樹脂レンズ、レンズ付LED装置及びレンズ付LED装置の製造方法
【課題】LED装置の封止体に対して接着することにより、レンズ付LED装置の樹脂部分の劣化を抑制できる樹脂レンズを提供することを目的とする。
【解決手段】LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の透明樹脂封止体に接着されるシリコーンレンズであって、レンズ部と透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するシリコーン樹脂成形体からなるレンズ本体と、被接着面に形成されたガスバリア層とを備え、ガスバリア層がレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い層であることを特徴とする樹脂レンズ等である。
【解決手段】LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の透明樹脂封止体に接着されるシリコーンレンズであって、レンズ部と透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するシリコーン樹脂成形体からなるレンズ本体と、被接着面に形成されたガスバリア層とを備え、ガスバリア層がレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い層であることを特徴とする樹脂レンズ等である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED装置に集光機構を付与するための樹脂レンズ、そのレンズを備えたレンズ付LED装置及びレンズ付LED装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)を用いた発光装置であるLED装置の用途が広がっている。具体的には、例えば、一般室内照明器具、車内灯等のスポットライト、薄型テレビや情報端末機器のバックライト、自動車のテールランプ等で採用されている。
【0003】
LEDからの発光は直進性を有するが、それ以外の方向へも多少分散する。LED装置の発光に求められる指向性は用途に応じて異なる。例えば、一般室内照明器具、スポットライト、自動車のテールランプ等の用途においては、比較的狭い範囲をより明るく照らすことが求められるために、狭い指向角が求められる。一方、薄型テレビや情報端末機器のバックライトの用途においては、広い指向角が求められる。
【0004】
一般的なLED装置は、外気や機械的な衝撃からLEDチップを保護するための透明樹脂からなる封止体を備える。LEDチップから発光された光を集光または拡散する手段として、LEDチップを封止する封止体の形状をレンズ形状に成形した光学レンズ機構が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、LED装置の工業的生産においては、封止体の形状を用途に応じたレンズ形状に成形することはコスト的に困難であるという問題があった。このような問題を解決する方法として、LEDチップを封止するための未硬化の封止樹脂の表面に、予め成形されたレンズを載置した後、封止樹脂を硬化させることにより封止体とレンズとを一体化する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。また、LED素子を封止する樹脂層に接着性を有するプライマー層を形成し、そのプライマー層によってレンズを接着する方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
ところで、LED装置の封止体としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が広く用いられている。エポキシ樹脂は熱を受けることにより黄変するという問題があった。とくに、近年、LED装置の高出力化及び長時間の連続使用により、封止体の黄変がしばしば実用上の問題になっている。封止体に黄変が生じた場合、光の取出し率が低下するという問題があった。このような問題を解決するために、シリコーン樹脂からなる封止体も用いられ始めている。シリコーン樹脂からなる封止体は耐熱性に優れるために、高出力のLED装置に用いて長期使用しても黄変しにくい。しかしながら、シリコーン樹脂はエポキシ樹脂に比べてガス透過性が高いために、次のような問題を生じさせる。
【0006】
LED装置のLEDチップが実装される基板の表面は、通常、反射層として銀メッキ層が形成されている。シリコーン樹脂からなる封止体を用いた場合、ガスバリア性が低いために、窒素酸化物や硫黄酸化物のような腐食性ガスが透過して銀メッキ層に接触することにより、銀メッキ層が黒く変色して光の取り出し効率が低下する。また、封止体を通過した腐食性ガスや水分と電極等に接触することにより、電極等を劣化させるという問題もあった。このような問題を解決する技術として、下記特許文献4は、LED装置の製造時に封止体の表面にガスバリア性に優れたフィルムを貼り合わせて、硬化させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−203201号公報
【特許文献2】特開2010−110894号公報
【特許文献3】特開2010−206206号公報
【特許文献4】特開2000−174347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、LED装置の発光面に設けられるレンズ部材はエポキシ樹脂レンズが広く用いられていた。シリコーン樹脂を封止体として用いたLED装置にエポキシ樹脂レンズを接着した場合、ガスバリア性が比較的高いエポキシ樹脂レンズがシリコーン樹脂からなる封止体を覆うために封止体にガスが透過することを抑制していた。そのために、LED装置の銀メッキ層の黒化等が起こりにくかった。しかし、エポキシ樹脂レンズを備える高出力のLED装置においては、長期使用した場合にLED装置が発光する際発生する熱によってエポキシ樹脂レンズが黄変して、光の取り出し効率が低下するという問題が生じる。
【0009】
そこで、シリコーン樹脂を封止体として用いたLED装置にシリコーンレンズを接着することが試みられたが、シリコーンレンズはガスバリア性が低いために、エポキシ樹脂レンズのようなガスバリア効果を発揮できず、レンズの黄変は抑制できるものの、シリコーン樹脂からなる封止体にガスが透過することによる、LED装置の銀メッキ層の黒化が抑制されないという問題があった。
【0010】
また、引用文献4に開示されたように、LED装置の製造時に封止体表面にガスバリア性に優れたフィルムを貼り合わせて硬化させる方法によれば、確かに、封止体内部へのガスの透過が封止体表面のフィルムにより抑制されると思われる。しかしながら、汎用的なLED装置は外形寸法が数mm程度であり、このような小さな装置の表面に薄いフィルムを貼り合わせることは工業的生産性に乏しいと思われる。
【0011】
本発明は、上述した問題を解決すべく、LED装置の封止体に対して接着することにより、レンズ付LED装置の光量の低下を抑制できる樹脂レンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面は、LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の透明樹脂封止体に接着される樹脂レンズであって、レンズ部と透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するシリコーン樹脂成形体からなるレンズ本体と、被接着面に形成されたガスバリア層とを備え、ガスバリア層がレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い層であることを特徴とする樹脂レンズである。このような樹脂レンズは、高出力のLED装置に用いて長期使用しても黄変しにくく、また、レンズを接着するだけでLED装置の封止体にガスバリア性を付与することができる。
【0013】
ガスバリア層としては、透明無機化合物を含む蒸着膜、具体的には、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、フッ化マグネシウム等の化合物を含む蒸着膜であることが好ましい。また、ガスバリア層としては、ガラス層を含有することも好ましい。ガラス層は封止体に対してとくに高いガスバリア効果を有する。
【0014】
また、ガスバリア層の別の例としては、レンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い透明樹脂層が挙げられ、特に、接着性または粘着性を有する透明樹脂層である透明粘接着剤層である場合には、硬化した透明樹脂封止体の表面に接着剤を塗布することなく樹脂レンズを接着することができる点から好ましい。
【0015】
また、被接着面は中央部が隆起していることが好ましい。被接着面の中央部が隆起している場合には、LED装置の封止体と接着する場合において、空気の巻き込みが起こりにくくなり、界面にボイドを残しにくくなる。
【0016】
また、被接着面は表面改質処理されていることが、ガスバリア層との接着性が高くなる点から好ましい。表面改質処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、イトロ処理、プライマー処理等が挙げられる。
【0017】
また、本発明の他の一局面は、LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の透明樹脂封止体に接着される樹脂レンズであって、レンズ部と透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するエポキシ樹脂成形体からなるレンズ本体と、被接着面に形成されたシリコーン樹脂層とを備えることを特徴とする樹脂レンズである。このような樹脂レンズによれば、封止体とエポキシ樹脂レンズとの間に、耐熱性の高いシリコーン樹脂層を介在させるために、エポキシ樹脂レンズの発光素子の発熱による変色を抑制できる。
【0018】
また、本発明の他の一局面は、平面状に配列された複数個の樹脂レンズを備えたレンズアレイである。このようなレンズアレイを用いることにより、一度に複数個のLED装置にレンズ構造を付与することができる。
【0019】
また、本発明の他の一局面は、LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置と、透明樹脂封止体に接着された上記何れかの樹脂レンズと、を備えたことを特徴とするレンズ付LED装置である。
【0020】
また、本発明の他の一局面は、基板上に配列された複数個のLED装置に上記レンズアレイを接着する工程を備えたレンズ付LED装置の製造方法である。このような製造方法を用いることにより、一度に複数個のLED装置にレンズ構造を付与することができるために、レンズ付LED装置の量産性が向上する。また、このような製造方法においては、接着されて形成された複数のレンズ付LED装置を切断して個別化する工程をさらに備えることが、多数個のレンズ付LED装置を効率的に生産できる点から好ましい。
【0021】
また、回路基板に1つ以上のLED装置を形成した後、シリコーンレンズを後付してなるレンズ付きLED装置の製造方法である。近年のチップ・オン・ボード(COB)の製造方法に伴って、予め回路基板にLED装置が配置されその配光特性に応じて、レンズを選択して後から接着する手法が要請されており、本発明のレンズによれば、より効率的な生産が出来る。本発明を用いれば用途に合わせたレンズを強固に接着することが出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、LED装置の封止体に対してレンズを接着することにより、レンズ付LED装置の光量の低下を抑制できる樹脂レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のレンズ付LED装置20の断面模式図を示す。
【図2】シリコーンレンズ11の斜視模式図を示す。
【図3】被接着面の中央部が隆起しているシリコーンレンズ21の断面模式図を示す。
【図4】LED装置10にシリコーンレンズ11を接着する方法の一例を説明する説明図である。
【図5】LED装置10に大型のシリコーンレンズ61を接着した様子を説明する説明図である。
【図6】LED装置10にシリコーンレンズ11を接着する方法の一例を説明する説明図である。
【図7】LED装置10にシリコーンレンズ11を接着する方法の一例を説明する説明図である。
【図8】LED装置10にシリコーンレンズ11を接着する方法の一例を説明する説明図である。
【図9】レンズアレイ30とLEDアレイ40とを接着する方法を説明する斜視模式図である。
【図10】複数のレンズ付LEDを備えた基板を切断する方法を説明する斜視模式図である。
【図11】複数のレンズ付LED装置の製造方法を説明する模式断面図である。
【図12】本実施形態のレンズ付LED装置120の断面模式図を示す。
【図13】エポキシ樹脂レンズ111の斜視模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
本実施形態のシリコーンレンズ11を備えたレンズ付LED装置20について詳しく説明する。
【0025】
図1はシリコーンレンズ11を備えたレンズ付LED装置20の模式断面図である。図1中、10は表面実装型のLED装置である。
【0026】
