樹脂ケースとその製造方法、および、樹脂ケースを用いた電子制御装置
【課題】信頼性を向上させた樹脂ケースを提供すること。
【解決手段】コネクタと回路基板が搭載された内部とを連通する貫通路を有する樹脂ケースにおいて、前記貫通路は、複数の分岐通路から構成され、前記分岐通路のうち少なくとも一つの分岐通路の先端部が樹脂で封止されており、前記樹脂封止の形状は、円錐形状であり、前記円錐形状の高さをH、前記円錐形状の底面の外径をLとするとH>1/2Lとする。
【解決手段】コネクタと回路基板が搭載された内部とを連通する貫通路を有する樹脂ケースにおいて、前記貫通路は、複数の分岐通路から構成され、前記分岐通路のうち少なくとも一つの分岐通路の先端部が樹脂で封止されており、前記樹脂封止の形状は、円錐形状であり、前記円錐形状の高さをH、前記円錐形状の底面の外径をLとするとH>1/2Lとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート部材をインサートした樹脂ケース及びその樹脂ケースを用いた電子制御装置に係り、特に、複数本の電気的接続用端子が樹脂で一体にインサート成形された複合一体樹脂成形品およびその成形品を用いた電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子化が進む中、複数本の外部との電気的接続用端子を樹脂でインサート成形した樹脂ケース本体において、ケース周囲の温度変化に伴うケース内部空気の内圧変化に対し、内圧緩和するためにケース内部と外部とをバイパスする連通した貫通孔が設けられている。
【0003】
また、外部側の貫通孔開口部は水の浸入を防ぐため、コネクタ内にパッキン等のシール部材で防水する処置が一般的に採用されている。
【0004】
更に、コネクタの方向も部品の取り付けスペースに対応するため、樹脂ケース本体に対して、垂直方向に曲げることが求められる。
【0005】
なお、樹脂ケース本体には本体内部に電子部品を搭載した回路基板の保護にゲルが用いられるため、このゲルが外部へ流れ出さないようにする必要があった。
【0006】
このような場合、特許文献1では、予めケースを成形する金型で3方向に開口した開口口を有する貫通孔を形成し、樹脂が冷却固化した後、金型より取り出し、成形とは別の工程となる二次加工作業で3方向に開口した開口口の一ヶ所に対し、加熱した治具を用いて開口口近傍の樹脂を溶かし、台形もしくはドーム型形状で開口口を塞いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−55829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、開口穴を特許文献1に記載のような台形もしくはドーム型形状にすると、穴奥方向への押し込みが過大であり、封止に用いられる溶融樹脂のほとんどが穴内部の奥方向に流れ込んでしまう。更に穴内部の界面と台形もしくはドーム型形状の表面との距離が近接となり、外部からの浸水に対し、封止不足が生じやすくなる問題があった。
【0009】
本発明の目的は、信頼性を向上させた樹脂ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂ケースは、コネクタと回路基板が搭載された内部とを連通する貫通路を有する樹脂ケースにおいて、前記貫通路は、複数の分岐通路から構成され、前記分岐通路のうち少なくとも一つの分岐通路の先端部が樹脂で封止されており、前記樹脂封止の形状は、円錐形状であり、前記円錐形状の高さをH、前記円錐形状の底面の外径をLとするとH>1/2Lとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信頼性を向上させた樹脂ケースを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例の樹脂ケースS−S断面図。
【図2】第1実施例の樹脂ケースの平面図。
【図3】第1実施例の樹脂ケースの上面図。
【図4】第1実施例の樹脂ケース封止前の断面図。
【図5】第1実施例の樹脂ケース封止前の部分拡大断面図。
【図6】第1実施例の樹脂ケース封止時の部分拡大断面図。
【図7】第1実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図8】第1実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図9】従来の樹脂ケース封止時の部分拡大断面図。
【図10】従来の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図11】従来の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図12】第2実施例の樹脂ケース封止時の部分拡大断面図。
【図13】第2実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図14】第2実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図15】第3実施例の樹脂ケース封止時の部分拡大断面図。
【図16】第3実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図17】第3実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図18】第1実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面写真。
【図19】樹脂ケース封止後の部分拡大断面写真。
【図20】第2実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を用いて本発明の望ましい実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明にかかる第1実施例として示した樹脂ケース1の要所断面図S−Sである。
【0015】
ここで樹脂ケース1は、以下図2で示すような構成で作られている。
【0016】
