説明

樹脂基材用の付着コーティング組成物

本発明は、未処理の熱可塑性および熱硬化性樹脂基材上に適用すると、基材上に付着コーティングを生成する、コーティング組成物に係る。組成物は、架橋可能成分と、架橋成分とを含む。架橋可能成分は、平均で1〜10、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2個の水酸基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーと、飽和炭化水素ポリマーとを含むモノマー混合物から重合された少なくとも1つの架橋可能コポリマーを含有するポリマーミックスを含む。架橋可能成分は、式R1(R2−NCO)nの1つ以上の脂環式ポリイソシアネートを含む。式中、R1は置換または非置換脂環式基であり、R2は直接結合、直鎖状脂肪族基または分岐脂肪族基から独立に選択され、nは2〜10である。本コーティング組成物は、樹脂基材の前処理を一切することなく、自動車および一般商業用途に用いるようなオレフィン基材上に付着コーティングを生成するのに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、合衆国法典第35巻119条のもと、2005年9月22日出願の米国仮特許出願第60/719,657号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、未処理の樹脂基材に適用されるコーティング組成物に係り、特に、組成物の適用前、基材表面を下処理することを必要とせずに、樹脂基材に接着するコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性オレフィン(TPO)、シートモールディングコンパウンド(SMC)、GE Companyより供給される変性ポリフェニレンエーテルポリマー(PPE)で強化されたNoryl GTX(登録商標)ポリアミド(PA)等のエンジニアリングポリマー、および反応射出成形(RIM)ポリウレタン等の樹脂材料は、自動車部品およびアクセサリ、容器、家庭用品およびその他商業品目等の多くの用途に用いられている。かかる樹脂材料からできた物品を、美観上好ましいコーティングによりコートするのが望ましいことが多い。かかるコーティングを用いると、かかる物品を日光、水分、熱および冷気等の大気風化条件に露出したときの劣化からも保護する。樹脂材料から、長く持ち、より耐久性のある物品を製造するには、かかる物品の表面にしっかりと接着するコーティングが必要である。
【0004】
様々な熱可塑性および熱硬化性樹脂材料からできた樹脂基材は、表面張力、粗さ、可撓性をはじめとする様々な表面特性と、溶解度パラメータ等の様々なバルク特性を有しており、コーティングをかかる材料に適切に接着するのを難しくさせている。樹脂材料のエージングや環境暴露の際はとりわけである。接着促進剤またはタイコートを樹脂基材表面に適用して、コーティングの表面への接着を改善することは周知である。接着促進剤またはタイコートの適用は、通常、コーティングプロセスにおける追加の工程である。接着促進剤は、通常、約6.35マイクロメートル(0.25ミル)の薄層で適用される。典型的に、TPOプラスチック表面に用いる接着促進剤は、塩素化ポリオレフィンを含有しており、そのいくつかの例は、米国特許第4,997,882号明細書、第5,319,032号明細書および第5,397,602号明細書に記載されている。さらに、火炎またはコロナ前処理工程を用いると、樹脂基材への有機コーティングの適切な接着を促進することもできる。
【0005】
樹脂基材をコートするために使用されるコーティング系に接着促進剤および/またはコロナ前処理を用いると、系に対する複雑さとコストが増す。接着促進剤の適用には、通常、樹脂基材を促進剤によりコーティングすることが含まれ、その後に乾燥や硬化時間があって、全体のコーティングプロセスの時間が増え、通常、さらなる作業場所が必要となる。従って、接着促進剤やタイコートを用いることなく、TPOやNoryl GTX(登録商標)ポリアミド等の樹脂材料に対して直接良好な接着力を示すコーティング組成物が望ましい。
【0006】
接着促進剤やタイコートを用いることなく樹脂基材への接着力を付与するために、コーティング組成物中にポリオレフィンジオールが用いられてきた。しかしながら、ポリオレフィンジオールは、あるコーティング組成物に用いられる樹脂および/または架橋剤と不相溶性である。例えば、米国特許第6,203,913号明細書には、ポリエステルやアクリルポリマー等の架橋可能基を有する1つ以上の従来の架橋可能フィルム形成樹脂、アミノプラストやイソシアネート等のフィルム形成樹脂と反応可能な1つ以上の従来の架橋材料、およびポリオレフィンジオール等の接着促進剤の混合物を含有する接着促進剤が開示されている。しかしながら、かかるコーティング組成物においても、接着促進剤、フィルム形成樹脂および架橋材料の相溶性を改善する必要が尚ある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、樹脂基材上に適用した場合に基材上に付着(adherent)コーティングを生成するコーティング組成物であって、
(a)平均で1〜10個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個の水酸基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーと、飽和炭化水素ポリマーとを含むモノマー混合物から重合された少なくとも1つの架橋可能コポリマーを含有するポリマーミックスを含む架橋可能成分と、
(b)式:
(R−NCO)
の脂環式ポリイソシアネートであって、式中、Rは3〜20個、好ましくは5〜10個、より好ましくは5〜8個の炭素原子を環に含有する置換または非置換脂環式基であり、Rは直接結合、直鎖状脂肪族基または分岐脂肪族基から独立に選択され、前記脂肪族基は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個の炭素原子を有し、nは2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5である、脂環式ポリイソシアネートを含む架橋成分と
を含むコーティング組成物に関する。
【0008】
本発明は、さらに、付着コーティングを樹脂基材上に生成する方法であって、
(a)架橋可能成分をコーティング組成物の架橋成分と混合してポットミックスを形成する工程であって、前記架橋可能成分が、平均で1〜10個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個の水酸基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーと、飽和炭化水素ポリマーとを含むモノマー混合物から重合された少なくとも1つの架橋可能コポリマーを含有するポリマーミックスを含み、架橋成分が:
(R−NCO)
