説明

樹脂封止シート

【課題】本発明は、架橋反応を誘発する有機過酸化物を含有していないため、樹脂封止シートの流通段階で有機過酸化物の分解の恐れがなく、本発明の樹脂封止シートを太陽電池に使用した場合、従来の樹脂封止シートの特徴である透明性、接着性、耐クリープ性を維持したまま、架橋反応を誘発する有機過酸化物やその分解による太陽電池セル等の他の部材に対する悪影響を排除し、従来難しかった従来の架橋工程の排除による工程の高速化を実現し、太陽電池用ガラスや配線や発電セルの厚さ等の凹凸を樹脂封止シートで確実に隙間なく封止することができる樹脂封止シートの製造方法を提供する。
【解決手段】(a)有機過酸化物を含有しない電離性放射線架橋樹脂を成形して、樹脂封止シートを得る工程、
(b)前記 (a)工程によって得られた樹脂封止シートに電離性放射線を照射してゲル分率を2〜60wt%に調整する工程、及び
(c)前記 (b)工程によって得られた照射済み樹脂封止シートを用いて太陽電池モジュールを作製する工程、を含む太陽電池モジュールの製造方法であって、前記(c)工程時に架橋工程を行わない、前記製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止シートに関する。本発明の樹脂封止シートは架橋反応を誘発する有機過酸化物を含有していないため、樹脂封止シートの流通段階で有機過酸化物の分解の恐れがなく、本発明の樹脂封止シートを太陽電池に使用した場合、従来の樹脂封止シートの特徴である透明性、接着性、耐クリープ性を維持したまま、架橋反応を誘発する有機過酸化物やその分解による太陽電池セル等の他の部材に対する悪影響を排除し、従来難しかった従来の架橋工程の排除による工程の高速化を実現し、太陽電池用ガラスや配線や発電セルの厚さ等の凹凸を樹脂封止シートで確実に隙間なく封止することができる樹脂封止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な温暖化現象により環境に対する意識が高まり、炭酸ガス等の温暖化ガスを発生しない新しいエネルギーシステムが関心を集めている。太陽電池発電や風力発電等の環境にやさしい再生可能なエネルギーは炭酸ガス等の温暖化を誘発するといわれているガスを排出しないため、クリーンなエネルギーとして研究開発が盛んに行われており、なかでも安全性や扱いやすさより太陽電池発電が家庭用エネルギー源だけでなく、産業用エネルギーとして注目を浴びている。資源に乏しい日本では各家庭の消費電力をまかなうため、屋根に太陽電池発電システムを乗せて電気を発電し、家庭用電力と消費し、余剰の電力を売電したりすることが近年、盛んになってきている。なかでもドイツを中心としたヨーロッパでは家庭用のみならず、広大な敷地に太陽電池を配して大規模発電をして、産業用電力としても、投資の対象としても注目されている。
【0003】
この様に注目されている太陽電池には、いろいろな発電方式があり、代表的な発電方法としては単結晶もしくは多結晶のシリコンセル(結晶系シリコンセル)を用いたものやアモルファスシリコンを用いたものや化合物半導体を用いたもの(薄膜系セル)等が挙げられるが、いずれの発電方法を用いても、かなりの長期間、屋外で風雨にさらされるため、発電部分を長期にわたって保護する目的でガラス板やバックシート等で貼り合せをしてモジュール化することによって、外部より水分の流入を防止し、発電部分の保護、漏電防止等の対策を施して、長期にわたって安定したモジュールの保護を達成している。長期間、発電部分を保護する構造は一般的に発電面には発電に必要な光源を透過する必要があるため、透明なガラスや透明樹脂を使用し、非発電面はバックシートといわれるアルミ箔、フッ化ポリビニル樹脂(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やそのシリカ等のバリアーコート加工の積層シートを使用する。モジュール化は発電部分を樹脂封止シートで挟んだ後、ガラスやバックシートでさらに外部を被覆して樹脂封止シートを高温にすることで樹脂封止シートを溶融し、すべてを一体化封止(モジュール化)する。
【0004】
このような樹脂封止シートは<1>ガラス、発電部分、バックシートとの接着性、<2>高温状態での樹脂封止シートの溶融に起因する発電部分の流動防止(耐クリープ性)<3>太陽光を阻害しない透明性等が要求特性として挙げられる。通常、樹脂封止シートはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)に紫外線劣化対策として耐光剤や紫外線吸収材、ガラスとの接着性向上のためカップリング剤、架橋のため有機過酸化物等の添加剤を配合し、カレンダー成形やTダイキャストにより製膜されて供給される。単結晶や多結晶シリコンセルを用いた太陽電池モジュールでは、ガラス/樹脂封止シート/結晶系シリコンセル等の発電部分/樹脂封止シート/バックシートの順で重ね合わせ、ガラス面を下にして専用の太陽電池真空ラミネーターを用いて、用いられる樹脂の溶融温度以上(EVAの場合は150℃の温度条件)で余熱工程とプレス工程を経て、樹脂封止シートを溶融させて貼り合わせるのである。この際、最初の余熱工程で樹脂封止シートの樹脂が溶融し、プレス工程で溶融した樹脂に接着する部材が接触して真空ラミネートされるのである。ラミネート工程では(i)樹脂封止シートに含有している有機過酸化物がその温度によって分解し、EVAの架橋を促進させ、(ii)樹脂封止シートに含有しているカップリング剤が接触している部材と共有結合して部材との接着性を向上させることで、高温状態での樹脂封止シートの溶融に起因する発電部分の流動を防止(耐クリープ性)し、ガラス、発電部分、バックシートとの接着性を向上させているのである。また、樹脂封止シートは長期によって太陽光に暴露するため、樹脂の劣化による光学特性の低下を防止する観点で耐光剤等の添加剤を配合する。これによって長期にわたる太陽光を阻害しないレベルの透明性を維持できるのである。
