説明

樹脂ペースト及びその製造方法、輸送・貯蔵方法

【課題】輸送・貯蔵中に凝集、分離することなく、水及び/又は有機溶剤への再分散が可能である樹脂ペースト材料を提供することである。
【解決手段】水及び/又は有機溶剤中に、熱可塑性樹脂(a−1)と重合体鎖に結合したカルボン酸またはその塩の基を樹脂1グラム当り


で表される基換算で0.05〜5ミリモル当量の濃度で含むオレフィン系樹脂(a−2)及び/又は脂肪酸(a−3)及び塩基性物質(a−4)を含む樹脂(A)が、固形分濃度60を超え〜95重量%で分散した樹脂ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水及び/又は有機溶剤を含む樹脂ペースト及びその製造方法、輸送・貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンやスチレン系樹脂、エンジニアプラスチックといった熱可塑性樹脂は、機械物性、耐水性、耐薬品性、耐熱性等に優れた性能を有していることから、様々な分野で使用されている、その形態としては、有機溶剤に分散あるいは溶解したものや水に分散させたもの、粉体等が挙げられる。近年、安全衛生、環境汚染の低減の面から有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族成分を含まない溶剤での使用が好ましく、さらには、水分散体や粉体が好ましい。
【0003】
一方、水分散体は貯蔵安定性に問題があった。この問題を解決するために、水分散体の粒子径を小さくし貯蔵安定性を向上させる方法(特許文献1)が挙げられるが、長期貯蔵安定性という観点では問題を解消しきれていない。
【0004】
また、粉体は、輸送・長期貯蔵安定性の面では水分散体より優れるが、その製造方法として例えば、水または有機溶剤にあらかじめ分散させた樹脂を公知の方法で水または有機溶剤を乾燥させる方法(特許文献2)が挙げられるが、粉体の取扱いの煩雑さやコストの向上につながるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−106178
【特許文献2】特開2005−105049
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記問題点を改良したもので、本発明の樹脂ペーストを用いることで、輸送・貯蔵中に凝集、分離することなく、水及び/又は有機溶剤への再分散が可能である材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究および検討を重ねてきた結果、水及び/又は有機溶剤を含む熱可塑性樹脂ペーストを用いることで、上記目標達成のために極めて有効である事を見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、[1]〜[4]である。
[1]水及び/又は有機溶剤中に、熱可塑性樹脂(a−1)と重合体鎖に結合したカルボン酸またはその塩の基を樹脂1グラム当り
【0008】
【化1】

で表される基換算で0.05〜5ミリモル当量の濃度で含むオレフィン系樹脂(a−2)及び/又は脂肪酸(a−3)及び塩基性物質(a−4)を含む樹脂(A)が、固形分濃度60を超え〜95重量%で分散した樹脂ペースト。
[2][1]記載の樹脂ペーストを、水及び/又は有機溶剤に固形分濃度10〜60重量%に再分散させた分散体とその製造方法。
[3][1]記載の樹脂ペーストを押出転相方法によって製造する樹脂ペーストの製造方法。
[4][1]記載の樹脂ペーストの貯蔵方法および運搬方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂ペーストの形態にすることで、輸送・貯蔵中に凝集、分離することなく、また、製造コストを安価にすることがでる。更に、所望する水及び/又は有機溶剤を用いて任意の濃度で再分散した分散体を得る事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の樹脂ペーストとは、樹脂(A)が水及び/又は有機溶剤(E)中に固形分濃度として60を超え〜95、好ましくは70〜90重量%分散した状態のものである。樹脂ペースト中、樹脂(A)の透過型電子顕微鏡観察(以下、TEM法)による平均一次粒子径は、水及び/又は有機溶剤に再分散させる点で50nm〜20μmが好ましい。
【0011】
[樹脂(A)]
本発明の樹脂(A)は、下記(a−1)〜(a−4)、更に必要に応じて下記、(a−5)、(B)〜(D)を含んでも良い。
本発明の樹脂(A)は、下記(a−1)、(a−2)及び/又は(a−3)ならびに(a−4)、更に必要に応じて下記、(a−5)、(B)〜(D)を含んでも良い。
【0012】
熱可塑性樹脂(a−1)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(a−1)は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エンジニアリングプラスチック等が例示される。
【0013】
