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樹脂中添加剤の定量方法
説明

樹脂中添加剤の定量方法

【課題】樹脂中の添加剤の定量分析において、添加剤を樹脂中に含有させた樹脂の標準試料を用いることなく、樹脂中に含有する添加剤を定量する。
【解決手段】樹脂中に含有する添加剤を熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析によって定量する定量方法であり、分析試料に含有され定量分析対象である添加剤と同種の添加剤および樹脂を含有する標準試料を作成し、作成した標準試料を用いて分析試料に含有される添加剤を定量する。標準添加試料作成工程と、標準添加試料分析工程と、検量線作成工程と、分析試料分析工程と、定量工程の各工程を備え、標準添加試料作成工程、標準添加試料分析工程および検量線作成工程によって、分析試料に含有する添加剤や樹脂の種類に合わせて標準添加試料を作成し、標準添加試料を用いて樹脂中の添加剤の分析に用いる検量線を作成する。分析試料分析工程および定量工程によって、前記工程で作成した検量線を用いて分析試料に含有される添加剤を定量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂中の添加剤の定量に関し、特に、熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析によって樹脂中の添加剤を定量する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物材料中の添加剤を分析する方法として、加熱炉付ガスクロマトグラフ質量分析計を用いた分析方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記文献1に記載される分析方法は、潤滑油組成物の基油および添加剤を分析するものである。この文献は、通常、使用されるガスクロマトグラフ質量分析計ではガスクロマトグラフの注入口内部に高分子添加剤が残留してしまい、高分子添加剤の分析ができないという問題を指摘し、この問題を解決するために、高分子添加剤以外の成分のみを熱脱着して成分情報を取得する第1プロセスと、残りの高分子添加剤を熱脱着して高分子添加剤の成分情報を取得する第2プロセスによって、同定および定量を行っている。
【0004】
樹脂中に含有する添加剤を定量する方法として、熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析(熱脱着−GC−MS)を用い、分析対象の樹脂を加熱して添加剤を熱脱着させ、この熱脱着させた添加剤をガスクロマトグラフ質量分析計で定量する方法がある。この分析において、添加剤を定量するために、当該添加剤を既知濃度にて含有する添加剤の標準試料が用いられる。
【0005】
一般に、この添加剤標準試料として、溶液中に添加剤を既知濃度にて含有する、溶液の添加剤標準試料が用いられる。本願の発明者は、樹脂中に含有する添加剤の定量分析において、樹脂中の添加剤と溶液中の添加剤の熱脱着温度に温度差があるため、溶液の添加剤標準試料を使用して樹脂中の添加剤を定量した場合には正確な定量が困難であることを見出した。
【0006】
図8は、樹脂の有無による添加剤の熱脱着温度を比較するための図である。図9に示す発生ガス分析(EGA-MS)装置を用いて、添加剤としてデカブロモジフェニルエーテル(Decabromodiphenyl ether,以下DecaBDEという)を分析して得られた発生ガス(EGA)曲線を示している。図9に示す発生ガス分析装置は、熱分解装置12とMS検出器14との間にGC部13を設けてなる。GC部13はGCオーブン15内に金属製不活性キャピラリーチューブ16を備え、金属製不活性キャピラリーチューブ16により熱分解装置12の出口とMS検出器14の入口との間が直結され、試料が加熱されて発生するガスが金属製不活性キャピラリーチューブ16を通過しMS検出器14にて検出される。分析試料としては、DecaBDE-THF溶液とDecaBDE含有ポリスチレン樹脂を用意し測定した。
【0007】
図8の上段にDecaBDE-THF溶液のEGA曲線を、下段にDecaBDE含有ポリスチレン樹脂のEGA曲線を示す。図8に示すように、溶液中のDecaBDEの熱脱着温度は200〜300℃であり、樹脂中のDecaBDEの熱脱着温度は200〜420℃であり、溶液中と樹脂中のDecaBDE熱脱着温度が異なることがわかる。
【0008】
