説明

樹脂モールド装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は、フープ状フレームを用いて半導体装置を製造する工程において、このフープ状フレームに対して樹脂モールド工程処理を施すための樹脂モールド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体装置の製造工程をライン化してその製造効率を高めるために、従来の短冊状リードフレームに代え、このような短冊状リードフレームを長手方向につなげたような形態をもつフープ状フレームを用いる製造手法が採用されつつある。すなわち、このようなフープ状フレームを長手方向に搬送しつつ、この搬送経路途中にチップボンディング装置、ワイヤボンディング装置、樹脂モールド装置、標印装置、フレームカット装置、あるいは検査工程装置等が配置され、これらの工程装置間に上記フープ状フレームが一連に通過させられる間に、全ての必要な工程処置が順次連続的に行えるようになっている。
【0003】このうち、本願発明の手段である樹脂モールド装置は、従来、次のように構成されている。すなわち、この樹脂モールド装置は、フープ状フレームの搬送方向に並ぶ複数個のキャビティがそれぞれ形成された上金型と下金型とを備え、まず、両金型を型開きした状態において樹脂タブレットが下金型上の所定の部位に投入される。次に、両金型がフープ状フレームを挟み込むようにして型締めされ、上記のように投入された樹脂タブレットが溶融した状態において、この溶融樹脂をプレス力によって各金型キャビティ内に注入する樹脂注入工程処理が行われる。次いで両金型の型締め状態を一定時間維持して各キャビティ内に注入された樹脂の硬化を待つ。なおこのような型締め状態において溶融樹脂の熱硬化を待つ工程をキュア工程という。こうして型締め状態が一定時間経過し、溶融樹脂が硬化した後、両金型を開く型開き工程が行われる。この状態においてフープ状フレームが所定距離前方に搬送され、新たに、両金型に導入されたフープ状フレームに対し、上述の操作を繰り返すことにより、連続するフープ状フレームに対し、金型の長手方向に形成されたキャビティの数に対応する個数づつの樹脂モールド処置が順次行われるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、樹脂モールド工程処理中、各キャビティに注入された溶融樹脂が所定の硬化状態となるまでプレスによる型締め状態を維持するキュア工程が、最も時間がかかる。通常、現在用いられている熱硬化樹脂を用いた樹脂モールド工程処理には、上記のキュア工程時間は、少なくとも約30秒必要である。このため、設備の回転効率のアップ、すなわち半導体装置の製造効率の向上に限界が生じてくる。フープ状フレームを用いた製造工程においては、各工程処理におけるフープ状フレームの搬送速度を平均させる必要があるため、工程処理の種類によってはよりスピードを上げることができても、上述の樹脂モールド工程のように、一つでもその処理時間が長い工程が存在すると、フープ状フレームの搬送速度を、その最も遅い搬送速度に合わせざるを得ないのである。
【0005】フープ状フレーム全体の搬送速度を上げて製造効率を上げるためには、一回の金型のプレスによって多数の製品の樹脂モールドを同時に行うようにすることが考えらる。それには、金型をフープ状フレーム搬送方向に長大なものとし、その表面に形成されるキャビティの数を多くすることが考えられる。しかしながら、この樹脂モールド工程においては、樹脂を溶融させるために金型が所定温度に熱せられていることから、この金型に挟圧保持されるフープ状フレームの熱膨張に起因して、金型の長手方向の各部位においてキャビティとフレームとの位置ずれを起こすなど、品質に重大な悪影響をおよぼすことになる。このため、金型それ自体を単に大型化して製造効率を上げるという手法はにわかには採用することができないのである。
【0006】本願発明は、上述の事情のもとで考えだされたものであって、金型を大型化することなく、樹脂モールド工程処理の効率、ひいては、フープ状フレームを用いた半導体装置の製造の効率を飛躍的に高めることができる新たな樹脂モールド装置を提供することをその課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】すなわち、本願発明の樹脂モールド装置は、フープ状フレームの進行経路上に所定間隔で配置された樹脂タブレット投入ステーション、樹脂注入ステーション、キュアステーションおよび型開きステーションと、上記進行経路の側方に偏位した位置に配置されたクリーニングステーションと、上金型と下金型とを組み合わせてなる少なくとも3組の金型セットと、上記型開きステーションに移動した金型セットを型開きするとともにこの金型セットを上記クリーニングステーションに搬送する第一帰還搬送手段と、クリーニングステーションでのクリーニングを終えた金型セットを上記樹脂タブレット投入ステーションに搬送する第二帰還搬送手段と、樹脂タブレット投入ステーション、樹脂注入ステーションおよびキュアステーションにある3組の金型セットを、それぞれ上記進行経路上の次ステーションに移載する移載手段と、を備える一方、各金型セットは、フープ状フレーム進行経路に沿う2列のキャビティを備えており、上記フープ状フレームは、一方のキャビティ列に沿って各ステーションを貫通した後、他方のキャビティ列に沿って再度各ステーションを貫通するように配索されることを特徴とする。
【0009】
【発明の作用および効果】本願発明は要するに、樹脂注入ステーション、この注入樹脂の熱硬化を待つキュアステーションとを別ステーションとしている点に最も特徴づけられる。一つの金型セットに注目すると、この金型セットは、タブレット投入ステーションにおいて型開きされ、かつ樹脂タブレットが所定のポットに投入される。そして下金型上に上金型を乗せられた状態において樹脂注入ステーションに移載される。樹脂注入ステーションでは、プレスによって両金型がフープ状フレームを挟み込むようにして型締めされ、かつ、プランジャが駆動して上記ポット内で溶融する樹脂を各キャビティ内に注入する。そして、このような型締め状態を維持しつつ樹脂注入ステーションの金型は、キュアステーションに移載される。キュアステーションにおいては、所定時間型締め状態が維持され、各キャビティ内の樹脂の硬化が待たれる。こうしてキュアステーションにおけるキュア工程処理が終わった金型は、型開きステーションに移載され、両金型は型開きされる。次に、型開きされた両金型は、第一帰還搬送手段によってクリーニングステーションまで搬送され、このクリーニングステーションに受け渡される。クリーニングステーションでは、両金型の合わせ面にエアブローなどのクリーニング処理が施される。このクリーニングステーションに金型を受け渡した第一帰還搬送手段は、型開きステーションに戻って次の金型セットの移載を待つ。上記クリーニングステーションにおけるクリーニング処理を終えた金型セットは、第二帰還搬送手段に受け渡され、この第二帰還搬送手段は、上記クリーニングを終えた金型セットを受け取って上記樹脂タブレット投入ステーションに搬送する。
【0010】そして、フープ状フレームの進行経路上に配置される四つのステーション、すなわち、タブレット投入ステーション、樹脂注入ステーション、キュアステーション、および型開きステーションは、所定間隔で配置されており、したがって、樹脂タブレット投入ステーション、樹脂注入ステーション、およびキュアステーションにそれぞれ位置する三つの金型は、フレームの進行経路方向に往復移動する単一の移載手段によって、同時に次ステーションに移載される。
【0011】このように、本願発明においては、従来のように、同一の場所において、樹脂注入工程と注入樹脂のキュア工程とを行うのではなく、樹脂注入工程と、キュア工程とを別ステーションにおいて行うようにしている。したがって、同一の場所において樹脂注入からキュア工程までを行う従来に比較し、各工程ステーションに金型が止まるべき瞬間は、従来の約半分にすることができる。その結果、本願発明の樹脂モールド装置によれば、同一の金型の大きさについて比較した場合、処理効率が約2倍に向上する。したがって、樹脂モールド工程処理のみならず、フープ状フレームを一連に搬送しつつこれらに対して各工程処理を行いながら半導体装置を製造する場合において、半導体装置の製造効率が、従来に比較して飛躍的に向上するのである。
【0012】また、本願発明においては、各金型セットが2列のキャビティを備え、フープ状フレームがいったん一方のキャビティ列に沿って各ステーションを貫通した後、再度他方のキャビティ列に沿って各ステーションを貫通するように配索される。このように構成することにより、たとえば、モールド装置内でのフープ状フレームの搬送ピッチ、すなわち、各ステーションの配設ピッチ間隔の前半分の領域が各金型の一方のキャビティ列によって樹脂モールドされ、後半分の領域が各金型の他方のキャビティ列によって樹脂モールドされるようにすることができ、そうすると、各ステーション間に間隔を開けざるをえないにもかかわらず、本願発明の樹脂モールド装置を通過させられるフープ状フレームには、隙間なく、全ての領域に対し、樹脂モールドが行なわれることになる。
