樹脂フィルム特性評価装置
【課題】延伸中の樹脂フィルムの特性をその場で適切に評価できる樹脂フィルム特性評価装置を提供する。
【解決手段】樹脂フィルムを延伸しつつ、樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置であって、樹脂フィルムを2軸以上に同時延伸可能なフィルム延伸手段と、延伸中の樹脂フィルムに対して電磁波を照射する電磁波照射手段と、樹脂フィルムを透過した電磁波を検出する検出手段とを備え、検出手段の検出結果に基づいて樹脂フィルムの特性を評価する。
【解決手段】樹脂フィルムを延伸しつつ、樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置であって、樹脂フィルムを2軸以上に同時延伸可能なフィルム延伸手段と、延伸中の樹脂フィルムに対して電磁波を照射する電磁波照射手段と、樹脂フィルムを透過した電磁波を検出する検出手段とを備え、検出手段の検出結果に基づいて樹脂フィルムの特性を評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムを延伸しつつ、当該樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、包装、雑貨、農業、工業、食品、医療、光学など広範囲の分野に亘って利用されている。樹脂フィルムは、例えば、弾性率向上、脆弱性改善、水蒸気透過率改善、光学的異方性付与など、樹脂フィルムに機能性を持たせることを目的として、二軸延伸を行う場合がある。樹脂フィルムの特性は延伸の程度によって変化するため、樹脂フィルムの特性の変化と延伸の程度との関係を適切に把握する必要がある。
【0003】
樹脂フィルムの特性の変化と延伸の程度との関係を適切に把握するためには、延伸後の樹脂フィルムの特性のみではなく、延伸過程にある樹脂フィルムにおいてどのような特性の変化がおきているかを適切に把握する必要がある。このため、延伸中の樹脂フィルムの特性をその場(in−situ)で適切に評価できる樹脂フィルム特性評価装置が望まれている。
【0004】
従来、樹脂フィルムの特性を評価する技術として特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、樹脂フィルムの2軸延伸装置において、2軸延伸後の樹脂フィルムの厚みを測定し、測定した厚みに基づいて2軸延伸装置をフィードバック制御することにより、2軸延伸後の樹脂フィルムの厚みを制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−1290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1には、樹脂フィルムの厚みを連続的に測定することが開示されているものの、2軸延伸後の樹脂フィルムの厚みを測定する技術であり、延伸過程の樹脂フィルムの特性の変化をその場で評価するものではない。
【0007】
本発明は上述した背景に鑑みてなされたものであり、延伸中の樹脂フィルムの特性をその場(in−situ)で適切に評価できる樹脂フィルム特性評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樹脂フィルム特性評価装置は、樹脂フィルムを延伸しつつ、当該樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置であって、前記樹脂フィルムを2軸以上に延伸可能なフィルム延伸手段と、延伸中の前記樹脂フィルムに対して電磁波を照射する電磁波照射手段と、前記樹脂フィルムを透過した電磁波を検出する検出手段とを備え、前記検出手段の検出結果に基づいて前記樹脂フィルムの特性を評価する。
【0009】
本構成によれば、フィルム延伸手段により樹脂フィルムを2軸以上に延伸しつつ、検出手段の検出結果に基づき、樹脂フィルムの特性を評価することができる。この結果、延伸中の樹脂フィルムの特性を適切に評価することができる。
なお、本発明において、「樹脂フィルムを延伸しつつ、当該樹脂フィルムの特性を評価する」とは、延伸と特性の評価とを同時に連続的に行う場合のみならず、延伸と特性の評価とを断続的に行う場合も含まれるものである。
【0010】
上述の構成において、前記延伸手段がセンターストレッチ式の延伸手段であると好適である。
【0011】
本構成によれば、樹脂フィルムの中心部は延伸に伴って樹脂フィルムが移動することがない。従って、例えば、樹脂フィルムの一点に電磁波を照射して特性を評価する場合であっても、樹脂フィルムの中心部に電磁波を照射することにより、延伸過程において樹脂フィルムの同一の部位の特性を評価することになる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0012】
上述の構成において、前記樹脂フィルムに対して非接触状態で前記樹脂フィルムの厚みを測定する厚み測定手段を備えると好適である。
【0013】
樹脂フィルムの特性を評価する際に当該樹脂フィルムの特性を示す種々の特性パラメータを算出する場合があり、特性パラメータの算出に樹脂フィルムの厚みが必要になる場合がある。従って、厚み測定手段を備えることにより、樹脂フィルムの厚みを正確に得ることができ、特性パラメータを正確に算出することができる。しかも、厚み測定手段が樹脂フィルムに接触することなく厚みを測定するので、厚み測定手段が延伸に影響を与えることがない。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0014】
前記樹脂フィルムにかかる張力を測定する張力測定手段を備えると好適である。
【0015】
樹脂フィルムを延伸する際の特性の変化と樹脂フィルムにかかる張力とは密接に関係する。したがって、張力測定手段により延伸中の張力についても測定することにより、延伸と樹脂フィルムの特性との関係を的確に把握することができる。
【0016】
上述の構成において、温度制御可能な恒温槽を備え、前記フィルム延伸手段が前記恒温槽の内部に設けられていると好適である。
【0017】
上述の構成により、樹脂フィルムの雰囲気温度の制御が容易になる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0018】
上述の構成において、前記恒温槽が加熱空気により温度制御を行う恒温槽であり、前記加熱空気の供給口から供給された加熱空気が前記樹脂フィルムの面に均一に当たるように前記空気の流れを制御する空気流制御手段が設けられていると好適である。
【0019】
樹脂フィルムに局所的に加熱空気が当たることにより、樹脂フィルムの当該部分が他の部分より加熱され温度が高くなり、他の部分よりも延伸されて、樹脂フィルムが不均一に延伸される原因となる場合がある。そこで、本構成のように、空気流制御手段により空気の流れを制御して、加熱空気を樹脂フィルムの面に均一に当てることにより、樹脂フィルムの温度が均一になる。その結果、樹脂フィルムを均一に加熱することができる。
【0020】
上述の構成において、前記フィルム延伸手段が前記樹脂フィルムを挟持する挟持部を有し、前記供給口から吐出された前記加熱空気が前記挟持部に直接当たらないように前記供給口を配置してあると好適である。
【0021】
本構成のように、フィルム延伸手段が樹脂フィルムを挟持する挟持部を有する場合、当該挟持部が樹脂フィルムと接触することになる。この場合、加熱空気が挟持部に直接当たると、加熱空気により挟持部が過度に加熱されて、樹脂フィルムのうち挟持部による挟持箇所の近傍の部分が局所的に加熱される場合がある。この状態で樹脂フィルムを延伸すると、局所的に加熱された挟持部近傍の樹脂フィルムが他の部分よりも延伸されて均一に樹脂フィルムを延伸できない場合がある。そこで、本構成のように、供給口から吐出された加熱空気が挟持部に直接当たらないように供給口を配置することにより、挟持部が過度に加熱されるのを防止し、樹脂フィルムを均一に延伸することができる。
【0022】
上述の構成において、前記フィルム延伸手段が前記樹脂フィルムを挟持する挟持部を有し、前記空気流制御手段が、前記加熱空気が前記挟持部に直接当たることを防止する防止手段を含むと好適である。
【0023】
本構成により、防止手段により加熱空気が挟持部に直接当たることを確実に防止することができ、挟持部が過度に加熱されるのを防止することができる。この結果、樹脂フィルムが局所的に加熱されるのを防止して、樹脂フィルムを均一に延伸することができる。
【0024】
上述の構成において、前記空気流制御手段が風向板により構成されていると好適である。本構成により、風向板により安価な構成で空気流を制御することができる。
【0025】
上述の構成において、前記風向板が、前記供給口からの前記加熱空気を前記樹脂フィルムの面の上方及び下方の少なくとも何れか一方に仕向ける風向板と、前記樹脂フィルムの面の上方又は下方を通過した前記加熱空気を前記前記樹脂フィルムの上面又は下面に仕向ける風向板とを有すると好適である。
【0026】
上述の構成において、前記恒温槽が加熱空気により温度制御を行う恒温槽であり、前記加熱空気の供給口と排気口とが、前記加熱空気の供給方向及び排気方向が前記樹脂フィルムの面に沿った方向になるよう対向して設けられていると好適である。
【0027】
本構成によれば、加熱空気の供給口と排気口とが加熱空気の供給方向及び排気方向が樹脂フィルムの面に沿った方向になるよう対向して設けられているので、樹脂フィルムの面に沿った方向の空気流が生じる。このため、樹脂フィルムが空気流の障害となることを防止して、確実に加熱空気が循環するので、樹脂フィルムを均一に加熱することができる。また、空気流による樹脂フィルムへの負荷を減少させ、空気流の延伸への影響を低減することができる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0028】
上述の構成において、前記恒温槽の対向する2つの壁面の夫々の少なくとも一部が、前記電磁波を透過する透過部材で構成され、前記恒温槽の外側に、一方の前記透過部材と対向して前記電磁波照射手段が設けられ、他方の前記透過部材と対向して前記検出手段が設けられていると好適である。
【0029】
本構成によれば、透過部材を介して確実に電磁波を恒温槽内に照射することができるとともに、樹脂フィルムを透過した電磁波を、透過部材を介して確実に電磁波を恒温槽外に取り出すことができる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0030】
上述の構成において、前記透過部材が着脱可能に構成されていると好適である。
【0031】
電磁波の種類(波長)によって透過しやすい物質は異なるので、透過部材に適した材質も異なる。そこで、本構成のように透過部材を着脱可能に構成することにより、電磁波の種類(波長)に応じて適した透過部材を用いることができる。この結果、適用可能な 電磁波の種類(波長)が広がり、樹脂フィルム特性評価装置の適用の幅も広がる。
【0032】
上述の構成において、前記樹脂フィルムが法線を重力方向に沿わせて配置され、前記樹脂フィルムの上面と対向する壁面及び前記樹脂フィルムの下面と対向する壁面の夫々の少なくとも一部が前記透過部材で構成されていると好適である。
【0033】
本構成によれば、樹脂フィルムの延伸方向が重力の方向と垂直になり、重力が延伸に及ぼす影響を低減することができる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0034】
上述の構成において、前記電磁波照射手段から照射される電磁波が可視光であり、前記電磁波は照射手段と前記樹脂フィルムの一方の面との間に配置された第1偏光部材と、前記検出手段と前記樹脂フィルムの他方の面との間に配置された第2偏光部材とを備え、前記第1偏光部材の配向軸と前記第2偏光部材の配向軸とが直交するように前記第1偏光部材と前記第2偏光部材とが配置され、前記第2偏光板を透過した光に基づいて前記樹脂フィルムの特性を評価すると好適である。
【0035】
