色体分析、および核型分析はすでに記載されている[28]。MM200細胞株は、黒色腫の分化抗原であるチロシナーゼ、gp100およびMART-1、ならびに癌精巣抗原MAGE-A3、MAGE A-10、BAGE、GAGEおよびXAGEを発現するが、MAGE-A1、CT-7、NA17-1またはNY-ESO-1は発現しないことが報告されている[29]。黒色腫であると診断された患者は、血清中のMM200特異抗体の出現頻度が高いことが明らかになっている[30]。無関係の臨床研究も、悪性黒色腫ワクチン研究のためにこの細胞株を使用することを報告している[29, 31, 32]。
【0072】
この細胞株は、他の研究者らによって、ワクシニア溶解MM200黒色腫ワクチンの前臨床試験に使用され、400人を超える患者がMM200に基づくワクシニア溶解ワクチンを受けたが、明らかな副作用はなかった[29, 31, 32]。Lipovaxin-MM前臨床試験で使用されるMM200細胞は、そうした試験で使用されたのと同じ細胞プールである、laboratory of Professor Peter Hersey (University of Newcastle, Oncology and Immunology Unit, Newcastle, Australia)から入手した一本のアンプル(1994年1月28日付け)に由来する。受け取った書類には、「1994年1月28日」の細胞が、1986年の初代培養の二次培養から収集されたが、その細胞は外来物質の混入についてテスト済みで、混入のないことが確認されたことが示されている。外来物質試験は、Lipovaxin-MM前臨床研究で使用される細胞についても実施した。
【0073】
MM200 MVの単一バッチは、治験薬を製造するために、MM200細胞バルク標品から作製される。MV作製は、超音波処理によるMM200細胞の溶解と、その後2回の遠心分離(低速、次に高速)を基本とする。MV作製のための超音波処理および遠心分離は、複数の1 ml処理ロットで実施される。短時間の超音波処理は多重膜小胞の形成に役立つが、この多重膜小胞は大きさがさまざまで、ワクチンの抗原成分となる。小胞は、黒色腫抗原を含めた数多くのタンパク質を保有する。
【0074】
MVは、次に膜ペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁することによって調製される。その後、得られた膜画分をプールして、バルクMV材料が作製される。全工程は、MV材料の汚染を防止するために、無菌で行われる。最終滅菌は不可能である。その後バルクMVは、各バイアルに2 mlのLipovaxin-MMを作製するために十分な材料が入っているように、無菌的に分注される。任意の量を分け取って外来物質の有無、および黒色腫抗原の特性を調べる。
【0075】
3NTA-DTDA
N-ニトリロ三酢酸(NTA)/Hisタグ系は、組換えタンパク質のワンステップ単離精製のために広く用いられている。4配位座リガンドNTAは、Ni2+のような2価金属イオンとともに六辺形の複合体を形成するが、この金属イオンは、複合体の6つの結合部位のうち4つを占める。一連の連続ヒスチジン残基(Hisタグとも呼ばれる)の2つのヒスチジンに属するイミダゾール環は、金属イオン-NTA複合体の空いている部位に結合する。結合は相乗的で、2:1(ヒスチジン:金属イオンNTA)の比率は、ヒスチジンタグ付き分子の安定した固定化をもたらす。
【0076】
3NTA-DTDAは、WO 00/64471およびWO 2005/018610に記載されており、NTA頭部基のそれぞれのCOOH基と別のNTA基を結合させることによって、6段階合成で合成される。得られた3NTA部分は、NTA頭部基のより高い局所密度を達成するが、それはHisタグ付きタンパク質のより安定したアンカリングを可能にする。次に3NTA頭部基を、2つの14炭素炭化水素鎖に結合させて、DTDA(ジテトラデシルアミン)と共有結合した3NTA頭部基を含有するキレート剤脂質を作製する。ニッケルイオンは、それぞれのNTA基の6つの結合部位のうち4つを占める。2つの14炭素炭化水素鎖は、リポソームの脂質二重膜に挿入可能な脂質部分を形成する[33]。
【0077】
POPC
POPC(α-パルミトイル-β-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)は、2つの不斉炭化水素鎖:完全飽和16炭素鎖、および9番目と10番目の炭素の間に二重結合を1つ有するモノ-cis-不飽和18炭素鎖(18:1, 9)を有するリン脂質である。POPCのゲル相から液晶相への遷移温度は、およそ-4℃である。POPCは、細胞膜の正常な脂質成分であって、リポソームの調製に広く使用されている。Esperion Therapeutics, Inc (Ann Arbor, MA)によって、POPC含有リポソーム14-16 mgを4日ごとに7サイクルにわたって繰り返し投与することに関して、十分な安全性プロフィールが報告されている(http://www.pharmaquality.com/mag/08092005/pfq_08092005_FO2.html)。
【0078】
POPCと、NTA-DTDA [34-36]または3NTA-DTDA [37, 38]のいずれかとの混合物からなる合成リポソームを作製し、膜小胞と融合させる。これによって、キレート剤脂質を膜小胞の脂質二重膜に効果的に組み込むことができる。その結果得られた修飾された膜小胞の表面上にHisタグ付きタンパク質(DMS5000など)を連結することで、小胞はリガンドによって効果的に覆われ、そのリガンドは、この小胞が選択された細胞表面受容体に向けて特異的に標的化されることを可能にする。NTA-DTDAもしくは3NTA-DTDAを含有するよう改変された膜小胞は、マウスモデルにおいてin vivoでDCを標的化するために使用された[37]。
【0079】
硫酸ニッケル
最終製剤のLipovaxin-MMは、約10μg/mlの硫酸ニッケルを含有し(硫酸ニッケルとNTA頭部基とのモル比1:1)、そのすべてがキレート剤脂質3NTA-DTDAに結合していると予想される。ニッケルはNTAと高い親和性で結合する(Kd<10-11M)。ニッケルは3NTA-DTDAの頭部基のNTA部分と同じモル比で存在するので、Lipovaxin-MM標品中の遊離ニッケルの濃度は、きわめて低いと予想される。
