説明

樹脂ペースト組成物

【課題】低温(125℃)以下で硬化でき、接着強度に優れるとともにブリードアウトを生じることなる、作業性が良好な樹脂ペースト組成物を提供する。
【解決手段】(A)アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物、(B)下記一般式(1)で表され、且つ10時間半減期温度が60〜80℃である過酸化物、(C)可とう化材、及び、(D)非球状フィラー及び球状フィラーを含む充填材を含有してなる樹脂ペースト組成物。


(式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又2−アシルパーオキシプロピル−2−イル−アルキレン基を示し、R1は炭素数3〜10のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はIC、LSI等の半導体素子をリードフレーム、ガラスエポキシ配線板等に接着するのに好適な樹脂ペースト組成物及びこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体のダイボンディング材としては、Au−Si共晶、半田、樹脂ペースト組成物等が知られているが、作業性及びコストの点から樹脂ペースト組成物が広く使用されている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
現在、半導体パッケージとしては、BGA(Ball Grid Array)といわれる図1に示されるような構造のパッケージが多用されている。このパッケージでは、基板の上にダイボンディング材を用いて半導体素子を接着し、半導体素子上の電極パッドと、基板上のワイヤボンド接続点をAuワイヤ等でワイヤボンディングをしている。近年、このBGAに代表される半導体パッケージの小型化に伴い、半導体素子と基板上のワイヤボンド接続点間の距離が短くなってきている。このような場合、基板に存在するワイヤーボンド接続点がチップに近接する場合には、例えば500μm以下、特に300μm以下の場合には、ブリードアウトと呼ばれるダイボンディング材(樹脂ペースト)の染み出しによりワイヤーボンディング時の作業性不良を生じる場合がある。さらに、MAP(Mold Array Package)タイプでは複数のパッケージが1枚の基板に存在するために基板面積は大きく、組立て時の室温放置時間が長くなることで、ダイボンディング材のブリードアウトを発生し易くなることがある。
【0004】
一方、半導体パッケージは、薄型化の要求も強くなってきており、近年、半導体素子自体も、薄型化が進んでいる。その結果、従来の硬化温度である150〜200℃の範囲では、樹脂ペースト硬化後に半導体素子の反りが大きくなり半導体素子にクラックが生じる場合がある。また、半導体素子以外に基板の厚さに関しても同様に薄型化が進んでおり、そのため従来の硬化温度では樹脂ペースト硬化後に、組立てたパッケージの反りが大きくなってしまい、その後のワイヤーボンディング工程、封止工程で組立て作業性の問題が起こる。この理由としては半導体素子が大きくなるほど、半導体素子は反りが大きくなり、クラックを起こしやすくなるためであり、また、基板が薄くなるほど樹脂系ペーストの硬化工程による収縮の影響を受け易くなるためである。
【0005】
上記の影響を低減するために、近年、低温(125℃以下)で硬化でき、且つブリードアウトを生じることなく、作業性が良好な樹脂系ペーストが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−168933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低温(125℃以下)で硬化でき、接着強度に優れるとともにブリードアウトを生じることなく、作業性が良好な樹脂ペースト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物、(B)下記一般式(1)で表される過酸化物(ラジカル開始剤)、(C)可とう化材、(D)非球状フィラー及び球状フィラーを含む充填材を均一分散させてなる樹脂ペースト組成物に関する。また、本発明は、この樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子を支持部材に接着した後、封止してなる半導体装置に関する。
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は下記一般式(2)で表される有機基を示し、R1は炭素数3〜10のアルキル基を示す。)
【化2】

