説明

樹脂ガラス

【課題】 ウエットプロセスを経ることなく簡単な工程で製造でき、且つIRカット機能およびUVカット機能を有する樹脂ガラスを提供すること。
【解決手段】 樹脂ガラス1は、透明樹脂ガラス基板10と、透明樹脂ガラス基板10の表面に、所定の屈折率を有する材質で形成された低屈折率薄膜と低屈折率薄膜の屈折率よりも高い屈折率を有する材質で形成された高屈折率薄膜とを交互にドライコーティングすることにより形成された積層体膜と、積層体膜の表面にドライコーティングされ、低屈折率薄膜を構成する材質または高屈折率薄膜を構成する材質と同じ材質で形成された保護膜と、を備える。また、外部から入射する可視光が前記積層体膜を透過し紫外光および赤外光が前記積層体膜で反射されるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられる樹脂ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両や家屋の窓開口部に取り付けられるガラスとして、紫外線を反射するUVカット機能を有するガラス、赤外線を反射するIRカット機能を有するガラス、耐候性や耐擦傷性が良好なガラス等、様々な機能を有するガラスが提案されている。また、特に車両に用いられるガラスとして、軽量化に資するために樹脂ガラスが提案されている。
【0003】
特許文献1は、650℃に加熱した無機ガラス上に3価コバルトのアセチルアセトナート、2価ニッケルのジプロピオニルメタン、3価鉄のアセチルアセトナートを吹き付けることにより、無機ガラス上にコバルト、ニッケル、鉄を含有するスピネル型酸化被膜が形成された熱線反射ガラスを開示する。特許文献1に記載された熱線反射ガラスによれば、無機ガラス上に形成された無機被膜により日射透過率を低下させることができる。
【0004】
特許文献2は、透明ポリカーボネート樹脂ガラス基板の一面に、アクリル樹脂層と、コロイダルシリカ含有オルガノシロキサン樹脂を含む組成物硬化層とを順次塗布することにより形成された樹脂ガラスを開示する。特許文献2に記載された樹脂ガラスによれば、耐候性および耐摩耗性を向上させることができる。
【0005】
特許文献3は、透明ポリカーボネート樹脂ガラス基板上にアルミニウム、ケイ素、チタンアルミニウム化合物、ケイ素化合物及びチタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の微粒子をプライマーとして付着し、その上にアルコキシシラン含有のハードコート層を形成してなる樹脂ガラスを開示する。特許文献3に記載された樹脂ガラスによれば、樹脂ガラス基板に有機系のプライマーを塗布することなく樹脂ガラス基板にハードコート層を被覆することができる。また、耐候性および耐擦傷性を向上させることができる。
【0006】
特許文献4は、2枚の透明板状体の間に回折格子が形成されたフィルムが挟み込まれたガラスを開示する。特許文献4に記載されたガラスによれば、夏季に外部から入射する赤外線を遮断し、冬季に外部から入射する赤外線を透過するように、2枚の透明板状態の屈折率が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−213630号公報
【特許文献2】特開2004−25726号公報
【特許文献3】特開2007−313804号公報
【特許文献4】特開2008−126631号公報
【発明の概要】
【0008】
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に記載された熱線反射ガラスは、製造過程でガラス基板を650℃に加熱するために樹脂ガラス基板を適用することができない。また、特許文献1に記載された熱線反射ガラスはUVカット機能を有さない。
【0009】