【0080】
ニッケルおよびその塩は、高レベルでは毒性および発癌性があることが報告されているが[39]、Lipovaxin-MM中のニッケル含量は、十分許容できるレベルである。一般の人はは、ニッケルの大半を、食物を通して摂取しており、西欧でのニッケルの1日当たり平均食事摂取量は、69-162μgである。したがって、10 ml Lipovaxin-MMという最高用量でさえ、それが含有するニッケルは100μgであり、ニッケルの1日食事摂取量に相当する程度に過ぎない[40]。全身に吸収されたニッケルの排泄は、主に尿からであって、半減期はおよそ28時間であり、4日以内に、ニッケルの全身投与量の100%が尿中に、または糞便中の未吸収ニッケルとして、回収される[39]。透析療法で維持される慢性腎臓病患者と、興味深く関連づけることができるが、そうした患者は透析ごとに100μgまでのニッケルを吸収することができる[41]。治験薬は、提案されるもっとも高い用量で、そうした治療に匹敵するニッケル量をデリバリーすると予想される。
【0081】
リポソームを調製するために、2つの脂質の混合物をPBS中で調製し、ニッケルを添加して、得られた標品を凍結乾燥する。リポソームは凍結乾燥粉末として保存され、製剤過程で水中において再構成される。
【0082】
DMS5000
DMS5000は、図12(配列番号1、配列番号3)に示すアミノ酸配列を有するドメイン抗体(dAb)であり、ヒトDC細胞表面受容体DC-SIGN(DC特異的細胞間接着分子3-結合ノンインテグリン)に対する特異性が高い。ドメイン抗体は、抗体の最小の機能性結合単位であって、ヒト抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)の可変領域からなる。DMS5000は、3NTA-DTDA含有リポソーム上に連結されたときに、そのリポソームとヒトDC-SIGN発現細胞との結合を促進する能力に基づいて選択された、14,386kDaのVH dAbである。配列番号1に示すdAb配列は、先頭にSer-Thr残基があるが、これは発現用のSalIクローニング部位に対応するために発現ベクターポリリンカー中に存在するものである。ST残基のないdAb配列を配列番号3に示す。
【0083】
DMS5000は、大腸菌E. coliにおけるタンパク質生産を含むプロセスによって、分泌タンパク質として生成され、その後、このタンパク質はStreamline Protein Aを用いて馴化培地から捕捉される。
【0084】
他の夾雑物を陰イオン交換クロマトグラフィーにより除去し、残存するエンドトキシンをMustang Eフィルターを通して除去する。最終製剤中に透析した後、滅菌濾過する。得られたバルクタンパク質は、最後に無菌充填および仕上げを受けて、臨床試験用のバイアル入り材料をもたらす。
【0085】
DMS5000-蛍光リポソーム混合物は、このリポソーム混合物にキレート剤脂質3NTA-DTDAが添加されたときにのみ、DC-SIGN発現細胞 - DC、または、外来のヒトDC-SIGNを発現するように遺伝的に改変された他の任意の細胞型(たとえば、THP-1/DC-SIGN細胞) - と結合することができる(図2)ことから、DMS5000とリポソームとの結合はNi-3NTA-DTDAに依存することが確認される。
【0086】
共焦点顕微鏡法によって、Lipovaxin-MMとDC-SIGN発現細胞(ヒトDCを含む)との相互作用を可視化することが可能になり、それによって、Lipovaxin-MMが標的細胞と結合するのみならず、DCによって内在化されることも確認された。このことは、ヒトDCの表面上にあるDC-SIGN受容体へのLipovaxin-MMのデリバリーに続いて、カーゴの取り込みおよび内在化が起こることを確認する(図3)。
【0087】
B) 製造
それぞれの成分は、医薬品安全性試験実施基準(GLP)にしたがって製造されるが、可能ならば、プレ製剤成分は、適正に認可された機関によって、製造管理および品質管理に関する基準(GMP)にしたがって調製される。
【0088】
治験薬は、膜小胞を、リポソーム構成成分、およびIFN-γと組み合わせ、超音波処理によって融合させることにより作製される。DMS5000は、最終段階で、治験薬が患者に投与される前に加える。
【0089】
C) 性質
i) 薬効薬理
最も高用量で、患者は7.449mg POPC、0.297mg 3NTA-DTDA、0.103mg硫酸ニッケル、および3.8mg DMS5000を受け取る。このような量では、それらは薬理学上ほとんど取るに足りないと予想される。
【0090】
ii) 分析および特性評価
Lipovaxin-MMの特性評価には、少なくとも4つのパラメーターの解析が必要であり、それらはすべて、ワクチンの力価に直接影響を与えると予想される。第1に、DMS5000のHisタグをNi-3NTA-DTDAと結合させることによる、DMS5000の連結を測定する(図4)。
【0091】
第2に、ワクチンがDC-SIGN発現細胞を標的としてそれに結合する能力を、in vitroで確認する(図5)。
【0092】
第3に、ワクチン標品を分析して、サイトカインIFN-γとワクチンとの物理的結合を確認する。Lipovaxin-MMの作用様式は、標的細胞へのIFN-γのデリバリーに大きく依存するので、サイトカインとワクチンとの結合は、ワクチン活性にとって重要である(図6)。
【0093】
最後に、黒色腫関連抗原がワクチン標品中に存在することを、ウェスタンブロット分析によって確認する(図7)。
【0094】
iii) 安定性
下記の3つの基準を用いて、Lipovaxin-MMの安定性を、保存後の安定性も含めて測定する:(i) ワクチン標品がヒトDC-SIGN発現細胞に結合する能力、(ii) 小胞と物理的に結合した状態を維持しているIFN-γの割合、ならびに(iii) ワクチン結合IFN-γの生物学的活性。Lipovaxin-MMはリポソームワクチンであるため、ワクチンを形成する膜二重層は、適当な凍結保護物質がないと、凍結により損傷を受けやすい。したがって、治験薬の保存は、凍らない温度でのみ可能である。4℃にて、Lipovaxin-MMのDC-SIGN発現細胞との結合は、4週間までの間は、変化しない状態で維持される(図8)。
