説明

樹脂微粒子、樹脂微粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナー

【課題】 静電荷像現像用トナーとして用いた場合に、帯電安定性に優れ、出力される画像の環境依存性が少ない樹脂微粒子、樹脂微粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナーを提供する。
【解決手段】活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントを0.5〜80重量%含有する樹脂からなる樹脂微粒子であって、粒子の表面に存在する活性水素を有する官能基の官能基量A(モル/g)と、活性水素を有する官能基の全官能基量B(モル/g)との比が、A/B<0.3である樹脂微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーとして用いた場合に、帯電安定性に優れ、出力される画像の環境依存性が少ない樹脂微粒子、樹脂微粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真の現像に用いられる静電荷像現像用トナーとしては、一般に熱可塑性樹脂中にカーボンブラック等の着色剤、荷電制御剤、及び、その他添加剤を溶融混練し、次いで、粉砕、分級、調製する、いわゆる粉砕法と呼ばれる方法により製造されたものが用いられてきた。しかし、近年では、高画質の観点から小粒径化が望まれており、小粒径トナーを製造する方法として、粉砕法に代わり、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されているような、懸濁重合、乳化重合等を用いた静電荷像現像用トナーの製造方法が開発されている。
【0003】
懸濁重合法を用いて作製されたトナー粒子は球形で表面性が均一なトナーを形成することができることから、トナー間での均一性は高くなるが、形状が球形なため、潜像担持体に対する付着性が高くなり、転写性が低下するという問題があった。
【0004】
また、乳化重合法により製造された静電荷像現像用トナーは、従来の粉砕法に比べて、形状の制御が容易であるものの、重合性単量体からなる樹脂微粒子と着色剤等のトナー構成材料からなる粒子とを、凝集させて会合させる際に、金属塩を有する凝集剤を用いるため、特にカルボキシル基等の酸性基を表面に有する樹脂微粒子を用いる場合は、得られる画像の吸湿性が高くなり、高温高湿下において画質が悪化するという問題点があった。
【0005】
更に、懸濁重合法や乳化重合法により製造されたトナーは、繰り返し使用時の帯電量安定性及び帯電立ち上がりの安定性に欠けていることや、現像された電子写真の画質が悪いという問題があった。
【0006】
そこで、帯電性能の安定化を図る方法として、特許文献4に静電荷像現像用トナーの原料となる重合体粒子の表面カルボキシル基量を特定の量に制御することによる方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献4に開示される方法でも、帯電性能に経時変化が見られることがあり、高温高湿等の環境下においても画質の劣化が生じることから、耐環境性が充分ではなかった。従って、帯電性能に優れ、かつ、画質濃度の環境依存性が少ない静電荷像現像用トナーが望まれていた。
【特許文献1】特公昭36−10231号公報
【特許文献2】特公昭47−518305号公報
【特許文献3】特公昭51−14895号公報
【特許文献4】特開平10−115952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、静電荷像現像用トナーとして用いた場合に、帯電安定性に優れ、出力される画像の環境依存性が少ない樹脂微粒子、樹脂微粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントを0.5〜80重量%含有する樹脂からなる樹脂微粒子であって、粒子の表面に存在する活性水素を有する官能基の官能基量A(モル/g)と、活性水素を有する官能基の全官能基量B(モル/g)との比が、A/B<0.3である樹脂微粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントの含有量を所定の範囲内とするとともに、粒子の表面だけでなく、粒子の内部に存在する活性水素を有する官能基の量を多くすることにより、静電荷像現像用トナーとして用いた場合に、帯電安定性に優れ、高温高湿等の環境下においても画像濃度の変化が少ない樹脂微粒子とすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の樹脂微粒子は、活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントの含有量の下限が0.5重量%、上限が80重量%である。
0.5重量%未満であると、活性水素を有する官能基の含有量が低くなりすぎ、帯電性能を改善させる効果が小さくなり、80重量%を超えると、粒子径のそろった樹脂微粒子が製造できない。好ましい下限は2重量%、好ましい上限は50重量%であり、より好ましい下限は4重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0012】
本発明の樹脂微粒子は、粒子の表面に存在する活性水素を有する官能基の官能基量A(モル/g)と、活性水素を有する官能基の全官能基量B(モル/g)との比が、A/B<0.3である。
上記A/Bを上記範囲内とすることで、樹脂微粒子の表面だけでなく、樹脂微粒子の内部に存在する活性水素を有する官能基の量も多くなることから、本発明の樹脂微粒子は、静電荷像現像用トナーとした場合に、優れた帯電性を発現することができ、かつ、高温高湿等の環境下における帯電性能の低下を防止することができる。
上記A/Bが0.3以上であると、樹脂微粒子の表面に存在する活性水素を有する官能基の割合が多くなることから、乳化重合法等を用いて樹脂微粒子を作製する場合に、凝集剤に含まれる金属塩に起因して樹脂微粒子の吸湿性が高くなるため、静電荷像現像用トナーとした場合に、高温高湿等の環境下における帯電性能が低下する。
