説明

樹脂で分画することによって得られるブドウ種子抽出物

a)溶媒を用いてブドウ種子を抽出するステップ(完全抽出物)と、b)不水溶性タンニンを除去するステップと、c)水溶性タンニンを任意選択で除去するステップと、d)異なるMWの生成物を、カラムでのクロマトグラフィー精製によって分離するステップとを含む、ビティスビニフェラ種子の抽出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂で分画することによって得られるブドウ種子の抽出物およびその調製方法に関する。
【0002】
本発明の方法は、カテキンおよびエピカテキン(モノマー)の含量が可変の、ブドウ種子から出発する抽出物を提供する。本発明に従って得られる生成物は、抗酸化作用を有し、化粧品、補助食品(特に心臓保護用補助食品)および栄養補給食品として主に使用される。
【背景技術】
【0003】
技術的背景
ブドウ種子の処理(workup)によって得られた完全抽出物(total extract)は、幾つかの代謝物(metabolites)、特にカテキンおよびエピカテキンモノマー、関係するプロアントシアニドールオリゴマーおよびポリマー(プロシアニジン)、ならびにポリマーおよび高分子量のタンニンを含有する。
【0004】
欧州特許第275224号公報には、ビティスビニフェラ(Vitis vinifera)フラボノイドのリン脂質複合体の調製方法が開示されている。
【0005】
国際公開第2005/36988号公報には、抽出物の処理直後に種子から皮を分離する、ビティスビニフェラ種子の抽出方法が開示されている。得られた抽出物は、単量体ポリフェノール類含量が少ないことを特徴としている。
【0006】
欧州特許第348781号公報には、ビティスビニフェラ種子を、エーテル、または芳香族炭化水素とのエステルもしくはエステルの混合物を用いて、かつ/または濾過によって抽出して得られた、プロシアニドールオリゴマーに富んだ画分が開示されている。
【0007】
欧州特許第1035859号には、ビティスビニフェラの抽出物のリン脂質複合体を、アテローム性動脈硬化症の治療および予防に使用することが開示されている。
【0008】
公知の方法は、有害な溶媒を使用し、あるいは特定植物または複雑な手順を必要とするなどの幾つかの欠点を有する。
【0009】
したがって、容易なやり方で工業的に実施され、有効成分の含量が任意に調節され得る抽出物を提供する便利な方法が必要とされている。
【発明の開示】
【0010】
発明の開示
本発明の方法は、含有されているカテキンおよびエピカテキン誘導体の分子量(MW)が異なる幾つもの画分を分離できることから柔軟性がある。したがってこの方法は、プロアントシアニドールオリゴマーおよびポリマー(プロシアニジン)の含量が少ないカテキンおよびエピカテキンに富んだ抽出物と、それと正反対の特徴を有する、すなわちオリゴマーおよびプロシアニジン含量が多くモノマー(カテキンおよびエピカテキン)の含量が少ない抽出物の両方、ならびにモノマーおよびプロシアニジンの所望の任意含量を有する抽出物の調製を可能にする。
【0011】
このような柔軟性は、これらの異なる画分を混合して所定のモノマー含量の最終生成物(final products)を得る可能性にも係わる。
【0012】
完全抽出物に含有されている高分子量ポリマーおよびタンニンを、最初の処理ステップで、水での部分精製によって所望の画分から除去し、任意選択で、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)を用いた後処理によって最適化することができる。
【0013】
水での部分精製によって、タンニンの一部(50%w/w超)のみが除去されるが、PVPP精製だけが、最終抽出物の重量の5%未満までタンニン含量を低減させる。
【0014】
本発明は、以下の基本的な特性において、ブドウ種子に由来する生成物(products)の従来の調製方法とは異なっている。
i.ブドウ種子の抽出を、pH調節を必要とせず、塩基性化学物質も酸性化学物質も使用せずに実施すること。
ii.抽出および製造方法全体を、水およびエタノールだけを溶媒として使用して実施できること。
iii.該方法は、モノマーおよびオリゴマーの最終抽出物含量を任意に調節可能であることから柔軟性があること。
iv.高分子量ポリマーおよびタンニンが除去されること。
【0015】
概して、本発明の方法は、以下の
a)溶媒を用いてブドウ種子を抽出するステップ(完全抽出物)と、
b)不水溶性タンニンを除去するステップと、
c)任意選択で水溶性タンニンを除去するステップと、
d)異なるMWの生成物を、カラムでのクロマトグラフィー精製によって分離するステップ(このステップは、ステップcを実施する必要もなく、ステップbから得られた任意の溶液で直接実施することもできる)