【0095】
IFN-γ全活性は、4週間までの間、安定であるが、4℃で保存期間を延ばすと、ワクチンから次第に解離するようである(図9)。
【0096】
D) 治験薬
i) 製剤
各投与回分のLipovaxin-MMは、病院薬剤師によって、患者に投与される6時間以内に調剤される。治験薬は、4つのプレミックス成分から調剤される:MM200膜小胞、凍結乾燥POPC/Ni-3NTA-DTDAリポソーム、IFN-γおよびDMS5000。0.1mlおよび1mlの投与量については、2mlの治験薬を調製する;10mlの投与量には、6 x 2mlの治験薬を調製し、患者に投与する前にプールする。
【0097】
配列番号1に記載の配列を有するDMS5000は、ベクターpET30-GAS-DMS5000を含有する大腸菌BL21(DE3)において分泌タンパク質として産生される。pET30-GAS-DMS5000は、普遍的なGASリーダーシグナルペプチド(たとえば、WO 2005/093074に記載)をDMS5000のN末端に組み込んだ、pET30(Invitrogen)由来ベクターである。このタンパク質は、発酵バッチの培養上清から、Streamline PrA(正しく折り畳まれたdAb分子を捕捉する)、SP Sepharose(陽イオン交換精製)およびMustang E(エンドトキシン夾雑物を除去する)などの一連のクロマトグラフィーステップによって精製される。純度は、等電点電気泳動により>95%、サイズ排除クロマトグラフィーにより>95%、ならびに逆相高圧液体クロマトグラフィーにより>80%であることが示された。エンドトキシンレベルは、<50 EU/mlであった。得られたタンパク質は、Lipovaxin-MMの製造に使用するために、PBS中で調剤される(1mg/ml)。
【0098】
バルク材料の無菌充填および仕上げは適当な設備で実施し、ガラスバイアル中1 mlのロットを作製する。
【0099】
公表された合成法[45]にしたがって、13gの3NTA-DTDAを作製し、>89%の純度であることが示されている。
【0100】
GMPグレードのPOPCは、Avanti Polar Lipidsより購入した(カタログ番号770557、ロット# GN160181PC-23)。
【0101】
Puratronic(登録商標)グレードNiSO4 (99.9985%)は、Alfa Aesar, Johnson Matthey GmbH & Co. KG (Zeppelinstrasse 7 - D-76185 Karlsruhe, Germany)から購入した;在庫番号10820、バッチ番号22818; CAS# 15244-37-8。この材料は、Canberra-based company RadPharm Scientificによって、濾過滅菌され、滅菌水中0.6mg/mlでバイアル当たり2ml(バイアル当たり1.2mg NiSO4)として、無菌充填仕上げにより分注された。
【0102】
凍結乾燥リポソームは以下のように調製する:3NTA-DTDAはPBS中、POPCはエタノール中で調剤される。それぞれの溶液を濾過滅菌してから混合する。2mlの治験薬を作製するのに十分な量の混合が完了したら、個別のバイアルに無菌的に分注された混合物に滅菌NiSO4を加える。この材料は最終的に凍結乾燥し、無菌性、純度および活性についてテストする。保存した材料の安定性は、最後の患者がワクチンスケジュールを完了するまで、一定間隔でテストする。
【0103】
バルク抗原は以下のように調製する:製造には、無血清AIM-V培地(カタログ番号0870112DK)でMM200細胞を増殖させること、その細胞をPBS中に収集すること、そして最後に、やはりPBS中で膜小胞を作製することが必要となる。小胞を作製する前に、収集した細胞の外来物質および純度について調べる。膜小胞標品の一部分も任意に取り分けて、外来物質および黒色腫抗原の存在について調べる。
【0104】
ii) 最終的な剤形および体裁
治験薬は、PBS中で調剤される。10mlの治験薬を投与する場合、治験薬を患者に投与する前に、6バッチのLipovaxin-MMを調製し、それらのバッチを、調剤後に1つのバイアルに合わせる。調剤およびバッチのプールは、病院薬剤師により、無菌技術を用いて、クラスII安全キャビネット(laminar Flow cabinet)内で行われる。
【0105】
治験薬は、外見は濁っており、そのままにしておくと澄む傾向がある(治験薬の粒子状の外観は、小胞の表面上にDMS5000がうまく連結されていることと関係している)。
【0106】
iii) 保存および取扱
Lipovaxin-MMプレ製剤成分は、メーカーの勧告を受けて4℃で保存すべきIFN-γ(Imukin, Boehringer Ingelheim, Germany)を除いて、-20℃で保存すべきである。病院薬剤師により調剤されたら、その治験薬は、6時間を超えない範囲で4℃にて保存される。
【0107】
治験薬は患者への投与前に、バイアルを繰り返し反転させることによって混合しなければならないが、ボルテックス攪拌してはならない。
【0108】
iv) 投与
組成物は、直接、ゆっくりとした静脈内投与により投与される。
【0109】
2) in vitro研究:DCマーカーへのLipovaxin-MMの影響
in vitroで作製された単球由来樹状細胞を用いて、Lipovaxin-MMのDC成熟への特異的な影響を調べることができる。これを達成するために、単球前駆細胞が末梢血単核細胞から調製されるが、その細胞はin vitroでIL-4およびGM-CSFの混合物存在下で5-6日間培養され、その培養期間の終了時にマーカーDC-SIGNを発現する。Lipovaxin-MMをヒト単球由来DCとともにin vitroで共培養すると、数多くのDC成熟マーカー、CD64、CD40、CD86、CD80およびHLA-ABC、ならびに程度は劣るがHLA-DRなどがアップレギュレートされ、サイトカインIL-12が馴化培地中に検出される。マーカーのアップレギュレーションは、ワクチンがIFN-γを保有している場合にのみ起こることから、in vitroで抗原のみのデリバリーは適切な成熟を刺激することができ、DC-SIGN標的化によってDCに特異的にデリバリーされるときに最高となることが確認される。
