説明

樹脂中の赤リンの定量方法

【課題】樹脂中の赤リンを熱分解GCMSにより定量分析する方法であって、より定量精度を向上させた方法を提供する。
【解決手段】所定分離条件で、熱分解GCMS測定を行い赤リンの保持時間Aを求め、被測定試料について熱分解GCMS測定を行い、保持時間Aと同一の保持時間に質量スペクトルのピークが検出されることを確認し、測定されたピーク面積値を試料量で除してピーク強度比Bを求め、前記質量スペクトルのm/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.82〜2.06であり、m/z=93のピークの高さが1.03〜1.15であることを確認し、その後、同一分離条件において、複数の標準試料についてピーク強度比Cと赤リン含有量との関係を求める工程、この関係及び前記ピーク強度比Bの対比から、被測定試料中の赤リンの量を求めることを特徴とする樹脂中の赤リンの定量方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂(樹脂組成物)中の赤リンを、熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析(熱分解GCMS)により定量分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年環境問題への配慮から、難燃性樹脂組成物として、ノンハロゲンの樹脂に赤リン系難燃剤を配合したノンハロゲン樹脂組成物が用いられている(特許文献1)。そこで、赤リン系難燃剤を含有した製品の製造時や出荷時における品質管理や、製品の購入者にとっての受け入れ検査等に有用な赤リンの分析法の開発が望まれている。
【0003】
赤リンは、各種溶剤に溶けず分離回収が困難であることに加え、赤リン自体には赤外分光装置における赤外吸収もない。樹脂中に配合された赤リンを、ラマン分光装置を用いて分析しても赤リンに関する情報を識別することができない。又、元素分析、例えばエネルギー分散型蛍光X線装置を用いたEDX元素分析では、赤リンと有機リンの識別はできないので、リン酸エステル等の有機リンの含有が考えられる場合は、赤リンの分析はできない。従って、これらの方法では樹脂中の赤リンを分析することができない。
【0004】
そこで、本発明者等は、赤リン、特に樹脂中に難燃剤として含まれている赤リンを、簡便、迅速かつ確実に分析する方法として、熱分解ガスクロマトグラフにより試料をガス化した後ガスクロマトグラフィーによる測定をし、さらにガスクロマトグラフィーの分画の検出手段として質量分析器を用いる方法、すなわち熱分解GCMSによる分析法を開発し、特願2007−326840号として提案している。
【0005】
特願2007−326840号で提案している方法によれば、決められた測定条件下で予め、所定濃度の赤リンを含有している標準物質について、熱分解GCMSによる測定を行い、赤リンに相当する保持時間の質量スペクトル(又は1又は複数のイオン)のピーク面積値を求めて、この測定結果により検量線を作成し、その後、被測定試料について、同じ測定条件下同じ保持時間についての質量スペクトル(又は幾つかのイオン)のピーク面積値を求めて、検量線と対比することにより、赤リンの定量を行うことができる。
【0006】
ここで赤リンに相当する保持時間は、予め、赤リン単体について、同じ測定条件下で熱分解GCMSによる測定を行うことにより求めることができる。又、その保持時間のピークについての質量スペクトルが、m/z=62、93及び124にピークを有することにより赤リンに相当する保持時間であると確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−161924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、赤リン以外の物質であって、赤リンに相当する保持時間と同じ保持時間を有しかつm/z=62、93又は124の位置に質量スペクトルのピークを有する物質も考えられる。そのような物質が試料に含まれている場合、当該保持時間の質量スペクトルのピークは、当該物質のピーク及び赤リンのピークが重なったものであるので、そのピーク面積値は、赤リンの量を正確に反映したものではない。従って、赤リンの正確な定量を行うことができない。そこで、赤リンの定量の精度を向上し、より正確かつ確実な定量を行うために、赤リンに相当する保持時間のピークに、赤リン以外の物質のピークが重なっているか判定する方法が求められる。
【0009】
本発明は、樹脂中の赤リンを熱分解GCMSにより定量分析する方法であって、赤リンに相当する保持時間にある質量スペクトルのピークが、赤リンのみに由来するか他の物質のピークと重なったものか判定する工程を設けることにより、赤リンの定量精度を向上させた方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、赤リンのみ由来する質量スペクトルをEI法(電子衝撃法)で測定すると、m/z=124、93、62のピークの強度比がほぼ10:1.09:1.94であること、従って、赤リンに相当する保持時間にある質量スペクトルのm/z=124、93、62のピークの強度比がほぼ10:1.09:1.94であるか否かを判定することにより、赤リンに相当する保持時間にある質量スペクトルのピークが、赤リンのみに由来するか他の物質のピークと重なったものか判定することができることを見出し、本発明と完成した。
【0011】
即ち、本発明は、その請求項1として、
赤リン含有試料について、所定分離条件で、熱分解GCMS測定を行い赤リンの保持時間Aを求める工程1、