具体的には、樹脂ケース1は外部と電気的接続を行うために、複数の端子5と樹脂ケース1のセンシング機能を組み付ける端子8、また樹脂ケース1を車両に取り付け固定する部位として設けられた金属製のベース6をインサート部材として、樹脂9で一体的に包みこんだインサート成形品である。図3にQ方向から見た樹脂ケース1の外観を示す。
【0017】
更に、樹脂ケース1は、組み込み工程でケース枠7の内部に回路基板を搭載し、センシング機能を付加した電子制御装置として用いられる。ここで電子制御装置は、前記回路基板の保護及び機密性を持たせるために、ケース枠7の裏側と表側に他部品を接着剤で組み付けている。この接着剤を硬化させるときに、加熱処理が伴い、密閉したケース枠7内の空気が膨張してしまうため、膨張した空気を外部へ放出する貫通孔2を設ける必要があった。尚、この時外部からの浸水も防止する必要性があるため、車両へ組み込んだ際、防水構造が保たれる、コネクタ3内側へ設置する制約が生じていた。
【0018】
そこで樹脂ケース1の構造及び製法を詳細に示すため、図面を用いて以下に説明する。
【0019】
樹脂ケース1はインサート部材を金型にセットし、樹脂で一体的にインサート成形した後、金型から取り出す。その時の樹脂ケース1の部分断面図を図4に示す。
【0020】
樹脂ケース1は図2の回路基板を搭載する面11に対して、図4に示す略垂直面に向く外部とのコネクタ3を有し、更に前記コネクタ3内と回路基板を搭載する内部とを連通する貫通孔2を有し、前記貫通孔2は3方向に屈曲した通路であり、前記通路は回路基板搭載面11に略垂直方向に形成する樹脂ケース内側の通路2aと、コネクタ内にコネクタの向きと略平行に形成する通路2bと、回路基板搭載面に略平行方向で前記2ヶ所の通路をバイパスするバイパス通路2cからなり、前記バイパス通路2cの樹脂ケース1外部側の開口口2dにおいて、外側開口口2dの付根に、図5で示すようにバイパス通路2cと平行で外側へ突起した煙突状の樹脂帯9aを一体的に有している。この時、前記樹脂帯9aの外形と板厚を、それぞれLとTとする。
【0021】
この断面図からも判るように、開口口2dは外面に開口しているため、上記で記述したように、外部からの浸水防止を図るため、開口口2dの封止を施さなければ成らない。
【0022】
そこで開口口2dにおける、従来の浸水防止製法を以下に説明する。
【0023】
初めに、図5で示すように煙突状の樹脂帯9a部位に熱を加え、樹脂帯9a部位を軟らかく溶融させる。次に図9で示すような先端がドーム型110に加工された封止治具10bを用いて、樹脂帯9aの上方向からバイパス通路2cの奥側へ向けて、軟らかく溶融している樹脂帯9aの上部から付根方向に封止治具10bで押し込む。
【0024】
この時、軟らかく溶融している樹脂帯9aは、封止治具10bのドーム型110形状に倣い樹脂が流動する。流動する前の樹脂帯9aの開口口2d形状から、初めに封止治具10bのドーム型110形状と接触する樹脂帯9a上部においては、樹脂の流動は樹脂流動111のようにドーム型110形状のR面に沿って、開口口2dの中央に集められる、しかしドーム型中央部には流動した樹脂を溜めるスペースが少ないために、中央に集められて溶融樹脂は、行き場所が無くなり、バイパス通路2c内部奥方向に樹脂流動112し始める。また、ドーム型110形状の中央部は比較的平面に近い形状をしているため、封止治具10bにより中央へ樹脂を寄せる力よりも、下面へ押し付ける力の方が遥かに大きく作用する。
【0025】
封止治具10bの先端が樹脂帯9aの付根に到達するまで、上記樹脂流動111,112が順次働き、最終段階での樹脂帯9aの付根部位Uにおける樹脂の流動は、樹脂流動113のような動きと成る。補足として樹脂流動113はドーム型110形状と接触すると同時に、前記樹脂流動112に引き寄せられ、バイパス通路2c内部奥方向へカール状に流動させられている。
【0026】
この時、バイパス通路2cの内部及び内部周囲の樹脂9は元々常温であるため、カール状に流動した樹脂は、瞬時に冷やされ、バイパス通路2cの内部界面Eと融合することなく、界面Eはカール状に流動した樹脂の間に介在する。
【0027】
一定の冷却時間を経た後、封止治具10bを取り外し、開口口2dを封止したドーム型封止部位4dは、図10で示す断面形状と成る。
【0028】
ここで本発明の課題である、前記界面Eとドーム型封止部位4dの外部表面との距離が近接であるほど、バイパス通路2cと外部からの封止が不十分であり、使用環境で繰り返され受ける熱履歴により、亀裂の進行と同じように界面Eが外部表面へと進行する。界面Eが外部表面までに達すると、外部からの浸水防止を図ることが困難と成る。
【0029】
従来の製法により封止したドーム型封止部位4dにおける、樹脂帯9aの外形L及び板厚T、ドーム型封止高さH2、界面Eとドーム型封止部位4dの外部表面との距離Gの相関関係は、図11で示す比率となっていた。
【0030】
ドーム型封止高さH2 < 樹脂帯9aの外形L/2・・・・・・・・・・・・・21
外部表面との距離G < 樹脂帯9aの板厚T・・・・・・・・・・・・・・・・22
図19に実製品によるドーム型封止部位4dの断面写真を示す。この断面写真からも判るように、樹脂帯の樹脂はバイパス通路内部に多く流れ込み、更にバイパス通路内部の界面がドーム型封止部位上面に接近していることが確認される。また上記関係式が成り立っていることも確認できる。
【0031】
上記課題を解決するため、本発明の第1の実施例として、図6に示すように、封止する封止治具10aの先端形状を断面が逆V字型100形状から成る円錐形状とし、故に前記封止治具10aにより封止した封止部位4aの形状が図8に示すような比率に予め設定した。
【0032】
円錐形状封止高さH1 ≧ 樹脂帯9aの外形L/2・・・・・・・・・・・・・20
ここで本実施例1の製法及び樹脂の流動を以下に説明する。
【0033】
初めに、図5で示すように煙突状の樹脂帯9a部位に熱を加え、樹脂帯9a部位を軟らかく溶融させる。次に図6で示すような先端が逆V字型100に加工された封止治具10aを用いて、樹脂帯9aの上方向からバイパス通路2cの奥側へ向けて、軟らかく溶融している樹脂帯9aの上部から付根方向に封止治具10aで押し込む。
【0034】
この時、軟らかく溶融している樹脂帯9aは、封止治具10aの逆V字型100状に倣い樹脂が流動する。流動する前の樹脂帯9aの開口口2d形状から、初めに封止治具10aの逆V字型100形状と接触する樹脂帯9a上部においては、樹脂の流動は樹脂流動101のように逆V字型100形状の傾斜面に沿って、開口口2dの中央に集められる。