特許文献2に記載された樹脂ガラスは、樹脂ガラス基板上に有機系プライマー(アクリル樹脂)を塗布し、その後加熱して有機溶媒を揮発及び樹脂を硬化させ、次いで、ハードコート層(コロイダルシリカ含有オルガノシロキサン樹脂)を塗布し、その後加熱して有機溶媒を揮発及び樹脂を硬化させることにより製造される。すなわち、特許文献2の樹脂ガラスを製造するために、2コート2ベイクの塗装工程を要する。2コート2ベイクの塗装工程は大規模な設備を必要とするので、生産性、直行率等が悪化し、その結果、製造コストの高騰を招く。また、2度の液塗り(有機系プライマーの塗布、ハードコート層の塗布)はウエットプロセスで実施されるため、埃の混入を避けるために塗布環境の清浄度を極めて高いレベルに保つ必要がある。例えばクリーン度(1立方フィート当たりに存在する5μm以上の大きさの異物の数)が1000(クラス1000)以下、すなわち高クリーン度に保たれたクリーンルーム内で液塗り工程を実施しなければならない。したがって、高クリーン度のクリーンルームを建設するための設備投資費用および、クリーンルーム内を高クリーン度に保つためのランニングコストが高い。加えて、特許文献2に記載された樹脂ガラスはIRカット機能およびUVカット機能を有さない。
【0010】
特許文献3に記載された樹脂ガラスは、無機系のプライマーを用いているのでプライマーをガラス基板上にドライコーティングすることができる。そのためプライマーの塗布に関して大規模な設備を必要としない。しかし、ハードコート層の塗布工程はウエットプロセスであるので、異物の混入を避けるために高クラスのクリーンルーム内で実施しなければならず、依然として設備投資費用およびランニングコストが高い。また、この樹脂ガラスはUVカット機能およびIRカット機能を有さない。
【0011】
特許文献4に記載のガラスは2枚のガラス基板に回折格子を有するフィルムを挟み込むことにより形成されるので、フィルムを2枚のガラス基板に挟み込むときに皺が生じるなどの不具合が起こり得る。また回折格子を有するフィルムは高価である。また、特許文献4によれば、2枚のガラス基板は樹脂で形成されていても良いとの記載があるが、2枚のガラス基板を樹脂で形成した場合、例えばフィルム内に閉じ込められた紫外線によって樹脂ガラス基板が変質してガラスとしての機能をなさなくなるなどの不具合が懸念される。
【0012】
本発明は、車両に取り付けられる樹脂ガラスであって、樹脂ガラス基板を用い、ウエットプロセスを経ることなく簡単な工程で製造でき、且つIRカット機能およびUVカット機能を有する樹脂ガラスを提供することを目的とする。
【0013】
(課題を解決するための手段)
本発明は、車両用の樹脂ガラスであって、透明樹脂ガラス基板と、前記透明樹脂ガラス基板の表面に、所定の屈折率を有する材質で構成された高屈折率薄膜と前記高屈折率薄膜を構成する材質の屈折率よりも低い屈折率を有する材質で構成された低屈折率薄膜とを交互にドライコーティングすることにより形成された積層体膜と、前記積層体膜の表面にドライコーティングされ、前記高屈折率薄膜を構成する材質または前記低屈折率薄膜を構成する材質と同じ材質で構成された保護膜と、を備え、外部から入射する可視光が前記積層体膜を透過し紫外光および赤外光が前記積層体膜で反射されるように構成された樹脂ガラスを提供する。
【0014】
この場合、樹脂ガラスに外部(保護膜側)から入射する可視光が積層体膜を透過し、外部(保護膜側)から入射する紫外光および赤外光が積層体膜で反射されるように、高屈折率薄膜を構成する材質の屈折率および低屈折率薄膜を構成する材質の屈折率に応じて、高屈折率薄膜および低屈折率薄膜の厚さ、ならびに積層体膜の積層数が調整されているとよい。より好ましくは、380nm〜720nm程度の波長の光の透過率が90%以上であり、それ以外の波長の光の透過率が実質的に0%であるように、高屈折率薄膜を構成する材質の屈折率および低屈折率薄膜を構成する材質の屈折率に応じて、高屈折率薄膜および低屈折率薄膜の厚さ、ならびに積層体膜の積層数が調整されているとよい。
【0015】
本発明によれば、透明樹脂ガラス基板の表面上に積層体膜が形成され、積層体膜の表面上に保護膜が形成される。積層体膜は、透明樹脂ガラス基板の表面に、所定の屈折率を有する材質で構成された高屈折率薄膜と高屈折率薄膜を構成する材質の屈折率よりも低い屈折率を有する材質で構成された低屈折率薄膜とを交互にドライコーティングすることにより形成される。また、保護膜は高屈折率薄膜を構成する材質または低屈折率薄膜を構成する材質と同じ材質で形成され、積層体膜の表面にドライコーティングすることにより積層体膜表面に被覆される。すなわち本発明の樹脂ガラスは、ウエットプロセスを経ることなく形成される。したがって、簡単な工程を経て樹脂ガラスを製造することができる。
【0016】
また、本発明の樹脂ガラスは、積層体膜に外部から入射する可視光が透過され、紫外光および赤外光が積層体膜で反射されるように構成される。つまり、本発明の樹脂ガラスはIRカット機能およびUVカット機能を有する。
