説明

樹脂ワニス、樹脂膜、半導体装置および表示体装置

【課題】 本発明の目的は、上記問題を鑑み、ウエハ上に樹脂膜形成する際、気泡によるクラックを抑制でき、信頼性に優れた樹脂組成物およびそれを用いた硬化膜、保護膜、絶縁膜、半導体装置および表示体装置を提供することにある。
【解決手段】 本発明の樹脂ワニスは、半導体ウエハまたは表示体装置に用いられる樹脂膜を形成するための樹脂ワニスであって、前記樹脂ワニスは、50[cc]容量のメスシリンダーに液面高さが20cmとなるように該樹脂ワニスを採取し、ゲージ圧−98[kPa]で60分間処理した際の気泡の数が5個以下であることを特徴とする。また、本発明の樹脂膜は、上記に記載の樹脂ワニスを塗布してなることを特徴とする。また、本発明の半導体装置は、上記に記載の樹脂膜を有していることを特徴とする。また、本発明の表示体装置は、上記に記載の樹脂膜を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ワニス、樹脂膜、半導体装置および表示体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には、耐熱性に優れ、かつ卓越した電気特性、機械特性等を有するポリイミド樹脂等が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
このポリイミド樹脂は、樹脂を含有する樹脂ワニスとして用いられ、スピンコート法によりウエハ上に塗膜形成し、その後に加熱処理により溶剤の一部を除去し乾燥して使用されている。
【0003】
しかし、このような樹脂ワニスを用いて塗布膜を形成した場合に、塗布膜にクラック等が発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−203698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、この原因について検討した結果、上述したような樹脂ワニスが高粘度であるために、樹脂ワニスに溶存している気泡を樹脂ワニスから完全に除去することが困難であることを見出し、かつ、この樹脂ワニスに溶存している気泡のために、塗布後の樹脂膜中に気泡が残存し、結果として、この気泡を起因としたクラックを生じることを見出した。
本発明の目的は、上記問題を鑑み、ウエハ上に樹脂膜を形成する際、気泡によるクラックを抑制でき、信頼性に優れた樹脂ワニスおよびそれを用いた絶縁膜、半導体装置および表示体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(8)に記載の本発明により達成される。
(1)半導体ウエハまたは表示体装置に用いられる樹脂膜を形成するための樹脂ワニスであって、前記樹脂ワニスは、50[cc]容量のメスシリンダーに液面高さが20cmとなるように該樹脂ワニスを採取し、ゲージ圧−98[kPa]で60分間処理した際の気泡の数が5個以下であることを特徴とする樹脂ワニス。
(2)前記樹脂ワニスの25℃での溶液粘度は、100〜10,000(cP)である上記(1)に記載の樹脂ワニス。
(3)前記樹脂ワニスは、アルカリ可溶性樹脂と、感光剤と、溶媒とを含む樹脂組成物で構成されているものである上記(1)または(2)に記載の樹脂ワニス。
(4)前記樹脂ワニスは、さらに界面活性剤を含むものである上記(3)に記載の樹脂ワニス。
(5)前記樹脂ワニスは、ワニス調製後に5時間以上静置脱泡したものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂ワニス。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂ワニスを塗布してなることを特徴とする樹脂膜。
(7)上記(6)に記載の樹脂膜を有していることを特徴とする半導体装置。
(8)上記(6)に記載の樹脂膜を有していることを特徴とする表示体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウエハ上に樹脂膜を形成する際、気泡によるクラックを抑制でき、信頼性に優れた樹脂ワニスを得ることができる。
また、本発明によれば、性能に優れた樹脂膜、半導体装置および表示体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の樹脂ワニス(特に好ましくは、ポジ型感光性樹脂組成物の樹脂ワニス)、樹脂膜、半導体装置および表示体装置について説明する。
本発明の樹脂ワニスは、半導体ウエハまたは表示体装置に用いられる樹脂膜を形成するための樹脂ワニスであって、前記樹脂ワニスは、50[cc]容量のメスシリンダーに液面高さが20cmとなるように該樹脂ワニスを採取し、ゲージ圧−98[kPa]で60分間処理した際の気泡の数が5個以下であることを特徴とする。
また、本発明の樹脂膜は、上記に記載の樹脂ワニスを塗布してなることを特徴とする。
また、本発明の半導体装置は、上記に記載の樹脂膜を有していることを特徴とする。