を含み、式中、Rは3〜20個、好ましくは5〜10個、より好ましくは5〜8個の炭素原子を環に含有する置換または非置換脂環式基であり、Rは直接結合、直鎖状脂肪族基または分岐脂肪族基から独立に選択され、前記脂肪族基は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個の炭素原子を有し、nは2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5である工程と、
(b)前記ポットミックスを、前記樹脂基材上に適用する工程と、
(c)前記コーティングを前記樹脂基材上で硬化させる工程と
を含む方法に関する。
【0009】
本発明は、未処理の樹脂基材上に付着コーティングを生成する方法にさらに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
特に断りのない限り、
【0011】
「低VOCコーティング組成物」とは、0.36キログラム(1ガロン当たり0.8ポンド)〜2.95キログラム(1ガロン当たり6.5ポンド)、好ましくは1.18キログラム(1ガロン当たり2.6ポンド)〜2.27キログラム(1ガロン当たり5.0ポンド)、より好ましくは1.27キログラム(1ガロン当たり2.8ポンド)〜2.00キログラム(1ガロン当たり4.4ポンド)の範囲の溶剤を、コーティング組成物1リットル当たりで含むコーティング組成物を意味する。VOCは全てASTM D3960の手順により求めた。
【0012】
「GPC数平均分子量」は、Hewlett−Packard,Palo Alto,Californiaより供給される高性能液体クロマトグラフ(HPLC)等のゲル浸透クロマトグラフィーを利用することにより測定された数平均分子量を意味する。特に断りのない限り、テトラヒドロフランを液相として用い、ポリスチレン基準を用いた。
【0013】
「Tg」(ガラス遷移温度)は、1分当たり10℃の加熱レートでDSC(示差走査熱分析)により求めた℃で測定した温度を意味する。Tgは、第1の変曲点でのものである。ポリマーのTgは、ポリマーの硬さおよびメルトフローの尺度である。Tgが高ければ高いほど、コーティングのメルトフローは低く、硬くなる。Tgは、Cornell University Pressの「Principles of Polymer Chemistry」(1953年)に記載されている。Tgは実際に測定するか、「Bull.Amer.Physics Soc.」、1、3、123ページ(1956年)に、Foxにより記載されているようにして計算することができる。本明細書で用いるTgは、実際に測定された値を指す。
【0014】
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを意味する。
【0015】
「ポリマー固体」または「組成物固体」は、乾燥状態にあるポリマーまたは組成物を意味する。
【0016】
「架橋可能成分」は、化合物、ポリマー、コポリマーまたは化合物の多分散混合物、全ての官能基が骨格に配置された、ポリマー骨格から懸垂した、ポリマー骨格に末端配置されたポリマーおよび/またはコポリマー、またはこれらの組み合わせを含む成分を意味する。
【0017】
「架橋成分」は、化合物、ポリマー、オリゴマー、コポリマー、または化合物、ポリマー、オリゴマーの多分散混合物、および/または全ての官能基が骨格に配置された、ポリマー骨格から懸垂した、ポリマーまたはオリゴマー骨格に末端配置されたコポリマー、あるいはこれらの組み合わせを含む成分である。これらの官能基は、架橋可能成分の官能基と架橋させて(硬化工程中)、架橋構造の形態のコーティングを生成することができる。
【0018】
「周囲硬化条件」は、通常、スプレー領域に存在する12℃〜45℃(54°F〜113°F)の温度範囲、および5%〜95%の湿度範囲と定義される。
【0019】
「未処理樹脂基材」は、基材に適用された後のコーティングの接着力を増大する何らかの手段を用いて前処理されていない熱可塑性または熱硬化性基材を意味する。かかる処理方法は、業界において周知であり、例えば、火炎またはコロナ処理、接着促進剤またはタイコートにより樹脂表面を処理して、コーティング組成物に対する接着力を増大するのを補助する。典型的に用いられる従来の接着促進剤は、塩素化ポリオレフィンを含有している。これらの接着促進方法はどれも、かかる基材のコーティングを複雑にし、コストを増大する。本発明に用いるのに好適な樹脂基材としては、射出成形、シート成形、ブロー成形、真空形成または部品を形成するその他同様のプロセスで一般的に用いられる熱可塑性または熱硬化性合成材料を挙げることができる。より好適な樹脂基材としては、ポリエチレン−アルファオレフィンコポリマーにより強化されたイソタクチックポリプロピレン、ポリフェニレンエーテルにより強化されたポリアミド、シートモールディングコンパウンドまたはアクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレン(ABS)のコポリマーで作製されたものが挙げられる。しかしながら、反応射出成形化合物(RIM)は、短ガラス繊維または鉱物フィラー(マイカ、珪灰石その他)等の通常の強化剤により強化(RRIM)していない限りは、本発明には含まれない。好適なRRIMの一例は、Bayer MaterialScience,Pittsburgh,Pennsylvania製Bayflex(登録商標)190ポリウレタン/ポリウレアRRIM系(15%マイカにより強化)として知られている。
【0020】
「2液コーティング組成物」は、別の容器に保管された2つの成分を有する硬化可能コーティング組成物を意味する。2つの成分を含む容器は、典型的に、密閉されていて、コーティング組成物の成分のシェルフライフを増大する。2液コーティング組成物のかかる成分の一方は、架橋可能成分であり、他方は架橋成分である。これらの成分を使用前に混合して、ポットミックスを形成する。ポットミックスのポットライフは、数分(10分〜45分)から数時間(4時間〜24時間)に限定される。この組成物の架橋成分は、ポリイソシアネートを含む。ポットミックスは、自動車車体等の基材表面に所望の厚さの層として適用される。適用後、層は周囲または高温で乾燥し、硬化して、接着力や耐チッピング性を改善する等、所望のコーティング特性を有する基材表面にコーティングを形成する。
【0021】
「1液コーティング組成物」は、1つのパックに一緒に保管された架橋可能成分と架橋成分の両方を有する硬化可能コーティング組成物を意味する。この組成物の架橋成分は、ブロック化ポリイソシアネートおよびこれらの混合物からなる群より選択される。ポリイソシアネートのための典型的なブロック剤としては、アルコール、ケチミンおよびオキシムが挙げられる。1液コーティング組成物を好適な基材に適用し、高温で硬化して、耐久性コーティングを形成する。本発明のコーティング組成物は、プラスチック基材に接着する組成物に係るため、硬化温度は、1液コーティング組成物を処方し、硬化するとき、基材の軟化点より低いものとしなければならない。2液コーティング組成物が好ましい。
【0022】