の4つの主なステップを含む。
【0016】
ステップ(a)は、溶媒としてのアセトンもしくはC1〜C3アルコール、またはその混合物もしくは含水量が90%(v/v)を超えない限りその水溶液を用いて、ブドウ種子を抽出することによって実施される。40%v/vの水−エタノール溶液が好ましい。
【0017】
抽出温度は、0℃から溶媒の沸点までの範囲にわたることができ、好ましくは70℃である。
【0018】
該抽出物から不水溶性物質、特に高分子量タンニンを除去することができるステップ(b)は、ステップ(a)からの抽出物を冷却し、不溶性物質を濾過または遠心分離除去して実施される。
【0019】
ステップ(c)は、任意選択のステップであり、ステップ(b)からの抽出物に依然として存在する任意のタンニンを除去するために実施することができる。これらの代謝物は、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)を使用して除去することができる。
【0020】
好ましくは、本発明の方法は、ステップ(c)も含む。
【0021】
ステップ(d)によって、ほとんどの無用な第2代謝物(糖類等)を除去すると同時に、プロシアニジンを保持して、抽出物を分画することができる。このステップは、ポリマー樹脂への吸着によるクロマトグラフィー分離である。この目的に適した樹脂の例には、AmberliteHP20(登録商標)もしくはロームアンドハース製XAD1180(登録商標)などのスチレン−DVB樹脂、またはロームアンドハース製XAD7HP(登録商標)などのアクリル樹脂がある。
【0022】
ブドウ種子から得られた完全抽出物を濃縮して、5%〜50%w/wの範囲、好ましくは10%w/wの乾燥残渣(dry residue)とし、1℃〜25℃の範囲の温度、好ましくは4℃で、撹拌なしに1時間〜24時間の範囲で、好ましくは16時間静置する。
【0023】
得られた懸濁液を、水溶液から残りの沈殿物が除去されるまで、4℃で遠心分離にかける。透明水溶液を、ロータリーエバポレーター中で濃縮し、水を添加して、5%〜50%w/wの範囲、好ましくは10%w/wの乾燥残渣とする。場合によっては、該溶液は、水溶液だけでなく、水−アルコールまたは水−アセトン溶液のいずれかであってよい。これは、所望の最終生成物によって決まり、例えば、カテキンモノマーおよびオリゴマー含量が多い生成物が所望される場合、好ましくは水溶液が使用され、そうでなければ水−アルコールまたは水−アセトン溶液のいずれかが使用される。
【0024】
したがって、低分子量の画分が最終生成物から除去されるべき場合には、カラムに入れる該溶液は、5%〜50%w/wの範囲の乾燥残渣、ならびに5%〜30%v/vの範囲、好ましくは10%v/vのアルコール(C1〜C3アルコール)またはアセトン含量を有するべきである。こうして調製された溶液は樹脂に吸着するが、保持されなかった溶液は除去される。
【0025】
その後、水−アルコール(C1〜C3アルコール、好ましくはエタノール)または水−アセトン溶液で樹脂を洗浄して、望ましくない第2の代謝物を除去する。溶媒は、100%〜70%v/vの範囲、好ましくは90%v/vの含水量を有するべきである。カラムから出る洗浄液は処分される。
【0026】
生成物を、含水量が50%〜5%v/vの範囲、好ましくは30%v/vの水−アルコール溶液(C1〜C3アルコール)、好ましくはエタノール、で溶出する。アルコール溶液は、任意選択で、含水量が50%〜0%v/vの範囲、好ましくは30%v/vの水−アセトン溶液で置き換えることができる。
【0027】
本発明を、以下の例でさらに詳細に説明する。
【0028】
例1
水−アルコール溶液を用いたブドウ種子の抽出(ステップa)
このステップでは、後のカラムクロマトグラフィー分離のための出発材料として使用する完全抽出物を調製する。
【0029】
ブドウ種子1000gを、ジャケット付き静的パーコレーター(static percolator)中、70℃で4時間、エタノール(40%v/v)1.5リットルで覆う。4時間後に濾過液を回収し、各抽出につき溶媒1リットルを使用する以外は同じ条件下で7回再抽出して、全濾過液約8リットルを得る。その混合濾過液を、吸引しながら熱濾過し、減圧下60℃でロータリーエバポレーターによって濃縮する。この抽出物は、全乾燥残渣を228g有し、出発材料に対する収率は22.8%w/wである。該濾過液を濃縮して、乾燥残渣10%w/wの、完全に水性の懸濁液2.28kgを得る。
【0030】
例2
水−アセトン溶液を用いたブドウ種子の抽出(ステップa)
このステップでは、後のカラムクロマトグラフィー分離のための出発材料として使用することができる完全抽出物を調製する。
【0031】
