説明

樹脂封止型半導体装置の開封方法

【課題】銅を主成分とするボンディングワイヤを備えた樹脂封止型半導体装置の開封処理において、ボンディングワイヤが切断されないようにする。
【解決手段】封止樹脂の一部が除去されてボンディングワイヤの一部又は全部が露出している状態の半導体装置に対して、濃硫酸又は発煙硫酸を用いて保護膜形成工程が行なわれる。保護膜形成工程により、露出している部分のボンディングワイヤの表面に保護膜が形成される。その半導体装置に対して、硝酸成分を含む溶解液を用いた封止樹脂の除去処理が行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅を主成分とするボンディングワイヤを備えた樹脂封止型半導体装置の開封方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂封止型半導体装置のチップ内評価や故障解析が行なわれる場合、溶解液を用いてチップ上の封止樹脂を溶解除去する方法が知られている(例えば特許文献1を参照。)。溶解液は、例えば発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸又はそれらの混合液である。
【0003】
また、銅を主成分とするボンディングワイヤ(以下、銅ワイヤともいう)が使用されている場合、レーザー加工によってチップ上の封止樹脂の一部を予め除去する方法が知られている(例えば非特許文献1を参照。)。チップ上の残りの封止樹脂は上述の溶解除去処理によって除去される。予めレーザー加工が施されることにより、溶解液による銅ワイヤの腐食が軽減される。銅を主成分とするボンディングワイヤは例えば特許文献2に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザー加工によってチップ上の封止樹脂の一部が除去されたとき、銅ワイヤの一部又は全部が露出することがある。銅ワイヤが露出した状態で上述の溶解除去処理が行なわれると、溶解液によって銅ワイヤが断線されてしまうという問題があった。
また、上述の溶解除去処理が行なわれて銅ワイヤが露出された後、さらに追加の溶解除去処理が行なわれると、溶解液によって銅ワイヤが切断されてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、銅を主成分とするボンディングワイヤを備えた樹脂封止型半導体装置の開封処理において、ボンディングワイヤが切断されないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる樹脂封止型半導体装置の開封方法は、銅を主成分とするボンディングワイヤを備えた樹脂封止型半導体装置の開封方法であって、封止樹脂の一部が除去されて上記ボンディングワイヤの一部又は全部が露出している状態の半導体装置に対して硝酸成分を含む溶解液を用いた封止樹脂の除去処理が行なわれる前に、濃硫酸又は発煙硫酸を用いて、露出している部分の上記ボンディングワイヤの表面に保護膜を形成するための保護膜形成工程を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂封止型半導体装置の開封方法は、硝酸成分を含む溶解液を用いた封止樹脂の除去処理が行なわれる前に、濃硫酸又は発煙硫酸を用いて、露出している部分のボンディングワイヤの表面に保護膜を形成する。この保護膜は、硝酸成分を含む溶解液を用いた封止樹脂の除去処理において硝酸成分によるボンディングワイヤの腐食を防止する。これにより、本発明は、銅ワイヤを備えた樹脂封止型半導体装置の開封処理において、ボンディングワイヤの切断を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図2】同実施例の工程を説明するための概略的な断面図である。
【図3】同実施例における保護膜形成工程の一例を説明するための概略的な断面図である。
【図4】保護膜形成工程の他の例を説明するための概略的な断面図である。
【図5】保護膜形成工程のさらに他の例を説明するための概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の一実施例を説明するためのフローチャートである。図2はこの実施例の工程を説明するための概略的な断面図である。図2(a)は開封前の樹脂封止型半導体装置を示す。
【0010】
樹脂封止型半導体装置1は、半導体チップ3、配線基板5、ボンディングワイヤ7、封止樹脂9及び半田ボール11を備えている(図2(a)を参照。)。半導体装置1はBGA(Ball grid array)パッケージと呼ばれるものである。
【0011】
チップ3は配線基板5の上に搭載されている。チップ3の上面(配線基板5とは反対側の面)にパッド電極(図示は省略)が形成されている。配線基板5のチップ3搭載面にパッド電極(図示は省略)が形成されている。
【0012】
ボンディングワイヤ7はチップ3のパッド電極と配線基板5のパッド電極とを電気的に接続している。ボンディングワイヤ7は銅を主成分とする材料で形成されている。
封止樹脂9は配線基板5のチップ3搭載面に形成されている。チップ3及びボンディングワイヤ7は封止樹脂9によって覆われている。
【0013】
半田ボール11は配線基板5の裏面(チップ3搭載面とは反対側の面)に搭載されている。半田ボール11は配線基板5の内部に形成された配線を介して所定の配線基板5のパッド電極と電気的に接続されている。
【0014】
半導体装置1の開封工程について説明する。
ステップS1:レーザー開封装置により半導体装置1の加工が行なわれる。レーザー加工により、チップ3上の封止樹脂9の一部が除去される(図2(b)を参照。)。例えば、チップ3上の封止樹脂9は100μm(マイクロメートル)程度の厚みで残される。
【0015】
ステップS2:半導体装置1は耐溶解液マスクテープ13で包まれる。マスクテープ13は、封止樹脂9が除去された部分に対応して開口をもつように、半導体装置1に貼り付けられる(図2(c)を参照。)。
【0016】
ステップS3:封止樹脂9が除去された部分にボンディングワイヤ7が露出しているか否かが観察される。図2(d)に示されるようにボンディングワイヤ7が一部でも露出している場合(Yes)はステップS4に進む。図2(e)に示されるようにボンディングワイヤ7が露出していない場合(No)はステップS5に進む。
