説明

樹脂塗布フィルムの塗膜欠陥の検査方法

【課題】フィルムと、その上に樹脂溶液を塗布して形成した塗膜からなる樹脂塗布フィルムの塗膜の欠陥を精度良く検査する方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂塗布フィルムの検査方法は、フィルムと、その上に樹脂溶液を塗布して形成した塗膜からなる樹脂塗布フィルムの塗膜の欠陥を検査する方法において、発光強度のピーク波長が385〜415nmの範囲にある検査光を塗膜に照射し、その反射光を検出して行うことを特徴とし、樹脂塗布フィルムの塗膜の欠陥を精度良く検査することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムと、その上に樹脂溶液を塗布して形成した塗膜からなる樹脂塗布フィルムの塗膜欠陥の検査方法に関する。詳しくは、非水電解質電池のセパレーターに使用される、フィルムに耐熱性含窒素芳香族重合体およびセラミック粉末を含む溶液を塗布して塗膜を形成して得られる樹脂塗布フィルム(以下、耐熱セパレーターと言うことがある。)などの塗膜の欠陥を精度良く検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱セパレーターの塗膜にピンホール、ハガレなどの欠陥があると耐熱性が低下し、電池に使用した際の安全性が低下する可能性がある。
また、プリプレグを生産する時に使用する離型シートに樹脂を塗布して得られる樹脂シートの塗膜においても樹脂の欠落などの欠陥は、プリプレグの品質に影響する。
したがって、樹脂塗布シートの塗膜の欠陥を検出して除く必要がある。
【0003】
樹脂塗布シートの塗膜の欠陥を検出する方法として、プリプレグを生産する時に使用する離型シートに樹脂を塗布して得られる樹脂シートの塗膜に波長範囲が300〜400nmの検査光を照射して行う方法が知られている。具体的には、波長範囲が340〜380nmの近紫外線光源であるブラックライトブルー蛍光灯を用いて行っている(特許文献1参照。)。なお、この発光強度のピーク波長は350〜360nmの範囲にある。
【0004】
しかしながら、この方法は良い方法であるが、精度が必ずしも十分でなく、特に、小さい欠陥をも検出する必要がある耐熱セパレーターの塗膜の微細な欠陥をも検出できる、より精度の高い検査方法が望まれている。
【特許文献1】特開平9−136323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フィルムと、その上に樹脂溶液を塗布して形成した塗膜からなる樹脂塗布フィルムの塗膜の欠陥を精度良く検査する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、発光強度のピーク波長が385〜415nmの範囲にある光を照射することによって、耐熱セパレーターの塗膜の微細な欠陥をも精度良く検出できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、フィルムと、その上に樹脂溶液を塗布して形成した塗膜からなる樹脂塗布フィルムの塗膜の欠陥を検査する方法において、発光強度のピーク波長が385〜415nmの範囲にある検査光を塗膜に照射し、その反射光を検出して行うことを特徴とする樹脂塗布フィルムの検査方法である。
【発明の効果】
【0008】
フィルムと、その上に樹脂溶液を塗布して形成した塗膜からなる樹脂塗布フィルム、特に耐熱セパレーターの塗膜の欠陥を精度良く検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
フィルムと、その上に樹脂溶液を塗布して形成した塗膜からなる樹脂塗布フィルムの例として非水電解質電池のセパレーターとして使用されるフィルムに耐熱性含窒素芳香族重合体およびセラミック粉末を含む溶液を塗布して得られる樹脂塗布フィルム(耐熱セパレーター)が挙げられる。このような樹脂塗布フィルムは、特開2000−30686号公報に開示されている。
【0010】
以下、フィルムが多孔質ポリエチレンフィルムで、耐熱性含窒素芳香族重合体が芳香族ポリアミド(以下、アラミドということがある。)およびセラミック粉末がアルミナである樹脂塗布フィルムを例に説明する。
芳香族ポリアミドのN−メチル−2−ピロリドンなどの極性有機溶媒溶液にアルミナの微細粉末を加えてスラリーとし、これを多孔質ポリエチレンフィルム上にバー、ナイフまたはダイを用いた塗工法によって塗布し、重合体の析出後、極性有機溶媒を除去し、乾燥して樹脂塗布フィルムが製造される。
樹脂塗布フィルムの厚さは約5〜100μmで、その内の塗膜厚さは、多孔質ポリエチレンフィルム内にアラミドおよびアルミナの微細粒子が分散しており、明確ではないが、1μm〜50μm程度である。
【0011】
塗膜には、塗膜のハガレ、スジなどの欠陥が生じることがある。発光強度のピーク波長が385〜415nmの範囲にある検査光を塗膜に照射し、その反射光を検出してこのような欠陥を検出する。