【0035】
ここで本実施例1の特徴として、封止治具10aの中央部を逆V字型100形状から成る円錐形状とし、更に円錐形状封止高さH1≧樹脂帯9aの外形L/2に成るよう設定しているため、封止治具10aの中央部は深い凹部位を有している。これにより前記樹脂流動101は開口口2d中央部で合流した後、前記凹部位の方向へ流れ込む。この流れ込みにより樹脂帯9aの付根部位Uの樹脂流動103においても引き寄せられる傾向が働き、封止治具10aの傾斜面の影響で若干下向きではあるが、バイパス通路2cの中央へと樹脂流動103を示す。前記凹部位が流動樹脂で満たされた後、余剰樹脂はバイパス通路2cの内部下方向へ樹脂流動102を行う。
【0036】
尚、前記凹部位により前記余剰樹脂の量は、先に記述した従来製法の図9で示したようなバイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減する。これは封止治具10a中央の平面面積(下方向へ押し込み力が作用する働き)がほとんど無く、傾斜面の面積がほぼ全体を占めているため、樹脂を中央へ寄せる力が大きく働き、バイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減したと考えられる。
【0037】
また、前記傾斜面により中央へ寄せた樹脂に圧縮力を加えることができるため、封止した樹脂の気密性も向上させる働きが発生する。
【0038】
一定の冷却時間を経た後、封止治具10aを取り外し、開口口2dを封止した逆V字型100形状から成る円錐形状の封止部位4aは、図10で示す断面形状と成る。
【0039】
図18に実製品によるV字型100形状から成る円錐形状の封止部位4aの断面写真を示す。この断面写真からも判断できるように、本発明の課題である、バイパス通路2cの界面と封止部位4aの外部表面との距離が従来品図19と比較して、十分確保されていることが判る。これによりバイパス通路2cと外部からの封止の高信頼性が図れ、使用環境で繰り返され受ける熱履歴からも回避可能となる。よって外部からの浸水防止を図ることができる。
【0040】
本発明に撚れば、外部と電気的接続を行うための複数の端子を樹脂で固定している樹脂ケースと、前記樹脂ケース内部に搭載した回路基板と、前記回路基板を覆ったゲルを有する電子制御装置において、外部からの浸水に対し、高信頼性のある封止が可能であり、防水型の樹脂ケース及び防水型の電子制御装置を提供できる。
【実施例2】
【0041】
次に、本発明の一実施例である第2の実施例について説明する。
【0042】
図12に示すように、封止する封止治具10cの先端形状を断面が逆ラッパ型120形状から成る末広がりの円錐形状とし、故に前記封止治具10cにより封止した封止部位4cの形状が図14に示すような比率に予め設定した。
【0043】
円錐形状封止高さH3 ≧ 樹脂帯9aの外形L/2・・・・・・・・・・・・・23
ここで本実施例における製法及び樹脂の流動を以下に説明する。
【0044】
初めに、図5で示すように煙突状の樹脂帯9a部位に熱を加え、樹脂帯9a部位を軟らかく溶融させる。次に図12で示すような先端が逆ラッパ型120に加工された封止治具10cを用いて、樹脂帯9aの上方向からバイパス通路2cの奥側へ向けて、軟らかく溶融している樹脂帯9aの上部から付根方向に封止治具10cで押し込む。
【0045】
この時、軟らかく溶融している樹脂帯9aは、封止治具10cの逆ラッパ型120状に倣い樹脂が流動する。流動する前の樹脂帯9aの開口口2d形状から、初めに封止治具10cの逆ラッパ型120形状と接触する樹脂帯9a上部においては、樹脂の流動は樹脂流動121のように逆ラッパ型120形状の傾斜面に沿って、開口口2dの中央に集められる。
【0046】
ここで本実施例2の特徴として、封止治具10cの中央部を逆ラッパ型120形状から成る末広がりの円錐形状とし、更に円錐形状封止高さH3≧樹脂帯9aの外形L/2に成るよう設定しているため、封止治具10cの中央部は深い凹部位を有している。これにより前記樹脂流動121は開口口2d中央部で合流した後、前記凹部位の方向へ流れ込む。この流れ込みにより樹脂帯9aの付根部位Uの樹脂流動123においても引き寄せられる傾向が働き、封止治具10cの傾斜面の影響で若干下向きではあるが、バイパス通路2cの中央へと樹脂流動123を示す。前記凹部位が流動樹脂で満たされた後、余剰樹脂はバイパス通路2cの内部下方向へ樹脂流動122を行う。
【0047】
尚、前記凹部位により前記余剰樹脂の量は、先に記述した従来製法の図9で示したようなバイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減する。これは封止治具10c中央の平面面積(下方向へ押し込み力が作用する働き)がほとんど無く、逆ラッパ型傾斜面の面積がほぼ全体を占めているため、樹脂を中央へ寄せる力が大きく働き、バイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減したと考えられる。
【0048】
また、前記傾斜面により中央へ寄せた樹脂に圧縮力を加えることができるため、封止した樹脂の気密性も向上させる働きが発生する。
【0049】
一定の冷却時間を経た後、封止治具10cを取り外し、開口口2dを封止した逆ラッパ型120形状から成る末広がりの円錐形状の封止部位4cは、図13で示す断面形状と成る。
【0050】
図20に実製品による逆ラッパ型120形状から成る末広がりの円錐形状の封止部位4cの断面写真を示す。この断面写真からも判断できるように、本発明の課題である、バイパス通路2cの界面と封止部位4aの外部表面との距離が従来品図19と比較して、十分確保されていることが判る。これによりバイパス通路2cと外部からの封止の高信頼性が図れ、使用環境で繰り返され受ける熱履歴からも回避可能となる。よって外部からの浸水防止を図ることができる。
【実施例3】
【0051】
従来技術の課題を解決するため、本発明の第3の実施例として、図15に示すように、封止する封止治具10dの先端形状を大きさの異なるドーム型を縦に2段重ねた略円錐形状とし、故に前記封止治具10dにより封止した封止部位4dの形状が図17に示すような比率に予め設定した。
