説明

樹脂及び耐熱性ゴム被覆金網ベルト

【課題】本発明は、段ボール表面への凹凸の転写,傷を回避するとともに、段ボール表面への異物付着を回避しえるベルトを得ることを課題とする。
【解決手段】金属製のよこ線22と金属製のたて線23で織られた基材21と、この基材21に被覆されたフッ素樹脂層24とを具備することを特徴とするフッ素樹脂被覆金網ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂及び耐熱性ゴム被覆金網ベルトに関し、特に段ボール紙を製造する装置にセットされて使用される樹脂及び耐熱性ゴム被覆金網ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、段ボール製造装置に使用される加圧ベルトには、樹脂製ベルトと金網ベルトがある。前記樹脂製ベルトとしては、例えば特許文献1、特許文献2に見られるものが開示されている。
【特許文献1】特開2005−104689号公報
【特許文献2】特開平9−57877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記加圧ベルトとしての従来の金網ベルトによる加圧ベルトにおいては、SUS製金網ベルトは例えばSUS製のよこ線及びSUS製のたて線を製織したもの、あるいはSUS製のよこ線及び撚り線からなるSUS製のたて線を製織したもの、あるいはSUS製の撚り線からなるよこ線及びたて線を製織したものが用いられているので、ベルト表面は凹凸のあるメッシュ状になる。従って、平滑なベルト表面が得られず、ベルト表面の凹凸が段ボール表面に転写するという問題があった。また、加圧ベルトは金属製であるため、ベルト表面に異物が付着し易く、段ボール貼合に使用する糊がベルト内部に入り込んでSUS製線、SUS製撚り線を被覆した状態となり、凹凸の転写、段ボール表面への異物付着の原因となる。
【0004】
本発明は上記した課題を解決するためになされたもので、段ボール表面への凹凸の転写,傷を回避するとともに、段ボール表面への異物付着を回避しえる樹脂及び耐熱性ゴム被覆金網ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフッ素樹脂被覆金網ベルトは、金属製のたて線と金属製のよこ線で織られた基材と、この基材に形成されたフッ素樹脂層とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の耐熱性ゴム被覆金網ベルトは、一対のロールに跨設されて使用される耐熱性ゴム被覆金網ベルトにおいて、金属製のよこ線と金属製のたて線で織られた基材と、この基材に被覆された耐熱性ゴム層とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、段ボール表面への凹凸の転写,傷を回避するとともに、段ボール表面への異物付着を回避しえる樹脂被覆金網ベルトを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明において、基材を構成するよこ線及びたて線はSUS等の金属製からなるが、SUS製に限定されない。また、よこ線及びたて線の組み合わせとしては、よこ線及びたて線がともに棒状のもの、あるいはよこ線が棒状でたて線が数本の細線を撚ったもの、あるいはよこ線及びたて線ともに数本の細線を撚ったものが挙げられる。更に、基材を構成するよこ線及びたて線の織られ方は、平織、綾織等、ベルトの用途に応じて適宜選択することができる。
【0009】
本発明において、フッ素樹脂層の材質としては、例えば四ふっ化エチレン樹脂(PTFE樹脂)、変性四ふっ化エチレン樹脂(変性PTFE樹脂)、四ふっ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA樹脂)、変性ふっ化ビニル(EFEP),四ふっ化エチレン・六ふっ化プロピレン共重合樹脂(FEP樹脂)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンクロライド三元共重合体(THV)、軟質フッ素樹脂(セントラル硝子(株)社製の商品名:セフラルソフト)が挙げられるが、通常、耐熱性及び耐久性に優れるPFA樹脂を使用することが好ましい。