【0110】
非臨床研究から得られた証拠から、in vitroでLipovaxin-MMは、その抗原性カーゴをDCにデリバリーするためにヒトDCマーカーDC-SIGNを特異的に標的とすることができ、この受容体により始動されるエンドサイトーシス経路を介する可能性が最も高いことが示唆される。Lipovaxin-MMのDC-SIGNに対する標的化は、DC成熟細胞表面マーカーの特異的な増加、ならびに未感作T細胞のTh1細胞への分化に重要なサイトカイン、IL-12の産生の増加も伴う。
【0111】
3) 非臨床研究
in vivoでの研究は、ヒトで見られるパターンと合致するパターンを持つDC-SIGNホモログを発現することが知られている動物種に限られてきた。コモンマーモセットおよびマカークの2種類が使用されてきたが、結局マカークだけが免疫原性研究のために適していることが判明した。in vitroでLipovaxin-MMがマカークDC-SIGNと結合する能力/それを標的とする能力は、ヒトDC-SIGNと結合する能力/それを標的とする能力より有意に低いことが示されたにもかかわらず、マカークにおいて、Lipovaxin-MMは、テストした2つの用量で、細胞性および液性免疫応答を誘導することが明らかになった。もっとも高い用量であっても、有意な副作用は、2匹の異なる動物において2回目の投与のわずか7日後に、ASTレベルの一時的増加が1回、およびALTレベルの一時的増加が1回見られた以外は、見られなかった。コレステロール、トリグリセリドおよびLDLレベルは、全4匹の動物における研究の終了時に、ワクチン投与以前のレベルと比較して、一貫して低かったのに対して、HDLレベルは、全4匹の動物における4回のワクチン投与後、一貫して高かった。
【0112】
i) マウスモデルにおける概念実証研究
概要:Lipovaxinプラットフォームに関する概念実証研究をマウスで行った。DC-SIGNはマウス樹状細胞では発現されないので、この研究は、マウスDCにより発現されるC型レクチンであるDEC-205受容体に対するワクチンの標的化を調べた。本研究は、高転移性マウス黒色腫(B16-OVA)由来の膜小胞の粗製標品をDCに対してin vivoで標的化し、機能的効果を生じさせることができることを示した。同系マウスで使用される場合、B16-OVAワクチンは、脾臓T細胞において強いCTL応答を促し、腫瘍増殖に対して顕著な防御を誘導した。防御は、抗原およびDC成熟シグナルの同時デリバリーに依存していた。B16-OVA細胞を接種されたマウスへのB16-OVA-DC標的化ワクチンの投与は、劇的な免疫治療効果を生じさせ、無病生存期間を延長した。
【0113】
詳細:マウスB16-OVA黒色腫癌モデルにおいてLipovaxinプラットフォーム技術をテストするために動物実験を行った[37]。この研究で使用されたワクチン製剤は、Lipovaxin-MMとは異なり、この動物モデルに特化されている。マウスB16-OVA黒色腫癌モデルは高転移性腫瘍であって、マウス静脈内に接種されると癌を引き起こし、初めは肺に、そしてその後は他の臓器に転移する能力によってその動物に死をもたらす。Lipovaxinプラットフォームを用いてワクチンを作製したが、そのワクチンは、培養B16-OVA細胞から、またはOVAもしくはSIINFEKLペプチドを組み込むよう改変されたリポソームとして、調製された。いずれの場合も、DCに対する標的化は、マーカーDEC-205に特異的なScFvを用いて確認し、免疫調節性サイトカイン、インターフェロンγは、「危険シグナル」として組み入れられた。6匹のC57Bl/6マウスのグループに、1.5 x 105 B16-OVA黒色腫細胞を接種した後、PBSまたはワクチン(ScFv結合B16-OVA由来MVの2 x 105細胞相当量を含む)のいずれかを、腫瘍接種の3、6および9日後にマウスに静脈内投与した。対照動物は、第16日までには、肺において平均250±37の腫瘍病巣を有する、大きな腫瘍量を発現した(動物は第22日に安楽死させた)。これと際立って対照的に、ワクチン接種を受けたマウスは、腫瘍接種後8ヶ月まで、腫瘍成長の兆候を示さなかった。改変MVもこの系で、腫瘍に対する防御免疫を生じさせた。ワクチン(ScFv結合B16-OVA由来MVの2 x 105細胞相当量を含む)で免疫化されたマウスの、B16-OVA細胞によるi.v.接種に抵抗する能力について調べた。腫瘍接種の16日後に肺転移を数量化したとき、ワクチン接種を受けたマウスは、対照マウスに比べてはるかに少数の転移を示したが、それは「危険シグナル」IFN-γまたはLPSがワクチンに組み入れられている場合だけであった。本研究は、MVが(DEC-205またはCD11cを介して)DCに対して標的化され、かつ関連危険シグナル(IFN-γまたはLPS)を含んでいる場合に、改変MVでワクチン接種されたマウスから単離された脾細胞が、最大のCTL活性を示すことを実証することに成功した。したがって本研究は、Lipovaxin技術によって作製されるワクチンが、この動物モデルにおいてB16-OVA腫瘍の増殖および転移の抑制に有効であること、ならびにこのアプローチが、DCに基づく癌ワクチンの製造およびヒトにおける免疫療法に使用される現行の戦略を、大いに簡略化することができることを裏付ける。
【0114】
ii) Lipovaxin-MMマーモセット研究