【0052】
円錐形状封止高さH4 ≧ 樹脂帯9aの外形L/2・・・・・・・・・・・・・24
ここで本実施例2の製法及び樹脂の流動を以下に説明する。
【0053】
初めに、図5で示すように煙突状の樹脂帯9a部位に熱を加え、樹脂帯9a部位を軟らかく溶融させる。次に図15で示すような先端が大きさの異なるドーム型を縦に2段重ねた、2段ドーム型130に加工された封止治具10dを用いて、樹脂帯9aの上方向からバイパス通路2cの奥側へ向けて、軟らかく溶融している樹脂帯9aの上部から付根方向に封止治具10dで押し込む。
【0054】
この時、軟らかく溶融している樹脂帯9aは、封止治具10dの2段ドーム型状に倣い樹脂が流動する。流動する前の樹脂帯9aの開口口2d形状から、初めに封止治具10dの2段ドーム型130形状の大径ドームと接触する樹脂帯9a上部においては、樹脂の流動は樹脂流動131のように2段ドーム型130形状の大径ドーム傾斜面に沿って、開口口2dの中央に集められる。
【0055】
ここで本実施例の特徴として、封止治具10dの中央部を2段ドーム型130形状から略円錐形状とし、更に略円錐形状封止高さH4≧樹脂帯9aの外形L/2に成るよう設定しているため、封止治具10dの中央部は深い凹部位を有している。これにより前記樹脂流動131は開口口2d中央部で合流した後、前記凹部位の方向へ流れ込む。この流れ込みにより樹脂帯9aの付根部位Uの樹脂流動133においても引き寄せられる傾向が働き、封止治具10dの傾斜面の影響で若干下向きではあるが、バイパス通路2cの中央へと樹脂流動133を示す。前記凹部位が流動樹脂で満たされた後、余剰樹脂はバイパス通路2cの内部下方向へ樹脂流動132を行う。
【0056】
尚、前記凹部位により前記余剰樹脂の量は、先に記述した従来製法の図9で示したようなバイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減する。これは封止治具10d中央の平面面積(下方向へ押し込み力が作用する働き)がほとんど無く、2段ドーム型傾斜面の面積がほぼ全体を占めているため、樹脂を中央へ寄せる力が大きく働き、バイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減したと考えられる。
【0057】
また、前記傾斜面により中央へ寄せた樹脂に圧縮力を加えることができるため、封止した樹脂の気密性も向上させる働きが発生する。
【0058】
一定の冷却時間を経た後、封止治具10dを取り外し、開口口2dを封止した2段ドーム型130形状から略円錐形状の封止部位4dは、図16で示す断面形状と成る。
【0059】
これにより本発明の課題である、バイパス通路2cの界面と封止部位4aの外部表面との距離が十分確保されることが判る。よってバイパス通路2cと外部からの封止の高信頼性が図れ、使用環境で繰り返され受ける熱履歴からも回避可能となる。よって外部からの浸水防止を図ることができる。
【0060】
以上、実施例1〜3にかかる何れかの本発明に撚れば、外部と電気的接続を行うための複数の端子を樹脂で固定している樹脂ケースと、前記樹脂ケース内部に搭載した回路基板と、前記回路基板を覆ったゲルを有する電子制御装置において、外部からの浸水に対し、高信頼性のある封止が可能であり、防水型の樹脂ケース及び防水型の電子制御装置を提供できる。
【0061】
なお、本発明は、自動車分野における流入空気量を測定するエアフローセンサや空気量調整するスロットルポジションセンサ、アクセル開度を調整するアクセル開度センサ、これらセンサを一連に制御構成するための各種センサなど防水型の樹脂ケースを用いる各種センシングセンサに適用可能である。また本発明の課題を解決する物であれば、上記の列記した製品に限定されること無く適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 樹脂ケース
2 貫通孔
2a,2b,2c 通路
2d 開口口
3 コネクタ
4a,4b,4c,4d 封止部位
5,8 端子
6 ベース
7 ケース枠
9 樹脂
9a 樹脂帯
10a,10b,10c,10d 封止治具
20,21,22,23 関係式
100 逆V字型
101,102,103,111,112,113,121,122,123,131,132,133 樹脂流動
110 ドーム型
120 逆ラッパ型
130 2段ドーム型
E 界面
G 距離
H1,H2,H3,H4 封止高さ
L 樹脂帯外径
P,U 部位
Q 方向
S 断面
T 板厚
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート部材をインサートした樹脂ケース及びその樹脂ケースを用いた電子制御装置に係り、特に、複数本の電気的接続用端子が樹脂で一体にインサート成形された複合一体樹脂成形品およびその成形品を用いた電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子化が進む中、複数本の外部との電気的接続用端子を樹脂でインサート成形した樹脂ケース本体において、ケース周囲の温度変化に伴うケース内部空気の内圧変化に対し、内圧緩和するためにケース内部と外部とをバイパスする連通した貫通孔が設けられている。
【0003】
また、外部側の貫通孔開口部は水の浸入を防ぐため、コネクタ内にパッキン等のシール部材で防水する処置が一般的に採用されている。
【0004】
更に、コネクタの方向も部品の取り付けスペースに対応するため、樹脂ケース本体に対して、垂直方向に曲げることが求められる。
【0005】
なお、樹脂ケース本体には本体内部に電子部品を搭載した回路基板の保護にゲルが用いられるため、このゲルが外部へ流れ出さないようにする必要があった。
【0006】