【0010】
上記フッ素樹脂層の基材への形成の形態としては、後述するように、基材の凹凸を覆うように基材の両面に形成される場合(図1参照)、基材の片面の凹凸を覆うように基材の片面にのみ形成される場合(図7参照)、あるいは図示しないが、基材を構成するよこ線及びたて線のみを被覆し、メッシュ状表面の基材の隙間がそのまま開口されているような状態の場合等、種々の形態が挙げられる。
【0011】
本発明において、耐熱性ゴムの材質としては、耐熱温度130℃以上の特性を持ったもので、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴムが挙げられるが、通常は非粘着性に優れるシリコーンゴムを使用することが望ましい。
【0012】
本発明において、フッ素樹脂層が被覆された基材の片面または両面に耐摩耗層を形成することが好ましい。耐摩耗層としては、PTFE層を使用することが好ましい。ベルトは、段ボールの製造装置においては、図8のように使用される。
【0013】
図8において、符番4は、下段ロール5と噛合する上段ロールを示す。上段ロール4の上側には、該上段ロール4と近接して2つのロール6a,6bが配置されている。これらのロール6a,6bには、無端状のベルト7が跨設されている。図8の方式では、上段ロール4と下段ロール5間、上段ロール4とベルト7間に芯紙8を矢印Xのようにっ通過させるとともに、ライナー紙9を上段4とベルト7間に矢印Yのように通過させて、芯紙8とライナー紙9を積層、一体化することにより段ボール片段シート10を製造する。なお、芯紙8とライナー紙9の積層が上段ロール4とベルト7間を通過するときは、ベルト7から矢印Zに示すような圧力が前記積層体に係るようになっている。
【0014】
上記のように、ベルトは図8のようにロール6a,6bに跨設され、上段ロール4に押し付けられた状態で使用されるので、基材の内面や外面は摩耗しやすい。そこで、フッ素樹脂層が被覆された基材の片面または両面に耐摩耗層を被覆することにより、ベルトの摩耗を低減することができるとともに、より平滑なベルト表面が得られる。
【0015】
本発明において、フッ素樹脂層が被覆された基材の一方の面にフッ素樹脂被覆アラミド織布層を形成し、フッ素樹脂層が被覆された基材の他方の面に耐摩耗層を形成することが好ましい。ここで、フッ素樹脂被覆アラミド織布層は、アラミド繊維を織った織布にフッ素樹脂を被覆することにより得られる。被覆するフッ素樹脂としては、PTFE樹脂が好ましい。上述したように、ベルトは、一対のロール間に跨設され、かつ上段ロール間にライナー紙や段ボール紙片段シートを押し付けて使用されるので、耐摩耗性とともに耐久性を有することが望ましい。本発明では、基材の内側のフッ素樹脂被覆アラミド織布層により金網ベルトとロール間の金属同士の摩耗を抑えることによって耐摩耗性が得られ、基材の外側の耐摩耗層により段ボールによるベルトの摩耗、段ボール表面への凹凸の転写,傷などを回避できる。
【0016】
本発明において、フッ素樹脂層が被覆された基材の片面または両面にフッ素樹脂被覆アラミド織布層を形成することが好ましい。上述したように、基材の内面や外面は摩耗しやすい。そこで、基材の片面または両面にフッ素樹脂被覆アラミド織布層を形成することにより、ベルトの摩耗を低減することができる。基材の片面、特にロール側にフッ素樹脂被覆アラミド織布層を形成することにより、ロールによる耐摩耗性が得られる。また、基材の両面にフッ素樹脂被覆アラミド織布層を形成することにより、基材内面の摩耗の減少、耐久性が向上する他に、ベルトの外側(ベルトの外周)の平滑性が向上して段ボール表面への凹凸の転写を回避できるとともに、段ボールによるベルトの摩耗を少なくすることができる。
【0017】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。但し、本発明の権利範囲がこれらによって限定されるものではない。
(実施例1)