本構成によれば、第1偏光部材の配向軸と第2偏光部材の配向軸とが直交することから、第1偏光部材及び第2偏光部材以外に偏光を行う部材が存在しなければ、第1偏光部材を透過した光は第2偏光部材を透過しない。一方、樹脂フィルムを延伸していくと、樹脂フィルムが延伸度合いに応じて配向し、偏光性を示すことになる。樹脂フィルムの延伸された部分を透過した光は偏光されるため、第2偏光部材を透過する。従って、第2偏光部材からの光の透過を観察することにより、樹脂フィルムの配向分布を視覚的に把握することができる。
【0036】
前記樹脂フィルムの特性の一例として、前記樹脂フィルムの配向を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置の全体構成を示す図である。
【図2】特性評価ユニットを示す図である。
【図3】延伸ユニットを示す図である。
【図4】延伸ユニットを示す図である。
【図5】第2実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置を示す図である。
【図6】空気流制御手段の効果を示す図である。
【図7】別実施形態の空気流制御手段を示す図である。
【図8】別実施形態の空気流制御手段を示す図である。
【図9】別実施形態の空気流制御手段を示す図である。
【図10】別実施形態の透過部材を示す図である。
【図11】別実施形態の特性評価ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る樹脂フィルム特性評価装置について、図面に基づいて説明する。この樹脂フィルム特性評価装置は、図1及び図2に示すように、樹脂フィルムを延伸するための延伸ユニット1(フィルム延伸手段の一例)、樹脂フィルムの雰囲気温度を制御する空調ユニット2、樹脂フィルムの特性を評価するための特性評価ユニット3などを備えて構成されている。
【0039】
延伸ユニット1は、恒温槽21の内部に設けられて構成されている。この延伸ユニット1は、2軸同時延伸が可能に構成されている。図3及び図4に示すように、延伸ユニット1は、樹脂フィルム100を挟持するチャック部材(挟持部の一例)13,14、チャック部材を摺動移動可能に支持する支持フレーム11,12、支持フレームを駆動する駆動手段、駆動手段を制御する延伸コントローラなどを備えて構成される。
【0040】
図3に示すように、支持フレームは、第1方向Xに往復動する一対の第1フレーム11a,11bと第1方向Xと直交する第2方向Yに往復動する一対の第2フレーム12a,12bとを備える。図3に示すように第1フレーム11a,11bと第2フレーム12a,12bとで、上面視で略正方形形状を呈するように、第1フレーム11a,11bと第2フレーム12a,12bが配置されている。それぞれの略正方形の各頂点には隣接する第1フレーム11と第2フレーム12とを連結する連結部材15が設けられている。図3及び4に示すように、連結部材15には上面視において第1方向Xに沿った第1孔部15aと第2方向にY沿った第2孔部15bとが、異なる高さ位置において形成されている。
第1フレーム11が第2孔部15bに挿入され、第2フレーム12が第1孔部15aに挿入されることにより、第1フレーム11と第2フレーム12とが連結される。第1フレーム11は、連結部材15とともに、第2フレーム12に沿って、第1方向Xに往復動可能である。また、第2フレーム12は、連結部材15とともに、第1フレーム11に沿って、第2方向Yに往復動可能である。
【0041】
それぞれの第1フレーム11a,11bに、複数のチャック部材13a,13bが、第1フレーム11a,11bの延在方向に沿って摺動移動可能に設けられている。また、それぞれの第2フレーム12a,12bにも、複数のチャック部材14a,14bが、第2フレーム12a,12bの延在方向に沿って摺動移動可能に設けられている。本実施形態では、それぞれの第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bに4個のチャック部材13a,13b,14a,14bが設けられている。隣接する連結部材15の間には、例えば開閉式のパンタグラフ型平行リンク16が設けられ、この平行リンク16を介して、チャック部材13a,13b,14a,14bが第1フレーム11a,11b若しくは第2フレーム12a,12bに摺動移動自在に支持されている。これにより、図3及び図4に示すように、第1フレーム11a,11b同士の近接・離間に追従して、第1フレーム11a,11bに設けられたチャック部材13a,13b同士が近接離間する。また、第2フレーム12a,12b同士の近接・離間に追従して、第2フレーム12a,12bに設けられたチャック部材14a,14b同士が近接離間する。この実施形態では吹出ノズル28に対向する位置にチャック部材14aが配置され、吸気ノズル29に対向する位置にチャック部材14bが設けられている。
【0042】
第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bは、図示しない駆動手段により駆動される。駆動手段としては、例えばエアーシリンダーなどの往復動をする直線駆動型の駆動装置を好適に用いることができるが、モータ等の回転型の駆動装置からの回転駆動力を直線方向の駆動力に変換して用いても良い。
【0043】
この実施形態においては、延伸ユニット1は、センターストレッチ方式に構成されている。具体的には、第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bが同一速度で離間することにより、それぞれの連結部材15が同一速度で離間し、それに伴い、それぞれの平行リンク16が伸びる。それぞれの平行リンク16が伸びるのに伴い、それぞれのチャック部材13a,13b,14a,14bが互いに均等に離間する。この結果、チャック部材13a,13b,14a,14bに挟持された樹脂フィルム100が各方向に均等に延伸される。
【0044】
空調ユニット2は、空気を加熱して温風を発生させる温風発生手段26、恒温槽21、温風を循環させる通風手段27c、空調ユニットを制御する空調コントローラなどを備える。
【0045】
恒温槽21内には、図示しない温度センサが設けられ、空調コントローラは、温度センサが検出した恒温槽21内の温度に基づいて、例えばフィードバック制御により、恒温槽21の温度が設定の温度となるよう、温風発生手段26を制御する。
【0046】
恒温槽21は、上面22、底面23及び側面を有する。恒温槽21の上面には、開閉可能な蓋部24が設けられ、当該蓋部24を開放することにより、延伸ユニット1への樹脂フィルム100の着脱が可能である。蓋部24の一部が、恒温槽21内部の視認及び後述するヘリウム−ネオンレーザーからの照射光の透過が可能なように、ガラスなどの透明部材24aで構成されている。また、底面23のうち蓋部24の透明部材24aと対向する部位についても、ガラスなどの透明部材25で構成されている。
【0047】
また、恒温槽21内には、温風を噴出す吹出ノズル28と恒温槽21内の空気を吸込む吸込ノズル29とが設けられている。吹出ノズル28と吸込ノズル29とは、延伸ユニット1を挟んで対向して設けられている。また、チャック部材13,14に挟持された樹脂フィルム100の面方向に沿って、温風が噴出されるように、吹出ノズル28が配置されている。また、通風手段27cの吐出口と吹出ノズル28とを繋ぐ吐出側通気路27a及び、通風手段27cの吸込口と吸込ノズル29とを繋ぐ吸気側通気路27bが設けられている。噴出側通気路27a及び吸気側通気路27bの一部に温風発生手段26が設けられている。温風発生手段26の詳細は省略するが、既知のヒータ及び熱交換器などを備えて構成されている。
【0048】
特性評価ユニット3は、樹脂フィルム100に対して電磁波を照射する電磁波照射手段と、樹脂フィルムを透過した電磁波を検出する検出手段とを備える。本実施形態では、電磁波の一例として樹脂フィルムに可視光を照射して位相差を測定し、位相差に基づいて樹脂フィルムの複屈折率(樹脂フィルムの特性値の一例)を求める。
【0049】
この特性評価ユニット3は、電磁波照射手段としてのヘリウム−ネオンレーザー31と検出手段としての光検出器32とを備える。このヘリウム−ネオンレーザーは、単一波長(波長λ=632.8nm)の可視光を照射する。ヘリウム−ネオンレーザーは、恒温槽21の上面22の蓋部24に形成した透明部材24aから恒温槽21の内部に可視光を照射可能に配置されている。本実施形態においては、恒温槽21の上面22に沿った方向に可視光を照射し、この可視光をミラー37により反射させて透明部材24aから恒温槽21の内部に可視光を照射する。また、ヘリウム−ネオンレーザー31からの照射光を偏光する偏光板33が、ミラー37と透明部材24aとの間に設けられている。なお、ミラー37は必ずしも設ける必要は無く、ヘリウム−ネオンレーザー31を透明部材24aに対向して設けて、ヘリウム−ネオンレーザー31からの可視光を恒温槽21の内部に直接照射してもよい。
【0050】
この実施形態において、延伸される樹脂フィルムの中心部分、つまり、上面視で略正方形に配置された第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bの対角線の交点近傍に照射光が照射されるように、ヘリウム−ネオンレーザー31及びミラー37が配置されている。これにより、樹脂フィルム100をセンターストレッチ方式で延伸する場合に、延伸による樹脂フィルム100の移動に拘わらず、樹脂フィルム100の同一の部位に照射光を照射することができる。
【0051】
光検出器32は、恒温槽21の底面23に形成した透明部材25に対向して設けられている。上述の構成により、恒温槽21の上面22から恒温槽21内に照射された可視光が樹脂フィルム100を透過して、底面23の透明部材25を透過して、光検出器32に検出される。透明部材25と光検出器32との間には、透明部材25から光検出器32側に向かって、1/4波長板34と偏光板35とがこの順で配置されている。1/4波長板34は、その配向軸が偏光板33と一致するように配置されている。偏光板35はモータ等の図示しない駆動手段に連動され、回転可能に設けられている。
【0052】
詳細は省略するが、上述の構成により、偏光板35を回転させつつヘリウム−ネオンレーザー31から光を照射して、偏光板の種々の回転位相における光検出器32の検出結果に基づいて、演算手段36が位相差δを算出する。
【0053】
また、演算手段36は、樹脂フィルム100の延伸に伴う位相差δに基づいて樹脂フィルムの複屈折率Δnを算出する。複屈折率Δnは以下の式(1)で表される。
Δn=δλ/(2πd) 式(1)
ここで、λは照射光の波長、dは樹脂フィルム100の厚みである。
【0054】
従って、演算手段36は、式(1)に基づいて、種々の延伸状態における複屈折率Δnを算出する。なお、樹脂フィルムの厚みdは、延伸ユニット1のチャック部材13,14の移動距離に基づく樹脂フィルムの延伸率から算出してもよく、また、恒温槽内に非接触式の厚みセンサを備え、厚みセンサにより測定した実測値を用いてもよい。
【0055】
上述した樹脂フィルム特性評価装置により、フィルム延伸ユニット1により樹脂フィルム100を2軸に同時延伸しつつ、樹脂フィルム100の特性を連続的に評価する。
なお、「樹脂フィルム100を延伸しつつ、特性を連続的に評価する」とは、延伸と特性の評価とを同時に連続的に行う場合のみならず、延伸と特性の評価とを断続的に行う場合も含まれるものである。
【0056】
上述したように、本発明に係る樹脂フィルム特性評価装置は、延伸中の樹脂フィルム100の特性を、その場(in−situ)で適切に評価できる。この結果、擬似的に実際の樹脂フィルム製造時と同様の条件により樹脂フィルム100を延伸しつつ特性を評価することにより、樹脂フィルム製造の際の最適条件を早期に発見することができる。また、樹脂フィルム製造の際の適した材料設定を早期に行うことができる。さらに、樹脂フィルム製造の際の最適条件および適した材料を早期に設定できることから、この条件および材料に適した樹脂フィルム製造装置等の装置の仕様を早期に決定することができる。従って、設備の仕様を早期に決定することができる。
【0057】
[実施形態2]
