説明

樹脂モールド部品および樹脂モールド部品の内部応力測定方法

【課題】2枚の金属プレートの間に半導体素子を挟みこんだ状態で、当該金属プレートおよび半導体素子を樹脂でモールドする態様の樹脂モールド部品において、モールドする樹脂に生じる内部応力の測定が容易な樹脂モールド部品および内部応力を容易に測定するための樹脂モールド部品の内部応力測定方法を提供する。
【解決手段】、金属プレート2・2をモールド樹脂4で固めて形成される部品たる樹脂モールド部品1において、モールド樹脂4に生じる内部応力を測定するための内部応力測定方法であって、金属プレート2に、応力によって変形可能な複数の応力検出子5b・5b・・・を有する応力検出部5を付設し、応力検出部5ごと金属プレート2・2をモールド樹脂4で固めて樹脂モールド部品1を形成し、樹脂モールド部品1を非破壊検査して、複数の応力検出子5b・5b・・・の変形量Δd1を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に内部応力の測定を行うことができる樹脂モールド部品およびその樹脂モールド部品を用いた内部応力測定方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2枚の金属プレートの間に半導体素子等を挟みこんだ状態で、当該金属プレートおよび半導体素子をモールド樹脂で固めた態様の部品(以下、樹脂モールド部品と呼ぶ)が存在している。
前記樹脂モールド部品においては、モールド樹脂の硬化条件の設定が適当でない場合に、金属プレートからモールド樹脂が剥離する場合がある。
このようなモールド樹脂の剥離現象は、モールド樹脂が硬化収縮する際に生じる内部応力に起因していると考えられている。
このため、モールド樹脂で固める際に生じる内部応力を測定するための技術が種々検討されており、例えば、以下に示す特許文献1〜特許文献4にその技術が開示され公知となっている。
【0003】
例えば、以下に示す特許文献1では、円盤状の部材と円筒状の部材を組み合わせた容器にモールド樹脂を充填する場合において、当該モールド樹脂に生じる内部応力を測定するための従来技術が開示されている。
特許文献1に係る従来技術では、円盤状の部材と円筒状の部材を組み合わせた容器に歪みゲージを貼り付けておき、その容器に充填したモールド樹脂が硬化収縮する際に、当該円筒状の部材に生じる歪み量を歪みゲージで測定して、歪み量の測定結果からモールド樹脂に生じる内部応力を求める構成としている。
【0004】
また、以下に示す特許文献2では、金属パイプ(円筒状の部材)の周囲をモールド樹脂で固める場合において、当該モールド樹脂に生じる内部応力を測定するための従来技術が開示されている。
特許文献2に係る従来技術では、金属パイプの内面に歪みゲージを貼り付けた状態で金属パイプの周囲をモールド樹脂で固めて、モールド樹脂が硬化した後に当該モールド樹脂を引き抜いて、その引き抜く際に生じる歪み量を歪みゲージで測定する構成としている。
そして、歪み量の測定結果からモールド樹脂に生じる内部応力を求めることができる。
【0005】
また、以下に示す特許文献3では、容器にモールド樹脂を充填する場合に、当該モールド樹脂に生じる内部応力を測定するための従来技術が開示されている。
特許文献3に係る従来技術では、容器に温度センサと圧力センサを入れた状態でモールド樹脂を充填し、さらにモールド樹脂を加圧しながら温度変化と圧力変化を測定して、モールド樹脂の体積変化を求めて、当該モールド樹脂の収縮率を求める構成としている。
そして、収縮率の測定結果からモールド樹脂に生じる内部応力を求めることができる。
【0006】
さらに、以下に示す特許文献4では、モールド樹脂に硬質磁性粉末を添加しておき、樹脂モールド部品を生成した後に、当該樹脂モールド部品の磁束密度を測定することによって、モールド樹脂に生じる内部応力を求めることができる従来技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−75247号公報
【特許文献2】特開昭62−110151号公報
【特許文献3】特開2009−63358号公報
【特許文献4】特開平3−35136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されている従来技術では、円筒状の部材を対象としており、金属プレート等を対象とした樹脂モールド部品とは、充填時におけるモールド樹脂の流れや伝熱特性等が異なってくるため、当該樹脂モールド部品に従来技術をそのまま適用しても、実際に型内で生じている現象を正確に捉えることができなかった。
【0009】
