説明

樹脂フィルムの放電処理方法

【課題】
本発明は、光学フィルムに現れる輝点を解決する為になされたものであって、この輝点は大きさが50μm以下である目に見えない光学的異物によるものであることが解明され、その原因は、放電処理を連続的に長時間にわたって施した際に、シュウ酸などのカルボン酸誘導体が工程ロールに付着し、それがフィルム面に転写され発生するという知見を得て、樹脂フィルムに輝点を生ずることのない放電処理方法を提供する。
【解決手段】
樹脂フィルムに放電処理を行なうに際し、
表面に放電処理した後、直ちに処理面を保護フィルムで被覆し、
次いで、裏面に放電処理した後、該処理面が非接触状態で樹脂フィルムを移送し、後次工程に供することを特徴とする樹脂フィルムの放電処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの放電処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、偏光フィルムや位相差フィルムなどの樹脂フィルムの表面改質の為にコロナ放電処理、プラズマ処理などの放電処理をすることが知られている。これは樹脂フィルムの表面を親水化させ接着性を向上させるために行うものである。
例えば、樹脂フィルムとガラス基板などの部材とを貼合する際には、樹脂フィルムに粘着剤層(粘着フィルム)を貼合する工程を必要とし、粘着フィルムを貼合する前に樹脂フィルムにコロナ放電処理することが一般的である。樹脂フィルムに粘着フィルムを貼合する際には、樹脂フィルムと粘着フィルムのそれぞれ貼合する面をコロナ放電処理し貼合することが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
ところで、樹脂フィルムを長時間にわたって連続的に放電処理を行なうと樹脂フィルムに輝点が発生してしまい、特に光学フィルムとしては使用できず問題となっていた。
ここにいう輝点とは、偏光フィルム、供試フィルム、偏光フィルム(各偏光フィルムの偏光軸をクロスニコル状態にする)を貼り合わせ、裏側に配置されているバックライト(光源)から光を入射し、表側から見て光漏れとして認識される部分等を言う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−213314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光学フィルムに現れる輝点を解決する為になされたものであって、この輝点は、大きさが50μm以下である目に見えない光学的異物によるものであることが解明され、その原因は、放電処理を連続的に長時間にわたって施した際に、シュウ酸などのカルボン酸誘導体が工程ロールに付着(樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理などの放電処理することにより、樹脂の炭素骨格が切れて空気中の酸素などと反応し、その結果シュウ酸などのカルボン酸誘導体が発生すると思われる)し、それがフィルム面に転写され発生するという知見を得た。
本発明は、このような知見に基づき鑑みなされたもので、樹脂フィルムに輝点を生ずることのない放電処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)樹脂フィルムに放電処理を行なうに際し、
表面に放電処理した後、直ちに処理面を保護フィルムで被覆し、
次いで、裏面に放電処理した後、該処理面を非接触状態のまま樹脂フィルムを移送し、後次工程に供することを特徴とする樹脂フィルムの放電処理方法;
(2)空気噴出孔を設けた工程ロールにて前記処理面を非接触状態のまま樹脂フィルムを移送することを特徴とする(1)記載の樹脂フィルムの放電処理方法;
(3)前記保護フィルムは、粘着フィルムを有するものであることを特徴とする(1)、(2)のいずれかに記載の樹脂フィルムの放電処理方法;
(4)前記樹脂フィルムが偏光フィルムまたは位相差フィルムであることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の樹脂フィルムの放電処理方法;
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放電処理方法は、樹脂フィルムの放電処理面がガイドロール、移送ロールなどの工程ロール面に直接接することがないので、工程ロール面の状態如何に拘らず(工程ロールに付着したシュウ酸などのカルボン酸誘導体の有無に関係なく)、処理面は清浄に保持され、簡便な方法で、輝点の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の樹脂フィルムの放電処理方法の一実施形態を説明する模式的側面図である。
【図2】図2は、本発明の樹脂フィルムの放電処理方法の他の実施形態を説明する模式的側面図である。
【図3】図3は、本発明の樹脂フィルムの放電処理方法の他の実施形態を説明する模式的側面図である。
【図4】図4は、従来の樹脂フィルムの放電処理方法を説明する模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の樹脂フィルムの放電処理方法について詳細に説明する。
【0010】
図1に基づいて本発明を説明する。
