説明

樹脂多孔質体

【課題】連通孔率が高く潤滑油などを多量に保持でき、かつ高強度の樹脂多孔質体を提供する。
【解決手段】気孔形成材および必要に応じて短繊維が配合された樹脂を成形して成形体とした後、該気孔形成材を溶解し、かつ上記樹脂を溶解しない溶媒を用いて上記成形体から上記気孔形成材を抽出して得られる連通孔を有する樹脂製多孔質体であって、上記連通孔の総体積が全体積の 10%以上の割合であり、かつ曲げ強度が 50 MPa 以上であり、連通孔を形成する気孔の大きさが 0.001μm〜1000μm である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂多孔質体に関し、特に高連通孔率と高強度を併せ持つ樹脂多孔質体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂多孔質体は様々な方法で製造されるが、代表的な製造方法としては以下の3つの方法がある。気孔を発泡により形成する「発泡法」、粉体を調整した加熱・加圧条件で成形して粉体間の間隙を意図的に形成して多孔質体とする「焼結法」、溶媒で抽出可能な気孔形成材粉末を樹脂に配合・成形し、成形後に抽出して多孔質体とする「抽出法」である。
「発泡法」は高連通孔率の樹脂多孔質体を作製できる方法であるが、主にゴムなどの柔軟な材料に適した方法であり、強度が高い剛直な樹脂では作製することが困難である。なお、連通孔率とは、樹脂多孔質体において相互に連続している気孔の総体積が樹脂多孔質体の体積に占める割合をいう。近年、超臨界流体を使用した樹脂多孔質体の成形方法が開発され、繊維強化した強度の高い熱可塑性樹脂でも多孔質化することができるようになったが、この方法では低連通孔率の材料しか作製できず、また連続した気孔とはならないため、油などを含浸させて使用することができない。
「焼結法」は溶融粘度の高いフッ素樹脂やポリイミド樹脂などに適しているが、高連通孔率は得られない。また、樹脂の結合が不十分であるため強度が低い。
「抽出法」は比較的容易に連通孔率が高い多孔質体を製造することができる。従来、「抽出法」により高連通孔率の多孔質体を製造するものとして、常温では固体であるが、多孔質体の骨格を形成する高分子物質の成形温度では溶融して液体状態として存在することができる気孔形成材を用いて多孔質体を成形するもの(特許文献1参照)、粒状気孔形成材を高分子物質に分散させてなる成形材料を、該粒状気孔形成材の一部が溶融する温度で成形し、該成形体を上記高分子物質は溶解しないが上記気孔形成材は溶解する溶媒で洗浄することにより連通孔を形成するもの(特許文献2参照)、特に連続気泡を有するポリオレフィン多孔質体を製造するもの(特許文献3参照)などがある。
【0003】
しかしながら、「抽出法」で作製する樹脂多孔質体は、気孔形成材の抽出性を考慮して薄肉のものが多く、ポリオレフィン樹脂を使用した印判用インク保持材(特許文献3参照)や、ポリウレタン、ポリエステルなどを使用した合成皮革(特許文献4、特許文献5等参照)等に適用されている。または、熱可塑性エラストマーを多孔質化してクッション材(特許文献1、特許文献2等参照)として使用されている例もある。これらの樹脂多孔質体では、高連通孔率と柔軟性は確保されているが、樹脂自体の強度が低いため樹脂多孔質体の強度も低い。
また、上記抽出法を利用する各特許文献において気孔形成材として開示されている塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムなどは、比較的水に溶解しやすく、安価で入手しやすいので気孔径の大きな多孔質体の製造に用いる気孔形成材として有効であるが、微細な気孔を形成する場合には、気孔形成材を完全に溶解抽出するのは困難である。
【特許文献1】特開2001−2825号公報
【特許文献2】特開2002−194131号公報
【特許文献3】特開2002−60534号公報
【特許文献4】特開2003−342341号広報
【特許文献5】特開2003−342410号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、連通孔率が高く潤滑油などを多量に保持でき、かつ高強度である樹脂多孔質体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の樹脂多孔質体は、表面連通孔を有する樹脂多孔質体であって、上記連通孔の総体積が樹脂多孔質体の全体積の 10%以上の割合であり、かつ、曲げ強度が 50 MPa 以上であることを特徴とする。なお、上記の樹脂多孔質体の全体積に占める連通孔の総体積の割合が連通孔率である。
【0006】
上記連通孔は、少なくとも気孔形成材が配合された樹脂を成形して成形体とした後、該気孔形成材を溶解し、かつ上記樹脂を溶解しない溶媒を用いて上記成形体から上記気孔形成材を抽出して得られることを特徴とする。
【0007】
上記樹脂多孔質体は、短繊維を配合されてなることを特徴とする。
また、上記連通孔を形成する気孔の大きさが 0.001μm〜1000μm であることを特徴とする。なお、本発明において、「気孔の大きさ」は気孔径を意味するものとする。
また、上記気孔形成材は、アルカリ性の化合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂多孔質体は、連通孔の体積が全体積の 10%以上の割合であり、かつ曲げ強度が 50 MPa 以上であるので、潤滑油などの液体を含浸させることができ摺動面に対し潤滑油を安定的に供給することができ、バックメタルなどの補強材を要することなく、機械部品として使用することができる。
