説明

樹脂強化型木質化粧板の製造方法

【課題】 木質基材の自然の風合いを損なうことなく、表面硬度、耐擦傷性、耐クラック性、耐汚染性に優れた木質化粧板を、液状電子線硬化型樹脂を用いて簡便に製造することができる樹脂強化型木質化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】 木質基材および液状電子線硬化型塗料のいずれも加熱しないで、木質基材表面に液状電子線硬化型塗料を塗布し、圧入した後、電子線照射による硬化を行わずに、さらに液状電子線硬化型塗料を塗布し、さらに圧入した後、圧入した液状電子線硬化型塗料を電子線にて硬化させる樹脂強化型木質化粧板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材の自然の風合いを損なうことなく、表面硬度、耐擦傷性、耐クラック性、耐汚染性に優れた木質化粧板を、液状電子線硬化型樹脂を用いて簡便に製造することができる樹脂強化型木質化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅やオフィスなどの建造物において、自然回帰の嗜好および意識の高まりから、木質基材の自然な風合いが好まれるようになり、床、壁などの建材分野の木質材料に対しても自然な風合いが要求されるようになってきている。
【0003】
しかしながら、床や壁などの建材分野で木質材料をそのまま使用すると、木質材料は、熱、水、機械的衝撃に対する耐久性に劣るため、経時的に変色、腐敗、破損、表面汚染などがおこり、初期の品質が保てなくなる。そこで、木質材料に、熱、水、機械的衝撃に対する耐久性を付与し、経時的な変色、腐敗、破損、表面汚染を抑えるためのさまざまな工夫がこれまで行われてきた。
【0004】
木質基材の品質を保つための方法として、木質基材表面に液状や粉体状の紫外線硬化型樹脂を塗装して木質基材表面に樹脂塗膜を形成する方法(特許文献1、特許文献2参照)や、基材表面に木質薄単板を接着し、その木質薄単板に低粘度液状樹脂を塗布、浸透させた後、高粘度液状樹脂を塗布、加熱加圧にて圧入及び熱硬化させる方法(特許文献3参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開2003−211586号公報
【特許文献2】特開2002−212506号公報
【特許文献3】特開2001−260103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案されている樹脂強化による木質化粧板の製造方法のうち、特許文献1に記載の方法は、塗料の塗布とUV硬化とを繰り返しているため、膜厚が厚くなっている。特許文献2に記載の方法は、木質基材表面に一定膜厚以上の樹脂層を形成することで木質基材の保護効果を得ている。これらの方法では木質化粧板表面は樹脂層特有の光沢や肌触りとなってしまい木質材料のもつ自然な風合いが損なわれてしまう。また特許文献3に記載の方法は、樹脂を加熱加圧により木質基材中に浸透させ、木質基材表面に残存した樹脂を取り除いた後、熱硬化することで、木質基材のもつ自然な風合いを残した樹脂強化型木質化粧板の製造を可能としているが、製造工程において木質基材を加熱する工程があるため、木質基材の加熱による膨張と樹脂の硬化による収縮の影響で硬化後の樹脂にワレが発生し、木質基材の強化が不十分になる可能性があった。
【0006】
したがって本発明の課題は、木質基材の自然の風合いを損なうことなく、表面硬度、耐擦傷性、耐クラック性、耐汚染性に優れた木質化粧板を、液状電子線硬化型樹脂を用いて簡便に製造することができる樹脂強化型木質化粧板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究の結果、液状電子線硬化型塗料を木質基材表面に特定の方法で圧入することで、自然な風合いを持った樹脂強化型木質化粧板が得られることの知見を得て、本発明をするに至った。
【0008】
即ち、本発明は、木質基材および液状電子線硬化型塗料のいずれも加熱しないで、木質基材表面に液状電子線硬化型塗料を塗布し、圧入した後、電子線照射による硬化を行わずに、さらに液状電子線硬化型塗料を塗布し、さらに圧入した後、圧入した液状電子線硬化型塗料を電子線にて硬化させる樹脂強化型木質化粧板の製造方法にある。1回目および最後の圧入後に木質基材表面に残った液状電子線硬化型塗料を除去することが好ましい。液状電子線硬化型塗料(A)を塗布、圧入した後、(A)よりも粘度の低い液状電子線硬化型塗料(B)を塗布、圧入することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液状電子線硬化型塗料を用いた樹脂強化型木質化粧板の製造方法は、上述のように、加熱圧入工程を必要とせずに、液状電子線硬化型樹脂を塗布後木質基材表面に圧入して電子線照射にて硬化する工程により製造されるため連続生産が可能で生産性に優れている。また、木質基材表面に残った液状電子線硬化型樹脂を除去した場合は、木質基材表面に余分な樹脂による厚膜の樹脂層が形成されず、木材表面の特徴が生かされた自然な風合いの樹脂強化型木質化粧板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0011】
本発明における木質基材としては、例えば、ナラ、カバ、オーク、タモ、メープル、サクラ、マツ、ヒノキ、セン、ツガ等のムク材、またはそれらからなる集成材、合板、LVL(Laminated veneer lumber)、パーティクルボードなどがあげられる。