図1(A),(B)及び図4を参照する。ここで、図1(A)は本発明の実施例1に係るループ状のフッ素樹脂被覆金網ベルトの概略的な断面図、図1(B)は図1(A)のX−X線に沿う部分拡大図、図4は図1(A),(B)の基材部分の平面図を示す。
【0018】
図中の符番21は、SUS製のよこ線22とSUS製のたて線23で織られた基材を示す。よこ線22の径は1mmである。たて線23の径は0.6mmである。たて線23は、例えば5本のSUS製の細線を撚って構成されている。たて線23は、図4に示すようによこ線22と平織されている。たて線23は、S,Z撚りが交互に構成されている。たて線23,23の中央間の距離Lは例えば2mmである。前記基材21には、PTFEからなるフッ素樹脂層24が基材21の凹部を埋めるように被覆されている。フッ素樹脂層24の基材21への被覆は、例えば基材21の両面側にフッ素樹脂シートを配置して積層し、この状態で加熱,加圧することにより形成することができる。フッ素樹脂シートとしては、PFAシートを使用した。
【0019】
実施例1に係るフッ素樹脂被覆金網ベルトは、図1及び図4に示すように、SUS製のよこ線22とSUS製のたて線23で織られた基材21と、この基材21に被覆されたフッ素樹脂層24とを備えた構成となっている。このように、基材21に該基材21の凹部を埋めるようにフッ素樹脂層24が被覆されているので、ベルト表面を平滑にすることができる。従って、段ボール表面へ凹凸が転写したり、段ボール表面が損傷するのを回避でき、平滑で良好な段ボールを得ることができる。また、段ボール貼合に使用する糊がベルト内部に入り込むこともないので、段ボール表面に異物が付着するのを回避できる。
【0020】
なお、上記実施例1では、フッ素樹脂層24を基材21の両面の凹部を埋めるように基材21の両面に形成する場合について述べたが、これに限定されない。例えば、図7に示すように、基材21の片面(例えば、ベルトの外周)のみに基材21の凹部を埋めるようにフッ素樹脂を被覆してもよい。更には、図示しないが、基材を構成するよこ線及びたて線23のみ被覆するなど、種々の被覆の形態をとってもよい。
【0021】
(実施例2)
図2を参照する。但し、図1、図4と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
図中の符番25は、基材21の外側(ベルトの外周)に形成されたPTFE樹脂からなる耐摩耗層を示す。
実施例2のフッ素樹脂被覆金網ベルトは、図2に示すように、SUS製のよこ線22とSUS製のたて線23で織られた基材21と、この基材21に被覆されたフッ素樹脂層24と、前記基材21の外側(ベルトの外周)に形成された耐摩耗層25を備えた構成となっている。このように、基材21の表面に耐摩耗層25を形成することにより、ベルト表面の耐摩耗性が向上し平滑耐久性が増すので、段ボール表面へ凹凸が転写したり、段ボール表面が損傷するのを回避でき、平滑で良好な段ボールを得ることができる。
【0022】
(実施例3)
図3を参照する。但し、図1、図2と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
図中の符番26は、基材21の内側(ベルトの内周)に形成されたフッ素樹脂被覆アラミド織布耐摩耗層を示す。
実施例3によれば、基材21の表面に耐摩耗層25を形成することにより、ベルト表面の耐摩耗性が向上し平滑耐久性が増すので、段ボール表面へ凹凸が転写したり、段ボール表面が損傷するのを回避でき、平滑で良好な段ボールを得ることができる。また、基材21の内側にフッ素樹脂被覆アラミド織布層26を形成することにより、ベルト内側の耐摩耗性が向上し平滑耐久性が増すので、ロール6a,6bによるベルト内側の摩耗を少なくすることができる。
【0023】
(実施例4)
図5を参照する。但し、図1、図3と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
図中の符番27aは、基材21の内側に形成されたフッ素樹脂被覆アラミド織布層耐摩耗層を示す。
実施例4によれば、基材21の内側にフッ素樹脂被覆アラミド織布層27aを形成することにより、実施例3と同様、ロール6a,6bによるベルト内側の摩耗を少なくすることができる。