概要:Lipovaxin-MMの最初の実験は、生物医学研究で使用される最小の非ヒト霊長類、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)で行った。マーモセットでは、脾臓およびリンパ節においてDC-SIGNの発現が、免疫組織化学的に(抗ヒトDC-SIGN mAbを用いて)検出される。マーモセット実験を開始したとき、DMS5000とマーモセットDC-SIGNとの間にある程度の交差反応性が予想されたが、確認することはできなかった。動物は1週間間隔で0.06mlワクチンの5回投与を受けた(マーモセットの体重に基づいて減少させた、10mlのヒト用量に相当する投与量)。この処置は十分な耐容性を示したが、免疫原性の有意な証拠は見られなかった。「危険シグナル」、(ヒト)IFN-γ、は製剤中に含まれているが、後に、マーモセット末梢血の単球を刺激するために使用すると、in vitroで生物活性が低下していることが明らかになった。このことが、上記動物におけるLipovaxin-MMの免疫原性の、見かけ上の欠如の考えられる原因として認定された。その研究の終了以降、マーモセットDC-SIGN遺伝子のクローニングによって、マーモセットDC-SIGNを発現するよう改変された細胞を用いて、より広範な結合実験が容易になった。そうした研究は、Lipovaxin-MMのマーモセットDC-SIGNとの結合が、少なくともin vitroでは、最小であることを示す。マーモセットにおけるIFN-γ活性の低下と合わせて、マーモセットDC-SIGNに対するLipovaxin-MMの見かけの親和性の低下は、その動物において検出可能な免疫応答を引き起こすLipovaxin-MMの能力を有意に損なったであろう。
【0115】
詳細:コモンマーモセット(Callithrix jacchus)は、生物医学研究で使用される最も小さい非ヒト霊長類である。マーモセットでは、DC-SIGNの発現は、免疫組織化学によって(抗ヒトDC-SIGN mAbを用いて)脾臓およびリンパ節で検出される。マーモセットでの実験が始められたとき、DMS5000とマーモセットDC-SIGNとの間で、ある程度の交差反応性が予想された。2群の動物(各群に動物3匹)は、1週間間隔で0.06mlワクチンの5回投与を受けた。2つの動物群は、ワクチン表面上に連結して使用されるdAbが異なっており、一方の群はDMS5000を連結したワクチンを受け、もう1つは「ダミーdAb」(特異的な標的を持たないdAb)が連結された。ヒト用量10mlに相当する(マーモセットの体重に基づいて計量した)用量で、この2つのワクチンのどちらも投与の反復に伴う重い副作用はなかった。動物の体重は比較的安定していた。血液パラメーターには有意な変化は見られなかった。白血球サブセット分析は、6匹すべての動物で血中を循環する骨髄DCの増加を確認した。標的化されたワクチンを受けた動物は、血中循環する形質細胞様樹状細胞の減少を示した。投与1の後に、非標的化Lipovaxin-MMを受けた動物の腹部にもっとも顕著な発疹が報告された。発疹は投与5の後にのみ、非標的化ワクチン群の動物で再発した。どの動物も不快な状態であるようには見えなかった。免疫原性の有意な証拠は観察されなかった。製剤中に含まれる「危険シグナル」(ヒト)IFN-γは、後に、マーモセット末梢血の単球を刺激するために使用したとき、in vitroで生物活性を低下させていることが明らかになった。このことが、免疫原性の見かけ上の欠如の、考えられる原因として認定された。その研究の終了以降、マーモセットDC-SIGN遺伝子のクローニングは、マーモセットDC-SIGNを発現するよう改変された細胞を用いた、より広範な結合実験を容易にした。これらの実験は、Lipovaxin-MMのマーモセットDC-SIGNとの結合が、少なくともin vitroでは最小であることを示す。
【0116】
iii) ブタオザルにおけるLipovaxin-MMの免疫原性
概要:Lipovaxin-MMの最終試験は、非ヒト霊長類Macaca nemestrina(ブタオザル)で行った。この動物種は、マカークDC-SIGN受容体が、ヒトの対応物と比較してアミノ酸レベルでよく保存されており、エンドサイトーシス受容体として類似の機能を果たすので、選択された。マカークにおけるDC-SIGN発現細胞の組織分布もまた、わずかな相違があるだけで、概して、ヒト組織で見られる分布と一致する。動物に投与されるワクチン用量が異なる2つの動物群を、この実験でテストした。4匹の動物は、Lipovaxin-MM0.6ml(体重に基づいて計量された、ヒト用量10mlに相当する)用量を3回投与され、4匹の動物は、4週間間隔でLipovaxin-MM 5ml(提案されたヒト最高用量の50%、動物体重に合わせて調整していない)用量を投与された。ワクチンは、鎮静状態で伏在静脈に静脈内投与された。in vitroでのLipovaxin-MMのマカークDC-SIGNとの結合研究は、そのdAbが、ヒトDC-SIGN受容体と結合するよりも、マカークDC-SIGN受容体に対してはるかに低い親和性で結合することを立証したが、その研究は、ワクチンが、高用量群の動物でもっとも明らかである検出可能なレベルのワクチン特異的抗体、および低用量群の動物でもっとも明らかである細胞性応答(ワクチン接種後に採取されたPBMCによるサイトカインの産生に基づいて検出される)を生じさせることができることを確認した。
【0117】
詳細:Lipovaxin-MMの実験は、ブタオザル(Macaca nemestrina)で行った。ヒトIFN-γは、ブタオザル末梢血単核細胞(PBMC)のin vitro刺激アッセイにより、生物学的に活性であることが確認された。したがって、ワクチンの危険シグナルの生物学的活性について、疑いの余地はなかった。マカークDC-SIGNアミノ酸配列は容易に入手可能で、DMS5000を作製するために使用されたのと同じ領域である、レクチン結合領域において、ヒトDC-SIGNのアミノ酸配列と約93%同一であることが知られている。ヒトDC-SIGNに対するモノクローナル抗体の多くはマカークDC-SIGNと交差反応することが知られている[42, 43]ので、DMS5000のマカークDC-SIGNに対するある程度の交差反応性は、見込まれていた。しかしながら、単球由来マカークDC、および外来のマカークDC-SIGNを発現するよう改変されたTHP-1細胞の両者を用いたLipovaxin-MMのin vitro研究は、DMS5000がブタオザルDC-SIGNに対してヒトDC-SIGNより低い親和性を有することを確認した。8匹のブタオザルにおけるLipovaxin-MMの研究は、first-in-humanフェーズI臨床試験への適用をサポートするために、安全性および免疫原性の情報を提供するように設計された。Lipovaxin-MMがヒトDC-SIGNより弱い親和性でマカークDC-SIGNを標的とすることを考えると、本研究はこの動物モデルにおいて、ワクチンの潜在的な免疫原性を低く見積もる可能性があると考えられた。