説明

樹脂モールド

【課題】基材との密着性に優れ、転写材樹脂との離型性に優れ、繰り返しの使用に耐えうる樹脂モールドの提供。
【解決手段】第一面と該第一面と反対側に第二面を有すフィルム基材の該第一面上に微細凹凸構造を有すナノインプリント用の樹脂モールドであって、該樹脂モールドを構成する樹脂が光重合性化合物の硬化物から構成され、かつ、該光重合性化合物が、(メタ)アクリレート、フッ素化されたハイパーブランチポリマー、及び光重合開始剤を含むことを特徴とする前記樹脂モールド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細凹凸構造を有す樹脂モールドに関する。より詳細には、本発明は、フッ素化されたハイパーブランチポリマーを含有する樹脂モールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ・マイクロメートルサイズ領域において精密に加工制御された部材を用いることは、ナノ・マイクロメートルサイズ領域に制御対象を有する光学素子やバイオ材料等を開発する上で制御機能に大きく影響を与える。これらの素子や材料を開発する技術は、量産性の観点から、ナノメートルサイズでの加工精度を維持しつつ、再現性、均一性、スループット性も兼ね備えた精密加工技術であることが望まれる。
【0003】
公知の微細加工技術としては、例えば、電子線を使って直接微細加工する方法や、干渉露光で大面積に一括描画する方法などがある。最近では、半導体技術でのステッパー装置を応用したステップ・アンド・リピート法での微細パタン加工も知られている。しかしながら、いずれも複数の加工工程を必要とし、且つ高額な設備投資が必要であり、製作時間やコスト面で生産性の良い技術とは言い難い。また、ナノメートルサイズの大面積加工はいずれの方法をとっても行うことができない。
【0004】
これらの問題を解決する上で提案されている加工方法の一つとして、ナノインプリント法がある。微細パターン加工された部材を鋳型として用い、転写材に数nm〜数十nmの加工精度で簡単に転写し複製できる技術である。簡易な工程で安価に実施できるため、産業上、欠かせない精密複製加工技術として注目されている。転写材の物性や加工プロセスの違いから、熱ナノインプリント、光ナノインプリント、室温ナノインプリントやソフトリソグラフィー法等に区分されている。
【0005】
中でも、光硬化性樹脂を使用した光ナノインプリント法は、高い加工精度を維持したまま迅速に繰り返し転写できるロールツーロール法プロセスに応用し易く、加工精度とスループット性の点で魅力的とされる。プロセス上、転写材側から或いはモールド側からの露光を必須とするため、紫外・可視波長領域において高い光線透過率を有する材質を選択する必要がある。特に、モールド側の材質に関しては、主に石英やサファイア、ガラス製モールドに制限され、その剛性材質ゆえに連続製造技術や加工プロセスにおいて汎用性に欠けるという問題がある。
【0006】
以下の特許文献1には、これらの剛性モールドの代替として、透過性とフレキシブル性を具備した樹脂モールドが開示されている。しかしながら、特許文献1には、開示された熱可塑性の樹脂モールドの基材との密着性については記載されていない。
【0007】
一方、コスト面を考慮すると、上述した電子線描画等で作製された表面に微細凹凸構造を有すマスターから、できるだけ多くの樹脂モールド(A)を、又は樹脂モールド(A)からナノインプリント法により、該樹脂モールド(A)の微細凹凸構造を転写した樹脂モールド(B)を可能な限り多く得る技術が重要となる。しかしながら、特許文献1には、開示された熱可塑性の樹脂モールドの繰り返し転写耐久性については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−198883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記した従来技術の問題に鑑みて為されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、基材との密着性に優れ、転写材樹脂との離型性に優れ、かつ、繰り返しの使用に耐えうる、樹脂モールドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、フッ素化されたハイパーブランチポリマーの容易な表面偏析能を使用し、樹脂モールド中の表面微細凹凸構造付近のフッ素濃度を、樹脂モールドを構成する樹脂の平均フッ素濃度より高くにすることにより、樹脂表面の自由エネルギーが低下し、転写材樹脂との離型性に優れ、かつ、フッ素化されたハイパーブランチポリマーの低い樹脂浸透性からナノメートルサイズの凹凸形状を繰り返し樹脂モールドから樹脂へ容易に何度も転写できる離型性に優れる樹脂モールドを得ると同時に、一方で基材付近では自由エネルギーを高く保つことで、基材との接着性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
また、樹脂モールド(A)から樹脂へ転写することにより作製された樹脂モールド(B)からも、樹脂へと転写できることから、高価なマスタースタンパーのコストを吸収することができ、且つ使用するフッ素系成分を低く抑えることができるため、本発明の樹脂モールドは、環境面からも有用である。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]第一面と該第一面と反対側に第二面を有すフィルム基材の該第一面上に微細凹凸構造を有すナノインプリント用の樹脂モールドであって、該樹脂モールドを構成する樹脂が光重合性化合物の硬化物から構成され、かつ、該光重合性化合物が、(メタ)アクリレート、フッ素化されたハイパーブランチポリマー、及び光重合開始剤を含むことを特徴とする前記樹脂モールド。
【0012】
[2]前記樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)に対する前記樹脂モールドの微細凹凸構造表面部のフッ素元素濃度(Es)の比が、下記式(1):
1<Es/Eb≦30000 (1)
を満たす、前記[1]に記載の樹脂モールド。
【0013】
[3]水に対する接触角が110°以上である、前記[1]又は[2]に記載の樹脂モールド。
【0014】
[4]前記(メタ)アクリレート100質量部に対して、フッ素化されたハイパーブランチポリマーを0.05重量部〜30重量部、及び光重合開始剤を0.01重量部〜10重量部含有する、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂モールド。
【0015】
[5]前記光重合性化合物が、フッ素含有(メタ)アクリレートをさらに含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂モールド。
【0016】
[6]前記(メタ)アクリレート100質量部に対して、少なくともフッ素化されたハイパーブランチポリマーを0.05重量部〜30重量部、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.1重量部〜50重量部、及び光重合開始剤を0.05重量部〜30重量部含有する、前記[5]に記載の樹脂モールド。
【0017】
[7]前記フッ素化されたハイパーブランチポリマーが、光重合性基としてビニル基、アリル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基の内の少なくとも一つを含む、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂モールド。
【0018】
[8]前記微細凹凸構造の形状が、ピッチ10nm〜500μm、高さが10nm〜10μmである構造である、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂モールド。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基材との密着性に優れ、転写材樹脂との離型性に優れ、かつ、繰り返しの使用に耐えうる、樹脂モールドを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書中、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタアクリレートを意味する。
本発明は、第一面と該第一面と反対側に第二面を有すフィルム基材の該第一面上に微細凹凸構造を有すナノインプリント用の樹脂モールドであって、該樹脂モールドを構成する樹脂が光重合性化合物の硬化物から構成され、かつ、該光重合性化合物が、(メタ)アクリレート、フッ素化されたハイパーブランチポリマー、及び光重合開始剤を含むことを特徴とする前記樹脂モールドである。前記樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)に対する前記樹脂モールドの微細凹凸構造表面部のフッ素元素濃度(Es)の比は、好ましくは、下記式(1):
1<Es/Eb≦30000 (1)
を満たす。
【0021】
樹脂モールドを構成する光重合性化合物中にフッ素化されたハイパーブランチポリマーを添加することで、容易の表面微細凹凸構造付近のフッ素元素濃度を、樹脂モールドを構成する樹脂の平均フッ素濃度より高くすることが可能であり、これにより樹脂モールド表面の自由エネルギーが低下し、またフッ素化されたハイパーブランチポリマーの表面パッキングの効果により転写に使用する樹脂の浸透を抑制し、転写材樹脂との離型性に優れ、かつ、ナノメートルサイズの凹凸形状を繰り返し樹脂から樹脂へ容易に何度も転写できる離型性に優れる樹脂モールドを得ると同時に、一方で基材付近では自由エネルギーを高く保つことで、接着性が向上することができる。
【0022】
本明細書中、用語「樹脂モールドの微細凹凸構造の表面部」とは、樹脂モールドの厚みに対し該表面から略1〜10%該厚み方向に侵入した部分、又は該厚み方向に2nm〜20nm侵入した部分を意味する。樹脂モールドの表面部のフッ素元素濃度(Es)は、後述するXPS法により定量することができる。XPSのX線の侵入長は数nmと浅いため、Es値を定量する上で適している。他の解析手法として、硬化物の断面を透過型電子顕微鏡を使ったエネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX)にてEs/Eb比を算出することが挙げられる。