好ましくは、A/B<0.25である。
【0013】
上記粒子の表面に存在する活性水素を有する官能基の官能基量Aは、例えば、本発明の樹脂微粒子を水中に分散させた分散液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定することにより測定することができ、上記活性水素を有する官能基の全官能基量Bは、例えば、本発明の樹脂微粒子分散液を乾燥した樹脂粒子をテトラヒドロフランに5重量%溶液となるように溶解又は膨潤させた後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定することにより測定することができる。
【0014】
上記活性水素を有する官能基としては特に限定されず、例えば、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基、スルホ基が好ましい。これらの官能基は1種であってもよく、2種以上が存在してもよい。
また、上記活性水素を有する官能基がスルホ基である場合、スルホ基を有するセグメントは、重合性スルホン酸系モノマーに由来するものであることが好ましい。
【0015】
上記活性水素を有する官能基がスルホ基である場合は、スルホ基の含有量としては特に限定されないが、樹脂微粒子1kgに対して好ましい下限は10mmol、好ましい上限は300mmolである。10mmol未満であると、帯電安定性が著しく低下することがあり、300mmolを超えると、樹脂微粒子の凝集が起こりやすくなる。
【0016】
本発明の樹脂微粒子の動的光散乱粒度分布計を用いて測定した平均粒子径(個数平均粒子径)の好ましい下限は20nm、好ましい上限は1μmである。20nm未満であると、樹脂微粒子間で凝集が発生することがあり、1μmを超えると、画像の解像度等のトナーとしての性能が著しく低下することがある。より好ましい下限は40nm、より好ましい上限は180nmである
【0017】
本発明の樹脂微粒子は、GPC(標準入りスチレン換算、テトラヒドロフラン溶媒)5万〜100万の領域にピーク又はショルダーを有する高分子量成分と、1000〜5万の領域にピーク又はショルダーを有する低分子量成分の両成分を含有する樹脂からなることが好ましいが、低分子量成分に関しては、他の樹脂で低分子量成分の機能を代替することができる。
【0018】
本発明の樹脂微粒子は、例えば、乳化重合法により、活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーと、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーとの混合モノマーを重合して樹脂微粒子を製造する方法であって、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーと、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーとは相溶するものであり、上記混合モノマー中における上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーの含有量が0.5〜80重量%である製造方法によって製造することができる。このような樹脂微粒子の製造方法もまた本発明の1つである。
【0019】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、乳化重合法により、活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーと、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーとの混合モノマーを重合することにより、樹脂微粒子を製造する。
乳化重合法を用いて活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーを含有する混合モノマーを重合することにより、粒子径の小さい樹脂微粒子を製造することができ、また、粒子の表面だけでなく、粒子の内部に存在する活性水素を有する官能基の量も多い樹脂微粒子を好適に製造することができる。
【0020】
本発明の樹脂微粒子の製造方法としては、特に限定されないが、乳化重合によって樹脂微粒子を合成することにより、簡便に樹脂微粒子を製造することができる。特に、ミニエマルション法により活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーと、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーとの混合モノマーを重合ことがより好ましい。上記ミニエマルション法を用いて混合モノマーを重合することにより、活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーをより粒子の内部に導入することができる。
なお、上記ミニエマルション法は、乳化重合法の1形態であり、モノマーを臨界ミセル形成濃度(CMC)以下の乳化剤濃度で乳化する方法である。従って、モノマーの重合は水相中ではなく油滴内で起こり、水相中のミセルで重合が開始する乳化重合とは異なることから、より粒子径の小さい微粒子を作製することができる。
【0021】
上記樹脂微粒子の重合を行う場合、活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーの原料として、活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーの無水物を用いることが好ましい。上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーの無水物は、油溶性であることから、活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーや重合開始剤等が含まれる油滴の内部に導入しやすく、活性水素を有する官能基を粒子の内部に有する樹脂微粒子を作製することができる。
【0022】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーを含有する混合モノマーを用いて重合を行う。上記活性水素を有する官能基が1分子中に2個未満であると、重合後に得られる樹脂微粒子の繰り返し使用時の帯電量安定性及び帯電立ち上がりの安定性が低下する。