ほとんどの樹脂は350℃を越えると樹脂分解物が多くなる。そのため、樹脂中の添加剤を熱脱着させるために、例えば、350℃を越えた高温に樹脂を加熱すると、樹脂からは添加剤と共に樹脂分解物が発生する。この樹脂分解物は、添加剤を定量分析する際に妨害物となり、定量分析に支障をきたすことになる。そのため、樹脂分解物の発生を抑えるために、樹脂分解物の発生が少ない350℃よりも低い温度で添加剤を熱脱着する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−184832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
樹脂分解物の発生を抑えるために、350℃以下といった低い温度で添加剤を熱脱着する場合には、図8に示すように溶液中の添加剤の脱着率と樹脂中の添加剤の脱着率に差があるため、検量線が異なってしまい、定量値がずれてしまう。
【0011】
上記の事情から、熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析によって樹脂中の添加剤を定量分析するには、溶液の標準試料を使用することはできず、樹脂の標準試料を使用する必要がある。
【0012】
この際、樹脂の添加剤標準試料は、分析試料に含有され定量分析対象である添加剤及び分析試料の基質である樹脂と同種であることが望ましい。しかしながら、市販される樹脂の標準試料は、含有する添加剤及び基質である樹脂の種類やそれらの組み合わせ、添加剤の濃度が限られている。
【0013】
そのため、市販される樹脂の添加剤標準試料の中から、定量分析対象の添加剤の熱脱着率が類似すると考えられる標準試料を使用したり、定量分析対象の添加剤の濃度と離れた濃度の標準試料を使用せざるを得ず、定量結果の精度の低下を招いていた。
【0014】
そこで、本発明は上記課題を解決して、樹脂中に含有する添加剤を正しく定量することを目的とする。
【0015】
また、樹脂中の添加剤の定量分析において、標準試料として、添加剤が添加された溶液の標準試料、および、添加剤を樹脂中に含有させた樹脂の既存の標準試料を用いることなく、樹脂中に含有する添加剤を定量することを目的とする。
【0016】
また、樹脂中の添加剤の定量分析において、樹脂中に含有する添加剤について幅広い濃度範囲で定量することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、樹脂中に含有する添加剤を熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析によって定量する定量方法であり、分析試料に含有され定量分析対象である添加剤と同種の添加剤および樹脂を含有する標準試料を作成し、作成した標準試料を用いて分析試料に含有される添加剤を定量する。
【0018】
本発明の樹脂中添加剤の定量方法は、標準添加試料作成工程と、標準添加試料分析工程と、検量線作成工程と、分析試料分析工程と、定量工程の各工程を備え、標準添加試料作成工程、標準添加試料分析工程および検量線作成工程によって、分析試料に含有する添加剤や樹脂の種類に合わせて標準添加試料を作成し、この標準添加試料を用いて樹脂中の添加剤の分析に用いる検量線を作成し、分析試料分析工程および定量工程によって、前記工程で作成した検量線を用いて分析試料に含有される添加剤を定量する。
【0019】
標準添加試料作成工程は、分析試料に含有される定量分析対象である添加剤および樹脂と同種の添加剤および樹脂を溶媒で溶解し、乾固することによって、添加剤が既知濃度含有された標準添加試料を作成する。
【0020】
標準添加試料分析工程は、標準添加試料作成工程で作成した標準添加試料を加熱し、加熱により熱脱着した添加剤をガスクロマトグラフ質量分析する。
【0021】
検量線作成工程は、標準添加試料分析工程の分析結果に基づいて添加剤の検量線を作成する。
【0022】
分析試料分析工程は、未知濃度の添加剤を含有する分析試料を加熱し、加熱により熱脱着した添加剤をガスクロマトグラフ質量分析する。
【0023】
定量工程は、検量線作成工程で作成した添加剤の検量線を用いて、分析試料分析工程の分析結果から分析試料中に含有される未知濃度の添加剤を定量する。
【0024】
本発明の標準添加試料作成工程は、2つの形態によって標準添加試料を作成することができる。
【0025】
第1の標準添加試料作成工程は、添加剤が含有されていない樹脂(ブランク樹脂)を溶媒で溶解してブランク樹脂溶液を作成する工程と、添加剤の標準試料を溶媒で溶解して標準溶液試料を作成する工程と、前記の工程で作成したブランク樹脂溶液と標準溶液試料とを混合する工程と、ブランク樹脂溶液と標準溶液試料の混合物の溶媒を乾固する工程とを含む。
【0026】
第2の標準添加試料作成工程は、添加剤が含有されていない樹脂(ブランク樹脂)を溶媒で溶解してブランク樹脂溶液を作成する工程と、添加剤の標準試料を作成したブランク樹脂溶液で溶解して標準溶液試料を作成する工程と、作成した標準溶液試料を乾固する工程とを含む。