【0023】
さらに、樹脂モールドの微細凹凸構造表面部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)よりも高ければ、樹脂モールド表面は自由エネルギーの低さゆえに転写材樹脂との離型性により優れ、かつ、ナノメートルサイズの凹凸形状を繰り返し樹脂/樹脂転写できる離型性及び耐久性に優れる樹脂モールドを得ると同時に、一方で基材付近では自由エネルギーを高く保つことで、基材との接着性を向上することができる。
【0024】
本明細書中、用語「樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)」とは、仕込み量から計算されるか、又はガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)で測定される、樹脂モールドを構成する樹脂に含まれるフッ素元素濃度を意味する。例えば、フィルム上に形成された光重合性混合物の硬化物から構成される樹脂モールドの、物理的に剥離したサンプルを、ガスクロマトグラフ質量分析にかけることで、フッ素元素濃度を同定することができる。
【0025】
本発明においては、表面に微細凹凸構造を有する樹脂モールドであって、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)と樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)との比が、好ましくは、下記式(1):
1<Es/Eb≦30000 式(1)
を満たすことにより、上記効果を発揮することができる。
さらに、1<Es/Eb≦20000の範囲であれば、フッ素成分の使用量を低くするこができるため、好ましく、3≦Es/Eb≦10000の範囲がより好ましい。また、離型が向上するため、5≦Es/Eb≦10000の範囲であることがより好ましく、繰り返しの転写における再現性が向上するため10≦Es/Eb≦10000の範囲であることがさらに好ましい。更に、フッ素の使用量を低くしつつ表面に高いフッ素含有率層を形成できるため、10≦Es/Eb≦8000の範囲がより好ましく、樹脂モールドから樹脂へと転写する際の浸透を効果的に抑制するために、20≦Es/Eb≦8000の範囲であることがさらに好ましい。20≦Es/Eb≦1000であれば繰り返し転写時の樹脂モールドの表面劣化がより抑制されるためより好ましく、20≦Es/Eb≦500の範囲であれば、樹脂モールド表面に形成される高いフッ素含有率層の厚みが増加し、離型がより一層向上するためさらに好ましい。
【0026】
樹脂モールド表面に対する水の接触角が110°以上であれば樹脂モールドから樹脂へと転写する際の充填が容易に行われるため好ましく、130°以上であれば樹脂モールドから樹脂へと転写する際の離型が容易になるため、より好ましく、140°以上であれば樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の良好な再現性が得られるためさらに好ましい。
【0027】
樹脂モールドは、樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)を樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)よりも効果的に高くし、樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の良好な再現性を得る観点から、少なくとも(メタ)アクリレート、フッ素化されたハイパーブランチポリマー、光重合開始剤から、場合によりさらにフッ素含有(メタ)アクリレートから構成される光重合性化合物の硬化物から構成されることがより好ましい。
【0028】
フッ素化されたハイパーブランチポリマーは相溶性の観点から少なくとも光重合性基としてビニル基、アリル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基の内の少なくとも一つを含むことが好ましく、樹脂モールドの物理的安定性が向上するため、ビニル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基の内の少なくとも一つを含むことがより好ましく、樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の離型の向上と再現性の向上のため、アクリロイル基又はメタクリロイル基の内の少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。
【0029】
樹脂モールドの製造方法は特に限定されないが、樹脂を光重合又は熱重合により製造する方法が一般的である。また、樹脂モールドから光ナノインプリントによる転写による樹脂成型体を得、前記樹脂成型体を樹脂モールドと見立てて光ナノインプリントにより新たな樹脂成型体を得、得られた樹脂成型体を樹脂モールドとして使用することも可能である。以下、光重合により合成する場合と熱重合により合成する場合を、順次説明する。
【0030】
<光重合による合成>
光重合性化合物には、少なくとも(メタ)アクリレート、フッ素化されたハイパーブランチポリマー、及び光重合開始剤を用いることが好ましく、樹脂モールドから樹脂への繰り返し転写の際の再現性の向上や離型向上の観点から、(メタ)アクリレート、フッ素化されたハイパーブランチポリマー、フッ素含有(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤を用いることがより好ましい。(メタ)アクリレート、及びフッ素化されたハイパーブランチポリマーをともに混合することにより、容易に樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)を、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)より高くなるように調整することができ、また樹脂モールドから樹脂へと転写する際の樹脂の浸透を抑制できるため、離型が向上する。
また、(メタ)アクリレート、フッ素化されたハイパーブランチポリマー、及びフッ素含有(メタ)アクリレートを混合することで、より効果的に表面偏析が生じ、離型が向上し、且つ樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の樹脂モールドの耐久性が向上する。
【0031】
以下、各成分について説明する。
(A)(メタ)アクリレート
(メタ)アクリレートとしては、後述する(B)フッ素化されたハイパーブランチポリマー、及び(C)フッ素含有(メタ)アクリレート以外の重合性モノマーであれば制限はないが、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマーが好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマーがより好ましい。
【0032】
また、重合性モノマーとしては、重合性基を複数具備した多官能性モノマーであることが好ましく、重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましい。また、2種類以上の重合性モノマーを混合して用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。単一モノマーを使用する場合は、重合反応後の架橋点を増やし、硬化物の物理的安定性(強度、耐熱性等)を得るため、重合性基の数が3以上のモノマーであることが好ましい。また、重合性基の数が1又は2であるモノマーの場合、重合性数の異なるモノマーと併用して使用することが好ましい。
【0033】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、下記の化合物が挙げられる:アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、芳香族系の(メタ)アクリレート[フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等。];炭化水素系の(メタ)アクリレート[ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等。];エーテル性酸素原子を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート[エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等。];官能基を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート等。];シリコーン系のアクリレート等。
【0034】
(メタ)アクリレートモノマーの他の例としては、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
アリル基を有するモノマーとしては、p−イソプロペニルフェノール、ビニル基を有するモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール等が挙げられる。尚、EO変性とは、エチレンオキシド変性を、ECH変性とは、エピクロロヒドリン変性を、PO変性とは、プロピレンオキシド変性を意味する。
【0036】
(B)フッ素化されたハイパーブランチポリマー
ハイパーブランチポリマーはポリマー分子鎖中に多くの分岐構造を含むデンドリティック高分子、デンドリティックポリマー、多分岐高分子、多分岐ポリマー、樹枝状高分子、樹枝状ポリマー等のことであり、一般的に、AB2、AB3のように一分子中に官能基Aを1つ有し且つ官能基Aと反応しうる官能基Bを2つ以上有するABx型化合物や、AB*型と呼ばれる重合点と開始剤それぞれ1つずつ兼ね備えた化合物とを縮合、付加、又は挿入反応などを利用して重合したものを指し、高度に分岐した高分子である。AB*型分子は、重合点にあたる官能基Aと開始剤となる官能基B*とが反応し、反応後に官能基Aは消失するがB*は脱離、付加により反応後でもB*としての反応性を残したままとなる化合物である。