第2実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置は、加熱空気の吹出ノズル28から供給された加熱空気が樹脂フィルム100の面に均一に当たるように空気の流れを制御する空気流制御手段200を備える点で第1実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置と異なる。
【0058】
また、図5に示すように、この実施形態では、吐出側通気路27a(図1を参照)に連通して吐出側空気滞留部110が設けられ、吐出側空気滞留部110に複数の吐出ノズル28(供給口の一例)が設けられている。また、吸気側通気路27b(図1を参照)に連通して吸気側空気滞留部111が設けられ、吸気側空気滞留部111に複数の吸込ノズル29が設けられている。吐出側空気滞留部110及び吸気側空気滞留部111の流通断面積は、吐出側通気路27a及び吸気側通気路27bの流通断面積よりも大きく設定されている。このため、後述するように、吹出ノズル28及び吸込ノズル29を複数も受ける場合であっても、各吹出ノズル28からの吹出圧及び各吸込ノズル29の吸込圧をそれぞれ均一にすることができ、恒温槽21内の空気流を均一にすることができる。
【0059】
本実施形態では図5(a)に示すように、上側の吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bが設けられている。図5(a)に示すように、上側の吹出ノズル28aは、チャック部材14a及び樹脂フィルム100よりもやや上方にオフセットして配置されている。また、下側の吹出ノズル28bはチャック部材14a及び樹脂フィルム100よりもやや下側にオフセットして配置されている。図5(b)に示すように、これら上側の吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bは、樹脂フィルムの延在方向に沿って複数設けられている。また、図5に示すように、吸込ノズル29についても複数設けられている。
【0060】
図5に示すように、この実施形態において、空気流制御手段200は風向板により構成されている。風向板201aの一方の面は吹出ノズル28a,28bの吹出口に対向するとともに、他方の面はチャック部材14aに対向して配置される。この風向板201aは、恒温槽21の幅方向において、吐出ノズル28a,28bの延在領域の略全域に亘って延在すると共に、上面22(蓋部24)及び底面23との間に隙間が形成されるように恒温槽21の高さ方向に延在している。
【0061】
風向板201aの上端から樹脂フィルム100の上面方向に沿って風向板201fが設けられている。風向板201fは、風向板201aの上端から初期位置(延伸前の位置)におけるチャック部材14aの上方近傍まで延在している。恒温槽21の幅方向における吹出ノズル28bの延在領域の夫々の端部には、底面23に風向板201b、201cが設けられている。風向板201b、201cは、吹出ノズル28bから吸込ノズル29側に向かって外側に広がるように傾斜して配置されている。
【0062】
また、上面22(蓋部24)には風向板201dが、底面23には風向板201eが夫々設けられている。風向板201d及び風向板201eは、平面視で樹脂フィルム100を囲むように円弧状に設けられている。なお、本実施形態では、風向板201d及び風向板201eの各々を、単一の風向板を円弧状に湾曲させて形成しているが必ずしもこの形態に限られるわけではなく、樹脂フィルムを囲むように設けられていれば何れの形状であっても良い。例えば単一の風向板を多角形形状に折り曲げてもよい。また、複数の平板状の風向板を並べて円弧形状や多角形形状を構成してもよい。
【0063】
次にこれらの風向板による風流制御の一例について説明する。吹出ノズル28aからの加熱空気は風向板201aにより上方に仕向けられ、吐出ノズル28bからの加熱空気は風向板201aにより下方に仕向けられる。上方に仕向けられた加熱空気は風向板201fにより、チャック部材14aに直接当たることを防止しつつ、樹脂フィルム100の上面に仕向けられる。風向板201a,201fにより,樹脂フィルム100の上方を通過した加熱空気は風向板201dにより再び樹脂フィルム100の側へ仕向けられる。一方、風向板201aにより下方に仕向けられた加熱空気は風向板201b、201cにより、樹脂フィルム100の下面に仕向けられる。樹脂フィルム100の下面を通過した加熱空気は風向板201eにより再び樹脂フィルム100に仕向けられる。このように、風向板201a,201により、吹出ノズル28a,28bからの加熱空気がチャック部材14aに直接当たることが防止される。ここで、201a,201fは、本発明の防止手段に相当する。
【0064】
次に、図6に基づいて、空気流制御手段200として、風向板201a,201b,201c,201d,201e,201fを設けた場合の効果について説明する。図6(a)は、空気流制御手段200を備える場合の実験結果であり、図6(b)は、空気流制御手段200を備えない場合の実験結果である。
【0065】
夫々の実験において、恒温槽温度を150℃に設定し、チャック部材13a,13b,14a,14b及び樹脂フィルム100の温度分布を測定した。図6には、実験開始から1時間後及び1時間30分後の温度分布を、各領域の測定温度の中間値との差として示す。
【0066】
図6(a)に示すように、空気流制御手段200を設けた場合、1時間後において、温度が最も高かったのは樹脂フィルム100であり、中央値+1℃であった。一方、最も温度が低かったのは、吹出ノズル28に対向するチャック部材14a及び吸込ノズル29に対向するチャック部材14bであり、中央値−2℃であった。実験開始から1時間後の最高温度と最低温度との差は3℃であった。1時間半後において、温度が最も高かったのはチャック部材13a,13bであり、中央値+1℃であった。一方、温度が最も低かったのは樹脂フィルム100、吹出ノズル28に対向するチャック部材14a、及び、吸気ノズル29に対向するチャック部材14bであり、中心値±1℃であった。実験開始から1時間半後の最高温度と最低温度との差は2℃以下であった。
【0067】
図6(b)に示すように、空気流制御手段200を設けない場合、1時間後において、温度が最も高かったのは吹出ノズル28に対向するチャック部材14aであり、中央値+5℃であった。一方、最も温度が低かったのは吸込ノズル29に対向するチャック部材14bであり、中央値−5℃であった。実験開始から1時間後の最高温度と最低温度との差は10℃であった。1時間半後において、温度が最も高かったのは吹出ノズル28に対向するチャック部材14aであり、中央値+2℃であった。一方、温度が最も低かったのは樹脂フィルム100であり、中心値−4℃であった。実験開始から1時間半後の最高温度と最低温度との差は6℃であった。
【0068】
このように、実験開始から1時間後の最高温度と最低温度との差は、空気流制御手段200を設けた場合が3℃であるのに対して、空気流制御手段200を設けない場合が10℃であった。また、実験開始から1時間半後の最高温度と最低温度の差は、空気流制御手段を設けた場合が2℃以下であるのに対して、空気流制御手段200を設けない場合が6℃であった。上述の実験結果から明らかなように、空気流制御手段200を設けることにより、樹脂フィルム100及びチャック部材13a,13b,14a,14bを均一に加熱することができる。
【0069】
樹脂フィルム100に局所的に加熱空気が当たるなどの原因により、樹脂フィルム100が不均一に加熱される場合、加熱度合いにより樹脂フィルム100の延伸度合いが異なる。このため、樹脂フィルム100が不均一に延伸される原因となる場合がある。そこで、空気流制御手段200により空気の流れを制御して、加熱空気を樹脂フィルム100の面に均一に当てることにより、樹脂フィルム100の温度が均一になる。その結果、樹脂フィルム100を均一に加熱することができる。
【0070】
特に、樹脂フィルム100をチャック部材13a,13b,14a,14bにより挟持する場合、当該チャック部材13a,13b,14a,14bが樹脂フィルムと接触することになる。この場合、加熱空気がチャック部材に直接当たると、加熱空気によりチャック部材が過度に加熱されて、樹脂フィルムのうちチャック部材による挟持箇所の近傍の部分が局所的に加熱される場合がある。空気流制御手段200を設けない実験結果の場合(図6(b)を参照)、吹出ノズル28に対向するチャック部材14aは過度に加熱された。一方で、チャック部材14aで加熱空気が遮られるため、チャック部材14bはほとんど加熱されなかった。この状態で樹脂フィルム100を延伸すると、局所的に加熱されたチャック部14a近傍の樹脂フィルム100が他の部分よりも延伸されて均一な延伸できない。そこで、本構成のように、空気流制御手段200により、吹出ノズル28から吐出された加熱空気がチャック部材14aに直接当たらないように構成することにより、実験結果に示したように、チャック部材13a,13b,14a,14b及び樹脂フィル100の加熱度合いが略均一になり、樹脂フィルム100を均一に延伸することができる。
【0071】
なお、上述したように、樹脂フィルム100を均一に延伸するためには、空気流制御手段200を設けた方が好ましい。しかしながら、チャック部材の形状・材質等によっては、必ずしも上述した加熱度合いが不均一になる問題が生じない場合も有る。また、樹脂フィルム100の材質によっては、多少の加熱度合いの不均一が生じたとしても均一な延伸が可能な場合もある。従って、空気流制御手段200は必須の要素ではなく、第1実施形態に示したように、空気流制御手段200を設けなくてもよい。
【0072】
[別実施形態]
(1)次に空気流制御手段200の別実施形態について説明する。上述の実施形態では、空気流制御手段200として、風向板201a,201b,201c,201d,201e,201fを設ける場合を例に説明したが、風向板及び吹出ノズル28の配置はこれに限られるものではない。例えば、図7に示すものであってもよい。図7に示す例では、吹出ノズル28a,28bに対向する風向板200aを設ける代わりにチャック部材13,14及び樹脂フィルム100に加熱空気が直接当たらない位置に吹出ノズル28a,28bが配置されている。つまり、上側の吹出ノズル28aは、チャック部材14a及び樹脂フィルム100よりも上方にオフセットして配置されている。また、下側の吹出ノズル28bは、チャック部材14b及び樹脂フィルム100よりも下方にオフセットして配置されている。このように、吹出ノズル28a,28bの吹出口とチャック部材14a及び樹脂フィルム100をオフセットさせることにより、チャック部材13,14及び樹脂フィルム100に吹出ノズル28a,28bからの加熱空気が直接当たらないように配置されている。
【0073】
また、図7に示すように、風向板201g,201hが設けられている。風向板201gは、樹脂フィルム100の上面の上方を通過した加熱空気を樹脂フィルム100に仕向けるよう、樹脂フィルム100よりも下手側(吸気ノズル29側)において吹出ノズル28aと対向して配置されている。風向板201hは、樹脂フィルム100の下面の下方を通過した加熱空気を樹脂フィルム100に仕向けるよう、樹脂フィルム100よりも下手側(吸気ノズル29側)において吹出ノズル28bと対向して配置されている。
【0074】
(2)図8に示す例では、空気流制御手段200として、樹脂フィルム100の上方及び下方に風向板201i,201jを設けてある。これらの風向板201i,201jは、樹脂フィルム100と対向する位置に穴部202,203を有する。吹出ノズル28aが風向板201iよりも上方側に、吹出ノズル28bが風向板201jよりも下方側にそれぞれ設けられている。この実施形態では、風向板201iにより、吐出ノズル28aからの加熱空気がチャック部材13,14に直接当たるのが防止され、穴部202を通過した加熱空気が、樹脂フィルム100の上面に当たる。また、風向板201jにより、吐出ノズル28bからの加熱空気がチャック部材13,14に直接当たるのが防止され、穴部203を通過した加熱空気が、樹脂フィルム100の下面に当たる。
【0075】