【0005】
例えば、特許公報特開平6−334207号公報(特許文献1)には電子線照射によって架橋された有機高分子樹脂封止シートがアモルファスシリコン太陽電池に積層したモジュールが開示されている。この有機高分子樹脂封止シートはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレン−メチルアクリレート(EMA)等が挙げられ、これらの有機高分子樹脂封止シートには酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、シランカップリング剤を配合し、スリットから押出成形にてシーティングした樹脂封止シートを用いて発電部分やバックシートと150℃にて真空ラミネートし、モジュールを作製している。また、特許文献1には、モジュールの受光面より加速電圧500kVで照射線量300kGyにて照射して架橋処理を行ったり、予め電子線照射して架橋処理した樹脂封止シートを用いて180℃で真空ラミネートにてモジュールを作製し、耐クリープ性・耐候性に優れた太陽電池モジュールを提供できると記載されている。
【0006】
また、特開2001−119047号公報(特許文献2)には、電子線照射を施したエチレン共重合体からなる太陽電池素子封止材料が開示されている。エチレン共重合体の代表としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体およびエチレン−不飽和カルボン酸共重合体がら選ばれた樹脂を用いて、架橋ゲル化率65%以上の高い架橋度で封止材料が流動したり、変形したりすることのない耐クリープ性を有する太陽電池素子封止材料を提供できるとある。
【0007】
【特許文献1】特開平6−334207号公報
【特許文献2】特開2001−119047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来の開示されている公報でエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)に代表されるエチレンビニル共重合体に電子線照射によって樹脂を架橋させて耐熱性を付与し、夏場の太陽にさらされ太陽電池モジュールが高温状態になった場合に樹脂封止シートが流動することを防止(耐クリープ性)ことができるのであるが、従来技術の電子線架橋技術では、樹脂中のゲル分率が高いため、あらかじめ電子線を用いて架橋した樹脂封止シートでは集光特性や密着性を良くするために太陽電池用ガラス自身に形成された凹凸や配線や発電セルの厚さから生じる凹凸を樹脂封止シートで確実に隙間なく封止することができず、その隙間に残存した空気が気温変化等の温度変化により繰り返し膨張/収縮をするため、樹脂封止シートが剥離したり、その隙間に水分等が流入し、発電部分まで侵攻して漏電の危険性を高めたりする問題が残されている。
【0009】
特に、特許文献1においては実施例に開示された300〜500kV、300kGy条件においても電子線照射処理が受光面側より行われるため、発電部分が結晶系シリコンセルの裏面まで到達できず、樹脂封止シートが架橋されない場所ができてしまう。そのため、高温環境においてはモジュール内の樹脂封止シートが部分的に不均一なゲル分率であるため、安定して結晶系シリコンセルの保持をすることが不可能な場合があり、肝心な発電部分が流動してしまう問題が残されている。また、真空ラミネートする前にこのような照射条件で電子線照射処理をした樹脂封止シートを使用した場合、太陽電池用ガラス自身に作製された凹凸や配線や発電セルの厚さから生じる凹凸を樹脂封止シートで確実に隙間なく封止することができず、結果としてラミネート条件を変更する必要がある。多くの場合、ラミネート温度を約30℃高くする必要があり、発電部分に過剰なダメージを与え、発電効率が低下する等の不具合を生じる場合がある。
【0010】
また、特許文献2においてはゲル化率が高い方が耐熱性に優れる記載があるが、特許文献1と同様、太陽電池用ガラス自身に形成された凹凸や配線や発電セルの厚さから生じる凹凸を樹脂封止シートで確実に隙間なく封止することができず、結果としてラミネート条件を変更する必要がある。多くの場合、ラミネート温度を約30℃高くする必要があり、発電部分に過剰なダメージを与え発電効率が低下する場合がある。
【0011】
本発明は、樹脂封止シートに関し、発明の樹脂封止シートは架橋反応を誘発する有機過酸化物を含有していないため、樹脂封止シートの流通段階で有機過酸化物の分解の恐れがなく、本発明の樹脂封止シートを太陽電池に使用した場合、従来の樹脂封止シートの特徴である透明性、接着性、耐クリープ性を維持したまま、架橋反応を誘発する有機過酸化物やその分解による太陽電池セル等の他の部材に対する悪影響を排除し、従来難しかった従来の架橋工程の排除による工程の高速化を実現し、太陽電池用ガラスや配線や発電セルの厚さ等の凹凸を樹脂封止シートで確実に隙間なく封止することができる樹脂封止シートを提供できるのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成する為に鋭意検討した結果、本発明の目的を達成する樹脂封止シートを含む太陽電池モジュールの製造方法を発明するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1) (a)有機過酸化物を含有しない電離性放射線架橋樹脂を成形して、樹脂封止シートを得る工程、
