樹脂コンベヤベルトのジョイント方法および樹脂コンベヤベルト
【課題】電光型の打ち抜き刃の繰り返し使用により、製造される樹脂コンベヤベルトのジョイント部強度が低下するのを抑制できる樹脂コンベヤベルトのジョイント方法および樹脂コンベヤベルトを提供する。
【解決手段】ベルト素材の端部をフィンガー状に打ち抜く打ち抜き刃11の三角刃部11a,11bは、高さ方向の高さが高い第1の三角刃部11aと前記高さが低い第2の三角刃部11bとが交互に設けられている。前記各三角刃部11a,11bの先端を、高さ方向においてずれて位置させる。
【解決手段】ベルト素材の端部をフィンガー状に打ち抜く打ち抜き刃11の三角刃部11a,11bは、高さ方向の高さが高い第1の三角刃部11aと前記高さが低い第2の三角刃部11bとが交互に設けられている。前記各三角刃部11a,11bの先端を、高さ方向においてずれて位置させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂コンベヤベルトのジョイント方法および樹脂コンベヤベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベヤベルトの接合方式としては、接合部同士を重ね合わせて接合するオーバーラップ方式のほか、ベルト素材の両端部をそれぞれ打ち抜き刃でフィンガー状に打ち抜いて築き合わせ接合する電光型ジョイント方式が知られている。
【0003】
この電光型ジョイント方式は、複数の三角刃部を有する打ち抜き刃によって、ベルト素材をそれの端部がフィンガー状になるように打ち抜き、そのフィンガー状の端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部分に熱可塑性樹脂シートを貼り合わせ、プレス加工によりジョイントしてエンドレスにするものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この場合、両端部にフィンガー形状の打ち抜き部分を有し目標とする周長になるようにベルト素材を打ち抜き加工する必要があるが、その打ち抜き加工は、具体的に図示していないが、ベルト素材の端部において表面カバー層を除去して芯体層を露出させ、図7に示すように、そのベルト素材101の端部を木製ベース102上に載せ、その上に打ち抜き刃103を載せ、フィンガー形状にて打ち抜き、図8に示すように、フィンガー状の端部101a,101bを有するベルト素材101とする。それから、フィンガー状の端部101a,101b同士を突き合わせた状態でその突き合わせ部分の表面カバー層となる熱可塑性樹脂シート105を貼り合わせ、加圧プレスを行う。この加圧プレスにより、図9に示すように、エンドレス化された樹脂コンベヤベルト104が形成される。
【0005】
そのようなジョイント加工に用いられる打ち抜き刃103は、トムソン刃型で、図10に示すように、複数の三角刃部103aを有し、各三角刃部103aは、左右の傾斜刃部103aa,103abと、それら傾斜刃部103aa,103abの先端側接合部分から突出して延びる先端突出刃部103acとを有する。また、隣り合う三角刃部103aの傾斜刃部103aa,103abの基端側接合部分には、先端突出刃部103acとは反対側に突出して延びる基端突出刃部103bを有する。そして、三角刃部103aは、刃幅W1が10mmで、刃高さH1が50mmに設定され、先端突出刃部103aの長さL1は5mmとされている。
【特許文献1】特開2000−85934号公報(段落0018,0019及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような打ち抜き刃103は、打ち抜きに繰り返し使用されるのに伴い、先端突出刃部103acおよび基端側突出刃部103bが、三角刃部103aの高さ方向から幅方向に徐々に曲がって、図11に示すような形状となる。打ち抜き刃103が、図10に示すような形状である場合には、ベルトジョイント部の破断試験を行うと、図12に示すように、破断線U1〜U3で破断することになり、図11に示すような形状であると、図13に示すように、破断線U11〜U13で破断することになる。
【0007】
図12および図13を比べてみれば明らかなように、使用開始時における打ち抜き刃103によって打ち抜かれた場合の破断線U1〜U3よりも、1000回程度繰り返し使用された後の打ち抜き刃で打ち抜かれた場合の破断線U11〜U13の方が破断線の長さつまり破断する距離が短くなっており、ジョイント部を含むベルトの両端部を引っ張ってジョイント部強度を測定したところ、次の表1に示すようにジョイント部強度が低下していることがわかる。このようにジョイント部強度が低下しているのは、打ち抜き刃の繰り返し使用により、破断の切っ掛けとなりやすい三角刃部の先端部分や変角点が接近して、破断に要する距離が短くなるからであると考えられる。
【0008】
【表1】