(3)上述の実施形態では、空気流制御手段200として、風向板を例に説明したが、空気流制御手段200は、加熱空気が樹脂フィルムの面に均一に当たるように空気の流れを制御するものであれば、風向板に限られるものではない。図9に示す例では、上側の吹出ノズル28aが樹脂フィルム100の上面近傍まで延在し、吹出ノズル28aの吹出口が樹脂フィルム100の上面に対向して配置されている。また、下側の吹出ノズル28bも同様に、樹脂フィルム100の下面近傍まで延在し、吹出ノズル28bの吹出口が樹脂フィルム100の下面に対向して配置されている。
【0076】
(4)実施形態2以降では、吐出側空気滞留部110及び吸気側空気滞留部111を設ける例を示したが、110吐出側空気滞留部及び吸気側空気滞留部111は必ずしも設ける必要はなく、何れか一方のみを設けても良く、また、何れも設けなくても良い。一方、実施形態1において、吐出側空気滞留部110又は吸気側空気滞留部111、若しくは、両方を設けてもよい。また、第2実施形態以降では上側の吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bを設けて樹脂フィルム100の上下両面から加熱空気を当てる場合を例に説明したが、吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bの何れか一方のみを設けて、上面及び下面の何れか一面のみに加熱空気を当ててもよい。一方、第1実施形態において、上側の吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bを設けてもよい。
【0077】
(5)別実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置について説明する。図9に示すように、この樹脂フィルム特性評価装置は、特性評価ユニット3が上述の実施形態とは異なる。以下、具体的に説明する。この特性評価ユニット3は、電磁波照射手段31としての光源31bと、検出手段32としてのビデオカメラ32bとを備える。なお、この樹脂フィルム特性評価装置においても、上述した空気流制御手段200を備えてもよい。
【0078】
光源31bは、恒温槽21の底面23の透明部材25に対向して設けられ、透明部材25を介して恒温槽21の内部に可視光を照射する。ビデオカメラ32bは、上面の蓋部に形成された透明部材24aと対向して設けられている。光源31bと恒温槽21の底面23の透明部材25との間に第1偏光板38が、蓋部24の透明部材24aとビデオカメラ32bとの間に第2偏光板39が、それぞれ設けられている。第1偏光板38と第2偏光板39とは、互いの配向軸38a,39aが直行するように(偏光角度が90°異なるように)配置されている。
【0079】
この特性評価ユニットにおいて、第1偏光板38の偏光角度と第2偏光板39の偏光角度とが90°異なることから、第1偏光板38及び第2変光板39以外に偏光を行う部材が存在しなければ、第1偏光板38を透過した光は第2偏光板39を透過しない。従って、ビデオカメラ32bによる撮影画像は全体的に暗い(黒っぽい)画像となる。未延伸の樹脂フィルム100を用いた場合、樹脂フィルム100が延伸ユニット1により延伸される前の状態においては、樹脂フィルム100は配向しておらず、偏光性を示さず、撮影画像は全体的に暗い(黒色)画像となる。
【0080】
樹脂フィルム100を延伸していくと、樹脂フィルム100が延伸度合いに応じて配向し、偏光性を示すことになる。樹脂フィルム100の延伸された部分を透過した光は偏光されるため、第2偏光板39を透過する。撮影画像において、光が第2偏光板39を透過した部分については、透過光により呈色した画像となる。従って、延伸ユニット1により延伸中の樹脂フィルム100に光源31bから光を照射してビデオカメラ32bの撮影画像を観察することにより、樹脂フィルム100の配向分布を視覚に把握することができる。
【0081】
初期状態において有る程度延伸された樹脂フィルム100を用いることもできる。この場合、樹脂フィルム100が延伸ユニット1により延伸される前の状態においても、樹脂フィルム100が有る程度配向しており、偏光性を示すことから、撮影画像は光により呈色した画像となる。樹脂フィルム100が延伸ユニット1により延伸されると、樹脂フィルム100の延伸度合いに応じて配向度合いが変化し、透過光による呈色具合も変化する。従って、ビデオカメラ32bの撮影画像を観察することにより、樹脂フィルム100の配向分布を視覚に把握することができる。
【0082】
なお、光源31bとしては、特に限定されないが例えば蛍光灯などを用いることができる。また、光源31bとしては、樹脂フィルム100の全域に光を照射可能なものを用いることが好ましい。これにより、樹脂フィルム100全体の配向度合いを把握することができる。
【0083】
(6)上述の実施形態において、電磁波の一例として可視光を例に説明したが電磁波はこれに限られるものではない。電磁波としては、例えば赤外線など可視光以外の波長領域を用いてもよい。この場合電磁波の波長によって透過しやすい物質が異なるので、電磁波の波長によって透過部材の材質を異ならせる必要がある。そこで、図10に示すように、透過部材を着脱可能に構成するとよい。図10の例では、ガラス製の透明部材24a、25の中央部に穴部40を設け、当該穴部40に対して透過部材41を着脱可能に構成されている。電磁波が赤外線の場合は、例えば臭化カリウムにより構成された透過部材41が好適に用いられる。
【0084】
(7)上述の構成において、延伸ユニットに例えばロードセル等の張力測定手段を備えて、延伸中の樹脂フィルムにかかる張力を測定可能に構成してもよい。
【0085】
(8)
上述の実施形態において、延伸ユニット1がセンターストレッチ式に構成される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、隣接する第1フレーム11a及び第2フレーム12bを固定した状態で、もう一方の隣接する第1フレーム11b及び第2フレーム12aを離間方向に移動させることによって樹脂フィルム100の延伸を行っても良い。また、第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bの全てを移動させる場合であっても、同一速度で移動させるのではなく、異なった速度で移動させてもよい。また、延伸ユニット1は、必ずしも2軸同時延伸を行うものでなくても良い。例えば、第2フレーム12a,12bを停止した状態で、第1フレーム11a,11bを互いに離間させ、その後、第1フレーム11a,11bを停止してから第2フレーム12a,12bを離間させるなど、逐次的に延伸を行っても良い。なお、延伸ユニット1を、上述した複数の延伸モードを切り替え可能に構成してもよい。
【0086】
(9)上述の実施形態において、2軸延伸を例に説明したが、3軸以上の多軸延伸であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置に適応可能である。
【0088】
1 延伸ユニット(フィルム延伸手段の一例)
13 チャック部材
14 チャック部材
21 恒温槽
24a 透明部材(透過部材の一例)
25 透明部材(透過部材の一例)
28 吹出ノズル(供給口の一例)
29 吸気ノズル(排気ノズルの一例)
31 ヘリウム−ネオンレーザー(電磁波照射手段の一例)
32 光検出器(検出手段の一例)
100 樹脂フィルム
200 空気流制御手段
201 風向板(空気流制御手段の一例)
202 穴部(空気流制御手段の一例)
203 穴部(空気流制御手段の一例)
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムを延伸しつつ、当該樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、包装、雑貨、農業、工業、食品、医療、光学など広範囲の分野に亘って利用されている。樹脂フィルムは、例えば、弾性率向上、脆弱性改善、水蒸気透過率改善、光学的異方性付与など、樹脂フィルムに機能性を持たせることを目的として、二軸延伸を行う場合がある。樹脂フィルムの特性は延伸の程度によって変化するため、樹脂フィルムの特性の変化と延伸の程度との関係を適切に把握する必要がある。
【0003】
樹脂フィルムの特性の変化と延伸の程度との関係を適切に把握するためには、延伸後の樹脂フィルムの特性のみではなく、延伸過程にある樹脂フィルムにおいてどのような特性の変化がおきているかを適切に把握する必要がある。このため、延伸中の樹脂フィルムの特性をその場(in−situ)で適切に評価できる樹脂フィルム特性評価装置が望まれている。
【0004】
従来、樹脂フィルムの特性を評価する技術として特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、樹脂フィルムの2軸延伸装置において、2軸延伸後の樹脂フィルムの厚みを測定し、測定した厚みに基づいて2軸延伸装置をフィードバック制御することにより、2軸延伸後の樹脂フィルムの厚みを制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−1290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1には、樹脂フィルムの厚みを連続的に測定することが開示されているものの、2軸延伸後の樹脂フィルムの厚みを測定する技術であり、延伸過程の樹脂フィルムの特性の変化をその場で評価するものではない。
【0007】
本発明は上述した背景に鑑みてなされたものであり、延伸中の樹脂フィルムの特性をその場(in−situ)で適切に評価できる樹脂フィルム特性評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樹脂フィルム特性評価装置は、樹脂フィルムを延伸しつつ、当該樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置であって、前記樹脂フィルムを2軸以上に延伸可能なフィルム延伸手段と、延伸中の前記樹脂フィルムに対して電磁波を照射する電磁波照射手段と、前記樹脂フィルムを透過した電磁波を検出する検出手段とを備え、前記検出手段の検出結果に基づいて前記樹脂フィルムの特性を評価する。
【0009】
本構成によれば、フィルム延伸手段により樹脂フィルムを2軸以上に延伸しつつ、検出手段の検出結果に基づき、樹脂フィルムの特性を評価することができる。この結果、延伸中の樹脂フィルムの特性を適切に評価することができる。
なお、本発明において、「樹脂フィルムを延伸しつつ、当該樹脂フィルムの特性を評価する」とは、延伸と特性の評価とを同時に連続的に行う場合のみならず、延伸と特性の評価とを断続的に行う場合も含まれるものである。
【0010】
上述の構成において、前記延伸手段がセンターストレッチ式の延伸手段であると好適である。
【0011】
本構成によれば、樹脂フィルムの中心部は延伸に伴って樹脂フィルムが移動することがない。従って、例えば、樹脂フィルムの一点に電磁波を照射して特性を評価する場合であっても、樹脂フィルムの中心部に電磁波を照射することにより、延伸過程において樹脂フィルムの同一の部位の特性を評価することになる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0012】
上述の構成において、前記樹脂フィルムに対して非接触状態で前記樹脂フィルムの厚みを測定する厚み測定手段を備えると好適である。
【0013】
樹脂フィルムの特性を評価する際に当該樹脂フィルムの特性を示す種々の特性パラメータを算出する場合があり、特性パラメータの算出に樹脂フィルムの厚みが必要になる場合がある。従って、厚み測定手段を備えることにより、樹脂フィルムの厚みを正確に得ることができ、特性パラメータを正確に算出することができる。しかも、厚み測定手段が樹脂フィルムに接触することなく厚みを測定するので、厚み測定手段が延伸に影響を与えることがない。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0014】
前記樹脂フィルムにかかる張力を測定する張力測定手段を備えると好適である。
【0015】
樹脂フィルムを延伸する際の特性の変化と樹脂フィルムにかかる張力とは密接に関係する。したがって、張力測定手段により延伸中の張力についても測定することにより、延伸と樹脂フィルムの特性との関係を的確に把握することができる。