LED装置10は、上面が開口した凹部を有する発光体収容部材3を備える。凹部の表面には、LED素子1から発光される光の取り出し効率を高めるために、内面反射膜8が形成されている。内面反射膜8の具体例としては、メッキや蒸着により形成される銀薄膜が挙げられる。そして、凹部の底部からは一対のリード5a,5bが発光体収容部材3の外部へ延出されている。LED素子1の一方の電極は凹部底面のリード5bにダイボンディングされており、また他方の電極はリード5aに金線5cによりワイヤーボンディングされている。そして、LED素子1を収容する凹部は、ディスペンサ等を用いて凹部にポッティングされたシリコーン樹脂等からなる封止剤の硬化物である透明樹脂封止体2により封止されている。そして、透明樹脂封止体2の表面にシリコーンレンズ11が接着されている。
【0027】
図2に示すように、シリコーンレンズ11は、レンズ部11aと被接着面11bとを含むシリコーンレンズ本体と、被接着面11bに形成されたガスバリア層11cとを備える。レンズ部11aは、用途に応じて光学設計されたレンズ形状を有する。シリコーンレンズ本体は、光透過率が高く、シリコーン樹脂は90%以上、さらには、92%以上であるものが好ましい。また、シリコーン樹脂から形成されるために耐熱性が高く、LED素子1から発せられる熱により変色しにくい。
【0028】
シリコーンレンズ11のレンズ部11aの形状は用途に応じて光学設計された形状に成形される。具体的には、光の集光、拡散、屈折、または反射等、用途に応じて入射した光を透過させて出射するときの光路を変更するような形状が選ばれる。このようなレンズ形状の例としては、例えば、凸レンズ、凹レンズ、シリンドリカルレンズ、フレネルレンズ等が挙げられる。
【0029】
また、シリコーンレンズ11の被接着面11bにはレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い層であるガスバリア層11cが形成されている。ガスバリア層の詳細については後述する。
【0030】
シリコーンレンズ11の被接着面11bの形状は平面に限らず、例えば、ドーム状に成形されたLED装置の封止体のドーム形状に沿った凹状形状であっても、図3に示すような中央部が隆起した凸形状であってもよい。また、中央部が窪んだ凹形状であってもよい。被接着面の中央部が隆起しているシリコーンレンズ21には、凸形状の被接着面にガスバリア層21cが形成されている。このようなシリコーンレンズ21を用いた場合には、接着剤や封止剤と貼り合わせる際に、空気を巻き込みにくくなる。隆起の高さは、例えば平面の被接着面に比べてレンズ直径に対して1〜10%程度中央部がなだらかに隆起していることが好ましい。窪みの深さは、LED装置の封止体形状に合わせた形であればよく、例えば直径3mmの半球状の封止体の表面形状であれば、それよりもやや大きい窪みを有していればよい。
【0031】
次に、シリコーンレンズの製造方法について詳しく説明する。シリコーンレンズは、シリコーン樹脂を成形して得られたシリコーンレンズ本体の被接着面にガスバリア層を形成することにより得られる。
【0032】
シリコーンレンズ本体の成形はシリコーン樹脂の成形に用いられている公知の方法、具体的には、例えば、注型成形、圧縮成形、射出成形等が用いられる。低温で精密な成形が可能である点から、液状の付加反応硬化型のシリコーン樹脂組成物を用いた注型成形がとくに好ましい。
【0033】
シリコーンレンズ本体を成形するためのシリコーン樹脂は、光透過率に優れたシリコーン樹脂であれば、特に限定なく用いられ、硬質のシリコーン樹脂の他、シリコーンゴムまたはシリコーンエラストマーであってもよい。
【0034】
付加反応硬化型のシリコーン樹脂組成物としては、硬化することにより透明なシリコーン樹脂を形成する未硬化シリコーン樹脂組成物であれば特に限定されない。具体的には、例えば、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系触媒等の重金属系触媒を含む組成物が挙げられる。
【0035】
オルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、下記一般式(1):
RaSiO(4-a)/2 …(1)
(式中、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜10の非置換または置換一価炭化水素基であり、aは0.8〜2の正数である。)で示されるものが挙げられる。
【0036】
非置換または置換一価炭化水素基であるRの具体例としては、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基等のアルキル基;ビニル基,アリル基,ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基,トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;これらの炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;あるいは、シアノ基で置換された2−シアノエチル基等のシアノ基置換炭化水素基;等が挙げられる。これらの中では、全Rのうち5〜80モル%がフェニル基であるものが、光学レンズの耐熱性および透明性に優れる点からとくに好ましい。
【0037】
また、Rとしてビニル基等のアルケニル基を含むもの、特に全Rのうちの1〜20モル%がアルケニル基であるものが好ましく、中でもアルケニル基を1分子中に2個以上有するものが好ましく用いられる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば末端にビニル基等のアルケニル基を有するジメチルポリシロキサンやジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の末端アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンが挙げられ、特に常温で液状のものが好ましく用いられる。
【0038】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。また、触媒としては、白金、白金化合物、ジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウリレート等の有機金属化合物、またはオクテン酸錫のような金属脂肪酸塩などが挙げられる。これらオルガノハイドロジェンポリシロキサンや触媒の種類や量は、架橋度や硬化速度を考慮して適宜選択される。
【0039】
シリコーン樹脂組成物の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製の「KJR632」等が挙げられる。
【0040】
また、シリコーン樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、LED素子から発光させる光の波長を変換することにより、発光色を変換するための蛍光体や、光を拡散させるための光拡散剤等を含んでもよい。また、シリコーンレンズ11の内部または表面には、さらに蛍光体層、カラーフィルター層や光拡散層を設けてもよい。また、シリコーンレンズ11は、被接着面側にシリコーンゲルやシリコーンエラストマーなどの緩衝層を設けたレンズであると、LED装置の封止体とシリコーンレンズ11との熱膨張の差による内部応力を緩和させることができ好ましい。
【0041】
シリコーン樹脂組成物中に必要に応じて配合される蛍光体の具体例としては、例えば、発光色が青色の(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Eu2+、ZnS:Ag、CaS:Bi等、発光色が緑色のBaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+、ZnS:Cu,Al,Au、SrAl2O4:Eu2+、Zn2Si(Ge)O4:Eu2+等、発光色が赤色のY2O2S:Eu3+、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、LiEuW2O8、BaO・Gd2O3・Ta2O5:Mn、K5Eu2.5(WO4)6.25等が挙げられる。
【0042】
また、光拡散剤の具体例としては、例えば、ガラスパウダーや、炭酸カルシウム,酸化チタン,酸化亜鉛等の無機フィラーが挙げられる。
【0043】
次に、シリコーンレンズ本体の被接着面11bに形成されるガスバリア層11cについて詳しく説明する。
【0044】
ガスバリア層としては、シリコーンレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い材料から形成された層であれば特に限定無く選ぶことができる。このような層の具体例としては、例えば、透明無機化合物を含む蒸着膜、ガラス層、シリコーンレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い透明樹脂層等が挙げられる。
【0045】
蒸着膜の具体例としては、ガスバリア性が高い、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、または、フッ化マグネシウム等の透明無機化合物を含む蒸着膜が挙げられる。
【0046】
蒸着膜は、公知の気相薄膜形成法を用いてシリコーンレンズの被接着面に形成される。なお、蒸着時においては、シリコーンレンズの被接着面のみが露出するように、その他の表面をマスキングして蒸着することにより、シリコーンレンズの被接着面のみに蒸着膜を形成することもできる。なお、本発明の効果を阻害しない範囲の厚みであれば、レンズ部にも蒸着膜が形成されてもよい。このような、蒸着膜の膜厚としては、数nm〜数百nm程度であることが好ましい。蒸着膜の膜厚が厚すぎる場合には、光透過率が低下したり、大きな乱反射を発生させる原因になる傾向がある。また、蒸着膜の膜厚が薄すぎる場合には、ガスバリア性が充分に向上しない傾向がある。
【0047】
ガラス層の具体例としては、例えば、低温でガラス膜の形成が可能なゾルゲル法を用いたガラス薄膜形成法により形成されるガラス層や、極薄板ガラス(松浪硝子工業(株)製)等が用いられる。
【0048】
ゾルゲル法で形成されるガラス組成としては、SiO2やSiO2とPBO,ZnO,Al2O3等を混合した組成等が挙げられる。このようなゾルゲル法を用いて得られるガラス薄膜の膜厚としては、0.1〜500μm、更には10〜200μm程度であることが好ましい。
【0049】
また、極薄板ガラスの膜厚としては、10〜500μm、さらには50〜300μm程度であることが好ましい。
【0050】
透明樹脂層の具体例としては、レンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂,アクリル樹脂,及びウレタン樹脂等からなる透明樹脂層が挙げられる。これらの中では、エポキシ樹脂がガスバリア性と接着性とのバランスに優れる点から好ましい。
【0051】
また、透明樹脂層として、シリコーン樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂及びこれらのシリコーン変性樹脂等からなる粘接着作用を有する透明粘接着剤層、具体的には、例えば、未硬化の透明接着剤層や半硬化透明接着剤層、粘着性シリコーン樹脂層などを設けた場合、LED装置10の硬化した封止体2の表面に接着剤を塗布することなくシリコーンレンズを強固に接着することができるために製造工程の省力化の点から好ましい。透明粘接着剤層としては、エポキシ樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂及びこれらのシリコーン変性樹脂から形成された粘着剤層または接着剤層や、シリコーンゲル,シリコーンゴム,又はシリコーンエラストマーから形成された粘着性シリコーン樹脂層等が挙げられる。なお、粘着性シリコーン樹脂層は応力緩和性に優れているため封止体とシリコーンレンズとの材質の線膨張係数の違いによる内部応力を緩和し、デラミネーションを抑制する効果が特に高い点から好ましい。また、シリコーン樹脂系の透明粘接着剤層は耐熱性に優れ、アクリル、ウレタン、エポキシ系の透明粘接着剤層は粘着強度に優れている。
【0052】
透明樹脂層の厚みとしては、適宜用途に応じて選択できるが、3〜2000μm、さらには20〜500μmの範囲であることが好ましい。透明樹脂層の厚みが薄すぎる場合には、封止樹脂の凹凸に追従できなくなり十分な接着が出来ず、生産性が低下する傾向があり、厚すぎる場合には、配光特性を損なう傾向がある。
【0053】
また、被接着面に形成された透明樹脂層が透明粘接着剤層である場合には、その表面に離形シートが貼り合わされていることが好ましい。このような、未硬化の透明接着剤層や粘着性シリコーン層などの透明粘着剤層の表面に離形シートを貼り合わせておくことにより、シリコーンレンズの保管や移送等の取り扱い性が向上する。また、レンズ付LED装置の製造時においては、硬化した透明樹脂封止体の表面に接着剤を塗布することなく、離形紙を剥がして露出する透明接着剤層や粘着性シリコーン層などの透明粘着剤層を、封止体の表面に圧接させて貼り合わせることにより、透明樹脂封止体の表面にシリコーンレンズを固定することができる点から好ましい。また、特に好ましくは、一面を離形紙で覆った未硬化透明樹脂や粘着性シリコーンなどの透明粘着剤を粘着層とする両面粘着テープを、シリコーンレンズの被接着面に貼り合わせることが特に好ましい。両面粘着テープを用いて被接着面に透明樹脂層を形成することは生産性に優れており、また、離形紙を剥がすことにより透明樹脂層が露出するために、LED装置の封止体の表面に接着することが容易になる。
【0054】
上述したようなガスバリア層を形成するに際しては、レンズ本体の被接着面に表面改質処理を施すことが好ましい。ここで、表面改質処理とは、被接着面の表面を活性化させる処理であり、具体的には、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、イトロ処理、プライマー処理等のように、被接着面の表面に極性基を生成させること等によりガスバリア層に対する接着性を改良する処理である。ガスバリア層が形成される被接着面にこのような表面改質処理を施すことにより、被接着面とガスバリア層との接着力が向上する。