【0012】
本発明における液状電子線硬化型樹脂の木質基材への圧入方法はロールプレス、ベルトプレスなどの連続生産に適した方法が挙げられる。
【0013】
本発明における液状電子線硬化型樹脂の圧入時の圧力としては、木質基材の種類にもよるが、十分に木質基材への樹脂の圧入を行うために4.9kPa以上、好ましくは9.8kPa以上の荷重を木質基材にかけることが望ましい。4.9kPa以上の荷重をかけた場合、樹脂が木質基材に十分に含浸して硬度などの物性が向上する。圧入を行う際の上限の荷重は、木質基材の種類によっても異なるが、木質基材が圧入の圧力によってつぶれない範囲で決定すれば良い。木質基材表面への液状電子線硬化型塗料の塗布と圧入とは、少なくとも2回ずつ行うが、密度が高い木材種や、同じ木材種であっても年輪が密になっている場合は、1回の塗布量を少なくして、塗布と圧入とを3回以上行うことが好ましい。
【0014】
本発明における木質基材上への液状電子線硬化型樹脂の総塗布量としては、各木質基材の種類や厚さによって適宜設定することができるが、50g/m以上、800g/m以下が望ましく、より望ましくは100g/m以上、500g/m以下である。総塗布量が50g/m以上の場合、木質基材への液状電子線硬化型樹脂の含浸量が十分となって、木質基材を強化することができる。また総塗布量が800g/m以下の場合、木質基材表面から含浸した液状電子線硬化型樹脂が良好に硬化される。
【0015】
本発明において1回目および最後の塗布、圧入後に木質基材表面に残った液状電子線硬化型塗料を除去することが好ましい。この工程は、電子線硬化後の木質基材に木材表面の特徴が生かされた自然な風合いを残すことを目的とした工程であるため、木質基材に含浸した樹脂を取り除くことなく、木質基材表面に残った未含浸樹脂のみをかきとるために最適な方法であればよい。例えばドクターブレードやヘラ板などで未含浸樹脂をかきとり除去することにより、電子線硬化後の木質基材の表面に自然な風合いを効果的に残すことができる。
【0016】
本発明における液状電子線硬化型塗料としては、室温で液状である無溶剤系の電子線硬化型樹脂であることが望ましい。他の塗料系、例えば溶剤系は大気への有機溶剤の排出がともない、また水系は乾燥工程により加熱が必要なため、いずれも環境保全の観点から望ましくない。また、加熱を行うと本発明の特徴である加熱を必要としないという利点を損なうばかりか、乾燥工程という余分な設備が必要となり、本発明の目指すところである簡便な製造にそぐわない。
【0017】
本発明で望ましい無溶剤系の液状電子線硬化型樹脂としては室温で液状であり電子線で硬化可能であれば特に限定されないが、木質基材の弱点である熱、水、機械的衝撃に対する耐久性や経時的変色、腐敗、破損、表面汚染などを強化する目的を損なわない範囲で、構成成分として高分子化合物、ラジカル重合性単量体を選択して任意の組み合わせで構成することができる。また必要に応じて、公知のラジカル重合開始剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、顔料、染料等の改質剤等を含んでもよい。
【0018】
本発明の液状電子線硬化型樹脂を構成し得る高分子化合物としては、例えば、電子線照射により得られる樹脂強化型木質化粧板に柔軟性を付与する場合にはガラス転移温度が低い高分子化合物を用い、逆に硬度を付与する場合にはガラス転移温度が高い高分子化合物を用いるなど、用途に応じて適宜選択できる。高分子化合物を用いることにより適度な靭性を付与し、硬度を低下させずに脆さを抑えることが可能である。
【0019】
高分子化合物としては、各種(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等のビニル化合物;グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル等のアリルエーテルアルコール化合物;等を挙げることができ、必要とする高分子化合物に性能を付与するのに最適な組み合わせになるように、これらから1種単独で、あるいは2種以上を併用して共重合体を合成して用いることができる。
【0020】
本発明の液状電子線硬化型樹脂を構成し得るラジカル重合性単量体としては、例えば、電子線により硬化可能なもので木質材料に硬度、耐熱性、耐水性、耐汚染性を付与することができるものを挙げることができる。例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカンジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッドビスフェノールA、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロポキシレーテッドビスフェノールA、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(付加数;n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールのカプロラクトン付加
物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステル類、等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタン、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロドデカニル、等の単官能(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