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等、オレフィンの単独重合体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ターポリマー、環状ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル、エチレン・不飽和カルボン酸の共重合体、エチレン・ビニルアルコール、アイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0014】
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン樹脂、α−メチルスチレン・スチレン樹脂、スチレン・共役ジエンブロック樹脂(共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン等)、スチレン・共役ジエンブロック樹脂の水素添加物(共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン等)、スチレン・共役ジエン・スチレンのトリブロック樹脂(共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン等)、スチレン・共役ジエン・スチレンのトリブロック樹脂の水素添加物(共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン等)等が挙げられる。
【0015】
エンジニアリングプラスチックとしては、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン等のポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、結晶性ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミノビスマレイミド、セルロースアセテート等が挙げられる。
【0016】
その他ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等も使用できる。上記樹脂は、1価及び/又は多価不飽和カルボン酸及び/又はその無水物、水酸基で変性されたものであってもよく、これら単独または2種類以上を混合して用いてもよい。
【0017】
これらの中で、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エンジニアリングプラスチックが好ましい。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(a−1)の重量平均分子量(以下、Mwと略記する。重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定可能である。)は、樹脂ペーストを使用する場合の基材との密着の観点から、通常、30,000以上1,000,000以下の範囲、好ましくは50,000以上800,000以下である。
【0018】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(a−1)は、さらに水酸基を含有する不飽和ビニル基を熱可塑性樹脂(a−1)100重量部に対して、0.1〜10重量部で変性された変性プロピレン系樹脂を含んでもよい。
【0019】
また、熱可塑性樹脂(a−1)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含み、樹脂1グラム当り式(1)で表される基を総量0.05〜5ミリモル当量の濃度で含んでもよい。この場合の重量平均分子量が下記(a−2)の重量平均分子量より大きいほうが好ましい。
【0020】
前記変性プロピレン系樹脂は、種々の方法で得ることできるが、例えば、有機溶剤(E)中で熱可塑性樹脂と不飽和ビニル基を有するエチレン系不飽和カルボン酸或いは水酸基を有するモノマーと重合開始剤の存在下で反応させた後に脱溶剤する方法や、熱可塑性樹脂と不飽和ビニル基を有するカルボン酸あるいは水酸基を有するモノマーと重合開始剤とを混合したものを押出機に供給して加熱混練しながら反応させる方法等公知の方法が用いられる。
【0021】
エチレン系不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示され、その無水物としては、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。これらの単量体は単独で用いることもできるし、また2種類以上のものを用いることもでき乱また、これらの中でも、酸無水物類が好ましく、さらには無水マレイン酸が好ましい。
【0022】
本発明に用いる水酸基を含有するモノマーとして、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類が例示できる。これらの単量体は単独で用いることもできるし、また2種類以上のものを用いることもできる。
【0023】
本発明に用いる重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベシゾイルパーオキサィド、ジクミルパーオキサィド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
オレフィン系樹脂(a−2)
本発明に用いられるオレフィン系樹脂(a−2)は、(a-1)とは異なる熱可塑性樹脂である。樹脂ペーストの分散性向上を図るためのものであり、重合体鎖に結合したカルボン酸またはその塩の基を樹脂1グラム当り
【0025】