このように繰り返し使用後の打ち抜き刃で打ち抜いた場合にジョイント部強度が低下するのは、突出刃部103ac(図10のA部参照)が繰り返し使用により幅方向に大きく曲がる(図11のB部参照)ためである。そのため、図14に示すように、突出刃部がなく、傾斜刃部201aa,201abのみで三角刃部201aが形成される打ち抜き刃202を使用することが考えられる。しかしながら、そのような打ち抜き刃202であれば使用により図15に示すように傾斜刃部201aa,201abの間に隙間Sが開き、ベルトを打ち抜いた後に不要部分を取り除くという余分な工程が必要になる。つまり、ナイフなどで繋がった部分を切り落とさなければならず、実用上問題があるからである。
【0009】
そこで、発明者は、図10に示すように、三角刃部の先端が幅方向に直線状に並んでいることにより、繰り返し使用により突出刃部が幅方向に曲がり、破断する距離が大幅に短くなっていることに着目し、三角刃部の先端が幅方向に直線状に並ばないようにして、繰り返し使用によって突出刃部が幅方向に曲がっても、破断する距離があまり短くならないようにすればよいことに着想して、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
そこで、本発明は、打ち抜き刃の繰り返し使用により、製造される樹脂コンベヤベルトのジョイント部強度が低下するのを抑制できる樹脂コンベヤベルトのジョイント方法および樹脂コンベヤベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、複数の三角刃部を有する打ち抜き刃によって、ベルト素材をそれの端部がフィンガー状になるように打ち抜き、そのフィンガー状の端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部分に熱可塑性樹脂シートを貼り合わせ、プレス加工によりジョイントしてエンドレスにする樹脂コンベヤベルトのジョイント方法であって、前記打ち抜き刃は、隣り合う三角刃部の高さが異なることで、前記隣り合う三角刃部の先端が高さ方向において相互にずれていることを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、打ち抜き刃の、隣り合う三角刃部の先端が高さ方向において相互にずれ、幅方向に並ばないようにされているので、打ち抜き刃の繰り返し使用によって突出刃部が幅方向に曲がっても、ジョイント部において破断に要する距離があまり短くならない。よって、繰り返し使用による打ち抜き刃の経年変化により、製造される樹脂コンベヤベルトのジョイント部強度の低下が抑制される。
【0013】
請求項2に記載のように、前記各三角刃部は、左右の傾斜刃部と、それら傾斜刃部の先端側部分が重ね合わされ突出して延びる先端突出刃部とを有し、さらに隣り合う前記三角刃部の傾斜刃部の基端側部分は重ね合わされて、前記先端突出刃部とは反対側に突出して延びる基端突出刃部を構成していることが望ましい。
【0014】
このようにすれば、打ち抜き刃を繰り返し使用しても、傾斜刃部の先端側部分や基端側部分の間などに隙間が生じることなく、三角刃部の形状は維持される。
【0015】
請求項3に記載のように、前記打ち抜き刃の三角刃部は、ベルト長手方向の長さが長い第1の三角刃部と前記長さが短い第2の三角刃部とが交互に設けられている構成とすることで、請求項1,2の発明を簡単に実現することができる。
【0016】
また、これらの場合、請求項4の発明のように、前記打ち抜き刃の三角刃部は、刃幅が5〜20mmの範囲内で、刃高さが20〜120mmの範囲内で、前記第2の三角刃部の高さは、前記第1の三角刃部の高さの40〜70%の範囲内であることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、複数の三角刃部を有する打ち抜き刃の、隣り合わせになる山の高さを変えることにより、三角刃部の先端が横方向に並ばないようにして、ベルトが破れやすい、フィンガー刃の先端部分や変角点の部分を離すようにしているので、打ち抜き刃を長年にわたって繰り返し使用しても、製造される樹脂コンベヤベルトのジョイント部強度が低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0019】
図1は本発明に係る樹脂コンベヤベルトの一実施の形態を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、樹脂コンベヤベルト1は、裏面側の芯体帆布層2(ポリエステル帆布層)、中間樹脂層3(熱可塑性樹脂層)、表面側の芯体帆布層4(ポリエステル帆布層)及び表面カバー樹脂層5(熱可塑性樹脂層)を裏面側から順に積層して構成される。つまり、2層の帆布層2,4と、2層の樹脂層3,5とで構成される。ここで、ベルト厚さT1は1.80mmで、表面カバー樹脂層5を除く残りの3層の厚さT2は1.55mmである。
【0021】