本明細書に指定した様々の範囲の数値は、近似として使われており、記した範囲内の最小および最大値の両方共、前に「約」という言葉が付く。このように、記した範囲より僅か上や下の変動を用いても、その範囲内の値と実質的に同じ結果を得ることができる。同様に、これらの範囲の開示は、1つの値のいくつかの成分を、異なる値のものと混合したときに、得られる小数値を含む最小と最大の平均値間の各値を含む連続した範囲を意図している。さらに、それより広い、および狭い範囲が開示されているときは、ある範囲の最小値を、他の範囲の最大値と、またはその逆で、適合させることも本発明の範囲内である。
【0023】
本発明の新規なコーティング組成物は、樹脂基材に直接適用されたプライマー、樹脂基材に直接適用された着色トップコート、ベースコート−クリアコートのコートされた複合体における、樹脂基材に直接適用された着色ベースコート(これには後にクリアトップコートがトップコートされる)、または着色樹脂基材に直接適用されたクリアトップコートとして用いるのに好適である。
【0024】
本明細書で用いる、「大部分が炭化水素ポリマー」とは、飽和炭化水素ポリマーが、約85〜約99重量パーセントの炭化水素単位を含有することを意味する。飽和炭化水素ポリマーは、約13重量パーセント未満の酸素、窒素および硫黄等のヘテロ原子を含有する。飽和炭化水素ポリマーは、好ましくは6重量パーセント未満、より好ましくは3パーセント未満、最も好ましくは1パーセント未満のヘテロ原子を含有する。典型的に、飽和炭化水素ポリマーの数平均分子量は約1000〜20,000の範囲である。
【0025】
飽和炭化水素ポリマーは、架橋可能フィルム形成系の架橋材料と反応可能な末端または懸垂官能基を1分子当たり平均で2個以上含有している。異なる飽和炭化水素ポリマーの混合物として存在し得る飽和炭化水素ポリマーは、好ましくは、1分子当たり平均で約1.5〜約6個の末端または懸垂官能基を含有している。より好ましくは、飽和炭化水素ポリマーは、1分子当たり2個の末端官能基を含有している。
【0026】
飽和炭化水素ポリマーの官能基は、カルボキシル基、カルバメート基、水酸基、アミノ基、アミド基、メルカプタン基およびこれらの混合物とすることができる。好ましくは、官能基は、水酸基である。より好ましくは、飽和炭化水素ポリマーは、2個の末端水酸基を含有する。
【0027】
飽和炭化水素ポリマーは、少なくとも「実質的に飽和」している、すなわち、炭化水素ポリマーは、通常は重合後、水素化されて、炭化水素ポリマーの少なくとも約90パーセント、好ましくは少なくとも約95パーセントの炭素−炭素二重結合が飽和している。不飽和炭化水素ポリマーを水素化する方法は、業界で周知である。有用な水素化プロセスとしては、米国特許第5,039,755号明細書に開示された、レーニーニッケル等の触媒、白金等の貴金属、可溶遷移金属触媒およびチタン触媒を存在させた水素化が挙げられる。
【0028】
好ましい実施形態において、飽和炭化水素ポリマーは、1つ以上の実質的に飽和したポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーを含む。米国特許第5,486,570号明細書および米国特許第5,376,745号明細書に記載されたように、実質的に飽和したイソプレンまたはブタジエンを用いて作製されたポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーが、本発明で用いるのに好適である。飽和炭化水素ポリマーは、飽和ポリブタジエンから形成されているのが好ましい。このタイプのポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーの水酸基等量は、通常、約500〜約20,000である。飽和ヒドロキシル化ポリジエンポリマーは、ポリマーの各端に1個ずつ約2個の末端水酸基を含有し、水酸基等量が約1,000〜約5000のジヒドロキシポリブタジエンであるのが好ましい。
【0029】
好適な実質的に不飽和のポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーとしては、リチウム開始剤による、ジエンの遊離基重合や、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン炭化水素のアニオン重合により合成されたものが挙げられる。アニオン重合によりポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーを調製するプロセス工程は、米国特許第4,039,593号明細書、米国再発行特許第27,145号明細書および米国特許第5,376,745号明細書に記載されている。かかるポリマーは、典型的に、2モルのsec−ブチルリチウムと、1モルのジイソプロピルベンゼンとの反応により形成された化合物等、ジ−リチウム開始剤により作製される。ブタジエンの重合は、90重量パーセントのシクロヘキサンと、10重量パーセントのジエチルエーテルから構成された溶剤中で実施できる。二開始剤とモノマーのモル比が、ポリマーの分子量を決める。ポリマーは、2モルの酸化エチレンでキャッピングされ、2モルのメタノールを末端として、ジヒドロキシポリブタジエンを生成する。最も好ましい飽和炭化水素ポリマーは、テレケリックポリマージオール、ブタジエンから重合された直鎖状コポリマーである。好適なポリヒドロキシル化ポリジエンとしては、Shell Chemical Co,Houston,Texasより市販されているKraton液体ポリマーHPVM2200シリーズおよびShell Diol L−2203、Sartomer Resins,West Chester,Pennsylvania製KRASOL(登録商標)HLBH−P3000が挙げられる。
【0030】
その他の好適な実質的に飽和したポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーは、共役ジエンから誘導された少なくとも約90重量パーセントの繰り返し単位を有しているのが好ましい。ポリマーを形成するのに用いるモノマーとしては、米国特許第4,518,753号明細書および米国特許第3,652,732号明細書に開示されているような2〜6個の炭素原子を有するオレフィンが挙げられる。任意で、ポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーは、2〜10個の炭素原子および芳香族、ハロゲン、シアン化物、エステルおよびヒドロキシエステルを含む置換基を有する50モルパーセントまでのエチレン性不飽和コモノマーから形成することができる。かかるポリマーとしては、連鎖停止工程において水酸基が付与されるアニオン化重合ジエン、または過酸化水素により開始されるような遊離基重合ジエンを含む水酸基末端ジエンベースのポリマーが例示される。かかる水素化された実質的に飽和したポリヒドロキシル化ポリジエンポリマーは、米国特許第5,115,007号明細書および米国特許第5,221,707号明細書に記載されている。これらのポリマーは、好ましくは1モル当たり約500〜約20,000、より好ましくは約1,000〜約8,000グラムのMn、ポリマー鎖当たり好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜4個の水酸末端基を有している。
【0031】