このような場合、特許文献1では、予めケースを成形する金型で3方向に開口した開口口を有する貫通孔を形成し、樹脂が冷却固化した後、金型より取り出し、成形とは別の工程となる二次加工作業で3方向に開口した開口口の一ヶ所に対し、加熱した治具を用いて開口口近傍の樹脂を溶かし、台形もしくはドーム型形状で開口口を塞いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−55829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、開口穴を特許文献1に記載のような台形もしくはドーム型形状にすると、穴奥方向への押し込みが過大であり、封止に用いられる溶融樹脂のほとんどが穴内部の奥方向に流れ込んでしまう。更に穴内部の界面と台形もしくはドーム型形状の表面との距離が近接となり、外部からの浸水に対し、封止不足が生じやすくなる問題があった。
【0009】
本発明の目的は、信頼性を向上させた樹脂ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂ケースは、コネクタと回路基板が搭載された内部とを連通する貫通路を有する樹脂ケースにおいて、前記貫通路は、複数の分岐通路から構成され、前記分岐通路のうち少なくとも一つの分岐通路の先端部が樹脂で封止されており、前記樹脂封止の形状は、円錐形状であり、前記円錐形状の高さをH、前記円錐形状の底面の外径をLとするとH>1/2Lとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信頼性を向上させた樹脂ケースを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例の樹脂ケースS−S断面図。
【図2】第1実施例の樹脂ケースの平面図。
【図3】第1実施例の樹脂ケースの上面図。
【図4】第1実施例の樹脂ケース封止前の断面図。
【図5】第1実施例の樹脂ケース封止前の部分拡大断面図。
【図6】第1実施例の樹脂ケース封止時の部分拡大断面図。
【図7】第1実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図8】第1実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図9】従来の樹脂ケース封止時の部分拡大断面図。
【図10】従来の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図11】従来の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図12】第2実施例の樹脂ケース封止時の部分拡大断面図。
【図13】第2実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図14】第2実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図15】第3実施例の樹脂ケース封止時の部分拡大断面図。
【図16】第3実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図17】第3実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面図。
【図18】第1実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面写真。
【図19】樹脂ケース封止後の部分拡大断面写真。
【図20】第2実施例の樹脂ケース封止後の部分拡大断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を用いて本発明の望ましい実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明にかかる第1実施例として示した樹脂ケース1の要所断面図S−Sである。
【0015】
ここで樹脂ケース1は、以下図2で示すような構成で作られている。
【0016】
具体的には、樹脂ケース1は外部と電気的接続を行うために、複数の端子5と樹脂ケース1のセンシング機能を組み付ける端子8、また樹脂ケース1を車両に取り付け固定する部位として設けられた金属製のベース6をインサート部材として、樹脂9で一体的に包みこんだインサート成形品である。図3にQ方向から見た樹脂ケース1の外観を示す。
【0017】
更に、樹脂ケース1は、組み込み工程でケース枠7の内部に回路基板を搭載し、センシング機能を付加した電子制御装置として用いられる。ここで電子制御装置は、前記回路基板の保護及び機密性を持たせるために、ケース枠7の裏側と表側に他部品を接着剤で組み付けている。この接着剤を硬化させるときに、加熱処理が伴い、密閉したケース枠7内の空気が膨張してしまうため、膨張した空気を外部へ放出する貫通孔2を設ける必要があった。尚、この時外部からの浸水も防止する必要性があるため、車両へ組み込んだ際、防水構造が保たれる、コネクタ3内側へ設置する制約が生じていた。
【0018】
そこで樹脂ケース1の構造及び製法を詳細に示すため、図面を用いて以下に説明する。
【0019】
樹脂ケース1はインサート部材を金型にセットし、樹脂で一体的にインサート成形した後、金型から取り出す。その時の樹脂ケース1の部分断面図を図4に示す。
【0020】
樹脂ケース1は図2の回路基板を搭載する面11に対して、図4に示す略垂直面に向く外部とのコネクタ3を有し、更に前記コネクタ3内と回路基板を搭載する内部とを連通する貫通孔2を有し、前記貫通孔2は3方向に屈曲した通路であり、前記通路は回路基板搭載面11に略垂直方向に形成する樹脂ケース内側の通路2aと、コネクタ内にコネクタの向きと略平行に形成する通路2bと、回路基板搭載面に略平行方向で前記2ヶ所の通路をバイパスするバイパス通路2cからなり、前記バイパス通路2cの樹脂ケース1外部側の開口口2dにおいて、外側開口口2dの付根に、図5で示すようにバイパス通路2cと平行で外側へ突起した煙突状の樹脂帯9aを一体的に有している。この時、前記樹脂帯9aの外形と板厚を、それぞれLとTとする。
【0021】
この断面図からも判るように、開口口2dは外面に開口しているため、上記で記述したように、外部からの浸水防止を図るため、開口口2dの封止を施さなければ成らない。
【0022】
そこで開口口2dにおける、従来の浸水防止製法を以下に説明する。
【0023】
初めに、図5で示すように煙突状の樹脂帯9a部位に熱を加え、樹脂帯9a部位を軟らかく溶融させる。次に図9で示すような先端がドーム型110に加工された封止治具10bを用いて、樹脂帯9aの上方向からバイパス通路2cの奥側へ向けて、軟らかく溶融している樹脂帯9aの上部から付根方向に封止治具10bで押し込む。