(式(2)中、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R3は炭素数3〜10のア
ルキル基を示す。)
【0009】
すなわち、本発明の樹脂ペースト組成物は、樹脂ペースト組成物の反応開始温度を低くすることにより、ブリードアウトが発生する前に硬化することで硬化時のブリードアウトの発生を防ぐことができ、その結果、ワイヤーボンディング時の作業性不良を低減することができるものである。
【0010】
また、本発明の樹脂ペースト組成物の反応開始温度を低くすることにより、低温(125℃以下)硬化が可能となり、低温硬化することで半導体素子と基板との線膨張係数の差により発生する応力を小さくすることができる。その結果、硬化後の半導体素子のクラックを抑制し、且つ半導体素子及び基板の反りを小さくすることができ、半田リフロー時のリフロークラックの発生を低減させることができるものとなる。
【0011】
さらに、本発明の樹脂ペースト組成物は、球状フィラーを含有することにより、単位重量部あたりの比表面積が小さくなることから、樹脂ペーストを低粘度化することができ、その結果、作業性を向上することができ、さらに、接着強度も高く、パッケージ組立て時のブリードアウトの発生を防ぎ、生産性や信頼性を高くすることができるものなのである。これに対して、一般に、樹脂ペーストの樹脂成分を低粘度化したような場合には、樹脂成分の染み出し(ブリードアウト)がより発生しやすくなることから、本発明の樹脂ペースト組成物では充填剤として用いるフィラーによる低粘度化を設計し、それにより硬化前のブリードアウトの発生を防いだものなのである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂ペースト組成物は、半導体装置のダイボンディング材として使用した場合に低温で硬化でき、ブリードアウトの発生を防ぐことができる。その結果、ワイヤーボンディング時の作業性不良を防ぐことができ、且つボイドフリーで、半導体素子や基板の反りを低減できる。また、球状フィラーを添加することにより樹脂ペーストを低粘度化するなど、粘度を調整することができ、生産性や接着強度の向上及び組立て時のブリードアウトの発生を防ぐことができ、その結果、半導体装置としての信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の樹脂ペースト組成物(ダイボンディング材)が好適に用いられるBGAの断面の構造を示す模式図。
【図2】本発明で用いる球状のフィラー「SO−E3」の外観を示す電子顕微鏡写真。
【図3】本発明で用いる非球状(鱗片状)のフィラー「HP−P1−HJ」の外観を示す電子顕微鏡写真。
【図4】本発明で用いる非球状(塊状)のフィラー「R972」の外観を示す電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、(A)アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物、一般式(1)で表され、且つ10時間半減期温度が60〜80℃である過酸化物、(C)可とう化材、及び(D)非球状フィラー及び球状フィラーを含む充填材を含む樹脂ペースト組成物である。
【0015】
本発明に用いられる(A)成分のアクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物は、1分子中に1個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物であり、例えば、下記の一般式(I)〜(IX)で表される化合物が使用できる。
【0016】
(1)一般式(I)
【化3】

〔式中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜100、好ましくは炭素数1〜36の2価の脂肪族又は環状構造を持つ脂肪族炭化水素基を表す。〕
で示される化合物。
【0017】
一般式(I)で示される化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8又は9−イル−オキシエチルアクリレート等のアクリレート化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8又は9−イル−オキシエチルメタクリレート等のメタクリレート化合物がある。
【0018】
(2)一般式(II)
【化4】

〔式中、R1及びR2はそれぞれ前記のものを表す。〕
で示される化合物。
【0019】
一般式(II)で示される化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ダイマージオールモノアクリレート等のアクリレート化合物、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ダイマージオールモノメタクリレート等のメタクリレート化合物等がある。
【0020】
(3)一般式(III)
【化5】

〔式中、R1は前記のものを表し、R3は水素、メチル基又はフェノキシメチル基を表し、R4は水素、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンゾイル基を表し、nは1〜50の整数を表す。〕
で示される化合物。
【0021】
一般式(III)で示される化合物としては、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等のアクリレート化合物、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート化合物がある。
【0022】
(4)一般式(IV)
【化6】

〔式中、R1は前記のものを表し、R5はフェニル基、ニトリル基、−Si(OR63(R6は炭素数1〜6のアルキル基を表す)又は下記の式の基
【0023】
【化7】

(R7、R8及びR9はそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R10は水素又は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す)を表し、mは0、1、2又は3の数を表す。〕
で示される化合物。
【0024】
一般式(IV)で示される化合物としては、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、アクリロキシエチルホスフェート、アクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等のアクリレート化合物、ベンジルメタクリレート、2−シアノエチルメタクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート等のメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等のメタクリレート化合物がある。
【0025】
(5)一般式(V)
【化8】

〔式中、R1及びR2はそれぞれ前記のものを表す。〕
で示される化合物。
【0026】
一般式(V)で示される化合物としては、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ダイマージオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート等のジアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ダイマージオールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート等のジメタクリレート化合物がある。
【0027】
(6)一般式(VI)
【化9】

〔式中、R1、R3及びnはそれぞれ前記のものを表し、ただしR3が水素又はメチル基であるとき、nは1ではない。〕
で示される化合物。
【0028】
一般式(VI)で示される化合物としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレート化合物、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物がある。
【0029】
(7)一般式(VII)
【化10】

