説明

樹脂で被覆された顔料を用いる塗料およびインクの調製方法

【課題】液体塗料および/またはインクの製造における顔料ペーストの予備的調製ならびにその磨砕工程を排除する。
【解決手段】本発明は、塗料および/またはインクを調製する方法において、顔料色素、アルデヒド、ケトンおよび/またはアクリルの樹脂、ならびに任意的な、賦形剤および/または補助剤から成る粒子組成物が、少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物中に混合される上記方法に関する。本発明は、当該調製方法を用いて得られることができる塗料および/またはインク、ならびにこのような塗料および/またはインクで塗装されたおよび/または処理された製造された物品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料および/またはインクを調製する方法において、顔料色素、アルデヒド、ケトンおよび/またはアクリルの樹脂、ならびに任意的な、賦形剤および/または補助剤から成る粒子組成物が、少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物中に混合される上記方法に関する。
【0002】
本発明は、当該調製方法を用いて得られることができる塗料および/またはインク、ならびにこのような塗料および/またはインクで塗装されたおよび/または処理された製造された物品にも関する。
【背景技術】
【0003】
液体塗料は普通、一般に有機溶媒、樹脂、顔料および添加剤から成る。
【0004】
その調製は普通、顔料ペースト(ミルベース)、すなわち溶媒のアリコート(小分け量)、樹脂のアリコート、顔料色素および添加剤から成る混合物を予備的に調製することを含む。
【0005】
次に、ボールミル中での磨砕の段階がある。磨砕されるべき顔料の性質に応じて、ボールは化学的性質および大きさが様々であることができる。磨砕は普通、顔料粒子へのボールの二重の作用、すなわち衝撃作用および摩擦作用によって達成される。
【0006】
次に、液体塗料が得られるまで、溶媒および樹脂の残りのアリコートを混ぜ込むことによってこの方法は完了する。
【0007】
この方法は二つの顕著な問題を抱えている。
【0008】
第一に、この方法は塗料製造業者に、顔料ペースト中の顔料を磨砕するのに適したミルを設備化することを余儀なくさせる。
【0009】
第二に、顔料は非常に微細な、手で触れることのできない粉体の形状に磨砕されるので、顔料は粒子の雲を形成し、これは処理が行われている部署内の空気中に浮遊する。この極めて軽い顔料粉体は、操作にかかわっている作業者を含む作業環境全体も汚染するが、とりわけ処理に使用される装置を汚染する。
【0010】
この制約は当業界において周知であり、作業環境全体の汚染を非常に注意深く除くことが必要になる。そうしなければそこは高度に汚染されたままであるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2006/082603号パンフレット(国際出願第PCT/IT2005/000433号)
【特許文献2】国際公開第2007/080612号パンフレット(国際出願第PCT/IT2006/000019号
【特許文献3】国際公開第2008/012848号パンフレット(国際出願第PCT/IT2006/00588号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、溶媒相にあるこれらの顔料ペーストを調製する際に直面するであろうこの不都合は明白である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、液体塗料および/またはインクを調製する方法において、少なくともアルデヒド、ケトンおよび/またはアクリルの樹脂で被覆された1以上の顔料、ならびに任意的な、少なくとも補強用鉱物フィラーおよび/または分散剤から成る粒子組成物が、少なくとも1の有機溶媒、水および/またはこれらの混合物中に直接、混合されて、最終の塗料および/またはインクを得る上記方法に関し、この方法によれば塗料製造業者による磨砕という中間段階が排除される。
【0014】
特に、本発明に従う調製方法は、以下の段階を含む。すなわち、
a) i) 少なくともアルデヒド、ケトンおよび/またはアクリルの樹脂で被覆された1以上の顔料、ならびに任意的な、少なくとも補強用鉱物フィラーおよび/または分散剤から成る粒子組成物、
ii) アルキド、アクリル、ポリエステル、セルロース、ビニル、尿素、メラミン、エポキシ、エポキシポリアミン、シリコーン、塩素化ゴムの樹脂および/またはこれらの混合物、および
iii) 少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物
