説明

樹脂ヘルドおよびフォイル条片からのその製法

【課題】帯状のフォイル状の薄い素材から製造されたヘルド本体を提供する。
【解決手段】ヘルド本体は、フォイル条片から一体として分離、好ましくは打ち抜き加工される。ヘルド本体は、長手方向Lにおいて少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つまたは5つの、互いに隣接する長手方向部分15、16を備える。互いに隣接する2つの長手方向部分15は、異なる樹脂または複合材料を含み、そして/または異なる厚さd1、d2またはd2、d3を有する。このようにして、引張り強さ、耐摩擦性、弾性そして/または制動といった所望の機械的特性を、適切な材料と適切な厚さ(d1、d2、d3)を使用することによって達成できる。ヘルド本体は、複数の条片部分を有するフォイル条片から分離される。ヘルド本体が打ち抜き加工されると、条片部分は異なる長手方向部分15、16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織機のヘルド枠に用いられるヘルドに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルドは、おおよそその長さ方向の中央にたて糸を保持するためのアイ(糸穴)を有するヘルド本体を備える。ヘルドにより制御されるたて糸は、ひ(杼)口を開閉するヘルド枠の動作により位置決めされる。
【0003】
ヘルドは、大きな応力にさらされる。現代の織機は早い速度で稼働する。それは、そこに配置されるヘルド枠およびヘルドが、急加減速することを意味する。アイによって導かれるたて糸と、2つの隣接したヘルドの間を通過する別のヘルド枠により制御されるたて糸は、ヘルドに対して移動する。これはヘルドを摩耗させることになる。たて糸として使用する糸にもよるが、このたて糸は極端に急速なヘルドの摩耗を引き起こす。これらのヘルドは交換しなければならないが、これにより広範囲なそして高価につく織機停止がおこる。
【0004】
平坦な鋼片または二重ワイヤからなるヘルド本体が、特許文献1に説明されている。樹脂材料が、平坦な鋼片上の端部小穴の部分に吹き付けられ、ヘルド枠のヘルド支持レールと接触するそれらの端部小穴の部分に少なくとも塗布されるようにする。このようにして、制動および騒音低減が達成される。
【0005】
特許文献2は、さらに、全面的に樹脂でヘルドを製造する可能性を説明している。樹脂材料は、各種の繊維撚り糸からなるブレードホース(braided hose)に接着される樹脂母材としての役割を担う。ヘルドを製造するために、この複合材料はバルクストックとして製造されて、その後所望の長さに切断される。アイおよび端部小穴は続いて熱可塑性成形工程により形成される。
【0006】
さらに樹脂から製造されるヘルドは、特許文献3から知られている。この樹脂ヘルドは、アイの部分の案内面の特別な形によって特徴づけられる。
【0007】
特許文献4は、さらに、アイが2つの相互にオフセットしたウェブで側を囲まれている樹脂ヘルドを開示する。アイに隣接して、上下に、厚い傾斜した部分がある。それらの目的は、隣接したヘルドを互いから少し離して保持し、2つの隣接したヘルドの間に通過するたて糸がその外面を穏やかに滑るようにすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】スイス国特許出願公開第601532号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0403429号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2224046号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102005030632号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の既知のヘルドに基づいて、経済的に製造することができる軽量で耐摩擦性のヘルドを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの形態によると、ヘルドのヘルド本体は、複数の異なる樹脂または複合材料から製造される。ヘルド本体は、少なくとも2つ、好ましくは3つから5つの、ヘルド本体の長さに沿って互いに隣接する長手方向部分を含む。互いに直接隣接するヘルド本体の長手方向部分は、異なる樹脂または複合材料から成る。
【0011】