また、特許文献1および特許文献2に開示されている従来技術では、歪みゲージを貼り付けた面に作用するせん断方向の応力しか測定することができないため、モールド樹脂の剥離に影響を及ぼす可能性が最も高い、金属プレート面に対して法線方向に作用する応力を測定することができなかった。
【0010】
また、特許文献3に開示されている従来技術で使用する各センサは比較的大型であり、金属プレート等の間に各センサを配置することが困難であるため、金属プレート等からなる樹脂モールド部品には、特許文献3に係る従来技術をそのまま適用することが困難であった。
【0011】
また、仮に、小型のセンサを用いて、金属プレート間に各センサを配置し、特許文献3に係る従来技術を適用したとしても、各センサがモールド樹脂の流れや伝熱を妨げる外乱要素となるため、実際に型内で生じている現象を正確に捉えることができなかった。
【0012】
さらに、特許文献4に開示されている従来技術では、磁束密度を測定する必要があるが、金属プレートを内包している樹脂モールド部品においては、磁束が金属プレートを通過できず、磁束密度の測定をうまくすることができないため、実際の製品形状のままで、内部応力を測定することができなかった。
【0013】
また、特許文献4に開示されている従来技術では、モールド樹脂に硬質磁性粉末を添加すると、モールド樹脂の流動性等が変化するため、実際に使用するモールド樹脂において生じる現象を再現することが困難であった。
【0014】
このように、2枚の金属プレートの間に半導体素子等を挟みこんだ状態で、当該金属プレートおよび半導体素子を樹脂でモールドする態様の樹脂モールド部品においては、樹脂内部においてどのような内部応力(大きさや方向)が生じているかということを、従来技術によっては精度良く測定することができなかった。
【0015】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みて成されたものであり、2枚の金属プレートの間に半導体素子を挟みこんだ状態で、当該金属プレートおよび半導体素子を樹脂でモールドする態様の樹脂モールド部品において、モールドする樹脂に生じる内部応力の測定が容易な樹脂モールド部品および内部応力を容易に測定するための樹脂モールド部品の内部応力測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0017】
即ち、請求項1においては、金属部材を樹脂モールドして構成される樹脂モールド部品であって、前記金属部材には、応力によって変形可能な複数の応力検出子を有する応力検出部が付設されるものである。
【0018】
請求項2においては、前記応力検出子を、球体とするものである。
【0019】
請求項3においては、前記球体を、気泡により構成するものである。
【0020】
請求項4においては、前記球体を、球状の樹脂により構成するものである。
【0021】
請求項5においては、前記応力検出部を、膜状とするものである。
【0022】
請求項6においては、前記応力検出部は、前記複数の応力検出子を含むペーストを前記金属部材に塗布し、塗膜を形成することによって、前記金属部材に付設されるものである。
【0023】
請求項7においては、金属部材を樹脂で固めて形成される部品たる樹脂モールド部品において、前記樹脂に生じる内部応力を測定するための樹脂モールド部品の内部応力測定方法であって、前記金属部材に、応力によって変形可能な複数の応力検出子を有する応力検出部を付設し、前記応力検出部ごと前記金属部材を樹脂で固めて前記樹脂モールド部品を形成し、前記樹脂モールド部品を非破壊検査して、前記複数の応力検出子の変形量を測定するものである。
【0024】
請求項8においては、前記応力検出子を、球体とするものである。
【0025】
請求項9においては、前記球体を、気泡により構成するものである。
【0026】
請求項10においては、前記球体を、球状の樹脂により構成するものである。
【0027】
請求項11においては、前記応力検出部を、膜状とするものである。
【0028】
請求項12においては、前記応力検出部は、前記複数の応力検出子を含むペーストを前記金属部材に塗布し、塗膜を形成することによって、前記金属部材に付設されるものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0030】
請求項1においては、実際の製品形状、型形状、成型条件においてモールド樹脂に生じる現象を精度良く再現しつつ、モールド樹脂に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0031】
請求項2においては、モールド樹脂に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0032】