〔式中、R1は前記のものを表し、R11及びR12はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す。〕
で示される化合物。
【0030】
一般式(VII)で示される化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルとの反応物、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルとの反応物等がある。
【0031】
(8)一般式(VIII)
【化11】

〔式中、R1、R11及びR12はそれぞれ前記のものを表しR13及びR14はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、p及びqはそれぞれ独立に1〜20の整数を表す。〕
で示される化合物。
【0032】
一般式(VIII)で示される化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジメタクリレート等がある。
【0033】
(9)一般式(IX)
【化12】

〔式中、R1は前記のものを表し、R15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、xは1〜20の整数を表す。〕
で示される化合物。
【0034】
一般式(IX)で示される化合物としては、ビス(アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ビス(メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー等がある。
【0035】
(A)成分のアクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物としては、上記の化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
中でも一官能アクリル酸エステル化合物は二官能以上のアクリル酸エステル化合物よりも硬化物が硬くなりにくくチップ反りが低減でき、且つ樹脂ペースト組成物の低粘度化が容易であるため、使用するのに好ましい。
【0036】
本発明に用いられる(B)成分の下記一般式(1)で表される過酸化物としては樹脂ペースト組成物の硬化性及び粘度安定性の点から、10時間半減期温度が60〜80℃であることが好ましい。
一般式(1)
【化13】

(式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は下記一般式(2)で表される有機基を示し、R1は炭素数3〜10のアルキル基を示す。)
【化14】