【0055】
プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理による表面改質処理の方法は、従来から知られたプラズマ処理装置、コロナ処理装置、UV処理装置、フレーム処理装置、イトロ処理装置等を用いた処理方法が特に限定なく用いられる。
【0056】
また、プライマー処理に用いられるプライマー剤としては、シランカップリング剤又はその部分加水分解縮合物等を含む処理液が挙げられる。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
表面改質処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理の後、プライマー処理をすることがとくに好ましい。具体的には、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理された被接着面に、プライマー処理液を薄く塗った後、室温〜170℃程度の雰囲気で乾燥することが好ましい。
【0058】
なお、上述のプラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理の表面改質処理された被接着面は、水に対する接触角が90度以下であることが好ましく、効率上の下限値を考慮すると1〜90度、さらには1〜50度の範囲であることが好ましい。被接着面の水に対する接触角がこのような範囲であることにより、接着剤や封止剤等との濡れ性が良好になることにより封止体との接着性が向上する。なお、表面改質処理される前の被接着面は、通常、100〜120度程度である。表面処理により、1〜90度程度被接着面の水に対する接触角が低下することが好ましい。表面処理がプライマー処理の場合は水に対する接触角が90度より大きくて、例えば100〜120であっても十分な接着強度を有する。このような接触角は、JIS K3257「基板ガラス表面のぬれ製試験方法」により測定される。
【0059】
次に、上述したようなシリコーンレンズをLED装置に接着する方法について説明する。シリコーンレンズをLED装置に接着する方法の具体例としては、例えば、(I)表面実装型LED装置の製造の際に、硬化前の封止剤にシリコーンレンズを載せた後、封止剤を硬化させることにより、硬化した封止体にシリコーンレンズを接着する方法、(II)表面実装型LED装置の硬化した封止体の表面に接着剤を介してシリコーンレンズを接着する方法、(III)表面実装型LED装置の硬化した封止体の表面に透明接着剤層を用いて接着させる方法、(IV)表面実装型LED装置の硬化した封止体の表面に透明粘着剤層を用いて粘着させる方法等が挙げられる。
【0060】
図4は、方法(I)を模式的に説明する図である。図4に示すように、LED装置10の製造時に発光体収容部材3の凹部にポッティングされた未硬化の封止剤2aの表面にシリコーンレンズ11の被接着面に形成されたガスバリア層11cの表面を密着させるようにして載置し、加熱又は光照射等により封止剤を硬化させる。このような方法によれば、LED装置10の製造時にシリコーンレンズを接着して一体化することができるために、レンズの接着が容易である点から好ましい。しかしながらこのような方法によれば、次のような問題も生じる。LED装置の工業的生産においては、多数個取りの取り数を増やすために支持基板上で隣接するLED装置のピッチ間隔を狭くしている。このように支持基板上で隣接するLED装置のピッチ間隔が狭いために、工業的生産においては、例えば、図5に示すような、指向特性を大幅に変化させるような大きなシリコーンレンズ61をLED装置に付与することは困難であった。大きなシリコーンレンズ61を接着するためには、LED装置のピッチ間隔を広くする必要があり、このような場合には量産性に不利になるという問題がある。
【0061】
図6は、方法(II)を模式的に説明する図である。図6に示すように、LED装置10の硬化した封止体2の表面に接着剤14を塗布し、封止体2とシリコーンレンズ11の被接着面に形成されたガスバリア層11cとを接着剤14を介して密着させた後、接着剤14を硬化させる。このような方法によれば、個別のLED装置にシリコーンレンズを接着することができるために、図5に示すような大きなレンズ61を付与することができる等、レンズ形状の選択に幅が広がる。
【0062】
図7は、方法(III)を模式的に説明する図である。図7に示すように、LED装置10の硬化した封止体2の表面に、シリコーンレンズ11の被接着面に形成されたガスバリア層でもある未硬化の樹脂層21cを密着させた後、硬化させる。このような方法によれば、レンズを接着する際に封止体の表面に接着剤を塗布する必要がないために、製造工程を大幅に省略できる点から好ましい。
【0063】
図8は、方法(IV)を模式的に説明する図である。図8に示すように、LED装置10の硬化した封止体2の表面に、シリコーンレンズ11の被接着面に形成されたガスバリア層でもある粘着性シリコーン層31cを密着させて粘着力または分子間吸着力により固体間接着させる。このような方法によれば、レンズを接着する際に界面を硬化させる必要がないために、製造工程を大幅に省略できる点から好ましい。
【0064】
以上説明したような本実施形態の、LED装置の透明樹脂封止体に接着される被接着面にガスバリア層が形成されたシリコーンレンズによれば、LED装置の封止体に対してガスの透過を抑制することができる。
【0065】
[第2実施形態]
LED装置にシリコーンレンズを接着する方法としては、別個独立したLED装置にそれぞれ一つずつシリコーンレンズを接着する方法の他、複数のLED装置に複数個のシリコーンレンズを備えたレンズアレイを接着してもよい。本実施形態においては、複数個のシリコーンレンズが配置されたレンズアレイ用いることにより、基板上に配列された複数個のLED装置のそれぞれに一度に複数個のシリコーンレンズを接着する方法について図9を参照して説明する。
【0066】
図9において、30は平面状に複数個のシリコーンレンズが配列された一枚のレンズアレイを示す。レンズアレイ30はシリコーンレンズ領域21を複数個備えたシリコーン樹脂の一体成形体である。レンズアレイ30の裏面になる被接着面には第1実施形態で説明したのと同様にガスバリア層が形成されている。また、40は一枚の回路基板上に複数個のLED装置10を配列して実装したLEDアレイである。
【0067】
レンズアレイ30の裏面のシリコーンレンズ領域21の被接着面には第1実施形態で説明したのと同様にガスバリア層が形成されている。また、第1実施形態で説明したのと同様にガスバリア層が形成される被接着面には予め表面改質処理が施されていてもよい。
【0068】
図9(a)に示すように、LEDアレイ40の各LED装置10とレンズアレイ30の各シリコーンレンズ領域21とが対向するように、LEDアレイ40にレンズアレイ30を配置し、図9(b)に示すように重ねあわせる。そして、重ね合わせた状態で、必要に応じて接着面の接着剤または封止剤を硬化させる。このような方法によれば、一度に複数個のLED装置にレンズ構造を付与することができるために、レンズ付LED装置の量産性が向上する。
【0069】
回路基板上の回路が複数個のLED装置10を繋ぐものである場合には、このようにして形成されたLEDアレイ40とレンズアレイ30との接着構成体は、そのままで、複数のレンズ付LED装置アレイとして、例えば、自動車のヘッドランプや、LED照明装置や、LEDディスプレイのバックライト照明等の用途に用いることができる。また、回路基板上の回路が各LED装置10毎に独立したものである場合には、図10に示すように、形成された各レンズ付LED装置をレーザー装置100による切断加工や、ダイシングソー等により個別に切断することにより、複数個のレンズ付LED装置が得られる。
【0070】
また、図11を参照して別の製造方法を説明する。図11中、50は平面状に複数個のシリコーンレンズ領域51が配列された一枚のレンズアレイであって、シリコーン樹脂の一体成形体である。各シリコーンレンズ領域51は、それぞれLED装置10を収容できる凹状のLED装置収容部52を備える。なお、LED装置収容部52の表面になる、レンズ本体の被接着面には第1実施形態で説明したのと同様にガスバリア層が形成されている。本製造方法では、図11に示すように、レンズアレイ50の各LED装置収容部52に、発光面をレンズ側に配置してLED装置10を挿入して、接着剤等を介して接着させる。このような方法によれば、一度に複数個のLED装置にレンズ構造を付与することができるために、レンズ付LED装置の量産性が向上する。また、レンズ同士の間隔を自由に広げることができる。なお、このような方法により得られた複数のレンズ付LED装置も、図11に示すように、破線で示した部分でレーザー装置やダイシングソー等により個別に切断することにより、複数個のレンズ付LED装置に分けることもできる。
【0071】
[第3実施形態]
エポキシ樹脂は、ガスバリア性が高いので、銀薄膜の反射層の劣化を防止する観点から封止体として広く用いられている。しかし、LED素子から発せられる熱や短波長の光により劣化して変色しやすいという欠点がある。一方、シリコーン樹脂は、LED素子から発せられる短波長の光や熱に対しては変色しにくいが、ガスバリア性が低いために銀薄膜の反射層の黒化が起こりやすいという欠点がある。このように、封止体としてエポキシ樹脂を用いた場合には樹脂の変色等により光量が低下する傾向があり、封止体としてシリコーン樹脂を用いた場合には、銀薄膜の黒化により量が低下する傾向があった。このような場合において、封止体としてシリコーン樹脂を用い、その封止体にガスバリア性の高いエポキシ樹脂レンズを接着させることによりシリコーン樹脂の封止体に対してガスの透過を抑制することができる。しかし、シリコーン樹脂からなる封止体に対するエポキシ樹脂レンズの接着性は低いという問題があった。また、エポキシ樹脂レンズが、LED素子から発せられる熱が伝わることにより変色するという問題もあった。
【0072】
シリコーン樹脂からなる封止体に対するエポキシ樹脂レンズの接着性は低いという問題は、エポキシ樹脂レンズの被接着面に、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、イトロ処理、又はプライマー処理等の表面改質処理、好ましくは、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理の後にプライマー処理を施すことにより、著しく接着性が改善することができる。また、エポキシ樹脂レンズが、LED素子から発せられる熱が伝わることによりLED発光素子の選択や光学設計上選択されるエポキシ樹脂の種類によっては変色するという問題は、エポキシ樹脂レンズの被接着面に以下に説明するシリコーン樹脂層を形成することにより解決できる。
【0073】
本実施形態においては、レンズ部と透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するエポキシ樹脂成形体からなるレンズ本体と、被接着面に形成されたシリコーン粘着剤やシリコーン接着剤などのシリコーン樹脂層とを備える樹脂レンズについて詳しく説明する。このような構成によれば、透明樹脂封止体からエポキシ樹脂レンズに伝わる熱を抑制することにより、エポキシ樹脂レンズの変色を抑制することができ、それにより、レンズの変色による光の取り出し効率の低下を抑制することができる。なお、第1実施形態及び第2実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0074】
本実施形態のエポキシ樹脂レンズ111を備えたレンズ付LED装置120について詳しく説明する。
【0075】
図12はエポキシ樹脂レンズ111を備えたレンズ付LED装置120の模式断面図である。透明樹脂封止体2の表面にエポキシ樹脂レンズ111が接着されている。
【0076】
図12に示すように、エポキシ樹脂レンズ111は、レンズ部111aと被接着面111bとを含むエポキシ樹脂レンズ本体と、被接着面111bに形成されたシリコーン樹脂層111cとを備える。レンズ部111aは、用途に応じて光学設計されたレンズ形状を有する。エポキシ樹脂レンズ111のエポキシ樹脂成形体からなるレンズ本体は、耐熱性の高いシリコーン樹脂層111cを介してLED素子1から遠く位置するように接着されるために、熱や光に対して劣化しにくくまる。また、エポキシ樹脂レンズ111はエポキシ樹脂を主体としているために、シリコーン樹脂封止体の表面のガスバリア層として機能するために、銀薄膜の反射層の黒化を抑制することができる。なお、エポキシ樹脂レンズの被接着面を、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理の後、プライマー処理など表面改質処理をすることにより強固な接着性を得る。また、好ましくは、被接着面111bに耐熱性の高いシリコーン粘着剤やシリコーン接着剤などのシリコーン樹脂層111cを形成することで強固に接着したレンズ付LED装置となる。シリコーン樹脂層111cをLED装置10の透明樹脂封止体2の表面とエポキシ樹脂レンズ本体との間に介在させることにより、発熱により温度が高くなるLED素子1の近傍からエポキシ樹脂レンズ本体を遠ざけることにより、エポキシ樹脂レンズの変色を抑制することができる。シリコーン樹脂層111cの厚みとしては、熱伝導の観点から6〜4000μm、好ましくは25〜600μm程度であることが好ましい。
【実施例】
【0077】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