請求項3においては、応力検出部を簡易な構成としつつ、モールド樹脂に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0033】
請求項4においては、応力検出部を簡易な構成としつつ、モールド樹脂に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0034】
請求項5においては、金属部材に対して、応力検出部を容易に付設することができる。
【0035】
請求項6においては、金属部材に対して、応力検出部を容易に付設することができる。
【0036】
請求項7においては、実際の製品形状、型形状、成型条件においてモールド樹脂に生じる現象を精度良く再現しつつ、モールド樹脂に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0037】
請求項8においては、モールド樹脂に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0038】
請求項9においては、応力検出部を簡易な構成としつつ、モールド樹脂に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0039】
請求項10においては、応力検出部を簡易な構成としつつ、モールド樹脂に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0040】
請求項11においては、金属部材に対して、応力検出部を容易に付設することができる。
【0041】
請求項12においては、金属部材に対して、応力検出部を容易に付設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品を示す模式図、(a)側面断面模式図、(b)図1(a)におけるA−A断面図、(c)図1(a)におけるB部拡大図。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品の製造過程を示す模式図。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品における応力検出部による応力の検出方法の説明図、(a)応力検出部の変形態様を示す模式図、(b)検量線の作成方法を示す模式図。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る樹脂モールド部品を示す模式図、(a)側面断面模式図、(b)図4(a)におけるC−C断面図、(c)図4(a)におけるD部拡大図。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る樹脂モールド部品における応力検出部による応力の検出方法の説明図、(a)応力検出子の変形態様を示す模式図、(b)検量線の作成方法を示す模式図。
【図6】樹脂モールド部品の別実施形態(その1)を示す模式図、(a)側面断面模式図、(b)図6(a)におけるE部拡大図。
【図7】樹脂モールド部品の別実施形態(その2)を示す模式図、(a)側面断面模式図、(b)図7(a)におけるF部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品の全体構成について、図1から図3を用いて説明をする。
図1(a)(b)に示す如く、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1は、一対の金属プレート2・2の間に、例えばIGBTやダイオード等の素子3を挟みこんで形成される中間部品8を、モールド樹脂4で一体的に固めることによって生成される部品である。
【0044】
また、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1では、金属プレート2におけるモールド樹脂4の剥離が懸念される部位(面)に、モールド樹脂4が硬化収縮する際に生じる内部応力を検出するための部位である応力検出部5が付設されている。
【0045】
樹脂モールド部品1に付設される応力検出部5は、膜状の部位として構成されており、より詳しくは、図1(c)に示す如く、固化する性質を有するペースト状の基材5aを金属プレート2に対して塗布し、塗布した基材5aが固化して塗膜を形成することによって、金属プレート2に対して応力検出部5を付設する構成としている。
【0046】
ここで、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1の製造過程について、説明をする。