【0021】
また、ラジカル重合性単量体として、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等のビニルエステルモノマー類;エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物類;
アクリルアミド、 N,N−ジメチルアクリルアミド、 N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;
などを挙げることができる。
【0022】
さらに、ラジカル重合性単量体として、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、1,4−ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等のイソシアネートや、これらの二量体や三量体等のイソシアネート化合物に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、および1個のNCO反応性ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルの1種単独または2種以上の混合物を反応させたウレタンポリ(メタ)アクリレート類;アルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、スピログリコール、アミドヒドロキシ化合物等のアルコール類の水酸基にジイソシアネート化合物を付加した後、残ったイソシアネート基に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基、および1個のNCO反応性ヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させたウレタンポリ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0023】
これらのラジカル重合性単量体は、1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
本発明においては、液状電子線硬化型塗料(A)を塗布、圧入した後、(A)よりも粘度の低い液状電子線硬化型塗料(B)を塗布、圧入することが好ましい。(B)よりも高粘度の(A)を先に塗布、圧入することによって、木質基材内部における必要以上に深い地域にまで硬化型塗料が浸透することを防ぎ、過剰な電子線照射が不要となって好ましい。あとから(A)よりも粘度の低い(B)を塗布、圧入することによって、硬化型塗料が均一に浸透して好ましい。
【0025】
その場合、液状電子線硬化型塗料がいずれも無溶剤系液状電子線硬化型塗料であって、25℃における粘度が液状電子線硬化型塗料(A)は400〜3000mPa・s、液状電子線硬化型塗料(B)は10〜500mPa・sであることが好ましい。(A)よりも(B)の方が25℃における粘度が100〜1900mPa・s低いことがさらに好ましい。
【0026】
液状電子線硬化型塗料(A)は、25℃における粘度が400mPa・s〜3000mPa・sであることが好ましく、400〜2000mPa・sであることがより好ましい。液状電子線硬化型塗料(A)の25℃における粘度が400mPa・s以上の場合、基材内部の表面近傍に硬化型塗料が密に浸透し必要最低限の加速電圧、電子線量で硬化することができるため基材の劣化を最小限に抑えることができる。また、3000mPa・s以下の場合、硬化型塗料が浸透しにくい木質基材を用いた場合であっても木質基材に十分に硬化型塗料を圧入することが可能で、基材内部の表面近傍に塗料を密に分布させることができるため、製造した樹脂強化型木質化粧板に十分な表面硬度を付与することができる。
【0027】
液状電子線型塗料(A)よりも粘度が低い液状電子線硬化型塗料(B)の25℃における粘度は10〜500mPa・sであることが好ましく、10〜300mPa・sであることがより好ましい。液状電子線硬化型塗料(B)の25℃における粘度が10mPa・s以上の場合、塗布作業時に周囲に流れ出すことも少なく塗布作業が容易である。また500mPa・s以下の場合、粘度が低いので液状電子線硬化型塗料(A)が十分に圧入しきれてない硬化型塗料が浸透しにくい木質基材の隙間にも液状電子線硬化型塗料(B)を十分に圧入することができ、十分な表面硬度が得られる。なお、本発明における硬化型塗料の粘度とは、E型粘度計で測定したものである。
【0028】
本発明においては最後の塗布、圧入後に電子線照射により樹脂を硬化するが、硬化の際のエネルギーとしては使用する樹脂の電子線に対する感度にもよるが、30kGy以上150kGy以下、好ましくは50kGy以上100kGy以下が望ましい。30kGy以上の場合、液状電子線硬化型塗料を十分に硬化することができる。一方、150kGy以下の場合、基材にもよるが木質基材などの劣化を防止することができる。また加速電圧は樹脂の木質基材への含浸した深さに合わせて適宜決定することが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を示し、具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0030】
[塗料1の調製]
ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名「ダイヤビームUK6091」、三菱レイヨン株式会社製、以下「UK6091」ともいう)10質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「カヤラッドDPHA」、日本化薬株式会社製、以下「DPHA」ともいう)50質量部、ポリヒドロキシエチルエーテル化トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名「ニューフロンティアTMP−3」、第一工業製薬株式会社製、以下「TMP−3」ともいう)40質量部を攪拌混合して塗料1を調製した。E型粘度計であるVISCOMETER、TVE−20H型粘度計(東機産業株式会社製)にて25℃での粘度を測定したところ816mPa・sであった。
【0031】
[塗料2の調製]
ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名「ダイヤビームUK6074」、三菱レイヨン株式会社製、以下「UK6074」という)5質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「カヤラッドDPHA」、日本化薬株式会社製)15質量部、ポリヒドロキシエチルエーテル化トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名「ニューフロンティアTMP−3」、第一工業製薬株式会社製)10質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名「TMP−3A−3」、大阪有機化学工業株式会社製、以下「3A−3」ともいう)70質量部を攪拌混合して塗料2を調製した。塗料1と同様の方法で25℃での粘度を測定したところ206mPa・sであった。
【0032】
[塗料3〜10の調整]
表1に記載の原料と組成に変更すること以外は塗料1と同様にして塗料3〜10を調製し、粘度も測定した。なお、表1においてネオペンチルグリコールプロポキシ変性ジアクリレート(商品名「ネオマーNA305」、三洋化成工業株式会社製)を「NA305」、ヒドロキシプロピルアクリレートを「HPA」と略記した。
【0033】
[試験サンプルの作成]
[実施例1]
150mm×150mm×10mmの大きさの木質基材(ラジアータパイン)表面に塗料1を3g刷毛で塗り広げた後、PETフィルムで表面を保護したゴムローラー(No.450、大佑機材株式会社製)で19.6kPaの荷重をかけて塗料の圧入を行った後、表面に残った塗料をヘラでかきとった。つづけて木質基材表面に塗料2を3g刷毛で塗り広げた後、前述の表面を保護したゴムローラーで19.6kPaの荷重をかけて塗料の圧入を行った後、表面に残った塗料をヘラでかきとった。電子線照射装置(商品名:EBC−200、株式会社NHVコーポレーション社製)を用いて、加速電圧200kV、照射線量70kGyで前記塗布圧入済み木質基材を硬化して試験サンプルを得て、評価を行った。
【0034】
[評価方法および評価基準]
試験サンプルの評価方法および評価基準は以下のとおりである。
【0035】
・表面状態
試験サンプルの表面を下記基準に基づき目視および指触にて評価した。
○:試験サンプル表面に樹脂塗膜による光沢が無く、指触時に木質基材の自然な凹凸が認められる。
×:試験サンプル表面に樹脂塗膜による光沢があり、指触時に木質基材の自然な凹凸が認められず平滑な表面である。
【0036】
・マジック汚染性
マジックペン(商品名:マジックインキ/ゴクホソ、M700−T1黒、寺西化学工業株式会社製)で試験サンプル表面に2cmの長さの線を3本書き、1分後にガーゼにて拭き取り表面状態を以下の基準にて評価した。
○:試験サンプル表面にマジックペンのインクの痕跡なし
×:試験サンプル表面にマジックペンのインクの痕跡あり
・表面硬度
JIS規格K5600−5−4に従い、MITSU−BISHI製Uni鉛筆にて試験サンプル表面に荷重750gで2cmの長さの線を5本引いた。試験サンプル表面の鉛筆による凹みや傷が1本以下しか観察されない鉛筆の硬さのうちもっとも硬いものをその試験サンプルの表面硬度とした。
同様の方法で荷重を500gに変更して各荷重における表面硬度の評価を行った。
◎:500g荷重でHB以上の硬度、且つ、750g荷重で4B以上の硬度
○:500g荷重でHB以上の硬度、且つ、750g荷重で4B未満の硬度
×:500g荷重でHB未満の硬度
【0037】
[実施例2]
前述の表面を保護したゴムローラーによる荷重を39.2kPaに変更したこと以外はすべて実施例1と同様にして試験サンプルを得て、評価を行った。
【0038】
[実施例3〜15]
使用する塗料と条件とを表2に記載のものに変更すること以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
【0039】
[比較例1]
試験サンプルとして未塗装の木質基材を用意し、実施例1と同様の表面硬度評価を行った。
【0040】
[比較例2]
150mm×150mm×10mmの大きさの木質基材(ラジアータパイン)表面に塗料1を3g刷毛で塗り広げた後、60℃の乾燥機中に10分間入れて樹脂を熱含浸させた。乾燥機から取り出し、木質基材表面に残った塗料をヘラでかきとった後、電子線照射装置を用いて、加速電圧200kV、照射線量70kGyで硬化した。さらに重ねて木質基材表面に塗料2を3g刷毛で塗り広げた後、60℃の乾燥機中に10分間入れて樹脂を熱含浸させた。乾燥機から取り出し、基材表面に残った塗料をヘラでかきとった後、電子線照射装置を用いて、加速電圧200kV、照射線量70kGyで硬化し、試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを実施例1と同様に評価した。