【化2】

で表される基換算で0.05〜5ミリモル当量の濃度で含むオレフィン系樹脂であり、ポリオレフィンの重合体鎖に結合したカルボン酸の塩の基(部分中和物ないし部分ケン化物の時はカルボン酸基を含む)を、樹脂1グラム当たり、−COO−基として、各種基材への密着の観点から、0.05〜5ミリモル当量、好ましくは0.1〜4ミリモル当量の濃度で含むオレフィン系樹脂である。
【0026】
上記オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等、オレフィンの単独重合体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ターポリマー、環状ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル、エチレン・ビニルアルコール等のポリオレフィンの変性物が挙げられ、また、エチレン・不飽和カルボン酸の共重合体、アイオノマー樹脂等も挙げられ、これら単独または2種類以上を混合して用いてもよい。
【0027】
また、重合体鎖に結合したカルボン酸またはその塩を含むオレフィン系樹脂は、たとえばα−オレフィンなどからなるポリオレフィンに、下記塩基性物質(a−4)で中和されているか中和されていないカルボン酸基を有する単量体、および/又はケン化されているかケン化されていないカルボン酸エステルを有する単量体を、グラフト共重合することにより得ることができる。
【0028】
カルボキシル基を有する単量体としては、カルボキシル基含有ビニル類、無水カルボン酸類等が挙げられ、具体的には、アグリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上でも使用できる。
【0029】
本発明に用いられるカルボン酸含有オレフィン系樹脂は、種々の方法で得ることできるが、例えば、有機溶剤中で未変性オレフィン系樹脂と前記単量体を重合開始剤の存在下反応する方法や、オレフィン系樹脂を加熱溶融し得られた溶融物に前記単量体を、重合開始剤を攪拌下で反応させる方法や、オレフィン系樹脂と前記単量体と重合開始剤を混合したものを押出機に供給して加熱混練しながら反応させる方法等挙げることができる。
【0030】
ここで使用できる有機溶剤は下記有機溶剤(E)、重合開始剤は上記(a−1)に記載したものを用いる事ができる。
上記(a−2)の重量平均分子量は、各種基材への密着の観点から、220以上50,000未満の範囲、好ましくは220以上45,000未満、さらに好ましくは220〜40,000が好ましい。
【0031】
脂肪酸(a−3)
本発明に用いる脂肪酸は、樹脂の改質剤であり、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ネルボン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上でも使用できる。また、これらはオレフィン系樹脂(a−2)に替えて使用またはオレフィン系樹脂(a−2)と併用することもできる。
【0032】
塩基性物質(a−4)
本発明に用いられる塩基性物質としては、特に制限されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、リチウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、ヒドロキシルアミン、水酸化アンモニウム等の無機アミン、メチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、アンモニア、ピリジン、N−メチルイミダゾール等の有機アミン等を挙げられ、これらの化合物は1種、または2種以上の混合物として使用することができる。
【0033】
アニオン型及び/又はノニオン型界面活性剤(a−5)
本発明ではアニオン型及び/又はノニオン型界面活性剤(a−5)を用いてもよい。
アニオン型界面活性剤としては、公知のものを用いることができるが、例えば、第一級高級脂肪酸塩、第二級高級脂肪酸塩、第一級高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、第一級高級アルキルスルホン酸塩、第二級高級アルキルスルホン酸塩、高級アルキルジスルホン酸塩、スルホン化高級脂肪酸塩、高級脂肪酸硫酸エステル塩、高級脂肪酸硫酸エステルスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸スルホン酸塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩等が挙げられる。
【0034】
これらのアニオン型界面活性剤の中で特に好適なものとしては、高級脂肪酸塩、特に炭素原子数が10〜20の飽和または不飽和の高級脂肪酸のアルカリ金属、アミン塩を挙げることができ、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸、リンデン酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸、或いはこれらの混合物のアルカリ金属塩、アミン塩を挙げることができる。
【0035】