この樹脂コンベヤベルト1は、従来と同様に、ベルト素材の端部において表面カバー樹脂層を除去して芯体帆布層を露出させ、そのベルト素材の端部を打ち抜き刃にてフィンガー形状に打ち抜き、フィンガー状の端部同士を突き合わせた状態でその突き合わせ部分の表面カバー樹脂層となる熱可塑性樹脂シートを貼り合わせ、加圧プレスを行う。この加圧プレスにより、エンドレス化された樹脂コンベヤベルト1(図1参照)が形成されるが、本発明は、打ち抜き刃の形状を特徴とするものである。
【0022】
打ち抜き刃11の形状は、図2に示すように、複数の三角刃部11a,11bを有し、前記各三角刃部11a,11bは、左右の傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbと、それら傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbの先端側接合部分から突出して延びる先端突出刃部11ac,11bcとを有する。この先端突出刃部11ac,11bcは、傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbの先端側部分が重ね合わされて接合され、その接合部分が突出して延びたものである。
【0023】
さらに三角刃部11a,11bの傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbの基端側接合部分には、先端突出刃部11ac,11bcとは反対側に突出して延びる基端突出刃部11cを有する。この基端突出刃部11は、傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbの基端側部分が重ね合わされて接合され、その接合部分が突出して延びたものである。
【0024】
つまり、打ち抜き刃11は、第1の三角刃部11aと、第1の三角刃部11aよりも高さが低い第2の三角刃部11bとが交互に並ぶ構成とされている。これにより、打ち抜き刃11は、隣り合う三角刃部11a,11bの高さが異なることで、隣り合う三角刃部11a,11bの先端が高さ方向において相互にずれている。ここで、H11=50mm,H12=25mm,H13=35mm,W11=10mm,W12=20mm,L11=5mmである。
【0025】
この図2に示す刃形状を有する打ち抜き刃11が1000回程度繰り返し使用されると、図3に示すように突出刃部11ac,11bc,11cが幅方向に曲がった状態になる。そして、図2あるいは図3に示す打ち抜き刃11で、ベルト素材の各端部(突き合わせ接合される部分)をフィンガー状に切断して、それらを突き合わせて熱可塑性樹脂シートを貼り付けて、プレス加工によりジョイントしてエンドレスとした樹脂コンベヤベルトについて破断試験を行ったところ、破断線U21〜U24,U31〜U34はそれぞれ図4及び図5に示すようになり、ベルト本体強度65N/mmの品種を用いた結果を表2に示す。ここで、破断試験は、引張試験機を用い、幅50mm×長さ300mm(長さ方向中央部に接合部分)のサンプルの前記接合部分がチャック間に位置するようにセットして行った180°引張試験である。
【0026】
【表2】
本発明に係る場合は、1000回程度の繰り返し使用後の打ち抜き刃を用いた場合も、ベルト強度は42N/mmで、従来のもの(38N/mm)より4N/mmも高く、10.5%のジョイント部強度の向上が確認された。
【0027】
前記実施の形態においては、三角刃部の先端が幅方向において直線状に並ばないように高さを交互に変えているが、図6に示すように、三角刃部の高さが徐々に高くした打ち抜き刃11’(あるいは徐々に低くした打ち抜き刃)とすることも考えられる。しかしながら、そのように斜め方向に延びるフィンガー形状とすると、プレス加工装置に対してベルトのジョイント部(端部)を斜めに装着しなければならず、ベルト幅に対して30%以上幅広のプレスが必要となり、実用上問題がある。これに対し、本願方法によれば、ベルト幅+100mm程度のプレス幅で加工ができるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る樹脂コンベヤベルトの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る打ち抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図3】繰り返し使用後の、前記打亨抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図4】繰り返し使用前の、破断の態様を示す説明図である。
【図5】繰り返し使用後の、破断の態様を示す説明図である。
【図6】他の例についての図2と同様な図である。
【図7】ジョイント部切断の説明図である。
【図8】切断後のベルトの平面図である。
【図9】接合後の樹脂コンベヤベルトの斜視図である。
【図10】繰り返し使用前の、従来の打ち抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図11】繰り返し使用後の、従来の打ち抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図12】繰り返し使用前の、従来の、破断の態様を示す説明図である。