シリコーン樹脂からなる封止体でLED素子を封止したチップ型LED装置を用いた。なお、このLED装置のLED素子が配置された発光体収容部材の表面には、銀薄膜からなる反射膜が形成されていた。なお、以下の実施例及び比較例で用いたLED装置においても、全て反射膜が形成されているものを用いた。
【0079】
ケイ素原子にフェニル基が結合したオルガノポリシロキサンをベースポリマーとするシリコーン樹脂原料組成物であるKJR632(信越化学工業(株)製)をレンズ形状をキャビティとする金型に流し込み、150℃で熱硬化させることにより平凸レンズ形状を有するシリコーンレンズX1を得た。シリコーンレンズX1は、直径5mmの略円状の外周を有し、レンズ部は中央部が高さ4.2mmの凸に隆起しており、被接着面の中央部は0・2mm程度凸に隆起していた。
【0080】
シリコーンレンズX1の被接着面をプラズマ処理した。プラズマ処理は大気圧プラズマ装置を用いてシリコーンレンズX1を回転させながら全体に3分間処理を行った。同様にして、LED装置の封止体表面もプラズマ処理した。なお、プラズマ処理前のシリコーンレンズX1の被接着面の水に対する接触角は110度であり、プラズマ処理後のシリコーンレンズX1の被接着面の水に対する接触角は5度であった。
【0081】
プラズマ処理したシリコーンレンズX1の被接着面以外の部分をマスキングテープを貼ることによりマスクした。そして、シリコーンレンズX1を蒸着装置の真空チャンバー内に導入し、シリコンをターゲットとして、真空チャンバー内に酸素ガスを流しながら、シリコーンレンズX1に酸化ケイ素膜を蒸着することによりシリコーンレンズX2を得た。得られた酸化ケイ素膜の厚みは10nmであった。
【0082】
そして、シリコーンレンズX2の被接着面に未硬化シリコーン系樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TSE3221S 一液型熱硬化タイプシリコーン接着剤)を塗布することにより接着層を形成した。そして、シリコーンレンズX2の裏面の接着層をLED装置の封止体に圧接して押し付けることにより、封止体とシリコーンレンズX2とが一体化された。そして、150℃×4時間の条件でシリコーン系接着層を熱硬化させることにより、封止体の表面にシリコーンレンズX2が接着された。このようにして、レンズ付LED装置Aを得た。
【0083】
そして、レンズ付LED装置Aを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が部分的に黒化した銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX2との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Aを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズX2の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0084】
[実施例2]
プラズマ処理されたシリコーンレンズX1の被接着面にゾルゲルガラス溶液である液体ガラスを塗布した。そして、室温にて1時間乾燥することにより、厚み5μmのガラス薄膜を形成した。このようにして、シリコーンレンズX3が得られた。そして、実施例1と同様にしてガラス薄膜が形成されたシリコーンレンズX3の被接着面を封止体の表面にシリコーン樹脂系接着剤で接着した。このようにして、レンズ付LED装置Bを得た。そして実施例1と同様にしてレンズ付LED装置Bを評価した。レンズ付LED装置Bを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が部分的に黒化した銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX3との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Bを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズX3の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0085】
[実施例3]
プラズマ処理したシリコーンレンズX1の被接着面に、未硬化エポキシ系樹脂(稲畑産業(株)、商品名:EH1600−G2)を塗布して、厚さ50μmの未硬化のエポキシ系接着剤層を形成した。このようにして、シリコーンレンズX4が得られた。そして、実施例1と同様に、シリコーンレンズX4の裏面のエポキシ系接着剤層をLED装置の封止体に圧接して押し付けることより、封止体とシリコーンレンズX4とが一体化された。そして、150℃×4時間の条件でエポキシ系接着剤層を熱硬化させることにより、封止体の表面にシリコーンレンズX4が接着された。このようにして、レンズ付LED装置Cを得た。そして実施例1と同様にしてレンズ付LED装置Cを評価した。レンズ付LED装置Cを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が部分的に黒化した銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX4との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10Nであった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Cを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ殆ど変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズX4の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0086】
[実施例4]
LED装置の製造工程において、封止体を形成する樹脂として未硬化エポキシ系樹脂(稲畑産業(株)、商品名:EH1600−G2)を充填し、この上にさらに厚さ50μmの未硬化のエポキシ系接着剤層が形成された実施例3のシリコーンレンズX4を載置して150℃×4時間で加熱硬化させ、レンズ付LED装置Dを得た。
【0087】
そして実施例1と同様にして、レンズ付LED装置Dを評価した。レンズ付LED装置Dを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が部分的に黒化した銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX4との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Dを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズX4の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0088】
[実施例5]
エポキシ樹脂レンズの被接着面をプラズマ処理した。そして、エポキシ樹脂レンズの被接着面に厚さ50μmの未硬化のシリコーン系樹脂を塗布することによりシリコーン系樹脂接着層を形成した。そして、LED装置の製造工程において、封止体を形成する樹脂として同じ未硬化のシリコーン系樹脂を充填し、この上に前記の厚さ50μmのシリコーン系樹脂接着層が形成されたエポキシ樹脂レンズを圧接して押し付けて載置した後、150℃×4時間で加熱硬化させ、レンズ付LED装置Eを得た。
【0089】
レンズ付LED装置Eを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したときLED封止内の銀汚染は認められなかった。また、レンズ付LED装置Eの封止体とエポキシ樹脂レンズとの接着性を微小加重測定器にして評価した。その結果、接着強度は10N以上であり問題なかった。また、接着界面に残るボイドを10倍の拡大鏡を用いて観察したところ、全く見つからなかった。また、レンズ付LED装置Eを5分間点灯、2分間消灯を繰り返し5,000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。デラミネーションもしなかった。なお、発熱により温度が高くなるLED素子の近傍にシリコーン樹脂層を設けているために、エポキシ樹脂レンズの変色は抑制されていた。
【0090】
[実施例6]
サイズ100mm×100mmシート内に10個×10個の100個取りの半球レンズを備えたシリコーンレンズアレイの被接着面である裏面をプラズマ処理した。そして、被接着面に厚さ50μmの未硬化のエポキシ系接着剤層を形成し、その上に離形紙を設けて接着層付きシリコーンレンズアレイとした。そして、離形紙を剥離して、10個×10個に整列されたLED装置のシリコーン封止体の表面に圧着した。このようにして100個のレンズ付LED装置Fを形成した。そして、これらを個別化した。
【0091】
レンズ付LED装置Fを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したときLED封止内の銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズとの接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Fを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズの接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0092】
[比較例1]
シリコーン樹脂からなる封止体でLED素子を封止したチップ型LED装置を用いた。なお、このLED装置のLED素子が配置された発光体収容部材の表面には、銀薄膜からなる反射膜が形成されている。
【0093】
プラズマ処理されたシリコーンレンズX1の被接着面にプラズマ処理を終えてから1時間後に透明接着剤である未硬化シリコーン系樹脂を塗布することにより接着層を形成した。そして、シリコーンレンズX1の裏面の接着層をLED装置の封止体に圧接して押し付けることより、封止体とシリコーンレンズX1とが一体化された。そして、150℃×4時間の条件でシリコーン系接着層を熱硬化させることにより、封止体の表面にシリコーンレンズX1が接着された。このようにして、レンズ付LED装置Gを得た。
【0094】
そして実施例1と同様にして、レンズ付LED装置Gを評価した。レンズ付LED装置Gを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が黒化した銀汚染が認められた。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX1との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Gを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ、光量が低下していることがわかった。また、封止体とシリコーンレンズX1の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【符号の説明】
【0095】
1 LED素子
2 透明樹脂封止体
3 発光体収容部材
5a、5b リード
5c 金線
11c ガスバリア層
8 内面反射膜
10 表面実装型LED装置
11、21、61 シリコーンレンズ
11a レンズ部
11b 被接着面
14 接着剤層
20 レンズ付LED装置
21 シリコーンレンズ領域
21C 未硬化樹脂層
30 レンズアレイ
31c 粘着性シリコーン層
40,50 LEDアレイ
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED装置に集光機構を付与するための樹脂レンズ、そのレンズを備えたレンズ付LED装置及びレンズ付LED装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)を用いた発光装置であるLED装置の用途が広がっている。具体的には、例えば、一般室内照明器具、車内灯等のスポットライト、薄型テレビや情報端末機器のバックライト、自動車のテールランプ等で採用されている。
【0003】
LEDからの発光は直進性を有するが、それ以外の方向へも多少分散する。LED装置の発光に求められる指向性は用途に応じて異なる。例えば、一般室内照明器具、スポットライト、自動車のテールランプ等の用途においては、比較的狭い範囲をより明るく照らすことが求められるために、狭い指向角が求められる。一方、薄型テレビや情報端末機器のバックライトの用途においては、広い指向角が求められる。
【0004】
一般的なLED装置は、外気や機械的な衝撃からLEDチップを保護するための透明樹脂からなる封止体を備える。LEDチップから発光された光を集光または拡散する手段として、LEDチップを封止する封止体の形状をレンズ形状に成形した光学レンズ機構が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、LED装置の工業的生産においては、封止体の形状を用途に応じたレンズ形状に成形することはコスト的に困難であるという問題があった。このような問題を解決する方法として、LEDチップを封止するための未硬化の封止樹脂の表面に、予め成形されたレンズを載置した後、封止樹脂を硬化させることにより封止体とレンズとを一体化する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。また、LED素子を封止する樹脂層に接着性を有するプライマー層を形成し、そのプライマー層によってレンズを接着する方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