また、本発明の表示体装置は、上記に記載の樹脂膜を有していることを特徴とする。
【0009】
まず、樹脂ワニスについて説明する。
本発明の樹脂ワニスは、半導体ウエハまたは表示体装置に用いられる樹脂膜を形成するために用いられる樹脂ワニスである。このような樹脂ワニスが、例えばスピンコート法等により塗布された際に、生じるクラックを低減することが目的だからである。
【0010】
このような樹脂ワニスは、50[cc]容量のメスシリンダーに液面高さが20cmとなるように該樹脂ワニスを採取し、ゲージ圧−98[kPa]で60分間処理した際の気泡の数が5個以下であることを特徴とする。これにより、樹脂ワニスを塗布して得られた樹脂膜に発生するクラックを低減することができる。
前記気泡の数は、より具体的には4個以下であることが好ましく、特に3個以下であることが好ましい。前記気泡の数が前記上限値以下であると、樹脂ワニスを出荷後の経過時間、保存状態等に依存することなく樹脂膜のクラックを低減することができる。
このように、上述した条件で評価した気泡の数が、前記上限値を超えると樹脂ワニスの調製状態、出荷までの経過時間、樹脂ワニスの保存状態に依存して、樹脂ワニス中に気泡が残存してしまう場合があり、このような気泡が残存している樹脂ワニスを用いて樹脂膜を形成すると気泡の原因となってしまう場合があった。
これに対して、50[cc]容量のメスシリンダーに液面高さが20cmとなるように該樹脂ワニスを採取し、ゲージ圧−98[kPa]で60分間処理した際の気泡の数が5個以下とすることにより、該ワニス中の溶存気体の脱泡が十分に完了したことが示されるので、上述したように樹脂ワニスを出荷後の経過時間、保存状態等に依存することなく樹脂膜のクラックを低減することができる。
【0011】
このように50[cc]容量のメスシリンダーに液面高さが20cmとなるように該樹脂ワニスを採取し、ゲージ圧−98[kPa]で60分間処理した際の気泡の数が5個以下となるような樹脂ワニスを得る方法としては、例えば長時間の静置による自然脱泡、樹脂ワニスの減圧脱泡、脱泡剤・消泡剤の添加、最終濾過の低圧力化等が挙げられる。
【0012】
ここで、50[cc]容量のメスシリンダーに液面高さが20cmとなるように樹脂ワニスを採取する理由は、樹脂ワニスが通常ガロン瓶(直径約14cm×高さ約30cmに4Kgのワニスを充填して流通される形態が代表的だからである。この際のワニスの液面高さが、約20cmであるために本発明では液面高さを20cmで規定した。
さらに詳細に説明すると、液面高さ20cmを大きく超えた形態でワニスを使用するためには、例えば大幅な静置時間の延長が必要となり、非効率的である。また、液面高さが20cmを大きく下回る場合は、ワニス中の脱泡は容易になるが、1ボトルあたりのワニス量が少なくなり、頻繁にボトルを交換する必要が生じるなどの不都合が生じる。ボトルの面積を広げて1ボトルあたりのワニス量を増やす手法も考えうるが、ボトル設置に大面積が必要となるため、非効率的である。このため、50[cc]容量のメスシリンダーに液面高さが20cmとなるように樹脂ワニスを採取する指標は脱泡が無いことを示す指標として有効である。
【0013】
また、ゲージ圧−98[kPa]で60分間処理する理由は、製品ボトル底部に存在しうる気泡まで十分に脱泡有無を検証できるだけの条件だからである。ストークスの式と呼ばれる理論によると、泡の上昇速度はワニスの粘度と泡の大きさに依存するとされており、例えば1,000cPのワニスをゲージ圧−98[kPa]で60分間処理を行った場合、100nm相当の気泡がボトル外へ達していると計算できる。100nmというサイズは微細なデバイスの形成には十分に大きく不十分な値であるが、ワニスを構成する成分のいくつかは泡の上昇速度を加速する“脱泡機能”や、泡そのものを潰す“消泡機能”を有しているため、上記条件で脱泡完了していれば、十分にボトル下部の気泡も抜けていると経験的に考えられるからである。
【0014】
このような樹脂ワニスは、特に限定されないが、アルカリ可溶性樹脂と、感光剤と、溶媒とを含む樹脂組成物で構成されているものが好ましい。これにより、樹脂膜に感光性を付与することができる。
前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えばクレゾール型ノボラック樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、メタクリル酸樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、水酸基、カルボキシル基等を含む環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも耐熱性に優れ、機械特性が良いという点からポリアミド系樹脂が好ましく、具体的にはポリベンゾオキサゾール構造およびポリイミド構造の少なくとも一方を有し、かつ主鎖または側鎖に水酸基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基を有する樹脂、ポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有する樹脂、ポリイミド前駆体構造を有する樹脂、ポリアミド酸エステル構造を有する樹脂等が挙げられる。このようなポリアミド系樹脂としては、例えば下記一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂を挙げることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