図2に示す如く、樹脂モールド部品1の製造過程においては、まず始めに、一対の金属プレート2・2によって、素子3を挟みこんだ状態の中間部品8を形成しておく。
尚、中間部品8を構成する金属プレート2には、応力検出部5が付設されている。
【0047】
次に、中間部品8を金型9の内部に配置し、そして、金型9内にモールド樹脂4を充填する。
そして、モールド樹脂4が硬化するまで放置した後に、金型9を除去して、本発明の第1の実施形態に係る樹脂モールド部品1が生成される。
モールド樹脂4は硬化する際に収縮するため、樹脂モールド部品1を構成するモールド樹脂4には内部応力が生じている。
【0048】
ここで、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1における内部応力の測定方法について、説明をする。
図1(c)に示す如く、応力検出部5を構成する基材5aには、その内部に複数の応力検出子5b・5b・・・が含有されている。
応力検出子5bは、弾性変形可能な樹脂等を中空の球状に形成した部材(即ち、球体)であって、かつ、応力が作用することによって変形する性質を有するものである。
【0049】
図3(a)に示す如く、基材5a中に存在する応力検出子5bは、応力検出部5に応力が作用することによって変形し、また、応力の作用方向に応じてその変形後の形状が異なるように構成されている。
樹脂モールド部品1においては、硬化したモールド樹脂4に生じた内部応力が基材5aの応力検出子5bに作用し、その内部応力の作用方向および大きさに応じて応力検出子5bが変形するように構成されている。
【0050】
さらに詳述すると、例えば、初期状態(応力が作用する前)において球体である応力検出子5bに対して、検出面5cに垂直な方向への引張り力が作用すると、応力検出子5bは図3(a)に示すような応力の作用方向に伸長した楕円状に変形し、検出面5cに対して斜め方向への引張り力が作用すると、応力検出子5bは図3(a)に示すような傾斜した楕円状に変形する。さらに、検出面5cに垂直な方向への圧縮力が作用すると、応力検出子5bは図3(a)に示すような応力の作用方向に対して直交する方向に伸長した楕円状に変形する。
【0051】
即ち、応力検出子5bの変形後の形状を観察すれば、応力検出部5(検出面5c)に対して、どのような方向に内部応力が作用したのかを知得することができる。
そして、応力検出子5bの変形後の形状を観察することによって、主応力の作用方向を決定する。
【0052】
また、図3(b)に示す如く、基材5a中に存在する応力検出子5bは、応力検出部5に付与される応力の大きさに応じて、変形量が異なるように構成されている。
ここでは、直径d1の球体であった応力検出子5bが楕円球状に変形したときの、長軸方向(即ち、主応力の作用方向)への径の増分Δd1を、応力検出子5bの変形量Δd1として規定している。
また、直径d1に対する変形量Δd1の比(即ち、Δd1/d1の値)を、歪みとして規定している。
【0053】
そして、応力検出子5bに対しては、使用する応力検出子5bの種類ごとに事前に実験等を行って、付与した応力σ1と、歪みΔd1/d1の相関を表す検量線7を予め求めておくようにしている。
検量線7を用いれば、応力検出子5bの変形量Δd1を測定することによって、樹脂モールド部品1においてモールド樹脂4の内部で生じている応力(内部応力)σ1を算出することができる。
【0054】
例えば、応力検出子5bの変形量Δd1は、樹脂モールド部品1を生成した後に、X線CT装置等を用いて非破壊で応力検出子5bの変形状態を観察することによって、測定することができる。
あるいは、樹脂モールド部品1を実際に切断して断面を研磨し、その断面を観察することによっても、応力検出子5bの変形量Δd1を測定することができる。
【0055】
そして、測定した内部応力の値と、応力検出子5bの変形方向(主応力の作用方向)の情報を総合して判断することによって、実際の製品形状および成型条件のもと、実際に使用する金型9(図2参照)内で生じているモールド樹脂4の収縮量および樹脂モールド部品1の内部で生じている現象等を精度よく把握することが可能になる。
【0056】
尚、本実施形態において示す各応力検出子5b・5b・・・は、応力検出部5において一定の間隔を保持しつつ規則的に配置されているが、各応力検出子5b・5b・・・の配置は、不規則(ランダム)な配置であってもよい。
例えば、モールド樹脂4を充填する前後のそれぞれにおける応力検出部5の状態をX線CT装置等を用いて観察し、モールド樹脂4を充填する前後において応力検出部5(応力検出子5b・5b・・・)の状態を比較することによって、内部応力の値や作用方向を知得することができる。