ところで、LED装置の封止体としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が広く用いられている。エポキシ樹脂は熱を受けることにより黄変するという問題があった。とくに、近年、LED装置の高出力化及び長時間の連続使用により、封止体の黄変がしばしば実用上の問題になっている。封止体に黄変が生じた場合、光の取出し率が低下するという問題があった。このような問題を解決するために、シリコーン樹脂からなる封止体も用いられ始めている。シリコーン樹脂からなる封止体は耐熱性に優れるために、高出力のLED装置に用いて長期使用しても黄変しにくい。しかしながら、シリコーン樹脂はエポキシ樹脂に比べてガス透過性が高いために、次のような問題を生じさせる。
【0006】
LED装置のLEDチップが実装される基板の表面は、通常、反射層として銀メッキ層が形成されている。シリコーン樹脂からなる封止体を用いた場合、ガスバリア性が低いために、窒素酸化物や硫黄酸化物のような腐食性ガスが透過して銀メッキ層に接触することにより、銀メッキ層が黒く変色して光の取り出し効率が低下する。また、封止体を通過した腐食性ガスや水分と電極等に接触することにより、電極等を劣化させるという問題もあった。このような問題を解決する技術として、下記特許文献4は、LED装置の製造時に封止体の表面にガスバリア性に優れたフィルムを貼り合わせて、硬化させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−203201号公報
【特許文献2】特開2010−110894号公報
【特許文献3】特開2010−206206号公報
【特許文献4】特開2000−174347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、LED装置の発光面に設けられるレンズ部材はエポキシ樹脂レンズが広く用いられていた。シリコーン樹脂を封止体として用いたLED装置にエポキシ樹脂レンズを接着した場合、ガスバリア性が比較的高いエポキシ樹脂レンズがシリコーン樹脂からなる封止体を覆うために封止体にガスが透過することを抑制していた。そのために、LED装置の銀メッキ層の黒化等が起こりにくかった。しかし、エポキシ樹脂レンズを備える高出力のLED装置においては、長期使用した場合にLED装置が発光する際発生する熱によってエポキシ樹脂レンズが黄変して、光の取り出し効率が低下するという問題が生じる。
【0009】
そこで、シリコーン樹脂を封止体として用いたLED装置にシリコーンレンズを接着することが試みられたが、シリコーンレンズはガスバリア性が低いために、エポキシ樹脂レンズのようなガスバリア効果を発揮できず、レンズの黄変は抑制できるものの、シリコーン樹脂からなる封止体にガスが透過することによる、LED装置の銀メッキ層の黒化が抑制されないという問題があった。
【0010】
また、引用文献4に開示されたように、LED装置の製造時に封止体表面にガスバリア性に優れたフィルムを貼り合わせて硬化させる方法によれば、確かに、封止体内部へのガスの透過が封止体表面のフィルムにより抑制されると思われる。しかしながら、汎用的なLED装置は外形寸法が数mm程度であり、このような小さな装置の表面に薄いフィルムを貼り合わせることは工業的生産性に乏しいと思われる。
【0011】
本発明は、上述した問題を解決すべく、LED装置の封止体に対して接着することにより、レンズ付LED装置の光量の低下を抑制できる樹脂レンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面は、LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の透明樹脂封止体に接着される樹脂レンズであって、レンズ部と透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するシリコーン樹脂成形体からなるレンズ本体と、被接着面に形成されたガスバリア層とを備え、ガスバリア層がレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い層であることを特徴とする樹脂レンズである。このような樹脂レンズは、高出力のLED装置に用いて長期使用しても黄変しにくく、また、レンズを接着するだけでLED装置の封止体にガスバリア性を付与することができる。
【0013】
ガスバリア層としては、透明無機化合物を含む蒸着膜、具体的には、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、フッ化マグネシウム等の化合物を含む蒸着膜であることが好ましい。また、ガスバリア層としては、ガラス層を含有することも好ましい。ガラス層は封止体に対してとくに高いガスバリア効果を有する。
【0014】
また、ガスバリア層の別の例としては、レンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い透明樹脂層が挙げられ、特に、接着性または粘着性を有する透明樹脂層である透明粘接着剤層である場合には、硬化した透明樹脂封止体の表面に接着剤を塗布することなく樹脂レンズを接着することができる点から好ましい。
【0015】
また、被接着面は中央部が隆起していることが好ましい。被接着面の中央部が隆起している場合には、LED装置の封止体と接着する場合において、空気の巻き込みが起こりにくくなり、界面にボイドを残しにくくなる。
【0016】
また、被接着面は表面改質処理されていることが、ガスバリア層との接着性が高くなる点から好ましい。表面改質処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、イトロ処理、プライマー処理等が挙げられる。
【0017】
また、本発明の他の一局面は、LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の透明樹脂封止体に接着される樹脂レンズであって、レンズ部と透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するエポキシ樹脂成形体からなるレンズ本体と、被接着面に形成されたシリコーン樹脂層とを備えることを特徴とする樹脂レンズである。このような樹脂レンズによれば、封止体とエポキシ樹脂レンズとの間に、耐熱性の高いシリコーン樹脂層を介在させるために、エポキシ樹脂レンズの発光素子の発熱による変色を抑制できる。
【0018】
また、本発明の他の一局面は、平面状に配列された複数個の樹脂レンズを備えたレンズアレイである。このようなレンズアレイを用いることにより、一度に複数個のLED装置にレンズ構造を付与することができる。
【0019】
また、本発明の他の一局面は、LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置と、透明樹脂封止体に接着された上記何れかの樹脂レンズと、を備えたことを特徴とするレンズ付LED装置である。
【0020】
また、本発明の他の一局面は、基板上に配列された複数個のLED装置に上記レンズアレイを接着する工程を備えたレンズ付LED装置の製造方法である。このような製造方法を用いることにより、一度に複数個のLED装置にレンズ構造を付与することができるために、レンズ付LED装置の量産性が向上する。また、このような製造方法においては、接着されて形成された複数のレンズ付LED装置を切断して個別化する工程をさらに備えることが、多数個のレンズ付LED装置を効率的に生産できる点から好ましい。
【0021】
また、回路基板に1つ以上のLED装置を形成した後、シリコーンレンズを後付してなるレンズ付きLED装置の製造方法である。近年のチップ・オン・ボード(COB)の製造方法に伴って、予め回路基板にLED装置が配置されその配光特性に応じて、レンズを選択して後から接着する手法が要請されており、本発明のレンズによれば、より効率的な生産が出来る。本発明を用いれば用途に合わせたレンズを強固に接着することが出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、LED装置の封止体に対してレンズを接着することにより、レンズ付LED装置の光量の低下を抑制できる樹脂レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のレンズ付LED装置20の断面模式図を示す。
【図2】シリコーンレンズ11の斜視模式図を示す。
【図3】被接着面の中央部が隆起しているシリコーンレンズ21の断面模式図を示す。
【図4】LED装置10にシリコーンレンズ11を接着する方法の一例を説明する説明図である。
【図5】LED装置10に大型のシリコーンレンズ61を接着した様子を説明する説明図である。
【図6】LED装置10にシリコーンレンズ11を接着する方法の一例を説明する説明図である。
【図7】LED装置10にシリコーンレンズ11を接着する方法の一例を説明する説明図である。
【図8】LED装置10にシリコーンレンズ11を接着する方法の一例を説明する説明図である。
【図9】レンズアレイ30とLEDアレイ40とを接着する方法を説明する斜視模式図である。
【図10】複数のレンズ付LEDを備えた基板を切断する方法を説明する斜視模式図である。
【図11】複数のレンズ付LED装置の製造方法を説明する模式断面図である。
【図12】本実施形態のレンズ付LED装置120の断面模式図を示す。
【図13】エポキシ樹脂レンズ111の斜視模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
本実施形態のシリコーンレンズ11を備えたレンズ付LED装置20について詳しく説明する。
【0025】
図1はシリコーンレンズ11を備えたレンズ付LED装置20の模式断面図である。図1中、10は表面実装型のLED装置である。
【0026】
LED装置10は、上面が開口した凹部を有する発光体収容部材3を備える。凹部の表面には、LED素子1から発光される光の取り出し効率を高めるために、内面反射膜8が形成されている。内面反射膜8の具体例としては、メッキや蒸着により形成される銀薄膜が挙げられる。そして、凹部の底部からは一対のリード5a,5bが発光体収容部材3の外部へ延出されている。LED素子1の一方の電極は凹部底面のリード5bにダイボンディングされており、また他方の電極はリード5aに金線5cによりワイヤーボンディングされている。そして、LED素子1を収容する凹部は、ディスペンサ等を用いて凹部にポッティングされたシリコーン樹脂等からなる封止剤の硬化物である透明樹脂封止体2により封止されている。そして、透明樹脂封止体2の表面にシリコーンレンズ11が接着されている。
【0027】
図2に示すように、シリコーンレンズ11は、レンズ部11aと被接着面11bとを含むシリコーンレンズ本体と、被接着面11bに形成されたガスバリア層11cとを備える。レンズ部11aは、用途に応じて光学設計されたレンズ形状を有する。シリコーンレンズ本体は、光透過率が高く、シリコーン樹脂は90%以上、さらには、92%以上であるものが好ましい。また、シリコーン樹脂から形成されるために耐熱性が高く、LED素子1から発せられる熱により変色しにくい。
【0028】
シリコーンレンズ11のレンズ部11aの形状は用途に応じて光学設計された形状に成形される。具体的には、光の集光、拡散、屈折、または反射等、用途に応じて入射した光を透過させて出射するときの光路を変更するような形状が選ばれる。このようなレンズ形状の例としては、例えば、凸レンズ、凹レンズ、シリンドリカルレンズ、フレネルレンズ等が挙げられる。
【0029】
また、シリコーンレンズ11の被接着面11bにはレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い層であるガスバリア層11cが形成されている。ガスバリア層の詳細については後述する。
【0030】
シリコーンレンズ11の被接着面11bの形状は平面に限らず、例えば、ドーム状に成形されたLED装置の封止体のドーム形状に沿った凹状形状であっても、図3に示すような中央部が隆起した凸形状であってもよい。また、中央部が窪んだ凹形状であってもよい。被接着面の中央部が隆起しているシリコーンレンズ21には、凸形状の被接着面にガスバリア層21cが形成されている。このようなシリコーンレンズ21を用いた場合には、接着剤や封止剤と貼り合わせる際に、空気を巻き込みにくくなる。隆起の高さは、例えば平面の被接着面に比べてレンズ直径に対して1〜10%程度中央部がなだらかに隆起していることが好ましい。窪みの深さは、LED装置の封止体形状に合わせた形であればよく、例えば直径3mmの半球状の封止体の表面形状であれば、それよりもやや大きい窪みを有していればよい。
【0031】
次に、シリコーンレンズの製造方法について詳しく説明する。シリコーンレンズは、シリコーン樹脂を成形して得られたシリコーンレンズ本体の被接着面にガスバリア層を形成することにより得られる。
【0032】
シリコーンレンズ本体の成形はシリコーン樹脂の成形に用いられている公知の方法、具体的には、例えば、注型成形、圧縮成形、射出成形等が用いられる。低温で精密な成形が可能である点から、液状の付加反応硬化型のシリコーン樹脂組成物を用いた注型成形がとくに好ましい。
【0033】
シリコーンレンズ本体を成形するためのシリコーン樹脂は、光透過率に優れたシリコーン樹脂であれば、特に限定なく用いられ、硬質のシリコーン樹脂の他、シリコーンゴムまたはシリコーンエラストマーであってもよい。
【0034】
付加反応硬化型のシリコーン樹脂組成物としては、硬化することにより透明なシリコーン樹脂を形成する未硬化シリコーン樹脂組成物であれば特に限定されない。具体的には、例えば、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系触媒等の重金属系触媒を含む組成物が挙げられる。
【0035】
オルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、下記一般式(1):
RaSiO(4-a)/2 …(1)
(式中、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜10の非置換または置換一価炭化水素基であり、aは0.8〜2の正数である。)で示されるものが挙げられる。
【0036】
非置換または置換一価炭化水素基であるRの具体例としては、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基等のアルキル基;ビニル基,アリル基,ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基,トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;これらの炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;あるいは、シアノ基で置換された2−シアノエチル基等のシアノ基置換炭化水素基;等が挙げられる。これらの中では、全Rのうち5〜80モル%がフェニル基であるものが、光学レンズの耐熱性および透明性に優れる点からとくに好ましい。
【0037】
また、Rとしてビニル基等のアルケニル基を含むもの、特に全Rのうちの1〜20モル%がアルケニル基であるものが好ましく、中でもアルケニル基を1分子中に2個以上有するものが好ましく用いられる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば末端にビニル基等のアルケニル基を有するジメチルポリシロキサンやジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の末端アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンが挙げられ、特に常温で液状のものが好ましく用いられる。
【0038】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。また、触媒としては、白金、白金化合物、ジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウリレート等の有機金属化合物、またはオクテン酸錫のような金属脂肪酸塩などが挙げられる。これらオルガノハイドロジェンポリシロキサンや触媒の種類や量は、架橋度や硬化速度を考慮して適宜選択される。
【0039】
シリコーン樹脂組成物の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製の「KJR632」等が挙げられる。
【0040】
また、シリコーン樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、LED素子から発光させる光の波長を変換することにより、発光色を変換するための蛍光体や、光を拡散させるための光拡散剤等を含んでもよい。また、シリコーンレンズ11の内部または表面には、さらに蛍光体層、カラーフィルター層や光拡散層を設けてもよい。また、シリコーンレンズ11は、被接着面側にシリコーンゲルやシリコーンエラストマーなどの緩衝層を設けたレンズであると、LED装置の封止体とシリコーンレンズ11との熱膨張の差による内部応力を緩和させることができ好ましい。
【0041】
シリコーン樹脂組成物中に必要に応じて配合される蛍光体の具体例としては、例えば、発光色が青色の(Ca,Sr,Ba)5(PO4)3Cl:Eu2+、ZnS:Ag、CaS:Bi等、発光色が緑色のBaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+、ZnS:Cu,Al,Au、SrAl2O4:Eu2+、Zn2Si(Ge)O4:Eu2+等、発光色が赤色のY2O2S:Eu3+、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、LiEuW2O8、BaO・Gd2O3・Ta2O5:Mn、K5Eu2.5(WO4)6.25等が挙げられる。
【0042】
また、光拡散剤の具体例としては、例えば、ガラスパウダーや、炭酸カルシウム,酸化チタン,酸化亜鉛等の無機フィラーが挙げられる。
【0043】
次に、シリコーンレンズ本体の被接着面11bに形成されるガスバリア層11cについて詳しく説明する。
【0044】
ガスバリア層としては、シリコーンレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い材料から形成された層であれば特に限定無く選ぶことができる。このような層の具体例としては、例えば、透明無機化合物を含む蒸着膜、ガラス層、シリコーンレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い透明樹脂層等が挙げられる。
【0045】
蒸着膜の具体例としては、ガスバリア性が高い、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、または、フッ化マグネシウム等の透明無機化合物を含む蒸着膜が挙げられる。
【0046】
蒸着膜は、公知の気相薄膜形成法を用いてシリコーンレンズの被接着面に形成される。なお、蒸着時においては、シリコーンレンズの被接着面のみが露出するように、その他の表面をマスキングして蒸着することにより、シリコーンレンズの被接着面のみに蒸着膜を形成することもできる。なお、本発明の効果を阻害しない範囲の厚みであれば、レンズ部にも蒸着膜が形成されてもよい。このような、蒸着膜の膜厚としては、数nm〜数百nm程度であることが好ましい。蒸着膜の膜厚が厚すぎる場合には、光透過率が低下したり、大きな乱反射を発生させる原因になる傾向がある。また、蒸着膜の膜厚が薄すぎる場合には、ガスバリア性が充分に向上しない傾向がある。
【0047】
ガラス層の具体例としては、例えば、低温でガラス膜の形成が可能なゾルゲル法を用いたガラス薄膜形成法により形成されるガラス層や、極薄板ガラス(松浪硝子工業(株)製)等が用いられる。
【0048】
ゾルゲル法で形成されるガラス組成としては、SiO2やSiO2とPBO,ZnO,Al2O3等を混合した組成等が挙げられる。このようなゾルゲル法を用いて得られるガラス薄膜の膜厚としては、0.1〜500μm、更には10〜200μm程度であることが好ましい。
【0049】
また、極薄板ガラスの膜厚としては、10〜500μm、さらには50〜300μm程度であることが好ましい。
【0050】
透明樹脂層の具体例としては、レンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂,アクリル樹脂,及びウレタン樹脂等からなる透明樹脂層が挙げられる。これらの中では、エポキシ樹脂がガスバリア性と接着性とのバランスに優れる点から好ましい。
【0051】
また、透明樹脂層として、シリコーン樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂及びこれらのシリコーン変性樹脂等からなる粘接着作用を有する透明粘接着剤層、具体的には、例えば、未硬化の透明接着剤層や半硬化透明接着剤層、粘着性シリコーン樹脂層などを設けた場合、LED装置10の硬化した封止体2の表面に接着剤を塗布することなくシリコーンレンズを強固に接着することができるために製造工程の省力化の点から好ましい。透明粘接着剤層としては、エポキシ樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂及びこれらのシリコーン変性樹脂から形成された粘着剤層または接着剤層や、シリコーンゲル,シリコーンゴム,又はシリコーンエラストマーから形成された粘着性シリコーン樹脂層等が挙げられる。なお、粘着性シリコーン樹脂層は応力緩和性に優れているため封止体とシリコーンレンズとの材質の線膨張係数の違いによる内部応力を緩和し、デラミネーションを抑制する効果が特に高い点から好ましい。また、シリコーン樹脂系の透明粘接着剤層は耐熱性に優れ、アクリル、ウレタン、エポキシ系の透明粘接着剤層は粘着強度に優れている。
【0052】
透明樹脂層の厚みとしては、適宜用途に応じて選択できるが、3〜2000μm、さらには20〜500μmの範囲であることが好ましい。透明樹脂層の厚みが薄すぎる場合には、封止樹脂の凹凸に追従できなくなり十分な接着が出来ず、生産性が低下する傾向があり、厚すぎる場合には、配光特性を損なう傾向がある。
【0053】
また、被接着面に形成された透明樹脂層が透明粘接着剤層である場合には、その表面に離形シートが貼り合わされていることが好ましい。このような、未硬化の透明接着剤層や粘着性シリコーン層などの透明粘着剤層の表面に離形シートを貼り合わせておくことにより、シリコーンレンズの保管や移送等の取り扱い性が向上する。また、レンズ付LED装置の製造時においては、硬化した透明樹脂封止体の表面に接着剤を塗布することなく、離形紙を剥がして露出する透明接着剤層や粘着性シリコーン層などの透明粘着剤層を、封止体の表面に圧接させて貼り合わせることにより、透明樹脂封止体の表面にシリコーンレンズを固定することができる点から好ましい。また、特に好ましくは、一面を離形紙で覆った未硬化透明樹脂や粘着性シリコーンなどの透明粘着剤を粘着層とする両面粘着テープを、シリコーンレンズの被接着面に貼り合わせることが特に好ましい。両面粘着テープを用いて被接着面に透明樹脂層を形成することは生産性に優れており、また、離形紙を剥がすことにより透明樹脂層が露出するために、LED装置の封止体の表面に接着することが容易になる。
【0054】
上述したようなガスバリア層を形成するに際しては、レンズ本体の被接着面に表面改質処理を施すことが好ましい。ここで、表面改質処理とは、被接着面の表面を活性化させる処理であり、具体的には、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、イトロ処理、プライマー処理等のように、被接着面の表面に極性基を生成させること等によりガスバリア層に対する接着性を改良する処理である。ガスバリア層が形成される被接着面にこのような表面改質処理を施すことにより、被接着面とガスバリア層との接着力が向上する。
【0055】
プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理による表面改質処理の方法は、従来から知られたプラズマ処理装置、コロナ処理装置、UV処理装置、フレーム処理装置、イトロ処理装置等を用いた処理方法が特に限定なく用いられる。
【0056】
また、プライマー処理に用いられるプライマー剤としては、シランカップリング剤又はその部分加水分解縮合物等を含む処理液が挙げられる。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0057】
表面改質処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理の後、プライマー処理をすることがとくに好ましい。具体的には、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理された被接着面に、プライマー処理液を薄く塗った後、室温〜170℃程度の雰囲気で乾燥することが好ましい。
【0058】
なお、上述のプラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理の表面改質処理された被接着面は、水に対する接触角が90度以下であることが好ましく、効率上の下限値を考慮すると1〜90度、さらには1〜50度の範囲であることが好ましい。被接着面の水に対する接触角がこのような範囲であることにより、接着剤や封止剤等との濡れ性が良好になることにより封止体との接着性が向上する。なお、表面改質処理される前の被接着面は、通常、100〜120度程度である。表面処理により、1〜90度程度被接着面の水に対する接触角が低下することが好ましい。表面処理がプライマー処理の場合は水に対する接触角が90度より大きくて、例えば100〜120であっても十分な接着強度を有する。このような接触角は、JIS K3257「基板ガラス表面のぬれ製試験方法」により測定される。
【0059】
次に、上述したようなシリコーンレンズをLED装置に接着する方法について説明する。シリコーンレンズをLED装置に接着する方法の具体例としては、例えば、(I)表面実装型LED装置の製造の際に、硬化前の封止剤にシリコーンレンズを載せた後、封止剤を硬化させることにより、硬化した封止体にシリコーンレンズを接着する方法、(II)表面実装型LED装置の硬化した封止体の表面に接着剤を介してシリコーンレンズを接着する方法、(III)表面実装型LED装置の硬化した封止体の表面に透明接着剤層を用いて接着させる方法、(IV)表面実装型LED装置の硬化した封止体の表面に透明粘着剤層を用いて粘着させる方法等が挙げられる。
【0060】
図4は、方法(I)を模式的に説明する図である。図4に示すように、LED装置10の製造時に発光体収容部材3の凹部にポッティングされた未硬化の封止剤2aの表面にシリコーンレンズ11の被接着面に形成されたガスバリア層11cの表面を密着させるようにして載置し、加熱又は光照射等により封止剤を硬化させる。このような方法によれば、LED装置10の製造時にシリコーンレンズを接着して一体化することができるために、レンズの接着が容易である点から好ましい。しかしながらこのような方法によれば、次のような問題も生じる。LED装置の工業的生産においては、多数個取りの取り数を増やすために支持基板上で隣接するLED装置のピッチ間隔を狭くしている。このように支持基板上で隣接するLED装置のピッチ間隔が狭いために、工業的生産においては、例えば、図5に示すような、指向特性を大幅に変化させるような大きなシリコーンレンズ61をLED装置に付与することは困難であった。大きなシリコーンレンズ61を接着するためには、LED装置のピッチ間隔を広くする必要があり、このような場合には量産性に不利になるという問題がある。