樹脂または複合材料は、樹脂製のヘルドが帯電することを防ぐために、伝導性であってもよいし、伝導性部材を含んでいてもよい。ヘルドが作業位置にあるとき、ヘルドの伝導性部材は、少なくとも1つの伝導性ヘルド支持レールに対する電気接続部を作り、それによって、ヘルド枠のヘルド支持レールを介して放電を行うことで、ヘルド本体の帯電を防ぐ。樹脂製のヘルドの全体、もしくは多層ヘルドのうち1つの個別の層のみを伝導性にすることが可能である。たとえば、伝導性の層またはヘルド本体全体が、たとえば金属そして/または黒鉛から成る伝導性の添加要素と組み合わせた非伝導性の樹脂母材を含む複合材料から成ることが可能である。添加要素は、たとえば、長繊維そして/またはいわゆるウィスカそして/またはナノチューブまたは類似の材料から成っていてもよい。
【0012】
1つの形態において、少なくとも部分的に、そして/またはアイの領域に、ヘルド本体の2つの平坦面の外側の面に金属層を設けてもよい。これによって、ヘルド本体、特にたて糸を含む領域の摩擦が減少する。金属層は、互いに電気的に接続されていてもよく、ヘルドが作業位置にあるとき、少なくとも1つの伝導性のヘルド支持レールに対して電気接続部を形成してもよい。
【0013】
このようにして、所望の特性を長手方向部分に与える樹脂または複合材料をヘルド本体の各長手方向部分に使用することが可能になる。たとえば、アイを含む長手方向部分は、ヘルド本体の他の長手方向領域の樹脂または複合材料よりも耐摩擦性の高い樹脂または複合材料から製造され得る。端部小穴(耳穴)の領域において、ヘルド支持レールに対する良好な摺動特性および高い靭性を有する樹脂または複合材料を使用することができる。
【0014】
さらに、本発明の第2の形態において、ヘルドは、ヘルド本体の長手方向で合流する、異なる厚さを有する2つの長手方向部分を有する。厚さは、帯状のヘルド本体が存在する面に対して垂直に測定される。したがって、各長手方向部分の厚さをその機能に適合させることができる。たとえば、たて糸に起因してより摩耗するアイの領域を、隣接する長手方向部分よりも厚く製造することができる。端部小穴が存在する端部の長手方向領域は、隣接する長手方向部分よりも厚くてもよい。その理由は、ヘルド支持レールに対して端部小穴のせいでヘルドが増加したストレスを受けるからである。
【0015】
上述した形態を組み合わせて、隣接する長手方向部分が異なる厚さを有するだけではなく、異なる樹脂または複合材料を含むようにしてもよい。
【0016】
本発明に係るヘルドのさらなる顕著な利点は、ヘルド本体が分離可能な部分として設計されているということである。ヘルド本体は、金型への流し込みによって製造されているのではなく、フォイル条片から分離される。このタイプのフォイル条片は、たとえば、押し出しまたは共押し出しによって製造され得る。後にヘルド本体の異なる長手方向部分を構成する条片の部分は、異なる厚さを有し、そして/または、異なる樹脂または複合材料から製造される。したがって、製造プロセスは極めて効率的で経済的である。使用される樹脂材料により、成形されたヘルド本体が、結果として製造金型に大きな摩耗を生じさせる可能性がある。このような製造金型を改修したり取り替えたりすることは高価につく。これに対して、フォイルの条片から分離、好ましくは打ち抜き加工される分離可能な部品として設計されたヘルド本体は、特に多数製造する際により経済的である。加えて、分離または打ち抜き加工される部品としてヘルド本体を製造することはより柔軟性がある。たとえば、端部小穴に対する変更や、ヘルド本体に対する他の形状寸法上の変更は、フォイル条片から打ち抜き加工すべき輪郭を変化させることによって極めて簡単に行うことができる。一方、このことは、金型成形されたヘルド本体の場合、極めて多大な労力とコストを払わなければ行えない。たとえば、閉止された環状の端部小穴または側面のある箇所で開端している端部小穴を有するヘルド本体を、同じフォイル条片から製造することができ、打ち抜き加工することができる。ある場合には、分離すべきヘルド本体の外郭を変更するためには、打ち抜き加工工具を変更すればよい。ヘルド本体が、レーザーや水噴射を用いる切断工法によって分離される場合、新しい外側の輪郭をプログラミングすればよいだけである。ヘルド本体を打ちぬき加工する場合は、抜き型、またはその一部を交換しなければならない。したがって、本発明のヘルドは、工具への投資コストを増加させることなく、外郭の異なる変形形態を複数備えた状態で提供され得る。
【0017】
ヘルドを製造するために、互いに平行な少なくとも2つの条片部分を有するフォイル条片を用意する。これらの条片部分は、異なる樹脂または複合材料を含むか、異なる厚さを有する。この種のフォイル条片は、共押し出しによって極めて簡単に製造することができる。ヘルド本体がフォイル条片から分離される前に、長手方向において、または長手方向に対して横断方向に存在する面において、フォイル条片を延伸することができる。このような延伸によって、フォイル条片の強度を高めることができる。これは分子が延伸の方向に揃うためである。