前記式(1)で示されるポリアミド系樹脂の中でもポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有する樹脂、ポリイミド前駆体構造を有する樹脂、ポリアミド酸エステル構造を有する樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を含有していることが好ましい。これにより、耐熱性、機械特性を向上することができる。
【0017】
前記一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂において、Xの置換基としてのO−R21、Yの置換基としてのO−R21、COO−R21は、水酸基、カルボキシル基のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節する目的で、炭素数1〜15の有機基であるR21で保護された基であり、必要により水酸基、カルボキシル基を保護しても良い。R21の例としては、ホルミル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)で示される構造を含むポリアミド系樹脂は、例えば、Xを含むジアミンまたはビス(アミノフェノール)、2,4−ジアミノフェノール等から選ばれる化合物と、Yを含むテトラカルボン酸二無水物、トリメリット酸無水物、ジカルボン酸またはジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸誘導体等から選ばれる化合物とを反応して得られるものである。なお、ジカルボン酸の場合には反応収率等を高めるため、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を予め反応させた活性エステル型のジカルボン酸誘導体
を用いてもよい。
【0019】
前記一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂のXとしては、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(2)で示されるものを好ましく挙げることができる。これらは、必要により1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(1)で示すように、XにはRが0〜8個結合される(式(2;2−1〜2−9)において、Rは省略)。
【0022】
式(2)中で好ましいものとしては、耐熱性、機械特性が特に優れる下記式(3;3−1〜3−18)で表されるものが挙げられる。
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
さらに、式(3)の中でも、下記式(4)で示されるものが特に好ましい。
【0026】
【化5】

【0027】
また、一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂のYは有機基であり、前記Xと同様のものが挙げられ、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、ピリジン類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(5;5−1〜5−8)で示されるものを好ましく挙げることができる。これらは1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
【化6】

【0029】
一般式(1)で示すように、Yには、Rが0〜8個結合される(式(5)において、Rは省略)。
【0030】
式(5)の中で好ましいものとしては、耐熱性、機械特性が特に優れる下記式(6;6−1〜6−21)、下記式(7;7−1〜7−4)で示されるものが挙げられる。
下記式(6)中のテトラカルボン酸二無水物由来の構造については、C=O基に結合する位置が両方メタ位であるもの、両方パラ位であるものを挙げているが、メタ位とパラ位をそれぞれ含む構造でもよい。
【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000〜40,000が好ましく、特に1,500〜30,000が好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、特にパターニング性に優れる。