被測定試料を秤量し、同一の分離条件で熱分解GCMS測定をEI法で行い、保持時間Aと同一の保持時間に質量スペクトルのピークが検出されることを確認し、測定されたピーク面積値を試料量で除してピーク強度比Bを求める工程2、
前記質量スペクトルが、m/z=62、93及び124にピークを有し、かつm/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.82〜2.06であり、m/z=93のピークの高さが1.03〜1.15であることを確認する工程3、
工程3における確認の後、同一分離条件において、所定量の赤リンを含有する複数の標準試料について熱分解GCMS測定を行い、測定されたピーク面積値を試料量で除して得られるピーク強度比Cと赤リン含有量との関係を求める工程、及び
前記ピーク強度比Cと赤リン含有量との関係及び前記ピーク強度比Bの対比から、被測定試料中の赤リンの量を求める工程4、
を有することを特徴とする樹脂中の赤リンの定量方法を提供する。
【0012】
この定量方法では、先ず、赤リン含有試料について、所定分離条件で、熱分解GCMS測定を行い赤リンの保持時間Aを求める(工程1)。赤リン含有試料とは、赤リンを検出可能な量含有していることが明らかな試料であり、赤リン単体であってもよいし、樹脂中に赤リンを含有させたものでもよい。ただし、赤リンの保持時間であることを確認するため、当該保持時間のピークについての質量スペクトルを得て、m/z=62、93及び124にピークを有することを確認することが好ましい。特に、樹脂中に赤リンを含有させた試料の場合は、赤リン以外のピークが存在するためこの確認が望ましい。
【0013】
赤リンの保持時間Aが得られた後は、被測定試料を秤量し(試料量)、当該被測定試料について、同一の分離条件で熱分解GCMS測定を行い、保持時間Aと同一の保持時間に質量スペクトルのピークが検出されることを確認する。保持時間Aと同一の保持時間に質量スペクトルのピークが検出されない場合は、赤リンの含有量が0であることを示し、従って、以後の工程を行う必要はない。同一の保持時間に質量スペクトルのピークが検出された場合は、測定された質量スペクトル(又は1若しくは複数のピーク)のピーク面積値を試料量で除してピーク強度比Bを求める。
【0014】
本発明の定量方法は、工程3、すなわち前記質量スペクトルが、m/z=62、93及び124にピークを有し、かつm/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.82〜2.06であり、m/z=93のピークの高さが1.03〜1.15であることを確認する工程を有することを特徴とする。この工程により、赤リンに相当する保持時間にある質量スペクトルのピークが、赤リンのみに由来するか他の物質のピークと重なったものか判定することができる。
【0015】
後述の参考例に示すように、赤リンのみを含有する試料について熱分解GCMS測定を3回行ったところ、m/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.94であり、m/z=93のピークの高さが1.09であり、それぞれ5%程度のバラツキがあった。従って、このバラツキを考慮すると、m/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.82〜2.06であり、m/z=93のピークの高さが1.03〜1.15の範囲にあれば、赤リンのみに由来したピークであると考えられる。
【0016】
すなわち、ピークの高さの比が前記範囲内にない場合は、質量スペクトルのピークは、他の物質のピークと重なったものであり、従って、この場合は、測定されたピーク強度比に基づいては正確な定量ができない。そこで、この場合は、所定分離条件、例えば、熱分解ガスクロマトグラフィーの昇温速度を変更し、工程1から工程3までの工程を繰り返す。この工程1から工程3までの工程は、ピークの高さの比が前記範囲内となるまで、繰り返して行われる。
【0017】
工程3において、ピークの高さの比が前記範囲内にあることが確認された後は、その確認された場合における分離条件と同一の分離条件において、所定量の赤リンを含有する複数の標準試料について熱分解GCMS測定を行い、測定されたピーク面積値を試料量で除して得られるピーク強度比Cと赤リン含有量との関係、すなわち検量線を作製する。標準試料としては、赤リンを樹脂中に所定の割合で均一分散させた赤リン含有コンパウンドを粉砕したものが用いられる。熱分解GCMSにおける試料の量は0.1〜0.5mg程度の極微量であることが好ましいので、均一分散を保証するためには粒径1μm程度まで微細粉砕することが好ましい。
【0018】
検量線が作製された後は、検量線とピーク強度比Bを対比させることにより、被測定試料中の赤リンの量を求めることができる。工程3を経ることにより、ピーク強度比Bには、赤リン以外の物質の影響がないことが確認されており、赤リンの含有量が正確に反映されているので、精度の高い定量が可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、前記工程3において、m/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.92〜1.96であり、m/z=93のピークの高さが1.07〜1.10であることを確認することを特徴とする請求項1に記載の樹脂中の赤リンの定量方法である。より精度の高い定量のためには、工程3においてm/z=124のピークの高さを10としたときの、m/z=62のピークの高さが1.92〜1.96であり、m/z=93のピークの高さが1.07〜1.11であることを確認することが好ましい。