【0041】
[比較例3]
150mm×150mm×10mmの大きさの木質基材(ラジアータパイン)を60℃の乾燥機中で10分間加熱後取り出し、暖かいうちに木質基材表面に塗料1を3g刷毛で塗り広げた後、室温で10分間放置して樹脂を含浸させた。木質基材表面に残った塗料をヘラでかきとった後、電子線照射装置を用いて、加速電圧200kV、照射線量70kGyで硬化した。再び60℃の乾燥機中で10分間加熱後取り出し、暖かいうちに木質基材表面に塗料2を3g刷毛で塗り広げた後、室温で10分間放置して樹脂を含浸させた。木質基材表面に残った塗料をヘラでかきとった後、電子線照射装置を用いて、加速電圧200kV、照射線量70kGyで硬化し、試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを実施例1と同様に評価した。
【0042】
[比較例4]
150mm×150mm×10mmの大きさの木質基材(ラジアータパイン)を60℃の乾燥機中で10分間加熱後取り出し、暖かいうちに木質基材表面に塗料1を3g刷毛で塗り広げた後、室温で10分間放置して樹脂を含浸させた。木質基材表面に残った塗料をヘラでかきとった後、再び60℃の乾燥機中で10分間加熱後取り出し、暖かいうちに木質基材表面に塗料2を3g刷毛で塗り広げた後、室温で10分間放置して樹脂を含浸させた。木質基材表面に残った塗料をヘラでかきとった後、電子線照射装置を用いて、加速電圧200kV、照射線量70kGyで硬化し、試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを実施例1と同様に評価した。
【0043】
[比較例5]
150mm×150mm×10mmの大きさの木質基材(ラジアータパイン)を60℃の乾燥機中で10分間加熱後取り出し、暖かいうちに木質基材表面に塗料1を3g刷毛で塗り広げた後、室温で10分間放置して樹脂を含浸させた。木質基材表面に残った塗料をヘラでかきとり、木質基材表面に塗料2を3g刷毛で塗り広げた後、室温で10分間放置して樹脂を含浸させた。木質基材表面に残った塗料をヘラでかきとった後、電子線照射装置を用いて、加速電圧200kV、照射線量70kGyで硬化し、試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを実施例1と同様に評価した。
【0044】
[比較例6]
150mm×150mm×10mmの大きさの木質基材(ラジアータパイン)を60℃の乾燥機中で10分間加熱後取り出し、暖かいうちに木質基材表面に塗料1を3g刷毛で塗り広げた後、前述の表面を保護したゴムローラーで19.6kPaの荷重をかけて塗料の圧入を行った。表面に残った塗料をヘラでかきとった後、つづけて木質基材表面に塗料2を3g刷毛で塗り広げ、前述の表面を保護したゴムローラーで19.6kPaの荷重をかけて塗料の圧入を行った後、表面に残った塗料をヘラでかきとった。電子線照射装置を用いて、加速電圧200kV、照射線量70kGyで前記塗布圧入済み木質基材を硬化して試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを実施例1と同様に評価した。
【0045】
[比較例7〜10]
表3に記載の塗料に変更すること以外は比較例2〜5の順番に準じて試験サンプルを得て、評価した。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0046】
結果からわかるように、本発明による液状電子線硬化型塗料を用いた樹脂強化型木質化粧板の製造方法(実施例1〜実施例15)は、木質基材の自然の風合いを損なうことなく、表面硬度、耐汚染性に優れた木質化粧板を、液状電子線硬化型樹脂を用いて簡便に製造することができる樹脂強化型木質化粧板の製造方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材および液状電子線硬化型塗料のいずれも加熱しないで、木質基材表面に液状電子線硬化型塗料を塗布し、圧入した後、電子線照射による硬化を行わずに、さらに液状電子線硬化型塗料を塗布し、さらに圧入した後、圧入した液状電子線硬化型塗料を電子線にて硬化させる樹脂強化型木質化粧板の製造方法。
【請求項2】
1回目および最後の圧入後に木質基材表面に残った液状電子線硬化型塗料を除去する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
液状電子線硬化型塗料(A)を塗布、圧入した後、(A)よりも粘度の低い液状電子線硬化型塗料(B)を塗布、圧入する請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
液状電子線硬化型塗料がいずれも無溶剤系液状電子線硬化型塗料であって、25℃における粘度が液状電子線硬化型塗料(A)は400〜3000mPa・s、液状電子線硬化型塗料(B)は10〜500mPa・sである請求項3に記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−196669(P2007−196669A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333564(P2006−333564)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】