(b)前記 (a)工程によって得られた樹脂封止シートに電離性放射線を照射してゲル分率を2〜60wt%に調整する工程、及び
(c)前記 (b)工程によって得られた照射済み樹脂封止シートを用いて太陽電池モジュールを作製する工程、を含む太陽電池モジュールの製造方法であって、前記(c)工程時に架橋工程を行わない、前記製造方法。
(2) (a)有機過酸化物を含有しない電離性放射線架橋樹脂を含む電離性放射線架橋樹脂層を有する樹脂封止シートを形成する工程、
(b)前記 (a)工程によって得られた樹脂封止シートに電離性放射線を照射して電離性放射線架橋樹脂層のゲル分率を2〜60wt%に調整する工程、及び
(c) 前記(b)工程によって得られた照射済み樹脂封止シートを用いて太陽電池モジュールを作製する工程、を含む太陽電池モジュールの製造方法であって、前記(c)工程時に架橋工程を行わない、前記製造方法。
(3) 前記電離性放射線架橋型樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリオレフィン樹脂の少なくとも1種類の樹脂を含む(1)又は(2)に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
(4) 前記樹封止脂シートが0.01−5wt%のカップリング剤を含む、(1)から(3)のいずれか一つに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【0014】
本発明における軟化について説明する。本発明における軟化とは樹脂に熱等のエネルギーを与え、樹脂を軟化状態にすることを示し、そのときのエネルギーは熱が簡便であるため好ましいが、これに限るものではない。また、樹脂への熱の与え方は直接電熱線等で加熱しても、輻射熱等の間接的であっても、樹脂の分子鎖を振動させて樹脂自身を分子運動させて発熱させても、いかなる方法を用いてもよい。本発明の封止方法は軟化した樹脂を被封止材料に密着させて、樹脂を固化することによって固定するものであって長期耐久性が必要な場合は安定して固定するため、樹脂と被封止材料間に隙間がなく密着して固定することが好ましく、通常、真空ラミネート方法等の空気を排除した方法が用いられるが、これに限られるものではない。
【0015】
本発明における樹脂封止シートを構成する樹脂として以下のものが挙げられる。
【0016】
本発明の樹脂封止シートはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、ポリオレフィン樹脂より選ばれる少なくとも1種類の樹脂の単層であっても、上記樹脂同士又は他の樹脂との混合層であってもよい。また、多層構成の場合、表面層に使用される樹脂は非接着物の接着性の観点よりエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、ポリエチレン系樹脂が好ましい。さらに、共重合で用いられるモノマーの極性基による分極によって、ガラス等の被接着体との付着性機能が発揮することができたり、樹脂封止シートの透明性を確保したり、極性基を有するポリマーは添加剤等を含有しやすいため、例えば、表面層がエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体より選ばれる少なくとも1種類の樹脂の単独層またはこれらの樹脂を含んだ混合層である場合が、接着性の観点より好ましい。また、電離性放射線を照射して架橋させる場合では極性基を有する樹脂の方が架橋されやすく、この点においても上記樹脂が好ましい。
【0017】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体とは、エチレンモノマーと、酢酸ビニル、脂肪族不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸エステル等のいずれかより選択される少なくとも1種類との共重合により得られたポリマーを示す。共重合の時の重合は高圧法、溶融法等いずれの公知の方法により重合されたものでもよく、さらにマルチサイト触媒やシングルサイト触媒によるものでも支障はない。また、各モノマーの重合時の接合形状は、ランダム結合、ブロック結合等であっても支障はないが、光学特性の観点より、高圧法を用いてランダム結合により重合したエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体が好ましい。
【0018】
また、エチレンモノマーと酢酸ビニル、脂肪族不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸エステルの共重合比は酢酸ビニルの場合、光学特性と接着性と柔軟性の観点より、共重合体全体に対する酢酸ビニルの割合は、2〜65wt%が好ましく、より好ましくは5〜55wt%、さらに好ましくは5〜40wt%がよい。さらに樹脂封止シート加工性の観点よりMFR(190℃、2.16kg:以下、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体については同条件。)が0.3〜30のものが好ましく、より好ましくは0.5〜30、さらに好ましくは0.8〜25である。