【図13】繰り返し使用後の、従来の、破断の態様を示す説明図である。
【図14】参考例についての打ち抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図15】参考例についての、破断の態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 樹脂コンベヤベルト
2 芯体帆布層
3 中間樹脂層
4 芯体帆布層
5 表面カバー樹脂層
11 打ち抜き刃
11a 第1の三角刃部
11aa,11ab 傾斜刃部
11ac 先端側突出刃部
11b 第2の三角刃部
11ba,11bb 傾斜刃部
11bc 先端側突出刃部
11c 基端側突出刃部
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂コンベヤベルトのジョイント方法および樹脂コンベヤベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベヤベルトの接合方式としては、接合部同士を重ね合わせて接合するオーバーラップ方式のほか、ベルト素材の両端部をそれぞれ打ち抜き刃でフィンガー状に打ち抜いて築き合わせ接合する電光型ジョイント方式が知られている。
【0003】
この電光型ジョイント方式は、複数の三角刃部を有する打ち抜き刃によって、ベルト素材をそれの端部がフィンガー状になるように打ち抜き、そのフィンガー状の端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部分に熱可塑性樹脂シートを貼り合わせ、プレス加工によりジョイントしてエンドレスにするものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この場合、両端部にフィンガー形状の打ち抜き部分を有し目標とする周長になるようにベルト素材を打ち抜き加工する必要があるが、その打ち抜き加工は、具体的に図示していないが、ベルト素材の端部において表面カバー層を除去して芯体層を露出させ、図7に示すように、そのベルト素材101の端部を木製ベース102上に載せ、その上に打ち抜き刃103を載せ、フィンガー形状にて打ち抜き、図8に示すように、フィンガー状の端部101a,101bを有するベルト素材101とする。それから、フィンガー状の端部101a,101b同士を突き合わせた状態でその突き合わせ部分の表面カバー層となる熱可塑性樹脂シート105を貼り合わせ、加圧プレスを行う。この加圧プレスにより、図9に示すように、エンドレス化された樹脂コンベヤベルト104が形成される。
【0005】
そのようなジョイント加工に用いられる打ち抜き刃103は、トムソン刃型で、図10に示すように、複数の三角刃部103aを有し、各三角刃部103aは、左右の傾斜刃部103aa,103abと、それら傾斜刃部103aa,103abの先端側接合部分から突出して延びる先端突出刃部103acとを有する。また、隣り合う三角刃部103aの傾斜刃部103aa,103abの基端側接合部分には、先端突出刃部103acとは反対側に突出して延びる基端突出刃部103bを有する。そして、三角刃部103aは、刃幅W1が10mmで、刃高さH1が50mmに設定され、先端突出刃部103aの長さL1は5mmとされている。
【特許文献1】特開2000−85934号公報(段落0018,0019及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような打ち抜き刃103は、打ち抜きに繰り返し使用されるのに伴い、先端突出刃部103acおよび基端側突出刃部103bが、三角刃部103aの高さ方向から幅方向に徐々に曲がって、図11に示すような形状となる。打ち抜き刃103が、図10に示すような形状である場合には、ベルトジョイント部の破断試験を行うと、図12に示すように、破断線U1〜U3で破断することになり、図11に示すような形状であると、図13に示すように、破断線U11〜U13で破断することになる。
【0007】
図12および図13を比べてみれば明らかなように、使用開始時における打ち抜き刃103によって打ち抜かれた場合の破断線U1〜U3よりも、1000回程度繰り返し使用された後の打ち抜き刃で打ち抜かれた場合の破断線U11〜U13の方が破断線の長さつまり破断する距離が短くなっており、ジョイント部を含むベルトの両端部を引っ張ってジョイント部強度を測定したところ、次の表1に示すようにジョイント部強度が低下していることがわかる。このようにジョイント部強度が低下しているのは、打ち抜き刃の繰り返し使用により、破断の切っ掛けとなりやすい三角刃部の先端部分や変角点が接近して、破断に要する距離が短くなるからであると考えられる。
【0008】
【表1】