ノニオン型界面活性剤としては、公知のものを用いることができるが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸ショ糖エステル、アルキロールアミド、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー等を挙げることができる。
【0036】
界面活性剤としては、アニオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤をそれぞれ単独で使用することができるし、複数を併用することもできる。
熱可塑性樹脂(a−1)と、オレフィン系樹脂(a−2)および/または脂肪酸(a−3)、塩基性物質(a−4)、ならびにアニオン型および/またはノニオン型界面活性剤(a−5)の含有量は、前記(a−1)100重量部に対し、(a−2)と(a−3)との合計が0.5〜60重量部、(a−4)が0.5〜60重量部、(a−5)が0〜40重量部で、好ましくは、(a−5)が0〜20重量部である。
【0037】
更に、熱可塑性樹脂(a−1)、オレフィン系樹脂(a−2)及び/又は脂肪酸(a−3)ならびに塩基性物質(a−4)で構成される樹脂(A)において、基材への密着性向上のため、石油系炭化水素樹脂(B)及び/またはロジン系樹脂(C)及び/またはテルペン系樹脂(D)を含んでいても良い。
【0038】
石油系炭化水素樹脂(B)
本発明で用いられる石油系炭化水素樹脂(B)としては、例えば、タールナフサのC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂およびそれらの共重合系脂環族である。C5系石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分を重合した樹脂)、C9系石油樹脂(ナフサ分解油のC9留分を重合した樹脂〉、C5C9共重合石油樹脂(ナフサ分解油のC5留分とC9留分を共重合した樹脂)が挙げられ、タールナフサ留分のスチレン類、インデン類、クマロン、その他ジシクロペンタジエン等を含有しているクマロンインデン系樹脂、ρ−ターシャリブチルフェノールとアセチレンの縮合物に代表されるアルキルフェノール類樹脂、o−キシレン、ρ−キシレン、m−キシレンをホルマリンと反応させたキシレン系樹脂等も挙げられる。これらは単独または2種類以上で組み合わせて使用することができる。これらの中でも、GPCによる測定で重量平均分子量が1,000〜50,000の石油系炭化氷素樹脂が好ましく、なかでも1,500〜30,000が好ましい。また、これらの樹脂に極性基を有するものはさらに好ましい。
【0039】
ロジン系樹脂
本発明で用いられるロジン系樹脂(C)としては、天然ロジン、重合ロジン、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等で変性した変性ロジンが挙げられる。また、ロジン誘導体としては、前記のロジン類のエステル化物、フェノール変性物およびそのエステル化物等が挙げられ、これらの水素添加物も挙げることができる。
【0040】
テルペン系樹脂(D)
本発明で用いられるテルペン系樹脂(D)としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン、テルペンフェノール、テルペンアルコール、テルペンアルデヒド等からなる樹脂が挙げられ、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテン等にスチレン等の芳香族モノマーを重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂等が挙げられ、これらの水素添加物も挙げることができる。中でもテルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、およびこれらの水素添加物が好ましい。
【0041】
熱可塑性樹脂(a−1)、オレフィン系樹脂(a−2)および/または脂肪酸(a−3)ならびに塩基性物質(a−4)で構成される樹脂(A)において、石油系炭化水索樹脂(B)及び/またはロジン系樹脂(C)及び/またはテルペン系樹脂(D)の添加量は、熱可塑性樹脂(a一1)100重量部に対して、石油系炭化水素樹脂(B)及び/またはロジン系樹脂(C)及び/またはテルペン系樹脂(D)が0〜50重量部が、さらには0〜40重量部が各種基材への密着の点で好ましい。
【0042】
有機溶剤(E)
本発明で使用される有機溶剤(E)とは、限定なく公知のものが用いられる。例えば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、イソオクタン、イソデカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−プロピル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等のエステル系、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソプチルケトン等のケトン系、メチルセロソルブ、エチルセロソルプ、メチルカルピトール・エチルカルビトール等のエーテル系、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶剤等の有機溶剤を用いることができ、またこれらの2種以上からなる混合物であっても構わない。これ等の中でもエステル系、ケトン系、アルコール系が安全衛生、環境汚染低減の点で好ましい。