【0019】
上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体は、EVAと同様な役割をもつが、具体的にはエチレン−アクリル酸共重合体(以下、EAAと記す。)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下、EMAAと記す。)、エチレン−アクリル酸エステル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1〜8のアルコールの成分より選ばれる。)共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1〜8のアルコールの成分より選ばれる。)共重合体等が挙げられ、これらは更にその他の成分を加えた3成分以上の多元共重合体(例えば、エチレンと脂肪族不飽和カルボン酸および同エステルより適宜選ばれる3元以上の共重合体等)であってもよい。これらのカルボン酸又はカルボン酸エステル基の含有量は、通常3〜35重量%のものが用いられ、またMFR(190℃、2.16kg:以下、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体については同条件。)はEVAと同様である。
【0020】
多層構成の場合、上記の重合体を表面層に使用することができ、内層としていかなる他の樹脂を用いてもよい。本発明の内層にはさらに新たな層として単一樹脂層または樹脂同士の混合物や樹脂と添加物との混合物の樹脂層を導入してもよい。新たにクッション性を向上する目的で導入される新たな層として熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂とは、常温でゴム弾性を示し、かつ熱可塑性を有するものであり、共重合体ゴムと重合体が任意の重量比で配合されたものをいう。共重合体ゴムは、熱可塑性樹脂中において未架橋、部分架橋、全体架橋などの状態で存在することができる。
【0021】
本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、オレフィン系、スチレン系、塩ビ系、ポリエステル系、ウレタン系、塩素系エチレンポリマー系、ポリアミド系等が挙げられ、生分解性を有したもの、または植物由来原料系のもの等も含まれる。本発明においては、結晶性ポリプロピレン系樹脂との相溶性がよく、透明性が良好な水素添加ブロック共重合体樹脂、プロピレン系共重合樹脂、エチレン系共重合体樹脂が好ましく、より好ましくは水素添加ブロック共重合体樹脂、プロピレン系共重合樹脂である。水素添加ブロック共重合体樹脂としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体が好ましい。ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらは1種又は2種以上混合してもよい。共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上混合してもよい。プロピレン系共重合体樹脂としては、プロピレンとエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンとから得られる共重合体が好ましい。そのエチレンまたは炭素原子数4〜20のα−オレフィンの含有量としては6〜30重量%が好ましい。ここで炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられる。プロピレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒を用いて重合されたものでもよい。さらにポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したプロピレン系共重合体を使用することもできる。エチレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒で重合されたものでもよい。また、ポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したエチレン系共重合体を使用することもできる。上記の樹脂以外にもアイオノマー等の公知の樹脂を単層又は混合して導入しても支障はない。
【0022】
本発明でいうポリオレフィン樹脂とはエチレンの重合体又はエチレンと他の単量体とのポリエチレン系樹脂やプロピレン又はプロピレンと他の単量体とのポリプロピレン系樹脂等である。
【0023】