【0016】
上述の構成において、温度制御可能な恒温槽を備え、前記フィルム延伸手段が前記恒温槽の内部に設けられていると好適である。
【0017】
上述の構成により、樹脂フィルムの雰囲気温度の制御が容易になる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0018】
上述の構成において、前記恒温槽が加熱空気により温度制御を行う恒温槽であり、前記加熱空気の供給口から供給された加熱空気が前記樹脂フィルムの面に均一に当たるように前記空気の流れを制御する空気流制御手段が設けられていると好適である。
【0019】
樹脂フィルムに局所的に加熱空気が当たることにより、樹脂フィルムの当該部分が他の部分より加熱され温度が高くなり、他の部分よりも延伸されて、樹脂フィルムが不均一に延伸される原因となる場合がある。そこで、本構成のように、空気流制御手段により空気の流れを制御して、加熱空気を樹脂フィルムの面に均一に当てることにより、樹脂フィルムの温度が均一になる。その結果、樹脂フィルムを均一に加熱することができる。
【0020】
上述の構成において、前記フィルム延伸手段が前記樹脂フィルムを挟持する挟持部を有し、前記供給口から吐出された前記加熱空気が前記挟持部に直接当たらないように前記供給口を配置してあると好適である。
【0021】
本構成のように、フィルム延伸手段が樹脂フィルムを挟持する挟持部を有する場合、当該挟持部が樹脂フィルムと接触することになる。この場合、加熱空気が挟持部に直接当たると、加熱空気により挟持部が過度に加熱されて、樹脂フィルムのうち挟持部による挟持箇所の近傍の部分が局所的に加熱される場合がある。この状態で樹脂フィルムを延伸すると、局所的に加熱された挟持部近傍の樹脂フィルムが他の部分よりも延伸されて均一に樹脂フィルムを延伸できない場合がある。そこで、本構成のように、供給口から吐出された加熱空気が挟持部に直接当たらないように供給口を配置することにより、挟持部が過度に加熱されるのを防止し、樹脂フィルムを均一に延伸することができる。
【0022】
上述の構成において、前記フィルム延伸手段が前記樹脂フィルムを挟持する挟持部を有し、前記空気流制御手段が、前記加熱空気が前記挟持部に直接当たることを防止する防止手段を含むと好適である。
【0023】
本構成により、防止手段により加熱空気が挟持部に直接当たることを確実に防止することができ、挟持部が過度に加熱されるのを防止することができる。この結果、樹脂フィルムが局所的に加熱されるのを防止して、樹脂フィルムを均一に延伸することができる。
【0024】
上述の構成において、前記空気流制御手段が風向板により構成されていると好適である。本構成により、風向板により安価な構成で空気流を制御することができる。
【0025】
上述の構成において、前記風向板が、前記供給口からの前記加熱空気を前記樹脂フィルムの面の上方及び下方の少なくとも何れか一方に仕向ける風向板と、前記樹脂フィルムの面の上方又は下方を通過した前記加熱空気を前記前記樹脂フィルムの上面又は下面に仕向ける風向板とを有すると好適である。
【0026】
上述の構成において、前記恒温槽が加熱空気により温度制御を行う恒温槽であり、前記加熱空気の供給口と排気口とが、前記加熱空気の供給方向及び排気方向が前記樹脂フィルムの面に沿った方向になるよう対向して設けられていると好適である。
【0027】
本構成によれば、加熱空気の供給口と排気口とが加熱空気の供給方向及び排気方向が樹脂フィルムの面に沿った方向になるよう対向して設けられているので、樹脂フィルムの面に沿った方向の空気流が生じる。このため、樹脂フィルムが空気流の障害となることを防止して、確実に加熱空気が循環するので、樹脂フィルムを均一に加熱することができる。また、空気流による樹脂フィルムへの負荷を減少させ、空気流の延伸への影響を低減することができる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0028】
上述の構成において、前記恒温槽の対向する2つの壁面の夫々の少なくとも一部が、前記電磁波を透過する透過部材で構成され、前記恒温槽の外側に、一方の前記透過部材と対向して前記電磁波照射手段が設けられ、他方の前記透過部材と対向して前記検出手段が設けられていると好適である。
【0029】
本構成によれば、透過部材を介して確実に電磁波を恒温槽内に照射することができるとともに、樹脂フィルムを透過した電磁波を、透過部材を介して確実に電磁波を恒温槽外に取り出すことができる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0030】
上述の構成において、前記透過部材が着脱可能に構成されていると好適である。
【0031】
電磁波の種類(波長)によって透過しやすい物質は異なるので、透過部材に適した材質も異なる。そこで、本構成のように透過部材を着脱可能に構成することにより、電磁波の種類(波長)に応じて適した透過部材を用いることができる。この結果、適用可能な 電磁波の種類(波長)が広がり、樹脂フィルム特性評価装置の適用の幅も広がる。
【0032】
上述の構成において、前記樹脂フィルムが法線を重力方向に沿わせて配置され、前記樹脂フィルムの上面と対向する壁面及び前記樹脂フィルムの下面と対向する壁面の夫々の少なくとも一部が前記透過部材で構成されていると好適である。
【0033】
本構成によれば、樹脂フィルムの延伸方向が重力の方向と垂直になり、重力が延伸に及ぼす影響を低減することができる。この結果、より適切に樹脂フィルムの特性を評価することができる。
【0034】
上述の構成において、前記電磁波照射手段から照射される電磁波が可視光であり、前記電磁波は照射手段と前記樹脂フィルムの一方の面との間に配置された第1偏光部材と、前記検出手段と前記樹脂フィルムの他方の面との間に配置された第2偏光部材とを備え、前記第1偏光部材の配向軸と前記第2偏光部材の配向軸とが直交するように前記第1偏光部材と前記第2偏光部材とが配置され、前記第2偏光板を透過した光に基づいて前記樹脂フィルムの特性を評価すると好適である。
【0035】
本構成によれば、第1偏光部材の配向軸と第2偏光部材の配向軸とが直交することから、第1偏光部材及び第2偏光部材以外に偏光を行う部材が存在しなければ、第1偏光部材を透過した光は第2偏光部材を透過しない。一方、樹脂フィルムを延伸していくと、樹脂フィルムが延伸度合いに応じて配向し、偏光性を示すことになる。樹脂フィルムの延伸された部分を透過した光は偏光されるため、第2偏光部材を透過する。従って、第2偏光部材からの光の透過を観察することにより、樹脂フィルムの配向分布を視覚的に把握することができる。
【0036】
前記樹脂フィルムの特性の一例として、前記樹脂フィルムの配向を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置の全体構成を示す図である。
【図2】特性評価ユニットを示す図である。
【図3】延伸ユニットを示す図である。
【図4】延伸ユニットを示す図である。
【図5】第2実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置を示す図である。
【図6】空気流制御手段の効果を示す図である。
【図7】別実施形態の空気流制御手段を示す図である。
【図8】別実施形態の空気流制御手段を示す図である。
【図9】別実施形態の空気流制御手段を示す図である。
【図10】別実施形態の透過部材を示す図である。
【図11】別実施形態の特性評価ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る樹脂フィルム特性評価装置について、図面に基づいて説明する。この樹脂フィルム特性評価装置は、図1及び図2に示すように、樹脂フィルムを延伸するための延伸ユニット1(フィルム延伸手段の一例)、樹脂フィルムの雰囲気温度を制御する空調ユニット2、樹脂フィルムの特性を評価するための特性評価ユニット3などを備えて構成されている。
【0039】
延伸ユニット1は、恒温槽21の内部に設けられて構成されている。この延伸ユニット1は、2軸同時延伸が可能に構成されている。図3及び図4に示すように、延伸ユニット1は、樹脂フィルム100を挟持するチャック部材(挟持部の一例)13,14、チャック部材を摺動移動可能に支持する支持フレーム11,12、支持フレームを駆動する駆動手段、駆動手段を制御する延伸コントローラなどを備えて構成される。
【0040】
図3に示すように、支持フレームは、第1方向Xに往復動する一対の第1フレーム11a,11bと第1方向Xと直交する第2方向Yに往復動する一対の第2フレーム12a,12bとを備える。図3に示すように第1フレーム11a,11bと第2フレーム12a,12bとで、上面視で略正方形形状を呈するように、第1フレーム11a,11bと第2フレーム12a,12bが配置されている。それぞれの略正方形の各頂点には隣接する第1フレーム11と第2フレーム12とを連結する連結部材15が設けられている。図3及び4に示すように、連結部材15には上面視において第1方向Xに沿った第1孔部15aと第2方向にY沿った第2孔部15bとが、異なる高さ位置において形成されている。
第1フレーム11が第2孔部15bに挿入され、第2フレーム12が第1孔部15aに挿入されることにより、第1フレーム11と第2フレーム12とが連結される。第1フレーム11は、連結部材15とともに、第2フレーム12に沿って、第1方向Xに往復動可能である。また、第2フレーム12は、連結部材15とともに、第1フレーム11に沿って、第2方向Yに往復動可能である。
【0041】
それぞれの第1フレーム11a,11bに、複数のチャック部材13a,13bが、第1フレーム11a,11bの延在方向に沿って摺動移動可能に設けられている。また、それぞれの第2フレーム12a,12bにも、複数のチャック部材14a,14bが、第2フレーム12a,12bの延在方向に沿って摺動移動可能に設けられている。本実施形態では、それぞれの第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bに4個のチャック部材13a,13b,14a,14bが設けられている。隣接する連結部材15の間には、例えば開閉式のパンタグラフ型平行リンク16が設けられ、この平行リンク16を介して、チャック部材13a,13b,14a,14bが第1フレーム11a,11b若しくは第2フレーム12a,12bに摺動移動自在に支持されている。これにより、図3及び図4に示すように、第1フレーム11a,11b同士の近接・離間に追従して、第1フレーム11a,11bに設けられたチャック部材13a,13b同士が近接離間する。また、第2フレーム12a,12b同士の近接・離間に追従して、第2フレーム12a,12bに設けられたチャック部材14a,14b同士が近接離間する。この実施形態では吹出ノズル28に対向する位置にチャック部材14aが配置され、吸気ノズル29に対向する位置にチャック部材14bが設けられている。
【0042】
第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bは、図示しない駆動手段により駆動される。駆動手段としては、例えばエアーシリンダーなどの往復動をする直線駆動型の駆動装置を好適に用いることができるが、モータ等の回転型の駆動装置からの回転駆動力を直線方向の駆動力に変換して用いても良い。
【0043】
この実施形態においては、延伸ユニット1は、センターストレッチ方式に構成されている。具体的には、第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bが同一速度で離間することにより、それぞれの連結部材15が同一速度で離間し、それに伴い、それぞれの平行リンク16が伸びる。それぞれの平行リンク16が伸びるのに伴い、それぞれのチャック部材13a,13b,14a,14bが互いに均等に離間する。この結果、チャック部材13a,13b,14a,14bに挟持された樹脂フィルム100が各方向に均等に延伸される。
【0044】
空調ユニット2は、空気を加熱して温風を発生させる温風発生手段26、恒温槽21、温風を循環させる通風手段27c、空調ユニットを制御する空調コントローラなどを備える。