【0061】
図6は、方法(II)を模式的に説明する図である。図6に示すように、LED装置10の硬化した封止体2の表面に接着剤14を塗布し、封止体2とシリコーンレンズ11の被接着面に形成されたガスバリア層11cとを接着剤14を介して密着させた後、接着剤14を硬化させる。このような方法によれば、個別のLED装置にシリコーンレンズを接着することができるために、図5に示すような大きなレンズ61を付与することができる等、レンズ形状の選択に幅が広がる。
【0062】
図7は、方法(III)を模式的に説明する図である。図7に示すように、LED装置10の硬化した封止体2の表面に、シリコーンレンズ11の被接着面に形成されたガスバリア層でもある未硬化の樹脂層21cを密着させた後、硬化させる。このような方法によれば、レンズを接着する際に封止体の表面に接着剤を塗布する必要がないために、製造工程を大幅に省略できる点から好ましい。
【0063】
図8は、方法(IV)を模式的に説明する図である。図8に示すように、LED装置10の硬化した封止体2の表面に、シリコーンレンズ11の被接着面に形成されたガスバリア層でもある粘着性シリコーン層31cを密着させて粘着力または分子間吸着力により固体間接着させる。このような方法によれば、レンズを接着する際に界面を硬化させる必要がないために、製造工程を大幅に省略できる点から好ましい。
【0064】
以上説明したような本実施形態の、LED装置の透明樹脂封止体に接着される被接着面にガスバリア層が形成されたシリコーンレンズによれば、LED装置の封止体に対してガスの透過を抑制することができる。
【0065】
[第2実施形態]
LED装置にシリコーンレンズを接着する方法としては、別個独立したLED装置にそれぞれ一つずつシリコーンレンズを接着する方法の他、複数のLED装置に複数個のシリコーンレンズを備えたレンズアレイを接着してもよい。本実施形態においては、複数個のシリコーンレンズが配置されたレンズアレイ用いることにより、基板上に配列された複数個のLED装置のそれぞれに一度に複数個のシリコーンレンズを接着する方法について図9を参照して説明する。
【0066】
図9において、30は平面状に複数個のシリコーンレンズが配列された一枚のレンズアレイを示す。レンズアレイ30はシリコーンレンズ領域21を複数個備えたシリコーン樹脂の一体成形体である。レンズアレイ30の裏面になる被接着面には第1実施形態で説明したのと同様にガスバリア層が形成されている。また、40は一枚の回路基板上に複数個のLED装置10を配列して実装したLEDアレイである。
【0067】
レンズアレイ30の裏面のシリコーンレンズ領域21の被接着面には第1実施形態で説明したのと同様にガスバリア層が形成されている。また、第1実施形態で説明したのと同様にガスバリア層が形成される被接着面には予め表面改質処理が施されていてもよい。
【0068】
図9(a)に示すように、LEDアレイ40の各LED装置10とレンズアレイ30の各シリコーンレンズ領域21とが対向するように、LEDアレイ40にレンズアレイ30を配置し、図9(b)に示すように重ねあわせる。そして、重ね合わせた状態で、必要に応じて接着面の接着剤または封止剤を硬化させる。このような方法によれば、一度に複数個のLED装置にレンズ構造を付与することができるために、レンズ付LED装置の量産性が向上する。
【0069】
回路基板上の回路が複数個のLED装置10を繋ぐものである場合には、このようにして形成されたLEDアレイ40とレンズアレイ30との接着構成体は、そのままで、複数のレンズ付LED装置アレイとして、例えば、自動車のヘッドランプや、LED照明装置や、LEDディスプレイのバックライト照明等の用途に用いることができる。また、回路基板上の回路が各LED装置10毎に独立したものである場合には、図10に示すように、形成された各レンズ付LED装置をレーザー装置100による切断加工や、ダイシングソー等により個別に切断することにより、複数個のレンズ付LED装置が得られる。
【0070】
また、図11を参照して別の製造方法を説明する。図11中、50は平面状に複数個のシリコーンレンズ領域51が配列された一枚のレンズアレイであって、シリコーン樹脂の一体成形体である。各シリコーンレンズ領域51は、それぞれLED装置10を収容できる凹状のLED装置収容部52を備える。なお、LED装置収容部52の表面になる、レンズ本体の被接着面には第1実施形態で説明したのと同様にガスバリア層が形成されている。本製造方法では、図11に示すように、レンズアレイ50の各LED装置収容部52に、発光面をレンズ側に配置してLED装置10を挿入して、接着剤等を介して接着させる。このような方法によれば、一度に複数個のLED装置にレンズ構造を付与することができるために、レンズ付LED装置の量産性が向上する。また、レンズ同士の間隔を自由に広げることができる。なお、このような方法により得られた複数のレンズ付LED装置も、図11に示すように、破線で示した部分でレーザー装置やダイシングソー等により個別に切断することにより、複数個のレンズ付LED装置に分けることもできる。
【0071】
[第3実施形態]
エポキシ樹脂は、ガスバリア性が高いので、銀薄膜の反射層の劣化を防止する観点から封止体として広く用いられている。しかし、LED素子から発せられる熱や短波長の光により劣化して変色しやすいという欠点がある。一方、シリコーン樹脂は、LED素子から発せられる短波長の光や熱に対しては変色しにくいが、ガスバリア性が低いために銀薄膜の反射層の黒化が起こりやすいという欠点がある。このように、封止体としてエポキシ樹脂を用いた場合には樹脂の変色等により光量が低下する傾向があり、封止体としてシリコーン樹脂を用いた場合には、銀薄膜の黒化により量が低下する傾向があった。このような場合において、封止体としてシリコーン樹脂を用い、その封止体にガスバリア性の高いエポキシ樹脂レンズを接着させることによりシリコーン樹脂の封止体に対してガスの透過を抑制することができる。しかし、シリコーン樹脂からなる封止体に対するエポキシ樹脂レンズの接着性は低いという問題があった。また、エポキシ樹脂レンズが、LED素子から発せられる熱が伝わることにより変色するという問題もあった。
【0072】
シリコーン樹脂からなる封止体に対するエポキシ樹脂レンズの接着性は低いという問題は、エポキシ樹脂レンズの被接着面に、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、イトロ処理、又はプライマー処理等の表面改質処理、好ましくは、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理の後にプライマー処理を施すことにより、著しく接着性が改善することができる。また、エポキシ樹脂レンズが、LED素子から発せられる熱が伝わることによりLED発光素子の選択や光学設計上選択されるエポキシ樹脂の種類によっては変色するという問題は、エポキシ樹脂レンズの被接着面に以下に説明するシリコーン樹脂層を形成することにより解決できる。
【0073】
本実施形態においては、レンズ部と透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するエポキシ樹脂成形体からなるレンズ本体と、被接着面に形成されたシリコーン粘着剤やシリコーン接着剤などのシリコーン樹脂層とを備える樹脂レンズについて詳しく説明する。このような構成によれば、透明樹脂封止体からエポキシ樹脂レンズに伝わる熱を抑制することにより、エポキシ樹脂レンズの変色を抑制することができ、それにより、レンズの変色による光の取り出し効率の低下を抑制することができる。なお、第1実施形態及び第2実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0074】
本実施形態のエポキシ樹脂レンズ111を備えたレンズ付LED装置120について詳しく説明する。
【0075】
図12はエポキシ樹脂レンズ111を備えたレンズ付LED装置120の模式断面図である。透明樹脂封止体2の表面にエポキシ樹脂レンズ111が接着されている。
【0076】
図12に示すように、エポキシ樹脂レンズ111は、レンズ部111aと被接着面111bとを含むエポキシ樹脂レンズ本体と、被接着面111bに形成されたシリコーン樹脂層111cとを備える。レンズ部111aは、用途に応じて光学設計されたレンズ形状を有する。エポキシ樹脂レンズ111のエポキシ樹脂成形体からなるレンズ本体は、耐熱性の高いシリコーン樹脂層111cを介してLED素子1から遠く位置するように接着されるために、熱や光に対して劣化しにくくまる。また、エポキシ樹脂レンズ111はエポキシ樹脂を主体としているために、シリコーン樹脂封止体の表面のガスバリア層として機能するために、銀薄膜の反射層の黒化を抑制することができる。なお、エポキシ樹脂レンズの被接着面を、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、フレーム処理、又はイトロ処理の後、プライマー処理など表面改質処理をすることにより強固な接着性を得る。また、好ましくは、被接着面111bに耐熱性の高いシリコーン粘着剤やシリコーン接着剤などのシリコーン樹脂層111cを形成することで強固に接着したレンズ付LED装置となる。シリコーン樹脂層111cをLED装置10の透明樹脂封止体2の表面とエポキシ樹脂レンズ本体との間に介在させることにより、発熱により温度が高くなるLED素子1の近傍からエポキシ樹脂レンズ本体を遠ざけることにより、エポキシ樹脂レンズの変色を抑制することができる。シリコーン樹脂層111cの厚みとしては、熱伝導の観点から6〜4000μm、好ましくは25〜600μm程度であることが好ましい。
【実施例】
【0077】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
シリコーン樹脂からなる封止体でLED素子を封止したチップ型LED装置を用いた。なお、このLED装置のLED素子が配置された発光体収容部材の表面には、銀薄膜からなる反射膜が形成されていた。なお、以下の実施例及び比較例で用いたLED装置においても、全て反射膜が形成されているものを用いた。
【0079】
ケイ素原子にフェニル基が結合したオルガノポリシロキサンをベースポリマーとするシリコーン樹脂原料組成物であるKJR632(信越化学工業(株)製)をレンズ形状をキャビティとする金型に流し込み、150℃で熱硬化させることにより平凸レンズ形状を有するシリコーンレンズX1を得た。シリコーンレンズX1は、直径5mmの略円状の外周を有し、レンズ部は中央部が高さ4.2mmの凸に隆起しており、被接着面の中央部は0・2mm程度凸に隆起していた。
【0080】
シリコーンレンズX1の被接着面をプラズマ処理した。プラズマ処理は大気圧プラズマ装置を用いてシリコーンレンズX1を回転させながら全体に3分間処理を行った。同様にして、LED装置の封止体表面もプラズマ処理した。なお、プラズマ処理前のシリコーンレンズX1の被接着面の水に対する接触角は110度であり、プラズマ処理後のシリコーンレンズX1の被接着面の水に対する接触角は5度であった。
【0081】
プラズマ処理したシリコーンレンズX1の被接着面以外の部分をマスキングテープを貼ることによりマスクした。そして、シリコーンレンズX1を蒸着装置の真空チャンバー内に導入し、シリコンをターゲットとして、真空チャンバー内に酸素ガスを流しながら、シリコーンレンズX1に酸化ケイ素膜を蒸着することによりシリコーンレンズX2を得た。得られた酸化ケイ素膜の厚みは10nmであった。
【0082】
そして、シリコーンレンズX2の被接着面に未硬化シリコーン系樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TSE3221S 一液型熱硬化タイプシリコーン接着剤)を塗布することにより接着層を形成した。そして、シリコーンレンズX2の裏面の接着層をLED装置の封止体に圧接して押し付けることにより、封止体とシリコーンレンズX2とが一体化された。そして、150℃×4時間の条件でシリコーン系接着層を熱硬化させることにより、封止体の表面にシリコーンレンズX2が接着された。このようにして、レンズ付LED装置Aを得た。
【0083】
そして、レンズ付LED装置Aを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が部分的に黒化した銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX2との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Aを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズX2の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0084】
[実施例2]
プラズマ処理されたシリコーンレンズX1の被接着面にゾルゲルガラス溶液である液体ガラスを塗布した。そして、室温にて1時間乾燥することにより、厚み5μmのガラス薄膜を形成した。このようにして、シリコーンレンズX3が得られた。そして、実施例1と同様にしてガラス薄膜が形成されたシリコーンレンズX3の被接着面を封止体の表面にシリコーン樹脂系接着剤で接着した。このようにして、レンズ付LED装置Bを得た。そして実施例1と同様にしてレンズ付LED装置Bを評価した。レンズ付LED装置Bを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が部分的に黒化した銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX3との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Bを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズX3の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0085】