【0024】
この時、軟らかく溶融している樹脂帯9aは、封止治具10bのドーム型110形状に倣い樹脂が流動する。流動する前の樹脂帯9aの開口口2d形状から、初めに封止治具10bのドーム型110形状と接触する樹脂帯9a上部においては、樹脂の流動は樹脂流動111のようにドーム型110形状のR面に沿って、開口口2dの中央に集められる、しかしドーム型中央部には流動した樹脂を溜めるスペースが少ないために、中央に集められて溶融樹脂は、行き場所が無くなり、バイパス通路2c内部奥方向に樹脂流動112し始める。また、ドーム型110形状の中央部は比較的平面に近い形状をしているため、封止治具10bにより中央へ樹脂を寄せる力よりも、下面へ押し付ける力の方が遥かに大きく作用する。
【0025】
封止治具10bの先端が樹脂帯9aの付根に到達するまで、上記樹脂流動111,112が順次働き、最終段階での樹脂帯9aの付根部位Uにおける樹脂の流動は、樹脂流動113のような動きと成る。補足として樹脂流動113はドーム型110形状と接触すると同時に、前記樹脂流動112に引き寄せられ、バイパス通路2c内部奥方向へカール状に流動させられている。
【0026】
この時、バイパス通路2cの内部及び内部周囲の樹脂9は元々常温であるため、カール状に流動した樹脂は、瞬時に冷やされ、バイパス通路2cの内部界面Eと融合することなく、界面Eはカール状に流動した樹脂の間に介在する。
【0027】
一定の冷却時間を経た後、封止治具10bを取り外し、開口口2dを封止したドーム型封止部位4dは、図10で示す断面形状と成る。
【0028】
ここで本発明の課題である、前記界面Eとドーム型封止部位4dの外部表面との距離が近接であるほど、バイパス通路2cと外部からの封止が不十分であり、使用環境で繰り返され受ける熱履歴により、亀裂の進行と同じように界面Eが外部表面へと進行する。界面Eが外部表面までに達すると、外部からの浸水防止を図ることが困難と成る。
【0029】
従来の製法により封止したドーム型封止部位4dにおける、樹脂帯9aの外形L及び板厚T、ドーム型封止高さH2、界面Eとドーム型封止部位4dの外部表面との距離Gの相関関係は、図11で示す比率となっていた。
【0030】
ドーム型封止高さH2 < 樹脂帯9aの外形L/2・・・・・・・・・・・・・21
外部表面との距離G < 樹脂帯9aの板厚T・・・・・・・・・・・・・・・・22
図19に実製品によるドーム型封止部位4dの断面写真を示す。この断面写真からも判るように、樹脂帯の樹脂はバイパス通路内部に多く流れ込み、更にバイパス通路内部の界面がドーム型封止部位上面に接近していることが確認される。また上記関係式が成り立っていることも確認できる。
【0031】
上記課題を解決するため、本発明の第1の実施例として、図6に示すように、封止する封止治具10aの先端形状を断面が逆V字型100形状から成る円錐形状とし、故に前記封止治具10aにより封止した封止部位4aの形状が図8に示すような比率に予め設定した。
【0032】
円錐形状封止高さH1 ≧ 樹脂帯9aの外形L/2・・・・・・・・・・・・・20
ここで本実施例1の製法及び樹脂の流動を以下に説明する。
【0033】
初めに、図5で示すように煙突状の樹脂帯9a部位に熱を加え、樹脂帯9a部位を軟らかく溶融させる。次に図6で示すような先端が逆V字型100に加工された封止治具10aを用いて、樹脂帯9aの上方向からバイパス通路2cの奥側へ向けて、軟らかく溶融している樹脂帯9aの上部から付根方向に封止治具10aで押し込む。
【0034】
この時、軟らかく溶融している樹脂帯9aは、封止治具10aの逆V字型100状に倣い樹脂が流動する。流動する前の樹脂帯9aの開口口2d形状から、初めに封止治具10aの逆V字型100形状と接触する樹脂帯9a上部においては、樹脂の流動は樹脂流動101のように逆V字型100形状の傾斜面に沿って、開口口2dの中央に集められる。
【0035】
ここで本実施例1の特徴として、封止治具10aの中央部を逆V字型100形状から成る円錐形状とし、更に円錐形状封止高さH1≧樹脂帯9aの外形L/2に成るよう設定しているため、封止治具10aの中央部は深い凹部位を有している。これにより前記樹脂流動101は開口口2d中央部で合流した後、前記凹部位の方向へ流れ込む。この流れ込みにより樹脂帯9aの付根部位Uの樹脂流動103においても引き寄せられる傾向が働き、封止治具10aの傾斜面の影響で若干下向きではあるが、バイパス通路2cの中央へと樹脂流動103を示す。前記凹部位が流動樹脂で満たされた後、余剰樹脂はバイパス通路2cの内部下方向へ樹脂流動102を行う。
【0036】
尚、前記凹部位により前記余剰樹脂の量は、先に記述した従来製法の図9で示したようなバイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減する。これは封止治具10a中央の平面面積(下方向へ押し込み力が作用する働き)がほとんど無く、傾斜面の面積がほぼ全体を占めているため、樹脂を中央へ寄せる力が大きく働き、バイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減したと考えられる。
【0037】
また、前記傾斜面により中央へ寄せた樹脂に圧縮力を加えることができるため、封止した樹脂の気密性も向上させる働きが発生する。
【0038】
一定の冷却時間を経た後、封止治具10aを取り外し、開口口2dを封止した逆V字型100形状から成る円錐形状の封止部位4aは、図10で示す断面形状と成る。
【0039】
図18に実製品によるV字型100形状から成る円錐形状の封止部位4aの断面写真を示す。この断面写真からも判断できるように、本発明の課題である、バイパス通路2cの界面と封止部位4aの外部表面との距離が従来品図19と比較して、十分確保されていることが判る。これによりバイパス通路2cと外部からの封止の高信頼性が図れ、使用環境で繰り返され受ける熱履歴からも回避可能となる。よって外部からの浸水防止を図ることができる。
【0040】
本発明に撚れば、外部と電気的接続を行うための複数の端子を樹脂で固定している樹脂ケースと、前記樹脂ケース内部に搭載した回路基板と、前記回路基板を覆ったゲルを有する電子制御装置において、外部からの浸水に対し、高信頼性のある封止が可能であり、防水型の樹脂ケース及び防水型の電子制御装置を提供できる。