を予備混合して、結果として顔料ペーストを得る段階、ならびに
b)このようにして得られた顔料ペーストを
iv) 樹脂、好ましくはアルキド、アクリル、ポリエステル、セルロース、ビニル、尿素、メラミン、エポキシ、エポキシポリアミン、ウレタン、シリコーン、炭化水素樹脂、コロフォニー樹脂および/もしくはそのエステル、塩素化ゴムならびに/またはこれらの混合物、
v) 1以上の添加剤、補強用フィラーおよび/または分散剤、および
vi) 少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物
と混合して、結果として液体塗料および/またはインクを得る段階。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的のために使用されることができる粒子組成物は、好ましくは特許文献1、2および3に記載されたものであり、これらの内容は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0016】
当該粒子組成物中に含まれるアルデヒドおよび/またはケトンの樹脂は、引用された特許文献1および2に記載されたように800〜2000ダルトン、好ましくは900〜1400ダルトンの平均分子量を有し、他方においてアクリル樹脂は800〜5000ダルトン、好ましくは800〜3000ダルトンの平均分子量を有する。
【0017】
当該アルデヒド、ケトンおよび/またはアクリルの樹脂はまた、70℃〜130℃、好ましくは90℃〜110℃の融点を有する。
【0018】
「アルデヒドおよび/またはケトンの樹脂」とは、アルデヒドの縮合生成物、好ましくは脂肪族アルデヒドの縮合生成物、またはケトンの縮合生成物、好ましくはシクロヘキサノンもしくはメチルシクロヘキサノンの縮合生成物、任意的に尿素/ホルムアルデヒド縮合生成物のような縮合生成物とのものを意味する。
【0019】
本発明に従って使用されることができるアルデヒドおよび/またはケトンの樹脂の例は、Laropal(商標)A 101、Laropal(商標)A 81およびUA樹脂であり、これらは尿素と脂肪族アルデヒドとの縮合生成物である。また、Laropal(商標)K 80であり、これはシクロヘキサノンの縮合生成物であり、またはUK100である。
【0020】
本発明に使用されることができるアクリル樹脂の例は、Joncryl(商標)67および690、Joncryl(商標)586、611および678、Neocryl B817、B731、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、たとえばSMA(商標)1000、2000および300、ならびにこれらのエステルであるSMA(商標)1440、17352、2625および3840である。
【0021】
引用によって本明細書に取り込まれた特許文献1に記載されたように、「顔料色素」とは、有機または無機粉体であって、光スペクトルの一部または全部を吸収しそしてその補色部分を反射して、該補色部分が目に見える色を構成するものを意味する。
【0022】
本発明における顔料は有機顔料でも無機顔料でもよい。有機顔料は、好ましくは有機物燃焼物からの顔料(カーボンブラック)、モノアゾ基、キノフタロン、イソインドリノンの黄色顔料;オレンジ色顔料であるジスアゾピラゾロン、ベンズイミダゾロン、ジケトピロロピロール;キナクリドン赤色顔料、ジケトピロロピロール、ナフトールAS群のもの、アントラキノン、カルシウムを混ぜられたベータオキシナフトエ酸(BONS Ca)、マンガンを混ぜられたベータオキシナフトエ酸(BONS Mn);ジオキサジンバイオレット;フタロシアニンに基づいた青色顔料、フタロシアニンに基づいた緑色顔料から選択される。無機顔料は、好ましくは酸化鉄、酸化チタン、酸化クロムに基づいた顔料、黄色顔料であるニッケル−アンチモンチタン酸塩共沈降物、クロム−アンチモンチタン酸塩共沈降物;チタン酸亜鉛;硫酸クロム酸鉛チタン酸ニッケル;バナジン酸ビスマス;硫酸クロムおよびモリブデン酸鉛からのオレンジ色顔料から選択される。特に、カーボンブラックは、ファーネスブラック、ガスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、プラズマブラック、インバージョンブラック(これらは独国特許第19521565号および独国特許第19839925号から公知である。)、Si含有カーボンブラック(国際公開第98/45361号または独国特許第19613796号から公知である。)、金属含有カーボンブラック(国際公開第98/42778号から公知である。)、アークブラックから選択されることができ、また化学製造プロセスの副生成物であるカーボンブラックが出発カーボンブラックとして使用されることができる。カーボンブラックは予備反応によって、たとえば酸化によって活性化されることができる。着色カーボンブラックが使用されることができる。他のカーボンブラックは、電導性カーボンブラック、紫外線安定化のためのカーボンブラック、ゴム以外の系、たとえばビチューメン、プラスチックにおけるフィラーとしてのカーボンブラック、冶金における還元剤としてのカーボンブラックであることができる。