【0057】
即ち、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1においては、複数の応力検出子5b・5b・・・を、球体としている。
【0058】
また、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品の内部応力測定方法においては、複数の応力検出子5b・5b・・・を、球体としている。
【0059】
このような構成により、モールド樹脂4に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0060】
また、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1においては、前記球体を、気泡により構成するものである。
【0061】
さらに、本発明の一実施形態に係る樹脂モールド部品の内部応力測定方法においては、前記球体を、気泡により構成するものである。
【0062】
このような構成により、応力検出部5を簡易な構成としつつ、モールド樹脂4に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0063】
また、本実施形態では、応力検出子5bが中空の球体である場合を例示しているが、例えば、弾性変形可能な樹脂等からなる中実の球体とすることも可能である。
【0064】
即ち、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1においては、前記球体を、球状の樹脂により構成するものである。
【0065】
また、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品の内部応力測定方法においては、前記球体を、球状の樹脂により構成するものである。
【0066】
このような構成により、応力検出部5を簡易な構成としつつ、モールド樹脂4に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0067】
また、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1において、応力検出部5は、膜状である。
【0068】
さらに、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品の内部応力測定方法において、応力検出部5は、膜状である。
【0069】
このような構成により、金属プレート2に対して、応力検出部5を容易に付設することができる。
【0070】
また、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1において、応力検出部5は、複数の応力検出子5b・5b・・・を含むペーストたる基材5aを金属プレート2に塗布し、塗膜を形成することによって、金属プレート2に付設されるものである。
【0071】
さらに、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品の内部応力測定方法において、応力検出部5は、複数の応力検出子5b・5b・・・を含むペーストたる基材5aを金属プレート2に塗布し、塗膜を形成することによって、金属プレート2に付設されるものである。
【0072】
このような構成により、金属プレート2に対して、応力検出部5を容易に付設することができる。
【0073】
次に、本発明の第二の実施形態に係る樹脂モールド部品の全体構成について、図4および図5を用いて説明をする。
図4(a)(b)に示す如く、本発明の第二の実施形態に係る樹脂モールド部品11は、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1と同様に、一対の金属プレート2・2の間に素子3を挟みこんで形成される中間部品18を、モールド樹脂4で一体的に固めることによって生成される部品である。
【0074】
そして、本発明の第二の実施形態に係る樹脂モールド部品11は、金属プレート2におけるモールド樹脂4の剥離が懸念される部位(面)に、モールド樹脂4が硬化収縮する際に生じる内部応力を検出するための部材である応力検出部15を付設する構成としている点で、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1と相違している。
【0075】
樹脂モールド部品11に付設される応力検出部15は、膜状の部位として構成されている。
