説明

樹脂ベースの複合材料製衛生陶器及び調製方法

本発明は、樹脂ベースの複合材料製衛生陶器を開示し、これは下記の点の特徴を有する。当該衛生陶器は、原料を混合、射出し、次いで、型を凝固させることによって作られる。当該原料の成分及びその重量比は下記の通りである:不飽和ポリエステル樹脂14%〜30%、ポリエステル系収縮防止剤6%〜14%、補強繊維11%〜37%、珪灰石10%〜20%、炭酸カルシウム25%〜40%、開始剤0.8%〜2.4%。そして、本発明はまた、当該衛生陶器の調製方法も開示する。現在の技術と比較して、本発明は高い強度、高い靭性、完全な自浄能力及び低いエネルギー消費という利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生陶器に関し、特に、樹脂と珪灰石を主要原料とする複合材料製衛生陶器に関する。本発明はまた、当該衛生陶器の調製方法も開示する。
【背景技術】
【0002】
一般的な衛生陶器としては、セラミック製の浴槽、洗面器、便器、小便器及びビデが挙げられる。しかし、セラミックはキルン中での焼成によって作られ、これは環境に良くなく、多くのかなり希少な希土鉱産資源を必要とする。従って、この状況がこのまま続いた場合、当該鉱産資源は確実に圧迫されるだろう。
【0003】
近年、人造メノウまたはアクリルで衛生陶器を製造することがある(特許番号がZL200410040962.6である中国特許発明「鋳込み工程によって作られるアクリル便器」(特許文献1)を参照)。当該特許は、樹脂とメノウ粉との混合物を中間層の空の殻に注ぐことによって作られた成分で生産された便器に関する。このように作られた製品は、セラミック製品の−般的特性を有するが、当該プロセスは複雑であり、コストがかなり高く、厚さが制限され、自浄能力が低い。上記に基づき、アクリルとガラス繊維強化プラスチックとの複合構造を有する別の便器が公知にされた(特許番号がZL200620034821.8である中国実用新案「アクリルとガラス繊維強化プラスチックとの複合構造を有する便器」(特許文献2)を参照)。
【0004】
中国特許出願公開「人造大理石製品及び調製方法」(中国特許出願番号 96106392.0、特許文献3)も参照。当該出願は、大理石粉、不飽和ポリエステル樹脂、水酸化アルミニウム及び珪灰石を主要原料とした鋳込み工程によって作られた製品に関し、製品性能及び調製工程の両方が改善された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許第126923(C)号明細書
【特許文献2】中国実用新案第2926350(Y)号明細書
【特許文献3】中国特許第1167741(A)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の技術状況を考慮して、高い靭性、高い強度及び低いコストを有する樹脂ベースの複合材料製衛生陶器を提供する。本発明はまた、エネルギーを節約し、環境を保全する、低いコストの、樹脂ベースの複合材料製衛生陶器の調製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の技術的問題を解決するため、下記の技術的解決法を使用する。樹脂ベースの複合材料製衛生陶器であって、その特徴は、原料を混合、射出し、型を凝固させることによって作られることである。当該原料の成分及びその重量比は、
不飽和ポリエステル樹脂 14%〜30%、
ポリエステル系収縮防止剤 6%〜14%、
補強繊維 11%〜37%、
珪灰石 10%〜20%、
炭酸カルシウム 25%〜40%、
開始剤 0.8%〜2.4%、
である。
【0008】
引き続いてホモジナイズされる混合のために、当該不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和樹脂をスチレンで希釈することによって作られ、当該スチレンと当該不飽和樹脂との重量比は、
スチレン 60%〜65%、
不飽和樹脂 35%〜40%、
であるものとする。
【0009】
当該不飽和樹脂は、o−型不飽和ポリエステル樹脂またはm−フタル酸型不飽和ポリエステル樹脂のいずれかであってもよい。
【0010】
引き続く均一な混合のために、当該ポリエステル系収縮防止剤は、抗収縮ポリエステルをスチレンで希釈することによって作られ、当該スチレンと当該ポリエステルとの重量比は、
スチレン 33%〜37%、
ポリエステル 63%〜67%、
であるものとする。
【0011】
当該補強繊維は、ナイロン繊維またはポリホスファゼン・マクロ繊維のいずれかであってもよい。当該原料はまた、異なる色の衛生陶器を調製するために、重量比が1%〜4%である顔料ペーストも含む。当該原料はまた、製品の質及び耐火能を改善するために、重量比が6%〜10%である水酸化アルミニウムも含む。