また、本発明の樹脂多孔質体は短繊維を配合されてなるので、高連通孔率でも高強度な樹脂部材となる。
また、本発明の樹脂多孔質体は、連通孔を形成する気孔の大きさが 0.001μm〜1000μm であるので、気孔が小さすぎることによる気孔形成材の抽出不足や、油を含浸する場合の含油不足がおきにくく、逆に気孔が大きすぎることによる破損のし易さを回避することができる。
また、射出成形可能な樹脂材料を使用することにより、射出成形が可能となり、精密部品でも安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
連通孔率が高く潤滑油などを多量に保持でき、かつ高強度の樹脂多孔質体の提供について鋭意検討の結果、抽出法において、水溶性かつアルカリ性等の気孔形成材を用いることで、広範囲の樹脂で樹脂多孔質体を射出成形等により作製できるとともに、必要に応じて短繊維を配合して補強することが可能で高強度とすることができ、結果、連通孔率が 10%以上でかつ曲げ強度が 50 MPa 以上である樹脂多孔質体が得られることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0010】
本発明の樹脂多孔質体に用いる樹脂としては、樹脂多孔質体の曲げ強度を 50 MPa 以上とできる樹脂であればよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーまたはゴムなどの樹脂粉末やペレットを使用できる。樹脂粉末、ペレットの粒径や形状は、溶融成形する場合には、溶融時に気孔形成材と混練されるので、特に限定されるものではない。ドライブレンドしてそのまま圧縮成形する場合には 1μm〜500μm のものが好ましい。
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、水架橋ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリブチレンテレフタラート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリケトン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリオキサゾリン樹脂、ポリフェニレンサルフィド(以下、PPSと記す)樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド9T樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(以下、PEEKと記す)樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などを例示できる。また、上記合成樹脂から選ばれた2種以上の材料の混合物、すなわちポリマーアロイなどを例示できる。
【0011】
上記樹脂の中で、自動車部品、機械部品、電気・電子部品等の工業用途に使用できる樹脂が好ましく、特に、引張り強さが 49 MPa 以上、曲げ弾性率が 1.9 GPa 以上、100℃以上の耐熱性(熱変形温度( 18.6 kg/cm2 ))を有するエンジニアリング樹脂、耐熱性がさらに高く、150℃以上の高温でも長期間使用できる特殊エンジニアリング樹脂またはスーパーエンジニアリング樹脂、および摺動特性などの機械的性質または熱的性質の一部が特に優れているため工業用途に使用できる樹脂が好ましい。
本発明に使用できる好ましい樹脂の具体例としては、PEEK樹脂、PPS樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ポリアミド9T樹脂、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、超高分子量ポリエチレンが挙げられる。
【0012】
エラストマーまたはゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の加硫ゴム類;ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、軟質ナイロン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー類が例示できる。
【0013】
本発明に用いる樹脂は炭素繊維やガラス繊維などの短繊維を配合して使用する。短繊維は樹脂の機械的強度を向上させるために用いられ、短繊維の配合割合は後述の樹脂多孔質体の段階で曲げ強度が 50 MPa 以上となるように配合すればよい。
樹脂多孔質体の曲げ強度が 50 MPa 未満であると曲げ強度不足による破損が起こりやすくなり、高荷重や高速条件で使用される転がり軸受用保持器、高荷重や高速条件で使用されるすべり軸受、構造部材としても機能する必要のあるフィルタや断熱材等の機械的強度を要する用途では使用できない。
【0014】
本発明において気孔形成材は、成形時における気孔形成材の融解を防止するため、樹脂の成形温度よりも高い融点の物質を使用するが、これに限定されるものではなく、樹脂の成形温度よりも高い融点の物質と、樹脂の成形温度よりも低い融点の物質とを併用することもできる。
気孔形成材としては、樹脂に配合されて成形体とされた後、その樹脂を溶解しない溶媒を用いて成形体から溶解されて抽出できる物質であれば使用できる。