【0027】
第2の標準添加試料作成工程は、第1の標準添加試料作成工程において、標準液試料を作成する工程に用いる溶媒として、予め定められた量のブランク樹脂を溶解させておいた溶媒を用いる工程である。
【0028】
第1の標準添加試料作成工程および第2の標準添加試料作成工程によれば、標準試料である添加剤として、分析試料において分析対象である添加剤と同種の添加剤を用いることによって、樹脂中の添加剤の定量分析に好適な標準添加試料を作成することができる。
【0029】
また、この第1の標準添加試料作成工程および第2の標準添加試料作成工程において、標準溶液試料の濃度を調製することによって、標準添加試料中の添加剤の濃度を任意に設定することができる。これによって、分析試料に含まれる添加剤の濃度に応じた検量線を作成することができる。
【0030】
また、標準添加試料作成工程に用いる樹脂として、分析試料に含有される樹脂と同種の樹脂を用いることができる。分析試料に含有される樹脂と同種の樹脂を用いることによって、樹脂種の違いによる分析誤差を低減させることができる。
【0031】
本発明の定量方法によれば、分析試料に含有する添加剤や樹脂の種類に合わせて標準試料を作成することによって、添加剤が含まれない溶液の標準試料を用いて定量する際に生じる、添加剤脱着率差によって検量線がずれるという問題や、添加剤を樹脂中に含有させた樹脂の既存の標準試料を用いて定量分析する際に生じる、適切な既存の標準試料が得られないという問題を解消することができる。
【0032】
本発明の定量方法によれば、分析試料に含有する添加剤や樹脂の種類に合わせて標準試料を作成することによって、分析試料の添加剤脱着率と標準試料の添加剤脱着率とは同じとなり、検量線がずれることによる問題を解消し、正しい検量線で定量を行うことができる。
【0033】
また、本発明の定量方法によれば、分析試料に含有する添加剤や樹脂の種類に合わせた標準試料を作成することによって、分析対象である分析試料に最適な標準試料を用いて定量分析を行うことができる。また、標準試料の添加剤の濃度も自由に設定することができるため、定量を目的とする添加剤の濃度分析に好適な濃度の標準試料を得ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、樹脂中に含有する添加剤を正しく定量することができる。また、樹脂中の添加剤の定量分析において、添加剤を樹脂中に含有させた樹脂の標準試料を用いることなく、樹脂中に含有する添加剤を定量することができる。また、樹脂中の添加剤の定量分析において、樹脂中に含有する添加剤について幅広い濃度範囲で定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析による定量分析装置の一構成例を説明するための図である。
【図2】本発明の樹脂中添加剤の定量方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図3】標準添加試料作成工程の第1の例を説明するためのフローチャートである。
【図4】標準添加試料作成工程の第1の例を説明するための説明図である。
【図5】標準添加試料作成工程の第2の例を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明によって得られた分析結果に基づいて作成した検量線である。
【図7】本発明によって得られた認証標準物質PS(NMIJ CRM 8108-a)のクロマトグラムである。
【図8】樹脂の有無による添加剤の熱脱着温度を比較するための図である。
【図9】発生ガス分析計の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明する。以下では、図1を用いて熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析による定量分析装置の一構成例を説明し、図2〜図5を用いて本発明の定量方法の手順を説明し、図6,7を用いて検量線および分析結果例を説明する。
【0037】
はじめに、図1を用いて熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析による定量分析装置の一構成例を説明する。
【0038】
図1の熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析装置は、熱分解装置2とMS検出器4との間にGC部3を設けている。GC部3はGCオーブン5内に分離カラム6を備え、分離カラム6は熱分解装置2の出口とMS検出器4の入口との間を直結して構成される。熱分解装置2の温度制御は、温度コントローラー7によって行われる。