【0023】
特に、当該粒子組成物は、20〜80重量%の顔料および80〜20重量%の樹脂、ならびに任意的な、0.01〜10重量%のさらなる賦形剤および/または補助剤、たとえば補強用鉱物フィラーおよび/または分散剤を含んでいる。
【0024】
特に、無機顔料の場合、組成物は好ましくは50〜70重量%の顔料、30〜50重量%の樹脂および0.1〜10重量%の分散剤から成る。
【0025】
有機顔料の場合、組成物は10〜50重量%の顔料、好ましくは20〜40重量%の顔料、45〜75重量%の樹脂、1〜20重量%の補強用鉱物フィラーおよび0.1〜10重量%の分散剤から好ましくは成り、さらにより好ましくは20〜35重量%の顔料、50〜70重量%の樹脂、5〜15重量%の体質顔料および1〜7重量%の分散剤から成る。
【0026】
上で引用された特許文献1および特許文献3に記載されたように、当該粒子組成物は、任意的にさらなる賦形剤および/または補助剤、たとえば補強用鉱物フィラーおよび/または分散剤を含有することができる。
【0027】
当該補強用鉱物フィラーは、好ましくは炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩ならびに天然および/または焼成シリカから選択される。
【0028】
以下のものがより好ましくは使用される。すなわち、天然または沈降硫酸バリウム、天然または被覆炭酸カルシウム、タルク、クロライト、マイカ、モンモリロナイト、天然ベントナイトおよび/またはベントナイト添加物、天然シリカ酸化物およびこれらの組み合わせならびに/または焼成シリカ、たとえばセリット、珪藻土またはAerosil(商標)。
【0029】
分散剤は、好ましくはソルビタンエステル(Atmer(商標))、エポキシ化大豆油;1,000〜20,000ダルトンの分子量を有するアクリルポリマー、たとえばDisperbyk(商標)163、181、190、9075またはEfka4330、7744等、スルホン酸の金属誘導体、Ircogel(商標)906、エトキシル化リン酸のアルコールおよび/またはアミン誘導体(Nuosperse(商標)FA 196)から選択される。好ましくはエトキシル化ソルビタンエステルが使用され、これはUniqema社によってAtmer 116(商標)として市販されている。
【0030】
本発明に従う方法の段階a)、段階ii)に使用されることができる樹脂は、好ましくはアルキド樹脂、たとえばAlkydal(Bayer社)、アクリル樹脂、たとえばMacrynal、Neocryl、Joncryl、LarodurもしくはMaprenal、セルロースポリエステル樹脂、たとえばニトロセルロース(Sipe社、SNPE社、WOLF社)、セルロースアセトブチレート(Kodak社)、ビニル樹脂、たとえばInylite(Union Carbide社)、尿素もしくはメラミン樹脂、たとえばPlastopal、Cibamin、Cymel U−樹脂(Cyanamid社)、エポキシもしくは炭化水素樹脂、たとえばNecires、シリコーン樹脂、たとえばSilicophen(Tego社)もしくはRhodorsil(Rhone Poulenc社)、塩素化ゴム樹脂、たとえばPergutもしくはAllopreneおよび/またはこれらの混合物から選択される。
【0031】
本発明に従うポリエステル樹脂は、好ましくはホモポリエステル、ウレタンポリエステルおよび/またはこれらの混合物から選択される。
【0032】
本発明に従うと、「水」の語は、溶解された鉱塩の低い含有量および5〜50、好ましくは10〜20の仏国硬度である全硬度によって特性付けられる水を意味する。
【0033】
本発明の1の実施態様に従うと、半回、一回または二回蒸留された(5マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有する)脱塩水が使用される。
【0034】
本発明の段階a)、段階iii)における有機溶媒は、好ましくは部分的にまたは完全に水溶性の極性有機溶媒である。当該溶媒は、より好ましくはアルコール、エステル、ケトン、エーテル、アミン、炭化水素および/またはこれらの混合物から選択される。
【0035】
本発明における炭化水素は、好ましくは芳香族および/または脂肪族炭化水素である。
【0036】