ブドウ種子1000gを、ジャケット付き静的パーコレーター中または撹拌機を備えたジャケット付き反応器中、70℃で4時間、40%v/vのアセトン1.5リットルで覆う。4時間後に濾過液を回収し、各抽出につき溶媒1リットルを使用する以外は同じ条件下で7回再抽出して、全濾過液約8リットルを得る。その混合濾過液を、吸引しながら熱濾過し、減圧下60℃でロータリーエバポレーターによって濃縮する。この抽出物は、全乾燥残渣を235.6g有し、出発材料に対する収率は23.56%w/wである。
【0032】
該濾過液を濃縮して、乾燥残渣10%w/wの、完全に水性の懸濁液2.35kgを得る。
【0033】
例3
ブドウ種子から得られた抽出物の精製(ステップb):不水溶性物質の除去
ステップ(a)(例1)の水−アルコール抽出物から得た水性懸濁液を、4℃に冷却し、16時間静置し、次いで依然冷却されたままの水性懸濁液を、3000gで20分間遠心分離にかけて、透明水溶液から沈殿残渣を分離する。高分子生成物に富んだ残渣を処分する。
【0034】
得られた透明溶液は、カテキンHPLC含量3.75%、エピカテキンHPLC含量2.87%およびモノマー全含量(カテキン+エピカテキン)6.62%w/wを有する部分的に精製された抽出物の168gに等しい乾燥残渣を有する。出発材料に対する重量収率は16.8%w/wである。
【0035】
以下に記載するクロマトグラフィーカラム精製手順(4つの異なる手順)は全て、この溶液に適用することができる。簡略化のために、例5のみ(手順1を利用)を、この溶液の直接精製の例を用いて報告することにする。後に記載の他の方法は全て、PVPP処理溶液に適用する。
【0036】
例4
ブドウ種子から得られた抽出物の精製(ステップb):不水溶性物質の除去
ステップ(a)(例2)の水−アセトン抽出から得た水性懸濁液を、4℃に冷却し、16時間静置し、次いで依然冷たい水性懸濁液を、3000gで20分間遠心分離にかけて、透明水溶液から沈殿残渣を分離する。高分子生成物に富んだ残渣を処分する。
【0037】
得られた透明溶液は、カテキンHPLC含量4.21%、エピカテキンHPLC含量2.70%およびHPLCモノマー全含量(カテキン+エピカテキン)6.91%w/wを有する部分的に精製された抽出物の乾燥残渣を173g有する。出発材料に対する重量収率は17.3%w/wである。
【0038】
以下に記載するクロマトグラフィー精製手順(4つの異なる手順)は全て、この溶液に適用することができる。簡略化のために、例6のみ(手順3を利用)を、この溶液の直接精製の例を用いて報告することにする。後に記載の他の方法は全て、PVPP処理溶液に適用する。
【0039】
例5
ブドウ種子から得られた抽出物の精製:手順1(ステップd)
ステップ(b)(例3)に記載の部分精製プロセスの最後に得られた、乾燥残渣を168g有する透明水溶液を濃縮して、乾燥残渣10%w/wにする。部分的に精製された抽出物のこの透明溶液は、カテキンHPLC含量3.75%、エピカテキンHPLC含量2.87%およびHPLCモノマー全含量(カテキン+エピカテキン)は6.62%w/wを有する乾燥残渣を有する。
【0040】
この水溶液を室温に温め、次いで水で調整したロームアンドハース製XAD7HP(登録商標)樹脂3300mlを含むクロマトグラフィーカラムに入れる。該水溶液は樹脂に吸着するが、カラムから出る保持されなかった溶液は処分される。次いで、樹脂を水6.6リットルで洗浄し、モノマー含量がごくわずかであり、プロシアニジン含量が少ないために、この溶液も除去する。処分したこれらの水溶液(生成物1)は、全乾燥残渣69g(出発材料に対する重量収率:6.9%w/w)、カテキンHPLC含量0.09%、エピカテキンHPLC含量0.10%、全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)0.19%w/wを有する。
【0041】
カラムを、90%v/vの水性エタノール9リットルで溶出する。得られた溶出液を回収し、減圧下60℃で乾燥して、出発材料に対する収率が9.80%w/wに相当する乾燥生成物(生成物2)98グラムを得る。この生成物は、カテキンHPLC含量6.25%、エピカテキンHPLC含量4.77%およびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)11.02%w/wを有する。
【0042】
例6
ブドウ種子から得られた抽出物の精製:手順2(ステップd)
水−アセトン抽出(ステップa;例2)後、ステップ(b)(例4)に記載の部分精製によって得られた、乾燥残渣を173g有する透明水溶液を濃縮して、乾燥残渣10%w/wにする。
【0043】