【0037】
例えば、具体的にAB2型の場合、官能基Aがカルボキシル基の場合には官能基Bはアミノ基があげられ、この場合はハイパーブランチポリアミドとなる。また、AB*型の場合、官能基Aがスチレン性二重結合の場合には官能基B*はジチオカーバメート基があげられ、その場合はハイパーブランチポリスチレンとなる。
本発明に係るフッ素化されたハイパーブランチポリマーは、ハイパーブランチポリマー構造中にフッ素化された基を持っていれば、すなわちフッ素元素が存在すれば、特に限定されるものではないが、フッ素化されたハイパーブランチポリマーに対するフッ素元素濃度は、樹脂モールドの表面フッ素元素濃度を樹脂モールドを構成する樹脂の平均フッ素元素濃度よりも効果的に高くするために、0atm.%超80atm.%以下であることが好ましく、相溶性の観点から、20atm.%以上50atm.%以下であることがより好ましく、樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の樹脂の浸透抑制、樹脂モールドの耐久性や離型向上の観点から25atm.%以上40atm.%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
ハイパーブランチポリマーの構造として、例えば、多分岐ポリ尿素、多分岐ポリアミド、多分岐ポリウレタン、多分岐ポリエステル、多分岐ポリアミドアミン、多分岐ポリカーボネート、多分岐ポリエーテル、多分岐ポリ(エーテルケトン)、多分岐ポリカルボシラン、多分岐ポリカルボシロキサン、多分岐ポリカルボシラゼン、多分岐ポリ(プロピレンイミン)、多分岐ポリアルキルアミン、これらのコポリマー等が挙げられる。また、岡田鉦彦編著;「デンドリマーの科学と機能」(2000年、アイピーシー発行)p.79−116に記載されているポリフェニレン構造、ポリエステル構造、ポリカーボネート構造、ポリエーテル構造、ポリチオエーテル構造、ポリエーテルケトン構造、ポリエーテルスルホン構造、ポリアミド構造、ポリエーテルアミド構造、ポリアミドアミン構造、ポリウレタン構造、ポリウレア構造、ポリシロキシシラン構造、ポリカルボシラン構造、ポリエチニレン構造、ポリフェニレンビニレン構造、ポリアニリン構造、ポリアクリレート構造、ポリメタクリレート構造、ポリスチレン構造、ポリアミン構造等が挙げられる。更に、ハイパーブランチポリマーの構造としては、D.A.Tomalia、etal.,“Angew. Chem. Int. Ed. Engl.”,29巻138頁(1990年);Roovers,J.,“Advances in Polymer Science”,143巻1頁(Springer,New York刊)(1999年);J.C.Salamone,Ed.,“Polymeric Materials Encyclopedia,”5巻3049頁(CRC Press,New York刊(1996年);柿本雅明、「高分子」、47巻804頁(1998年)、前記の成書記載の引用文献等に記載の構造も挙げられる。
【0039】
本発明に係るフッ素化されたハイパーブランチポリマーは、上記のハイパーブランチポリマーの分岐枝末端の少なくとも一部にフッ素元素が存在するものであり、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含有するものが好ましい。直鎖状ペルフルオロアルキレン基、または炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され且つトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖または分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
【0040】
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、(CFCFCFO)単位および(CFO)単位からなる群から選ばれた少なくとも1種類以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位から構成されることが好ましく、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、又は(CFCFCFO)単位から構成されることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CFCFO)単位から構成されることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
【0041】
フッ素化されたハイパーブランチポリマーに対するフッ素元素濃度は、樹脂モールドの表面フッ素元素濃度を樹脂モールドを構成する樹脂の平均フッ素元素濃度よりも効果的に高くするために、0atm.%超80atm.%以下であることが好ましく、相溶性の観点から、20atm.%以上50atm.%以下であることがより好ましく、樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の樹脂の浸透抑制、樹脂モールドの耐久性や離型向上の観点から25atm.%以上40atm.%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
さらに、フッ素化されたハイパーブランチポリマーの分岐枝末端の少なくとも一部に、光又は熱により架橋反応に関与しうる重合性基を少なくとも一種類含有することが、樹脂モールドの物理的耐久性の観点からより好ましい。光重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ビニル基、エポキシ基、アリル基、オキセタニル基等が挙げられる。相溶性の観点からアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ビニル基が好ましく、樹脂モールドの物理的安定性の観点からアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ビニル基がより好ましく、繰り返し転写に伴う樹脂モールドの離型向上の観点からアクリロキシ基、メタクリロキシ基がさらに好ましい。また、エポキシ基やオキセタニル基に代表されるカチオン重合性基を有していてもよい。更に、熱重合性基としてアルコキシシリル基やアシルオキシシリル基に代表される加水分解性シリル基を有していてもよい。
【0043】
フッ素化されたハイパーブランチポリマーは相溶性の観点から少なくとも光重合性基としてビニル基、アリル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基の内の少なくとも一つを含むことが好ましく、樹脂モールドの物理的安定性が向上するため、ビニル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基の内の少なくとも一つを含むことがより好ましく、樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の離型の向上と再現性の向上のため、アクリロイル基又はメタクリロイル基の少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。
重合性基は同一でも異なってもよく、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、及び加水分解性シリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性基を含有してもよい。
【0044】
本発明に係るハイパーブランチポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが、相溶性の観点から500以上5,500,000以下であることが好ましく、樹脂モールドの物理的安定性の観点から、1,000以上1,500,000以下であることがより好ましく、フッ素化されたハイパーブランチポリマーの効果的な表面偏析性の観点から、1,500以上650,000以下であることがさらに好ましい。相溶性を向上させる為に、希釈溶剤を使用してもよい。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。溶剤含量は、少なくとも硬化性樹脂組成物中で分散する量であればよく、硬化性組成物100重量部に対して0重量部超〜50重量部が好ましく、乾燥後の残存溶剤量を限りなく除去することを配慮すると、0重量部超〜10重量部がより好ましい。
【0045】
(C)フッ素含有(メタ)アクリレート
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フッ素元素を分子中に含有する(メタ)アクリレートであれば特に限定されないが、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され且つトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
【0046】
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、(CFCFCFO)単位、及び(CFO)単位からなる群から選ばれた少なくとも1種類以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位から構成されることが好ましく、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、又は(CFCFCFO)単位から構成されることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CFCFO)単位から構成されることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
【0047】
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基又はイソシアネート基が好ましく、ビニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基がより好ましい。さらに好ましくは、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0048】