(式(2)中、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R3は炭素数3〜10のア
ルキル基を示す。)
【0037】
ここで、半減期は、一定温度における有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が1/2になるまでに要する時間によって示される。
半減期の測定は、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0038】
まず、ラジカルに対して比較的不活性な溶液、例えばベンゼンを主として使用して、0.1mol/L濃度の有機過酸化物溶液を調整し、窒素置換を行ったガラス管中に密閉する。さらに所定温度にセットした恒温槽に浸し、熱分解させる。
【0039】
一般的に有機過酸化物の分解は近似的に一次反応として取り扱うことができるので、有機過酸化物の濃度x、分解速度定数k、時間t、初期有機過酸化物濃度aとすると、
dx/dt=k(a−x) (i)
ln a/(a−x)=kt (ii)
半減期は、分解により有機過酸化物濃度が初期の半分に減ずるまでの時間であるので、半減期をt1/2で示し、(ii)式のxにa/2を代入して、
kt1/2=ln2 (iii)
したがって、ある一定温度で熱分解させ、得られた直線の傾きからkを求め、(iii)式からその温度における半減期(t1/2)を求めることができる。
【0040】
ラジカル開始剤の具体例としては、パーブチルO(t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート)、パーヘキシルO(t−ヘキシルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート)、パーヘキサ25O(2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)へキサン)等がある。
【0041】
(B)成分の過酸化物(ラジカル開始剤)の配合量は、(A)成分の総量100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、2〜5質量部が特に好ましい。この配合割合が0.1質量部未満であると、硬化性が低下する傾向があり、10質量部を超えると、揮発分が多くなり、硬化物中にボイドと呼ばれる空隙が生じ易くなる傾向がある。
【0042】
本発明に用いられる(C)成分の可とう化材としては、各種の液状ゴムや熱可塑性樹脂が用いられるが、例えばポリブタジエン、マレイン化ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシ末端アクリロニトリルブタジエンゴム、アミノ末端アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル末端アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等の液状ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ε−カプロラクトン変性ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリイミド等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0043】
液状ゴムとしては、数平均分子量が500〜10,000のものが好ましく、1,000〜5,000のものがより好ましい。分子量が小さすぎると可とう化効果に劣る傾向があり、分子量が大きすぎると樹脂ペースト組成物の粘度が上昇し作業性に劣る傾向がある。数平均分子量は蒸気圧浸透法で測定した値又はGPC法により測定できるが、GPC法により測定した値を基準とすることが好ましい。
【0044】
熱可塑性樹脂としては、数平均分子量が10,000〜300,000のものが好ましく、20,000〜200,000のものがより好ましい。分子量が小さすぎると可とう化効果に劣る傾向があり、分子量が大きすぎると、樹脂ペースト組成物の粘度が上昇し作業性に劣る傾向がある。
【0045】
また可とう化材の配合量としては、(A)成分100質量部に対して10〜100質量部使用することが好ましく、30〜80質量部使用することがより好ましい。この配合量が10質量部未満であると可とう化効果に劣り、100質量部を超えると、粘度が増大し、樹脂ペースト組成物の作業性が低下する傾向がある。
【0046】
本発明に用いられる、(D)成分の充填材は、非球状フィラーと球状フィラーとを併用するものである。これらの充填材としては、非球状フィラーおよび球状フィラーのいずれも、平均粒径が10μm未満であれば特に制限はなく、各種のものが用いられるが、例えば酸化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の絶縁性の粉体が好ましいものとして挙げられる。この充填材の平均粒径が10μm以上であると、ペーストの均一性、各種物性が低下する。好ましい平均粒径は0.5〜7μmであり、0.5〜5μmであることがより好ましい。
【0047】
球状フィラーとしては、真球状、楕円球状等のものが用いられるが、できるだけ真球に近い、表面がなめらかな形状のものが好ましい。アスペクト比〔電子顕微鏡写真において、個々の粒子の長径(1つの粒子を2つの平行する直線の接線で挟んだ場合、その距離が最大となるところを長径と定義)と短径(前記2つの平行する接線と直交する方向の2つの接線間の距離を短径と定義)の長径/短径の比。電子顕微鏡写真上から20個の粒子について測定し、その平均値とする。〕で1〜2が好ましく、1〜1.5がより好ましく、1〜1.2がさらに好ましく、1〜1.1が特に好ましい。
【0048】
一方、非球状フィラーとしては、形状として鱗片状、芋状(例えば、ジャガイモのような、全体的に丸みを帯び、凹凸があるも比較的なめらかな曲面の表面を有する形状)、塊状(例えば、多面体のような形状や、ごつごつして角や凹凸があったり平面的な表面を有するが全体的に塊の粒子となっているような形状)、樹枝状、板状、球状の一次微粒子が凝集して二次粒子塊となった形状等が挙げられるが、塊状、鱗片状、芋状、球状の微粒子が凝集して二次粒子となった形状が好ましい。こちらのフィラーは、アスペクト比は1〜100が好ましく、1〜10がより好ましい。
【0049】
特に、非球状フィラーとして、芋状、塊状、球状の一次微粒子が凝集して二次粒子となった形状のフィラーと、球状フィラーを組み合わせることにより樹脂ペースト組成物を低粘度化することができる。非球状フィラーと球状フィラーの組み合わせとしては(D)成分100重量%に対して球状フィラーが10〜40重量%、更に10〜30重量%の組み合わせが好ましい。
【0050】
また、(D)成分の非球状フィラー及び球状フィラーを含む充填材全体の配合量は特に限定しないが、樹脂ペースト組成物総量に対して5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。この配合量が5重量%未満であると、熱時の接着強度が低下する傾向があり、50重量%を超えると、粘度が増大し、作製時の作業性及び使用時の塗布作業性が低下する傾向がある。
【0051】
また、本発明の樹脂ペースト組成物には、接着強度等の向上のため、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤を添加することができる。エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限はないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂[AER−X8501(旭化成工業(株)、商品名)、R−301(油化シェルエポキシ(株)、商品名)、YL−980(油化シェルエポキシ(株)、商品名)]、ビスフェノールF型エポキシ樹脂[YDF−170(東都化成(株)、商品名)]、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂[R−1710(三井化学工業(株)、商品名)]、フェノールノボラック型エポキシ樹脂[N−730S(DIC(株)、商品名)、Quatrex−2010(ダウ・ケミカル社、商品名)]、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂[YDCN−702S(東都化成(株)、商品名)、EOCN−100(日本化薬(株)、商品名)]、多官能エポキシ樹脂[EPPN−501(日本化薬(株)、商品名)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社、商品名)、VG−3010(三井化学(株)、商品名)、1032S(油化シェルエポキシ(株)、商品名)]、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂[HP−4032(DIC(株)、商品名)]、脂環式エポキシ樹脂[CELー3000(ダイセル化学工業(株)、商品名)]、エポキシ化ポリブタジエン[PB−3600(ダイセル化学工業(株)商品名)、E−1000−6.5(日本石油化学(株)、商品名)]、アミン型エポキシ樹脂[ELM−100(住友化学工業(株)、商品名)、YH−434L(東都化成(株)、商品名)]、レゾルシン型エポキシ樹脂[デナコールEX−201(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−211(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−212(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−810、811、850、851、821、830、832、841、861(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、下記一般式(XI)で表されるエポキシ樹脂[E−XL−24、E−XL−3L(三井化学(株)、商品名)]
【0052】
【化15】