【0043】
[樹脂ペーストの製造方法]
本発明の樹脂ペーストの製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂(a−1)とオレフィン系樹脂(a−2)及び/又は脂肪酸(a−3)を溶融混練して混合した後に、塩基性物質(a−4)を添加し、溶融混練して中和及び/又はケン化(転相)を行い、さらに水及び/又は有機溶剤(E)を添加し冷却する方法や、熱可塑性樹脂(a−1)と、オレフィン系樹脂(a−2)及び/又は脂肪酸(a−3)、アニオン型及び/又はノニオン型界面活性剤(a−5)を溶融混練して混合した後に、塩基性物質(a−4)を添加し、溶融混練して中和及び/又はケン化(転相)を行い、さらに水及び/又は有機溶剤(E)を添加し冷却する方法等が挙げられる。
【0044】
ここで樹脂ペーストに含まれる水及び/又は有機溶剤の量としては、5〜40未満重量%が好ましく、さらには10〜30重量%が好ましい。水及び/又は有機溶剤の含有量が5重量%未満では、水及び/又は有機溶剤への再分散性が悪くなる。一方、水及び/又は有機溶剤の含有量が40重量%を超える場合は、液状となりペーストの形態ではなくなる。
【0045】
本発明の樹脂ペーストの製造方法として、押出転相法(「微粒子・粉体の最先端技術」:シーエムシー社、2000年11月1日発行P134〜136参照)や機械乳化法・乳化重合等で得られた樹脂分散体に含まれる溶剤を留去する方法が挙げられる。これ等の中で、脱溶剤工程を必要しない点で、押出転相法による製造方法が好ましい。
【0046】
[分散体及びその製造方法]
本発明の樹脂ペーストを用いて、水及び/又は有機溶剤に再分散させた固形分濃度10〜60重量%に調整した分散体を得ることができる。
【0047】
分散体の製造方法は、得られた樹脂ペーストを所望する固形分濃度になるよう、水及び/又は有機溶剤中に添加し十分に撹拌することである。
この樹脂ペーストを再分散させた分散体は、従来の押出転相法で水及び/又は有機溶剤を調整して得られる分散体と同等又はそれ以上の貯蔵安定性を得ることができる。
【0048】
[樹脂ペーストの貯蔵・運搬について]
本発明の樹脂ペーストは、それ自身良好な貯蔵安定性を示す。更に、この樹脂ペーストを再分散させた分散体は、従来の分散体形態(例えば、直接的に固形分濃度10〜60重量%に調整したもの)と同等又はそれ以上の貯蔵安定性を得ることができる。従って、再分散させるまで樹脂ペーストの形態で貯蔵し、使用時にこれを運搬・再分散することによって任意の分散体を得ることができる。また、本発明の樹脂ペーストを用いることにより分散体製造コストの低減化を図ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の樹脂ペーストの製法および各種試験例を挙げ、更に説明する。以下において、部および%は特記していない限り重量基準である。
【0050】
[製造例1]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900cm3、1−ブテンを60g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンで0.7MPaに加圧した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、系内圧力を0.7MPaにプロピレンで保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、大量のメタノール中でポリマーを回収し、130℃で12時間減圧乾燥し、プロピレン系樹脂を9.2g得た。得られた樹脂のブテン含量は19モル%、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。また、DSC測定によるポリマーの融点は80℃であった。
【0051】
[製造例2]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを833cm3、1−ブテンを100g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンで0.55MPaになるように加圧した後に、エチレンで系内圧力を0.76MPaに調整した。次いで、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド0.001mmolとアルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファィンケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、系内圧力を0.76MPaにエチレンで保ちながら25分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥し、プロピレン系樹脂を137.7g得た。得られた樹脂のブテン含量は19モル%、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。また、DSC測定による融解熱量は明確な融解ピークは確認できなかった。
【0052】