【0024】
(実施例5)
図6を参照する。但し、図1、図5と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみを説明する。
図中の符番27bは、基材21の外側に形成されたフッ素樹脂被覆アラミド織布層耐摩耗層を示す。
実施例5によれば、基材21の内側にフッ素樹脂被覆アラミド織布層27aを形成することにより、実施例4と同様、ロール6a,6bによるベルト内面の摩耗を減少できる。また、基材21の外側にフッ素樹脂被覆アラミド織布層27bを形成することにより、ベルト表面の耐摩耗性が向上し平滑耐久性が増すので、段ボール表面へ凹凸が転写したり、段ボール表面が損傷するのを回避できるとともに、段ボール表面に異物が付着するのを回避できる。
【0025】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施例に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0026】
具体的には、上記実施例では基材を構成するよこ線とたて線は撚線入り平織としたが、これに限定されず、よこ線やたて線の径、たて線の細線の本数なども上述したものに限定されない。また、よこ線が棒状でたて線が撚り線である場合について述べたが、よこ線及びたて線ともに撚り線である場合、あるいはよこ線及びたて線ともに棒状である場合でもよい。上記実施例では基材にフッ素樹脂層を被覆する場合について述べたが、これに限定されず、耐熱性ゴム層を被覆してもよい。なお、この場合の耐熱性ゴム層の基材への被覆の形態は、フッ素樹脂層を被覆する場合と同様である。更には、フッ素樹脂層及び耐熱性ゴム層の形成方法としては、加圧加熱法,塗布法,浸漬法等任意の手段により形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1に係るフッ素樹脂被覆金網ベルトの説明図。
【図2】本発明の実施例2に係るフッ素樹脂被覆金網ベルトの断面図。
【図3】本発明の実施例3に係るフッ素樹脂被覆金網ベルトの断面図。
【図4】図1のベルトを構成する基材の概略的な平面図。
【図5】本発明の実施例4に係るフッ素樹脂被覆金網ベルトの断面図。
【図6】本発明の実施例5に係るフッ素樹脂被覆金網ベルトの断面図。
【図7】本発明の実施例1に係るフッ素樹脂被覆金網ベルトを構成するフッ素樹脂層の被覆の変形例を示す断面図。
【図8】ベルトによる張合わせ方式を用いた段ボールの製造装置の説明図。
【符号の説明】
【0028】
21…基材、22…よこ線、23,23a,23b…たて線、24…フッ素樹脂層、25…耐摩耗層、26,27a,27b…フッ素樹脂被覆アラミド織布層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のロールに跨設されて使用されるフッ素樹脂被覆金網ベルトにおいて、
金属製のよこ線と金属製のたて線で織られた基材と、この基材に被覆されたフッ素樹脂層とを具備することを特徴とするフッ素樹脂被覆金網ベルト。
【請求項2】
フッ素樹脂層が被覆された基材の片面または両面に形成された耐摩耗層を具備することを特徴とする請求項1記載のフッ素樹脂被覆金網ベルト。
【請求項3】
フッ素樹脂層が被覆された基材の一方の面に形成されたフッ素樹脂被覆アラミド織布層と、フッ素樹脂層が被覆された基材の他方の面に形成された耐摩耗層とを具備することを特徴とする請求項1記載のフッ素樹脂被覆金網ベルト。
【請求項4】
フッ素樹脂層が被覆された基材の片面または両面に形成されたフッ素樹脂被覆アラミド織布層を具備することを特徴とする請求項1記載のフッ素樹脂被覆金網ベルト。
【請求項5】
一対のロールに跨設されて使用される耐熱性ゴム被覆金網ベルトにおいて、
金属製のよこ線と金属製のたて線で織られた基材と、この基材に被覆された耐熱性ゴム層とを具備することを特徴とする耐熱性ゴム被覆金網ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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