本発明の目的のためには、1〜8の炭素原子を有するアルコールが使用され、好ましくはエチル、ジアセトン、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3級ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、ベンジルのアルコールおよび/またはこれらの混合物である。
【0037】
本発明に従うアミンは好ましくは3級アミン、より好ましくは1〜8の炭素原子を有する3級アミンである。
【0038】
当該アミンは好ましくはアンモニア、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジメチルアミノプロパノールのアミンおよび/またはこれらの混合物から選択される。
【0039】
本発明における「アンモニア」とは、20〜40重量%のアンモニア水性溶液を意味する。
【0040】
完成された製品を、製造された物品に施与した後、被膜からアミン基が水とほとんど同時に蒸発して製膜時の不具合(凝集、外観、流れ、乾燥、光沢、臭気および強度)が回避される事実が、アミンの選択の指針となる。
【0041】
本発明に従う当該アミンは、酸性樹脂の中和/可溶化にも有用である。
【0042】
本発明に従うケトンは好ましくは1〜8の炭素原子を有するケトンであり、より好ましくはメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロンおよび/またはこれらの混合物から選択される。
【0043】
本発明に従うエステルは好ましくは1〜8の炭素原子を有するエステルであり、より好ましくはメトキシプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルアセテート、イソブチルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、グリコールブチルエステル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートおよび/またはこれらの混合物から選択される。
【0044】
本発明におけるエーテルは好ましくは1〜8の炭素原子を有するエーテルであり、より好ましくはブチルグリコール、ブチルジグリコール、メトキシプロピルグリコール、エトキシプロピルグリコールのエーテルおよび/またはこれらの混合物から選択される。
【0045】
本発明に従う水−溶媒比は約5.0〜0.1重量部、好ましくは約4.5〜0.3重量部である。
【0046】
予備混合段階a)における粒子組成物と、少なくとも1の有機溶媒、水および/またはこれらの混合物との割合は、それぞれ約0.1〜5重量部の当該粒子組成物と、当該1重量部の少なくとも1の有機溶媒、水および/またはこれらの混合物とであり、好ましくは約0〜4重量部と1重量部とである。
【0047】
当該組成物の粒子サイズは約200〜2500ミクロン、好ましくは1000〜1900ミクロンである。
【0048】
本発明に従う方法に従うと、予備混合段階a)は、90m/分〜770m/分、好ましくは260m/分〜430m/分の速度;約15〜80分、好ましくは約25〜50分の時間間隔および30〜70℃、好ましくは約35〜65℃の温度における撹拌によって行われる。
【0049】
本発明に従う方法の段階b)、段階iv)に使用されることができる樹脂は、好ましくはアルキド、アクリル、ポリエステル、セルロース、ビニル、尿素、メラミン、エポキシ、エポキシポリアミン、ウレタン、シリコーン、炭化水素の樹脂、コロフォニー樹脂および/もしくはそのエステル、塩素化ゴムならびに/またはこれらの混合物から選択される。
【0050】
段階b)、v)に挙げられる補強用フィラーおよび/または分散剤は、段階a)、i)について既に列挙されたものと同じである。
【0051】
段階b)段階v)における本発明に従う添加剤は、好ましくは表面添加剤、レオロジー添加剤、可塑剤、触媒添加剤および/またはこれらの混合物から選択される。
【0052】
表面添加剤は、施与された被膜の表面張力を変性して、滑りやすさ、引っかき抵抗、平滑性、不透明性および光沢の特性を与える作用をする。この範疇には、たとえば油、シリコーンポリマー、アクリレートポリマー(アクロナール)、フッ素化ポリマー、天然ワックス、合成ワックス、被覆された合成ワックスおよび/またはこれらの混合物が含まれる。
【0053】
当該被覆された合成ワックスは、好ましくはフッ素化化合物、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で被覆されたものである。
【0054】