本発明のポリエチレン系樹脂は、従来から市販されている長鎖分岐を有するエチレンの単独重合体、又は小量のαーオレフィンで変成した共重合体を含むものを示す。また、エチレンと10重量%未満の共重合可能な以下のコモノマーと共重合した通常改質ポリエチレンとして使用されているもの、例えば酢酸ビニル基含有量10重量%未満のEVA等も含むものである。例えば、ポリエチレン系樹脂とは、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(「VLDPE」、「ULDPE」と呼ばれているもの)、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、αーオレフィン共重合体よりなる軟質重合体(例えば、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数が4〜12のαーオレフィンから選ばれる1種、又はそれ以上のαーオレフィン又は自由な組み合わせからなる軟質の共重合体が挙げられ、そのX線法による結晶化度が一般に30%以下のもの)、等が挙げられる。エチレン−α−オレフィン系共重合体には、シングルサイト系触媒、又はマルチサイト系触媒と呼ばれる触媒を用いて重合するものが一般的であるが、その中でもシングルサイト系触媒により重合されたものが好ましい。より好ましくはエチレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー、及びオクテンコモノマーから選ばれるいずれか一つのコモノマーとの共重合体が、一般に樹脂メーカーも多く入手し易いのでより好ましい。
【0024】
ポリエチレン系樹脂の好ましい密度は、クッション性の観点より、0.860〜0.930g/cmの範囲のものであり、より好ましくは0.863〜0.915g/cm、さらに好ましくは0.863〜0.910g/cmである。また、密度が低いほうがクッション性は向上する。一方、密度が0.930g/cm以上のものは内部層とした場合でも透明性が悪くなる傾向にある。透明性の改善として高密度の樹脂を使用する際は30wt%程度低密度ポリエチレンを加えることで改善することができる。
【0025】
また樹脂封止シート加工性の観点よりMFR(190℃、2.16kg:以下、ポリエチレン系樹脂については同条件。)は0.5〜30のものが好ましく、より好ましくは0.8〜30、さらに好ましくは1.0〜25である。
【0026】
ポリプロピレン系共重合体樹脂としては、プロピレンとエチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレンとブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの3元共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等のいずれでもよく、好ましくはプロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンとブテンとのランダム3元共重合体である。上記ポリプロピレン系樹脂は、樹脂封止シートの硬さや腰を高めたり、耐熱性を上げたりする等の役割がある。ポリプロピレン共重合体樹脂には、ホモのPP、プロピレン含量が70重量%以上のプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンの他、炭素数4〜8のもの)の1種または2種以上との共重合体であって、チーグラー・ナッタ触媒のような従来の触媒で重合されたものだけでなく、前述のメタロセン系触媒等で重合されたシンジオタクチックPPやアイソタクチックPPも含まれる。更にポリプロピレン系樹脂は50重量%程度までの高濃度のゴム成分を均一微分散したものであってもよく、これらのうち少なくとも1種が用いられる。また、ポリプロピレン系共重合体樹脂中のプロピレンの含有量は60〜90重量%が好ましい。更に、ポリプロピレン系共重合体樹脂が3元共重合体であり、プロピレン含有量が60〜80重量%、エチレン含有量が10〜30重量%、ブテン含有量が5〜20重量%のものは熱収縮性が良くなるのでより好ましい。
【0027】
さらに、ポリブテン系樹脂は、樹脂封止シートの硬さや腰の調整の他、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が特に優れるため、好ましくはポリプロピレン系樹脂と併用することもできる。上記ポリブテン系樹脂としては、ブテン−1含量70モル%以上の結晶性で他の単量体(エチレン、プロピレンの他、炭素数5〜8のオレフィン系)の1種または2種以上との共重合体をも含む高分子量のものが用いられる。これは、液状およびワックス状の分子量のものとは異なり、MFR(190℃、2.16kg:以下、ポリブテン系樹脂については同条件。)が、通常0.1〜10のものである。好ましいポリブテン系樹脂としては、ビカット軟化点が40〜100℃の共重合体である。ここで、ビカット軟化点はJIS K7206−1982に従って測定される値である。
【0028】
ポリプロピレン系共重合体樹脂のJIS−K−7210に準じて測定されるメルトフローレートの値(230℃、2.16kgf:以下、ポリプロピレン系共重合体樹脂については同条件)は、0.3〜15.0が好ましく、より好ましくは0.5〜12、さらに好ましくは0.8〜10である。
【0029】
本発明の樹脂封止シートには、その本来の特性を損なわない範囲で、カップリング剤、防曇剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、無機フィラー、架橋調整剤等を添加してもよく、添加の方法は液体を溶融樹脂に添加しても、直接対象樹脂層に練り込み添加しても、製膜後に塗布しても添加剤の効果が発揮できるように公知の方法で樹脂に導入すればよい。
【0030】