〔式中、vは0〜5の整数を表す。〕
などが挙げられる。なかでも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
エポキシ樹脂としては、分子量又は数平均分子量が160〜3000のものが好ましい。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を利用して測定(以下、GPC法という)した値である。また、エポキシ当量が80〜1000であることが好ましく、100〜500であることがより好ましい。また、このようなエポキシ樹脂は(A)成分の総量100質量部に対して1〜100質量部使用するのが好ましく、5〜30質量部使用することがより好ましい。この配合量が1質量部未満であるか又は100質量部を超えると接着強度が低下する傾向がある。
【0054】
また、エポキシ樹脂として、1分子中に1個のエポキシ基を有する化合物[単官能エポキシ化合物(反応性希釈剤)]を含んでいてもよい。このような単官能エポキシ化合物の市販品としては、PGE(日本化薬(株)、商品名、フェニルグリシジルエーテル)、PP−101(東都化成(株)、商品名、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル)、ED−502(旭電化工業(株)、商品名、脂肪族モノグリシジルエーテル)、ED−509(旭電化工業(株)、商品名、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル)、YED−122(油化シェルエポキシ(株)、商品名、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル)、KBM−403(信越化学工業(株)、商品名、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、TSL−8350、TSL−8355、TSL−9905(東芝シリコーン(株)、商品名、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン)などが挙げられる。単官能エポキシ化合物は、本発明の樹脂ペースト組成物の特性を阻害しない範囲で使用されるが、エポキシ樹脂全量100質量部に対して10質量部以下で使用されることが好ましく、1〜5質量部で使用されることが好ましい。
【0055】
エポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はないが、ジシアンジアミド、下記一般式(XII)
【化16】