【0017】
このように、本発明によれば、樹脂ガラス基板を用い、ウエットプロセスを経ることなく簡単な工程で製造でき、且つIRカット機能およびUVカット機能を有する樹脂ガラスを提供することができる。
【0018】
前記高屈折率薄膜を構成する材質の絶対屈折率は1.7以上且つ2.7以下であり、前記低屈折率薄膜を構成する材質の絶対屈折率は1.3以上且つ1.7以下であるのがよい。また、前記高屈折率薄膜を構成する材質が、Ta、Nb、TiOから選択されるいずれか一つ又は複数であり、前記低屈折率薄膜を構成する材質が、SiOおよびAlのいずれか一方または両方であるのがよい。特に、製造コストを考慮すると、高屈折率薄膜を構成する材質がTiOであり、低屈折率薄膜を構成する材質がSiOであるのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る樹脂ガラスの断面図である。
【図2】積層体膜の拡大断面図である。
【図3】実施例に係る積層体膜を構成する各薄膜の材質および厚さを示す表である。
【図4】実施例に係る樹脂ガラスの透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る樹脂ガラスの断面図である。この樹脂ガラス1は、平板状の透明樹脂ガラス基板10と、積層体膜20と、保護膜30とを備える。積層体膜20は透明樹脂ガラス基板10の表面(図において上面)に形成され、保護膜30は積層体膜20の表面(図において上面)に形成される。
【0021】
透明樹脂ガラス基板10の材質は、透明樹脂であればどのような材質でも良い。例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、透明塩ビ樹脂、COC(環状オレフィンコポリマー)樹脂、ABS樹脂、PET樹脂等が、透明樹脂ガラス基板10の材質として使用され得る。
【0022】
図2は積層体膜20の拡大断面図である。図2に示すように積層体膜20は、高屈折率薄膜21と低屈折率薄膜22とを有する。積層体膜20は、高屈折率薄膜21と低屈折率薄膜22が交互に複数回積層されることにより形成される。高屈折率薄膜21は、所定の屈折率を有する材質で構成され、低屈折率薄膜22は、高屈折率薄膜21を構成する材質の屈折率よりも低い屈折率を有する材質で構成される。
【0023】
本実施形態において、高屈折率薄膜21を構成する材質は、絶対屈折率が1.7〜2.7の範囲内であり、且つドライコーティングにより成膜することができる材質であればよい。好ましくは、高屈折率薄膜21を構成する材質が、Ta、Nb、TiOから選択されるいずれか一つであるのがよい。より好ましくは、高屈折率薄膜21を構成する材質がTiOであるのがよい。
【0024】
また、本実施形態において、低屈折率薄膜22を構成する材質は、絶対屈折率が1.3〜1.7の範囲内であり、且つドライコーティングにより成膜することができる材質であればよい。好ましくは、低屈折率薄膜22を構成する材質が、SiOまたはAlO3あるのがよい。より好ましくは、低屈折率薄膜22を構成する材質がSiOであるのがよい。
【0025】
また、保護膜30側から積層体膜20に入射する可視光が透過され、且つ赤外光および紫外光が反射されるように、高屈折率薄膜21を構成する材質の屈折率(高屈折率薄膜21の屈折率)および低屈折率薄膜22を構成する材質の屈折率(低屈折率薄膜22の屈折率)に応じて、高屈折率薄膜21の膜厚、低屈折率薄膜22の膜厚、ならびに積層体膜20の積層数が調整される。この場合において、高屈折率薄膜21の膜厚および低屈折率薄膜22の膜厚は、200nm以下であるのがよい。
【0026】
積層体膜20は、透明樹脂ガラス基板10の表面に、高屈折率薄膜21と低屈折率薄膜22とを交互にドライコーティングすることにより形成される。ここで、ドライコーティングとは、PVD(Physical Vapor Deposition)又はCVD(Chemical Vapor Deposition)にて成膜することである。PVDとしては、例えばスパッタリング法、反応性スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。また、CVDとしては、例えばプラズマCVD法、熱CVD法等が挙げられる。