レオロジー添加剤は、調製物の内部で作用を発揮して貯蔵の間の缶の安定性を改良し、たとえば1,000〜20,000ダルトンの分子量を有するポリマー(Byk Chemie社、Efka社またはCiba社から入手可能なByk、Disperbyk、Antiterra)、スルホン酸の有機および/または金属誘導体(ircogel)、パラトルエンスルホン酸、ナフテン酸、ラウリン酸の有機および/または金属誘導体(ジブチルスズジラウレート)、エトキシル化リン酸のアルコールまたはアミン誘導体(Nuosperse)であることができる。
【0055】
可塑剤は好ましくはアジペート、シトレート、セバケート、エポキシ化大豆油、フタレートおよび/またはこれらの混合物から選択される。
【0056】
段階b)、段階vi)における本発明の当該少なくとも1の有機溶媒は、好ましくは段階a)、段階iii)について前記されたのと同じ群から選択される。
【0057】
混合段階b)、段階vi)における少なくとも1の有機溶媒、水および/またはこれらの混合物と、粒子組成物との割合は、それぞれ約0.1〜5重量部の当該粒子組成物と、1重量部の当該少なくとも1の有機溶媒、水および/またはこれらの混合物とであり、好ましくは約0〜4重量部と1重量部とである。
【0058】
本発明の当該混合段階b)は、約1〜40分間、好ましくは約5〜30分間の時間間隔、および1〜30℃、好ましくは約18〜25℃の温度において行われる。
【0059】
当該段階b)は、特別な撹拌は必要なく単純な撹拌によって行われる。
【0060】
本発明に従う方法の利点は、該方法が磨砕段階(ミル)を排除し、したがって最終塗料および/またはインクの製造をより簡単でより迅速にし、かつ所望の色をもたらすことである。
【0061】
磨砕段階の排除はまた、顔料磨砕工程の間の揮発性粉塵の生成による環境汚染および機械装置の汚染のどのようなタイプのものも確実に排除する。
【0062】
本発明における混合は好都合なことに、ベースペーストの製造業者によってか、あるいは最終塗料および/またはインクの販売業者によって直接、実施されることができる(缶内調色)。
【0063】
今まで着色用ペーストは、色の付いた顔料を磨砕することによって予め調製された高濃度液状の中性ベースに添加されていた。
【0064】
したがって本発明に従う方法は、粉塵、フレークおよび/または顆粒の形態をした着色用顔料を中性ベース中に直接、分散させるところの色付け系(tintometric system)の開発をもたらす技術的進歩であると理解されなければならない。
【0065】
したがって本発明の目的のためには、自動計量系が、好適には顆粒および/または粉塵を計量するように変更された自動計量系が使用される。
【0066】
本発明は、さらに上記の分散方法によって得られる塗料および/またはインクに関し、また本発明はこのような塗料を自動車(自動車の再仕上げ塗装およびOEM、すなわち相手先商標製品の製造を包含する。)、再仕上げ塗装、工業用コーティング、粉体コーティングまたは建築用コーティングの産業において使用する方法およびこのようなインクを包装、印刷、インクジェット印刷または出版の産業において使用する方法にも関する。
【0067】
本発明は、さらに当該塗料および/またはインクで塗装された/処理された製造された物品に関する。
【0068】
下の実施例は、純粋に本発明の非限定的記載のためにのみ有効であり、実施例に記載された顆粒組成物は特許文献1に開示された方法に従って得られたものであり、該文献は引用によって本明細書に取り込まれている。
【0069】
他様に述べられない限り、部は重量部であると理解されなければならない。
【実施例1】
【0070】
速乾性黒色液体塗料
【0071】
a.黒色顆粒の組成
カーボンブラック(特殊黒色IV、Degussa社製) 40.0部
Dysperbyk(分散剤、Byk−Chemie社製) 3.0部
UA樹脂(アルデヒド樹脂、Degussa社製) 57.0部
【0072】
b.塗料調製法
【0073】
Cowlesタイプの適当な装置内で、1.5部のメトキシプロピルアセテート(MPA)および1.5部のn−ブチルアセテート(エステル溶媒)が秤量されそして撹拌羽根によって約300rpmで撹拌される。
【0074】
次に、段階a)において述べられた1000〜1900ミクロンの粒子サイズを有する黒色顆粒5部が、それが底部に沈降するのを防ぐためにゆっくりとかつ撹拌下に導入される。回転円盤の速度が約2000rpm(円周速度345メートル/分)まで上げられる。この条件が約25分間維持され、最後に均一な分散物が得られる。
【0075】
温度が約40℃まで上げられる。顆粒の溶解の程度がグラインドメーターを使用して確認され、そして顆粒が凝集物の存在なく溶解されたときに速度が下げられる。以下の成分、すなわち70部のAlkydal F 48(アルキド樹脂)、10部のS100(芳香族炭化水素溶媒)、11部のキシレン(芳香族炭化水素溶媒)、0.1部のシリコーン油325/OL17(表面添加剤)、ナフテン酸および/またはオクタン酸のCa、Zr、ZnおよびCo塩を含んでいる混合物(添加剤VX71)0.6部ならびに0.3部のメチルエチルケトオキシム(添加剤)がゆっくりと滴下され、そして構成物が完成される。