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
フッ素含有(メタ)アクリレートは、官能基を有すると透明基板との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基等が挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも一つの官能基を含むことが好ましい。尚、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも一つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。
【0049】
フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる:CH=CHCOO(CH(CF10F、CH=CHCOO(CH(CFF、CH=CHCOO(CH(CFF、CH=C(CH)COO(CH(CF10F、CH=C(CH)COO(CH(CFF、CH=C(CH)COO(CH(CFF、CH=CHCOOCH(CFF、CH=C(CH)COOCH(CFF、CH=CHCOOCH(CFF、CH=C(CH)COOCH(CFF、CH=CHCOOCHCFCFH、CH=CHCOOCH(CFCFH、CH=CHCOOCH(CFCFH、CH=C(CH)COOCH(CFCF)H、CH=C(CH)COOCH(CFCFH、CH=C(CH)COOCH(CFCFH、CH=CHCOOCHCFOCFCFOCF、CH=CHCOOCHCFO(CFCFO)CF、CH=C(CH)COOCHCFOCFCFOCF、CH=C(CH)COOCHCFO(CFCFO)CF、CH=CHCOOCHCF(CF)OCFCF(CF)O(CFF、CH=CHCOOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFF、CH=C(CH)COOCHCF(CF)OCFCF(CF)O(CFF、CH=C(CH)COOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFF、CH=CFCOOCHCH(OH)CH(CFCF(CF、CH=CFCOOCHCH(CHOH)CH(CFCF(CF、CH=CFCOOCHCH(OH)CH(CF10F、CH=CFCOOCHCH(OH)CH(CF10F、CH=CHCOOCHCH(CFCFCHCHOCOCH=CH、CH=C(CH)COOCHCH(CFCFCHCHOCOC(CH)=CH、CH=CHCOOCHCyFCHOCOCH=CH、CH=C(CH)COOCHCyFCHOCOC(CH)=CH等のフルオロ(メタ)アクリレート(但し、CyFは、ペルフ
ルオロ(1,4−シクロへキシレン基)を示す。)、CF=CFCFCF=CF、CF=CFOCFCF=CF、CF=CFOCFCFCF=CF、CF=CFOCF(CF)CFCF=CF、CF=CFOCFCF(CF)CF=CF、CF=CFOCFOCF=CF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCF=CF、CF=CFCFC(OH)(CF)CHCH=CH、CF=CFCFC(OH)(CF)CH=CH、CF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH、CF=CFCHC(C(CFOH)(CF)CHCH=CH等のフルオロジエン。
【0050】
フッ素含有(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性等の表面改質剤との併用もできる。例えば、ネオス社製「フタージェント」(例えば、Mシリーズ:フタージェント251、フタージェント215M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、フタージェント245F;Gシリーズ:フタージェント208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント730FM、フタージェント730LM;フタージェントPシリーズ;フタージェント710FL;FTX−710HL、等)、DIC社製「メガファック」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SF、等)、ダイキン社製「オプツール(登録商標)」(例えば、DSX、DAC、AES、例えばOPTOOL DAC HP)、「エフトーン(登録商標)」(例えば、AT−100)、「ゼッフル(登録商標)」(例えば、GH−701)、「ユニダイン(登録商標)」、「ダイフリー(登録商標)」、「オプトエース(登録商標)」、住友スリーエム社製「ノベックEGC−1720」、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ」等が挙げられる。
【0051】
フッ素含有(メタ)アクリレートは、分子量Mが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から分子量Mが50〜5000であることが好ましく、分子量Mが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量を使用する際は希釈溶剤を使用してもよい。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。溶剤含量は、少なくとも硬化性樹脂組成物中で分散する量であればよく、硬化性組成物100重量部に対して0重量部超〜50重量部が好ましく、乾燥後の残存溶剤量を限りなく除去することを配慮すると、0重量部超〜10重量部がより好ましい。
【0052】
(D)光重合開始剤
光重合開始剤は、光によりラジカル反応又はイオン反応を引き起こすものであり、ラジカル反応を引き起こす光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、下記の光重合開始剤が挙げられる:
アセトフェノン系の光重合開始剤:アセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等;
ベンゾイン系の光重合開始剤:ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1 オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等;
ベンゾフェノン系の光重合開始剤:ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ペルフルオロベンゾフェノン等;
チオキサントン系の光重合開始剤:チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等;
アントラキノン系の光重合開始剤:2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン;
ケタール系の光重合開始剤:アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール;
その他の光重合開始剤:α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等;
フッ素原子を有する光重合開始剤:ペルフルオロtert−ブチルペルオキシド、ペルフルオロベンゾイルペルオキシド等。
これらの公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
光重合性化合物は、光増感剤を含んでいてもよい。光増感剤の具体例としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジスイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類のような公知慣用の光増感剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
市販されている開始剤の例としては、Ciba社製の「IRGACURE」(例えば、IRGACURE651、184、500、2959、127、754、907、369、379、379EG、819、1800、784、OXE01、OXE02)や「DAROCUR」(例えば、DAROCUR1173、MBF、TPO、4265)等が挙げられる。
光重合開始剤は、1種のみを単独で用いても、2種類以上を併用し用いてもよい。2種類以上併用する場合は、フッ素含有(メタ)アクリレートの分散性と、光重合性混合物の微細凹凸構造表面部及び内部の硬化性の観点から、選択するとよい。例えば、αヒドロキシケトン系光重合開始剤とαアミノケトン系光重合開始剤を併用することが挙げられる。また、2種類併用する場合の組み合わせとしては、例えば、Ciba社製の「Irgacure」同士、「Irgacure」と「Darocure」の組み合わせとして、Darocure1173とIrgacure819、Irgacure379とIrgacure127、Irgacure819とIrgacure127、Irgacure250とIrgacure127、Irgacure184とIrgacure369、Irgacure184とIrgacure379EG、Irgacure184とIrgacure907、Irgacure127とIrgacure379EG、Irgacure819とIrgacure184、DarocureTPOとIrgacure184などが挙げられる。
光重合性化合物は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素化されたハイパーブランチポリマーを0.05重量部〜30重量部、光重合開始剤を0.01重量部〜10重量部含有する混合物である。
【0055】