【0027】
保護膜30は、図1に示すように積層体膜20の表面に形成される。保護膜30を構成する材質は、高屈折率薄膜21を構成する材質または低屈折率薄膜22を構成する材質と同じ材質である。保護膜30は、積層体膜20の表面にドライコーティングされる。
【0028】
(実施例)
ポリカーボネート製の透明樹脂ガラス基板10の表面に、真空中でスパッタリングによりTiO薄膜(高屈折率薄膜21)を積層し、積層したTiO薄膜の表面に、真空中でスパッタリングによりSiO薄膜(低屈折率薄膜22)を積層した。TiO薄膜とSiO薄膜とを順次交互にスパッタリングにより積層し、50層(TiO薄膜25層、SiO薄膜25層)からなる積層体膜20を透明樹脂ガラス基板10上に形成した。図3は、積層体膜20を構成する各薄膜の材質と膜厚を示す表である。図3において、層順が大きい数字であるほど、透明樹脂ガラス基板10に近いことを表す。したがって、層順50のTiO薄膜(膜厚9.80nm)が積層体膜20の最下層を形成する薄膜であり、層順1のSiO薄膜(膜厚69.00nm)が積層体膜20の最表層を形成する薄膜である。図3からわかるように、各薄膜の厚さの範囲は9.8nm〜194.33nmである。
【0029】
TiO薄膜の絶対屈折率(TiOの絶対屈折率)は約2.72であり、SiO薄膜の絶対屈折率(SiOの絶対屈折率)は約1.45である。ちなみに、SiO薄膜に代えて低屈折率薄膜として利用できるAl薄膜の絶対屈折率(Alの絶対屈折率)は約1.65である。また、TiO薄膜に代えて高屈折率薄膜として利用できるTa薄膜の絶対屈折率(Taの絶対屈折率)は約2.16、同じく高屈折率薄膜として利用できるNb薄膜の絶対屈折率(Nbの絶対屈折率)は約2.33である。
【0030】
なお、スパッタリングによるTiO薄膜とSiO薄膜の成膜方法は周知であるので、その具体的な成膜条件や成膜装置の詳細な説明は省略する。
【0031】
次いで、積層体膜20の表面(最表層薄膜の表面)に、保護膜30としてのSiO薄膜を真空中でスパッタリングにより形成した。保護膜30の膜厚は200nmである。保護膜30の膜厚は、積層体膜20を構成する各薄膜の膜厚よりも厚い。以上の工程を経て、車両のサンルーフパネルに用いられる樹脂ガラスを製造した。
【0032】
図4は、上記のようにして製造した樹脂ガラス1の積層体膜20の分光特性を示すグラフである。図4において横軸が光の波長(nm)、縦軸が透過率(%)である。図4からわかるように、420nm〜650nmの波長の光、すなわち可視光の透過率は約95%である。したがって、本実施形態の樹脂ガラス1の積層体膜20は、可視光を実質的に透過する。また、420nm未満の波長の光、すなわち紫外光の透過率はほぼ0%である。さらに、650nm以上の波長の光、すなわち赤外光の透過率もほぼ0%である。したがって、本実施形態の樹脂ガラス1の積層体膜20は、紫外光および赤外光を実質的に反射する。換言すれば、本実施形態の樹脂ガラス1に外部(保護膜30側)から入射する可視光が積層体膜20を透過し、外部(保護膜30側)から入射する紫外光および赤外光が積層体膜20で反射されるように、TiO薄膜(高屈折率薄膜21)の屈折率およびSiO薄膜(低屈折率薄膜22)の屈折率に応じて、TiO薄膜およびSiO薄膜の厚さ、ならびに積層体膜20の積層数が調整される。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る樹脂ガラス1は、外部(保護膜30側)から入射する可視光が積層体膜20を透過し紫外光および赤外光が積層体膜20で反射されるように構成される。つまり、本実施形態に係る樹脂ガラス1は、UVカット機能およびIRカット機能を有する。このため、本実施形態に係る樹脂ガラス1を車両に取り付けた場合、IRカット機能によって車室内の温度上昇を防ぐことができる。その結果、車室内の温度を低下させるために用いられるエアコンの使用率を低下させることができ、ひいては車両の燃費およびCOの排出量を低減することができる。
【0034】
また、外部(保護膜30側)から入射する紫外光が積層体膜20で反射されるために、車室内の乗員への紫外線照射を妨げることができる。また、透明樹脂ガラス基板10に紫外光が入射しないので、紫外光の入射による透明樹脂ガラス基板10の劣化を防止することができる。
【0035】