【0045】
恒温槽21内には、図示しない温度センサが設けられ、空調コントローラは、温度センサが検出した恒温槽21内の温度に基づいて、例えばフィードバック制御により、恒温槽21の温度が設定の温度となるよう、温風発生手段26を制御する。
【0046】
恒温槽21は、上面22、底面23及び側面を有する。恒温槽21の上面には、開閉可能な蓋部24が設けられ、当該蓋部24を開放することにより、延伸ユニット1への樹脂フィルム100の着脱が可能である。蓋部24の一部が、恒温槽21内部の視認及び後述するヘリウム−ネオンレーザーからの照射光の透過が可能なように、ガラスなどの透明部材24aで構成されている。また、底面23のうち蓋部24の透明部材24aと対向する部位についても、ガラスなどの透明部材25で構成されている。
【0047】
また、恒温槽21内には、温風を噴出す吹出ノズル28と恒温槽21内の空気を吸込む吸込ノズル29とが設けられている。吹出ノズル28と吸込ノズル29とは、延伸ユニット1を挟んで対向して設けられている。また、チャック部材13,14に挟持された樹脂フィルム100の面方向に沿って、温風が噴出されるように、吹出ノズル28が配置されている。また、通風手段27cの吐出口と吹出ノズル28とを繋ぐ吐出側通気路27a及び、通風手段27cの吸込口と吸込ノズル29とを繋ぐ吸気側通気路27bが設けられている。噴出側通気路27a及び吸気側通気路27bの一部に温風発生手段26が設けられている。温風発生手段26の詳細は省略するが、既知のヒータ及び熱交換器などを備えて構成されている。
【0048】
特性評価ユニット3は、樹脂フィルム100に対して電磁波を照射する電磁波照射手段と、樹脂フィルムを透過した電磁波を検出する検出手段とを備える。本実施形態では、電磁波の一例として樹脂フィルムに可視光を照射して位相差を測定し、位相差に基づいて樹脂フィルムの複屈折率(樹脂フィルムの特性値の一例)を求める。
【0049】
この特性評価ユニット3は、電磁波照射手段としてのヘリウム−ネオンレーザー31と検出手段としての光検出器32とを備える。このヘリウム−ネオンレーザーは、単一波長(波長λ=632.8nm)の可視光を照射する。ヘリウム−ネオンレーザーは、恒温槽21の上面22の蓋部24に形成した透明部材24aから恒温槽21の内部に可視光を照射可能に配置されている。本実施形態においては、恒温槽21の上面22に沿った方向に可視光を照射し、この可視光をミラー37により反射させて透明部材24aから恒温槽21の内部に可視光を照射する。また、ヘリウム−ネオンレーザー31からの照射光を偏光する偏光板33が、ミラー37と透明部材24aとの間に設けられている。なお、ミラー37は必ずしも設ける必要は無く、ヘリウム−ネオンレーザー31を透明部材24aに対向して設けて、ヘリウム−ネオンレーザー31からの可視光を恒温槽21の内部に直接照射してもよい。
【0050】
この実施形態において、延伸される樹脂フィルムの中心部分、つまり、上面視で略正方形に配置された第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bの対角線の交点近傍に照射光が照射されるように、ヘリウム−ネオンレーザー31及びミラー37が配置されている。これにより、樹脂フィルム100をセンターストレッチ方式で延伸する場合に、延伸による樹脂フィルム100の移動に拘わらず、樹脂フィルム100の同一の部位に照射光を照射することができる。
【0051】
光検出器32は、恒温槽21の底面23に形成した透明部材25に対向して設けられている。上述の構成により、恒温槽21の上面22から恒温槽21内に照射された可視光が樹脂フィルム100を透過して、底面23の透明部材25を透過して、光検出器32に検出される。透明部材25と光検出器32との間には、透明部材25から光検出器32側に向かって、1/4波長板34と偏光板35とがこの順で配置されている。1/4波長板34は、その配向軸が偏光板33と一致するように配置されている。偏光板35はモータ等の図示しない駆動手段に連動され、回転可能に設けられている。
【0052】
詳細は省略するが、上述の構成により、偏光板35を回転させつつヘリウム−ネオンレーザー31から光を照射して、偏光板の種々の回転位相における光検出器32の検出結果に基づいて、演算手段36が位相差δを算出する。
【0053】
また、演算手段36は、樹脂フィルム100の延伸に伴う位相差δに基づいて樹脂フィルムの複屈折率Δnを算出する。複屈折率Δnは以下の式(1)で表される。
Δn=δλ/(2πd) 式(1)
ここで、λは照射光の波長、dは樹脂フィルム100の厚みである。
【0054】
従って、演算手段36は、式(1)に基づいて、種々の延伸状態における複屈折率Δnを算出する。なお、樹脂フィルムの厚みdは、延伸ユニット1のチャック部材13,14の移動距離に基づく樹脂フィルムの延伸率から算出してもよく、また、恒温槽内に非接触式の厚みセンサを備え、厚みセンサにより測定した実測値を用いてもよい。
【0055】
上述した樹脂フィルム特性評価装置により、フィルム延伸ユニット1により樹脂フィルム100を2軸に同時延伸しつつ、樹脂フィルム100の特性を連続的に評価する。
なお、「樹脂フィルム100を延伸しつつ、特性を連続的に評価する」とは、延伸と特性の評価とを同時に連続的に行う場合のみならず、延伸と特性の評価とを断続的に行う場合も含まれるものである。
【0056】
上述したように、本発明に係る樹脂フィルム特性評価装置は、延伸中の樹脂フィルム100の特性を、その場(in−situ)で適切に評価できる。この結果、擬似的に実際の樹脂フィルム製造時と同様の条件により樹脂フィルム100を延伸しつつ特性を評価することにより、樹脂フィルム製造の際の最適条件を早期に発見することができる。また、樹脂フィルム製造の際の適した材料設定を早期に行うことができる。さらに、樹脂フィルム製造の際の最適条件および適した材料を早期に設定できることから、この条件および材料に適した樹脂フィルム製造装置等の装置の仕様を早期に決定することができる。従って、設備の仕様を早期に決定することができる。
【0057】
[実施形態2]
第2実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置は、加熱空気の吹出ノズル28から供給された加熱空気が樹脂フィルム100の面に均一に当たるように空気の流れを制御する空気流制御手段200を備える点で第1実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置と異なる。
【0058】
また、図5に示すように、この実施形態では、吐出側通気路27a(図1を参照)に連通して吐出側空気滞留部110が設けられ、吐出側空気滞留部110に複数の吐出ノズル28(供給口の一例)が設けられている。また、吸気側通気路27b(図1を参照)に連通して吸気側空気滞留部111が設けられ、吸気側空気滞留部111に複数の吸込ノズル29が設けられている。吐出側空気滞留部110及び吸気側空気滞留部111の流通断面積は、吐出側通気路27a及び吸気側通気路27bの流通断面積よりも大きく設定されている。このため、後述するように、吹出ノズル28及び吸込ノズル29を複数も受ける場合であっても、各吹出ノズル28からの吹出圧及び各吸込ノズル29の吸込圧をそれぞれ均一にすることができ、恒温槽21内の空気流を均一にすることができる。
【0059】
本実施形態では図5(a)に示すように、上側の吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bが設けられている。図5(a)に示すように、上側の吹出ノズル28aは、チャック部材14a及び樹脂フィルム100よりもやや上方にオフセットして配置されている。また、下側の吹出ノズル28bはチャック部材14a及び樹脂フィルム100よりもやや下側にオフセットして配置されている。図5(b)に示すように、これら上側の吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bは、樹脂フィルムの延在方向に沿って複数設けられている。また、図5に示すように、吸込ノズル29についても複数設けられている。
【0060】
図5に示すように、この実施形態において、空気流制御手段200は風向板により構成されている。風向板201aの一方の面は吹出ノズル28a,28bの吹出口に対向するとともに、他方の面はチャック部材14aに対向して配置される。この風向板201aは、恒温槽21の幅方向において、吐出ノズル28a,28bの延在領域の略全域に亘って延在すると共に、上面22(蓋部24)及び底面23との間に隙間が形成されるように恒温槽21の高さ方向に延在している。
【0061】
風向板201aの上端から樹脂フィルム100の上面方向に沿って風向板201fが設けられている。風向板201fは、風向板201aの上端から初期位置(延伸前の位置)におけるチャック部材14aの上方近傍まで延在している。恒温槽21の幅方向における吹出ノズル28bの延在領域の夫々の端部には、底面23に風向板201b、201cが設けられている。風向板201b、201cは、吹出ノズル28bから吸込ノズル29側に向かって外側に広がるように傾斜して配置されている。
【0062】
また、上面22(蓋部24)には風向板201dが、底面23には風向板201eが夫々設けられている。風向板201d及び風向板201eは、平面視で樹脂フィルム100を囲むように円弧状に設けられている。なお、本実施形態では、風向板201d及び風向板201eの各々を、単一の風向板を円弧状に湾曲させて形成しているが必ずしもこの形態に限られるわけではなく、樹脂フィルムを囲むように設けられていれば何れの形状であっても良い。例えば単一の風向板を多角形形状に折り曲げてもよい。また、複数の平板状の風向板を並べて円弧形状や多角形形状を構成してもよい。
【0063】
次にこれらの風向板による風流制御の一例について説明する。吹出ノズル28aからの加熱空気は風向板201aにより上方に仕向けられ、吐出ノズル28bからの加熱空気は風向板201aにより下方に仕向けられる。上方に仕向けられた加熱空気は風向板201fにより、チャック部材14aに直接当たることを防止しつつ、樹脂フィルム100の上面に仕向けられる。風向板201a,201fにより,樹脂フィルム100の上方を通過した加熱空気は風向板201dにより再び樹脂フィルム100の側へ仕向けられる。一方、風向板201aにより下方に仕向けられた加熱空気は風向板201b、201cにより、樹脂フィルム100の下面に仕向けられる。樹脂フィルム100の下面を通過した加熱空気は風向板201eにより再び樹脂フィルム100に仕向けられる。このように、風向板201a,201により、吹出ノズル28a,28bからの加熱空気がチャック部材14aに直接当たることが防止される。ここで、201a,201fは、本発明の防止手段に相当する。
【0064】
次に、図6に基づいて、空気流制御手段200として、風向板201a,201b,201c,201d,201e,201fを設けた場合の効果について説明する。図6(a)は、空気流制御手段200を備える場合の実験結果であり、図6(b)は、空気流制御手段200を備えない場合の実験結果である。
【0065】
夫々の実験において、恒温槽温度を150℃に設定し、チャック部材13a,13b,14a,14b及び樹脂フィルム100の温度分布を測定した。図6には、実験開始から1時間後及び1時間30分後の温度分布を、各領域の測定温度の中間値との差として示す。
【0066】
図6(a)に示すように、空気流制御手段200を設けた場合、1時間後において、温度が最も高かったのは樹脂フィルム100であり、中央値+1℃であった。一方、最も温度が低かったのは、吹出ノズル28に対向するチャック部材14a及び吸込ノズル29に対向するチャック部材14bであり、中央値−2℃であった。実験開始から1時間後の最高温度と最低温度との差は3℃であった。1時間半後において、温度が最も高かったのはチャック部材13a,13bであり、中央値+1℃であった。一方、温度が最も低かったのは樹脂フィルム100、吹出ノズル28に対向するチャック部材14a、及び、吸気ノズル29に対向するチャック部材14bであり、中心値±1℃であった。実験開始から1時間半後の最高温度と最低温度との差は2℃以下であった。