【0039】
熱分解装置2は、例えば、ダブルショット・パイロライザーを用いることができる。加熱炉の温度は、200℃から300℃まで20℃/minの温度上昇率で上昇させ、次に、340℃まで5℃/minの温度上昇率で上昇させ、340℃で1分間保持する。分離カラム6は、例えば、Ultra ALLOY-PBDE長さ15m、内径0.25mm、液層膜厚0.05μmを用いることができる。なお、上記した数値例は一例であって、上記例に限られるものではない。また、GCオーブン5は、プログラム動作によって温度制御することができる。
【0040】
分析試料は、熱分解装置2に投入された後、予め定められた昇温プログラムに従って加熱され、加熱により熱脱着した成分はGC部3およびのMS検出器4によってガスクロマトグラフ質量分析が行われる。
【0041】
図2は、本発明の樹脂中添加剤の定量方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0042】
本発明の樹脂中添加剤の定量方法は、標準添加試料作成工程(S1)、標準添加試料分析工程、検量線作成工程(S2)と、分析試料分析工程(S3)、定量工程(S4)の各工程を備える。
【0043】
ここで本発明の添加剤の定量方法の分析試料は、基質としての樹脂と定量分析対象となる添加剤とからなる。
【0044】
樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの合成樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂、尿素樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0045】
添加剤としては、樹脂に添加される難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、滑剤(離型剤)、重合開始剤のうちGC−MSでの検出が可能な有機化合物が挙げられる。具体的には、安定化剤としては、フェノール系酸化防止剤などが挙げられる。難燃化剤としては、デカブロモジフェニルエーテル(DecaBDE)が挙げられる。
【0046】
標準添加試料作成工程は、分析試料に含有され定量分析対象となる添加剤および樹脂と各々同種の添加剤および樹脂を溶媒で溶解し、乾固することによって、添加剤が樹脂中に既知濃度含有された標準添加試料を作成する。ここで溶解とは、溶媒中に選択した添加剤及び樹脂が完全に溶解した状態のみでなく、溶媒中に選択した添加剤及び樹脂が実質的に均一な状態をも含む。使用する溶媒としては、クロロホルム、トルエン、ジクロロベンゼン等の有機溶媒が挙げられ、選択した添加剤及び樹脂の種類に応じて適宜当業者が選択することができる。
【0047】
標準添加試料は、添加剤種および濃度が既知である標準試料である。この標準添加試料作成工程では、分析試料に含有され定量分析対象となる添加剤と同種の添加剤種について、分析試料に含まれる添加剤の定量分析に適した濃度範囲の検量線を形成するために好適な濃度の添加剤の標準試料を作成する(S1)。
【0048】
標準添加試料分析工程は、標準添加試料作成工程で作成した標準添加試料を加熱し、加熱により熱脱着した添加剤をガスクロマトグラフ質量分析し、検量線作成工程は標準添加試料分析工程の分析結果に基づいて添加剤の検量線を作成する。
【0049】
この工程によって、分析試料に含有され定量分析対象となる添加剤と同種の添加剤について樹脂中に存在する際の検量線を求めることができ、これによって、分析試料と同様の条件で添加剤の検量線を求めることができる。また、樹脂の有無によって異なる脱着温度の温度差に影響されることなく定量することができる(S2)。
【0050】
分析試料分析工程は、未知濃度の添加剤を含有する分析試料を加熱し、加熱により熱脱着した添加剤をガスクロマトグラフ質量分析する(S3)。
【0051】
定量工程は、検量線作成工程で作成した添加剤の検量線を用いて、分析試料分析工程で得られた分析結果から分析試料中に含有される未知濃度の添加剤を定量する(S4)。
【0052】
次に、標準添加試料作成工程について詳細に説明する。標準添加試料を作成する工程は複数の態様とすることができる。以下、標準添加試料作成工程の2つの例について説明する。
【0053】
はじめに、標準添加試料作成工程の第1の例を図3のフローチャートおよび図4の説明図を用いて説明する。添加剤が含有されていない樹脂を用意し、この樹脂を溶解可能な有機溶媒によって樹脂を溶解してブランク樹脂溶液を作成する。このブランク樹脂溶液作成に用いる樹脂は、分析試料に基質として含まれる樹脂と同種の樹脂であることが望ましいが、添加剤脱着率が分析試料に含まれる樹脂と同程度であれば、異種の樹脂を用いることができる(S11)。