気孔形成材は、無機塩化合物、有機塩化合物、またはこれらの混合物であることが好ましく、特に洗浄抽出工程が容易となる水溶性物質であることが好ましい。また、アルカリ性物質、好ましくは防錆剤として利用できる弱アルカリ塩を使用できる。弱アルカリ塩としては、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩、無機アルカリ金属塩、無機アルカリ土類金属塩などが挙げられる。未抽出分が脱落した時でも、比較的軟らかく、シール面を損傷し難いことから、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩を用いることが好ましい。なお、これらの金属塩は 1 種または 2 種以上混合して用いてもよい。また、洗浄用溶媒として安価な水を使用することができ、気孔形成時における廃液処理などが容易となることから水溶性の弱アルカリ塩を使用することが好ましい。
【0015】
本発明に好適に用いることができる水溶性有機アルカリ金属塩としては、安息香酸ナトリウム(融点 430℃)、酢酸ナトリウム(融点 320℃)、セバシン酸ナトリウム(融点 340℃)、コハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられる。融点が高く、多種の樹脂に対応でき、かつ水溶性が高いという理由から、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはセバシン酸ナトリウムが特に好ましい。
無機アルカリ金属塩としては、例えば、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、三リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、タングステン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中で、融点が高く、多種の樹脂に対応でき、かつ水溶性が高いという理由から、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、三リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0016】
気孔形成材の配合割合は、樹脂多孔質体の段階で連通孔率が 10%以上となり、かつ曲げ強度が 50 MPa 以上となる割合で配合する。具体的には、樹脂粉末、気孔形成材、および短繊維などの他の材料を含めた全量に対して、10 体積%〜60 体積%、好ましくは 20 体積%〜50 体積%とする。
【0017】
樹脂材料と気孔形成材の混合法は特に限定されるものではなくドライブレンド、溶融混練など樹脂の混合に一般に使用する混練法が適用できる。
また、気孔形成材を液体溶媒中に溶解させて透明溶液とした後、この溶液に樹脂粉末を分散混合させて、その後、この溶媒を除去する方法を用いることができる。気孔形成材を液体溶媒中に一旦溶解させ樹脂粉末と分散混合させることで、気孔形成材抽出後の樹脂多孔質体において、気孔が均一に分布した連通孔となり、かつ、元の気孔形成材の粒子径より小さい径の気孔を形成することができる。
分散混合させる方法としては、液中混合できる方法であれば特に限定されるものではなく、ボールミル、超音波分散機、ホモジナイザー、ジューサーミキサー、ヘンシェルミキサーなどが例示できる。また、分散液の分離を抑えるために少量の界面活性剤を添加することも有効である。なお、混合時においては、混合により気孔形成材が完全に溶解するよう溶媒量を確保する。
また、溶媒を除去する方法としては、加熱蒸発、真空蒸発、窒素ガスによるバブリング、透析、凍結乾燥などの方法を用いることができる。手法が容易で、設備が安価であることから加熱蒸発により液体溶媒の除去を行なうことが好ましい。
樹脂に気孔成形材を配合した混合物の成形に関しては、圧縮成形、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、真空成形、トランスファ成形などの任意の成形方法を採用できる。また成形前に作業性を向上させるため、ペレットやプリプレグなどに加工してもよい。
【0018】
得られた成形体からの気孔形成材の抽出は、上記気孔形成材を溶解し、かつ上記樹脂を溶解しない溶媒で成形体を洗浄することにより行なう。
該溶媒としては、例えば、水、および水と相溶しうる溶媒としてアルコール系、エステル系、ケトン系溶媒などを用いることができる。これらの中で、樹脂および気孔形成材の種類によって上記条件に従い適宜選択される。また、これらの溶媒は1種または2種以上を混合し使用してもよい。廃液処理などが容易、安価などの利点から水を用いることが好ましい。
該抽出処理を行なうことにより、気孔形成材が充填されていた部分が溶解され、該溶解部分に連通孔が形成された樹脂多孔質体が得られる。
【0019】
本発明の樹脂多孔質体において連通孔を形成する気孔の大きさは 0.001μm〜1000μm になるように制御することが好ましい。気孔の大きさは、基本的には気孔形成材自体の平均粒子径を管理することで調整し、微小な連通孔が必要である場合には、上述のように分散混合により微小化を図ることができる。気孔の大きさが 0.001μm 未満であると気孔形成材の抽出不足が生じ、油を含浸する場合の含油不足が起こりやすくなる。1000μm をこえると連通孔が大きすぎることによる破損が起こりやすくなる。
【実施例】
【0020】
以下に示す実施例の原料を用いて各実施例のダンベル試験片を得た。
<実施例に用いた原料>
PEEK樹脂粉末:ビクトレックス社製150P
PPS樹脂粉末:大日本インキ社製T4AG
三リン酸ナトリウム粉末:太平化学産業社製トリポリリン酸ナトリウム、平均粒子径 30μm