【0023】
上記混合モノマーにおける活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーの含有量の下限は0.5重量%、上限は80重量%である。0.5重量%未満であると、得られる樹脂微粒子の活性水素を有する官能基の濃度が低すぎて、帯電性能を改善させる効果が小さくなり、80重量%を超えると、粒子径のそろった樹脂微粒子が製造できない。好ましい下限は2重量%、好ましい上限は50重量%であり、より好ましい下限は4重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0024】
上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーは、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーと相溶するものである。上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーと相溶することで、上記活性水素を有する官能基を効率的に樹脂微粒子の内部に導入することができ、高温高湿等の環境下における帯電性能の低下を防止することができる。
【0025】
上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーとしては、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーと相溶するものであれば特に限定されず、例えば、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、アミノ基等を有するα,β−エチレン性不飽和化合物が挙げられる。なかでも、カルボキシル基、スルホ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物が好ましい。
【0026】
上記活性水素を有する官能基として、カルボキシル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
また、上記活性水素を有する官能基として、上記スルホ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては特に限定されないが、スルホ基を有さないモノマーとの共重合反応を行う場合における重合性の面でスルホン化スチレン、アリルスルホコハク酸等が好ましい。なお、上記スルホ基の導入に際しては、合成時にスルホン酸系の乳化剤を使用することが考えられるが、このような乳化剤を用いた場合、乳化硬化という面では非常に大きな効果を有するが、樹脂微粒子内へのスルホ基の導入という面では効果が小さく、帯電性に関しては逆に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0027】
上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーは、無水物であることが好ましい。無水物は通常油溶性であるため、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーと容易に相溶させることができる。
【0028】
本発明の樹脂微粒子において、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーとしては特に限定されず、例えば、疎水性単量体、架橋性単量体等が挙げられる。
【0029】
上記疎水性単量体としては特に限定されず、例えば、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等が挙げられる。
【0030】
上記モノビニル系芳香族系単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フ
ェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体及びその誘導体が挙げられる。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0032】
上記ビニルエステル系単量体としては特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
上記ビニルエーテル系単量体としては特に限定されず、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0033】
上記モノオレフィン系単量体としては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。上記ジオレフィン系単量体としては特に限定されず、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
上記疎水性単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記架橋性単量体としては特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0035】
上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーと、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーとの混合モノマーを重合する際には重合開始剤が用いられる。
上記重合開始剤としては特に限定されず、従来公知の重合開始剤を用いることができ、例えば、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0036】
上記重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とすることが好ましい。レドックス系開始剤を用いることで、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【0037】