【0054】
一方、分析試料に含有され定量分析対象となる添加剤と同種の添加剤を標準試料とし、この標準試料である添加剤を有機溶媒と混合して標準溶液試料を作成する(S12)。
【0055】
S11で作成したブランク樹脂溶液と、S12で作成した標準溶液試料とを試料カップに添加して混合する(S13)。その後、試料カップ中の溶媒を風乾等によって乾固する(S14)。
【0056】
上記工程によって、分析試料に含有され定量分析の対象となる添加剤と同種の添加剤の標準添加試料を作成することができる。
【0057】
図4では、樹脂500μg中に添加剤濃度が1000ppmに相当する添加剤が含有する標準添加試料を作成する例として、S11の工程において25μg/μLのブランク樹脂溶液を作成し、S12の工程において500ppmの標準溶液試料を作成し、S13の工程において試料カップ内にブランク樹脂溶液20μmと標準溶液試料1μmを注入し、S14の工程で風乾する例を示している。
【0058】
次に、標準添加試料作成工程の第2の例を図5のフローチャートを用いて説明する。第2の例は、第1の例において、標準溶液試料を作成する工程に用いる溶媒として、予め定められた量のブランク樹脂を溶解させておいた溶媒を用いる例である。
【0059】
添加剤が含有されていない樹脂を用意し、この樹脂を可溶な有機溶媒によって樹脂を溶解してブランク樹脂溶液を作成する。このブランク樹脂溶液に用いる樹脂は、分析試料に含まれる樹脂と同種の樹脂であることが望ましいが、添加剤脱着率が分析試料に含まれる樹脂と同程度であれば、異種の樹脂を用いることができる。この工程は第1の例のS11と同様である(S21)。
【0060】
分析試料に含有され定量分析対象となる添加剤と同種の添加剤を標準試料とし、この標準試料である添加剤を有機溶媒と混合する。このときに用いる有機溶媒として、S21で作成したブランク樹脂溶液を用いる。この工程は、第1の例においてS12とS13の工程に相当する(S22)。S22で作成した標準溶試料の溶媒を風乾等によって乾固する(S23)。
【0061】
上記工程によって、分析試料に含有され定量分析の対象となる添加剤と同種の添加剤の標準添加試料を作成することができる。
【0062】
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明する。以下に示す実施例は、樹脂中の臭素系難燃剤DecaBDEを本発明によって熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析して例である。分析条件を以下の表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
本発明の標準添加試料の作成工程によって、DecaBDEの濃度が10,100,1000mg/kg(ppm)の標準添加試料(ポリスチレン溶解溶液)を作成した。詳細な作成手順は次の通りで、第1の例に示した工程により作成した。
【0065】
添加剤非含有ポリスチレン標準物質(認証標準物質PS(NMIJ CRM 8108-aに付属)をTHFに溶解し、25μg/μLのブランク樹脂溶液を作成した。次に和光純薬工業株式会社DecaBDEの標準試料(和光一級)をTHFに溶解し5,50,500ppmの標準溶液試料を作成した。各試料カップ内にブランク樹脂溶液20μmと各濃度の標準溶液試料1μmを注入し風乾することで、DecaBDEの濃度が10,100,1000mg/kg(ppm)の標準添加試料(ポリスチレン溶解溶液)を作成した。
【0066】
作成した標準添加試料を前記した分析条件による熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析を行い、得られた結果に基づいて検量線を作成した。図6は、分析結果に基づいて作成した検量線を示している。
【0067】
本発明による樹脂中添加剤の定量方法が適切であることを示すために、添加剤の種別および濃度が既知である認証標準物質PS(NMIJ CRM 8108-a)を、表1に記載の分析条件により熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析を行い、作成した図6に示す検量線を用いて定量を行った。なお、認証標準物質PS(NMIJ CRM 8108-a)は、ポリスチレン樹脂中にDecaBDE を317±14mg/kg(ppm)含有する標準物質である。
【0068】