【実施例2】
【0041】
次に、本発明の一実施例である第2の実施例について説明する。
【0042】
図12に示すように、封止する封止治具10cの先端形状を断面が逆ラッパ型120形状から成る末広がりの円錐形状とし、故に前記封止治具10cにより封止した封止部位4cの形状が図14に示すような比率に予め設定した。
【0043】
円錐形状封止高さH3 ≧ 樹脂帯9aの外形L/2・・・・・・・・・・・・・23
ここで本実施例における製法及び樹脂の流動を以下に説明する。
【0044】
初めに、図5で示すように煙突状の樹脂帯9a部位に熱を加え、樹脂帯9a部位を軟らかく溶融させる。次に図12で示すような先端が逆ラッパ型120に加工された封止治具10cを用いて、樹脂帯9aの上方向からバイパス通路2cの奥側へ向けて、軟らかく溶融している樹脂帯9aの上部から付根方向に封止治具10cで押し込む。
【0045】
この時、軟らかく溶融している樹脂帯9aは、封止治具10cの逆ラッパ型120状に倣い樹脂が流動する。流動する前の樹脂帯9aの開口口2d形状から、初めに封止治具10cの逆ラッパ型120形状と接触する樹脂帯9a上部においては、樹脂の流動は樹脂流動121のように逆ラッパ型120形状の傾斜面に沿って、開口口2dの中央に集められる。
【0046】
ここで本実施例2の特徴として、封止治具10cの中央部を逆ラッパ型120形状から成る末広がりの円錐形状とし、更に円錐形状封止高さH3≧樹脂帯9aの外形L/2に成るよう設定しているため、封止治具10cの中央部は深い凹部位を有している。これにより前記樹脂流動121は開口口2d中央部で合流した後、前記凹部位の方向へ流れ込む。この流れ込みにより樹脂帯9aの付根部位Uの樹脂流動123においても引き寄せられる傾向が働き、封止治具10cの傾斜面の影響で若干下向きではあるが、バイパス通路2cの中央へと樹脂流動123を示す。前記凹部位が流動樹脂で満たされた後、余剰樹脂はバイパス通路2cの内部下方向へ樹脂流動122を行う。
【0047】
尚、前記凹部位により前記余剰樹脂の量は、先に記述した従来製法の図9で示したようなバイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減する。これは封止治具10c中央の平面面積(下方向へ押し込み力が作用する働き)がほとんど無く、逆ラッパ型傾斜面の面積がほぼ全体を占めているため、樹脂を中央へ寄せる力が大きく働き、バイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減したと考えられる。
【0048】
また、前記傾斜面により中央へ寄せた樹脂に圧縮力を加えることができるため、封止した樹脂の気密性も向上させる働きが発生する。
【0049】
一定の冷却時間を経た後、封止治具10cを取り外し、開口口2dを封止した逆ラッパ型120形状から成る末広がりの円錐形状の封止部位4cは、図13で示す断面形状と成る。
【0050】
図20に実製品による逆ラッパ型120形状から成る末広がりの円錐形状の封止部位4cの断面写真を示す。この断面写真からも判断できるように、本発明の課題である、バイパス通路2cの界面と封止部位4aの外部表面との距離が従来品図19と比較して、十分確保されていることが判る。これによりバイパス通路2cと外部からの封止の高信頼性が図れ、使用環境で繰り返され受ける熱履歴からも回避可能となる。よって外部からの浸水防止を図ることができる。
【実施例3】
【0051】
従来技術の課題を解決するため、本発明の第3の実施例として、図15に示すように、封止する封止治具10dの先端形状を大きさの異なるドーム型を縦に2段重ねた略円錐形状とし、故に前記封止治具10dにより封止した封止部位4dの形状が図17に示すような比率に予め設定した。
【0052】
円錐形状封止高さH4 ≧ 樹脂帯9aの外形L/2・・・・・・・・・・・・・24
ここで本実施例2の製法及び樹脂の流動を以下に説明する。
【0053】
初めに、図5で示すように煙突状の樹脂帯9a部位に熱を加え、樹脂帯9a部位を軟らかく溶融させる。次に図15で示すような先端が大きさの異なるドーム型を縦に2段重ねた、2段ドーム型130に加工された封止治具10dを用いて、樹脂帯9aの上方向からバイパス通路2cの奥側へ向けて、軟らかく溶融している樹脂帯9aの上部から付根方向に封止治具10dで押し込む。
【0054】
この時、軟らかく溶融している樹脂帯9aは、封止治具10dの2段ドーム型状に倣い樹脂が流動する。流動する前の樹脂帯9aの開口口2d形状から、初めに封止治具10dの2段ドーム型130形状の大径ドームと接触する樹脂帯9a上部においては、樹脂の流動は樹脂流動131のように2段ドーム型130形状の大径ドーム傾斜面に沿って、開口口2dの中央に集められる。
【0055】
ここで本実施例の特徴として、封止治具10dの中央部を2段ドーム型130形状から略円錐形状とし、更に略円錐形状封止高さH4≧樹脂帯9aの外形L/2に成るよう設定しているため、封止治具10dの中央部は深い凹部位を有している。これにより前記樹脂流動131は開口口2d中央部で合流した後、前記凹部位の方向へ流れ込む。この流れ込みにより樹脂帯9aの付根部位Uの樹脂流動133においても引き寄せられる傾向が働き、封止治具10dの傾斜面の影響で若干下向きではあるが、バイパス通路2cの中央へと樹脂流動133を示す。前記凹部位が流動樹脂で満たされた後、余剰樹脂はバイパス通路2cの内部下方向へ樹脂流動132を行う。
【0056】
尚、前記凹部位により前記余剰樹脂の量は、先に記述した従来製法の図9で示したようなバイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減する。これは封止治具10d中央の平面面積(下方向へ押し込み力が作用する働き)がほとんど無く、2段ドーム型傾斜面の面積がほぼ全体を占めているため、樹脂を中央へ寄せる力が大きく働き、バイパス通路2c内へ流れ込む余剰樹脂量を大幅に低減したと考えられる。
【0057】
また、前記傾斜面により中央へ寄せた樹脂に圧縮力を加えることができるため、封止した樹脂の気密性も向上させる働きが発生する。
【0058】