さらに詳述すると、応力検出部15は、図4(c)に示す如く、異なる性質を有する2種の基材15a・15bを網の目状に組み合わせた複合材料であり、金属プレート2に対して接着剤等を用いて貼設される構成としている。基材15aと基材15bとは、図4(b)に示すように、基材15aを井桁状に配置するとともに、井桁の内部を埋めるように基材15bを配置する構成としたり、あるいは、例えば、基材15aと基材15bを行方向および列方向に交互に配置する構成としたりすることができる。
そして、応力検出部15は、各基材15a・15bが、本発明の第一の実施形態に係る樹脂モールド部品1における応力検出子5bと同様の役割を果たす構成としている。
【0076】
応力検出子たる基材15a・15bは、弾性変形可能な樹脂(エポキシ、ポリイミド等)により構成され、応力が作用することによって変形する性質を有している。
【0077】
図5(a)に示す如く、例えば、基材15bは、応力検出部15に応力が付与されることによって変形し、また、応力の作用方向に応じてその変形後の形状が異なるように構成されている。
【0078】
例えば、断面視において長方形状である基材15bに対して、検出面15cに垂直な方向への引張り力が作用すると、基材15bは図5(a)に示すようなさらに縦長の長方形状に変形し、検出面15cに対して斜め方向への引張り力が作用すると、基材15bは図5(a)に示すような傾斜した平行四辺形状に変形する。さらに、検出面15cに垂直な方向への圧縮力が作用すると、基材15bは図5(a)に示すような横長の長方形状に変形する。
【0079】
即ち、基材15b(あるいは、基材15aでもよい)の変形後の形状を観察すれば、応力検出部15(検出面15c)に対して、どの方向に内部応力が作用したのかを知得することができる。
そして、基材15bの変形後の形状を観察することによって、主応力の作用方向を決定する。
【0080】
また、図5(b)に示す如く、基材15bは、応力検出部15に付与される応力の大きさに応じて、変形量が異なるように構成されている。
ここでは、高さd2であった基材15bがさらに縦長の長方形状に変形したときの、主応力の作用方向への高さの増分Δd2を、基材15bの変形量Δd2として規定している。
また、高さd2に対する変形量Δd2の比(即ち、Δd2/d2の値)を、歪みとして規定している。
【0081】
そして、基材15bに対しては、使用する各基材15a・15bの種類ごとに事前に実験等を行って、付与した応力σ2と、歪みΔd2/d2の相関を表す検量線17を予め求めておくようにしている。
これにより、基材15b(あるいは、基材15aでもよい)の変形量Δd2を測定すれば、検量線17を用いることによって、樹脂モールド部品11においてモールド樹脂4の内部で生じている応力(内部応力)σ2を算出することができる。
【0082】
例えば、基材15bの変形量Δd2は、樹脂モールド部品11を生成した後に、X線CT装置等を用いて非破壊で基材15bの変形状態を観察することによって、測定することができる。
あるいは、樹脂モールド部品11を実際に切断して断面を研磨し、その断面を観察することによっても、基材15bの変形量Δd2を測定することができる。
【0083】
そして、測定した内部応力の値と、各基材15a・15bの変形方向(主応力の作用方向)の情報を総合して判断することによって、実際の製品形状および成型条件のもと、実際に使用する金型9(図2参照)内で生じているモールド樹脂4の収縮量および樹脂モールド部品11の内部で生じている現象等を精度よく把握することが可能になる。
【0084】
尚、本実施形態において示す応力検出部15は、2種類の基材15a・15bからなる構成としているが、応力検出部を構成するために組み合わせる素材の種類数を、これに限定するものではない。
【0085】
即ち、本発明の第一および第二の実施形態に係る各樹脂モールド部品1・11は、金属プレート2・2をモールド樹脂4で固めて形成される部品であって、金属プレート2には、応力によって変形可能な複数の応力検出子5b・5b・・・(あるいは、基材15a・15a・・・あるいは基材15b・15b・・・)を有する応力検出部5(あるいは応力検出部15)が付設されるものである。
【0086】
また、本発明の第一および第二の実施形態に係る樹脂モールド部品の内部応力測定方法は、金属プレート2・2をモールド樹脂4で固めて形成される部品たる樹脂モールド部品1において、モールド樹脂4に生じる内部応力を測定するための内部応力測定方法であって、金属プレート2に、応力によって変形可能な複数の応力検出子5b・5b・・・(あるいは、複数の基材15a・15a・・・および複数の基材15b・15b・・・)を有する応力検出部5(あるいは応力検出部15)を付設し、応力検出部5(あるいは応力検出部15)ごと金属プレート2・2をモールド樹脂4で固めて樹脂モールド部品1を形成し、樹脂モールド部品1を非破壊検査して、複数の応力検出子5b・5b・・・(あるいは、複数の基材15a・15a・・・および複数の基材15b・15b・・・)の変形量Δd1(あるいはΔd2)を測定するものである。