[実施例3]
プラズマ処理したシリコーンレンズX1の被接着面に、未硬化エポキシ系樹脂(稲畑産業(株)、商品名:EH1600−G2)を塗布して、厚さ50μmの未硬化のエポキシ系接着剤層を形成した。このようにして、シリコーンレンズX4が得られた。そして、実施例1と同様に、シリコーンレンズX4の裏面のエポキシ系接着剤層をLED装置の封止体に圧接して押し付けることより、封止体とシリコーンレンズX4とが一体化された。そして、150℃×4時間の条件でエポキシ系接着剤層を熱硬化させることにより、封止体の表面にシリコーンレンズX4が接着された。このようにして、レンズ付LED装置Cを得た。そして実施例1と同様にしてレンズ付LED装置Cを評価した。レンズ付LED装置Cを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が部分的に黒化した銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX4との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10Nであった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Cを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ殆ど変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズX4の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0086】
[実施例4]
LED装置の製造工程において、封止体を形成する樹脂として未硬化エポキシ系樹脂(稲畑産業(株)、商品名:EH1600−G2)を充填し、この上にさらに厚さ50μmの未硬化のエポキシ系接着剤層が形成された実施例3のシリコーンレンズX4を載置して150℃×4時間で加熱硬化させ、レンズ付LED装置Dを得た。
【0087】
そして実施例1と同様にして、レンズ付LED装置Dを評価した。レンズ付LED装置Dを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が部分的に黒化した銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX4との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Dを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズX4の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0088】
[実施例5]
エポキシ樹脂レンズの被接着面をプラズマ処理した。そして、エポキシ樹脂レンズの被接着面に厚さ50μmの未硬化のシリコーン系樹脂を塗布することによりシリコーン系樹脂接着層を形成した。そして、LED装置の製造工程において、封止体を形成する樹脂として同じ未硬化のシリコーン系樹脂を充填し、この上に前記の厚さ50μmのシリコーン系樹脂接着層が形成されたエポキシ樹脂レンズを圧接して押し付けて載置した後、150℃×4時間で加熱硬化させ、レンズ付LED装置Eを得た。
【0089】
レンズ付LED装置Eを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したときLED封止内の銀汚染は認められなかった。また、レンズ付LED装置Eの封止体とエポキシ樹脂レンズとの接着性を微小加重測定器にして評価した。その結果、接着強度は10N以上であり問題なかった。また、接着界面に残るボイドを10倍の拡大鏡を用いて観察したところ、全く見つからなかった。また、レンズ付LED装置Eを5分間点灯、2分間消灯を繰り返し5,000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。デラミネーションもしなかった。なお、発熱により温度が高くなるLED素子の近傍にシリコーン樹脂層を設けているために、エポキシ樹脂レンズの変色は抑制されていた。
【0090】
[実施例6]
サイズ100mm×100mmシート内に10個×10個の100個取りの半球レンズを備えたシリコーンレンズアレイの被接着面である裏面をプラズマ処理した。そして、被接着面に厚さ50μmの未硬化のエポキシ系接着剤層を形成し、その上に離形紙を設けて接着層付きシリコーンレンズアレイとした。そして、離形紙を剥離して、10個×10個に整列されたLED装置のシリコーン封止体の表面に圧着した。このようにして100個のレンズ付LED装置Fを形成した。そして、これらを個別化した。
【0091】
レンズ付LED装置Fを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したときLED封止内の銀汚染は認められなかった。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズとの接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Fを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ変化は見られなかった。また、封止体とシリコーンレンズの接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【0092】
[比較例1]
シリコーン樹脂からなる封止体でLED素子を封止したチップ型LED装置を用いた。なお、このLED装置のLED素子が配置された発光体収容部材の表面には、銀薄膜からなる反射膜が形成されている。
【0093】
プラズマ処理されたシリコーンレンズX1の被接着面にプラズマ処理を終えてから1時間後に透明接着剤である未硬化シリコーン系樹脂を塗布することにより接着層を形成した。そして、シリコーンレンズX1の裏面の接着層をLED装置の封止体に圧接して押し付けることより、封止体とシリコーンレンズX1とが一体化された。そして、150℃×4時間の条件でシリコーン系接着層を熱硬化させることにより、封止体の表面にシリコーンレンズX1が接着された。このようにして、レンズ付LED装置Gを得た。
【0094】
そして実施例1と同様にして、レンズ付LED装置Gを評価した。レンズ付LED装置Gを亜硫酸ガス雰囲気中に24時間放置したところ、LED封止内の銀薄膜が黒化した銀汚染が認められた。また、LED装置の封止体とシリコーンレンズX1との接着性を微小加重測定器にて評価した。その結果、接着強度は10N以上であった。また、接着界面を10倍の拡大鏡を用いて観察したところボイドは全く見つからなかった。そして、レンズ付LED装置Gを5分間点灯の後2分間消灯のサイクルを繰り返して5000時間発光させた後の光量を測定したところ、光量が低下していることがわかった。また、封止体とシリコーンレンズX1の接着面には、デラミネーションは発生していなかった。
【符号の説明】
【0095】
1 LED素子
2 透明樹脂封止体
3 発光体収容部材
5a、5b リード
5c 金線
11c ガスバリア層
8 内面反射膜
10 表面実装型LED装置
11、21、61 シリコーンレンズ
11a レンズ部
11b 被接着面
14 接着剤層
20 レンズ付LED装置
21 シリコーンレンズ領域
21C 未硬化樹脂層
30 レンズアレイ
31c 粘着性シリコーン層
40,50 LEDアレイ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の該透明樹脂封止体に接着される樹脂レンズであって、
レンズ部と前記透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するシリコーン樹脂成形体からなるレンズ本体と、前記被接着面に形成されたガスバリア層とを備え、
前記ガスバリア層がレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い層であることを特徴とする樹脂レンズ。
【請求項2】
前記ガスバリア層が透明無機化合物を含む蒸着膜である請求項1に記載の樹脂レンズ。
【請求項3】
前記ガスバリア層がガラス層を含む請求項1または2に記載の樹脂レンズ。
【請求項4】
前記ガスバリア層が透明樹脂層を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項5】
前記透明樹脂層が透明粘接着剤層を含む請求項4に記載の樹脂レンズ。
【請求項6】
前記被接着面は中央部が隆起している請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項7】
前記被接着面が表面改質処理されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項8】
LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の該透明樹脂封止体に接着される樹脂レンズであって、
レンズ部と前記透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するエポキシ樹脂成形体からなるレンズ本体と、前記被接着面に形成されたシリコーン樹脂層とを備えることを特徴とする樹脂レンズ。
【請求項9】
平面状に配列された複数個の請求項1〜8の何れか1項に記載の樹脂レンズを備えたことを特徴とするレンズアレイ。
【請求項10】
LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置と、該透明樹脂封止体に接着された請求項1〜8の何れか1項に記載の樹脂レンズと、を備えたことを特徴とするレンズ付LED装置。
【請求項11】
基板上に配列された複数個の前記LED装置に、前記樹脂レンズが前記各LED装置に対向するように配置された請求項9に記載のレンズアレイを接着する工程を備えたことを特徴とするレンズ付LED装置の製造方法。
【請求項12】
接着されて形成された複数の前記レンズ付LED装置を切断して個別化する工程をさらに備える請求項11に記載のレンズ付LED装置の製造方法。
【請求項13】
回路基板に1つ以上のLED装置を形成した後、請求項1〜8の樹脂レンズを後付してなるレンズ付きLED装置の製造方法。
【請求項1】
LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の該透明樹脂封止体に接着される樹脂レンズであって、
レンズ部と前記透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するシリコーン樹脂成形体からなるレンズ本体と、前記被接着面に形成されたガスバリア層とを備え、
前記ガスバリア層がレンズ本体を形成するシリコーン樹脂よりもガスバリア性の高い層であることを特徴とする樹脂レンズ。
【請求項2】
前記ガスバリア層が透明無機化合物を含む蒸着膜である請求項1に記載の樹脂レンズ。
【請求項3】
前記ガスバリア層がガラス層を含む請求項1または2に記載の樹脂レンズ。
【請求項4】
前記ガスバリア層が透明樹脂層を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項5】
前記透明樹脂層が透明粘接着剤層を含む請求項4に記載の樹脂レンズ。
【請求項6】
前記被接着面は中央部が隆起している請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項7】
前記被接着面が表面改質処理されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂レンズ。
【請求項8】
LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置の該透明樹脂封止体に接着される樹脂レンズであって、
レンズ部と前記透明樹脂封止体に接着される被接着面とを有するエポキシ樹脂成形体からなるレンズ本体と、前記被接着面に形成されたシリコーン樹脂層とを備えることを特徴とする樹脂レンズ。
【請求項9】
平面状に配列された複数個の請求項1〜8の何れか1項に記載の樹脂レンズを備えたことを特徴とするレンズアレイ。
【請求項10】
LED素子を封止する透明樹脂封止体を備えたLED装置と、該透明樹脂封止体に接着された請求項1〜8の何れか1項に記載の樹脂レンズと、を備えたことを特徴とするレンズ付LED装置。
【請求項11】
基板上に配列された複数個の前記LED装置に、前記樹脂レンズが前記各LED装置に対向するように配置された請求項9に記載のレンズアレイを接着する工程を備えたことを特徴とするレンズ付LED装置の製造方法。
【請求項12】
接着されて形成された複数の前記レンズ付LED装置を切断して個別化する工程をさらに備える請求項11に記載のレンズ付LED装置の製造方法。
【請求項13】
回路基板に1つ以上のLED装置を形成した後、請求項1〜8の樹脂レンズを後付してなるレンズ付きLED装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−138425(P2012−138425A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288686(P2010−288686)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]