一定の冷却時間を経た後、封止治具10dを取り外し、開口口2dを封止した2段ドーム型130形状から略円錐形状の封止部位4dは、図16で示す断面形状と成る。
【0059】
これにより本発明の課題である、バイパス通路2cの界面と封止部位4aの外部表面との距離が十分確保されることが判る。よってバイパス通路2cと外部からの封止の高信頼性が図れ、使用環境で繰り返され受ける熱履歴からも回避可能となる。よって外部からの浸水防止を図ることができる。
【0060】
以上、実施例1〜3にかかる何れかの本発明に撚れば、外部と電気的接続を行うための複数の端子を樹脂で固定している樹脂ケースと、前記樹脂ケース内部に搭載した回路基板と、前記回路基板を覆ったゲルを有する電子制御装置において、外部からの浸水に対し、高信頼性のある封止が可能であり、防水型の樹脂ケース及び防水型の電子制御装置を提供できる。
【0061】
なお、本発明は、自動車分野における流入空気量を測定するエアフローセンサや空気量調整するスロットルポジションセンサ、アクセル開度を調整するアクセル開度センサ、これらセンサを一連に制御構成するための各種センサなど防水型の樹脂ケースを用いる各種センシングセンサに適用可能である。また本発明の課題を解決する物であれば、上記の列記した製品に限定されること無く適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 樹脂ケース
2 貫通孔
2a,2b,2c 通路
2d 開口口
3 コネクタ
4a,4b,4c,4d 封止部位
5,8 端子
6 ベース
7 ケース枠
9 樹脂
9a 樹脂帯
10a,10b,10c,10d 封止治具
20,21,22,23 関係式
100 逆V字型
101,102,103,111,112,113,121,122,123,131,132,133 樹脂流動
110 ドーム型
120 逆ラッパ型
130 2段ドーム型
E 界面
G 距離
H1,H2,H3,H4 封止高さ
L 樹脂帯外径
P,U 部位
Q 方向
S 断面
T 板厚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタと回路基板が搭載された内部とを連通する貫通路を有する樹脂ケースにおいて、
前記貫通路は、複数の分岐通路から構成され、
前記分岐通路のうち少なくとも一つの分岐通路の先端部が樹脂で封止されており、
前記樹脂封止の形状は、円錐形状であり、前記円錐形状の高さをH、前記円錐形状の底面の外径をLとするとH>1/2Lであることを特徴とする樹脂ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂ケースにおいて、
前記円錐形状の断面は、逆V字型断面であることを特徴とする樹脂ケース。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂ケースにおいて、
前記円錐形状の断面は、逆ラッパ型断面であることを特徴とする樹脂ケース。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂ケースにおいて、
前記円錐形状は、径の大きさが異なるドーム型形状を二段重ねた形状からなることを特徴とする樹脂ケース。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂ケースにおいて、
前記貫通路は3方向に屈曲した通路であり、前記回路基板が搭載される面に対して垂直方向に形成された第1の通路と、前記コネクタの向きと平行に形成された第2の通路と、前記回路基板が搭載される面に対して平行方向に形成され前記第1の通路と前記第2の通路とをバイパスする第3の通路とからなり、
前記第3の通路の先端部に前記封止形状を有することを特徴とする樹脂ケース。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の樹脂ケースを用いた電子制御装置。
【請求項1】
コネクタと回路基板が搭載された内部とを連通する貫通路を有する樹脂ケースにおいて、
前記貫通路は、複数の分岐通路から構成され、
前記分岐通路のうち少なくとも一つの分岐通路の先端部が樹脂で封止されており、
前記樹脂封止の形状は、円錐形状であり、前記円錐形状の高さをH、前記円錐形状の底面の外径をLとするとH>1/2Lであることを特徴とする樹脂ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂ケースにおいて、
前記円錐形状の断面は、逆V字型断面であることを特徴とする樹脂ケース。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂ケースにおいて、
前記円錐形状の断面は、逆ラッパ型断面であることを特徴とする樹脂ケース。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂ケースにおいて、
前記円錐形状は、径の大きさが異なるドーム型形状を二段重ねた形状からなることを特徴とする樹脂ケース。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂ケースにおいて、
前記貫通路は3方向に屈曲した通路であり、前記回路基板が搭載される面に対して垂直方向に形成された第1の通路と、前記コネクタの向きと平行に形成された第2の通路と、前記回路基板が搭載される面に対して平行方向に形成され前記第1の通路と前記第2の通路とをバイパスする第3の通路とからなり、
前記第3の通路の先端部に前記封止形状を有することを特徴とする樹脂ケース。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の樹脂ケースを用いた電子制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−84642(P2013−84642A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221476(P2011−221476)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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