好ましくは、コーティング組成物は、モノヒドロキシル化ジエンポリマーを実質的に含まない。すなわち、接着促進剤は、25重量パーセント未満のモノヒドロキシル化ジエンポリマー、好ましくは10重量パーセント未満、最も好ましくは、コーティング組成物は1.0重量パーセント未満のモノヒドロキシル化ジエンポリマーである。
【0032】
本発明の架橋可能コポリマーは、通常、1つ以上の上述した飽和炭化水素ポリマーと、平均1〜10、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2個の水酸基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーとを含むモノマー混合物の熱開始溶液重合プロセスにより重合される。
【0033】
モノマー混合物は、全て前記架橋可能成分の100重量部に基づく重量部で、典型的に、70部〜99部の前記エチレン性不飽和モノマーと、1部〜30部、好ましくは2部〜20部、より好ましくは3部〜12部の前記飽和炭化水素ポリマーとを含む。
【0034】
本発明の架橋可能コポリマーは、2000〜20,000、好ましくは2200〜8000、より好ましくは2500〜4000の範囲のGPC数平均分子量を有する。本発明の架橋可能コポリマーのTgは−40℃〜+70℃、好ましくは−30℃〜+50℃、より好ましくは−20℃〜30℃である。
【0035】
好適なエチレン性不飽和モノマーとしては、アルキル基が1〜4個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のアクリルエステルモノマーが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(1級)、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(全てイソマー、1級、および2級)およびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(全てイソマー、1級、および2級)が挙げられる。モノマー混合物は、さらに、以下のエチレン性不飽和モノマーを含むことができる。アクリルエステルモノマー、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;アクリルアミドまたは置換アクリルアミド;スチレンまたはアルキル置換スチレン;ブタジエン;エチレン;酢酸ビニル;「Versatic」酸のビニルエステル(C、C10およびC11鎖長の第3級モノカルボン酸;ビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン;アミノモノマー、例えば、N,N‘−ジメチルアミノ(メタ)アクリレート;クロロプレンおよびアクリロニトリルまたはメタアクリロニトリル;カルボキシモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネートおよびホスホエチルメタクリレート。
【0036】
モノマー混合物は、さらに、好ましくは、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ローレル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0037】
好ましくは、架橋可能なコポリマーは、約20〜30重量%のシクロヘキシル(メタ)アクリレート、10〜70重量%のエチルヘキシル(メタ)アクリレート、5〜25重量%のヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび1〜10%の飽和炭化水素ポリマー、任意で、30重量%までのスチレン、30重量%までのメチルメタクリレートのモノマー混合物から重合される。重量パーセンテージは全て、モノマー固体の総重量に基づいている。
【0038】
架橋可能コポリマーはまた、モノマー混合物、通常の溶剤、重合開始剤、例えば、酢酸ペロキシを70℃〜175℃まで1〜12時間加熱する溶液重合により調製することもできる。
【0039】
架橋可能成分は、架橋可能および架橋成分の重量に基づいて、0.1パーセント〜50パーセントの範囲で、フロー改質樹脂、例えば、周知の非水分散液(NAD)を含有することができる。パーセンテージは、組成物固体の総重量に基づいている。
【0040】
非水分散液型のポリマーは、ポリマー分散安定剤および有機溶剤を存在させて、少なくとも1つのビニルモノマーを分散重合することにより調製される。ポリマー分散安定剤は、非水分散液の分野で一般的に用いられる公知の安定剤のいずれであってもよい。
【0041】
本発明の架橋可能成分はまた、米国特許第6,221,494号明細書にある反応性オリゴマーや、所望であれば、非脂環式(直鎖状または芳香族)オリゴマーとブレンドすることもできる。かかる非脂環式オリゴマーは、非脂環式無水物、例えば、無水コハク酸またはフタル酸またはこれらの混合物を用いて作製することができる。米国特許第5,286,782号明細書に記載されたカプロラクトンオリゴマーも用いることができる。
【0042】
架橋可能成分は、さらに、ポリエステル、アクリルポリマー、ポリエーテル、ポリオールまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0043】
架橋可能成分は、さらに、1つ以上の従来の架橋触媒、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクタン酸第一錫およびジブチル錫酸化物をはじめとする有機錫触媒を含むことができる。ジブチル錫ジラウレートが好ましい。架橋可能成分は、典型的に、0.001部〜5部の範囲、好ましくは0.005部〜2部の範囲、より好ましくは0.01部〜1部の前記架橋触媒を含む。重量部は全て、前記架橋可能および前記架橋成分100重量部に基づいている。
【0044】
組成物の架橋成分は、12〜25パーセント、好ましくは14〜22重量パーセント、最も好ましくは15〜20重量パーセントの1つ以上の脂環式ポリイソシアネートを含む。重量パーセンテージは全て、架橋可能および架橋成分固体の総重量に基づいている。25重量パーセントを超える脂環式ポリイソシアネートを用いると、得られるコーティングは、下にある未処理の樹脂基材に接着せず、12パーセント未満の脂環式ポリイソシアネートを用いると、得られるコーティングの耐久性や機械的強度といったその他のコーティング特性が悪影響を受ける。
【0045】
いずれかの理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の架橋可能コポリマーと、脂環式イソシアネートを含有する架橋成分とを含有するポットミックスの一部が、樹脂基材へ浸透し、樹脂基材を構成するポリマー鎖と交絡し、樹脂基材内で、樹脂基材と、ポットミックスの残りから形成されたコーティングとの間の界面を超えて架橋して、コーティングを樹脂基材にステッチすることによって、コーティングの樹脂基材への接着がなされるものと考えられる。ポットミックスにより形成されたコーティングは、樹脂プライマーに直接、樹脂ベースコートに直接、または自動車車体パネルとして用いる樹脂トップコートオーバー樹脂に直接用いてよい。
【0046】