図7は認証標準物質PS(NMIJ CRM 8108-a)のクロマトグラムを示している。11.5min付近に検出されたピークがDecaBDE由来のピークであり、このピークを図6に示す検量線を用いて定量した結果、DecaBDE の定量値は316mg/kg(ppm)であり、認証標準物質PSのDecaBDE の値である317±14mg/kg(ppm)に対して良好な結果が得られた。
【0069】
[比較例]
検量線作成用標準試料を従来用いられている標準試料である、DecaBDE-THF溶液(10ppm,100ppm,1000ppm)を作成して使用した他は、実施例と同じ条件にて認証標準物質PS(NMIJ CRM 8108-a)中のDecaBDEの定量を行った。この時の定量値は、110mg/kg(ppm)であった。
【0070】
表2に実施例での定量値と比較例での定量値を示す。
【0071】
【表2】

【0072】
この比較によれば、DecaBDE-THF溶液による定量値は110mg/kg(ppm)であり、認証標準物質PS(NMIJ CRM 8108-a)のDecaBDE値である317±14mg/kg(ppm)よりも小さな値を示している。一方、本発明の樹脂を含有した標準添加試料による定量値は316mg/kg(ppm)であり、認証標準物質PS(NMIJ CRM 8108-a)のDecaBDE値である317±14mg/kg(ppm)を正確に定量していることが確認された。
【0073】
本発明の態様によれば、定量分析対象である添加剤の種類が合わないために、既存の樹脂の標準試料から最適な標準試料が用意できない場合であっても、定量分析対象である添加剤の標準物質を用いて標準添加試料を作成することによって、樹脂中の添加剤を定量することができる。
【0074】
また、標準添加試料の作成において任意の濃度の標準添加試料を作成することができるため、樹脂中の添加剤が幅広い濃度範囲にある場合であっても対応することができる。
【0075】
また、標準添加試料の作成において、ブランク樹脂溶液の作成に使用する樹脂種を変えることによって、種々の樹脂種中の添加剤を定量分析することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 定量分析装置
2 熱分解装置
3 GC部
4 検出器
5 オーブン
6 チューブ
7 温度コントローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中に含有する添加剤を熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析によって定量する定量方法であって、
分析試料に含有され定量分析対象である添加剤と同種の添加剤、および樹脂を溶媒で溶解し、乾固することによって、添加剤が既知濃度含有された標準添加試料を作成する標準添加試料作成工程と、
前記標準添加試料作成工程で作成した標準添加試料を加熱し、加熱により熱脱着した添加剤をガスクロマトグラフ質量分析する標準添加試料分析工程と、
前記標準添加試料分析工程の分析結果に基づいて添加剤の検量線を作成する検量線作成工程と、
未知濃度の添加剤を含有する分析試料を加熱し、加熱により熱脱着した添加剤をガスクロマトグラフ質量分析する分析試料分析工程と、
前記検量線作成工程で作成した添加剤の検量線を用いて、前記分析試料分析工程の分析結果から前記分析試料中に含有される未知濃度の添加剤を定量する定量工程とを含むことを特徴とする樹脂中添加剤の定量方法。
【請求項2】
前記標準添加試料作成工程は、
樹脂を溶媒で溶解してブランク樹脂溶液を作成する工程と、
添加剤の標準試料を溶媒で溶解して標準溶液試料を作成する工程と、
前記ブランク樹脂溶液と前記標準溶液試料とを混合する工程と、
前記混合物を乾固する工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂中添加剤の定量方法。
【請求項3】
前記標準添加試料作成工程は、
樹脂を溶媒で溶解してブランク樹脂溶液を作成する工程と、
添加剤の標準試料を前記ブランク樹脂溶液で溶解して標準溶液試料を作成する工程と、
前記標準溶液試料を乾固する工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂中添加剤の定量方法。
【請求項4】
前記樹脂は、分析試料に含有される樹脂と同種の樹脂であることを特徴とする、請求項1から3の何れか一つに記載の樹脂中添加剤の定量方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−208081(P2012−208081A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75631(P2011−75631)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】