前記重量平均分子量は、例えばゲルパーミッションクロマトグラフィー(島津製作所製、GPCシステム)によりポリスチレン換算量として評価できる。
【0035】
前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の10〜50重量%が好ましく、特に20〜40重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、所望の粘度のワニスを得られ、また、塗布性、感度等のパターニング性に優れる。
【0036】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、特に限定されないが、前記一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂と、ノボラック型フェノール樹脂(特にクレゾールノボラック型フェノール樹脂)およびヒドロキシスチレン樹脂の少なくとも一方の樹脂と併用することが好ましい。これにより、露光特性を向上でき、具体的には、低膜減り、かつ、高感度化することができる。
【0037】
前記一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂と、ノボラック型フェノール樹脂(特にクレゾールノボラック型フェノール樹脂)およびヒドロキシスチレン樹脂の少なくとも一方の樹脂との併用割合は、特に限定されないが、重量比(ポリアミド系樹脂/ノボラック型フェノール樹脂(特にクレゾールノボラック型フェノール樹脂)およびヒドロキシスチレン樹脂の少なくとも一方の樹脂)98/2〜50/50が好ましく95/5〜70/30が好ましい。併用割合が前記範囲内であると、特に、露光特性の向上と、機械特性の維持の両立が可能となる点で優れる。
【0038】
前記一般式(1)で示されるポリアミド系樹脂と併用する場合、前記ノボラック型フェノール樹脂(特にクレゾールノボラック型フェノール樹脂)およびヒドロキシスチレン樹脂の少なくとも一方の樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000以上であることが好ましく、特に1,500〜3,500が好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、特に高感度化に優れる。
前記重量平均分子量は、例えばゲルパーミッションクロマトグラフィー(島津製作所製、GPCシステム)によりポリスチレン換算量として評価できる。
【0039】
前記感光剤としては、例えばフェノール化合物と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸とのエステルが挙げられる。具体的には、下記式(8)〜式(11)に示すエステル化合物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
式中Qは、水素原子、下記式(12)および(13)のいずれかから選ばれるものである。ここで各化合物のQのうち、少なくとも1つは下記式(12)または(13)である。これにより、感度やパターン形状を向上することができる。
【0045】
【化14】

【0046】
前記感光剤の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の1〜20重量%が好ましく、特に3〜10重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に感度に優れる。
【0047】
前記溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。
これらの中でもN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンから選ばれる1種以上の溶媒が好ましい。これにより、組成物の溶解性を向上することができる。
【0048】
前記溶媒の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の50〜90重量%が好ましく、特に60〜80重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に塗布性、感度等のパターニング性に優れる。
【0049】
前記樹脂組成物は、特に限定されないが、さらに界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、塗布性能をより向上することができる。