その結果、外観、接着力、耐化学および物理性等のその他の所望のコーティング特性に悪影響を及ぼすことなく、コーティングの接着力を改善するために、樹脂表面を処理する必要性を排除することができる。
【0047】
本発明に用いるのに好適な脂環式ポリイソシアネートは、式R(R−NCO)であり、式中、Rは任意で橋懸けすることができる脂環式基である。Rは環中に3〜20個、好ましくは4〜10個、より好ましくは5〜8個の炭素原子を含有する。Rは1〜6個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜2個の炭素原子を有する直接結合、直鎖状脂肪族基または分岐脂肪族基から独立に選択され、nは2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5である。好ましいイソシアネートは、イソシアネートのモノマー形態、あるいは二量化、三量化またはその他の公知の方法によりオリゴマー化されたイソシアネートから得られるいわゆる「ホモポリマーイソシアネート」から選択される。かかる好ましい一例としては、Bayer Material Science,Pittsburgh,PAよりDesmodur(登録商標)Z4470という商品名のイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体が挙げられる。
【0048】
好適な脂環式ポリイソシアネートとしては、エチレン性不飽和されていてもされていなくてもよいジ−、トリ−またはテトライソシアネート、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4−メチル−1,3−ジイソシアネートシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソシアヌレート構造単位を有するポリイソシアネート、ジイソシアネートの2分子の付加物、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジオール、例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパンの1分子とイソホロンジイソシアネートの3分子の付加物が挙げられる。
【0049】
所望であれば、架橋成分は、その他のポリイソシアネート、例えば、1,2−プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、オメガ、オメガ−ジプロピルエーテルジイソシアネート、トランス−ビニリデンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアネート1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼンキシレンジイソシアネート、1,5−ジメチル−2,4−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,5−ジメチル−2,4−ビス(2−イソシアネートエチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、4,4’−ジイソシアネートジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジイソシアネートフェニル、3,3’−ジフェニル4,4’−ジイソシアネートジフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ジイソシアネートナフタレートおよびこれらの組み合わせを含むことができる。
【0050】
好ましくは、架橋成分は、少量のその他のポリイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートの1つ以上の三量体またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0051】
上述したポリイソシアネートを用いるときは、架橋可能成分は、2液コーティング組成物の一部として、架橋成分から別に保管する。これらの成分は、使用前に混合して、ポットミックスを形成する。これを、スプレー装置やローラアプリケータ等の従来の手段により、樹脂基材上に適用する。
【0052】
あるいは、上述したポリイソシアネートのイソシアネート基は、モノマーアルコールでブロックすると、1液コーティング組成物における早期の架橋を防ぐ。好適なモノマーアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノールおよびシクロヘキサノールが挙げられる。好ましいモノマーアルコールは、2−エチルヘキサノールおよびシクロヘキサノールである。
【0053】
組成物は、典型的に、芳香族炭化水素、例えば、石油ナフサまたはキシレン、ケトン、例えば、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンまたはアセトン、エステル、例えば、酢酸ブチルまたは酢酸ヘキシル、グリコールエーテルエステル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびこれらの組み合わせから選択される有機溶剤等の1つ以上の溶剤を含む。組成物は、通常、10%〜85%、好ましくは20%〜60%、より好ましくは30%〜40%の範囲の上述の溶剤を含む。パーセンテージは全て、コーティング組成物の総重量に基づいている。溶剤または溶剤の混合物は、典型的に、架橋および架橋可能成分に含まれる。溶剤は選択する、または溶剤の混合物を調整して、それの中に混和される架橋可能コポリマーを与えるのが好ましい。
【0054】
本発明のコーティング組成物はまた、従来の添加剤、例えば、顔料、顔料分散剤、安定剤、レオロジー調節剤、フロー剤、強化剤およびフィラーを含有することもできる。かかる追加の添加剤の選択は、明らかに、コーティング組成物の目的の用途に応じて異なる。上述の添加剤は、コーティング組成物の目的の用途に応じて、架橋可能か架橋成分のいずれか、または両方に添加してよい。本発明のコーティング組成物をベースコートとして用いるとき、組成物に添加できる典型的な顔料としては以下のものが挙げられる。金属酸化物、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、様々な色の鉄酸化物、カーボンブラック;フィラー顔料、例えば、タルク、カオリン、バライト、カーボネート、シリケート;および様々な有機着色顔料、例えば、キナクリドン、銅フタロシアニン、ペリレン、アゾ顔料、インダントロンブルー、カルバゾール、例えば、カルバゾールバイオレット、イソインドリノン、イソインダロン、チオインディゴレッド、ベンズイミダゾリノン;金属フレーク顔料、例えば、アルミニウムフレーク。
【0055】