その後、この水溶液を室温に戻し、次いでロームアンドハース製XAD1180(登録商標)樹脂3300mlを含むクロマトグラフィーカラムに挿入し、保持されなかった溶液を除去する。樹脂を水6リットルで洗浄し、洗浄液を、保持されなかった溶液と混合する。得られた水溶液を乾燥して、乾燥残渣99.4g、カテキンHPLC含量1.29%w/w、エピカテキンHPLC含量0.46%w/wを有する生成物3を得る。
【0044】
次いで、樹脂を10%v/vのアセトン6リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物4)。前記生成物は、乾燥残渣23.9g、カテキンHPLC含量13.5%w/w、HPLCエピカテキン含量8.41%w/wを有する。
【0045】
次いで、樹脂を20%v/vのアセトン6リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物5)。前記生成物は、乾燥残渣15.3g、カテキンHPLC含量14.3%w/w、エピカテキンHPLC含量10.9%w/wを有する。
【0046】
次いで、樹脂を30%v/vのアセトン6リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物6)。前記生成物は、乾燥残渣14.95g、カテキンHPLC含量2.21%w/w、エピカテキンHPLC含量2.04%w/wを有する。
【0047】
次いで、樹脂を40%v/vのアセトン6リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物7)。前記生成物は、乾燥残渣14.2g、カテキンHPLC含量1.06%w/w、エピカテキンHPLC含量0.66%w/wを有する。
【0048】
次いで、樹脂を50%v/vのアセトン6リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物8)。前記生成物は、乾燥残渣3.51g、カテキンHPLC含量0.67%w/w、エピカテキンHPLC含量0.46%w/wを有する。
【0049】
得られた各生成物を、任意で混合して、所望のモノマー含量の生成物を得ることができる。例えば、モノマー含量が少ない生成物は、3.51gの生成物8を14.2gの生成物7と混合して、カテキンHPLC含量0.98%w/w、エピカテキンHPLC含量0.62%w/w、HPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)1.60%w/wを有する生成物を17.71g得ることによって得られる。あるいは、3.51gの生成物8を、14.2gの生成物7および15.0gの生成物3と混合して、カテキンHPLC含量1.12%w/w、エピカテキンHPLC含量0.55%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)1.67%w/wを有する生成物を32.71g得ることもできる。
【0050】
一方、モノマー含量の多い生成物は、23.9gの生成物4を15.3gの生成物5と混合して、カテキンHPLC含量13.81%w/w、エピカテキンHPLC含量9.38%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)23.19%w/wを有する生成物を39.2g得ることによって得られる。
【0051】
例7
ブドウ種子から得られた抽出物からの水溶性タンニンの除去(ステップc)
乾燥残渣を168g有するステップb(例3)の部分精製から得られた透明水溶液を処理して、水溶性タンニンを除去する。該溶液に、処理される抽出物の乾燥残渣の重量に対して約20%w/wに相当する34gのPVPPを添加する。
【0052】
室温で1時間撹拌した後、PVPPを、ひだ付きフィルターで濾別する。得られた溶液は、2.7%w/wのタンニン含量を有する部分的に精製された抽出物の乾燥残渣を160g有する。
【0053】
出発材料に対する重量収率は、16.0%w/wである。
【0054】
例8
ブドウ種子から得られた抽出物からの水溶性タンニンの除去(ステップc)
ステップb(例4)の部分精製から得られ、乾燥残渣を168g有する透明水溶液を処理して、水溶性タンニンを除去する。該溶液に、処理される抽出物の乾燥残渣の重量に対して約30%w/wに相当する52gのPVPPを添加する。
【0055】
室温で1時間撹拌した後、PVPPを、ひだ付きフィルターで濾別する。
【0056】
得られた溶液は、1.5%w/wのタンニン含量を有する部分的に精製された抽出物の乾燥残渣を163g有する。
【0057】
出発材料に対する重量収率は、16.3%w/wである。
【0058】
例9
ブドウ種子から得られた抽出物の精製:手順1(ステップd)
ステップ(c)(例7)の部分精製から得られた、乾燥残渣を160g有する透明水溶液を濃縮して、10%w/wの乾燥残渣にする。部分的に精製された抽出物のこの透明溶液は、カテキンHPLC含量3.87%、エピカテキンHPLC含量2.96%およびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)6.83%w/wの乾燥残渣を有する。