【0018】
その後、ヘルド本体は、切断、打ち抜きまたはその他の様々な分離工法によって分離することができる。したがって、ヘルド本体は、分離部分または打ち抜き加工部分を構成する。
【0019】
ヘルド本体の各長手方向部分は、全長にわたって一定に保たれた断面、特に矩形の断面を有し得る。ヘルド本体を分離するための開始材料として提供されるフォイルの条片は、極めて簡単にかつ経済的に製造することができる。
【0020】
ヘルド本体の各長手方向部分は、単一の均質な樹脂または複合材料から成ることが好ましい。代替的に、1つ以上の長手方向部分がそれぞれ互いに対して平坦に重なるとともに互いに結合されている複数の層から成るようにすることも可能である。これらの2つの形態において、各長手方向部分のために使用された材料は、特定の長手方向部分にとって望ましい特性に適合させることができる。フォイルの複数の平坦層から長手方向部分を製造することによって、フォイルの外側の層には耐摩擦性材料を使用しフォイルの内側の層には引張り強さの大きな素材を使用することができるので、その結果、ヘルドの寿命を増すような、ヘルド本体の特に好適な形態が可能になるという利点が得られる。
【0021】
少なくとも1つの長手方向部分、または少なくとも1つのフォイル層が複合材料から成り、それによって樹脂が添加要素を含む樹脂母材として機能すると有利である。添加要素は、短繊維(ウィスカとして知られる)そして/または球状要素そして/またはその他の物体から形成され得る。このようにして、たとえば、樹脂母材として機能する樹脂材料の摩擦抵抗そして/または引張り強さをさらに向上させることができる。炭素そして/またはガラスそして/または樹脂そして/または金属そして/または耐摩擦性樹脂体が、添加要素のための材料として好適である。
【0022】
以下にあげる樹脂を1つ以上、ヘルド本体の長手方向部分を製造するための樹脂として使用することができる。ポリアミド、コポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、フェノール樹脂等。これらの樹脂は、単体で、または添加要素と組み合わせて複合材料として、長手方向部分のために用いることができる。
【0023】
ヘルドは、アイを有する中央長手方向部分を含むことが好ましい。特に、2つの長手方向端部部分も存在している。これらはそれぞれ、ヘルドの端部小穴のうち1つを含む。中央長手方向部分は、それぞれ、長手方向移行部分によって2つの長手方向端部部分に接続されていてもよい。このようにして、ヘルドが3つまたは5つの長手方向部分に分割されると、それぞれの場合に使用される樹脂または複合材料は、該当する長手方向部分の機能に特に適合され得るので、特に長い寿命をもつヘルドを作製することができる。同時に、高価な樹脂または複合材料の使用を、こうした材料を使用しなければならないこれらの特別な長手方向部分に限定することができる。
【0024】
実施例において、アイを含む長手方向部分は、最も耐摩擦性が高いので、特に、複合材料から製造される。これに対して、長手方向移行部は、添加要素なしで、耐摩擦性がより低い樹脂材料、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリカーボネートから特に製造することができる。ポリアミドは、単体で、または添加要素と組み合わせた複合材料として、特にアイを有する中央長手方向部分の製造のために考慮されてもよい。
【0025】
たとえばヘルドの製造は、挿入物を使用することなく、ヘルド本体またはヘルド本体の中央長手方向部分から直接形成することで簡略化すされる。留め具(maillon)をアイとして挿入する必要はない。
【0026】
ヘルドおよび製造方法を、以下で特定の実施形態に基づいて説明する。さらなる有利な構成が、説明および従属請求項から明らかになる。また、図面についても参照する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】端部小穴およびアイの方から見たヘルドの側面を極めて概略的に示した図である。
【図2】図1に係るヘルド本体が打ち抜き加工される多層条片の概略斜視図である。
【図3】端部小穴を極めて概略的に示したヘルドのさらなる図であって、アイを囲む領域において長手方向部分が捻れている、図である。
【図4】線IV―IVに沿って切って示した図3のヘルドの長手方向に対して横断する方向の断面図である。
【図5】異なる厚さの長手方向部分を有するヘルド本体の短辺側の概略図を示す、ヘルドのさらなる実施形態を示す図である。