前述のものに加えて、コーティング組成物のクリアコートまたは有色トップコートの耐候性を改善するために、クリア組成物として処方するとき、コーティング組成物は、組成物固体の重量に基づいて、約0.1〜5重量%の紫外線安定剤を含むことができ、または紫外線安定剤と吸収剤の組み合わせを添加してよい。これらの安定剤は、紫外線吸収剤、スクリーナ、消光剤および特定のヒンダードアミン光安定剤を含む。同様に、組成物固体の重量に基づいて、約0.1〜5重量%の酸化防止剤を添加することができる。前述の安定剤の大半は、Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,New Yorkより供給される。
【0056】
使用中、コーティング組成物を、二液コーティング組成物としてパックするとき、コーティング組成物の架橋可能および架橋成分は、使用直前に混合して、ポットミックスを形成する。これは、典型的に、10分〜24時間の限定されたポットライフを有している。ポットミックス層は、典型的に、従来の技術、例えば、スプレー、静電スプレー、ローラーコーティング、ディッピングまたはブラッシングにより、基材に適用される。ポットミックス層は、周囲条件下で、10分〜24時間、好ましくは60分〜16時間または一晩で硬化して、所望のコーティング特性を有するコーティングを基材上に形成する。実際の硬化時間は、適用した層の厚さ、用いた架橋の化学的タイプ、好適な乾燥装置の有無、例えば、コーティングした基材上に空気を連続的に流すのを助けて、乾燥速度を速めるファンの有無に応じて異なるものと考えられる。所望であれば、約60〜82℃の温度で、約30分にわたる、コーティングした基材の焼成によって、硬化速度をさらに速めてもよい。前述の焼成工程は、OEM(相手先商標製品製造)条件下では特に有用である。
【0057】
コーティング組成物を、1液組成物としてパッケージするときは、コーティング組成物の層を、前述したのと同様のやり方で適用する。しかしながら、架橋成分中の架橋基はブロックされているため、層は、典型的に、焼成硬化温度になると、架橋基のブロックが外れて、架橋可能成分中に存在する架橋可能基により架橋可能となる。典型的に、焼成工程は、60℃〜200℃、好ましくは80℃〜160℃の焼成温度で、約10〜60分間にわたってなされる。
【0058】
本発明は、本発明のコーティング組成物を含むマルチコート系、好ましくは、マルチコートOEMまたは塗り替え系を生成する方法に係る。コーティング組成物は、プライマーコート、ベースコート/クリアコート系におけるベースコート、ベースコート/クリアコート系におけるクリアコート、または単一コートまたはマルチコート系におけるトップコートとして用いてもよい。これらの系はそれぞれ、業界で周知である。
【0059】
本発明のコーティング組成物を適用するのに好適な基材としては、樹脂車体、本体インサートまたは本体パネル、自動車サブサプライヤにより製造され塗装された全ての樹脂品目、商業的な樹脂トラック本体、例えば、これらに限られるものではないが、飲料輸送トラック本体、ユーティリティボディ、生コンクリート分配車両車体、廃棄物運搬車体および火災緊急車両車体、ならびに、かかるトラック車体、バス、農場建築設備、トラックキャップおよびカバー、商業用トレーラー、消費者用トレーラー、レクリエーション車両、例えば、これらに限られるものではないが、モーターホーム、キャンパー、コンバージョンバン、バン、娯楽用車、娯楽用クラフトスノーモービル、全地形型車両、水上バイク、モーターサイクル、自転車、ボートおよび飛行機への樹脂アタッチメントやコンポーネントが挙げられる。樹脂基材としては、さらに、工業および商業新建造物やその保守、アミューズメントパーク、貨車、機械類、OEMツール、標識、ファイバーガラス構造、玩具、スポーツ用品、ゴルフボールおよびスポーツ設備に用いられるものが挙げられる。
【0060】
本発明の特徴および利点は、前述の詳細な説明を読めば、当業者であれば、容易に理解されるであろう。明瞭にするために、別個の実施形態で上述した本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態の組み合わせでも提供できるものと考えられる。逆に、短く、単一の実施形態で記載した本発明の様々な特徴もまた、別個に、あるいは下位の組み合わせでも提供できる。さらに、単数で参照したものには、特に断りのない限り、複数も含むことができる(例えば、「1つ」は、1つ、または1つ以上を指す)。
【実施例】
【0061】
実施例
試験手順は、以下の公知の手順に従った。
【0062】
Persoz硬さ試験
コーティングのフィルム硬さにおける変化を、時間に関して、Byk−Mallinckrodt,Wallingford,CTより供給されるPersoz硬さ試験機型番5854(ASTM D4366)を用いて測定した。振動数(Persoz数と呼ばれる)を記録した。
【0063】
膨潤比
フリーフィルム(ガラスシートから剥がした)の膨潤比を、フィルムを塩化メチレンに膨潤することにより求めた。フリーフィルムを、2枚のアルミニウムホイル層間に入れ、Laddグリッドパンチを用いて、直径約3.5mmのディスクをフィルムから打ち抜き、ホイルをフィルムから剥がした。未膨潤フィルムの直径(D)を、ファイラーレンズの顕微鏡10倍を用いて測定した。4滴の塩化メチレンをフィルムに加え、フィルムを数秒間膨潤させ、ガラススライドをフィルムの上に置いて、膨潤したフィルム直径(D)を測定した。膨潤比を次のようにして計算した。
膨潤比=(D/(D
【0064】
X−ハッチ接着力
鋭いレーザー刃、メス、ナイフまたはその他切断装置を用いて、コーティングに、脚の間が30〜45度の角度で、基材に、交差して「X」となる2つの切断部を作成する。鋼またはその他硬質金属の直線の端部を用いて、確実に直線の切断部とする。切断部の交差中心にテープを置き、即時に除去する。基材または前のコーティングからのコーティングの除去についてX−切断領域を検査して、格付けする。この試験の適用および性能についての標準方法は、ASTM D6677による。
【0065】
クロス−ハッチ接着力
クロスハッチテープ試験は、厚さ5ミル(125ミクロン)未満のコーティングについて実験室で主に用いるためのものである。Xパターンでなく、クロス−ハッチパターンを用いる。切り込みを確実に適切な間隔で平行とするには、複数のプリセットブレードを備えた切断ガイドまたは特別クロス−ハッチカッターが必要である。テープを適用し引っ張り剥がし、切断領域を検査し格付けする。前述の試験は、ASTM D3359で利用できる接着試験の適用および性能についての標準的方法に基づいている。本発明のために、接着力を、0(接着なし、すなわち、完全に不合格)〜10(完全な接着、すなわち、完全に合格)の段階基準で格付けする。6以上の格付けが好ましく、9以上の格付けがより好ましい。
【0066】
架橋可能コポリマー1の調製
特に断りのない限り、重量は全てグラムである。
【0067】
後述する充填物1を、添加漏斗、攪拌器、温度計、凝縮器および窒素ブランケットを備えたフラスコに加え、加熱して還流した。その後、後述する充填物2を、還流を維持しながら、3時間にわたってフラスコに添加した。充填物2の添加後、フラスコ内容物の温度を120℃まで減じ、後述する充填物3を、付加漏斗により、30分にわたって添加した。フラスコ内容物の温度を120℃に30分間保ち、冷却して濾過した。得られたコポリマーのGPC数平均分子量は3054、Tgは60.34%固体で−17℃であった。
【0068】
充填物1