【0087】
このような構成により、実際の製品形状、金型9の形状、成型条件においてモールド樹脂4に生じる現象を精度良く再現しつつ、モールド樹脂4に生じている内部応力を容易に精度良く測定することができる。
【0088】
また、本発明の第二の実施形態に係る樹脂モールド部品11において、応力検出部15は、膜状である。
【0089】
さらに、本発明の第二の実施形態に係る樹脂モールド部品の内部応力測定方法において、応力検出部15は、膜状である。
【0090】
このような構成により、金属プレート2に対して、応力検出部15を容易に付設することができる。
【0091】
次に、さらに別の実施形態に係る樹脂モールド部品について、図6を用いて説明をする。
図6に示す如く、樹脂モールド部品21は、本発明の第一および第二の実施形態に係る各樹脂モールド部品1・11と同様に、一対の金属プレート2・2の間に素子3を挟みこんで形成される中間部品8を、モールド樹脂4で一体的に固めることによって生成される部品である。
【0092】
そして、樹脂モールド部品21は、金属プレート2におけるモールド樹脂4の剥離が懸念される部位(面)に、モールド樹脂4が硬化収縮する際に生じる内部応力を検出するための部位である応力検出部25を備える点で、本発明の第一および第二の実施形態に係る各樹脂モールド部品1・11と、内部応力を検出するための部位の構成が相違している。
【0093】
応力検出部25は、モールド樹脂4により固められて一体的に変位する部位である変位部25aと、当該変位部25aの変位を検出するためのセンサ部25bを備えており、金属プレート2におけるモールド樹脂4の剥離が懸念される部位(面)に形成された凹部2aに収容されている。
【0094】
応力検出部25を構成するセンサ部25bとしては、例えば、圧電素子等を採用することができる。あるいは、センサ部25bとしては、多軸方向への応力が測定可能なロードセル等を採用することも可能であり、この場合には、内部応力の作用方向(モールド樹脂4の収縮方向)を検出することができる。
センサ部25bは、図示しないPC(パーソナルコンピュータ)等に接続され、応力の測定結果を当該PCに取り込んでデータ処理ができるように構成されている。
【0095】
そして、樹脂モールド部品21では、センサ部25bによって、変位部25aの変位量Δd3を測定することができ、X線CT装置を用いたり、あるいは、実際に樹脂モールド部品を切断したりして、応力検出部25を観察する必要がない。
また、モールド樹脂4を充填して固めているときの、モールド樹脂4の状況をリアルタイムで把握することができる。
【0096】
そして、樹脂モールド部品21においては、センサ部25bによる変位量Δd3の測定結果と検量線に基づいて、モールド樹脂4に生じる内部応力を求めることができる。
変位量Δd3と応力との相関を表す検量線は、予め実験等により取得しておく。
あるいは、モールド樹脂4の縦弾性係数と変位量Δd3に基づき算出する歪みの積として、内部応力を求めることもできる。
【0097】
次に、またさらに別の実施形態に係る樹脂モールド部品について、図7を用いて説明をする。
図7(a)に示す如く、樹脂モールド部品31は、本発明の第一および第二の実施形態に係る各樹脂モールド部品1・11と同様に、一対の金属プレート2・2の間に素子3を挟みこんで形成される中間部品8を、モールド樹脂4で一体的に固めることによって生成される部品である。
【0098】
そして、樹脂モールド部品31は、金属プレート2におけるモールド樹脂4の剥離が懸念される部位(面)に、モールド樹脂4が硬化収縮する際に生じる内部応力を検出するための部材である各応力検出部5・15を備えていない点で、本発明の第一および第二の実施形態に係る各樹脂モールド部品1・11と相違している。
【0099】
即ち、樹脂モールド部品21では、各応力検出部5・15を備えることなく、モールド樹脂4が硬化収縮する際に生じる内部応力を検出することができるように構成されている点に特徴を有している。
【0100】
図7(b)に示す如く、例えば、樹脂モールド部品31においては、一方の金属プレート2におけるモールド樹脂4の剥離が懸念される部位に離型剤35が塗布されており、また、他方の金属プレート2におけるモールド樹脂4の剥離が懸念される部位に接着剤36が塗布されている。
