説明

樹脂ペレット、食品保存用シートおよびそれらの製造方法

【課題】葉物野菜や桑葉といった食品の保存性を高めることができる樹脂ペレット、食品保存用シート、樹脂ペレットの製造方法および食品保存用シートの製造方法を提供する。
【解決手段】プロアントシアニジンとトレハロースとを混合した後、150乃至200℃で融解したポリプロピレンまたはポリエチレンに添加してペレット状に加工する。この樹脂ペレットを150乃至200℃で融解した後、厚さ20乃至50μmのシート状に加工して成る食品保存用シートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレット、食品保存用シート、樹脂ペレットの製造方法および食品保存用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品として使用される植物の葉として、セリやキャベツ、レタス、ほうれん草、大根の葉、茶葉、桑葉などがある。このうち、セリやキャベツ、レタス、ほうれん草などの葉物野菜を、生の状態で長期保存する方法として、複数の孔を有するフィルムから成る袋に入れて保存する方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、緑茶やウーロン茶、紅茶の茶葉は、一般的には乾燥して保存されている。これまで主として養蚕に利用されてきた桑の葉も、近年、桑葉茶として生産されており(例えば、特許文献2参照)、生の桑葉を蒸した後、乾燥させて保存されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−199385号公報
【特許文献2】特開2006−101732号公報
【特許文献3】特開平9−206019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
葉物野菜を生の状態で保存する場合、流通等を考慮すると保存期間が長いほど好ましいため、特許文献1に記載の袋よりもさらに長期間保存することができる方法が望まれている。また、茶葉の場合、従来の乾燥させて保存する方法は、お茶として加工した後の保存性を高めるものであり、加工前の茶葉の保存性を高める方法はこれまで知られていなかった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、葉物野菜や茶葉といった食品の保存性を高めることができる樹脂ペレット、食品保存用シート、樹脂ペレットの製造方法および食品保存用シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂ペレットは、ポリプロピレンまたはポリエチレンにプロアントシアニジンおよびトレハロースを含有させて成ることを特徴とする。本発明に係る食品保存用シートは、本発明に係る樹脂ペレットを150乃至200℃で融解した後、厚さ20乃至50μmのシート状に加工して成ることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る食品保存用シートは、ポリプロピレンまたはポリエチレンにプロアントシアニジンおよびトレハロースを含有させて成る樹脂ペレットから製造することができる。本発明に係る食品保存用シートおよび樹脂ペレットは、トレハロースが食品から放出されるエチレンを吸収し、プロアントシアニジンが過剰に生成されたエチレン酸化物による酸化作用を抑制することにより、食品の変色を抑制することができる。このように、本発明に係る食品保存用シートおよび樹脂ペレットは、葉物野菜や茶葉といった食品の保存性を高めることができる。
【0008】
本発明に係る食品保存用シートは、葉物野菜や茶葉といった食品の包装等に使用することにより、その食品の保存性を高めることができる。より保存性を高めるため、食品を包んだ後、内部の空気を抜いてもよい。本発明に係る食品保存用シートは、袋状、箱状、折り畳まれた形状、ロール状、その他、いかなる形状から成っていてもよい。また、本発明に係る食品保存用シートは、植物の葉などの食品に含まれる分岐鎖アミノ酸や必須アミノ酸などを増やすことができ、食品の長期貯蔵、高機能性および栄養分の増強を図ることができる。
【0009】
本発明に係る食品保存用シートおよび樹脂ペレットは、プロアントシアニジンとトレハロースとが1:15乃至1:60の重量比で含まれていることが好ましい。この場合、特に食品の保存性が高い。本発明に係る食品保存用シートおよび樹脂ペレットで、トレハロースは、3種類の異性体、α,α体、α,β体およびβ,β体のいずれであってもよい。また、プロアントシアニジンの原料は、ブドウの種子、黒大豆、その他、原料を問わないが、特にブドウ種子由来のプロアントシアニジンが好ましい。
【0010】
本発明に係る食品保存用シートは、食品との接触面積を大きくするために、複数の孔が設けられていてもよい。本発明に係る食品保存用シートは、食塩その他のミネラル、抗菌剤、防カビ剤、脱臭剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0011】