*Houston, TexasのKraton Liquid Polymersより供給されたKraton(登録商標)液体ポリマーL2203テレケリックポリマージオール
【0069】
充填物2

* Arekma, Inc., Philadelphia, Pennsylvaniaより供給されたLuperox(登録商標)7M75、t-ブチルパーオキシアセテート
【0070】
充填物3

* Akzo Nobel NV, Netherlands より供給されたTrigonox(登録商標)41-c75、t-ブチルパーオキシイソブチレート
【0071】
比較ポリマー1
飽和炭化水素ポリマーがない以外は、上記の架橋可能コポリマー1の調製に記載したのと同じ手順を行った。
【0072】
充填物1

【0073】
充填物2

* Arekma, Inc., Philadelphia, Pennsylvania より供給されたLuperox(登録商標)7M75、 t-ブチルパーオキシアセテート
【0074】
充填物3

* Akzo Nobel NV, Netherlands より供給されたTrigonox(登録商標)41-c75、t-ブチルパーオキシイソブチレート
【0075】
コーティング組成物Aの調製
【0076】
架橋可能成分:

* ExxonMobile, Houston, Texas より供給されたAromatic 150溶剤
【0077】
架橋成分:

* Bayer MaterialScience, Pittsburgh, Pennsylvania より供給されたDesmodur(登録商標)Z4470 sn/baは、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートである。
【0078】
架橋成分を、前に混合した架橋可能成分に攪拌しながら添加して、ポットミックスを形成した。濁っていなかったことから、相分離がなく、混和していることを示していた。コーティング組成物Aを、Act Laboratories,Hillsdale,Michiganより供給された3枚のSolvay屋外等級の熱可塑性ポリオレフィンパネル、および3枚のガラスパネルに、0.254mm(0.010インチ)の間隙を有するバードタイプアプリケータにより、適用し、以下のスケジュールで硬化した。
プラスチックパネル1およびガラスパネル1は25℃(77°F)で一晩硬化した。
プラスチックパネル2およびガラスパネル2は60℃(140°F)で30分間焼成し、さらに一晩25℃(77°F)で硬化した。
プラスチックパネル3およびガラスパネル3は82℃(180°F)で30分間焼成し、さらに一晩25℃(77°F)で硬化した。
【0079】
硬化したガラスパネル1、2および3はいずれも、目視される相分離のないクリアなフィルムとなった。
【0080】
ガラスパネルの膨潤速度および硬化後のPersoz硬さについて評価した。ガラスパネル1の膨潤比は2.28、Persoz硬さは64であった。ガラスパネル2の膨潤比は2.02、Persoz硬さは63であった。ガラスパネル3の膨潤比は2.07、Persoz硬さは70であった。プラスチックパネルに適用した各コーティングのX−ハッチおよびクロス−ハッチ接着力を試験した。
【0081】
プラスチックパネルは全て25℃(77°F)で7日間エージングし、接着力を再試験した。全てのプラスチックパネルを7日間100%湿度、38℃(100°F)とし、接着力を再試験した。
【0082】
結果を表1に示す。
【0083】
表1

【0084】
前述の結果から、本発明のコーティング組成物Aが、様々な硬化および露出条件下で、ポリオレフィンパネルに対して、許容されるよりも良好な接着力を与えることが分かる。
【0085】
以下のコーティング組成物を、表2に示す成分を用いて作製し試験した。表2に挙げた量は全て、特に断りのない限り、グラムである。
【0086】
以下の表2に示すコーティング組成物において、上記のコーティング組成物Aを調製するのと同じ手順を行った。各コーティング溶液は、クリアな混合物であり、相分離は観察されなかった。各組成物を、2枚のSolvay屋外等級の熱可塑性ポリオレフィンパネル、および2枚のガラスパネルに、0.254mm(0.010インチ)の間隙を有するバードタイプアプリケータにより、適用し、以下のスケジュールで硬化した。
プラスチックパネル1およびガラスパネル1は60℃(140°F)で30分間焼成し、さらに一晩25℃(77°F)で硬化した。
プラスチックパネル2およびガラスパネル2は82℃(180°F)で30分間焼成し、さらに一晩25℃(77°F)で硬化した。
【0087】
表2

*塗膜組成物H〜Tは比較例であった。
【0088】
(1)液体ジオールは、Kraton Liquid Polymers, Houston, Texas より供給されたキシレン中80%溶液としてのKraton(登録商標)液体ポリマーL2203である。
(2)触媒は、架橋可能および架橋成分の合計に基づいて0.2重量パーセントである(Arkema Inc, of Philadelphia, Pennsylvaniaより供給されたキシレン中ジブチル錫ジラウレートの1%水溶液であるFascat(登録商標)4202)。
(3)ExxonMobile, Houston, Texasより供給されたAromatic 150溶剤。
(4)Bayer MaterialScience, Pittsburgh, Pennsylvania より供給されたDesmodur(登録商標)Z4470ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート)。
(5)触媒は、ジブチル錫ジラウレート0.05重量パーセントおよびナフテン酸亜鉛0.05重量パーセントであり、重量パーセンテージは、架橋可能および架橋成分の合計に基づいている。
(6)Bayer MaterialScience, Pittsburgh, Pennsylvania より供給されたDesmodur(登録商標)N3300ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート)。
【0089】
各ガラスパネルのPersoz硬さについて評価し、各プラスチックパネルのX−ハッチおよびクロス−ハッチ接着力について格付けした。結果を表3にまとめてある。
【0090】
表3