【図6】異なる厚さの2つの長手方向部分同士の移行部位を段差なしで製造した、図5におけるヘルドの変形実施例の図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0028】
図面は、長手方向Lに延在するヘルド本体11を有するヘルド10の様々な形態を示す。ヘルド本体11は、一例として、ヘルド本体11のほぼ中央に位置するたて糸19を導くためのアイ(糸穴)12を有する。端部小穴13がそれぞれヘルド本体11の長手方向の2つの端部に設けられている。この端部小穴は、ヘルド枠のヘルドレール上にヘルドを配置するために使われる。ここで説明する実施形態では、端部小穴13が、閉止された環状のO型端部小穴として示されている。この代替案として、端部小穴を側面の適所で開端させてC型またはJ型の端部小穴を形成することもできる。
【0029】
図面に示されているヘルド10の様々な実施形態は、実際の縮尺とは異なり極めて概略的なかたちで描かれている。図面は、本発明に係るヘルド10およびその製造の原則を説明する目的のものにすぎない。
【0030】
ヘルド本体11は、全体的に複数の樹脂または複合材料から製造されている。ヘルド本体は、中央長手方向部分14を有しており、この中央長手方向部分は、アイ12を有する。このアイの端部には、長手方向移行部分15が接続している。ヘルド本体11は、2つの長手方向端部部分16も有している。これら長手方向端部部分はそれぞれ、端部小穴13を備える。2つの長手方向端部部分16は、それぞれ長手方向移行部分15のうちの1つと直接連結している。図示した実施例とは異なり、長手方向端部部分16が中央長手方向部分14に直接連結し、その結果長手方向移行部分15を省略するということも可能である。長手方向の部分の数は可変であり得る。
【0031】
ヘルド本体11の長手方向Lにおいて互いに前後して続く2つの長手方向部分14、15または15、16は、異なる樹脂または複合材料から成る。これによって、ヘルド本体11の所望の性質に応じて、関連する長手方向部分14、15、16に関して、適切な樹脂または複合材料を選択して対応の長手方向部分を製造するために使用することができるようになる。
【0032】
ヘルド本体11は、別体の部分として、特に打ち抜き加工部分として作製されている。このヘルド本体を製造するために、フォイル条片18を用意し、このフォイル条片からヘルド本体を別体として作製する。ヘルド本体のアイ12、端部小穴13および外郭20が、単一工程または多工程打ち抜き加工工法で打ち抜き加工されることが好ましい。これによって、ヘルド本体11を特に経済的にかつ柔軟に製造できるようになる。特に、アイ12、端部小穴13または外郭20の形状または大きさが異なるヘルド本体の変形形態を、同じフォイル条片18から打ち抜き加工することができる。このことは、レーザー切断プログラムまたは水噴射切断機を変更することによって、または打ち抜き加工工具またはその一部を交換することによって行うことができる。
【0033】
異なる長手方向部分14、15、16を達成するために、フォイル条片18は、平行条片部分を備える。これら平行条片部分は、フォイル条片18の長手方向Vにおいて互いに対して平行に延在している。中央長手方向部分14に対応する条片中央部21が存在している。この中央条片部分に近接して、条片移行部22が、長手方向Vに対して垂直な横断方向Qに存在している。他の端部において、中央条片部分21の反対側で、条片移行部22がそれぞれ条片縁部23に隣接している。ヘルド本体11が打ち抜き加工されると、条片移行部22がそれぞれ長手方向移行部分15を形成する。一方、条片縁部23は、長手方向端部部分16を形成する。条片部分21、22、23の数は可変であってもよい。その数は、いくつの長手方向部分14、15、16がヘルド本体11に形成されるかに依存する。図1および図2に示されている実施例は、5つの長手方向部分14、15、16を含み、したがってフォイル条片18の場合、条片部分21、22、23も同じく5つ存在する。中央長手方向部分14および長手方向端部部分16に関して使用される樹脂または複合材料は、低い摩擦レベルにさらされる長手方向移行部分15に対して使用されるものとは異なる。アイ12が存在する中央長手方向部分14には、特に高い摩擦抵抗が必要となる。なぜなら、ヘルド本体11は、アイ12を通過するたて糸19によって、また、ヘルド枠に案内されているヘルド10の側方を通過するたて糸によって、この部分で特に高い応力にさらされるからである。
【0034】