【0013】
【実施例の説明】以下、本願発明の実施例を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0014】図1は、本願発明の樹脂モールド装置1の概略構成を示す平面図である。この図において、符号2は樹脂タブレット投入ステーションを、符号3は金型プレスおよび樹脂注入ステーションを、符号4は金型キャビティ内に注入された溶融樹脂が熱硬化するのを待つキュアステーションを、符号5は、キュアステーションから移載された金型の型開きを行う型開きステーションをそれぞれ示している。これらの各ステーション2,3,4,5は、フープ状フレームFの進行方向において、等間隔に配置されている。また、これらの各ステーション2,3,4,5の間は、ほぼ、金型6の長手方向長さと対応する間隔があけられている。なお、この意味については、後述の説明により明らかとなろう。
【0015】さらに、図1において符号7は、金型クリーニングステーションを示しており、符号8は、型開きステーション5の金型6をクリーニングステーション7に搬送する第一帰還搬送手段を、符号9はクリーニングステーション7から受け渡された金型6を、上記樹脂タブレット投入ステーション2に搬送する第二帰還搬送手段を、それぞれ示している。これらの各手段についての詳細は、後述する。
【0016】上記金型は、下金型6aと、これに重ねられる上金型6bとを有している。各金型の合わせ面には、図2に示されるように、2列のキャビティ10a,10bがそれぞれ形成されている。そして、下金型6aには、各キャビティ列10a,10bにランナ11を介してタブレット投入ポット12が形成されている。
【0017】一方、フープ状フレームFは、図3に概略側面図として示すように搬送される。すなわち、本樹脂モールド装置1の入口部にバッファ部13を介して導入されたフープ状フレームFは、まず、上記金型6…の一方のキャビティ列10aに沿って伸び、小バッファ部14を介して装置全体の上方を帰還させられた後、さらに小バッファ部15を介して上記金型の他方のキャビティ列10bに沿って前方に配索されている。こうして樹脂モールド装置1を通過したフープ状フレームFは、バッファ部16を介して次の工程処理装置に導入されている。そして、モールド装置1内でのフープ状フレームFの搬送ピッチ、すなわち、各ステーション2,3,4,5の配置ピッチ間隔Pの前半分の領域Aが各金型6の一方のキャビティ列10aによって樹脂モールドされ、後半分の領域Bが、上記金型の他方のキャビティ列10bによって樹脂モールドされるように、このフープ状フレームFが搬送されるのである。このようにして、各ステーション2,3,4,5間の間隔が開けられているにもかかわらず、この樹脂モールド装置1を通過させられるフープ状リードフレームFには、隙間なく、全ての領域に対し、樹脂モールドが行われることになる。
【0018】上記第一帰還搬送手段8は、フープ状フレームFの進行方向(X方向)に延びるレール17上にX方向に往復移動させられるX方向スライドテーブル18に対し、上記フープ状フレームFの進行方向と直交する方向(Y方向)に往復移動可能に支持された金型チャックユニット19を備える。この金型チャックユニット19は、図4に示すように、Y方向スライドテーブル20上に設けられた下金型チャック機構21と、上記Y方向スライドテーブル20に立設された支柱22に対して上下方向移動可能に支持された上金型チャック機構23とを備えている。そして、下金型チャック機構21、および、上金型チャック機構23は、それぞれ、下金型6a、および上金型6bの側面に形成した係合溝24,25に適宜係合してこれら金型6a,6bを保持するチャック爪26,27を備えている。なお、各金型6a,6bの側面に形成される上記係合溝24,25は、それぞれ、上下2か所形成されている。今、上下2か所の係合溝のうち、金型合わせ面に近い係合溝24a,25aを、第一係合溝とし、金型合わせ面から遠い係合溝24b,25bを第二係合溝ということにする。上記下金型チャック機構21および上金型チャック機構23が有する各チャック爪26,27は、第二係合溝24b,25bに係合して各金型を保持するものとする。また、上記チャック爪26,27は、第二係合溝24b,25bに対する係合および非係合を選択できるように揺動可能に構成されている。
【0019】さらに、上記X方向スライドテーブル18およびY方向スライドテーブル20の駆動は、モータによって駆動させられるボールねじ送り機構、あるいはエアシリンダ等の適宜のアクチュエータを用いて行われる。