ロール巻きされている樹脂フィルム101を繰り出し、コロナ放電処理装置111によりフィルムの表面にコロナ放電処理をする。その後直ちにコロナ放電処理面に保護フィルム104(セパレーターフィルム、粘着フィルム、セパレーターフィルムを順次積層したノンキャリアフィルム102の一方のセパレーターフィルム103を剥離した粘着フィルム付きフィルム)を被覆する。次いで、樹脂フィルム101の裏面にコロナ放電処理装置112によりコロナ放電処理をした後、その処理面を非接触状態(コロナ放電処理装置112によりコロナ放電処理をした後、巻き取り工程までの間に工程ロールがない)で樹脂フィルム101を移送し、後次工程に供する。
本発明における非接触状態とは、コロナ放電処理面が工程ロールと直接接触しない状態のことをいい、具体的な実施形態としては、樹脂フィルムの裏面にコロナ放電処理装置112によりコロナ放電処理した後、後次工程の間全く工程ロールがなく移送する方法(図1)、保護フィルム204で被覆している面に工程ロール221を抱かせて移送する方法(図2)、樹脂フィルムの裏面にコロナ放電処理装置312によりコロナ放電処理した後、空気噴出孔を設けた工程ロール322で移送する方法(図3)、裏面にコロナ放電処理した後その面を保護フィルムで被覆して移送する方法(図示せず)などがある。
【0011】
また、最初に樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理した後、直ちに該処理面を保護フィルム104で被覆することが必要である。従来のような樹脂フィルムの両面コロナ放電処理方法(図4)であれば、コロナ放電処理装置411を用いてコロナ放電処理をした面が次のコロナ放電処理装置412を用いてコロナ放電処理する際に使用されるロールに直接接触するため、長時間にわたって連続的に行うとシュウ酸などのカルボン酸誘導体がロールに付着し、結果としてフィルムに輝点が発生するのであるが、本発明の放電処理方法は、コロナ放電処理装置111を用いてコロナ放電処理した後、直ちに処理面を保護フィルム104で被覆することにより、最初のコロナ放電処理面についてはその後どのようなパスラインにしようと工程ロールが直接表面処理面に接することがないので、輝点の発生が抑制される。
【0012】
また、裏面の処理面についても非接触状態のまま移送することで、工程ロールに直接接触させずに移送させ、両面加工の樹脂フィルムの輝点の発生を抑制するのである。
【0013】
図1の実施形態では、ロール巻きされている樹脂フィルム101を繰り出して、コロナ放電処理する方法を記載しているが、樹脂フィルムの供給方法はこれに限らず、例えば溶融押出で成形したフィルムをそのままコロナ放電処理する場合も包含する。
【0014】
本発明における樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ノルボルネン系フィルムなどのポリオレフィン系フィルム、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等の透明フィルムが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0015】
本発明でいう保護フィルムには、前述の保護フィルム104の他に基材フィルムに粘着剤層を塗布した粘着タイプ、オレフィン系の自己粘着タイプのプロテクトフィルム・マスキングフィルムや粘着性を有しないいわゆる合紙と呼ばれるポリエチレンテレフタレート系フィルムを使用できる。また、本発明でいう後次工程とは、巻き取り工程(図1、図2、図3)に限定されず、それ以外にカット工程(枚葉加工)や他のフィルムと貼合する工程なども含まれる。さらに、上記の説明においては、放電処理がコロナ放電処理の場合について説明したが、プラズマ放電処理にも本発明が適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、樹脂フィルムの放電処理方法に関するものであり、特に液晶ディスプレー等の製造に用いられる偏光フィルムや位相差フィルムなどの光学フィルムの処理に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0017】
101、201、301、401:樹脂フィルム
102、202、302:ノンキャリアフィルム
103、203、303:セパレーターフィルム
104、204、304:保護フィルム(粘着フィルム付きフィルム)
111、112、211、212、311、312、411、412:コロナ放電処理装置
221:工程ロール
322:空気噴出孔を設けた工程ロール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムに放電処理を行なうに際し、
表面に放電処理した後、直ちに処理面を保護フィルムで被覆し、
次いで、裏面に放電処理した後、該処理面を非接触状態のまま樹脂フィルムを移送し、後次工程に供することを特徴とする樹脂フィルムの放電処理方法。
【請求項2】
空気噴出孔を設けた工程ロールにて前記処理面を非接触状態のまま樹脂フィルムを移送することを特徴とする請求項1記載の樹脂フィルムの放電処理方法。
【請求項3】
前記保護フィルムは、粘着フィルムを有するものであることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の樹脂フィルムの放電処理方法。
【請求項4】
前記樹脂フィルムが偏光フィルムまたは位相差フィルムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂フィルムの放電処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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