図1ないし図4に示す実施例のヘルド10において、各長手方向部分14、15、16は、一様な、好適には均一な樹脂または複合材料から成る。ヘルド本体用に使われている材料は、たとえばもはや使用されなくなったヘルド10の材料を再利用するために各長手方向部分14、15、16の機械的な分離によって再び極めて簡単に分離することができる。これを達成するために、フォイル条片18を、横断方向Qにおいて互いに隣接しているフォイル部分21、22、23を共押し出しすることで形成することが好ましい。この場合、フォイル条片18が製造されるとき、各条片部分21、22、23は一緒に結合されている。したがって、各条片部分21、22、23を結合するための別の結合工程は必ずしも必要ない。
【0035】
長手方向Vそして/または横断方向Qにおけるフォイル条片18の強度を改善するために、フォイル条片18を押し出しした後に延伸することができる。延伸によって、延長方向における分子構造が揃えられ、フォイル条片18の強度が、対応する延伸方向において増加する。フォイル条片18が少なくとも横断方向Qにおいて延伸していることが好ましい。その結果、長手方向Lにおいてヘルド本体11の強度が増加することになる。フォイル条片18を延伸させることによって生じる樹脂の変形を押し出しの際に考慮し、それによって、ヘルド本体11の長手方向部分14、15、16にとって必要となる値に各条片部分21、22、23が対応するようにしなければならない。
【0036】
ここに記載した実施例において、ヘルド10は、ヘルド本体11によって形成される。留め具(maillon)等のアイ12の挿入物または端部小穴13の挿入物は含まれないことが好ましい。打ち抜き加工部分として形成されたヘルド本体11は、完全に製造されたヘルド10を形成する。
【0037】
好ましい実施例においては、ヘルド本体11からの打ち抜き加工に続くさらなる加工ステップが省略される。これの1つの変形として、図3および図4には、ヘルド10の一実施形態が示されている。この実施形態において、さらなる加工ステップが打ち抜き加工に続く。アイ12のまわりの中央領域は、可塑変形、好適には熱可塑変形されている。この変形状態において、ヘルド本体11のこの中央領域は、長手方向軸まわりに捻られているので、アイ12が存在する面は、端部小穴13が存在する面に対して傾斜している。このことによって、図4に概略的に示すように、ヘルド10のトルクにたて糸19をさらすことなく、たて糸19をアイ12に通過させることができるようになる。捻られた中央領域25は、ここではヘルド本体11の長手方向中央領域14の長さに相当し得る。しかし、図3に示すように、中央領域25の長さは、中央長手方向部分14の長さとは異なり、長くても短くてもよい。
【0038】
ヘルド10の設計のさらなる可能性が、図5および図6に示されている。上述した実施形態とは異なり、ヘルド本体11の異なる長手方向部分14、15、16は、異なる大きさを有する。このようにして、異なる材料の使用に替えて、もしくは異なる材料の使用に加えて、ヘルド本体11の長手方向部分14、15、16の厚さを、引っ張り強さそして/または摩擦そして/または弾性そして/または制動の観点からそれぞれの場合において望まれる性質に適合させることができるようになる。この構成の選択肢は、上述した実施形態と組み合わせて、またはそれらとは別個に採用することができる。
【0039】
ヘルド本体11の中央長手方向部分14は、帯状のヘルド本体11が延在する面に対して垂直になるように測ると、2つの端部のそれぞれに隣接する長手方向移行部分15の厚さd2よりも大きな厚さd1を有する。長手方向移行部15は、糸を導く中央長手方向部分14よりも低い摩擦にさらされる。したがって、減少した厚さd2でも充分である。
【0040】
端部における2つの縁部16の厚さd3は、それぞれ隣接する長手方向移行部分15の厚さよりも大きい。概略図において、端部における中央長手方向部分14および2つの長手方向部分16の厚さd1およびd3は、同じ大きさを有するように描かれている。変形例においては、厚さd1とd3は異なっていてもよい。たとえば、中央長手方向部分14の厚さd1は最も大きくなり得る。なぜなら、中央長手方向部分14はたて糸によって最も強いストレスを受けるからである。
【0041】
単純な1つの実施形態において、各長手方向部分14、15、16の内部の断面は、長手方向Lにおいて一定であってもよい。たとえば矩形の断面であってもよい。2つの隣接する長手方向部分14および15または15および16の間の移行部は、この場合、段状となる。2つの隣接する長手方向部分の間、特に中央部14と隣接する長手方向部分15との間の厚さの違いにより、2つのヘルド10の間を通過して異なるヘルド枠に至るたて糸が、2つの長手方向部分14、15の間の段付きの移行部に引っかかる危険性がある。その場合、これらの移行部27を段差なしで形成することもできるし、別の実施形態では、縁部なしで製造することもできる。
【0042】