【0020】次に、クリーニングステーション7は、図5R>5に示すように、第一帰還搬送手段8によって型開き状態のまま搬送されてきた下金型6aおよび上金型6bの各金型合わせ面のクリーニングをする。すなわち、型開き状態にある両金型6a,6bの間の空間に進入するアーム部28を備えており、このアーム部28の上面および下面には、上記下金型チャック機構21と上金型チャック機構23から受け渡された両金型6a,6bを、係合保持するチャック爪29,30を備えている。そして、上記アーム部28の上下面には、エアブロー機構およびこのエアブローによって金型合わせ面から取り除かれた塵等を吸引するバキューム機構が備えられている。
【0021】次の、クリーニングステーション7でのクリーニングを終えた金型6を樹脂タブレット投入ステーション2まで帰還搬送するための第二帰還搬送手段9は、上記第一帰還搬送手段8と略同様の構成を備えている。すなわち、X方向に延びるレール31上を往復移動可能なX方向スライドテーブル32には、金型チャックユニット33がY方向に往復移動可能に指示されている。この金型チャックユニット33は、Y方向スライドテーブル34上に設けた下金型チャック機構35と、Y方向スライドテーブル34上に立設された支柱36に対して上下移動可能に支持された上金型チャック機構37とを備えている。そして、これら両金型チャック機構35,37は、それぞれ、下金型6a,上金型6bの各第二係合溝24b,25bに係合してこれら金型を保持するチャック爪38,39を備えている。
【0022】次に、樹脂タブレット投入ステーション2、金型プレス樹脂注入ステーション3、およびキュアステーション4上に位置する三つの金型は、各ステーションでの工程処理後、移載手段40によって、それぞれ次ステーションに移載させられる。すなわち、樹脂タブレット投入ステーション2にあった金型セットは金型プレス樹脂注入ステーション3に、金型プレス注入ステーション3にあった金型セットはキュアステーション4に、キュアステーション4にあった金型セットは、型開きステーション5に、それぞれ同時に上記移載手段40によって移載される。
【0023】この移載手段40は、図7に示すように、X方向に延びるレール41上を、少なくとも上記各ステーション2,3,4,5間の間隔と同等の距離を往復スライド可能に支持されるスライド体42に対し、上下方向にスライド駆動されるチャックバー43を設け、このチャックバーに、内向きの第一チャックピン44、第二チャックピン45、第三チャックピンをそれぞれ突設して基本的に構成される。なおこれらのチャックバー43は、金型6の両側に一対設けられる。上記第一チャックピン44は、下金型6aの第一係合溝24aに係合して樹脂タブレット投入ステーション2にある金型セットを隣の金型プレス・樹脂注入ステーション3に移載するためのチャックピンである。第二チャックピン45は、金型プレス・樹脂注入ステーション3にある金型セットを、下金型6aの第一係合溝24aに係合して隣のキュアステーション4に移載するためのチャックピンである。そして、第三チャックピン46は、キュアステーションにある金型セットを、下金型6aの第一係合溝24aに係合して隣の型開きステーション5に移載するためのチャックピンである。
【0024】さらに、この移載手段40は、金型プレス・樹脂注入ステーション3での型締め状態を維持してキュアステーション4に移載するための型締め状態保持手段47が付設されている。これは、上記チャックバー43における第二チャックピン45と対応するようにして、その上方に、補助チャックバー48を上下方向駆動可能に設け、この補助チャックバー48に、上金型6bの第一または第二係合溝25a,25bに係合するチャックピン49を突設することにより構成している。
【0025】なお、詳しい図示は省略するが、上記樹脂タブレット投入ステーション2には、型開き状態にある金型の下金型6aに設けた樹脂投入ポット12に対して所定の樹脂タブレットを投入するための機構が設けられている。また、金型プレス・樹脂注入ステーション3には、重ねられた上下金型を型締めするためのプレス機構および、下金型6aに組み込まれたプランジャを駆動して上記ポット内の溶融した樹脂を各キャビティに送り込むための注入手段が設けられている。もちろん、樹脂を溶融するための加熱手段が、上記樹脂タブレット投入ステーション1または/および金型プレス・樹脂注入ステーション3に設けられていることはいうまでもない。