【0059】
この水溶液を室温に戻し、次いで水で調整したロームアンドハース製XAD7HP(登録商標)樹脂3200mlを含むクロマトグラフィーカラムに入れる。該水溶液は樹脂に吸着するが、カラムから出る保持されなかった溶液は処分される。次いで、樹脂を水6.4リットルで洗浄し、モノマー含量がごくわずかであり、プロシアニジン含量が少ないために、この溶液も除去する。処分したこれらの水溶液(生成物9)は、全乾燥残渣65g(出発材料に対する重量収率:6.5%w/w)、カテキンHPLC含量0.09%、エピカテキンHPLC含量0.10%を有し、モノマー全含量(カテキン+エピカテキン)は0.19%w/wとなる。
【0060】
カラムを、90%v/vの水性エタノール9リットルで溶出する。得られた溶出液を回収し、減圧下60℃で乾燥させて、出発材料に対して9.50%w/wの収率に相当する乾燥生成物(生成物10)95グラムを得る。この生成物は、カテキンHPLC含量6.34%、エピカテキンHPLC含量4.85%およびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)11.19%w/wを有する。
【0061】
例10
ブドウ種子から得られた抽出物の精製:手順3(ステップd)
ステップ(c)(例7)の部分精製から得られた、乾燥残渣を160g有する透明水溶液を濃縮して、10%w/wの乾燥残渣にする。
【0062】
この透明水溶液を室温に戻し、次いでロームアンドハース製XAD1180(登録商標)樹脂1600mlを含むクロマトグラフィーカラムに入れる。該水溶液は樹脂に吸着するが、カラムから出る保持されなかった溶液は除去される。次いで、樹脂を水3リットルで洗浄し、洗浄液を収集し、それを保持されなかった溶液と混合する。得られた水溶液を乾燥させて(生成物11)を得る。前記生成物は、乾燥残渣106.2g、カテキンHPLC含量1.39%w/w、エピカテキンHPLC含量0.95%w/wを有する。
【0063】
次いで、樹脂をエタノール(10%v/v)3リットルで洗浄し、次いで、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物12)。前記生成物は、乾燥残渣12.0g、カテキンHPLC含量12.0%w/w、エピカテキンHPLC含量7.80%w/wを有する。
【0064】
次いで、樹脂をエタノール(20%v/v)3リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物13)。前記生成物は、乾燥残渣14.7g、カテキンHPLC含量11.5%w/w、エピカテキンHPLC含量9.23%w/wを有する。
【0065】
次いで、樹脂をエタノール(30%v/v)3リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物14)。前記生成物は、乾燥残渣20.0g、カテキンHPLC含量6.49%w/w、エピカテキンHPLC含量5.76%w/wを有する。
【0066】
次いで、樹脂をエタノール(40%v/v)3リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物15)。前記生成物は、乾燥残渣5.08g、カテキンHPLC含量2.84%w/w、エピカテキンHPLC含量2.59%w/wを有する。
【0067】
次いで、樹脂をエタノール(50%v/v)3リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物16)。前記生成物は、乾燥残渣1.55g、カテキンHPLC含量0.51%w/w、エピカテキンHPLC含量0.35%w/wを有する。
【0068】
得られた各生成物を、任意で混合して、所望のモノマー含量の生成物を得ることができる。例えば、モノマー含量が少ない生成物は、1.55gの生成物16を5.08gの生成物15と混合して、カテキンHPLC含量2.26%w/w、エピカテキンHPLC含量2.11%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)4.37%w/wを有する生成物を6.63g得ることによって得られ、あるいは1.55gの生成物16を7.00gの生成物11と混合して、カテキンHPLC含量1.19%w/w、エピカテキンHPLC含量0.89%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)2.08%w/wを有する生成物を8.55g得ることができる。
【0069】