(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素化されたハイパーブランチポリマーが0.01重量部以上であれば、離型性に優れ、30重量部以下であれば基材への密着性に優れ、特に0.1重量部〜25重量部であればフッ素化されたハイパーブランチポリマーの低い樹脂浸透性に伴い樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の離型に優れる。より好ましくは、1重量部〜15重量部である。また、光重合開始剤は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、0.01重量部以上であれば重合性に優れ、10重量部以下であれば、硬化後の硬化後の未反応開始剤や分解物の樹脂表面へブリードアウトを低減でき、0.5重量部〜5重量部であれば、硬化後の樹脂透過率に優れる。
【0056】
また、前記光重合性化合物にフッ素含有(メタ)アクリレートを添加し、(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素化されたハイパーブランチポリマーを0.05重量部〜30重量部、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.1重量部〜50重量部、光重合開始剤を0.05重量部〜30重量部含有する光重合性化合物としてもよい。
【0057】
(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素化されたハイパーブランチポリマーが0.01重量部以上であれば、離型性に優れ、30重量部以下であれば基材への密着性に優れ、0.1重量部〜25重量部であればフッ素化されたハイパーブランチポリマーの低い樹脂浸透性に伴い樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の離型に優れる。さらに好ましくは、1重量部〜15重量部である。また、フッ素含有(メタ)アクリレートが0.1重量部以上であれば離型性に優れ、50重量部以下であれば基材への密着性に優れ、0.5重量部〜20重量部であればフッ素含有(メタ)アクリレートの相溶性及び表面偏析性に優れる。さらに好ましくは1重量部〜20重量部である。光重合開始剤は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、0.01重量部以上であれば重合性に優れ、10重量部以下であれば、硬化後の硬化後の未反応開始剤や分解物の樹脂表面へブリードアウトを低減でき、さらに0.5重量部〜5重量部であれば、硬化後の樹脂透過率に優れる。
【0058】
(E)樹脂モールド
以下、樹脂モールドをFと表記する。パタン形状またはパタン形状の反転形状について説明する箇所では、凸凹や凹凸パタンと表記し、その中でも凸凹パタン形状を具備した本発明に係る樹脂モールドに関してはF(+)と表記し、F(+)から転写した凹凸パタン形状を具備した該樹脂モールドに関してはF(−)と表記する。
【0059】
本発明においては、光重合性化合物(以下、硬化性樹脂組成物という)の硬化物を用いることにより、樹脂モールドを成形することができる。樹脂モールドとは、微細パタン形状を、表面に微細凹凸構造を具備したマスターモールドから硬化性樹脂組成物を転写剤として光ナノインプリント転写して得た、第一面と、前記第一面と反対側に位置する第二面とを有すフィルム基材の第一面上に微細凹凸構造を具備した樹脂成形体である。また、本発明においては、樹脂モールドを、樹脂成形体を使って、本発明に係る硬化性樹脂組成物だけなく、公知感光性樹脂組成物への光ナノインプリント転写を容易に繰り返し転写できる、樹脂製鋳型と規定する。ここでの「繰り返し転写」とは次の2つの意味((1)、(2))のうち少なくとも1つを含む。(1)凸凹パタン形状を具備したF(+)樹脂モールドから、転写した凹凸パタン転写物を複数製造できることを意味する。(2)特に硬化性樹脂組成物を転写剤として用いた場合、樹脂モールドF(+)から反転したF(−)樹脂モールドを得て、次にF(−)樹脂モールドを鋳型として、反転転写したF(+)樹脂モールドを得る、凸凹/凹凸/凸凹/凹凸/・・・/を繰り返しパタン反転転写ができることを意味する。
【0060】
(接触角)
樹脂モールドに対する、水接触角が110°以上であれば樹脂モールドから樹脂へと転写する際の充填が容易に行われるため好ましく、130°以上であれば樹脂モールドから樹脂へと転写する際の離型が容易になる為より好ましく、140°以上であれば樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の良好な再現性が得られるためなお好ましい。
なお、水に対する接触角は、静滴法により、JIS R3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、基材上の測定表面の3ケ所に水滴を載せ、各水滴について測定した。液滴は2μL/滴であり、測定は20℃で行った。接触角は、3測定値の平均値(n=3)を用いる。
【0061】
(微細凹凸パタン形状)
樹脂モールドの表面は、マスターモールドの形状を転写して得られた構造であり、微細凹凸構造を具備している。光学部材やバイオ部材、マイクロ・ナノ流路部材、熱部材等に適した構造が好ましく、格子状、ピラーやホール構造、ライン・アンド・スペース構造等がより好ましく、これらの構造が複数含まれていてもよい。また、これらの断面凹凸形状が、長方形、正方形、台形、菱形、六角形、三角形、円形、曲率を有する形状等であってもよい。また、パタン配列は、ランダム配列した形状、周期的に配列したパタン形状のどちらでもよい。特に、パタンが周期的に配列した形状の場合、その周期ピッチサイズが10nm〜500μmであることが好ましく、30nm〜100μmピッチであることがより好ましく、50nm〜10μmピッチであることがさらに好ましい。凹凸パタン高さは、10nm〜10μmであることが好ましく30nm〜5μmであることがより好ましい。さらに、凸部又は凹部断面形状のアスペクト比が0.5〜10であることが好ましく、アスペクト比が1〜5であることがより好ましい。ここでのアスペクト比とは、凸部又は凹部断面形状の高さ(a)をb/2の高さ位置での半値幅(b)で割った値(a/b)と規定する。
【0062】
鋳型とする被転写材(マスターモールドや樹脂モールド)の凸部断面積(S凸部)に対して、その反転した転写成形体(汎用性感光性樹脂や本発明に係る光重合性化合物)の凹部断面積(S凹部)が断面積比率(S凹/S凸×100)にして80%以上の転写精度で転写できる鋳型又は転写材であることが好ましい。特に、樹脂モールドを鋳型としたときに、転写精度が80%以上であることがより好ましい。さらに、凹凸/凸凹/凹凸/凸凹・・・と繰り返し反転転写で高い転写精度を保持するためには、一回の転写精度が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0063】
(マスターモールド)
マスターモールドは、表面に微細凹凸パタンを具備し、材質としては、石英ガラス、紫外線透過ガラス、サファイヤ、ダイヤモンド、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン材、フッ素樹脂、シリコンウエハ、SiC基板、マイカ基板等が挙げられる。パタン転写時の離型性をより向上させるために、離型処理を行ってもよい。離型処理剤としては、シランカップリング系離型剤が好ましく、フッ素含有離型剤であることがより好ましい。市販されている離型剤の例としては、ダイキン工業社製のオプツールDSX、デュラサーフHD1101やHD2101、住友スリーエム社製のノベック等が挙げられる。
【0064】
(F)樹脂モールドの製造方法
下記工程11〜14を順に行うことで、本発明に係る硬化性樹脂組成物を転写剤として使って、マスターモールドから樹脂モールドを作製することができる。
工程11:基板の上に硬化性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程12:上記工程11において硬化性樹脂組成物をマスターモールドに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程13:上記工程12において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程14:硬化物をマスターモールドから剥離し、マスターモールドのパタン形状の反転形状を具備した樹脂モールド(F)を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0065】
下記工程21〜28を順に行うことにより、マスターモールドの凹凸パタン形状と同形状の凹凸パタン形状を具備した樹脂モールド(F)を製造できる。
工程21:基板の上に硬化性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程22:上記工程21において硬化性樹脂組成物をマスターモールドに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程23:上記工程22において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程24:上記工程23において硬化物をマスターモールドから剥離し、マスターモールド形状の反転形状を具備した樹脂モールド(F(+))を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
工程25:基板の上に硬化性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程26:上記工程25において硬化性樹脂組成物を樹脂モールド(F(+))に押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程27:上記工程26において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程28:上記工程27において硬化物を樹脂モールド(F(+))から剥離し、マスターモールドのパタン形状と同じパタン形状を具備した樹脂モールド(F(−))を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0066】
下記工程31〜34を順に行うことにより、公知慣用の感光性樹脂組成物を転写剤として使って、樹脂モールドから、上記反転形状を具備した樹脂転写物を製造できる。