【0020】
請求項3に記載の発明は、熱分解GCMS測定が、イオン源でのイオン化方法としてEI法(電子衝撃法)を使用した質量分析器を用い、1〜100eVのイオン化電圧で行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂中の赤リンの定量方法である。イオン化電圧が低い場合は、感度不足となる傾向がある。一方、イオン化電圧が高すぎる場合は、樹脂由来のフラグメントイオンが多数生成し、赤リン由来のピークと重畳する可能性が高くなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は樹脂中の赤リンを熱分解GCMSにより定量分析する方法であるが、赤リンに相当する保持時間にある質量スペクトルのピークが、赤リンのみに由来するか他の物質のピークと重なったものか判定する工程が設けられているので、この工程がない従来の方法より、向上した精度で赤リンの定量をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の範囲はこの形態のみに限定されるものではない。
【0023】
熱分解GCMS測定とは、熱分解ガスクロマトグラフにより試料をガス化した後ガスクロマトグラフィーによる測定をし、さらにガスクロマトグラフィーの分画の検出手段として質量分析器を用いる方法であり、これは、赤リン含有試料、被測定試料、標準試料のいずれの測定の場合でも同じである。試料量は0.05〜10mg、好ましくは0.1〜0.5mg程度である。試料量が少なすぎる場合は、正確な定量が困難になる傾向があり、試料量が多すぎる場合は検出器を汚染する等の問題が生じやすい。
【0024】
試料を熱分解してガス化する工程は、試料がガス化する温度以上に試料を加熱することにより行われる。従って、加熱温度は、赤リンの昇華温度(416℃)以上であるが、樹脂中の赤リンを確実に昇華し精度の高い分析を行うためには樹脂の分解温度以上の温度で加熱する必要がある。好ましい加熱温度は600〜800℃程度である。
【0025】
又、加熱時間は、試料が完全にガス化するために必要な時間以上であり、加熱温度や試料の量等により変動し特に限定されない。加熱手段は特に限定されず、通常の熱分解ガスクロマトグラフに使用されている加熱手段を使用することができる。
【0026】
熱分解されガス化した試料は、ガスクロマトグラフのカラムに導入され、試料中の各成分が、固定相との分配平衡定数の差異により分離され、成分毎により異なった時間(保持時間)で流出してくる。このガスクロマトグラフィーの諸条件は、樹脂の分析に使用される通常の熱分解ガスクロマトグラフィーの条件と同等である。
【0027】
カラムとしては、パックドカラム、キャピラリーカラムのいずれも使用できるが、定性分析にはキャピラリーカラムが好ましく使用される。
【0028】
ガスクロマトグラフのカラムより流出した試料は、検出器である質量分析器(MS)に導入される。赤リンに相当する保持時間に、検出のピーク(分画)が有れば、試料中の赤リンの存在が確認される。
【0029】
質量分析器は、ガスクロマトグラフのカラムと結合する部分であるインターフェイス、試料のイオン化を行うイオン源、質量分離部、検出器等からなる。本発明では、イオン源でのイオン化方法はEI法(電子衝撃法)で行われる。また、イオン化条件は、より好ましくは、50〜100eVである。
【0030】
質量分離部のアナライザーとしては、磁場型、四重極型等のいずれも使用することができる。又、検出器における測定モードとしても、SCANモード、SIMモードのいずれも使用することができる。
【0031】
検量線作製のための標準試料としては、赤リンを樹脂中に所定の割合で均一分散させて赤リン含有コンパウンドを作製し、この赤リン含有コンパウンドを粉砕したものを、秤量したものが用いられる。
【0032】
赤リン含有コンパウンドの作製のためには、赤リンが樹脂中に十分均一になるように混合(混練)する必要がある。又、混合(混練)中の赤リンが昇華しない条件で行う必要がある。従って、混合温度は、赤リンの昇華温度である400℃以下であり、かつ樹脂が溶融可能な温度(融点)以上とする必要がある。
【0033】
樹脂中に混練される赤リンの量は、試料中の赤リン濃度の測定範囲に応じて適宜選択される。例えば、測定対象の試料中の赤リン濃度が100〜1000ppmの範囲にあると考えられる場合は、100〜1000ppmの範囲での検量線が作製できるように、この範囲内の数点(例えば、100、300、500、700、1000ppm)のそれぞれに対応する赤リンの量を選択する。
【0034】
試料の量は0.1〜0.5mg程度の極微量であるので、均一分散を保証するためには、微細粉砕することが好ましい。具体的には平均粒径が5μm以下となるまで粉砕することが好ましい。
【0035】
均一な混練が確保され、得られたコンパウンドを粉砕して熱分解GCMSの試料として使用できる限りは、用いられる樹脂の種類及び混合方法は特に限定されないが、混合方法としては、例えば、加圧ニーダー、ロール混合機、二軸混合機、バンバリーミキサーを用いる方法を挙げることができる。使用できる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム等の各種樹脂を挙げることができる。
【0036】