[製造例3]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを930cm3、プロピレン61.5リットル仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、50℃に昇温した後、エチレンで0.7MPaに加圧した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温50℃、系内圧力を0.7MPaにエチレンで保ちながら15分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、大量のメタノール中でポリマーを回収し、130℃で12時間減圧乾燥し、プロピレン系樹脂を30.5g得た。得られた樹脂のエチレン含量は16モル%、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。また、DSC測定によるポリマーの融点は80℃であった。
【0053】
[製造例4]
製造例1で得られた樹脂100重量部に、無水マレイン酸1重量部、2,5−ジメチル−2,5ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3を0.08重量部混合したものを2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)を用いて加熱温度240℃、16kg/時間で変性を行い、組成物ペレットを得た。
【0054】
[製造例5]
製造例1で得られた樹脂100重量部に、2−ヒドロキシプロビルアクリレート1重量部、2,5−ジメチル−2,5ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3を0.08重量部混合したものを2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)を用いて加熱温度240℃、16kg/時間で変性を行い、組成物ペレットを得た。
【0055】
[製造例6]
製造例2で得られた樹脂100重量部に変更した以外は、製造例4と同様の方法で変性を行った。
【0056】
[製造例7]
製造例3で得られた樹脂100重量部に変更した以外は、製造例4と同様の方法で変性を行った。
【0057】
[製造例8]
エチレン、ブテンを合計で5重量%共重合した結晶性ランダムポリプロピレン100重量部に変更した以外は、製造例4と同様の方法で変性を行った。
【0058】
[実施例1]
(a−1)として製造例1で得られた樹脂100重量部、(a−2)として無水マレイン酸変性プロピレン−エチレン重合体(C3=98モル%、Mw=2.5万、酸含有量=4重量%)10重量部および高級脂肪酸であるオレイン酸カリウム3重量部とを混合したものを、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、20%の水酸化カリウム水溶液を100g/時間の割合で連続的に供給して、加熱温度230℃で連続的に押出した。同押出機口に設置した40mmΦ1軸押出機(L/D=27)内に、水を添加しながら冷却されて押出されたペーストをさらに室温まで冷却した。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、TEM観察による一次粒子径は0.4μmであった。(以下、同様に一次粒子径はTEM観察による。)。
【0059】
[実施例2〕
(a−1)として製造例1で得られた樹脂100重量部、無水マレイン酸変性プロピレン−エチレン重合体(C3=98モル%、Mw=2.5万、酸含有量=4重量%)10重量部および高級脂肪酸であるオレイン酸カリウム3重量部とを混合したものを、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、20%の水酸化カリウム水溶液を100g/時間の割合で連続的に供給して、加熱温度160℃で連続的に押出した。同押出機口に設置した40mmΦ1軸押出機(L/D=27)内に、水を添加しながら冷却されて押出されたペーストをさらに室温まで冷却した。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径5μmであった。
【0060】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で1軸押出機内に添加する溶剤をイソプロピルアルコールに変更した。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.4μmであった。
【0061】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で1軸押出機内に添加する水を調整し、固形分濃度90%、一次粒子径0.4μmの樹脂ペーストを得た。
【0062】
[実施例5]
(a−1)を製造例2で得られた樹脂に変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.4μmであった。
【0063】
[実施例6]
(a−1)を製造例3で得られた樹脂に変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.4μmであった。
【0064】
[実施例7]
(a−1)をエチレン、ブテンを合計で5重量%共重合した結晶性ランダムポリプロピレンに変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.4μmであった。