工程31:基板の上に公知慣用の感光性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程32:上記工程31において感光性樹脂組成物を樹脂モールドに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程33:上記工程32において感光性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程34:上記工程33において該硬化物を樹脂モールドから剥離し、樹脂モールド(F)のパタン形状と反転形状を具備した転写物を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0067】
下記工程41〜47を順に行うことにより、樹脂成形体をロール状に加工した樹脂製ロールスタンパを製造できる。
工程41:基板の上に硬化性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程42:上記工程41において硬化性樹脂組成物をマスターモールドに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程43:上記工程42において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程44:上記工程43において硬化物をマスターモールドから剥離し、マスターモールド形状の反転形状を具備した樹脂モールド(F(+))を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
工程45:上記工程44において作製した樹脂モールド(F(+))とロール基材との間に硬化性樹脂組成物を挟持させる工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程46:上記工程45において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程47:上記工程47において硬化物を樹脂モールド(F(+))から剥離し、マスターモールドのパタン形状と同じパタン形状を具備した樹脂製ロールスタンパ(F(−))を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0068】
下記工程51〜54を順に行うことにより、上記工程41〜47の順で作製した樹脂製ロールスタンパ成形体を使って、感光性樹脂組成物を転写剤としたロールツーロール式の連続転写ができる。特に、本発明に係る硬化性樹脂組成物を転写剤として使った場合、連続転写された転写品は樹脂連続成形体として使用できる。
工程51:基板の上に感光性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程52:上記工程51において感光性樹脂組成物を樹脂製ロールスタンパに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程53:上記工程52において感光性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程54:上記工程53において該硬化物を樹脂モールド(F)から剥離し、樹脂モールド(F)のパタン形状と反転形状を具備した転写物を連続的に製造できる工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0069】
下記工程61〜64を順に行うことにより、上記工程51〜54の順に作製した樹脂製連続成形体を使用して、パタン形状を連続体から連続体へ連続転写ができる。
工程61:基板の上に感光性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程62:上記工程61において感光性樹脂組成物を樹脂連続成形体(F)に押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程63:上記工程62において感光性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程64:上記工程63において該硬化物を樹脂モールド(F)連続成形体から剥離し、樹脂モールド(F)のパタン形状の反転形状を具備した転写物を連続的に製造できる工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0070】
以下、前記した各工程を詳細に説明する。
(樹脂組成物を基材に塗工する工程)
樹脂組成物を基板上に塗布する方法として、流延法、ポッティング法、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、キャスト法、ディップコート法、ダイコート法、ラングミュアプロジェット法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、フローコート法、カーテンコート法、等が挙げられる。硬化性樹脂組成物の塗工厚は、50nm〜5mmが好ましく、80nm〜200μmがより好ましく、100nm〜100μmがさらに好ましい。
【0071】
基板がマスターモールド又は樹脂モールドよりも大きい場合、樹脂組成物を基板全面に塗布してもよいし、マスターモールド又は樹脂モールドを型押しする範囲にのみに樹脂組成物が存在するように樹脂組成物を基板の一部に塗布してもよい。
【0072】
基板に樹脂組成物を塗工後、プリベイクすることで、溶剤を含む場合は溶剤の留去や、内添したフッ素化されたハイパーブランチポリマー或いは/且つ含フッ素重合性(メタ)アクリレートの表面移行を促進させることができる。内添したフッ素化されたハイパーブランチポリマー及びは/又は含フッ素重合性(メタ)アクリレートを表面に偏析させることで、マスターモールド又は樹脂モールドを押圧する際に、フッ素化されたハイパーブランチポリマー及び/又は含フッ素重合性(メタ)アクリレートがマスターモールド又は樹脂モールドの微細構造内部に効率的に充填され、マスターモールド又は樹脂モールドの劣化を抑制するのみならず、得られる樹脂モールドの表面フッ素元素濃度(Es)をバルクのフッ素元素濃度(Eb)で除した値Es/Ebを大きく向上させ、離型性を向上させることができる。温度は、20℃〜120℃が好ましく、25℃〜100℃がより好ましく、30℃〜100℃がさらに好ましく、50℃〜100℃が最も好ましい。プリベイク時間は30秒〜30分が好ましく、1分〜15分がより好ましく、2分〜10分がさらに好ましい。
【0073】
基板の材質に関しては特に制限はなく、ガラス、セラミック、金属等の無機材料、プラスチック等の有機材料を問わず使用できる。成形体の用途に応じて、板、曲率を有する表面、シート、フィルム、薄膜、織物、不織布、その他任意の形状やこれらを複合化したものを使用できるが、屈曲性を有し連続生産性に優れたシート、フィルム、薄膜、織物、不織布等を含むことが特に好ましい。屈曲性を有する材質としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラスなどの無機基板、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂とを組み合わせたり、または単独で用いて基材を構成させることもできる。
【0074】
基板と樹脂組成物との接着性を向上させる処理を施すことが好ましい。例えば基材の接着させる面に、樹脂組成物との化学結合や、浸透などの物理的結合のための易接着コーティング、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理、高エネルギー線照射処理、表面粗化処理、多孔質化処理などを施すことが好ましい。
【0075】
(樹脂組成物を基材に押圧する工程)
気泡が入らないように柔軟性の高い基板を端から静かに鋳型(マスターモールドや樹脂モールドや樹脂製ロールスタンパなど)上に被膜し、一定圧力下にて押圧することが好ましい。押圧する際のプレス圧力は、0MPa超〜10MPaが好ましく、0.01MPa〜5MPaがより好ましく、0.01MPa〜1MPaがさらに好ましい。
【0076】
(樹脂を光硬化させる工程)
マスターモールドの光透過性が低い場合、基板側から露光することが好ましい。一方、マスターモールドが紫外波長の光に対する透過率が高い場合、例えば、合成石英材質の場合は、基材側又はマスターモールド側の少なくとも一側面から露光することが好ましく、基材側とマスターモールド側の両面から露光するとより好ましい。樹脂モールドを使用した場合、基板側又は樹脂モールド(F)側の少なくとも一側面から露光することが好ましく、基板側と樹脂モールド(F)側の両面から露光するとより好ましい。基板を使用せず、硬化性樹脂組成物のみをマスターモールドに塗布して硬化させてもよい。その場合は、酸素による重合阻害を防ぐため、窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下での露光する方法、接着性の低い基板で被覆し、硬化後、基板と樹脂モールドを剥がしとる方法等で硬化物を製造できる。
【0077】
使用する露光光源としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、UV−LEDが好ましい。長時間露光時の発熱を抑える観点から、可視波長以上の波長をカットするフィルター(バンドパスフィルターを含む)を利用することが好ましい。積算光量としては、波長365nmで300mJ/cm以上が好ましく、反応率の高い硬化物(E)を得る目的で、800mJ/cm以上が好ましく、800mJ/cm〜6000mJ/cmがより好ましく、光による樹脂劣化性を防ぐため、800mJ/cm〜3000mJ/cmが特に好ましい。
【0078】
硬化物の厚さに依存せず、350nm〜450nmにおける全光線透過率が50%以上であることが好ましく、効率的な光反応を行う上で、70%以上であることがより好ましい。硬化物の厚さが0nm超〜50μmのとき、350nm〜450nmにおける全光線透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0079】
(硬化物を鋳型から剥離する工程)