このように繰り返し使用後の打ち抜き刃で打ち抜いた場合にジョイント部強度が低下するのは、突出刃部103ac(図10のA部参照)が繰り返し使用により幅方向に大きく曲がる(図11のB部参照)ためである。そのため、図14に示すように、突出刃部がなく、傾斜刃部201aa,201abのみで三角刃部201aが形成される打ち抜き刃202を使用することが考えられる。しかしながら、そのような打ち抜き刃202であれば使用により図15に示すように傾斜刃部201aa,201abの間に隙間Sが開き、ベルトを打ち抜いた後に不要部分を取り除くという余分な工程が必要になる。つまり、ナイフなどで繋がった部分を切り落とさなければならず、実用上問題があるからである。
【0009】
そこで、発明者は、図10に示すように、三角刃部の先端が幅方向に直線状に並んでいることにより、繰り返し使用により突出刃部が幅方向に曲がり、破断する距離が大幅に短くなっていることに着目し、三角刃部の先端が幅方向に直線状に並ばないようにして、繰り返し使用によって突出刃部が幅方向に曲がっても、破断する距離があまり短くならないようにすればよいことに着想して、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
そこで、本発明は、打ち抜き刃の繰り返し使用により、製造される樹脂コンベヤベルトのジョイント部強度が低下するのを抑制できる樹脂コンベヤベルトのジョイント方法および樹脂コンベヤベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、複数の三角刃部を有する打ち抜き刃によって、ベルト素材をそれの端部がフィンガー状になるように打ち抜き、そのフィンガー状の端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部分に熱可塑性樹脂シートを貼り合わせ、プレス加工によりジョイントしてエンドレスにする樹脂コンベヤベルトのジョイント方法であって、前記打ち抜き刃は、隣り合う三角刃部の高さが異なることで、前記隣り合う三角刃部の先端が高さ方向において相互にずれていることを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、打ち抜き刃の、隣り合う三角刃部の先端が高さ方向において相互にずれ、幅方向に並ばないようにされているので、打ち抜き刃の繰り返し使用によって突出刃部が幅方向に曲がっても、ジョイント部において破断に要する距離があまり短くならない。よって、繰り返し使用による打ち抜き刃の経年変化により、製造される樹脂コンベヤベルトのジョイント部強度の低下が抑制される。
【0013】
請求項2に記載のように、前記各三角刃部は、左右の傾斜刃部と、それら傾斜刃部の先端側部分が重ね合わされ突出して延びる先端突出刃部とを有し、さらに隣り合う前記三角刃部の傾斜刃部の基端側部分は重ね合わされて、前記先端突出刃部とは反対側に突出して延びる基端突出刃部を構成していることが望ましい。
【0014】
このようにすれば、打ち抜き刃を繰り返し使用しても、傾斜刃部の先端側部分や基端側部分の間などに隙間が生じることなく、三角刃部の形状は維持される。
【0015】
請求項3に記載のように、前記打ち抜き刃の三角刃部は、ベルト長手方向の長さが長い第1の三角刃部と前記長さが短い第2の三角刃部とが交互に設けられている構成とすることで、請求項1,2の発明を簡単に実現することができる。
【0016】
また、これらの場合、請求項4の発明のように、前記打ち抜き刃の三角刃部は、刃幅が5〜20mmの範囲内で、刃高さが20〜120mmの範囲内で、前記第2の三角刃部の高さは、前記第1の三角刃部の高さの40〜70%の範囲内であることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、複数の三角刃部を有する打ち抜き刃の、隣り合わせになる山の高さを変えることにより、三角刃部の先端が横方向に並ばないようにして、ベルトが破れやすい、フィンガー刃の先端部分や変角点の部分を離すようにしているので、打ち抜き刃を長年にわたって繰り返し使用しても、製造される樹脂コンベヤベルトのジョイント部強度が低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0019】
図1は本発明に係る樹脂コンベヤベルトの一実施の形態を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、樹脂コンベヤベルト1は、裏面側の芯体帆布層2(ポリエステル帆布層)、中間樹脂層3(熱可塑性樹脂層)、表面側の芯体帆布層4(ポリエステル帆布層)及び表面カバー樹脂層5(熱可塑性樹脂層)を裏面側から順に積層して構成される。つまり、2層の帆布層2,4と、2層の樹脂層3,5とで構成される。ここで、ベルト厚さT1は1.80mmで、表面カバー樹脂層5を除く残りの3層の厚さT2は1.55mmである。
【0021】
この樹脂コンベヤベルト1は、従来と同様に、ベルト素材の端部において表面カバー樹脂層を除去して芯体帆布層を露出させ、そのベルト素材の端部を打ち抜き刃にてフィンガー形状に打ち抜き、フィンガー状の端部同士を突き合わせた状態でその突き合わせ部分の表面カバー樹脂層となる熱可塑性樹脂シートを貼り合わせ、加圧プレスを行う。この加圧プレスにより、エンドレス化された樹脂コンベヤベルト1(図1参照)が形成されるが、本発明は、打ち抜き刃の形状を特徴とするものである。
【0022】
打ち抜き刃11の形状は、図2に示すように、複数の三角刃部11a,11bを有し、前記各三角刃部11a,11bは、左右の傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbと、それら傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbの先端側接合部分から突出して延びる先端突出刃部11ac,11bcとを有する。この先端突出刃部11ac,11bcは、傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbの先端側部分が重ね合わされて接合され、その接合部分が突出して延びたものである。
【0023】
さらに三角刃部11a,11bの傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbの基端側接合部分には、先端突出刃部11ac,11bcとは反対側に突出して延びる基端突出刃部11cを有する。この基端突出刃部11は、傾斜刃部11aa,11ab,11ba,11bbの基端側部分が重ね合わされて接合され、その接合部分が突出して延びたものである。
【0024】
つまり、打ち抜き刃11は、第1の三角刃部11aと、第1の三角刃部11aよりも高さが低い第2の三角刃部11bとが交互に並ぶ構成とされている。これにより、打ち抜き刃11は、隣り合う三角刃部11a,11bの高さが異なることで、隣り合う三角刃部11a,11bの先端が高さ方向において相互にずれている。ここで、H11=50mm,H12=25mm,H13=35mm,W11=10mm,W12=20mm,L11=5mmである。
【0025】
この図2に示す刃形状を有する打ち抜き刃11が1000回程度繰り返し使用されると、図3に示すように突出刃部11ac,11bc,11cが幅方向に曲がった状態になる。そして、図2あるいは図3に示す打ち抜き刃11で、ベルト素材の各端部(突き合わせ接合される部分)をフィンガー状に切断して、それらを突き合わせて熱可塑性樹脂シートを貼り付けて、プレス加工によりジョイントしてエンドレスとした樹脂コンベヤベルトについて破断試験を行ったところ、破断線U21〜U24,U31〜U34はそれぞれ図4及び図5に示すようになり、ベルト本体強度65N/mmの品種を用いた結果を表2に示す。ここで、破断試験は、引張試験機を用い、幅50mm×長さ300mm(長さ方向中央部に接合部分)のサンプルの前記接合部分がチャック間に位置するようにセットして行った180°引張試験である。
【0026】
【表2】
本発明に係る場合は、1000回程度の繰り返し使用後の打ち抜き刃を用いた場合も、ベルト強度は42N/mmで、従来のもの(38N/mm)より4N/mmも高く、10.5%のジョイント部強度の向上が確認された。
【0027】
前記実施の形態においては、三角刃部の先端が幅方向において直線状に並ばないように高さを交互に変えているが、図6に示すように、三角刃部の高さが徐々に高くした打ち抜き刃11’(あるいは徐々に低くした打ち抜き刃)とすることも考えられる。しかしながら、そのように斜め方向に延びるフィンガー形状とすると、プレス加工装置に対してベルトのジョイント部(端部)を斜めに装着しなければならず、ベルト幅に対して30%以上幅広のプレスが必要となり、実用上問題がある。これに対し、本願方法によれば、ベルト幅+100mm程度のプレス幅で加工ができるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る樹脂コンベヤベルトの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る打ち抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図3】繰り返し使用後の、前記打亨抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図4】繰り返し使用前の、破断の態様を示す説明図である。
【図5】繰り返し使用後の、破断の態様を示す説明図である。
【図6】他の例についての図2と同様な図である。
【図7】ジョイント部切断の説明図である。
【図8】切断後のベルトの平面図である。
【図9】接合後の樹脂コンベヤベルトの斜視図である。
【図10】繰り返し使用前の、従来の打ち抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図11】繰り返し使用後の、従来の打ち抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図12】繰り返し使用前の、従来の、破断の態様を示す説明図である。
【図13】繰り返し使用後の、従来の、破断の態様を示す説明図である。
【図14】参考例についての打ち抜き刃の概略形状を示す平面図である。
【図15】参考例についての、破断の態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 樹脂コンベヤベルト
2 芯体帆布層
3 中間樹脂層
4 芯体帆布層
5 表面カバー樹脂層
11 打ち抜き刃
11a 第1の三角刃部
11aa,11ab 傾斜刃部
11ac 先端側突出刃部
11b 第2の三角刃部
11ba,11bb 傾斜刃部
11bc 先端側突出刃部
11c 基端側突出刃部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の三角刃部を有する打ち抜き刃によって、ベルト素材をそれの端部がフィンガー状になるように打ち抜き、そのフィンガー状の端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部分に熱可塑性樹脂シートを貼り合わせ、プレス加工によりジョイントしてエンドレスにする樹脂コンベヤベルトのジョイント方法であって、
前記打ち抜き刃は、隣り合う三角刃部の高さが異なることで、前記隣り合う三角刃部の先端が高さ方向において相互にずれていることを特徴とする樹脂コンベヤベルトのジョイント方法。
【請求項2】
前記各三角刃部は、左右の傾斜刃部と、それら傾斜刃部の先端側部分が重ね合わされ突出して延びる先端突出刃部とを有し、
さらに隣り合う前記三角刃部の傾斜刃部の基端側部分は重ね合わされて、前記先端突出刃部とは反対側に突出して延びる基端突出刃部を構成していることを特徴とする請求項1記載の樹脂コンベヤベルトのジョイント方法。
【請求項3】
前記打ち抜き刃は、第1の三角刃部と、前記第1の三角刃部よりも高さが低い第2の三角刃部とが交互に並ぶ構成とされていることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂コンベヤベルトのジョイント方法。
【請求項4】
前記打ち抜き刃の三角刃部は、刃幅が5〜20mmの範囲内で、刃高さが20〜120mmの範囲内で、前記第2の三角刃部の高さは、前記第1の三角刃部の高さの40〜70%の範囲内であることを特徴とする請求項3記載の樹脂コンベヤベルトのジョイント方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂コンベヤベルトのジョイント方法によって、ジョイントしてエンドレスにされたことを特徴とする樹脂コンベヤベルト。
【請求項1】
複数の三角刃部を有する打ち抜き刃によって、ベルト素材をそれの端部がフィンガー状になるように打ち抜き、そのフィンガー状の端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部分に熱可塑性樹脂シートを貼り合わせ、プレス加工によりジョイントしてエンドレスにする樹脂コンベヤベルトのジョイント方法であって、
前記打ち抜き刃は、隣り合う三角刃部の高さが異なることで、前記隣り合う三角刃部の先端が高さ方向において相互にずれていることを特徴とする樹脂コンベヤベルトのジョイント方法。
【請求項2】
前記各三角刃部は、左右の傾斜刃部と、それら傾斜刃部の先端側部分が重ね合わされ突出して延びる先端突出刃部とを有し、
さらに隣り合う前記三角刃部の傾斜刃部の基端側部分は重ね合わされて、前記先端突出刃部とは反対側に突出して延びる基端突出刃部を構成していることを特徴とする請求項1記載の樹脂コンベヤベルトのジョイント方法。
【請求項3】
前記打ち抜き刃は、第1の三角刃部と、前記第1の三角刃部よりも高さが低い第2の三角刃部とが交互に並ぶ構成とされていることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂コンベヤベルトのジョイント方法。
【請求項4】
前記打ち抜き刃の三角刃部は、刃幅が5〜20mmの範囲内で、刃高さが20〜120mmの範囲内で、前記第2の三角刃部の高さは、前記第1の三角刃部の高さの40〜70%の範囲内であることを特徴とする請求項3記載の樹脂コンベヤベルトのジョイント方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂コンベヤベルトのジョイント方法によって、ジョイントしてエンドレスにされたことを特徴とする樹脂コンベヤベルト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−56472(P2008−56472A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238437(P2006−238437)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】
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