この研究では、二通りの用量(0.6mlおよび5ml)を調べた。低用量は、10mlのヒトの用量に相当し、平均のヒト体重70kgおよび動物体重4kgに基づいて量を減らしたものである。高用量は、提案されたヒト最高用量の絶対容積の50%に相当し、動物施設のガイドラインの下で動物に投与することができる最大容積でもあった。これはマカークの体重に基づいてスケールを変えると、ヒトの最高用量の8倍に当たる。マカークは4匹の動物からなる2群に分けられた。第1群は、4週間間隔で0.6ml Lipovaxin-MMの投与を3回受け、第2群は、5ml Lipovaxin-MMの投与を3回受けた。第2群の動物は、WHOの指針で推奨されるように、投与3の7日後にLipovaxin-MMの追加投与を受けた。4匹の動物はすべて、安全性研究の一環として、4回目の投与の7日後に屠殺した。Lipovaxin-MMの2つの用量はいずれも、早くも第1回投与の7日後に、PBMCによるサイトカインIFN-γ、TNF-αおよびIL-6の産生をもたらした(図9)が、Lipovaxin-MM特異的抗体は、高用量のLipovaxin-MM投与を受けた動物においてのみ検出された。このことは、マカークにおいて、Lipovaxin-MMによって引き起こされる免疫応答のタイプが、投与されたワクチン用量の影響を受けたこと、ならびに、低用量のワクチンは、細胞性免疫応答(これは抗腫瘍応答には不可欠である)を刺激するのに有効であると思われたのに対して、高用量は液性免疫を生じさせることができたことを示す。したがって、マカークDC-SIGNに対するDMS5000の親和性が低いにもかかわらず、Lipovaxin-MMは、ワクチン投与を受けた動物において、検出可能なワクチン特異的免疫応答を刺激することができた。
【0118】
a) 要約
上記で概説したブタオザル実験において、4匹の動物に5ml Lipovaxin-MMを4回投与した(想定されるヒト最高投与量の実量の50%)。ワクチンはその用量で投与した場合、良好な耐容性を示し、安全であった。唯一異常な計測値が第35日に観察されたが、そのとき2匹の動物でアミノトランスフェラーゼレベルの上昇が見られた(2匹の異なる動物における、2つの異なる酵素)。この上昇は一時的であって、この2匹の動物については3回目または4回目の投与後、またはこの実験の他のいずれの動物でも観察されなかった。剖検の際に、多発性の濾胞過形成が脾臓およびリンパ節に認められた。この所見は、Lipovaxin-MMがDCによってプロセシングされたことを示唆する。リンパ組織の過形成は、全動物の肺、腸および肝臓でも確認された。DC-SIGNの発現は、ヒトおよびマカークの3つすべての臓器のDCで報告された。したがって、マカークDC-SIGNに対してDMS5000の親和性が低いにもかかわらず、ワクチンは、DC-SIGNの発現が報告された免疫臓器において十分に反応を誘導した。リンパ器官の明白に増加した反応性は、有効な免疫応答を示す。
【0119】
b) 血液学
採血ごとに、白血球数、赤血球数および血小板数などの通常の血液学的検査パネルを実施した。ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV、およびMCHCレベルも評価した。検査結果を、マカークについて公表されている「正常」値と比較した。
【0120】
総白血球数は、さまざまな時点で個体ごとに変動したが、一定の傾向を示さなかった。総赤血球数は、実験期間のあいだ比較的変化のないままであった。すべての値は、見かけ上「正常」の範囲内にあった。1匹の動物を除いて、実験終了時点での末梢血中のリンパ球のパーセンテージは、概して実験開始時より高かった。反対に、好中球パーセンテージは、最初の値と比べて実験終了時に概して低かった。
【0121】
c) 血液生化学
動物の肝機能は、Lipovaxin-MM投与後、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASTもしくはSGOT)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALTもしくはSPGT)に関する血中アミノトランスフェラーゼレベルに基づいてモニターした。2つの酵素レベルは、いろいろな時点でそれぞれの動物の間で有意に変動したが、本実験の第35日の2つの計測値を除いて、概して公表されている「正常」レベルの範囲内であった。第35日に、1匹の動物で高ASTレベルが観察され、もう1匹では高ALTレベルが確認された。いずれの値も、本研究の第35日時点では正常値を超えて上昇していたが、第42日またはその後はいずれの時点でも上昇していなかった;以上を表1に示す。
【表1】

【0122】
d) 剖検
組織病理学検査は、すべてのリンパ組織の多発性の濾胞過形成を明らかにしたが、これは細胞性免疫応答と一致する。多発性の濾胞過形成は、全動物の脾臓、肺および腸において観察された(表2)。4匹の動物のうち2匹から得られた肝臓サンプルは、軽度の多発性の血管周囲性単核細胞浸潤の形跡を示した。同じ2匹は、本実験の第35日に高いASTおよびALTという結果を出した。
【表2】

【0123】
e) 毒性学
本研究は、上記のLipovaxin-MMの有効性研究の延長として実施された。最高用量(5ml)の投与を受けた4匹の動物は、4回目の投与を受けた後、剖検のため屠殺した。動物は、ワクチン投与後は綿密にモニターされ、血液学的および血液生化学的分析を、ワクチン投与の前後に行った。ワクチンは5ml用量の投与の場合、良好な耐容性を示した。ワクチンに関係する可能性のある唯一の有意な副作用は、2匹の異なる動物において投与2の1週間後に観察されたアミノトランスフェラーゼレベルの上昇であった(一方の動物は、第2回投与の前に得られた計測値と比べて、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が3.4倍高く、もう一方の動物は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が5.7倍増加していた)。この増加は一時的で、人工的なものであった可能性がある。その2匹の動物については、異常な計測値の7日後に行われた追加の検査で増加は見られず、投与3および4の後いかなる時にも、または本研究の他のどの動物でも、増加は観察されなかった。本研究において、コレステロール、トリグリセリドおよびLDLレベルが、4匹の動物すべてで研究終了時に、ワクチン投与法を開始する前に観察されたレベルと比較して、一貫して低下していることが明らかになったが、HDLレベルは、4匹の動物すべてで、一連の4回のワクチン投与後、一貫して上昇していた。この計測の有意性は明らかでない。血液学および他の血液生化学パラメーターは、特定の傾向を示さなかった。