本発明の樹脂封止シートには安定した接着性を確保する目的でカップリング剤を添加してもよい。添加は所望の接着性の度合いや被接着物の種類によるが、添加量で0.01−5wt%が好ましく、より好ましくは0.03−4wt%、さらに好ましくは0.05−3wt%である。カップリング剤はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体より選ばれる少なくとも1種類の樹脂であるエチレン系共重合体中において太陽電池セルやガラス等に良好な接着性を付与する物質が好ましい。具体的には有機シラン化合物、有機シラン過酸化物、有機チタネート化合物が挙げられる。また、これらのカップリング剤は押出機内にて樹脂に注入混合したり、押出機ホッパー内に混合して導入したり、事前にマスターバッチ化して混合して添加したり、公知の添加方法であれば支障ない。しかしながら、押出機を経由するため、押出機内の熱や圧力などにより、本来の機能を阻害される場合があり、カップリング剤の種類によっては添加量を増減する必要がある場合がある。また、カップリング剤の種類は樹脂と混合した場合、樹脂の透明性や分散具合や押出機への腐食や押出安定性の観点から適宜選択すればよい。好ましいカップリング剤は、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラングリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和基やエポキシ基を有するものが挙げられ、公知のカップリング剤より適宜選択すればよい。
【0031】
さらに、上記以外にも、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することができる。特に長期の透明や接着性維持が必要な場合、エチレン系共重合体に対して0〜10wt%、好ましくは、0〜5wt%である。公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加しても良い。好ましくは紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられ、酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系等を挙げることができる。
【0032】
これらの紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等はエチレン系共重合体のみではなく他の樹脂層にも添加してよく、各樹脂層を構成する樹脂に対して0〜10wt%、好ましくは、0〜5wt%である。エチレン系樹脂の場合、シラノ基を有する樹脂をマスターバッチ化して混合してさらに、接着性を付与することもできる。
【0033】
本発明でいう架橋とは、樹脂封止シートにα線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射し、シートを構成するポリマーを架橋させることである。α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射させて架橋することで、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体の共重合体の側鎖部分の脱離による有機酸やパーオキサイド等の未反応成分を樹脂中に残留させることを防止し、未反応成分による太陽電池セルや導電性機能層または配線への悪影響を防止するのである。好ましくは樹脂封止シートにα線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射する方が好ましい。
【0034】
電子線等の電離性放射線の加速電圧は架橋処理を施す樹脂封止シートの厚さによって適宜選択すればよいが、500μmの厚さの場合、全層に架橋するときには300kV以上が必要である。
【0035】
電子線等の電離性放射線照射線量は3−500kGyが好ましいが、一般的に3kGy未満の場合、均一な架橋樹脂封止シートを得られなくなる。また、電離性放射線の照射量が500kGyを越えると樹脂封止シートのゲル分率が大きくなりすぎ、太陽電池セルのあるところとないところの段差を埋める性能が乏しくなる場合がある。電離性放射線の加速電圧や照射線量は所望のゲル分率やゲル分布を達成するため、適宜変化させてもよい。電離性放射線の加速電圧や照射線量によって発生する架橋はゲル分率によって示されるが、本発明においてゲル分率は2−65wt%が好ましく、より好ましくは本発明の樹脂封止シートのゲル分率が2〜60wt%、更に好ましくは3〜57wt%である。本発明のゲル分布を達成するために、同じ照射量であっても、樹脂種類による架橋具合の違いや転移化剤による架橋促進や架橋抑制による架橋具合の違いを利用してもよい。
【0036】
また、電離性放射線の加速電圧や照射線量によって発生する架橋はゲル分率によって表わされるが、樹脂種類による架橋具合の違いや添加剤による架橋促進や架橋抑制による架橋具合の違いを利用してもよい。例えば、エチレンモノマーと酢酸ビニル、脂肪族不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸エステル等の極性基を有する樹脂を表面層に配し、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(「VLDPE」、「ULDPE」と呼ばれているもの)樹脂を内層に配した場合は、全層透過するに十分な加速電圧であっても表面層のゲル分率は高く、内層は低いゲル分率にすることができる。さらに加速電圧を調整することによって、内層の線状低密度密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(「VLDPE」、「ULDPE」と呼ばれているもの)樹脂層を架橋しない未架橋層として構築しつつ、電子線照射による架橋加工処理をすることができるのである。また、内層としてポリプロピレン系樹脂を配した場合は、ポリプロピレン系樹脂は電子線等によって架橋しないため、未架橋層を構築することができるのである。