炭酸カリウム粉末:日本曹達社製炭酸カリウム、平均粒子径 50μm
炭素繊維:東邦テナックス社製HTAC6S
【0021】
実施例1
PEEK樹脂粉末と炭素繊維と三リン酸ナトリウム粉末とを体積比 50 : 10 : 40 の割合で強制サイドフィーダ付き二軸押出機にて混錬し、ペレタイザーでペレット化し、射出成形にてJIS K 7113 1号ダンベル試験片に成形し、80℃の温水に 100 時間以上浸漬して気孔形成材を抽出し、120℃で 8 時間以上乾燥して樹脂多孔質体のダンベル試験片を得た。連通孔率および以下に示す曲げ試験にて曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。
<曲げ試験>
JIS K 7113 1号ダンベル試験片を用いて、JIS K 7171曲げ試験(3点曲げ)に準拠して曲げ強度を測定した。
【0022】
実施例2
PEEK樹脂粉末と炭素繊維と三リン酸ナトリウム粉末とを体積比 50 : 15 : 35 の割合で強制サイドフィーダ付き二軸押出機にて混錬し、以下実施例1と同様に処理して得たダンベル試験片の連通孔率および曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。
【0023】
実施例3
PEEK樹脂粉末と炭素繊維と三リン酸ナトリウム粉末とを体積比 60 : 10 : 30 の割合で強制サイドフィーダ付き二軸押出機にて混錬し、以下実施例1と同様に処理して得たダンベル試験片の連通孔率および曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
実施例4
PEEK樹脂粉末と三リン酸ナトリウム粉末とを体積比 70 : 30 の割合で強制サイドフィーダ付き二軸押出機にて混錬し、以下実施例1と同様に処理して得たダンベル試験片の連通孔率および曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。
【0025】
実施例5
PPS樹脂粉末と炭素繊維と三リン酸ナトリウム粉末とを体積比 50 : 15 : 35 の割合で強制サイドフィーダ付き二軸押出機にて混錬し、以下実施例1と同様に処理して得たダンベル試験片の連通孔率および曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
比較例1
ポリアミドイミド樹脂焼結体(サンゴバン社製MELDIN9000)を切削してJIS K 7113 1号ダンベル試験片を作製し、得られたダンベル試験片の連通孔率および曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
なお、各実施例において、連通孔率は、樹脂成形体において相互に連続している気孔の総体積が樹脂成形体の全体積中に占める割合であり、具体的には、数1内の式(1)に示す方法で算出した。
【数1】

上記、数1において、各符号の意味を以下に示す。
V;射出成形法にて成形された洗浄前成形体の体積
ρ;射出成形法にて成形された洗浄前成形体の密度
W;射出成形法にて成形された洗浄前成形体の重量
1;樹脂粉末の体積
ρ1;樹脂粉末の密度
1;樹脂粉末の重量
2;気孔形成材の体積
ρ2;気孔形成材の密度
2;気孔形成材の重量
3;洗浄後の多孔質体の体積
3;洗浄後の多孔質体の重量
V'2;洗浄後に多孔質体に残存する気孔形成材の体積
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すように本発明の樹脂多孔質体を用いた実施例では曲げ強度は 70 MPa 以上の高強度が得られたが、比較例1では連通孔率は 10%を上回るものの曲げ強度は 14 MPa と低強度であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の樹脂多孔質体は曲げ強度に優れ、かつ、連通孔から摺動面に潤滑油を供給することができるので、転がり軸受、滑り軸受等の摺動界面を有し機械的強度を必要とする機械部品用途に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面連通孔を有する樹脂多孔質体であって、前記連通孔の総体積が樹脂多孔質体の全体積の 10%以上の割合であり、かつ、曲げ強度が 50 MPa 以上であることを特徴とする樹脂多孔質体。
【請求項2】
前記連通孔は、少なくとも気孔形成材が配合された樹脂を成形して成形体とした後、該気孔形成材を溶解し、かつ前記樹脂を溶解しない溶媒を用いて前記成形体から前記気孔形成材を抽出して得られることを特徴とする請求項1記載の樹脂多孔質体。
【請求項3】
前記樹脂多孔質体は、短繊維が配合されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の樹脂多孔質体。
【請求項4】
前記連通孔を形成する気孔の大きさが 0.001μm〜1000μm であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の樹脂多孔質体。
【請求項5】
前記気孔形成材は、アルカリ性の化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の樹脂多孔質体。


【公開番号】特開2007−186621(P2007−186621A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6577(P2006−6577)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】