【0065】
[実施例8]
(a−1)としてエチレン、ブテンを合計で5重量%共重合した結晶性ランダムポリプロピレン100重量部、無水マレイン酸変性プロピレン−エチレン重合体(C3=98モル%、Mw=2.5万、酸含有量;4重量%)10重量部および高級脂肪酸であるオレイン酸カリウム3重量部とを混合したものを、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、11%の水酸化カリウム水溶液を240g/時間の割合で連続的に供給して、加熱温度160℃で連続的に押出した。同押出機口に設置した40mmΦ1軸押出機(L/D=27)内に、水を添加しながら冷却されて押出されたペーストをさらに室温まで冷却した。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径5μmであった。
【0066】
[実施例9]
実施例7と同様の方法で1軸押出機内に添加する溶剤をイソプロピルアルコールに変更した。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.4μmであった。
【0067】
[実施例10]
実施例7と同様の方法で1軸押出機内に添加する水を調整し、固形分濃度90%、一次粒子径0.4μmの樹脂ペーストを得た。
【0068】
[実施例11]
(a−1)として低密度ポリエチレン100重量部、酸変性エチレン−プロピレン重合体(C2=96モル%、Mw=2.5万、酸含有量=4重量%)10重量部および高級脂肪酸であるオレイン酸カリウム3重量部とを混合したものを、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40〉のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、20%の水酸化カリウム水溶液を200g/時間の割合で連続的に供給して、加熱温度230℃で連続的に押出した。同押出機口に設置した40mmΦ1軸押出機(L/D=27)内に、水を添加しながら冷却されて押出されたペーストをざらに室温まで冷却した。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.4μmであった。
【0069】
[実施例12]
実施例11と同様の方法で1軸押出機内に添加する水を調整し、固形分濃度90%、一次粒子径0.4μmの樹脂ペーストを得た。
【0070】
[実施例13]
(a−1)として製造例4で得られた樹脂100重量部、無水マレイン酸変性プロピレン−エチレン重合体(C3=98モル%、Mw=2.5万、酸含有量=4重量%)30重量部および高級脂肪酸であるオレイン酸カリウム8重量部とを混合したものを、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、20%の水酸化カリウム水溶液を240g/時間の割合で連続的に供給して、加熱温度230℃で連続的に押出した。同押出機口に設置した40mmΦ1軸押出機(L/D=27)内に、水を添加しながら冷却されて押出されたペーストをさらに室温まで冷却した。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.2μmであった。
【0071】
[実施例14]
(a−1)を製造例5に変更した以外は、実施例13と同様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.2μmであった。
【0072】
[実施例15]
(a−1)を製造例6に変更した以外は、実施例13と同様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.2μmであった。
【0073】
[実施例16]
(a−1)を製造例7に変更した以外は実施例、13と同様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.2μmであった。
【0074】
[実施例17]
(a−1)を製造例8に変更した以外は、実施例13と同様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.2μmであった。
【0075】
[実施例18]
(a−1)をエチレン系樹脂(三井・デュポン・ポリケミカル株式会社、エバフレックス420)に以外は、実施例11と伺様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.3μmであった。
【0076】
[実施例19]
(a−1)をスチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ株式会社製、タフテックH1062)エチレン系樹脂(三井・デュポン・ポリケミカル株式会社・エバフレックス420)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.4μmであった。
【0077】
[実施例20]
(a−1)をナイロン6(東レ株式会社、アミランCMl007)に変更し、加熱温度を260℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。得られた樹脂ペーストは、固形分濃度70%、一次粒子径0.4μmであった。