*塗膜組成物D〜Fはあまり好ましくない。
**塗膜組成物H〜Tは比較例であった。
【0091】
ガラスパネルは全て平滑な質感のフィルムであった。ガラスパネルのコーティング組成物A〜Mのコーティングはクリアなフィルムであったが、コーティング組成物N〜Sのコーティングは白濁しており、相分離があることを示していた。コーティングの相分離は望ましくない。フィルムの完全性や顔料分散に問題を生じさせるためである。かかるコーティングはまた、クリアコーティングとして用いるのにも望ましくない。NCO/OH比が0.6/1を超えるコーティング組成物D〜Fは、一定した接着力を示さない。結果として、NCO/OH比が0.6/1以下の本発明のコーティング組成物より好ましくない。さらに、表3の結果から、NCO/OH比を0.6/1〜1/1まで増やすと、下にある基材に対する接着力が弱まることが分かる。しかしながら、比較組成物H〜Mのコーティングよりはまだ良かった。比較組成物N〜Sのコーティングは良好な接着力を示すが、前述したように、これらの組成物によるポットミックスは、濁っており、前述したように、望ましくない。このように、本発明の架橋可能ポリマーを含有するコーティング組成物は、許容される接着力を有しており、さらに、NCO/OH比が0.6/1以下だと、その明瞭度から分かるが、所望の適合性(相分離なし)を与えつつ、良好な接着力を有している。
【0092】
コーティング組成物Aと同じ手段を用いて、コーティング組成物Uを調製した。すなわち、架橋可能コポリマー1(35.06g)を、Desmodur(登録商標)Z4470sn/baポリイソシアネート(5.41g)、Arkema,Inc.より供給されたキシレン(4.99g)およびExxonMobileより入手可能なAromatic150溶剤(4.52g)中ジブチル錫ジラウレート1%溶液と混合した。溶液はクリアであることから、相分離がないことを示していた。一組の未処理の樹脂パネルを、Wilmington,DelawareのDuPont Companyより供給されるDuPont2320Sプラスチッククリーナーで拭いた。コーティング組成物Uを、2枚の清浄な樹脂パネルに適用し、0.254mm(0.010インチ)間隙のバードアプリケータ刃を用いて広げた。パネルを30分間空気乾燥し、一組を82℃(180°F)で30分間、他の組を60℃(140°F)で30分間焼成した。パネルを1時間冷却し、接着力について試験した。結果を表4に示す。
【0093】
表4

*RIM基材上に適用された塗膜は、本発明の一部とは考えられない。
Noryl GTX(登録商標) ポリフェニレンエーテル強化ポリアミドとしても知られているGTXは、GE Plastics, Fairfield, Connecticutより供給された。
RRIMは強化反応射出成型樹脂である。
RIMは反応射出成型樹脂である。
ABSはアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンのコポリマーである。
SMCはシートモールディングコンパウンドである。
【0094】
前述より、本発明のコーティング組成物を用いると、様々な未処理樹脂基材に対して、非常に良好な接着力が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材上に適用した場合に基材上に付着コーティングを生成するコーティング組成物であって、
(a)平均で1〜10個の水酸基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーと、飽和炭化水素ポリマーとを含むモノマー混合物から重合された少なくとも1つの架橋可能コポリマーを含有するポリマーミックスを含む架橋可能成分と、
(b)式:
1(R2−NCO)n
の脂環式ポリイソシアネートであって、式中、R1は環に約3〜20個の炭素原子を含有する置換または非置換脂環式基であり、R2は直接結合、直鎖状脂肪族基または分岐脂肪族基から独立に選択され、前記脂肪族基は1〜6個の炭素原子を有し、nは2〜10である脂環式ポリイソシアネートを含む架橋成分と
を含むコーティング組成物。
【請求項2】
前記飽和炭化水素ポリマーが、テレケリックポリマージオール、ブタジエンから重合された鎖状コポリマーである請求項2に記載の組成物。
【請求項3】
前記架橋可能コポリマーのGPC数平均分子量が2000〜20,000の範囲である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋可能コポリマーのTgが−40℃〜+70℃の範囲である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記モノマー混合物が、全て前記架橋可能成分の100重量部に基づく重量部で、70部〜99部の範囲の前記エチレン性不飽和モノマーおよび1部〜30部の前記飽和炭化水素ポリマーを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記モノマー混合物が、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸またはこれらの組み合わせをさらに含む請求項1または5に記載の組成物。
【請求項7】
前記脂環式ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋成分中の前記脂環式ポリイソシアネートが、架橋可能成分および架橋成分の総重量に基づいて12〜25重量パーセントの範囲である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋成分が、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタ−テトラメチルキシリレンジイソシアネートまたはトルエンジイソシアネートの1つ以上の三量体をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記イソシアネート基が、前記基をモノマーアルコールと反応させることによりブロックされている請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記モノマーアルコールが脂肪族アルコールである請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記脂肪族アルコールが、シクロヘキサノール、または2−エチルヘキサノールである請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記架橋可能成分が、1つ以上の架橋触媒をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、全て前記架橋可能成分および前記架橋成分の100重量部に基づく重量部で、0.001部〜5.0部の範囲の前記触媒を含む請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記架橋可能成分が、1つ以上のフロー改質樹脂、ポリエステル、アクリルポリマー、ポリエーテルおよびポリオール等の他のポリマーをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
芳香族炭化水素、ケトン、エステル、グリコールエーテルエステルおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される有機溶剤からなる群より選択される1つ以上の溶剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記架橋可能コポリマーおよび脂環式ポリイソシアネートが、前記有機溶剤に混和性を有する請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物のVOCが、前記組成物1リットル当たり有機溶剤0.36〜2.95キログラムの範囲で変化する請求項1または16に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載のコーティング組成物から得られる付着コーティングでコーティングされた未処理の樹脂基材であって、前記樹脂基材が、ポリエチレン−アルファオレフィンコポリマーにより強化されたイソタクチックポリプロピレン、ポリフェニレンエーテルにより強化されたポリアミド、シートモールディングコンパウンドまたはアクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンのコポリマーから構成される未処理の樹脂基材。
【請求項20】
請求項1に記載のコーティング組成物から得られる付着コーティングでコーティングされた未処理の樹脂基材であって、前記樹脂基材が自動車車体部分である未処理の樹脂基材。

【公表番号】特表2009−510194(P2009−510194A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532455(P2008−532455)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/037134
【国際公開番号】WO2007/050213
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】