【0017】
ステップS4:露出している部分のボンディングワイヤ7の表面に保護膜(図示は省略)を形成するための保護膜形成工程が濃硫酸又は発煙硫酸を用いて行なわれる。ボンディングワイヤ7に濃硫酸又は発煙硫酸が接触されてボンディングワイヤ7の表面に保護膜が形成される。この時、硫酸又は発煙硫酸の温度は例えば室温から130℃である。
【0018】
例えば、保護膜形成工程は、図3に示されるように、濃硫酸又は発煙硫酸15が収容されたビーカー等の容器17への浸漬により行なわれる。保護膜形成工程は、図4に示されるように、スポイト19等での濃硫酸又は発煙硫酸15の滴下によって行なわれてもよい。保護膜形成工程は、噴射機能を備えた装置21による濃硫酸又は発煙硫酸15の吹き付けによって行なわれてもよい。ただし、保護膜形成工程はここで例示した方法に限られない。保護膜形成工程は、ボンディングワイヤ7の表面に濃硫酸又は発煙硫酸が接触されて保護膜が形成される方法であれば、どのような方法により行なわれてもよい。
【0019】
ステップS5:ステップS3においてボンディングワイヤ7が露出していないと判断された半導体装置1、又はステップS4でボンディングワイヤ7の表面に保護膜が形成された半導体装置1に対して、チップ3上に残った封止樹脂9の除去処理が硝酸成分を含む溶解液を用いて行なわれる(図2(f)を参照。)。
【0020】
この封止樹脂9の除去処理は公知技術と同じ方法で行なわれる。例えば、硝酸成分を含む溶解液は発煙硝酸と濃硫酸の混合液である。発煙硝酸と濃硫酸の混合比は例えば1:1である。この混合液の温度は例えば90℃以上である。この封止樹脂9の除去処理は、例えばプラスチックモールドオープナー装置を用いた方法、又はビーカー等の容器への浸漬方法によって行なわれる。
【0021】
ステップS6:半導体装置1表面に残存する溶解液及び溶けた封止樹脂が有機溶剤等を用いて洗浄及び除去される。この洗浄及び除去は公知技術と同じ方法で行なわれる。
【0022】
ステップS7:チップ3表面の観察が顕微鏡等を用いて行なわれる。
ステップS8:チップ3表面の観察結果に基づいて、封止樹脂9の追加除去が必要であるか否かが判断される。封止樹脂9の追加除去が必要である場合(Yes)、ステップS4に戻る。封止樹脂9の追加除去が必要でない場合(No)、半導体装置1の開封工程は終了される。
【0023】
この実施例では、ステップS4で、露出している部分のボンディングワイヤ7の表面に保護膜が形成される。この保護膜は、ステップS5で、硝酸成分を含む溶解液を用いた封止樹脂の除去処理において硝酸成分によるボンディングワイヤ7の腐食を防止する。これにより、ボンディングワイヤ7の切断が防止される。
【0024】
以上、本発明の実施例が説明されたが、本発明は、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0025】
上記実施例ではチップ3上の封止樹脂9のみが除去されているが、本発明で封止樹脂9が除去される位置はこれに限定されない。例えば、チップ3の上面と側面が露出するように封止樹脂9が除去されてもよい。さらに、ボンディングワイヤ7と配線基板5との接合部分が露出するように封止樹脂9が除去されてもよい。
【0026】
本発明により開封される樹脂封止型半導体装置はBGAパッケージに限定されない。本発明の開封方法は、銅を主成分とするボンディングワイヤを備えた樹脂封止型半導体装置であれば、どのようなパッケージ形態であっても開封処理の対象とすることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 樹脂封止型半導体装置
7 銅を主成分とするボンディングワイヤ
5 シリコン層(半導体層)
9 封止樹脂
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開平6−21130号公報
【特許文献2】特開2008−85319号公報
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】Dongmei Meng, Joe Rupley, Chris McMahon, "Decapsulation Techniques for Cu Wire Bonding Package", Proceedings of the 35th International Symposium for Testing and Failure Analysis, ISTFA 2009, November 2009, p.217-221

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を主成分とするボンディングワイヤを備えた樹脂封止型半導体装置の開封方法において、
封止樹脂の一部が除去されて前記ボンディングワイヤの一部又は全部が露出している状態の半導体装置に対して硝酸成分を含む溶解液を用いた封止樹脂の除去処理が行なわれる前に、濃硫酸又は発煙硫酸を用いて、露出している部分の前記ボンディングワイヤの表面に保護膜を形成するための保護膜形成工程を含むことを特徴とする樹脂封止型半導体装置の開封方法。
【請求項2】
前記保護膜形成工程が施される前記半導体装置は、レーザー加工によって前記ボンディングワイヤの一部が露出する程度に前記封止樹脂の一部が除去されたものである請求項1に記載の樹脂封止型半導体装置の開封方法。
【請求項3】
前記保護膜形成工程が施される前記半導体装置は、硝酸成分を含む溶解液を用いた封止樹脂の除去処理によって前記ボンディングワイヤの一部又は全部が露出する程度に前記封止樹脂の一部が除去されたものである請求項1に記載の樹脂封止型半導体装置の開封方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−38238(P2013−38238A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173464(P2011−173464)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】