また、積層体膜20および保護膜30が、いずれもドライコーティング法により成膜される。このため比較的低いクリーン度(例えばクラス10000程度)の環境下で樹脂ガラス1を製造することができる。つまり、高クリーン度のクリーンルームを建設する必要がない。よって、設備投資費用(初期投資費用)およびランニングコストを低減することができる。さらに、成膜時に溶剤を用いないので、VOC(揮発性有機化合物)の排出量を低減することができる。
【0036】
また、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂ガラス基板を用いて車両に取り付けられる樹脂ガラスを製造することにより、二酸化ケイ素を原料とするガラスを用いる場合と比較して、軽量化を図ることができる。このため、より燃費を向上させることができるとともに、COの排出量をより低減することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態(実施例)では、高屈折率薄膜21としてTiO薄膜を、低屈折率薄膜22としてSiO薄膜を使用した例を示した。しかし、可視光が積層体膜20を透過し且つ紫外光および赤外光が積層体膜20で反射されるように膜厚が調整でき、且つドライプロセスで成膜できるのであれば、どのような材質を使用してもよい。また、上記実施形態(実施例)では、複数の高屈折率薄膜21を全てTiO薄膜で構成し、複数の低屈折率薄膜22を全てSiO薄膜で構成した例を示した。しかし、高屈折率薄膜21の屈折率が低屈折率薄膜22の屈折率よりも高い限り、複数の高屈折率薄膜21を構成する材質や屈折率はそれぞれ異なっていても良く、また複数の低屈折率薄膜22を構成する材質や屈折率はそれぞれ異なっていても良い。また、樹脂ガラス基板10として、実施例に示したポリカーボネート樹脂の他に、様々な透明樹脂を使用することができる。また、真空中でのスパッタリングにより積層体膜20の表面に保護膜30を形成するだけでなく、透明樹脂ガラス基板の積層体膜20が形成されている面とは逆側の面にも保護膜30を形成してもよい。これにより、同一の装置で樹脂ガラスの車両内側面の保護膜を併せて形成することができる。また、本発明の樹脂ガラスは、車両のサンルーフパネル、クォータウインドウ、サイドウインド等、車両のあらゆる部位に取り付けることができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…樹脂ガラス、10…透明樹脂ガラス基板、20…積層体膜、21…低屈折率薄膜、22…高屈折率薄膜、30…保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の樹脂ガラスであって、
透明樹脂ガラス基板と、
前記透明樹脂ガラス基板の表面に、所定の屈折率を有する材質で構成された高屈折率薄膜と前記高屈折率薄膜を構成する材質の屈折率よりも低い屈折率を有する材質で構成された低屈折率薄膜とを交互にドライコーティングすることにより形成された積層体膜と、
前記積層体膜の表面にドライコーティングされ、前記高屈折率薄膜を構成する材質または前記低屈折率薄膜を構成する材質と同じ材質で構成された保護膜と、を備え、
外部から入射する可視光が前記積層体膜を透過し紫外光および赤外光が前記積層体膜で反射されるように構成された樹脂ガラス。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂ガラスにおいて、
前記高屈折率薄膜を構成する材質の絶対屈折率が1.7以上且つ2.7以下であり、
前記低屈折率薄膜を構成する材質の絶対屈折率が1.3以上且つ1.7以下である、樹脂ガラス。
【請求項3】
請求項2記載の樹脂ガラスにおいて、
前記高屈折率薄膜を構成する材質が、Ta、Nb、TiOから選択されるいずれか一つ又は複数であり、
前記低屈率薄膜を構成する材質が、SiOおよびAlのいずれか一方または両方である、樹脂ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92551(P2013−92551A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232722(P2011−232722)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】