【0078】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で1軸押出機内に添加する水を調整し、固形分濃度50%、一次粒子径0.4μmの水分散体を得た。
【0079】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で1軸押出機内には水を添加せずに、押出された固形物を室温まで冷却した。得られた固形物を冷凍粉砕し、乾燥を行い、一次粒子径0.4μmの粉体樹脂を得た。
【0080】
[比較例3]
実施例5と同様の方法で1軸押出機内に添加する水を調整し、固形分濃度50%、一次粒子径0.4μmの水分散体を得た。
【0081】
[比較例4]
実施例5と同様の方法で1軸押出機内には水を添加せずに、押出された固形物を室温まで冷却した。得られた固形物を冷凍粉砕し、乾燥を行い、一次粒径0.4μmの粉体樹脂を得た。
【0082】
[評価と結果]
上記実施例、比較例で得られた樹脂ペースト、分散体、粉体を以下の要領により評価を行った。樹脂ペースト、分散体または粉体の組成を表1に、またその評価結果を表2に示す。
【0083】
<樹脂ペーストの貯蔵安定性>
得られた樹脂ペーストを室温で1ヶ月保存し、凝集の状態を指触により、以下の判定基準で評価を行った。
○:僅かに凝集があるが、指で容易に崩れる。
△:凝集があり、指で崩せない塊がある。
×:凝集が激しく、指で殆ど崩せない。
【0084】
<樹脂ペーストの水再分散体の貯蔵安定性>
得られた樹脂ペーストを室温で1ヶ月保存後、このペーストを固形分濃度が50%になるよう水を添加し、約1時間機械攪拌した。この水再分散体を室温で1ヶ月静置し、液体の状態を以下の判定基準で評価を行った。
○:分離および沈殿がともに確認されなかった。
△:分離及び/又は沈殿が観察されたが、攪拌にて容易に分散できる。
×:分離及び/又は沈殿が観察され、攪拌にて容易に分散できない。
【0085】
<水分散体の貯蔵安定性>
比較例で得られた水分散体については、室温で1ヶ月、2ヶ月静置し、液体の状態を以下の判定基準で評価を行った。
○:分離および沈殿がともに確認されなかった。
△:分離及び/又は沈殿が観察されたが、攪拌にて容易に分散できる。
×:分離及び/又は沈殿が観察され、攪拌にて容易に分散できない。
【0086】
<樹脂ペーストの水への再分散性>
得られた樹脂ペーストを室温で一週間保存後、この樹脂ペーストに固形分濃度が50%になるよう水を添加し約1時間機械攪拌し、得られた水分散体の再分散性、一次粒子径を測定した。その結果を表2に記載する。
なお、再分散性は、以下に示す再分散率から○〜×の判定基準で評価を行った。
【0087】
<樹脂ペーストの有機溶剤への再分散性>
得られた樹脂ペーストを室温で一週間保存後、この樹脂ペーストに固形分濃度が20%になるよう各種有機溶剤中に添加し、約1時間機械攪拌した。得られた分散体の再分散性を表2に記載した。再分散性は、以下に示す再分散率から○〜×の判定基準で評価を行った。
【0088】
再分散性
得られた再分散体の固形分量を(M1)とし、100メッシュのステンレス網で濾過後に乾燥させた固形分量(M2)から、以下に示す式を用いて再分散率を算出した。
再分散率(%)={1−(M2/M1)}×100
算出した再分散率から再分散性を以下の判定基準で評価した。
○:再分散率が100%〜80%以上である。
△:再分散率が80%未満〜50%以上である。
×:再分散率が50%未満である。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び/又は有機溶剤中に、熱可塑性樹脂(a−1)と重合体鎖に結合したカルボン酸またはその塩の基を樹脂1グラム当り
【化1】

で表される基換算で0.05〜5ミリモル当量の濃度で含むオレフィン系樹脂(a−2)及び/又は脂肪酸(a−3)及び塩基性物質(a−4)を含む樹脂(A)が、固形分濃度60を超え〜95重量%で分散した樹脂ペースト。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂ペーストを、水及び/又は有機溶剤に固形分濃度10〜60重量%に再分散させた分散体。
【請求項3】
請求項1記載の樹脂ペーストを押出転相方法によって製造する樹脂ペーストの製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂ペーストを、水及び/又は有機溶剤に固形分濃度10〜60重量%に再分散させる分散体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂(A)が水及び/又は有機溶剤中に分散した分散体を貯蔵するに際し、押出転相方法によって得られた、水及び/又は有機溶剤中に、樹脂(A)が固形分濃度60を超え〜95重量%の濃度で分散した樹脂ペーストとして貯蔵する請求項1記載の樹脂ペーストの貯蔵方法。
【請求項6】
水及び/又は有機溶剤中に、前記樹脂(A)が分散した樹脂ペーストを、固形分濃度が60を超え〜95重量%の濃度として運搬する樹脂ペーストの運搬方法。

【公開番号】特開2012−131991(P2012−131991A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261629(P2011−261629)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】