このような構成により、モールド樹脂4が硬化収縮するときには、接着剤36を塗布した側の金属プレート2においては剥離せず、離型剤35を塗布した側の金属プレート2において選択的に剥離するようになり、収縮量が離型剤35を塗布した側に集約された結果、その収縮量の総和を表す隙間37が生じる。
【0101】
例えば、隙間37の大きさΔd4は、樹脂モールド部品31を生成した後に、X線CT装置等を用いて非破壊でモールド樹脂4の変形状態を観察することによって、測定することができる。
あるいは、樹脂モールド部品31を実際に切断して断面を研磨し、その断面を観察することによっても、隙間の大きさΔd4を測定することができる。
【0102】
そして、樹脂モールド部品31においては、隙間37の大きさΔd4の測定結果と検量線に基づいて、モールド樹脂4に生じる内部応力を求めることができる。
また、樹脂モールド部品31における、隙間の大きさΔd4と応力との相関を表す検量線は予め実験等により取得しておく。
あるいは、モールド樹脂4の縦弾性係数と隙間Δd4に基づき算出する歪みの積として、内部応力を求めることもできる。
【符号の説明】
【0103】
1 樹脂モールド部品(第一の実施形態)
2 金属プレート
3 素子
4 モールド樹脂
5 圧力検出部
5b 圧力検出子
11 樹脂モールド部品(第二の実施形態)
15a 基材
15b 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材を樹脂モールドして構成される樹脂モールド部品であって、
前記金属部材には、
応力によって変形可能な複数の応力検出子を有する応力検出部が付設される、
ことを特徴とする樹脂モールド部品。
【請求項2】
前記応力検出子を、
球体とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂モールド部品。
【請求項3】
前記球体を、
気泡により構成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の樹脂モールド部品。
【請求項4】
前記球体を、
球状の樹脂により構成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の樹脂モールド部品。
【請求項5】
前記応力検出部を、
膜状とする、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の樹脂モールド部品。
【請求項6】
前記応力検出部は、
前記複数の応力検出子を含むペーストを前記金属部材に塗布し、塗膜を形成することによって、前記金属部材に付設される、
ことを特徴とする請求項5に記載の樹脂モールド部品。
【請求項7】
金属部材を樹脂で固めて形成される部品たる樹脂モールド部品において、前記樹脂に生じる内部応力を測定するための樹脂モールド部品の内部応力測定方法であって、
前記金属部材に、応力によって変形可能な複数の応力検出子を有する応力検出部を付設し、
前記応力検出部ごと前記金属部材を樹脂で固めて前記樹脂モールド部品を形成し、
前記樹脂モールド部品を非破壊検査して、前記複数の応力検出子の変形量を測定する、
ことを特徴とする樹脂モールド部品の内部応力測定方法。
【請求項8】
前記応力検出子を、
球体とする、
ことを特徴とする請求項7に記載の樹脂モールド部品の内部応力測定方法。
【請求項9】
前記球体を、
気泡により構成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の樹脂モールド部品の内部応力測定方法。
【請求項10】
前記球体を、
球状の樹脂により構成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の樹脂モールド部品の内部応力測定方法。
【請求項11】
前記応力検出部を、
膜状とする、
ことを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の樹脂モールド部品の内部応力測定方法。
【請求項12】
前記応力検出部は、
前記複数の応力検出子を含むペーストを前記金属部材に塗布し、塗膜を形成することによって、前記金属部材に付設される、
ことを特徴とする請求項11に記載の樹脂モールド部品の内部応力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88149(P2013−88149A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226185(P2011−226185)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)