【0012】
所望により、当該開始剤は過安息香酸 tert−ブチル及び過酸化ベンゾイルを含み、当該過安息香酸 tert−ブチルと当該過酸化ベンゾイルとの重量比は1:2である。
【0013】
樹脂ベースの複合材料製衛生陶器を調製する方法であって、当該方法は、
(1)原料を取り、これを均一に混合して凝集複合材料にする工程と、
(2)当該複合材料を熱硬化性プラスチック射出成形機の射出装置に注ぐ工程と、
(3)当該複合材料を型に射出し、当該型を130℃〜150℃の温度まで加熱し、凝固圧力を維持する工程と、
(4)当該型を開け、完成品を取り出す工程と、を含む。
【0014】
所望により、工程(3)における型に対して、−0.06Paから−0.09Paの間の真空度で真空引きが行なわれる。100kg/cmの射出圧で高圧射出を行なう。そして、凝固圧力は、射出後、2〜3分超の間維持される。
【0015】
現在の技術と比較して、本発明の利点は以下の点にある。主要原料は、入手が容易な低コストの珪灰石及び炭酸カルシウムであり、高圧下で型に射出された原料を凝固させることによって作られる。従って、コストが低く、高いエネルギーで焼成する必要がなく、労力もまた減少させることができる。熱硬化性プラスチック射出成形機を導入することによって効率が改善される。低い不良率で、大量生産において製品を容易に製造できる。さらに、製品の表面は清潔であり、鏡のように滑らかであり、高い自浄能力を有し、冷感なく常温で維持できる。高い靭性及び高い強度の利点を有し、製品全体はかなり軽い。
【実施例】
【0016】
下記の実施例とともに、本発明についてさらに詳細な説明がなされる。
【0017】
昆侖晶石の調製方法は主に下記の工程を含む:
(1)高い性能の、修飾された不飽和ポリエステル樹脂を、昆侖晶石粉(主要成分として珪灰石を含む)、様々なサイズの粒子、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、顔料及び開始剤に混入させ、これらを混練機で凝集複合材料に練る。
(2)当該凝集複合材料を特製の射出装置の装入バスケットに注ぐ。
(3)1つの衛生製品の材料の量を、熱硬化性プラスチック射出成形機のコンピューター制御プログラムに入力し、定量的射出成形機が、ピストン式バレルで、高圧で衛生製品の金型に材料を射出する。
(4)衛生製品の射出金型を油導入によって加熱し、温度を130℃〜150℃に維持する。当該金型から、−0.06から−0.09Paの間の真空度で真空引きし、衛生製品内に気孔がないようにする。
(5)当該複合材料を金型に射出した後、これらを高温で加熱し、凝固させ、圧力を2分間維持し、製品の収縮または変形を防ぐ。
(6)凝固後、機械で金型を開け、突出し装置によって製品を突出し、機械ハンドで型から取り出し、製品検査及び製品包装のラインに置く。
【0018】
異なる成分の態様は下記の通りである。
【0019】
(態様1)
18% 不飽和ポリエステル樹脂、10% ポリエステル系収縮防止剤、20% ナイロン繊維(長さ3〜5mmを有する)(補強繊維);10% ポリエステル繊維(長さ5〜10mmを有する)(これもまた補強繊維である)、13% カテゴリー1200の珪灰石微粒子、27% カテゴリー1000の炭酸カルシウム粉末、3% 顔料ペースト、及び1% 開始剤。当該開始剤は過安息香酸 tert−ブチル(TBPB)及び過酸化ベンゾイル(BPO)を含み、当該過安息香酸 tert−ブチルと当該過酸化ベンゾイルとの重量比は1:2である。この態様で作られる製品は薄く、軽く、滑らかな線と弧を有し、その引っ張り強さは70Mpaに達する可能性があり、圧縮強度及び曲げ強度の両方が100MPaを超える可能性がある。
Swancor工業株式会社製のSwancor 928を、当該態様における不飽和ポリエステル樹脂(一定の純度(35%〜40%)の不飽和樹脂を有し、残りはスチレンである)として採用した。かつ、Swancor工業株式会社製のSwancor 7310をポリエステル系収縮防止剤(一定の純度(63%〜67%)のポリエステルを有し、残りはスチレンである)として採用した。
【0020】
(態様2)
16% 不飽和ポリエステル樹脂(Swancor 928)、12% ポリエステル系収縮防止剤(Swancor 7310)、5% ポリホスファゼン・マクロ繊維(長さ3〜6mmを有する)、10% ポリエステル繊維(長さ5〜10mmを有する)、15% カテゴリー1200の珪灰石微粒子、32% カテゴリー1000の炭酸カルシウム粉末、8% 水酸化アルミニウム粉末、3% 顔料ペースト、及び1% 開始剤。この態様で作られる衛生製品は、UL94V−0級に達する優れた耐火能、耐熱性及び耐腐食性の特性を有し、冷感なく常温で維持される。当該態様で使用されるポリホスファゼン・マクロ繊維は補強繊維であり、これは製品の強度及び靭性を改善する。