【0076】
温度が約20〜25℃まで下げられ、そして混合が約10〜20分間続けられ、最後に工程が完結される。
【実施例2】
【0077】
生物成分赤色液体塗料
【0078】
a.赤色顆粒の組成
Irgazin red 2030(有機系赤色、Ciba社製) 40.0部
硫酸バリウム(補強用フィラー) 10.0部
Atmer(分散剤、Uniqema社製) 2.0部
UA樹脂(アルデヒド樹脂、Degussa社製) 48.0部
【0079】
b.塗料調製法
【0080】
Cowlesタイプの適当な装置内で、1.5部のメトキシプロピルアセテート(MPA)および4.0部のn−ブチルアセテート(エステル溶媒)が秤量されそして撹拌羽根によって約300rpmで撹拌される。
【0081】
次に、段階a)において述べられた赤色顆粒15部が、それが底部に沈降するのを防ぐためにゆっくりとかつ撹拌下に導入される。回転円盤の速度が約2000rpm(円周速度345メートル/分)まで上げられる。この条件が約25分間維持され、最後に均一な分散物が得られる。
【0082】
温度が約40℃まで上げられる。顆粒の溶解の程度がグラインドメーターを使用して確認され、そして顆粒が凝集物の存在なく溶解されたときに速度が下げられる。以下の成分、すなわち70部のMacrynal 510n/516(アクリル樹脂)、4.09部のメトキシプロピルアセテート(MPA)、2.0部のブチルジグリコールアセテート(エステル溶媒)、0.01部のシリコーン(添加剤)、0.02部のジブチルスズジラウレート(添加剤)がゆっくりと滴下され、そして配合物が完成される。
【0083】
温度が約20〜25℃まで下げられ、そして混合が約10〜20分間続けられ、最後に工程が完結される。
【実施例3】
【0084】
白色液体塗料
【0085】
a.白色顆粒の組成
Tioxide(二酸化チタン、Huntsman社製) 75.0部
UA樹脂(アルデヒド樹脂、Degussa社製) 25.0部
【0086】
b.塗料調製法
【0087】
Cowlesタイプの適当な装置内で、5.0部のメトキシプロピルアセテート(MPA)および5.0部のn−ブチルアセテート(エステル溶媒)が秤量されそして撹拌羽根によって約300rpmで撹拌される。
【0088】
次に、段階a)において述べられた白色顆粒40部が、それが底部に沈降するのを防ぐためにゆっくりとかつ撹拌下に導入される。回転円盤の速度が約2000rpm(円周速度345メートル/分)まで上げられる。この条件が約25分間維持され、最後に均一な分散物が得られる。
【0089】
温度が約40℃まで上げられる。顆粒の溶解の程度がグラインドメーターを使用して確認され、そして顆粒が凝集物の存在なく溶解されたときに速度が下げられる。以下の成分、すなわち35部のDynapol LH(ポリエステル樹脂)、5部のCymel 325/303(メラミン樹脂)、4.0部のS150(芳香族炭化水素溶媒)、0.89部のブチルジグリコール(エステル溶媒)、0.01部のシリコーン(表面添加剤)、0.1部のCycat 4040(触媒添加剤)、3.0部のSyloid ED 30(添加剤)および2.0部の二塩基エステル(溶媒)がゆっくりと滴下され、そして配合物が完成される。
【0090】
温度が約20〜25℃まで下げられ、そして混合が約10〜20分間続けられ、最後に工程が完結される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体塗料および/またはインクを調製する方法において、
a)i)少なくともアルデヒド、ケトンおよび/またはアクリルの樹脂で被覆された1以上の顔料、ならびに任意的な、少なくとも1の補強用鉱物フィラーおよび/または分散剤から成る粒子組成物、
ii)アルキド、アクリル、ポリエステル、フェノール、セルロース、ビニル、尿素、メラミン、エポキシ、シリコーン、塩素化ゴムの樹脂および/またはこれらの混合物、および
iii)少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物
を予備混合して、結果として顔料ペーストを得る段階、ならびに
b)このようにして得られた顔料ペーストを
iv)少なくとも1の樹脂、
v)1以上の添加剤、補強用フィラーおよび/または分散剤、および
vi)少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物
と混合して、結果として液体塗料および/またはインクを得る段階
を含む上記方法。
【請求項2】
段階b)における当該樹脂が、アルキド、アクリル、ポリエステル、フェノール、セルロース、ビニル、尿素、メラミン、エポキシ、ウレタン、シリコーン、炭化水素樹脂、コロフォニー樹脂および/もしくはそのエステルならびに/またはこれらの混合物から選択される、請求項1に従う方法。