一方、モノマー含量の多い生成物は、12.0gの生成物12を、12.0gの生成物13および15.0gの生成物14と混合して、カテキンHPLC含量9.73%w/w、エピカテキンHPLC含量7.46%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)17.19%w/wを有する生成物を39.0g得ることによって得られ、あるいは12.0gの生成物12を12.0gの生成物13と混合して、カテキンHPLC含量11.75%w/w、エピカテキンHPLC含量8.52%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)20.27%w/wを有する生成物を24.0g得ることができる。
【0070】
例11
ブドウ種子から得られた抽出物の精製:手順4(ステップd)
ステップ(c)(例7)の部分精製から得られた、乾燥残渣を160g有する透明水溶液を濃縮して、10%w/wの乾燥残渣にする。
【0071】
この透明水溶液を濃縮して、乾燥残渣(12%w/w)にし、次いでエタノール(95%v/v)320mlを添加して、約10%w/wの乾燥残渣および約(20%v/v)のエタノール含量を得る。この水−アルコール溶液を室温に戻し、次いでロームアンドハース製XAD1180(登録商標)樹脂1600mを含むクロマトグラフィーカラムに入れる。カラムから出る保持されなかった溶液を除去する。次いで、樹脂を20%v/vのエタノール9.60リットルで洗浄し、カテキンHPLC含量4.37%w/w、エピカテキンHPLC含量3.35%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)7.72%w/wの乾燥残渣を135.6g有する洗浄液を、やはり除去する。
【0072】
カラムを70%v/vの水性エタノール6.60リットルで溶出し、カラムから出る溶出液を収集し、減圧下60℃で乾燥させて、乾燥残渣24.3g、カテキンHPLC含量0.79%w/w、エピカテキンHPLC含量0.62%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)1.41%w/wを有する生成物(生成物17)を得る。
【0073】
例12
ブドウ種子から得られた抽出物の精製:手順2(ステップd)
ステップ(a)(例2)の水−アセトン抽出の後、ステップ(b)(例4)の部分精製およびステップ(c)(例8)のタンニン除去から得られた、乾燥残渣を163g有する透明水溶液を濃縮して、10%w/wの乾燥残渣にする。
【0074】
この透明水溶液を室温に戻し、次いで水で調整したロームアンドハース製XAD7HP(登録商標)樹脂3200mlを含むクロマトグラフィーカラムに入れる。水−アルコール溶液は樹脂に吸着するが、カラムから出る保持されなかった溶液は除去される。次いで、樹脂を水6.4リットルで洗浄し、モノマー含量がごくわずかであり、プロシアニジン含量が少ないために、この溶液も除去する。処分したこれらの水溶液(生成物18)は、全乾燥残渣62.5g(出発材料に対する重量収率:6.3%w/w)、カテキンHPLC含量0.11%、エピカテキンHPLC含量0.14%およびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)0.25%w/wを有する。
【0075】
カラムを90%v/vの含水アセトン9リットルで溶出し、カラムから出る溶出液を収集し、減圧下60℃で乾燥させて、乾燥生成物(生成物19)99.8gを得る(出発材料に対する収率:10%w/w)。この生成物は、カテキンHPLC含量7.11%、エピカテキンHPLC含量4.52%およびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)11.63%w/wを有する。
【0076】
例13
ブドウ種子から得られた抽出物の精製:手順3(ステップd)
ステップa(例2)の水−アセトン抽出の後、ステップ(b)(例4)の部分精製およびステップc(例8)のタンニン除去によって得られた、乾燥残渣を163g有する透明水溶液を濃縮して、10%w/wの乾燥残渣にする。
【0077】
この水溶液を室温に戻し、次いで水で調整したロームアンドハース製XAD1180(登録商標)樹脂3200mlを含むクロマトグラフィーカラムに入れる。
【0078】
該水溶液は樹脂に吸着するが、カラムから出る保持されなかった溶液は除去される。次いで、樹脂を水6リットルで洗浄し、この溶液も除去し、それを保持されなかった溶液と混合する。得られた水溶液を乾燥して、生成物(生成物20)を得る。前記生成物は、乾燥残渣106.4g、カテキンHPLC含量1.58%w/w、エピカテキンHPLC含量0.47%w/wを有する。
【0079】