前記界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シロキサン系界面活性剤、非フッ素系界面活性剤を挙げることができる。フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有する構造のものであり、具体的には大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF−470、F−471、F−472SF、F−474、F−475、R−30、F−477、F−478、F−479、BL−20、R−61、R−90、住友スリーエム(株)製のFC−170C、FC−4430などがあるがこれらに限定されない。シロキサン系界面活性剤としてはポリアルキル変性シロキサン系、ポリエステル変性シロキサン系、アラルキル変性シロキサン系、アルキルアラルキル変性シロキサン系などであるがこれらに限定されない。非フッ素系界面活性剤としてはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウリレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤、またアクリル系またはメタクリル系の重合物からなる界面活性剤があるがこれらに限定されない。
【0050】
前記界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の0.005〜1重量%が好ましく、特に0.5〜0.01重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に塗布性能に優れる。
【0051】
前記樹脂組成物は、上述したアルカリ可溶性樹脂、感光剤、溶媒等以外に、必要に応じて、残渣抑制剤、溶解調整剤等の添加剤を含んでも良い。
【0052】
上述した樹脂組成物で構成されている樹脂ワニスの25℃での溶液粘度は、特に限定されないが、100〜10,000[cP]であることが好ましく、特に200〜5,000[cP]が好ましく、最も300〜4,000[cP]が好ましい。溶液粘度が前記範囲内であると、所望の十分に厚い樹脂膜を容易に形成することができる。
前記25℃での溶液粘度は、例えばコーン&プレート型粘度計を用いて評価することができる。
【0053】
前記樹脂ワニスは、特に限定されないが、樹脂ワニスを調製後に5時間以上、静置脱泡したものであることが好ましく、特に樹脂ワニスを調製後に10時間以上、静置脱泡したものであることが好ましい。これにより、上述した条件での気泡の数を5個以下とするのを容易にできる。
【0054】
次に、樹脂膜について説明する。
上述したような樹脂ワニスを、適当な支持体(基板)、例えば、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板等に塗布する。塗布量は、半導体素子上に塗布する場合、硬化後の最終膜厚が0.1〜30μmになるよう塗布する。膜厚が下限値を下回ると、半導体素子の保護表面膜としての機能を十分に発揮することが困難となり、上限値を超えると、微細な加工パターンを得ることが困難となるばかりでなく、加工に時間がかかりスループットが低下する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等がある。次に、60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。
【0055】
次に、照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等のアルカリ類の水溶液およびこれにメタノール、エタノールのごときアルコール類等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0056】
次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンスする。リンス液としては、蒸留水を使用する。次に加熱処理を行い、オキサゾール環、イミド環、又はオキサゾール環及びイミド環を形成し、耐熱性に富む最終パターンを得る。
加熱処理温度は、180℃〜380℃が好ましく、より好ましくは200℃〜350℃である。ここで行う加熱処理が前述した熱処理工程のことである。
このようにして、樹脂膜を得ることができる。
【0057】
この樹脂膜(硬化膜)は、半導体素子等の半導体装置用途のみならず、TFT型液晶や有機EL等の表示体装置用途、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜としても有用なものである。
【0058】
半導体装置用途の例としては、半導体素子上に上述の樹脂ワニスの樹脂膜(硬化膜)を形成してなるパッシベーション膜、パッシベーション膜上に上述の樹脂ワニスの樹脂膜(硬化膜)を形成してなるバッファーコート膜等の保護膜、また、半導体素子上に形成された回路上に上述の樹脂ワニスの樹脂膜(硬化膜)を形成してなる層間絶縁膜等の絶縁膜、また、α線遮断膜、平坦化膜、隔壁等を挙げることができる。
また、これらの硬化膜を有しているウエハはウエハ周囲の塗布性に優れているので半導体装置の歩留まりを向上することができる。
【0059】