2つの隣接する長手方向部分14および15または15および16の間に段差のない移行部27を製造するための一つの方法が、図6に示されている。各移行部27において、傾斜面29が、ヘルド本体11の2つの平坦面28に存在している。その結果、段の代わりに、異なる厚さを有する2つの異なる長手方向部分14および15または15および16の間に、角つきの移行部が存在することになる。ヘルド本体は、より厚い方の長手方向部分14および16から始まり移行部27に向かって連続的に細くなり、やがてより薄い方の長手方向部分15に至る。傾斜面29の代わりに、段なしそして/または縁部なしの移行部27を形成するドーム型の面そして/または湾曲した面、または別の移行面を設けることも可能である。図6に示す実施例においては、移行部27に対して極めて簡略化された外郭が採用されている。そして、この外郭はフォイル条片18の押し出しまたは共押し出しによって簡単に作製できる。
【0043】
ヘルド本体11の別の変形例において、このヘルド本体は、1つ以上の長手方向部分14、15、16において多層構造を有している。フォイル内側層13は、たとえば2つのフォイル外側層31の間にサンドウィッチのように存在していてもよい。これが中央条片部分21として図2に概略的に示されている。ここで、中央条片部分は、ヘルド本体11が打ち抜き加工された後で中央長手方向部分14を形成し、それによって中央長手方向部分14が多層構造を有するようになっている。フォイル31の外側の層は、ここでは特に耐摩擦性を有する材料から製造されている。一方、フォイル内側層30は、たとえば中央長手方向部分14にとって望ましい引張り強さを有している。このような多層構造が中央長手方向部分14に設けられているだけではなく、他の長手方向部分15、16にも設けられている。特に、長手方向端部部分16に設けられている。別の長手方向部分14、15、16が異なる厚さで製造されている図5および図6に係る実施形態において、より大きな厚さd1、d3を有する長手方向部分14、16におけるフォイルの層30、31の数は、より小さな厚さd2を有する長手方向部分15の数よりも大きい。たとえば、中央長手方向部分14と2つの長手方向縁部16とを、それぞれフォイル中央層30および2つのフォイル外側層31という3つの層を有するように製造し、一方、長手方向移行部分15を単一の層から製造することが可能である。ここで、フォイル中央層30が、ヘルド本体11全体にわたって長手方向Lにおいて連続的に延在することが望ましい。このフォイル中央層30は、ヘルド本体11の引張り強さを決定する一方で、ヘルド本体の部分はフォイル外側層31によって強化されているかまたは耐摩擦保護が備えられている。
【0044】
一般に、多層領域内のフォイル層の数は、所望の機械的性質に従って選択される。フォイルを3層以上設けることもできる。
【0045】
本発明は、ヘルド本体11を備えるヘルド10に関する。このヘルド本体は、長手方向Lに延在し、かつ、たて糸19を導くためにアイ12を備える。端部小穴13が各端部に設けられている。ヘルド本体11は、薄いフォイル状の材料のリボンから製造されている。これは、フォイル条片18から一体として分離されており、打ち抜き加工されていることが好ましい。ヘルド本体11は、長手方向Lにおいて少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つまたは5つの、互いに隣接する長手方向部分14、15、16を備える。長手方向Lにおいて互いに隣接する2つの長手方向部分14、15は、異なる樹脂または複合材料を含み、そして/または異なる厚さd1、d2またはd2、d3を有する。このようにして、引張り強さ、摩擦抵抗、弾性そして/または制動といった所望の機械的特性を、適切な材料と適切な厚さd1、d2、d3を使用することによって達成することができる。極めて簡略化された経済的な製造方法の一つは、ヘルド本体を分離された部品または打ち抜き加工された部品として形成することによって達成される。ヘルド本体は、複数の条片部分21、22、23を有するフォイル条片18から分離される。ヘルド本体11が打ち抜き加工されると、条片部分は、異なる長手方向部分14、15、16を形成する。
【符号の説明】
【0046】
10 ヘルド
11 ヘルド本体
12 アイ(糸穴)
13 端部小穴
14 中央長手方向部分
15 長手方向移行部分
16 長手方向端部部分
18 フォイル条片
19 たて糸
20 外郭
21 条片中央部
22 条片移行部
23 条片縁部
25 中央領域
27 移行部
28 平坦面
29 傾斜面
30 フォイル内側層
31 フォイル外側層
d1 中央長手方向部分の厚さ
d2 長手方向移行部分の厚さ
d3 長手方向端部部分の厚さ
L 長手方向
Q 横断方向