本発明に係る樹脂ペレットの製造方法は、プロアントシアニジンとトレハロースとを混合した後、150乃至200℃で融解したポリプロピレンまたはポリエチレンに添加してペレット状に加工することを特徴とする。また、本発明に係る食品保存用シートは、プロアントシアニジンとトレハロースとを混合した後、150乃至200℃で融解したポリプロピレンまたはポリエチレンに添加し、厚さ20乃至50μmのシート状に加工して製造されてもよい。
【0012】
本発明に係る食品保存用シートおよび樹脂ペレットの製造方法で、トレハロースは、150乃至200℃の加熱工程では変性しない。また、そのトレハロースがプロアントシアニジンを安定化させるため、製造中にプロアントシアニジンが変性するのを抑制することもできる。ポリプロピレンまたはポリエチレンに、プロアントシアニジンとトレハロースとを添加して加熱する際、マグネシウムやカリウムを含むミネラル水を混合してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、葉物野菜や茶葉といった食品の保存性を高めることができる樹脂ペレット、食品保存用シート、樹脂ペレットの製造方法および食品保存用シートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例に基づき本発明の実施の形態の樹脂ペレット、食品保存用シート、樹脂ペレットの製造方法および食品保存用シートの製造方法について説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施の形態の食品保存用シートによる、桑葉の保存試験を行った。ここで使用する食品保存用シートの原料には、プロアントシアニジンとトレハロースとを混合した後、150乃至200℃で融解したポリプロピレンまたはポリエチレンに添加して形成された樹脂ペレットを用いた。食品保存用シートは、この樹脂ペレットを150乃至200℃で融解した後、厚さ20乃至50μmのシート状に加工したものから成る。樹脂ペレットおよび食品保存用シートは、トレハロース:プロアントシアニジンを20:1の重量比で含み、これを混合したものを、0.2重量%含有している。ポリプロピレンを使用した食品保存用シートを袋にしたもの(以下、「処理PP」という)、および、ポリエチレンを使用した食品保存用シートを袋にしたもの(以下、「処理PE」という)を試験に用いた。また、試験には、平成22年に収穫された岩手県北上産の桑葉を用いた。
【0016】
処理PPおよび処理PEのそれぞれの袋の中に桑葉約30gを入れる。また、比較試験として、市販のポリプロピレン製の袋(以下、「無処理PP」という)、および、市販のポリエチレン製の袋(以下、「無処理PE」という)の中に、桑葉約30gを入れる。これらの袋を、口を閉じず開放したままの状態で、4℃で冷蔵保存した。処理PPおよび無処理PPは保存期間を20日間、処理PEおよび無処理PEは保存期間を22日間とした。
【0017】
その結果、保存前の初期状態に比べて、「無処理PP」、「無処理PE」ともに茶色に変色しているものが観察されたのに対し、「処理PP」、「処理PE」では変色したものがなく、桑葉自体も柔軟性を有していることが観察された。
【0018】
このように、植物の葉保存用シートは、桑葉を包むことにより、桑葉の変色を抑制し、加工前の桑葉の保存性を高めることができることが確認された。植物の葉保存用シートは、トレハロースが桑葉から放出されるエチレンを吸収し、プロアントシアニジンが過剰に生成されたエチレン酸化物による酸化作用を抑制することにより、桑葉の変色を抑制するものと考えられる。植物の葉保存用シートで包んで保存した桑葉を利用して、年間を通じてコンスタントに桑葉茶の加工・生産を行うことにより、年間を通じた安定した労働力の確保を図ることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンまたはポリエチレンにプロアントシアニジンおよびトレハロースを含有させて成ることを特徴とする樹脂ペレット。
【請求項2】
請求項1または2記載の樹脂ペレットを150乃至200℃で融解した後、厚さ20乃至50μmのシート状に加工して成ることを特徴とする食品保存用シート。
【請求項3】
プロアントシアニジンとトレハロースとを混合した後、150乃至200℃で融解したポリプロピレンまたはポリエチレンに添加してペレット状に加工することを特徴とする樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
プロアントシアニジンとトレハロースとを混合した後、150乃至200℃で融解したポリプロピレンまたはポリエチレンに添加し、厚さ20乃至50μmのシート状に加工することを特徴とする食品保存用シートの製造方法。



【公開番号】特開2012−214600(P2012−214600A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80385(P2011−80385)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(595159264)
【Fターム(参考)】