本発明の樹脂微粒子を用いることにより静電荷像現像用トナーを製造することができる。このような静電荷像現像用トナーもまた、本発明の1つである。
本発明の静電荷像現像用トナーは、優れた帯電性を発現することができ、かつ、高温高湿等の環境下における帯電性能の低下を防止することができる。
【0038】
本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明の樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集及び
融着させることにより製造した着色微粒子に疎水性シリカ、疎水性酸化チタン等を添加し、ヘンシェルミキサー等で混合することにより製造することができる。
【0039】
上記着色微粒子は、本発明の樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集及び融着させることにより製造することができる。上記着色剤粒子としては従来公知のものを用いることができ、表面改質されていてもよい。なお、塩析、凝集及び融着させるとは、塩析、凝集及び融着(粒子間の界面消失)が同時に起こること、又は、塩析、凝集及び融着を同時に起こさせる行為をいう。
【0040】
上記着色剤粒子は、水性媒体中に分散された状態で塩析、凝集及び融着させる。上記着色剤粒子を分散させる水性媒体としては、臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で界面活性剤が溶解されている水溶液等が挙げられる。
【0041】
上記着色剤粒子の分散処理に使用する分散機としては特に限定されず、例えば、高速回転するローターを備えた攪拌装置(クレアミックス(CLEARMIX)、エム・テクニック社製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0042】
上記塩析、凝集及び融着する工程においては、本発明の樹脂微粒子及び着色剤粒子と共に、荷電制御剤等の数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の内添剤を塩析、凝集及び融着させてもよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、静電荷像現像用トナーとして用いた場合に、帯電安定性に優れ、出力される画像の環境依存性が少ない樹脂微粒子、樹脂微粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
(1)樹脂微粒子の作製
1Lビーカーにメタクリル酸メチル102.9g、無水マレイン酸11.4g、イオン交換水756g、乳化剤としてn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬社製、SC−F)3.62g、乳化助剤としてステアリルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルーS)5.71g、及び、開始剤として過硫酸アンモニウム5.4gを入れ、超音波ホモジナイザー(エスエムテー社製、UH−600S)を用いて分散させた。得られた乳化液を2Lの重合用釜に入れ、窒素気流下で60℃、4時間反応させた。その後、冷却することで樹脂微粒子ラテックスを得た。得られた樹脂微粒子の平均粒子径を粒度分布計(大塚電子社製、ELS−7000)を用いて測定したところ132nmであった。
【0046】
(2)着色微粒子の製造
n−ドデシル硫酸ナトリウム9.2gをイオン交換水160mLに撹拌溶解した。この溶液に、カーボンブラック(キャボット社製、リーガル330R)20gを撹拌しながら徐々に加え、次いで、撹拌装置(エム・テクニック社製、クレアミックス)を用いて分散させた。分散しているカーボンブラックの分散径を電気泳動光散乱光度計(大塚電子社製、ELS−800)を用いて測定したところ、平均分散径が109nmであった。この分散
液を着色剤分散液とした。
【0047】
得られたラテックス1000g、イオン交換水2000mL及び着色剤分散液80mLを5Lの反応容器に入れ、窒素気流下、30℃でpH10.0に調整した。次いで、塩化マグネシウム6水和物56gをイオン交換水72mLに溶解した水溶液を、撹拌下、30℃で5分かけて添加した。その後、5分間放置して、昇温を開始し、5分間で85℃まで昇温した。この状態でコールターカウンターTA−11を用いて分散径を測定し、体積平均分散径が5〜7μmになった時点で塩化ナトリウム110gをイオン交換水800mLに溶解した水溶液を添加して、粒径成長を停止させ、更に継続して液温度90±2℃にて、8時間加熱攪拌し、塩析、融着させた。その後、5℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加して、pHを2.0に調整し、攪拌を停止した。
生成した着色微粒子を濾過、洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥して、着色微粒子を得た。
【0048】
(3)静電荷像現像用トナーの製造
得られた着色微粒子に疎水性シリカ(数平均粒子径12nm、疎水化度69)1重量%、疎水性酸化チタン(数平均粒子径20nm、疎水化度63)0.5重量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合することにより静電荷像現像用トナーを作製した。
【0049】
(実施例2)
無水マレイン酸の添加量を5.7gにした以外は実施例1と同様にして樹脂微粒子を得た。平均粒子径は147nmであった。
次いで、得られた樹脂微粒子を用い、実施例1と同様にして、着色微粒子及び静電荷像現像用トナーを製造した。
【0050】
(実施例3)
p−スチレンスルホン酸ナトリウム12.0gを更に添加したこと以外は実施例1と同様にして樹脂微粒子を得た。平均粒子径は125nmであった。
次いで、得られた樹脂微粒子を用い、実施例1と同様にして着色微粒子及び静電荷像現像用トナーを製造した。
【0051】
(実施例4)
無水マレイン酸の添加量を2.9gに、p−スチレンスルホン酸ナトリウム6.0gを更に加えたこと以外は実施例1と同様にして樹脂微粒子を得た。平均粒子径は100nmであった。