【請求項3】
ポリエステル樹脂が、ホモポリエステル、ウレタンポリエステルおよび/またはこれらの混合物である、請求項1に従う方法。
【請求項4】
当該有機溶媒が、部分的にまたは完全に水溶性の極性溶媒である、請求項1に従う方法。
【請求項5】
当該有機溶媒が、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、アミン、炭化水素および/またはこれらの混合物から選択される、請求項1に従う方法。
【請求項6】
当該炭化水素が芳香族および/または脂肪族炭化水素である、請求項5に従う方法。
【請求項7】
当該アルコールが、1〜8の炭素原子を有する、請求項5に従う方法。
【請求項8】
当該アルコールが、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、プロピルアルコール、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3級ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、ベンジルのアルコールおよび/またはこれらの混合物から選択される、請求項7に従う方法。
【請求項9】
当該アミンが3級アミンである、請求項5に従う方法。
【請求項10】
当該アミンが、1〜8の炭素原子を有する、請求項9に従う方法。
【請求項11】
当該アミンが、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジメチルアミノプロパノールおよび/またはこれらの混合物から選択される、請求項10に従う方法。
【請求項12】
当該ケトンが、1〜8の炭素原子を有する、請求項5に従う方法。
【請求項13】
当該ケトンが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロンおよび/またはこれらの混合物から選択される、請求項12に従う方法。
【請求項14】
当該エステルが、1〜8の炭素原子を有する、請求項5に従う方法。
【請求項15】
当該エステルが、メトキシプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルアセテート、イソブチルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、ブチルグリコールエステル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートおよび/またはこれらの混合物から選択される、請求項14に従う方法。
【請求項16】
当該エーテルが、1〜8の炭素原子を有する、請求項5に従う方法。
【請求項17】
当該エーテルが、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、メトキシプロピルグリコール、エトキシプロピルグリコールのエーテルおよび/またはこれらの混合物から選択される、請求項16に従う方法。
【請求項18】
当該添加剤が、表面添加剤、レオロジー添加剤、可塑剤、触媒添加剤および/またはこれらの混合物である、請求項1に従う方法。
【請求項19】
表面添加剤が、油、シリコーンポリマー、アクリルポリマー、フッ素化ポリマー、天然ワックス、合成ワックス、被覆された合成ワックスおよび/またはこれらの混合物である、請求項18に従う方法。
【請求項20】
当該被覆された合成ワックスが、フッ素化化合物、好ましくはポリテトラフルオロエチレンで被覆されたものである、請求項19に従う方法。
【請求項21】
レオロジー添加剤が、1000〜20,000ダルトンの分子量を有するポリマー、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフテン酸、ラウリン酸の有機および/もしくは金属誘導体(ジブチルスズジラウレート(DBTL))、エトキシル化リン酸のアルコールもしくはアミン誘導体ならびに/またはこれらの誘導体である、請求項18に従う方法。
【請求項22】
当該可塑剤が、アジペート、シトレート、セバケート、エポキシ化大豆油、フタレートおよび/またはこれらの混合物から選択される、請求項18に従う方法。
【請求項23】
当該アルデヒド、ケトンおよび/またはアクリルの樹脂が70℃〜130℃の融点を有し、当該アルデヒドおよび/またはケトンの樹脂が800〜2000ダルトンの平均分子量を有し、他方において当該アクリル樹脂が800〜5000ダルトンの平均分子量を有する、請求項1に従う方法。
【請求項24】