〔式中、R19はm−フェニレン基、p−フェニレン基等の2価の芳香族基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。〕
で表される二塩基酸ジヒドラジド[ADH、PDH、SDH(いずれも(株)日本ファインケム、商品名)]、エポキシ樹脂とアミン化合物の反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤[ノバキュア(旭化成工業(株)、商品名)]等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなエポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤の配合量が0.1質量部未満であると硬化性に劣る傾向があり、50質量部を超えると樹脂組成物の安定性が悪くなる傾向がある。
【0056】
さらに、本発明の樹脂ペースト組成物には必要に応じて硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、有機ボロン塩化合物[EMZ・K、TPPK(北興化学工業(株)製、商品名)等]、三級アミン類又はその塩[DBU、U−CAT102、106、830、840、5002(いずれもサンアプロ社商品名)等]、イミダゾール類[キュアゾール、2P4MHZ、C17Z、2PZ−OK(いずれも四国化成(株)商品名)等]などが挙げられる。硬化促進剤の配合量は、通常、エポキシ樹脂に対して20質量部以下の量とされることが好ましい。必要に応じて添加される硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、複数種の硬化促進剤を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本発明の樹脂ペースト組成物にはカップリング剤を添加することができる。本発明に用いられるカップリング剤としては特に制限はなく、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤等の各種のものが用いられる。
【0058】
カップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(メタクリロキシエトキシ)シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−(4,5−ジヒドロイミダゾリル)プロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリグリシドキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、エトキシシラントリイソシアネート等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピオネート等のアルミニウム系カップリング剤、テトラプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、ジルコニウムアセチルアセトネートアセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート等のジルコネート系カップリング剤等がある。
【0059】
カップリング剤の配合量は、(A)成分の総量100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜15質量部が特に好ましい。この配合割合が0.1質量部未満であると、接着強度の向上効果に劣り、20質量部を超えると、揮発分が多くなり、硬化物中にボイドが生じ易くなる傾向がある。
【0060】
本発明になる樹脂ペースト組成物には、さらに必要に応じて酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高級脂肪酸等の濡れ向上剤、シリコーン油等の消泡剤、無機イオン交換体等のイオントラップ剤等、粘度調整のための溶剤を単独又は数種類を組み合わせて、適宜添加することができる。なお、溶剤を添加する場合、ボイドの点から3重量%以下とすることが好ましい。
【0061】
本発明になる樹脂ペースト組成物を製造するには、(A)アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物、(B)一般式(1)で表される過酸化物で10時間半減期温度が60〜80℃である化合物、(C)可とう化材、(D)非球状フィラー及び球状フィラーを含む無機充填材を、必要に応じて用いられる各種添加剤とともに、一括又は分割して撹拌器、ライカイ器、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせた装置に投入し、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散して均一なペースト状とすれば良い。
【0062】
本発明の樹脂ペースト組成物は、粘度(例えば、EHD型回転粘度計(東京計器社製)、3°cone rotorを用いて、0.5rpm、5rpmの25℃における粘度(Pa・s))を測定した場合、0.5rpmにて30〜80Pa・sとすることが好ましく、40〜60Pa・sとすることがより好ましい。また、5rpmにて10〜30Pa・sとすることが好ましく、13〜20Pa・sとすることがより好ましい。そしてチキソ性(0.5rpmの粘度/5rpmの粘度)としては3以上であることが好ましい。
【0063】
本発明においては、さらに上記のようにして製造した樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子を支持部材に接着した後、封止することにより半導体装置とすることができる。
【0064】
支持部材としては、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)、フェノール樹脂を用いた基板、等の有機基板が挙げられる。
【0065】
本発明の樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子をリードフレーム等の支持部材に接着させるには、まず支持部材上に樹脂ペースト組成物をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等により塗布した後、半導体素子を圧着し、その後オーブン又はヒートブロック等の加熱装置を用いて加熱硬化することにより行うことができる。さらに、ワイヤーボンディング工程を経た後、通常の方法により封止することにより完成された半導体装置とすることができる。
【0066】
また、通常、有機基板を使用する場合は水分を吸湿しており、乾燥なしではこれが樹脂系ペーストの硬化の熱により蒸発してペースト層のボイドの原因になるため、組立て前に基板の乾燥が必要となる。しかし、本発明は低温で樹脂系ペーストの硬化反応が始まるため、基板の乾燥なしでもボイドを発生させずに高信頼性の半導体装置を組立てられることができる。
【0067】
本発明樹脂ペースト組成物は、上述のように、低温硬化が可能であり、ブリードアウトがないことから、BGA基板上に半導体素子を接着するような場合に、特に有効である。
【0068】
すなわち、図1に示すように、BGA基板上2に半導体素子1を搭載して、ダイボンディング材(樹脂ペースト)4により接着し、その後、前記半導体素子の周囲に存在するBGA基板上の電極7と、半導体素子上の電極6とをAu線などでワイヤーボンド5するような半導体素子パッケージにおいて、BGA基板2と半導体素子1との接着に用いる場合に効果が発揮され、特に、半導体素子1の側面とBGA基板上の電極7との距離、すなわち、半導体素子とパッド間との距離が500μm以下、特に300μm以下の半導体パッケージに適用すると、接着に際して、ブリードアウトによる樹脂の染み出しがないことから、ワイヤーボンディングの作業性がよくなり、半導体素子とBGA基板とを接着するダイボンディング材(樹脂ペースト組成物)として、好適に使用することができるものとなる。なお、このようなBGA型の半導体装置は、ワイヤーボンディングを行った後、モールド樹脂により封止を行い、ハンダボール3の外部電極を設けることにより、製造することができる。
【0069】
また、上記の樹脂ペースト組成物の加熱硬化は温度80〜150℃、好ましくは100〜125℃で、5分〜3時間、好ましくは15分〜1.5時間行うことが好ましい。
【実施例】
【0070】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0071】
実施例1〜10および比較例11〜13
実施例及び比較例で用いた化合物を以下に例示する。
(1)アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物
FA−512A(日立化成工業(株)製アクリレートの商品名、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート)
FA−711MM(日立化成工業(株)製アクリレートの商品名、ペンタメチルピペリジルメタクリレート)
R712(日本化薬(株)製アクリレートの商品名、エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート)
【0072】
(2)過酸化物(ラジカル開始剤)
パーブチルO(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、10時間半減期温度;73℃)、
【化17】

パーヘキシルO(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、t−ヘキシルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、10時間半減期温度;70℃)、
【化18】

パーヘキサ25O(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)へキサン、10時間半減期温度;66℃)、
【化19】

トリゴノックス22−70E(下記構造で示される化薬アクゾ(株)製過酸化物の商品名、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、10時間半減期温度;93℃)
【化20】