次いで、得られた樹脂微粒子を用い、実施例1と同様の操作により着色微粒子及び静電荷像現像用トナーを製造した。
【0052】
(実施例5)
無水マレイン酸に代えてマレイン酸2.9gを加えたこと以外は実施例1と同様にして樹脂微粒子を得た。平均粒子径は91nmであった。
次いで、得られた樹脂微粒子を用い、実施例1と同様の操作により着色微粒子及び静電荷像現像用トナーを製造した。
【0053】
(比較例1)
無水マレイン酸に代えて同量のメタクリル酸を加えたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を得た。平均粒子径は75nmであった。
次いで、得られた樹脂微粒子を用い、実施例1と同様の操作により着色微粒子及び静電荷像現像用トナーを製造した。
【0054】
(評価)
実施例1〜5及び比較例1で得られた樹脂微粒子及び静電荷像現像用トナーについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0055】
(1)平均粒子径及びCV値の測定
粒度分布計(Particle Sizing System社製、NICOMP 380ZLS)を用いて静電荷像現像用トナーの平均粒子径及び粒子径のCV値を求めた。
【0056】
(2)酸官能基量の測定
実施例1〜5及び比較例1で得られた樹脂微粒子をそれぞれ水に分散させ、樹脂微粒子分散液を調製した。予め透析を行うことにより樹脂微粒子分散液中の遊離成分を除去した後、電位差自動滴定装置(AT−510、京都電子工業社製)を用いることにより、樹脂微粒子表面におけるカルボキシル基及びスルホ基の量(酸官能基量)、及び、樹脂微粒子全体の酸官能基量を水酸化ナトリウム水溶液による中和滴定によって測定した。
なお、樹脂微粒子表面の酸官能基量は、中和滴定で求めた酸官能基量を樹脂粒子の質量で割った値、即ち、単位樹脂粒子質量当たりの酸官能基量A(10−4モル/g)として表した。また、樹脂微粒子全体の酸官能基量は、得られた樹脂微粒子をテトラヒドロフランに溶解して、5重量%溶液とした後、中和滴定を行うことにより、酸官能基量B(10−4モル/g)として表した。
【0057】
(3)トナーの平均粒子径の測定
LA910(堀場製作所社製)を用いて得られたトナーの平均粒子径を測定した。
【0058】
(4)帯電量の測定
実施例1〜5及び比較例1で得られた静電荷像現像用トナーと、平均粒径60μmのフェライト粒子を含有するキャリアとをトナー濃度5%で混合し、高温高湿(温度30℃、湿度80%)及び低温低湿(温度10℃、湿度20%)の下で24時間及び120時間放置して、ブローオフ式帯電量測定装置(東芝ケミカル社製)を用いて帯電量測定を行った。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、静電荷像現像用トナーとして用いた場合に、帯電安定性に優れ、出力される画像の環境依存性が少ない樹脂微粒子、樹脂微粒子の製造方法及び静電荷像現像用ト
ナーを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントを0.5〜80重量%含有する樹脂からなる樹脂微粒子であって、
粒子の表面に存在する活性水素を有する官能基の官能基量A(モル/g)と、活性水素を有する官能基の全官能基量B(モル/g)との比が、A/B<0.3であることを特徴とする樹脂微粒子。
【請求項2】
活性水素を有する官能基はカルボキシル基であることを特徴とする請求項1記載の樹脂微粒子。
【請求項3】
活性水素を有する官能基はスルホ基であることを特徴とする請求項1記載の樹脂微粒子。
【請求項4】
スルホ基を有するセグメントは、重合性スルホン酸系モノマーに由来するものであることを特徴とする請求項3又は4記載の樹脂微粒子。
【請求項5】
スルホ基の含有量は、樹脂微粒子1kgに対して10〜300mmolであることを特徴とする請求項3又は4記載の樹脂微粒子。
【請求項6】
動的光散乱粒度分布計を用いて測定した平均粒子径が20nm〜1μmであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の樹脂微粒子。
【請求項7】
乳化重合法により、活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーと、前記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーとの混合モノマーを重合して樹脂微粒子を製造する方法であって、
前記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーと、前記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーとは相溶するものであり、
前記混合モノマー中における前記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーの含有量が0.5〜80重量%である
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項8】
乳化ミニエマルション法であることを特徴とする請求項7記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項9】
活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーは、酸無水物であることを特徴とする請求項7又は8記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の樹脂微粒子からなることを特徴とするトナー用樹脂微粒子。
【請求項11】
請求項10記載のトナー用樹脂微粒子を用いてなることを特徴とする静電荷像現像用トナー。

【公開番号】特開2006−276248(P2006−276248A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92508(P2005−92508)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】