【0021】
(態様3)
16% ポリホスファゼン修飾不飽和ポリエステル樹脂(ジフェニルオキシドポリホスファゼン)、12% ポリエステル系収縮防止剤(Swancor 7310)、6% ナイロン繊維(長さ3〜5mmを有する)、12% ポリエステル繊維(長さ5〜10mmを有する)、20% カテゴリー1200の珪灰石微粒子、32% カテゴリー1000の炭酸カルシウム粉末、3% 顔料ペースト、及び1%開始剤。この態様で作られる衛生製品の水接触角は95度に達し、これは防水能を著しく改善し、かつ、その表面は清潔であり、自浄能力、かなり高い硬度、及び理想的な耐衝撃性及び耐摩耗性能を有する。
【0022】
上記態様で言及されたパーセントは、全て重量パーセントであり、当該衛生製品は、で洗面器、浴槽、便器、ビデ、小便器、シャワータブなどであってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ベースの複合材料製衛生陶器であって、前記衛生陶器は、原料の混合、射出によって作られ、型により凝固され、前記原料の成分及びその重量比は、
不飽和ポリエステル樹脂 14%〜30%、
ポリエステル系収縮防止剤 6%〜14%、
補強繊維 11%〜37%、
珪灰石 10%〜20%、
炭酸カルシウム 25%〜40%、
開始剤 0.8%〜2.4%、
である複合材料製衛生陶器。
【請求項2】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和樹脂をスチレンで希釈することによって作られ、前記スチレンと前記不飽和樹脂との重量比が、
スチレン 60%〜65%、
不飽和樹脂 35%〜40%、
である請求項1記載の樹脂ベースの複合材料製衛生陶器。
【請求項3】
前記不飽和樹脂がo−型不飽和ポリエステル樹脂またはm−フタル酸型不飽和ポリエステル樹脂である請求項2記載の樹脂ベースの複合材料製衛生陶器。
【請求項4】
前記ポリエステル系収縮防止剤が、抗収縮ポリエステルをスチレンで希釈することによって作られ、前記スチレンと前記ポリエステルとの重量比が、
スチレン 33%〜37%、
ポリエステル 63%〜67%、
であるものとする請求項1記載の樹脂ベースの複合材料製衛生陶器。
【請求項5】
前記補強繊維がナイロン繊維またはポリホスファゼン・マクロ繊維である請求項1記載の樹脂ベースの複合材料製衛生陶器。
【請求項6】
前記原料が、1%〜4%の重量比の顔料ペーストも含む請求項1記載の樹脂ベースの複合材料製衛生陶器。
【請求項7】
前記原料が、6%〜10%の重量比の水酸化アルミニウムも含む請求項1記載の樹脂ベースの複合材料製衛生陶器。
【請求項8】
前記開始剤は、過安息香酸 tert−ブチル及び過酸化ベンゾイルを含み、前記過安息香酸 tert−ブチルと前記過酸化ベンゾイルとの重量比が1:2である請求項1記載の樹脂ベースの複合材料製衛生陶器。
【請求項9】
請求項1〜6いずれか1項に記載の樹脂ベースの複合材料製衛生陶器を製造する方法であって、前記方法は、
(1)前記原料を取り、これを均一に混合して凝集複合材料にする工程と、
(2)前記複合材料を熱硬化性プラスチック射出成形機の射出装置に注ぐ工程と、
(3)前記複合材料を型に射出し、前記型を130℃〜150℃の温度まで加熱し、凝固圧力を維持する工程と、
(4)前記型を開け、完成品を取り出す工程と、を含む方法。
【請求項10】
工程(3)における型に対して、−0.06Paから−0.09Paの間の真空度で真空引きが行なわれ、100kg/cmの射出圧で高圧射出が行なわれ、射出後、2〜3分超の間凝固圧力が維持される請求項9記載の方法。

【公表番号】特表2012−504699(P2012−504699A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536733(P2011−536733)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000030
【国際公開番号】WO2011/047521
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(510112752)シャンハイ ヒューダ インベストメント アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】