【0073】
(3)可とう化材
CTBNX−1300X31(宇部興産(株)製カルボキシ末端アクリロニトリルブタジエン共重合体の商品名、数平均分子量:10,000)、
PB−3600(ダイセル化学工業(株)製エポキシ化ポリブタジエンの商品名、数平均分子量:3,500)
【0074】
(4)エポキシ樹脂
YDCN−700−7(東都化成(株)製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の商品名)
【0075】
(5)エポキシ樹脂硬化剤
ジシアンジアミド(商品名:jERキュアDICY7、ジャパンエポキシレジン(株)製)
【0076】
(6)カップリング剤
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製)、
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:SZ−6030、東レ・ダウコーニング(株)製)
【0077】
(7)充填材
a.非球状フィラー
R−972(日本アエロジル(株)製のシリカの商品名、形状:球状の一次微粒子が凝集して塊となっている塊状粒子、二次粒子の平均粒径=約16μm)、アスペクト比=1.5
HP−P1−HJ(水島合金鉄(株)製窒化ホウ素の商品名、形状:塊状、平均粒径=0.8μm)、アスペクト比=2
b.球状フィラー
SO−E3(アドマテックス(株)製のシリカの商品名、形状:球形、平均粒径=1.0μm、アスペクト比約1)、
SO−E5(アドマテックス(株)製のシリカの商品名、形状:球形、平均粒径=1.6μm、アスペクト比約1)、
SO−E6(アドマテックス(株)製のシリカの商品名、形状:球形、平均粒径=2.2μm、アスペクト比約1)、
SE5050−SEJ(アドマテックス(株)製のシリカの商品名、形状:球形、平均粒径=1.5μm、アスペクト比約1、表面処理剤(エポキシシラン)による処理品、
SE5050−SMJ(アドマテックス(株)製のシリカの商品名、形状:球形、平均粒径=1.5μm、アスペクト比約1、表面処理剤(メタクリルシラン)による処理品、
SE2050−SMJ(アドマテックス(株)製のシリカの商品名、形状:球形、平均粒径=0.5μm、アスペクト比約1、表面処理剤(メタクリルシランによる処理品)、
【0078】
表1に示す配合割合で、各材料を混合し、ライカイ機を用いて混練した後、666.61Pa(5トル(Torr))以下で60分間脱泡処理を行い、樹脂ペースト組成物を得た。この樹脂ペースト組成物の特性(粘度、ブリードアウト長、ダイシェア強度、チップ反り、ボイド)を下記に示す方法で調べた。その結果を表1に示した。
【0079】
(1)粘度:
EHD型回転粘度計(東京計器社製)、3°cone rotorを用いて、0.5rpm、5rpmの25℃における粘度(Pa・s)を測定するとともに、その比(チクソ性)を求めた。
【0080】
(2)ブリードアウト長:
樹脂ペースト組成物をソルダーレジスト(AUS308)付きガラスエポキシ基板上に約120μgを一点状(円形状)に塗布し、室温に1時間放置し、ブリードアウトの発生(樹脂ペースト組成物の拡がりないしは染みだし)の有無を顕微鏡(ハイロックス(株)製 HI−SCOPE Advanced KH−3000)で確認した。その後、サンプルを、120℃まで30分で昇温し、120℃で1時間加熱することにより硬化し、硬化後のブリードアウトの発生(樹脂ペースト組成物の拡がりないしは染みだし)の有無を顕微鏡(ハイロックス(株)製 HI−SCOPE Advanced KH−3000)で確認し、ブリードアウト長(樹脂ペースト組成物の拡がりないしは染みだしの長さ)が最も長くなる部分を基準にして、ブリードアウトの長さを求めた。
【0081】
(3)ダイシェア強度:
樹脂ペースト組成物を下記支持部材とSiチップを下記の硬化条件により硬化し接着した。これを自動接着力試験装置(BT4000、Dage社製)を用い、熱時(260℃で20秒保持後)のせん断接着強度(MPa)を測定した。なおダイシェア強度の測定は10個の試験片について行った。
チップサイズ:2mm×2mm×0.4mm
支持部材:ソルダーレジスト(AUS308)付きガラスエポキシ基板
硬化条件:120℃まで30分で昇温、120℃で1時間硬化
【0082】
(4)チップ反り:
樹脂ペースト組成物を下記支持部材とSiチップを下記の硬化条件により硬化し接着した。これを高精度形状測定システム(KS−1100、KEYENCE製)を用いてチップ反りを測定した。なおチップ反りの測定は5個の試験片について観察し、対角についての反りを測定した。
チップサイズ:7mm×7mm×0.4mm
支持部材:ソルダーレジスト(AUS308)付きガラスエポキシ基板
硬化条件:120℃まで30分で昇温、120℃で1時間硬化
【0083】
(5)ボイド:
実施例及び比較例により得た樹脂ペースト組成物を用い、下記支持部材とSiチップを、下記の硬化条件により硬化し接着した。その後、走査型超音波顕微鏡でボイドの発生数を確認した。5個のサンプルについてそれぞれ観察し、ボイドが1つでも発生したサンプルの数を求めた。
チップサイズ:7mm×7mm×0.4mm
支持部材:ソルダーレジスト(AUS308)付きガラスエポキシ基板
硬化条件:120℃まで30分で昇温、120℃で1時間硬化
【0084】
【表1】