マスターモールドに柔軟性がある場合、モールド面側又は基材面側の少なくとも一方から一定速度で剥離することが好ましい。剥離方法としては、線剥離が好ましい。例えば、マスターモールドの剛性が高い材質の場合、特に無機材質の場合、マスターモールド側から剥離すると部分的に面剥離による剥離面積が高くなり、硬化物の破損が懸念される。したがって、柔軟性のある基板側から剥がすことが好ましい。剥離速度は、特定方向から一定速度で0m/min超〜5m/minの速度で線剥離することが、硬化物の破損リスクを低減できる点で好ましい。
【0080】
また、硬化後〜剥離前の間に加熱処理を施すことが好ましい。この過程で加熱処理を施すことにより、未反応基を減少させるのみならず、樹脂モールド表面のフッ素元素を含む基の並びを均質に出来、離型が容易になる。また、加熱環境で安定な状態を取るため、得られた樹脂モールドを鋳型として使用する場合の、鋳型の耐久性が向上する。温度は、50℃〜120℃が好ましく、50℃〜100℃がより好ましく、60℃〜100℃がさらに好ましい。加熱時間は30秒〜30分が好ましく、1分〜15分がより好ましく、2分〜10分がさらに好ましい。
【0081】
一方で、剥離後に加熱処理を行ってもよい。剥離後に加熱処理を行うことで、溶剤が存在する場合はその除去や、加熱温度で安定な状態をとることができるため、樹脂モールドから樹脂へと繰り返し転写する際の樹脂の浸透を抑制し、離型を向上することができる。温度は、50℃〜120℃が好ましく、50℃〜100℃がより好ましく、60℃〜100℃がさらに好ましい。加熱時間は30秒〜30分が好ましく、1分〜15分がより好ましく、2分〜10分がさらに好ましい。
【0082】
<熱重合による合成>
表面に微細パタンを有する熱可塑性樹脂は、マスターモールドを熱可塑性樹脂に熱圧着させてマスターモールドの微細パタンを熱可塑性樹脂に形成する工程、及びマスターモールドを熱可塑性樹脂から離脱させる工程を具備する方法で製造される。表面に微細パタンを有する熱可塑性樹脂は、熱圧着させる方法以外に、キャスト法で塗布してから熱硬化させる方法でも作製することができる。
【0083】
熱圧着させる場合、熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱したモールドを転写層に圧着させて行うか、転写層を熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱してからモールドに圧着させて行うのが好ましい。熱圧着における温度は、より好ましくは(熱可塑性樹脂の軟化温度)〜(熱可塑性樹脂の軟化温度+60℃)であり、特に好ましくは(熱可塑性樹脂の軟化温度+5℃)〜(熱可塑性樹脂の軟化温度+40℃)である。この範囲においてモールドの微細パタンを転写層に効率的に形成できる。また、熱圧着の圧力は、0.5MPa〜200MPa(絶対圧)が好ましく、0.5MPa〜10MPa(絶対圧)がより好ましく0.5MP〜5MPaがさらに好ましい。
【0084】
モールドを離脱させる場合、転写層を熱可塑性樹脂の軟化温度以下に冷却してから行うのが好ましい。より好ましくは、(熱可塑性樹脂の軟化温度−10℃)〜(熱可塑性樹脂の軟化温度−50℃)である。この範囲において、転写層に形成された微細パタンの形状をより保持できる。但し、熱可塑性樹脂の軟化温度とは、熱可塑性樹脂が非結晶性である場合はガラス転移温度を意味し、熱可塑性樹脂が結晶性である場合は融解温度を意味する。
【0085】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン系重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、ポリフルオロ(メタ)アクリレート系重合体、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン/エチレン系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/炭化水素系アルケニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等が挙げられる。
【0086】
熱重合により合成する場合、上述のフッ素化されたハイパーブランチポリマーは(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素化されたハイパーブランチポリマーを1重量部〜30重量部含有する熱重合性混合物として用いる。また、フッ素含有(メタ)アクリレートは(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素含有(メタ)アクリレートを1重量部〜30重量部含有する熱重合性混合物として用いる。
【0087】
G)用途
本発明に係る樹脂モールドは、ナノインプリント用途において様々に用いられ、具体的には、マイクロレンズアレーやワイヤグリッド型偏光、モスアイ型無反射膜や回折格子、フォトニック結晶素子などの光デバイスや、パターンドメディアなどのナノインプリント用途として製造する際に用いられる。他にも、再生医療用スキャホールド、バイオセンサー電極などのバイオデバイスへの製造に用いることができる。その他にも、各種電池やキャパシタの電極や、マイクロ・ナノ流路、放熱面、断熱面などへと応用できる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
以下の測定方法を用いて樹脂モールドの物性を測定した。
[残膜厚測定]
樹脂モールドを使用しナノインプリント法により転写された微細凹凸構造の残膜厚は走査型電子顕微鏡(以下、SEM)観察より測定した。まず、試料を適当な大きさに切り出した後に、常温割断し、試料台に積載した。次に、観察面にOsを2nm程度コーティングし、検鏡用試料とした。使用装置及び検鏡条件を以下に示す:
装置;HITACHI s−5500
加速電圧;10kV
MODE;Normal
【0089】
[フッ素元素濃度測定]
樹脂モールドの表面フッ素元素濃度はX線光電子分光法(以下、XPS)にて測定した。樹脂モールドを約2mm四方の小片として切り出し、1mm×2mmのスロット型のマスクを被せて下記条件でXPS測定に供した。
XPS測定条件
使用機器 ;サーモフィッシャーESCALAB250
励起源 ;mono.AlKα 15kV×10mA
分析サイズ;約1mm(形状は楕円)
取込領域
Survey scan;0〜1, 100eV
Narrow scan;F 1s,C 1s,O 1s,N 1s
Pass energy
Survey scan; 100eV
Narrow scan; 20eV
【0090】
以下、代表的な樹脂モールドの作製方法と物性について説明する。
[実施例1]樹脂モールドの製造方法1
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが130nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の円筒状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。フッ素化ハイパーブランチポリマーであるFA−200(日産化学工業株式会社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure 184(Ciba社製)、Irgacure 369(Ciba社製)を重量部で5:100:5.5:2.0の割合で混合した。続いて、混合液をマイクログラビアを用いPETフィルムへと塗工した。続いて、PETフィルムに対する60℃の乾燥工程を経て、上記ニッケル製金型の微細凹凸構造面と張り合わせた。UV露光後、金型とPETフィルムを剥離し樹脂連続成型体を経た。
上記樹脂モールドをXPSにて測定したところ、表面のフッ素元素濃度Esと樹脂中の平均フッ素元素濃度Ebとの比Es/Ebは80であった。また、水接触角は150°であった。
【0091】
[実施例2]樹脂モールドの製造方法2
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが130nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の平板状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。フッ素化ハイパーブランチポリマーであるFA−200(日産化学工業株式会社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure 184(Ciba社製)、Irgacure 369(Ciba社製)を重量部で5:100:5.5:2.0の割合で混合し、金型の微細凹凸構造面上に滴下した。続いて、PETフィルムで混合液を挟み込むと同時にハンドローラーを使用し引き延ばした。PETフィルム面側からのUV露光後、金型とPETフィルムを剥離し樹脂モールドを得た。
上記樹脂モールドをXPSにて測定したところ、表面のフッ素元素濃度Esと樹脂中の平均フッ素元素濃度Ebとの比Es/Ebは75であった。また、水接触角は150°であった。
【0092】
[実施例3]樹脂モールドの製造方法2
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが130nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の平板状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。フッ素化ハイパーブランチポリマーであるFA−200(日産化学工業株式会社製)、OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、Irgacure 184(Ciba社製)、及びIrgacure 369(Ciba社製)を重量部で1:10:100:5.5:2.0の割合で混合し、金型の微細凹凸構造面上に滴下した。続いて、PETフィルムで混合液を挟み込むと同時にハンドローラーを使用し引き延ばした。PETフィルム面側からのUV露光後、金型とPETフィルムを剥離し樹脂モールドを得た。
上記樹脂モールドをXPSにて測定したところ、表面のフッ素元素濃度Esと樹脂中の平均フッ素元素濃度Ebとの比Es/Ebは85であった。また、水接触角は150°であった。
【0093】
[実施例4]樹脂モールドの製造方法1