【0124】
剖検時に、多発性の濾胞過形成が、脾臓およびリンパ節で観察された;この2つの器官はいずれも、ヒトにおいてもマカークにおいても、DC-SIGN発現細胞が多い。これらの免疫系の器官で高レベルの活性が見られたことは、Lipovaxin-MMが免疫系細胞によってうまくプロセシングされて、有効な免疫応答が生じたことを示唆する。全動物について、肺、腸および肝臓では、リンパ組織の過形成も確認された。また、ヒトおよびマカークのいずれにおいても、3つの臓器すべてのDCについて、DC-SIGNの発現が報告されている。こうした研究結果は、DMS5000のマカークDC-SIGNに対する親和性が低いにもかかわらず、すべてのリンパ器官の反応性が明白に増加したことによって確認されるように、DC-SIGN発現DCのレベルの高いこうした器官においてワクチンが免疫応答を刺激することに成功したと思われることを反映している。
【0125】
4) 用量の設定根拠
Lipovaxin-MMは細胞由来ワクチン/免疫療法であるため、Lipovaxin-MMの用量は、最終製品の「抗原性」画分を得るために使用される細胞の数に基づいて表現することができる。本研究において、1mlのLipovaxin-MMは、107 MM200黒色腫細胞に由来する膜画分材料を用いて調製されるが、それをPOPC (0.98mmol), 3NTA-DTDA (0.02mmol), NiSO4 (0.06mmol) and DMS5000 (0.026mmol)と組み合わせ、DMS5000は、3NTA頭部基のすべてが確実に塞がれるように、3NTA-DTDAに対して約1.3倍過剰で添加する。
【0126】
関連するDEC-205標的化3NTA-DTDAに基づくワクチン(DEC-205は、DCによって発現されるもう1つのC型レクチンである)のマウスにおける前臨床研究[37]は、投与量当たり2 x 105細胞から調製されたワクチンを使用した。マウスモデルでこのDC標的化ワクチンについて、最小有効量が求められていなかった。この抗原投与量を、体重に基づいて増量すると、臨床用量は、5.6 x 108細胞から得られる抗原性材料の使用を必要とすると思われる。このヒト初回投与試験は、適応設計用量漸増法によってLipovaxin-MMの3つの用量を調べる。この試験で使用される開始用量の指針となるのは、マカークの毒性試験である。ヒトの平均体重70kgおよびマカークの平均体重4kgに基づいて増減させると、ヒトにおいて1mlのLipovaxin-MMは、マカークにおける0.06mlと同等と見なされる。したがって、開始用量の0.1は、マカークに投与された最低用量絶対容積の1/6であり、言い換えると、体重に基づいて調整すると、マカークに投与された0.006mlに相当し、これはそうした動物に投与された最低投与量を十分下回る。計画されたもっとも高い用量の10mlは、マカークに投与された最高絶対容積の2倍である。マカークには、5mlの投与で、単球の肝臓への浸潤という組織病理学的変化を有する、一時的なトランスアミナーゼの上昇があったことが知られているが、この用量は、(ヒトの平均体重70kgおよびマカークの平均体重4kgに基づいて調整すると)ヒトでの87.5mlの投与量と同等と見なされる。コホートの間で10倍の増量を計画し、これはワクチン試験での用量増加と一致する。しかしながら、免疫原性および/または安全性シグナル(たとえば、一時的なトランスアミナーゼのグレード2上昇を伴う強い免疫応答)が10倍増加に対する懸念を示唆するならば、中間の用量が選択される。
【0127】
比較として、5 x 106 MM200細胞から調製されたワクシニアウイルス感染MM200細胞溶解物から調剤された、MM200を基にした黒色腫ワクチンを使用する、別の第2相試験が行われ、その投与が免疫原性であることが示された[31, 32]。したがって、この試験のために、1 x 106 細胞相当物から1 x 107 細胞相当物、および1 x 108 細胞相当物をそれぞれ対象とする、ワクチンの3回投与が選択された。
【0128】
本発明は、その実施形態に準拠して、具体的に論証し説明されたが、当業者には当然のことながら、添付の特許請求の範囲によって網羅される本発明の範囲から逸脱することなく、その形態および細目をさまざまに変更することができる。
【0129】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 1つもしくは複数の抗原;
b )抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメイン;および
c) a)およびb)を運ぶキャリア
を含んでなる組成物。
【請求項2】
d) 免疫調節因子
をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
a) 1つもしくは複数の抗原
が膜小胞(MV)に由来する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
膜小胞が膜結合抗原を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
膜結合抗原が腫瘍抗原である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
膜結合抗原が、黒色腫分化抗原チロシナーゼ、gp100およびMART-1、ならびに癌精巣抗原MAGE-A3、MAGE A-10、BAGE、GAGEおよびXAGEからなる一群から選択される腫瘍抗原を含んでなる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