【0067】
図6(b)に示すように、空気流制御手段200を設けない場合、1時間後において、温度が最も高かったのは吹出ノズル28に対向するチャック部材14aであり、中央値+5℃であった。一方、最も温度が低かったのは吸込ノズル29に対向するチャック部材14bであり、中央値−5℃であった。実験開始から1時間後の最高温度と最低温度との差は10℃であった。1時間半後において、温度が最も高かったのは吹出ノズル28に対向するチャック部材14aであり、中央値+2℃であった。一方、温度が最も低かったのは樹脂フィルム100であり、中心値−4℃であった。実験開始から1時間半後の最高温度と最低温度との差は6℃であった。
【0068】
このように、実験開始から1時間後の最高温度と最低温度との差は、空気流制御手段200を設けた場合が3℃であるのに対して、空気流制御手段200を設けない場合が10℃であった。また、実験開始から1時間半後の最高温度と最低温度の差は、空気流制御手段を設けた場合が2℃以下であるのに対して、空気流制御手段200を設けない場合が6℃であった。上述の実験結果から明らかなように、空気流制御手段200を設けることにより、樹脂フィルム100及びチャック部材13a,13b,14a,14bを均一に加熱することができる。
【0069】
樹脂フィルム100に局所的に加熱空気が当たるなどの原因により、樹脂フィルム100が不均一に加熱される場合、加熱度合いにより樹脂フィルム100の延伸度合いが異なる。このため、樹脂フィルム100が不均一に延伸される原因となる場合がある。そこで、空気流制御手段200により空気の流れを制御して、加熱空気を樹脂フィルム100の面に均一に当てることにより、樹脂フィルム100の温度が均一になる。その結果、樹脂フィルム100を均一に加熱することができる。
【0070】
特に、樹脂フィルム100をチャック部材13a,13b,14a,14bにより挟持する場合、当該チャック部材13a,13b,14a,14bが樹脂フィルムと接触することになる。この場合、加熱空気がチャック部材に直接当たると、加熱空気によりチャック部材が過度に加熱されて、樹脂フィルムのうちチャック部材による挟持箇所の近傍の部分が局所的に加熱される場合がある。空気流制御手段200を設けない実験結果の場合(図6(b)を参照)、吹出ノズル28に対向するチャック部材14aは過度に加熱された。一方で、チャック部材14aで加熱空気が遮られるため、チャック部材14bはほとんど加熱されなかった。この状態で樹脂フィルム100を延伸すると、局所的に加熱されたチャック部14a近傍の樹脂フィルム100が他の部分よりも延伸されて均一な延伸できない。そこで、本構成のように、空気流制御手段200により、吹出ノズル28から吐出された加熱空気がチャック部材14aに直接当たらないように構成することにより、実験結果に示したように、チャック部材13a,13b,14a,14b及び樹脂フィル100の加熱度合いが略均一になり、樹脂フィルム100を均一に延伸することができる。
【0071】
なお、上述したように、樹脂フィルム100を均一に延伸するためには、空気流制御手段200を設けた方が好ましい。しかしながら、チャック部材の形状・材質等によっては、必ずしも上述した加熱度合いが不均一になる問題が生じない場合も有る。また、樹脂フィルム100の材質によっては、多少の加熱度合いの不均一が生じたとしても均一な延伸が可能な場合もある。従って、空気流制御手段200は必須の要素ではなく、第1実施形態に示したように、空気流制御手段200を設けなくてもよい。
【0072】
[別実施形態]
(1)次に空気流制御手段200の別実施形態について説明する。上述の実施形態では、空気流制御手段200として、風向板201a,201b,201c,201d,201e,201fを設ける場合を例に説明したが、風向板及び吹出ノズル28の配置はこれに限られるものではない。例えば、図7に示すものであってもよい。図7に示す例では、吹出ノズル28a,28bに対向する風向板200aを設ける代わりにチャック部材13,14及び樹脂フィルム100に加熱空気が直接当たらない位置に吹出ノズル28a,28bが配置されている。つまり、上側の吹出ノズル28aは、チャック部材14a及び樹脂フィルム100よりも上方にオフセットして配置されている。また、下側の吹出ノズル28bは、チャック部材14b及び樹脂フィルム100よりも下方にオフセットして配置されている。このように、吹出ノズル28a,28bの吹出口とチャック部材14a及び樹脂フィルム100をオフセットさせることにより、チャック部材13,14及び樹脂フィルム100に吹出ノズル28a,28bからの加熱空気が直接当たらないように配置されている。
【0073】
また、図7に示すように、風向板201g,201hが設けられている。風向板201gは、樹脂フィルム100の上面の上方を通過した加熱空気を樹脂フィルム100に仕向けるよう、樹脂フィルム100よりも下手側(吸気ノズル29側)において吹出ノズル28aと対向して配置されている。風向板201hは、樹脂フィルム100の下面の下方を通過した加熱空気を樹脂フィルム100に仕向けるよう、樹脂フィルム100よりも下手側(吸気ノズル29側)において吹出ノズル28bと対向して配置されている。
【0074】
(2)図8に示す例では、空気流制御手段200として、樹脂フィルム100の上方及び下方に風向板201i,201jを設けてある。これらの風向板201i,201jは、樹脂フィルム100と対向する位置に穴部202,203を有する。吹出ノズル28aが風向板201iよりも上方側に、吹出ノズル28bが風向板201jよりも下方側にそれぞれ設けられている。この実施形態では、風向板201iにより、吐出ノズル28aからの加熱空気がチャック部材13,14に直接当たるのが防止され、穴部202を通過した加熱空気が、樹脂フィルム100の上面に当たる。また、風向板201jにより、吐出ノズル28bからの加熱空気がチャック部材13,14に直接当たるのが防止され、穴部203を通過した加熱空気が、樹脂フィルム100の下面に当たる。
【0075】
(3)上述の実施形態では、空気流制御手段200として、風向板を例に説明したが、空気流制御手段200は、加熱空気が樹脂フィルムの面に均一に当たるように空気の流れを制御するものであれば、風向板に限られるものではない。図9に示す例では、上側の吹出ノズル28aが樹脂フィルム100の上面近傍まで延在し、吹出ノズル28aの吹出口が樹脂フィルム100の上面に対向して配置されている。また、下側の吹出ノズル28bも同様に、樹脂フィルム100の下面近傍まで延在し、吹出ノズル28bの吹出口が樹脂フィルム100の下面に対向して配置されている。
【0076】
(4)実施形態2以降では、吐出側空気滞留部110及び吸気側空気滞留部111を設ける例を示したが、110吐出側空気滞留部及び吸気側空気滞留部111は必ずしも設ける必要はなく、何れか一方のみを設けても良く、また、何れも設けなくても良い。一方、実施形態1において、吐出側空気滞留部110又は吸気側空気滞留部111、若しくは、両方を設けてもよい。また、第2実施形態以降では上側の吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bを設けて樹脂フィルム100の上下両面から加熱空気を当てる場合を例に説明したが、吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bの何れか一方のみを設けて、上面及び下面の何れか一面のみに加熱空気を当ててもよい。一方、第1実施形態において、上側の吹出ノズル28a及び下側の吹出ノズル28bを設けてもよい。
【0077】
(5)別実施形態に係る樹脂フィルム特性評価装置について説明する。図9に示すように、この樹脂フィルム特性評価装置は、特性評価ユニット3が上述の実施形態とは異なる。以下、具体的に説明する。この特性評価ユニット3は、電磁波照射手段31としての光源31bと、検出手段32としてのビデオカメラ32bとを備える。なお、この樹脂フィルム特性評価装置においても、上述した空気流制御手段200を備えてもよい。
【0078】
光源31bは、恒温槽21の底面23の透明部材25に対向して設けられ、透明部材25を介して恒温槽21の内部に可視光を照射する。ビデオカメラ32bは、上面の蓋部に形成された透明部材24aと対向して設けられている。光源31bと恒温槽21の底面23の透明部材25との間に第1偏光板38が、蓋部24の透明部材24aとビデオカメラ32bとの間に第2偏光板39が、それぞれ設けられている。第1偏光板38と第2偏光板39とは、互いの配向軸38a,39aが直行するように(偏光角度が90°異なるように)配置されている。
【0079】
この特性評価ユニットにおいて、第1偏光板38の偏光角度と第2偏光板39の偏光角度とが90°異なることから、第1偏光板38及び第2変光板39以外に偏光を行う部材が存在しなければ、第1偏光板38を透過した光は第2偏光板39を透過しない。従って、ビデオカメラ32bによる撮影画像は全体的に暗い(黒っぽい)画像となる。未延伸の樹脂フィルム100を用いた場合、樹脂フィルム100が延伸ユニット1により延伸される前の状態においては、樹脂フィルム100は配向しておらず、偏光性を示さず、撮影画像は全体的に暗い(黒色)画像となる。
【0080】
樹脂フィルム100を延伸していくと、樹脂フィルム100が延伸度合いに応じて配向し、偏光性を示すことになる。樹脂フィルム100の延伸された部分を透過した光は偏光されるため、第2偏光板39を透過する。撮影画像において、光が第2偏光板39を透過した部分については、透過光により呈色した画像となる。従って、延伸ユニット1により延伸中の樹脂フィルム100に光源31bから光を照射してビデオカメラ32bの撮影画像を観察することにより、樹脂フィルム100の配向分布を視覚に把握することができる。
【0081】
初期状態において有る程度延伸された樹脂フィルム100を用いることもできる。この場合、樹脂フィルム100が延伸ユニット1により延伸される前の状態においても、樹脂フィルム100が有る程度配向しており、偏光性を示すことから、撮影画像は光により呈色した画像となる。樹脂フィルム100が延伸ユニット1により延伸されると、樹脂フィルム100の延伸度合いに応じて配向度合いが変化し、透過光による呈色具合も変化する。従って、ビデオカメラ32bの撮影画像を観察することにより、樹脂フィルム100の配向分布を視覚に把握することができる。
【0082】
なお、光源31bとしては、特に限定されないが例えば蛍光灯などを用いることができる。また、光源31bとしては、樹脂フィルム100の全域に光を照射可能なものを用いることが好ましい。これにより、樹脂フィルム100全体の配向度合いを把握することができる。
【0083】
(6)上述の実施形態において、電磁波の一例として可視光を例に説明したが電磁波はこれに限られるものではない。電磁波としては、例えば赤外線など可視光以外の波長領域を用いてもよい。この場合電磁波の波長によって透過しやすい物質が異なるので、電磁波の波長によって透過部材の材質を異ならせる必要がある。そこで、図10に示すように、透過部材を着脱可能に構成するとよい。図10の例では、ガラス製の透明部材24a、25の中央部に穴部40を設け、当該穴部40に対して透過部材41を着脱可能に構成されている。電磁波が赤外線の場合は、例えば臭化カリウムにより構成された透過部材41が好適に用いられる。
【0084】
(7)上述の構成において、延伸ユニットに例えばロードセル等の張力測定手段を備えて、延伸中の樹脂フィルムにかかる張力を測定可能に構成してもよい。
【0085】
(8)
上述の実施形態において、延伸ユニット1がセンターストレッチ式に構成される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、隣接する第1フレーム11a及び第2フレーム12bを固定した状態で、もう一方の隣接する第1フレーム11b及び第2フレーム12aを離間方向に移動させることによって樹脂フィルム100の延伸を行っても良い。また、第1フレーム11a,11b及び第2フレーム12a,12bの全てを移動させる場合であっても、同一速度で移動させるのではなく、異なった速度で移動させてもよい。また、延伸ユニット1は、必ずしも2軸同時延伸を行うものでなくても良い。例えば、第2フレーム12a,12bを停止した状態で、第1フレーム11a,11bを互いに離間させ、その後、第1フレーム11a,11bを停止してから第2フレーム12a,12bを離間させるなど、逐次的に延伸を行っても良い。なお、延伸ユニット1を、上述した複数の延伸モードを切り替え可能に構成してもよい。