【0085】
表1の結果から、本発明の樹脂ペースト組成物(実施例1)は従来の高温硬化が必要なペースト組成物(比較例13)と比較して低温で硬化しても硬化後のダイシェア強度が強く、ブリードアウトの発生が見られないものである。
【0086】
また、比較例11は球状フィラーのため、単位重量部あたりの比表面積が小さくなるので低粘度化が可能であるが、あまりにも低粘度化すると作業性が低下(垂れ)することになり、ダイシェア強度も低くなる傾向がみられる。なお、ダイシェア強度が低くなる理由は、球状フィラーだけでは比表面積が小さくなり、基板との接触面積が少なくなるためと推測され、また、樹脂ペースト組成物の粘度が低すぎる場合には、ディスペンサーから垂れが発生し、不要部分に付着したり、塗布量が均一でなくなる等の問題が生じ、作業性は低下することになる。
【0087】
さらに、比較例12は球状フィラーを用いないことで樹脂ペースト組成物の低粘度化ができず、作業性が良好(組立速度向上)ではない。これに対して、本発明は、球状フィラーと非球状フィラーとを併用し、これらを含む充填剤を用いることで、過度な低粘度化を防ぎ、これにより作業性が良好(組立速度向上)になるとともに、ダイシェア強度の維持が可能な接着強度に優れた樹脂ペースト組成物が得られるものであることがわかる。
【0088】
要するに、一般に、使用する樹脂成分を低粘度化すれば、より樹脂の染み出し(ブリードアウト)が発生しやすくなるため、本発明の樹脂ペースト組成物では上記のように、充填剤としてのフィラーによる低粘度化を設計し、それにより硬化前のブリードアウトの発生を防いだものであることが特徴なのである。
【0089】
一方、ブリードアウトの発生は硬化前の放置時間が長くなるとブリードアウトが発生する場合がある。また、硬化中(昇温中)にブリードアウトが発生する場合もある。
ブリードアウトは粘度と関係があり、特に樹脂の粘度に影響される。上述のように、樹脂成分が低粘度であるとブリードアウトが発生しやすく、高粘度になればブリードアウトの発生は抑制されるが、作業性は低下する傾向がある。
【0090】
そこで、本発明は、硬化中に樹脂の粘度が低粘度化する前に硬化することによりブリードアウトの発生を防ぐこととし、特定の過酸化物(ラジカル開始剤)と球状フィラーと非球状フィラーとの組み合わせにより、硬化前及び硬化中のブリードアウトの発生を抑制したものであることがわかる。
【0091】
すなわち、本発明の樹脂ペースト組成物によれば、低温硬化及び低粘度化が可能となり、その結果としてブリードアウトの発生を防ぐとともに、半導体素子および基板の反りを低減でき、半導体素子のクラックや基板の反りを低減できるものであることがわかる。
【符号の説明】
【0092】
1 半導体素子
2 BGA基板
3 ハンダボール
4 ダイボンディング材(樹脂ペースト組成物)
5 ワイヤーボンド
6 半導体素子上の電極
7 BGA基板上の電極
8 モールド樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物、
(B)下記一般式(1)で表され、且つ10時間半減期温度が60〜80℃である一般式(1)及び(2)で示される過酸化物、
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は下記一般式(2)で表される有機基を示し、R1は炭素数3〜10のアルキル基を示す。)
【化2】

(式(2)中、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R3は炭素数3〜10のア
ルキル基を示す。)
(C)可とう化材、及び、
(D)非球状フィラー及び球状フィラーを含む充填材を含有してなる樹脂ペースト組成物。
【請求項2】
BGA基板上に半導体素子を搭載して接着し、その後、前記半導体素子の周囲に存在するBGA基板上の電極と半導体素子上の電極とをワイヤーボンディングする半導体パッケージにおける、BGA基板と半導体素子との前記接着に用いられるものである請求項1記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項3】
前記(D)成分の非球状フィラーが、塊状フィラーである請求項1又は請求項2に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項4】
さらにエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項5】
さらにカップリング剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が、液状ゴム又は熱可塑性樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項7】
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して0.5〜10質量部である請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子をBGA基板に接着した後、ワイヤーボンディングし、封止してなる半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−72305(P2012−72305A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219026(P2010−219026)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】