表示体装置用途の例としては、表示体素子上に上述の樹脂ワニスの樹脂膜(硬化膜)を形成してなる保護膜、TFT素子やカラーフィルター用等の絶縁膜または平坦化膜、MVA型液晶表示装置用等の突起、有機EL素子陰極用等の隔壁等を挙げることができる。その使用方法は、半導体装置用途に準じ、表示体素子やカラーフィルターを形成した基板上にパターン化された樹脂層を、上記の方法で形成することによるものである。表示体装置用途の、特に絶縁膜や平坦化膜用途では、高い透明性が要求されるが、この樹脂層の硬化前に、後露光工程を導入することにより、透明性に優れた樹脂層が得られることもでき、実用上更に好ましい。
また、これらの樹脂膜(硬化膜)を有している表示用基板は基板周囲の塗布性に優れているので表示体装置の歩留まりを向上することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例および比較例に基づき、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
下記式で示される重量平均分子量15,000のポリベンゾオキサゾール前駆体(A−1)30g、下記式で示される感光性ジアゾキノン(B−1)5g、をγ―ブチロラクトン65gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターを用い、ゲージ圧0.2MPaで濾過し、溶液粘度1,000cPのポジ型感光性樹脂組成物を得た。該組成物はガロン瓶に分取したが、終溜のみ50ccメスシリンダーへ液面高さ20cmになるように分取した。
【0062】
【化15】

【0063】
【化16】

【0064】
(実施例2)
重量平均分子量15,000のポリベンゾオキサゾール前駆体(A−1)30g、感光性ジアゾキノン(B−1)5g、をγ―ブチロラクトン65gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターを用い、ゲージ圧0.2MPaで濾過し、溶液粘度1,000cPのポジ型感光性樹脂組成物を得た。該組成物はガロン瓶に分取したが、終溜のみ50ccメスシリンダーへ液面高さ20cmになるように分取した。作製したポジ型感光性樹脂組成物を室温、清浄な環境で12時間静置脱泡した後、50ccメスシリンダーに分取したポジ型感光性樹脂組成物をゲージ圧−98KPaで60分間、減圧処理したところ、ポジ型感光性樹脂組成物から発泡が5個であり、十分に脱泡が進行していることを確認できた。
【0065】
(実施例3)
重量平均分子量15,000のポリベンゾオキサゾール前駆体(A−1)20g、感光性ジアゾキノン(B−1)5g、をγ―ブチロラクトン75gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターを用い、ゲージ圧0.2MPaで濾過し、溶液粘度200cPのポジ型感光性樹脂組成物を得た。該組成物はガロン瓶に分取したが、終溜のみ50ccメスシリンダーへ液面高さ20cmになるように分取した。作製したポジ型感光性樹脂組成物を室温、清浄な環境で12時間静置脱泡した後、50ccメスシリンダーに分取したポジ型感光性樹脂組成物をゲージ圧−98KPaで60分減圧処理したところ、ポジ型感光性樹脂組成物から発泡が3個であり、十分に脱泡が進行していることを確認できた。しかし、200cPのポジ型感光性樹脂組成物では塗布時の回転数を低く設定しても3μm以上の樹脂膜を形成することができなかった。
【0066】
(実施例4)
下記式で示される重量平均分子量15,000のポリイミド前駆体(A−2)30g、感光性ジアゾキノン(B−1)5g、をγ―ブチロラクトン65gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターを用い、ゲージ圧0.2MPaで濾過し、溶液粘度1,000cPのポジ型感光性樹脂組成物を得た。該組成物はガロン瓶に分取したが、終溜のみ50ccメスシリンダーへ液面高さ20cmになるように分取した。作製したポジ型感光性樹脂組成物を室温、清浄な環境で12時間静置脱泡した後、50ccメスシリンダーに分取したポジ型感光性樹脂組成物をゲージ圧−98KPaで60分減圧処理したところ、ポジ型感光性樹脂組成物から発泡が3個であり、十分に脱泡が進行していることを確認できた。
【0067】
【化17】

【0068】
(実施例5)
重量平均分子量15,000のポリベンゾオキサゾール前駆体(A−1)30g、下記式で示される重量平均分子量2,500のクレゾールノボラック樹脂(A−3)5g、感光性ジアゾキノン(B−1)5g、をγ―ブチロラクトン65gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターを用い、ゲージ圧0.2MPaで濾過し、溶液粘度1,000cPのポジ型感光性樹脂組成物を得た。該組成物はガロン瓶に分取したが、終溜のみ50ccメスシリンダーへ液面高さ20cmになるように分取した。作製したポジ型感光性樹脂組成物を室温、清浄な環境で12時間静置脱泡した後、50ccメスシリンダーに分取したポジ型感光性樹脂組成物をゲージ圧−98KPaで60分減圧処理したところ、ポジ型感光性樹脂組成物から発泡が3個であり、十分に脱泡が進行していることを確認できた。