【0086】
(9)上述の実施形態において、2軸延伸を例に説明したが、3軸以上の多軸延伸であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置に適応可能である。
【0088】
1 延伸ユニット(フィルム延伸手段の一例)
13 チャック部材
14 チャック部材
21 恒温槽
24a 透明部材(透過部材の一例)
25 透明部材(透過部材の一例)
28 吹出ノズル(供給口の一例)
29 吸気ノズル(排気ノズルの一例)
31 ヘリウム−ネオンレーザー(電磁波照射手段の一例)
32 光検出器(検出手段の一例)
100 樹脂フィルム
200 空気流制御手段
201 風向板(空気流制御手段の一例)
202 穴部(空気流制御手段の一例)
203 穴部(空気流制御手段の一例)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムを延伸しつつ、当該樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置であって、
前記樹脂フィルムを2軸以上に延伸可能なフィルム延伸手段と、
延伸中の前記樹脂フィルムに対して電磁波を照射する電磁波照射手段と、
前記樹脂フィルムを透過した電磁波を検出する検出手段とを備え、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項2】
前記フィルム延伸手段がセンターストレッチ式の延伸手段である請求項1に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項3】
前記樹脂フィルムに対して非接触状態で前記樹脂フィルムの厚みを測定する厚み測定手段を備える請求項1又は2に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項4】
前記樹脂フィルムにかかる張力を測定する張力測定手段を備える請求項1〜3の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項5】
温度制御可能な恒温槽を備え、前記フィルム延伸手段が前記恒温槽の内部に設けられている請求項1〜4の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項6】
前記恒温槽が加熱空気により温度制御を行う恒温槽であり、前記加熱空気の供給口から供給された加熱空気が前記樹脂フィルムの面に均一に当たるように前記空気の流れを制御する空気流制御手段が設けられている請求項5に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項7】
前記フィルム延伸手段が前記樹脂フィルムを挟持する挟持部を有し、
前記供給口から吐出された前記加熱空気が前記挟持部に直接当たらないように前記供給口を配置してある請求項6に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項8】
前記フィルム延伸手段が前記樹脂フィルムを挟持する挟持部を有し、
前記空気流制御手段が、前記加熱空気が前記挟持部に直接当たることを防止する防止手段を含む請求項6又は7に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項9】
前記空気流制御手段が風向板により構成されている請求項6〜8の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項10】
前記風向板が、前記供給口からの前記加熱空気を前記樹脂フィルムの面の上方及び下方の少なくとも何れか一方に仕向ける風向板と、前記樹脂フィルムの面の上方又は下方を通過した前記加熱空気を前記樹脂フィルムの上面又は下面に仕向ける風向板とを有する請求項9に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項11】
前記恒温槽が加熱空気により温度制御を行う恒温槽であり、前記加熱空気の供給口と排気口とが、前記加熱空気の供給方向及び排気方向が前記樹脂フィルムの面に沿った方向になるよう対向して設けられている請求項5に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項12】
前記恒温槽の対向する2つの壁面の夫々の少なくとも一部が、前記電磁波を透過する透過部材で構成され、前記恒温槽の外側に、一方の前記透過部材と対向して前記電磁波照射手段が設けられ、他方の前記透過部材と対向して前記検出手段が設けられている請求項5〜11の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項13】
前記透過部材が着脱可能に構成されている請求項12に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項14】
前記樹脂フィルムが法線を重力方向に沿わせて配置され、前記樹脂フィルムの上面と対向する壁面及び前記樹脂フィルムの下面と対向する壁面の夫々の少なくとも一部が前記透過部材で構成されている請求項12又は13に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項15】
前記電磁波照射手段から照射される電磁波が可視光であり、前記電磁波は照射手段と前記樹脂フィルムの一方の面との間に配置された第1偏光部材と、前記検出手段と前記樹脂フィルムの他方の面との間に配置された第2偏光部材とを備え、前記第1偏光部材の配向軸と前記第2偏光部材の配向軸とが直交するように前記第1偏光部材と前記第2偏光部材とが配置され、
前記第2偏光部材を透過した光に基づいて前記樹脂フィルムの特性を評価する請求項1〜14の何れか1項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項16】
前記特性が前記樹脂フィルムの配向である請求項1〜15の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項1】
樹脂フィルムを延伸しつつ、当該樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置であって、
前記樹脂フィルムを2軸以上に延伸可能なフィルム延伸手段と、
延伸中の前記樹脂フィルムに対して電磁波を照射する電磁波照射手段と、
前記樹脂フィルムを透過した電磁波を検出する検出手段とを備え、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記樹脂フィルムの特性を評価する樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項2】
前記フィルム延伸手段がセンターストレッチ式の延伸手段である請求項1に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項3】
前記樹脂フィルムに対して非接触状態で前記樹脂フィルムの厚みを測定する厚み測定手段を備える請求項1又は2に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項4】
前記樹脂フィルムにかかる張力を測定する張力測定手段を備える請求項1〜3の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項5】
温度制御可能な恒温槽を備え、前記フィルム延伸手段が前記恒温槽の内部に設けられている請求項1〜4の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項6】
前記恒温槽が加熱空気により温度制御を行う恒温槽であり、前記加熱空気の供給口から供給された加熱空気が前記樹脂フィルムの面に均一に当たるように前記空気の流れを制御する空気流制御手段が設けられている請求項5に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項7】
前記フィルム延伸手段が前記樹脂フィルムを挟持する挟持部を有し、
前記供給口から吐出された前記加熱空気が前記挟持部に直接当たらないように前記供給口を配置してある請求項6に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項8】
前記フィルム延伸手段が前記樹脂フィルムを挟持する挟持部を有し、
前記空気流制御手段が、前記加熱空気が前記挟持部に直接当たることを防止する防止手段を含む請求項6又は7に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項9】
前記空気流制御手段が風向板により構成されている請求項6〜8の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項10】
前記風向板が、前記供給口からの前記加熱空気を前記樹脂フィルムの面の上方及び下方の少なくとも何れか一方に仕向ける風向板と、前記樹脂フィルムの面の上方又は下方を通過した前記加熱空気を前記樹脂フィルムの上面又は下面に仕向ける風向板とを有する請求項9に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項11】
前記恒温槽が加熱空気により温度制御を行う恒温槽であり、前記加熱空気の供給口と排気口とが、前記加熱空気の供給方向及び排気方向が前記樹脂フィルムの面に沿った方向になるよう対向して設けられている請求項5に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項12】
前記恒温槽の対向する2つの壁面の夫々の少なくとも一部が、前記電磁波を透過する透過部材で構成され、前記恒温槽の外側に、一方の前記透過部材と対向して前記電磁波照射手段が設けられ、他方の前記透過部材と対向して前記検出手段が設けられている請求項5〜11の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項13】
前記透過部材が着脱可能に構成されている請求項12に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項14】
前記樹脂フィルムが法線を重力方向に沿わせて配置され、前記樹脂フィルムの上面と対向する壁面及び前記樹脂フィルムの下面と対向する壁面の夫々の少なくとも一部が前記透過部材で構成されている請求項12又は13に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項15】
前記電磁波照射手段から照射される電磁波が可視光であり、前記電磁波は照射手段と前記樹脂フィルムの一方の面との間に配置された第1偏光部材と、前記検出手段と前記樹脂フィルムの他方の面との間に配置された第2偏光部材とを備え、前記第1偏光部材の配向軸と前記第2偏光部材の配向軸とが直交するように前記第1偏光部材と前記第2偏光部材とが配置され、
前記第2偏光部材を透過した光に基づいて前記樹脂フィルムの特性を評価する請求項1〜14の何れか1項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【請求項16】
前記特性が前記樹脂フィルムの配向である請求項1〜15の何れか一項に記載の樹脂フィルム特性評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−95252(P2011−95252A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217616(P2010−217616)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]