【0037】
次に、本発明の樹脂封止シートおよび樹脂封止シートの製造方法の一例について述べるが、これに限定されるものではない。例えば、樹脂封止シートをなす樹脂を押出機で溶融してダイより共押出し急冷固化して、原反を得る。この際、押出はTダイ法、サーキュラーダイ(環状ダイ)法等を用いることができ、多層の場合、好ましくは後者が良い。このようにして得た該原反を両面エンボス処理の場合は2本の加熱エンボスロール間を、片面エンボス処理の場合は片方のみ加熱されたエンボスロール間を通過することで樹脂封止シート表面にエンボス加工処理を施してもよい。
【0038】
樹脂封止シートが多層構造の場合、多層Tダイ法、多層サーキュラーダイ(環状ダイ)法を使用してもよく、公知のラミネート方法によって多層構造をなしても良い。
【0039】
後処理、例えば寸法安定化のためのヒートセット、コロナ処理、プラズマ処理の他、他種樹脂封止シート等とのラミネーションが行われてもよい。更に、本発明の樹脂封止シートはその少なくとも一つの層が架橋されていてもよく、架橋処理は上記の電離性放射線(電子線、γ線、紫外線等)の照射やパーオキサイドの利用等の従来公知の方法が用いられ、架橋処理はエンボス加工の前後どちらでも良い。
【0040】
樹脂封止シートの光学特性について説明する。本発明におけるヘイズは光学測定機械を使用して測定される値(後述)であるが、ヘイズが10.0%以下であると被包装物を目で見て確認できるため安心感が得られるため、好ましい。10.0%を越えると太陽電池の発電効率が低下する場合がある。より好ましくは9.5%以下、さらに好ましくは9.0%以下である。全光線透過率が、85%以上が好ましく、より好ましくは87%以上、さらに好ましくは88%以上である。
【0041】
本発明の樹脂封止シートに可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、無機フィラー、防曇剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、結晶核剤、着色剤等を含んでもよく、樹脂への添加方法としては直接対象となる樹脂層に練り込み添加するか、場合によってマスターバッチをあらかじめ希釈添加してもよい。
【0042】
本発明で開示される樹脂封止シートは、太陽電池のモジュールを構成する樹脂封止シートとして使用した場合、従来の樹脂封止シートの特徴である透明性、接着性、耐クリープ特性を維持したまま、架橋反応を誘発する有機過酸化物やその分解による太陽電池セル等の他の部材に対する悪影響を排除することができる。本発明は、従来難しかった従来の架橋工程の排除により工程を高速化し、太陽電池用ガラスや配線や発電セルの厚さ等の凹凸を樹脂封止シートで確実に隙間なく封止することができ、廃棄の際にはガラスやシリコンセル等を剥離分別できるリサイクル性を有する。
【0043】
本発明の樹脂封止シートの厚みは通常50〜1500μmが好ましい。より好ましくは100〜1000μm、さらに好ましくは150〜800μmの薄肉の領域である。50μm未満では樹脂封止シートのクッション性が乏しい場合や作業性の観点で問題が生ずる。また1500μmを越えると生産性の低下や密着性の低下が問題になる場合がある。
【発明の効果】
【0044】
本発明は、樹脂封止シートに関する。発明の樹脂封止シートは架橋反応を誘発する有機過酸化物を含有していないため、樹脂封止シートの流通段階で有機過酸化物の分解の恐れがなく、本発明の樹脂封止シートを太陽電池に使用した場合、従来の樹脂封止シートの特徴である透明性、接着性、耐クリープ性を維持したまま、架橋反応を誘発する有機過酸化物やその分解による太陽電池セル等の他の部材に対する悪影響を排除し、従来難しかった従来の架橋工程の排除による工程の高速化を実現し、太陽電池用ガラスや配線や発電セルの厚さ等の凹凸を樹脂封止シートで確実に隙間なく封止することができるのである。
【実施例】
【0045】
以下に実施例、比較例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り本実施例に限定されるものではない。なお、本発明で用いる評価方法は下記の通りである。また、本実施例中の部及び%は、特に断らない限り重量基準である。
【0046】
<ゲル分率>
沸騰p−キシレン中で試料を12時間抽出し、不溶解部分の割合を次式により表示したもので、樹脂封止シートの架橋度の尺度として用いた。
ゲル分率(wt%)=(抽出後の試料重量/抽出前の試料重量)×100
【0047】
<照射処理>
樹脂封止シートに電子線処理をEPS−800の機械(日新ハイボルテージ社製)を用いて種々の加速電圧、照射密度で処理した。
【0048】
<エチレン系重合体の密度>
JIS―K−7112に準拠して測定した。
【0049】
<エチレン系重合体のMFR>
JIS―K−7210に準拠して測定した。
【0050】
<ヘイズおよび全光線透過率>
ASTM D−1003に準拠して測定した。サンプルは太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス5cmX10cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて真空ラミネートし、測定に使用した。
【0051】
<ガラスとの剥離強度>