膜小胞が、腫瘍細胞、黒色腫細胞、またはMM200黒色腫細胞に由来する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインが、重鎖dAbフラグメントである、請求項1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項9】
抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインが、VHdAbフラグメントである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号1または配列番号3(DMS5000)を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項11】
抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインが、ポリヒスチジンC末端尾部を含んでなる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項12】
キャリアがリポソームである、請求項1〜11のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項13】
リポソームがリポソーム成分を含んでなる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
リポソーム成分が、キレート剤脂質3(ニトリロ三酢酸)-ジテトラデシルアミン(3NTA-DTDA)を含んでなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
リポソーム成分が、硫酸ニッケル(NiSO4)を含んでなる、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
リポソーム成分が、脂質α-パルミトイル-β-オレイル-ホスファチジルコリン(POPC) を含んでなる、請求項13〜15のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項17】
免疫調節因子が、サイトカインのインターフェロンγ(IFN-γ)である、請求項2〜16のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項18】
組成物がワクチン組成物である、請求項1〜17のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項19】
請求項1〜19のいずれか1つに記載の組成物を作製するための方法であって、
i) 膜小胞を調製すること;
ii) リポソーム成分を調製すること;
III) 膜小胞およびリポソーム成分を免疫調節因子と合わせること;ならびに
IV) 抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインを加えること
を含んでなる前記方法。
【請求項20】
膜小胞の調製が、腫瘍細胞の増殖、超音波処理および遠心による膜ペレットの調製、ならびにPBS中の再懸濁によってなされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
リポソーム成分が、POPCとNi-3NTA-DTDAを混合することにより調製される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
ニッケルの添加をさらに含んでなる、請求項19〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
医薬として使用するための、請求項1〜18のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項24】
癌の治療に使用するための、請求項1〜18のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項25】
癌が黒色腫である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
静脈内投与用の、請求項23〜25のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項27】
請求項1〜18のいずれか1つに記載の組成物を投与することを含んでなる、被験体において腫瘍を治療するための方法。
【請求項28】
抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号1または3に記載のアミノ酸配列を有する抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインと同じ結合特異性を有するものである、請求項1〜27のいずれか1つに記載の組成物または方法。
【請求項29】
抗DC-SIGN免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号1または3に記載のアミノ酸配列と同一のCDR配列を有するものである、請求項1〜28のいずれか1つに記載の組成物または方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図13−4】
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【図13−5】
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【公表番号】特表2012−506371(P2012−506371A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531515(P2011−531515)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063656
【国際公開番号】WO2010/046338
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(502197046)ドマンティス リミテッド (47)
【出願人】(511097278)リポテック ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】