当該アルデヒド、ケトンおよび/またはアクリルの樹脂が90℃〜110℃の融点を有し、当該アルデヒドおよび/またはケトンの樹脂が900〜1400ダルトンの平均分子量を有し、他方において当該アクリル樹脂が800〜3000ダルトンの平均分子量を有する、請求項23に従う方法。
【請求項25】
粒子組成物当たり、当該顔料が20〜80重量%の量において存在し、および当該樹脂が20〜80重量%の量において存在する、請求項1に従う方法。
【請求項26】
当該顔料が50〜70重量%の量において存在し、および当該樹脂が20〜80重量%の量において存在する、請求項25に従う方法。
【請求項27】
当該補強用鉱物フィラーおよび/または分散剤が、粒子組成物当たり0.01〜10重量%である量において含まれている、請求項1に従う方法。
【請求項28】
当該補強用フィラーが、天然もしくは沈降硫酸バリウム、天然もしくは被覆炭酸カルシウム、タルク、クロライト、マイカ、モンモリロナイト、天然ベントナイトおよび/もしくはベントナイト添加物、天然シリカ酸化物およびこれらの組み合わせ、焼成シリカならびに/またはこれらの混合物から選択され、かつ当該分散剤が、ソルビタンエステル、エポキシ化大豆油、分子量1000〜20,000ダルトンの分子量を有するアクリルポリマー、スルホン酸の金属誘導体、エトキシル化リン酸のアルコールおよび/もしくはアミン誘導体ならびに/またはこれらの混合物から選択される、請求項1に従う方法。
【請求項29】
段階a)における粒子組成物と、水、溶媒および/またはこれらの混合物との割合が、0.1〜5重量部の当該粒子組成物と、1重量部の当該少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物とである、請求項1に従う方法。
【請求項30】
当該割合が、0.4〜4重量部の当該粒子組成物と、1重量部の少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物とである、請求項29に従う方法。
【請求項31】
段階b)における粒子組成物と、水、溶媒および/またはこれらの混合物との割合が、0.1〜5重量部の当該粒子組成物と、1重量部の当該少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物とである、請求項1に従う方法。
【請求項32】
当該割合が、0.4〜4重量部の当該粒子組成物と、1重量部の当該少なくとも1の有機溶媒、水またはこれらの混合物とである、請求項31に従う方法。
【請求項33】
粒子組成物の粒子サイズが、約200〜3000ミクロンである、請求項1に従う方法。
【請求項34】
粒子組成物の粒子サイズが、約1000〜1900ミクロンである、請求項33に従う方法。
【請求項35】
段階a)における当該混合が、15〜80分、好ましくは25〜50分の時間で行われる、請求項1に従う方法。
【請求項36】
段階a)における当該混合が、90m/分〜770m/分、好ましくは260m/分〜430m/分の速度における連続撹拌によって行われる、請求項1に従う方法。
【請求項37】
段階a)における当該混合が、30〜70℃、好ましくは35〜65℃の温度において行われる、請求項1に従う方法。
【請求項38】
段階b)における当該混合が、1〜40分間、好ましくは5〜30分間の時間で行われる、請求項1に従う方法。
【請求項39】
段階b)における当該混合が、1〜30℃、好ましくは18〜25℃の温度において行われる、請求項1に従う方法。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか1項に従う方法によって得られることができる液体塗料。
【請求項41】
請求項1〜39のいずれか1項に従う方法によって得られることができるインク。
【請求項42】
請求項40に従う塗料で塗装された製造された物品。
【請求項43】
請求項41に従うインクで処理された製造された物品。
【請求項44】
請求項40に従う塗料を自動車、再仕上げ塗装、工業用コーティング、粉体コーティングまたは建築用コーティングの産業において使用する方法。
【請求項45】
請求項41に従うインクを包装、印刷、インクジェット印刷または出版の産業において使用する方法。

【公表番号】特表2010−523738(P2010−523738A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501379(P2010−501379)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053176
【国際公開番号】WO2008/119390
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(508006595)インクセル トレードマーク アンド パテンツ エスエージーエル (6)
【Fターム(参考)】