次いで、樹脂を20%v/vのアセトン6リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物22)。前記生成物は、乾燥残渣11.7g、カテキンHPLC含量16.8%w/w、エピカテキンHPLC含量15.2%w/wを有する。
【0080】
次いで、樹脂を30%v/vのアセトン6リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物23)。前記生成物は、乾燥残渣11.8g、カテキンHPLC含量2.20%w/w、エピカテキンHPLC含量2.20%w/wを有する。
【0081】
次いで、樹脂を40%v/vのアセトン6リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物24)。前記生成物は、乾燥残渣10.2g、カテキンHPLC含量1.15%w/w、エピカテキンHPLC含量0.75%w/wを有する。
【0082】
次いで、樹脂を50%v/vのアセトン6リットルで洗浄し、得られた溶液を収集し乾燥する(生成物25)。前記生成物は、乾燥残渣3.04g、カテキンHPLC含量0.71%w/w、エピカテキンHPLC含量0.43%w/wを有する。
【0083】
得られた各生成物を、任意で混合して、所望のモノマー含量の生成物を得ることができる。例えば、モノマー含量が少ない生成物は、3.04gの生成物25を10.2gの生成物24と混合して、カテキンHPLC含量1.05%w/w、エピカテキンHPLC含量0.68%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)1.73%w/wを有する生成物を13.24g得ることによって得られ、あるいは3.04gの生成物25を、10.2gの生成物24および15.0gの生成物20と混合して、HPLCモノマー含量x1.33%w/w、エピカテキンHPLC含量0.57%w/wおよびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)1.90%w/wを有する生成物を28.24g得ることができる。
【0084】
一方、モノマー含量の多い生成物は、19.6gの生成物21を11.7gの生成物22と混合して、カテキンHPLC含量15.80%w/w、エピカテキンHPLC含量11.88%w/w、およびHPLC全モノマー含量(カテキン+エピカテキン)27.76%w/wを有する生成物を31.3g得ることによって得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)溶媒を用いてブドウ種子を抽出するステップ(完全抽出物)と、
b)不水溶性タンニンを除去するステップと、
c)水溶性タンニンを任意選択で除去するステップと、
d)カラムでのクロマトグラフィー精製によって、異なる分子量の生成物を分離するステップと
を含む、ビティスビニフェラ(Vitis vinifera)種子の抽出方法。
【請求項2】
ブドウ種子を、アセトンもしくはC1〜C3アルコール、またはその混合物もしくは含水量が90%(v/v)以下のその水溶液で抽出することによってステップ(a)を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出溶媒が、40%v/vの水−エタノール溶液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出を、70℃で実施する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)を、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)を使用して実施する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記クロマトグラフィー分離を、スチレン−ジビニルベンゼンまたはアクリル樹脂で実施する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の方法によって得られる、所定の含量のカテキン、エピカテキン、プロアントシアニドールオリゴマーおよびポリマー(プロシアニジン)を含む抽出物。
【請求項8】
請求項7に記載の抽出物を含む組成物。

【公表番号】特表2009−502825(P2009−502825A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523173(P2008−523173)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006852
【国際公開番号】WO2007/017037
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】