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが130nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の円筒状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。フッ素化ハイパーブランチポリマーであるFA−200(日産化学工業株式会社製)、OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、Irgacure 184(Ciba社製)、及びIrgacure 369(Ciba社製)を重量部で1:10:100:5.5:2.0の割合で混合した。続いて、混合液をマイクログラビアを用いPETフィルムへと塗工した。続いて、PETフィルムに対する60℃の乾燥工程を経て、上記ニッケル製金型の微細凹凸構造面と張り合わせた。UV露光後、金型とPETフィルムを剥離し樹脂連続成型体を経た。
上記樹脂モールドをXPSにて測定したところ、表面のフッ素元素濃度Esと樹脂中の平均フッ素元素濃度Ebとの比Es/Ebは85であった。また、水接触角は150°であった。
【0094】
[実施例5]樹脂モールドの繰り返し転写性
実施例1〜実施例4で調合した樹脂組成物を転写剤として、実施例1〜実施例4で作製した樹脂モールドの反転転写を行った。樹脂モールドをステンレス板の上に固定し、微細凹凸構造面上に転写剤を滴下した。続いて、PETフィルムで転写剤を挟み込むと同時にハンドローラーを使用して引き伸ばした。被覆したPETフィルム面側からUV露光後、60度で3分加熱し、樹脂モールドを被覆したPETフィルムを剥離し、樹脂モールドの転写品Aを得た。同手順にて、同一樹脂モールドから五十回連続して転写品Aを作製した。三十回とも一定の低剥離抵抗(平均10mN/mm)を示した。また、目視観察では、転写面の破断は確認されなかった。さらに詳細に転写性を確認するため、樹脂モールド及び転写品Aの断面SEM(走査型電子顕微鏡)観察を行った。樹脂モールド側の凹凸構造と転写品Aの凸凹構造が一致し転写性が良好であることが確認された。この結果から、転写品Aは、マスターモールドと同じパタン形状を具備した樹脂モールドであることが確認された。
【0095】
次に、転写品Aを樹脂鋳型として用いて、上記転写方法と同様にして、TAC(トリアセチルセルロール樹脂)フィルムを基材としたアクリル系紫外線硬化性樹脂(屈折率1.52)への繰り返し10回UV転写し、転写品Bを作製した。目視による転写面の破断もなく、5mN/mm〜10mN/mmの抵抗で剥離できた。1回目〜10回目の転写品Bの形状を確認するために、表面反射スペクトル測定により評価した。表面の微細凹凸構造は表面屈折率に反映する。したがって、微細凹凸構造に変化があれば、反射スペクトルの波形変化として観測される。結果、1回目〜10回目の転写品Bの反射スペクトル波形はいずれも一致し、連続繰り返し転写によるパタン変化はないことが確認された。さらに断面SEM観察より、10回目の転写品Bの凹凸構造と、マスターモールドから作製した転写品の凹凸構造が一致したことから、繰り返し転写時の転写性が保持されていることが明らかとなった。
【0096】
[実施例6]樹脂モールドを用いたナノインプリント
3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン及び3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレートを含むカチオン重合性樹脂をマイクログラビアを用いSiOを蒸着したPETフィルムへと塗工した。続いて、PETフィルムを実施例1から実施例4で作製した樹脂モールドそれぞれと貼り合わせると同時にゴムニップにより圧力を加え、ニップ圧がなくなった状態で樹脂モールド側からUV露光した。UV露光後、樹脂モールドと該PETフィルムとを剥離した。剥離は容易に行われ、視認欠陥はなかった。転写された微細凹凸構造をSEMにて観察したところ、残膜厚は5nm以下で均一であった。
【0097】
[比較例1]
比較例1として、実施例1から実施例4での組成においてフッ素化ハイパーブランチポリマーあるいは/及びフッ素含有(メタ)アクリレートであるOPTOOL DAC HPを含まない組成物を調合し、樹脂モールドを作製した。結果、UV硬化後に転写剤硬化物との界面剥離ができなかった。
【0098】
[比較例2]
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが130nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の平板状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。東洋合成工業社製のPAC01を金型の微細凹凸構造面上に滴下した。続いて、PETフィルムでUV硬化性樹脂を挟み込むと同時にハンドローラーを使用し引き延ばした。PETフィルム面側からのUV露光後、金型とPETフィルムを剥離し樹脂モールドを得た。
3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン及び3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートを含むカチオン重合性樹脂をマイクログラビアを用いSiOを蒸着したPETフィルムへと塗工した。続いて、PETフィルムを樹脂モールドと貼り合わせると同時にゴムニップにより圧力を加え、ニップ圧がなくなった状態で樹脂モールド側からUV露光した。UV露光後、モールドとPETフィルムとを剥離したところ、高密着し剥離できなかった。一方で、部分的に剥離できた部分をAFMで観察したところ、微細凹凸構造の転写は見られなかった。
【0099】
[比較例3]
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが130nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の円筒状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。CHEMINOX FAMAC−6(ユニマッテク社製)と3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製 KBM5103)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure 184(Ciba社製)、Irgacure 369(Ciba社製)を重量部で10:10:90:5.5:2.0の割合で混合した。続いて、混合液をマイクログラビアを用いPETフィルムへと塗工した。続いて、PETフィルムに対する60℃の乾燥工程を経、ニッケル製金型の微細凹凸構造面と張り合わせた。PET面側からのUV露光後、金型とPETフィルムを剥離しフ樹脂連続成型体を得た。
上記樹脂モールドをXPSにて測定したところ、表面のフッ素元素濃度Esと樹脂中の平均フッ素元素濃度Ebとの比Es/Ebは26であった。
続いて樹脂組成物を転写剤として、樹脂モールドの反転転写を行った。樹脂モールドをステンレス板の上に固定し、微細凹凸構造面上に転写剤を滴下した。続いて、PETフィルムで転写剤を挟み込むと同時にハンドローラーを使用して引き伸ばした。被覆したPETフィルム面側からUV露光後、60度で3分加熱し、樹脂モールドを被覆したPETフィルムを剥離したところ、樹脂モールドと硬化した転写剤とが強く密着し、剥離できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の樹脂モールドは、ナノインプリントの分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面と該第一面と反対側に第二面を有すフィルム基材の該第一面上に微細凹凸構造を有すナノインプリント用の樹脂モールドであって、該樹脂モールドを構成する樹脂が光重合性化合物の硬化物から構成され、かつ、該光重合性化合物が、(メタ)アクリレート、フッ素化されたハイパーブランチポリマー、及び光重合開始剤を含むことを特徴とする前記樹脂モールド。
【請求項2】
前記樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)に対する前記樹脂モールドの微細凹凸構造表面部のフッ素元素濃度(Es)の比が、下記式(1):
1<Es/Eb≦30000 (1)
を満たす、請求項1に記載の樹脂モールド。
【請求項3】
水に対する接触角が110°以上である、請求項1又は2に記載の樹脂モールド。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート100質量部に対して、フッ素化されたハイパーブランチポリマーを0.05重量部〜30重量部、及び光重合開始剤を0.01重量部〜10重量部含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂モールド。
【請求項5】
前記光重合性化合物が、フッ素含有(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂モールド。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート100質量部に対して、少なくともフッ素化されたハイパーブランチポリマーを0.05重量部〜30重量部、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.1重量部〜50重量部、及び光重合開始剤を0.05重量部〜30重量部含有する、請求項5に記載の樹脂モールド。
【請求項7】
前記フッ素化されたハイパーブランチポリマーが、光重合性基としてビニル基、アリル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基の内の少なくとも一つを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂モールド。
【請求項8】
前記微細凹凸構造の形状が、ピッチ10nm〜500μm、高さが10nm〜10μmである構造である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂モールド。