説明

樹脂コンベヤベルト

【課題】帆布心体の側縁部をベルトの両側端部に露出させることなく、しかも帆布心体の側縁部が露出するのを防止するためにベルトを構成する帯状体の端部に糸で縫いつけたカバー材の糸がベルトの搬送面側にほつれとなって現れることのない樹脂コンベヤベルトを提供する。
【解決手段】カットエッジタイプの樹脂コンベヤベルトであって、帆布心体3の側縁が露出する前記帯状体2の幅方向端部2aにおいて、該幅方向端部2aを覆うようにベルト全周にわたってカバー材5で被覆して縫製固定し、更にカバー材5を被覆した帯状体2の幅方向端部2aをベルト1の裏面側へ折り返して糸を使わずに固定してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂製コンベヤベルト、より詳しくは、最終の工程にカットエッジ方式を採用してなる樹脂製コンベヤベルトの一構成部材としての帆布心体の側縁部をベルトの両側端部に露出させることなく、しかも帆布心体の側縁部が露出するのを防止するためにベルトを構成する帯状体の端部に糸で縫いつけたカバー材の糸がベルトの搬送面側にほつれとなって現れることのない樹脂コンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パン生地、菓子生地などに代表される各種食品の搬送には、ベルト内部に帆布心体を埋設し、ベルトの保形及び補強し、且つその清潔さが求められることから樹脂コンベヤベルトが広く用いられている。
【0003】
この種の樹脂コンベヤベルトは、その製造の過程において、エンドレス状のベルト成形素材を所定の幅に輪切りするカットエッジ作業のため、ベルトの幅方向両側縁、即ちベルトの側端部には帆布心体の切断面がベルト全長にわたって露出している。
【0004】
ところが、この種のベルトの両端部をカットエッジ方式にて形成した樹脂コンベヤベルトにあっては、ベルトの走行時に発生する蛇行あるいは片寄り走行等によるベルト耳部のフレームとの接触により、端部に露出した帆布心体のほつれ現象が生ずる。
【0005】
このコンベヤベルトのほつれの進行に伴い,ベルト端部より露出した帆布心体の一部は、切断されて搬送物に付着したり混入することもあり、搬送物が食品である場合は特に大きな問題となる。
【0006】
そこで、樹脂製ベルト端部で発生するほつれによる上記のような問題を解決するためにベルト端部をカバー材で覆うことによって、帆布心体の側面への露出をなくしてベルト側縁がフレームに接触してもほつれが生じないようにすることが可能である。
【0007】
ベルト端部を覆うカバー材はベルト端部においてベルトの搬送物を載せる表面から裏面にまたがらせてベルト端部を覆うように折り曲げられて配置しており、ベルト本体に融着や接着するとともにミシン縫いによって固定している。
【0008】
また、ベルトの駆動面に走行する際の蛇行を防止する桟を設ける場合があるが、桟をベルトに直接融着できないような場合にはカバー材に桟を取り付けた状態でベルトの端部を覆うように配置して糸で縫いつけることによって取り付けていた(特許文献1および特許文献2)。
【0009】
【特許文献1】特開2001−2217号公報
【特許文献2】実用新案登録第3022611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このようにベルト端部をカバー材で覆うことによって、帆布心体のほつれを防止することができるが、カバー材をベルト本体に固定するミシン糸の搬送面側へ露出した部分がほつれて搬送物に付着するといった問題がある。
【0011】
帆布心体のほつれほどに多量の繊維屑は発生しないものの、搬送物が食品の場合はたとえ少量であっても食品衛生や品質管理上で無視できない問題の一つである。
【0012】
そこで本発明では、ベルト端部における帆布心体のほつれをなくしてしまうとともに、ベルト端部を覆うカバー材を固定するためのミシン糸がベルトの搬送面に露出しないような構成とし、搬送物への繊維屑の混入の問題を解消した樹脂コンベヤベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような目的を達成するために本発明の請求項1では、樹脂層と少なくとも一層の帆布心体をもって積層構成された積層体をカットして所定幅および所定長の帯状体とし、長手方向端部をジョイントしてエンドレスとした樹脂コンベヤベルトであって、帆布心体の側縁部が露出する前記帯状体の幅方向端部において、該幅方向端部を覆うようにベルト全周にわたってカバー材で被覆して縫製固定し、更にカバー材を被覆した帯状体の幅方向端部をベルトの裏面側へ折り返して糸を使わずに固定してなることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2では、前記カバー材にはプーリに設けた溝に嵌りあう桟を設けてなる請求項1記載の樹脂コンベヤベルトとしている。
【0015】
請求項3では、前記カバー材はポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂からなり、厚みを0.2〜0.5mmの範囲とした請求項1〜2記載の樹脂コンベヤベルト。
【発明の効果】
【0016】
ベルトを構成する樹脂層と帆布心体とからなる帯状体の帆布心体が露出している端部を、カバー材で覆いミシン糸で縫いつけることによって、帆布心体のほつれを防止することができ、更に帯状体の端部を裏面側へ折り曲げて融着や接着等の方法で糸を用いずに固定することでカバー材を縫い付けた部分はベルトの裏面側に配置されて搬送物を載置する表面には帯状体の端部およびカバー材を縫い付けた糸も存在しないので、ほつれ等で生じた繊維屑が搬送物に付着したり混入したりすることがない食品等の搬送に適したベルトを得ることができる。
【0017】
請求項2においては、カバー材に桟を設けており、ベルト走行時の蛇行を防止した桟付ベルトにおける桟を取り付けるための糸がベルトの表面に出てくるのを防止することができる。
【0018】
請求項3では、前記カバー材はポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂からなり、厚みを0.2〜0.5mmの範囲としており、帆布心体を十分に覆ってほつれなどの問題を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明に係わる樹脂コンベヤベルト1の構造を示す断面図である。この発明に係わるベルトに用いる帯状体2の構成は、ベルトの用途に応じて変わるものであり、そのプライ数を適宜選択される帆布心体3とその帆布心体に積層される樹脂層4からなる帯状体2から構成される。帯状体2の端部2aには帆布心体3のカット部が露出しており、繊維がほつれて繊維屑等が発生する問題がある。
【0020】
そこで、帯状体の端部2aはカバー材5で被覆されている。カバー材5はテープ状物で帯状体2の表面と裏面にまたがって端部2aを覆うように配置されており、ミシン糸6で縫いつけることにより固定されている。
【0021】
このように帯状体2の端部2aはカットエッジで帆布心体3が露出した状態となっているが、カバー材5で端部2aが覆ってしまうことで端部2aがベルト走行時にフレーム等に接触して摩耗しほつれが発生するといった問題を解消することができる。また、カバー材5を帯状体2に取り付ける場合にミシン縫いで行うが、そのままであるとベルトの搬送面にミシン糸6が露出しており、帆布心体2のほつれは防止されているが、ミシン糸6が切断されて食品等の搬送物に付着したり混入したりする問題がある。
【0022】
そこで、本発明では帯状体2の端部2aのカバー材5で覆われた部分をベルト裏面側へ折り返して融着や接着等の手段で糸を用いることなく固定している。そうすることによって、帯状体端部2aのほつれは防止され、カバー材5を取り付けた糸もベルトの裏面側に位置するので搬送物には一切帆布心体2やミシン糸6の繊維屑が付着することはない。
【0023】
また、このようなベルト1の場合、図2に示すようにプーリと接する駆動面7側にプーリの溝と嵌りあってベルトに設けた溝と嵌りあう桟9を取り付けてベルトの蛇行を防止することがあるが、桟9をベルトに取り付ける時にベルトを構成する樹脂層4がフッ素系樹脂の場合は桟9をベルトへ熱融着することが困難であり、カバー材に桟を糸で縫いつけておきカバー材を帯状体の端部に被覆することでベルト端部の繊維の露出を防止するとともに桟をベルトに設けるといった方法を採ることがある。
【0024】
このようなベルトでは桟をカバー材に取り付けるのに使用した糸がベルトの搬送面側に露出していることから、糸がほつれる等して搬送物に繊維屑が混入してしまうといった問題が起こる。しかし、本発明のように帯状体2の端部2aをカバー部材5で覆った状態で端部を裏面側に折り返し熱融着する。そうすることでカバー部材5を使って桟9を糸6で取り付けた場合でも糸6は全部ベルトの裏側へ配置され、搬送面側において繊維屑が発生する心配がない。
【0025】
本発明の樹脂コンベヤベルト1を構成するベルト本体は、心体帆布3の表面に樹脂層4を積層接着したものであり、図1に示す例では心体帆布3が1層、樹脂層4が1層あるが、これらが複数層のものでも構わない。
【0026】
樹脂コンベヤベルト1に用いられる心体帆布3は、低伸度高強力な織製帆布、具体的にはアラミド繊維やポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維などからなる糸からなる帆布を使用することができる。
【0027】
また前記の繊維からなる糸6としては、例えばフィラメントの長繊維を引き揃えるか、または撚り合わせて1本あたりの繊度が1000〜2000デニールのヤーンを、さらに2本乃至10本撚り合わせてなるコードをもって平織、マット織、綾織または朱子織にて織製する。
【0028】
なお、心体帆布の構成コード1本あたりの繊度が1000〜2000デニールのヤーンのより回数は50回数/m〜100回数/mとする。そして、心体帆布2を構成して、ベルト長手方向の縦コードおよびベルト幅方向の横コードの本数、すなわちコード密度は5cmあたり10〜50本程度とする。また、コード本数のバラツキは心体帆布全幅および全長にわたり±0.5本以内に構成され、これによってベルト自体の局部的な伸び現象が抑制され、またベルトの応力集中による早期切断という最悪の事態を未然に阻止することができる。
【0029】
また、樹脂コンベヤベルトの走行時に発生する蛇行を抑制するために、心体帆布2を構成する縦方向のコード撚り方向について、縦コードは1本ごとにS方向撚りとZ方向撚りの糸を交互に組合せることも可能である。
【0030】
心体帆布3に積層する樹脂層4としては、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂を用いることができる。
【0031】
カバー材5としてはポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂からなり、厚みを0.2〜0.5mmの範囲とすることが好ましい。そうすることによって帆布心体を十分に覆ってほつれなどの問題を防止することができる。
【0032】
また、樹脂コンベヤベルトの製造方法としては、例えば図3に示すように前記樹脂素材を押出機Dによってシート状に押出成形し、押出直後の高温、半溶融状態で心体帆布3と積層してロール10、11間で加圧して両者を積層接着して得られた樹脂コンベヤベルト1に適用する。また、図示はしないが心体帆布3と樹脂層4を平プレスによりラミネーションする方法でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、心体帆布と樹脂層を積層したベルト本体からなるコンベヤベルトであって、搬送面にて食品等を搬送するベルトで搬送面上に繊維屑等の混入物の発生を嫌う用途に適用するベルトとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の樹脂コンベヤベルトを示す断面図である。
【図2】本発明の樹脂コンベヤベルトの別の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係わる樹脂コンベヤベルトの製造工程を説明する概要図である。
【図4】従来の樹脂コンベヤベルトの例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 樹脂コンベヤベルト
2 帯状体
2a 端部
3 心体帆布
4 樹脂層
5 カバー部材
6 糸
7 駆動面
8 搬送面
9 桟

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と少なくとも一層の帆布心体をもって積層構成した積層物をカットして所定幅および所定長の帯状体とし、長手方向端部をジョイントしてエンドレスとした樹脂コンベヤベルトであって、帆布心体の側縁部が露出する前記帯状体の幅方向端部において、該幅方向端部を覆うようにベルト全周にわたってカバー材で被覆して縫製固定し、更にカバー材を被覆した帯状体の幅方向端部をベルトの裏面側へ折り返して糸を使わずに固定してなることを特徴とする樹脂コンベヤベルト。
【請求項2】
前記カバー材にはプーリに設けた溝に嵌りあう桟を設けてなる請求項1記載の樹脂コンベヤベルト。
【請求項3】
前記カバー材はポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂からなり、厚みを0.2〜0.5mmの範囲とした請求項1〜2記載の樹脂コンベヤベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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