【0026】次に、上述の実施例にかかる樹脂モールド装置1の作動を説明する。第2帰還搬送手段9によって第一の金型セット61 が樹脂タブレット投入ステーション2に搬送されてきた時点においては、第二の金型セット62 は金型プレス・樹脂注入ステーション3にあり、第三の金型セット63 は、キュアステーション4にある。本実施例においては、上記樹脂タブレット投入ステーション2に搬入された第一の金型セットは、図6に示すようにして下金型61 aと上金型61 bとが型開き状態にある。すなわち下金型61 aは、下金型チャック機構35のチャック爪38によって保持され、一方上金型61 bは上金型チャック機構37のチャック爪39に引っ掛けられて上方に吊り上げられた恰好となっている。この状態において、下金型61 aのタブレット投入ポット12に、所定の樹脂タブレットが投入され、その後上金型チャック機構37が下動して上金型61 bを下金型61 aの上に重ねる。
【0027】樹脂タブレット投入ステーション2において、上記のような樹脂タブレット投入および金型重ね合わせ操作をしている間、金型プレス・樹脂注入ステーション3においては、第二金型セット62 がプレス装置によって型締めされ、かつ下金型に組み込まれたプランジャを圧力駆動して上記ポット内に投入されて溶融している樹脂が、各キャビティ内に注入される。また、キュアステーション4においては、第三の金型セット63 が、型締め状態のまま所定時間保持され、キャビティ内の樹脂が熱硬化させられている。
【0028】こうして第一、第二および第三の金型セットに対する各ステーションでの操作が終了すると、これら三つの金型セット61 、62 、および63 は、移載手段40によって、それぞれ次ステーションに移載される。すなわち、チャックバー43が上昇することにより、第一チャックピン44、第二チャックピン45、および第三チャックピン46が、それぞれ、第一金型セット61 の下金型61 aの第一係合溝24a、第二金型セット62 の下金型62 aの第一係合溝24a、および第三金型セット63 の下金型63 aの第一係合溝24aをそれぞれ引っ掛けることにより持ち上げ、そうしてスライド体42とともに、チャックバー43がフープ状フレームFの送り方向に所定量移動した後、若干下動することにより、下金型と、上金型とが重ね状態にある各金型セットが、それぞれ、次ステーションに移載されるのである。ただし、金型プレス・樹脂注入ステーション3にあった第二の金型セットについては、図8に示されるように、上金型62 bの係合溝25aに係合するチャックピン49をもつ補助チャックバー48が上記チャックバー43に対して相対的に下向きに押圧されることにより、両金型が型締め状態に保持されたままキュアステーション4に移載される。
【0029】さらに、キュアステーション4にあった第三の金型セット63 は、型開きステーション5において待ち受ける第一帰還搬送手段8のY方向スライドテーブル20の上に移載される。そして、この第一帰還搬送手段8は、その上金型チャック機構23が下動してチャック爪27が上金型63 bの第二係合溝25bを引っ掛けることにより、この上金型63 bを持ち上げて型開きを行う。同時に下金型63 aは、下金型チャック機構21のチャック爪26によってY方向スライドテーブル上に固定保持される。こうして型開きされた第三の金型セットは、Y方向スライドテーブル20がX方向スライドテーブル18上をY方向に移動するとともに、X方向スライドテーブル18がレール17上をX方向に移動することによりクリーニングステーション7まで搬送される。そして、図5に示すように、下金型63 aと上金型63 bとがそれぞれアーム部28のチャック爪29,30に係合させることによりクリーニングステーション7に受け渡され、その後第一帰還搬送手段8は、上記と逆の経路を通って型開きステーション5まで戻り、次の金型セットが移載されるのを待ち受ける。
【0030】クリーニングステーション7においては、上記のように保持された状態において、両金型63 a,63 bは、合わせ面のクリーニングが行われ、次いで第二帰還搬送手段9に受け渡された後、この第二帰還搬送手段9によって型開き状態のまま樹脂タブレット投入ステーション2まで搬送され、上述の樹脂タブレット投入および下金型への上金型の重ね合わせ操作が行われる。このようにして、金型セットは、樹脂タブレット投入ステーション2、金型プレス・樹脂注入ステーション3、キュアステーション4、型開きステーション5、クリーニングステーション7を繰り返し巡回する。