V (条片の)長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(L)に延在するとともに、たて糸(19)を保持するために用いられるアイ(12)を備える、帯状のヘルド本体(11)を備え、
当該ヘルド本体(11)は、当該長手方向(L)において互いに隣接する少なくとも2つの長手方向部分(14、15、16)を含み、
当該ヘルド本体(11)は、フォイル条片(18)から分離された分離部分であり、
当該長手方向(L)において互いに直接隣接する2つの当該長手方向部分(14、15、16)は、異なる樹脂または複合材料そして/または異なる厚さ(d1、d2、d3)を有する
ヘルド枠用のヘルド(10)。
【請求項2】
前記ヘルド本体(11)の前記長手方向部分(14、15、16)は、全長にわたって一定の断面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項3】
前記ヘルド本体(11)の前記長手方向部分(14、15、16)は、均一な樹脂または複合材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項4】
前記ヘルド本体(11)は、互いに平坦に隣接するとともに結合されている複数のフォイル層(30、31)からなる少なくとも1つの前記長手方向部分(14)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項5】
少なくとも1つの前記長手方向部分(14、15、16)または少なくとも1つの前記フォイル層(30、31)が、金属そして/またはガラスそして/またはセラミックからなる添加要素が加えられた樹脂母材を含む複合材料から成る、ことを特徴とする請求項1または4に記載のヘルド。
【請求項6】
前記添加要素は、繊維そして/または球状で樹脂材料内に備えられる、ことを特徴とする請求項5に記載のヘルド。
【請求項7】
前記アイ(12)を有する中央長手方向部分(14)を有し、また、それぞれが端部小穴(13)を有する2つの長手方向端部部分(16)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項8】
前記長手方向端部部分(16)は同じ厚さ(d3)を有する、ことを特徴とする請求項7に記載のヘルド。
【請求項9】
前記中央長手方向部分(14)は、その各端部において長手方向移行部分(15)を介して前記長手方向端部部分(16)に接続している、ことを特徴とする請求項7に記載のヘルド。
【請求項10】
前記長手方向移行部分(15)は、前記長手方向端部部分(16)そして/または前記中央長手方向部分(14)よりも小さな厚さ(d2)を有する、ことを特徴とする請求項9に記載のヘルド。
【請求項11】
前記中央長手方向部分(14)に使われている前記樹脂または複合材料そして/または前記長手方向端部(16)に使われている前記樹脂または複合材料は、前記長手方向移行部(15)に使われている前記樹脂または複合材料よりも耐摩擦性が高い、ことを特徴とする請求項9に記載のヘルド。
【請求項12】
長手方向(L)に延在するとともにたて糸(19)を保持するために用いられるアイ(12)を有するヘルド本体(11)を備えるヘルド(10)を製造するための方法であって、
少なくとも2つの互いに平行な条片部分(21、22、23)を備えるフォイル条片(18)を設けるステップであって、2つの直接隣接する条片部分(21、22および22、23)が異なる樹脂または複合材料そして/または異なる厚さ(d1、d2またはd2、d3)を有する、ステップと、
当該ヘルド本体(11)の当該長手方向(L)が当該条片部分(21、22、23)の長手方向(V)に対して横断方向に整合するように当該ヘルド本体(11)を当該フォイル条片(18)から分離するステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記フォイル条片(18)が、共押し出しによって製造される、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フォイル条片(18)が、前記ヘルド本体(11)を分離する前に、前記条片部分(21、22、23)の前記長手方向(V)そして/または前記条片の前記長手方向(V)に垂直な横断方向(Q)に延伸される、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−207358(P2012−207358A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−45114(P2012−45114)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)