図1は塗膜の欠陥を検査する方法を示す模式図である。樹脂塗布フィルム1は多孔質ポリエチレンフィルム2の上に、アラミドとアルミナからなる塗膜が設けられている。その塗膜表面に光源4から、発光強度のピーク波長が385〜415nmの範囲にある検査光を照射し、その反射光をCCDカメラ5で撮像し、その信号を画像処理装置(図示していない。)で処理して欠陥を検出する。
欠陥検査は、長尺の樹脂塗布フィルムを搬送しながら連続的に、また、枚葉の樹脂塗布フィルムを回分的に行うことが可能である。
【0012】
塗膜面に上記の検査光を照射すると、塗布正常部分と欠陥部分では反射率に差があることから、CCDカメラでその反射光を観測してその出力差を検出することで、塗布欠陥部分を検出することが出来る。
【0013】
従来のブラックライトブルー蛍光灯を用い、波長範囲が300〜400nmで、発光強度のピーク波長が350nmである検査光を照射した場合には、欠陥の検出感度が低くなり、小さな欠陥を検出できない場合がある。
【0014】
図2は、検査光の波長領域などを示す図であり、6は本発明で使用する発光強度のピーク波長が400nmの検査光の相対強度、7は従来の発光強度のピーク波長が350nmの検査光の相対強度、8は多孔質ポリエチレンフィルムの反射率、9はアラミドとアルミナからなる塗膜の反射率、10はCCDカメラの相対感度を示す。
なお、反射率は分光光度計MPC-2200((株)島津製作所製)を用いて測定した値である。図2中、
【0015】
CCDカメラの相対感度が波長400nmにおける方が大きく、またピーク波長における多孔質ポリエチレンフィルムの反射率と塗膜の反射率との差も、波長350nmと波長400nmとで同等以上であるために、ピーク波長が400nmの検査光を用いた方が欠陥の検出感度が良くなるものと考えられる。
【実施例】
【0016】
約1mm長さ×約0.5mm幅の大きさの塗布ハガレがある多孔質ポリエチレンフィルム上にアラミドとアルミナからなる塗膜を形成した樹脂塗布フィルムについて欠陥検査を行った。樹脂塗布フィルムの上方約10cmに光源を配置して照射し、80cm高さで反射角度が13°となる位置にCCDカメラを据え、反射光を撮像し、画像処理装置で処理した。
【0017】
用いた機器を以下に示す。
光源:
400nmLED(ピーク波長が400nm)((株)イマック製)
392nm蛍光灯(ピーク波長が392nm)(アイテックシステム(株)製)
ブラックライトブルー蛍光灯(ピーク波長が350nm)(ナショナル製)
CCDカメラ:ラインセンサカメラ(長瀬産業(株)製)
画像処理装置: ・・・・・・・ (長瀬産業(株)製)
【0018】
図3に検査結果の検出画像と検出波形を示す。ピーク波長が400nmおよびピーク波長が392nmの検査光を照射した場合にはこの欠陥を明確に検出することが可能である。一方、従来のピーク波長が350nmの検査光を照射した場合にはかろうじてこの欠陥を検出できるが、この欠陥より小さくなると検出できなくおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】塗膜の欠陥を検査する方法を示す模式図である。
【図2】検査光の波長領域などを示す図である。
【図3】実施例の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 樹脂塗布フィルム
2 多孔質ポリエチレンフィルム2の上に
3 アラミドとアルミナからなる塗膜
4 光源
5 CCDカメラ
6 本発明で使用する発光強度のピーク波長が400nmの検査光の相対強度
7 従来の発光強度のピーク波長が350nmの検査光の相対強度
8 ポリエチレンフィルムの反射率
9 塗膜の反射率
10 CCDカメラの相対感度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムと、その上に樹脂溶液を塗布して形成した塗膜からなる樹脂塗布フィルムの塗膜の欠陥を検査する方法において、発光強度のピーク波長が385〜415nmの範囲にある検査光を塗膜に照射し、その反射光を検出して行うことを特徴とする樹脂塗布フィルムの塗膜欠陥の検査方法。
【請求項2】
フィルムが多孔質ポリエチレンフィルムであり、塗膜が耐熱性含窒素芳香族重合体およびセラミック粉末を含む膜であることを特徴とする請求項1記載の樹脂塗布フィルムの塗膜欠陥の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−133725(P2009−133725A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310157(P2007−310157)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】