【0031】ところで、上述から明らかなように、本願発明の樹脂モールド装置1においては、金型プレス・樹脂注入ステーション3と、注入された樹脂を熱硬化させるキュアステーション4とを別ステーションとして構成している。したがって、樹脂注入からキュアまでを同一のステーションにおいて行っていた従来例に比較し、金型セットが一つのステーションに止まっている時間が短縮され、このことは、フープ状フレームFの送り速度の飛躍的な向上を意味する。これにより、樹脂モールド工程の処理作業効率が、従来に比較してほぼ倍加されるのであり、その結果、フープ状フレームを一連に搬送しつつ各処理工程を行うようになされた半導体装置の製造システムにおいて、製造効率の向上のネックとなっていた樹脂モールド工程処理の効率が高められ、よって半導体装置製造の効率がさらに飛躍的に高められる結果となるのである。
【0032】なお、本願発明は、樹脂タブレット投入処理、金型プレス・樹脂注入処理、キュア処理、および型開き処理を、別々のステーションに分けて行うように構成したことを最大の特徴とするものである。したがって、各ステーションでの具体的構成、これらのステーション間を三つの金型を同時に次ステーションに移載するための移載手段の具体的な構成、ないし、第一帰還搬送手段、あるいは第二帰還搬送手段の具体的構成は、種々設計変更可能であり、上記した説明によって把握される機能を実現できる構成であれば、いかなる構成であっても全て本願発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施例の概略構成を示す略示平面図である
【図2】金型セットの構成例を示す斜視図である。
【図3】フープ状フレームFの搬送経路例を示す略示側面図である。
【図4】第一帰還搬送手段の構成を示し、図1のIV方向矢視図に相当する図である。
【図5】第一帰還搬送手段が金型をクリーニングステーションに受渡した状態を示し、図1のV方向矢視図に相当する図である。
【図6】第二帰還搬送手段の構成を示し、図1のVI方向矢視図に相当する図である。
【図7】移載手段の構成を示す図1のVII −VII 線断面に相当する図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【符号の説明】
1 樹脂モールド装置
2 樹脂タブレット投入ステーション
3 金型プレス・樹脂注入ステーション
4 キュアステーション
5 型開きステーション
6 金型
7 クリーニングステーション
8 第一帰還搬送手段
9 第二帰還搬送手段
10a キャビティ列
10b キャビティ列
40 移載手段
F フープ状フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フープ状フレームの進行経路上に所定間隔で配置された樹脂タブレット投入ステーション、樹脂注入ステーション、キュアステーションおよび型開きステーションと、上記進行経路の側方に偏位した位置に配置されたクリーニングステーションと、上金型と下金型とを組み合わせてなる少なくとも3組の金型セットと、上記型開きステーションに移動した金型セットを型開きするとともにこの金型セットを上記クリーニングステーションに搬送する第一帰還搬送手段と、クリーニングステーションでのクリーニングを終えた金型セットを上記樹脂タブレット投入ステーションに搬送する第二帰還搬送手段と、樹脂タブレット投入ステーション、樹脂注入ステーションおよびキュアステーションにある3組の金型セットを、それぞれ上記進行経路上の次ステーションに移載する移載手段と、を備える一方、各金型セットは、フープ状フレーム進行経路に沿う2列のキャビティを備えており、上記フープ状フレームは、一方のキャビティ列に沿って各ステーションを貫通した後、他方のキャビティ列に沿って再度各ステーションを貫通するように配索されるこを特徴とする、樹脂モールド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】特許第3005875号(P3005875)
【登録日】平成11年11月26日(1999.11.26)
【発行日】平成12年2月7日(2000.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−143402
【出願日】平成3年6月14日(1991.6.14)
【公開番号】特開平5−111927
【公開日】平成5年5月7日(1993.5.7)
【審査請求日】平成9年8月7日(1997.8.7)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−5909(JP,A)
【文献】特開 昭64−9712(JP,A)
【文献】特開 昭62−169335(JP,A)
【文献】特開 昭56−92031(JP,A)
【文献】特開 昭61−148016(JP,A)
【文献】特開 昭57−105333(JP,A)
【文献】実開 平2−97009(JP,U)