サンプルは太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス5cmX10cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて150℃にて真空ラミネートした。ラミネート後、2枚の太陽電池用ガラス板を手で剥がして評価を行った。
○:強固に接着して剥離しない。(良好)
×:手で剥離する。(不良)
【0052】
<太陽電池発電部分隙間埋め評価>
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス5cmX10cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(単結晶シリコンセル(厚さ250μm)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて150℃にて真空ラミネートし、発電部分の単結晶シリコンセルの樹脂封止シートとの接触状況を目視にて確認した。
○:単結晶シリコンセルと樹脂封止シートとの接触部分がすべて良好。(隙間なし)
×:単結晶シリコンセルと樹脂封止シートとの接触部分に隙間が生じた。(ほぼすべてに隙間あり)
【0053】
<耐クリープ性評価>
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス5cmX10cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(単結晶シリコンセル(厚さ250μm)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて真空ラミネートし、積層した太陽電池の一方のガラス板を85℃に設定した恒温槽の壁面に固定し、24時間放置し、他方のガラス板とのズレを測定した。
○:ガラス板のズレがほぼなし。
×:ガラス板のズレが3mm以上。
【0054】
実施例1〜17
表1及び2に示すような樹脂を用いて、押出機を使用して樹脂を溶融し、その押出機に接続された環状ダイから樹脂をチューブ状に溶融押出し、溶融押出にて形成されたチューブを水冷リングを用いて急冷し、表1及び2記載の樹脂封止シートを得た。
【0055】
この得られた樹脂封止シートを表1及び2記載の条件にて電子線架橋処理を行った。
それぞれの樹脂封止シートを評価して、その結果を表1及び2に示す。
【0056】
表1及び2の結果より、得られた樹脂封止シートは優れた特性を有し、非常に良いものであった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
比較例1〜5
実施例と同等の方法にて表3に示した条件にて樹脂封止シートを得た。その後実施例と同等の方法にて各種の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0060】
比較例1はゲル分率が0wt%で本発明の範囲外であり、架橋されていないため、85℃に設定した恒温槽において他方のガラス板とのズレを生じた。
【0061】
比較例2〜5はゲル分率がいずれも80%を超えており本発明の範囲外であり、単結晶シリコンセル周辺部に隙間を生じてしまった。
【0062】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機過酸化物を含有しない電離性放射線架橋樹脂を成形して、樹脂封止シートを得る工程、
(b)前記 (a)工程によって得られた樹脂封止シートに電離性放射線を照射してゲル分率を2〜60wt%に調整する工程、及び
(c)前記 (b)工程によって得られた照射済み樹脂封止シートを用いて太陽電池モジュールを作製する工程、を含む太陽電池モジュールの製造方法であって、前記(c)工程時に架橋工程を行わない、前記製造方法。
【請求項2】
(a)有機過酸化物を含有しない電離性放射線架橋樹脂を含む電離性放射線架橋樹脂層を有する樹脂封止シートを形成する工程、
(b)前記 (a)工程によって得られた樹脂封止シートに電離性放射線を照射して電離性放射線架橋樹脂層のゲル分率を2〜60wt%に調整する工程、及び
(c) 前記(b)工程によって得られた照射済み樹脂封止シートを用いて太陽電池モジュールを作製する工程、を含む太陽電池モジュールの製造方法であって、前記(c)工程時に架橋工程を行わない、前記製造方法。
【請求項3】
前記電離性放射線架橋型樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリオレフィン樹脂の少なくとも1種類の樹脂を含む請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂封止シートが0.01−5wt%のカップリング剤を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。

【公開番号】特開2011−140662(P2011−140662A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65777(P2011−65777)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【分割の表示】特願2008−101116(P2008−101116)の分割
【原出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】