ここで熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、結晶性ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA,AS,ABS,アイオノマー,AAS,ACS)、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンポリテトラフルオロエチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート(Uポリマー)、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾイル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、酢酸セルロース,酢酪酸セルロース、セロファン、セルロイド等を挙げることができる。又、スチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等のエラストマーも使用可能である。
【0037】
熱硬化性樹脂としては、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂(ユリア樹脂,メラミン樹脂,ベンゾグアナミン樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂エポキシ樹脂、ウレタン樹脂(ポリウレタン)、ケイ素樹脂(シリコーン)等を挙げることができる。
【0038】
(参考例)
【0039】
赤リンの単体試料を秤量し、以下に示す熱分解装置、熱分解条件により熱分解(ガス化)し、ガス化した試料を、以下に示すガスクロマトグラフ/マススペクトロメトリー(GC/MS装置)により、m/z=62、93及び124のピークについてのピーク面積値を測定し、ピーク面積値/測定試料重量(以下「ピーク強度比」と言う。)を計算した。
【0040】
(熱分解条件)
フロンティアラボ社製を用いた。熱分解条件は、600℃×0.2分である。
【0041】
(GC/MS装置)
アジレント社製:Agilent6890を用いた。本装置の運転条件を以下に示す。
カラム:HP−5MS(内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、長さ:30m)
カラム流量:Heガス 1.0ml/分
昇温条件:50℃から320℃まで25℃/分で昇温し、320℃で5分間維持
MS温度:230℃(MS Source)、150℃(MS Quad)
インターフェイス温度:280℃
測定モード:SCANモード
イオン化方法:EI法(電子衝撃法)
なお、質量分析(MS)の測定は、酸素のピークを避けるため、m/z=33〜550の範囲で行った。
【0042】
測定は3回行った。その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示されるように、3回の測定をの平均値では、m/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.94であり、m/z=93のピークの高さが1.09であり、それぞれ5%程度のバラツキがあった。従って、このバラツキを考慮すると、赤リンのみに由来したピークは、m/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.82〜2.06であり、m/z=93のピークの高さが1.03〜1.15の範囲にあると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤リン含有試料について、所定分離条件で熱分解GCMS測定を行い、赤リンの保持時間Aを求める工程1、
被測定試料を秤量し、同一の分離条件で熱分解GCMS測定を行い、保持時間Aと同一の保持時間に質量スペクトルのピークが検出されることを確認し、測定されたピーク面積値を試料量で除してピーク強度比Bを求める工程2、
前記質量スペクトルが、m/z=62、93及び124にピークを有し、かつm/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.82〜2.06であり、m/z=93のピークの高さが1.03〜1.15であることを確認する工程3、
工程3における確認の後、同一分離条件において、所定量の赤リンを含有する複数の標準試料について熱分解GCMS測定を行い、測定されたピーク面積値を試料量で除して得られるピーク強度比Cと赤リン含有量との関係を求める工程、及び
前記ピーク強度比Cと赤リン含有量との関係及び前記ピーク強度比Bの対比から、被測定試料中の赤リンの量を求める工程4、
を有することを特徴とする樹脂中の赤リンの定量方法。
【請求項2】
前記工程3において、m/z=124のピークの高さを10としたとき、m/z=62のピークの高さが1.92〜1.96であり、m/z=93のピークの高さが1.07〜1.10であることを確認することを特徴とする請求項1に記載の樹脂中の赤リンの定量方法。
【請求項3】
熱分解GCMS測定が、イオン源でのイオン化方法としてEI法を使用した質量分析器を用い、1〜100eVでイオン化して行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂中の赤リンの定量方法。

【公開番号】特開2010−281633(P2010−281633A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134087(P2009−134087)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】