【0069】
【化18】

【0070】
(比較例1)
重量平均分子量15,000のポリベンゾオキサゾール前駆体(A−1)35g、感光性ジアゾキノン(B−1)5g、をγ―ブチロラクトン65gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターを用い、ゲージ圧0.5MPaで濾過し、溶液粘度1,000cPのポジ型感光性樹脂組成物を得た。該組成物はガロン瓶に分取したが、終溜のみ50ccメスシリンダーへ液面高さ20cmになるように分取した。作製したポジ型感光性樹脂組成物を室温、清浄な環境で12時間静置脱泡した後、50ccメスシリンダーに分取したポジ型感光性樹脂組成物をゲージ圧−98KPaで60分減圧処理したところ、ポジ型感光性樹脂組成物から発泡が12個であり、十分に脱泡が進行していないことを確認できた。
【0071】
(比較例2)
重量平均分子量15,000のポリベンゾオキサゾール前駆体(A−1)35g、感光性ジアゾキノン(B−1)5g、をγ―ブチロラクトン65gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターを用い、ゲージ圧0.2MPaで濾過し、溶液粘度1,000cPのポジ型感光性樹脂組成物を得た。該組成物はガロン瓶に分取したが、終溜のみ50ccメスシリンダーへ液面高さ20cmになるように分取した。作製したポジ型感光性樹脂組成物を室温、清浄な環境で4時間静置脱泡した後、50ccメスシリンダーに分取したポジ型感光性樹脂組成物をゲージ圧−98KPaで60分減圧処理したところ、ポジ型感光性樹脂組成物から発泡が45個であり、十分に脱泡が進行していないことを確認できた。
【0072】
得られた感光性樹脂組成物について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
【0073】
1.塗布性
塗布性は大日本スクリーン製造(株)製の塗布現像装置DSPIN−80Aでウエハ上にワニスを塗布、120℃/4分間加熱した後、大日本スクリーン製造(株)製の膜厚測定器ラムダエースで膜厚を測定し評価した。
塗布・加熱後膜厚は用途により様々な値をとりうるが、耐湿性などを付与するために3μm以上で用いられることが多い。このため、本発明では3μm以上の塗布後膜厚を形成できることを好ましいケースとした。
【0074】
2.信頼性(クラックの有無)
信頼性は塗布後、もしくは、硬化後のウエハを顕微鏡で検査を行い、クラック数をカウントして評価した。
【0075】
3.耐熱性
耐熱性は、ガラス転移温度で評価した。その測定は、SII・ナノテクノロジー(株)製の熱機械分析器EXSTAR TMA/6000を用いた。
【0076】
【表1】

【0077】
表1から明らかなように、実施例1〜5は、クラックが観察されず、信頼性に優れていることが示された。
また、実施例1〜4は、ガラス転移温度が高く、耐熱性にも特に優れていることが示唆された。
また、実施例1、2、4および5は、塗布性にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハまたは表示体装置に用いられる樹脂膜を形成するための樹脂ワニスであって、
前記樹脂ワニスは、50[cc]容量のメスシリンダーに液面高さが20cmとなるように該樹脂ワニスを採取し、ゲージ圧−98[kPa]で60分間処理した際の気泡の数が5個以下であることを特徴とする樹脂ワニス。
【請求項2】
前記樹脂ワニスの25℃での溶液粘度は、100〜10,000(cP)である請求項1に記載の樹脂ワニス。
【請求項3】
前記樹脂ワニスは、アルカリ可溶性樹脂と、感光剤と、溶媒とを含む樹脂組成物で構成されているものである請求項1または2に記載の樹脂ワニス。
【請求項4】
前記樹脂ワニスは、さらに界面活性剤を含むものである請求項3に記載の樹脂ワニス。
【請求項5】
前記樹脂ワニスは、ワニス調製後に5時間以上静置脱泡したものである請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂ワニス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂ワニスを塗布してなることを特徴とする樹脂膜。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂膜を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項6に記載の樹脂膜を有していることを特徴とする表示体装置。

【公開番号】特開2011−57880(P2011−57880A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210048(P2009−210048)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】