説明

樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子及び樹脂微粒子の製造装置

【課題】化学、医療、電子材料分野等に使用される均一粒子径の樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子及び樹脂微粒子の製造装置を提供する。
【解決手段】連続相中に、分散相として重合性単量体からなる液体を吐出し、機械的振動を与えることにより前記重合性単量体からなる液体を分裂させて液滴を形成し、前記液滴が分裂、合着しない状態で重合することにより樹脂微粒子を製造する方法であって、前記形成された液滴の粒子径を測定し、その結果を前記重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件にフィードバックする樹脂微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学、医療、電子材料分野等に使用される均一粒子径の樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子及び樹脂微粒子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂微粒子を作製する方法としては、懸濁重合法が知られている。この方法は、攪拌機を備えた反応槽に分散安定剤を溶解した水性媒体を仕込み、攪拌しながら重合開始剤を溶解させた重合性単量体を投入、加熱することにより樹脂微粒子を得る方法である。しかし、この方法では得られる樹脂微粒子の粒子径分布は広く、カラム充填材、スペーサー、トナー、発泡体の原料等の粒子径の均一性が要求される用途では、分級等の分別操作が必要となり非常に煩雑であった。
【0003】
これに対して、特許文献1には、層流特性を持つ重合性単量体流を機械的振動を与えることにより小さな液滴に砕き、これを連続相中で重合槽に移動させ、加熱により重合する方法が開示されている。しかしながら、この方法に記載されている装置では、重合性単量体開口部が複数であるため実際には各々から同じ流量で吐出することは困難であり、流量のバラツキが生じることから、これを同じ機械的周波数で分裂させた液滴はその容量すなわち大きさにバラツキが生じる。従って、このような装置では、分裂状態を充分に把握できないため、分裂不良が起こった際にそれを回避しにくく、最終的な樹脂微粒子の粒子径の均一性を損なうことがあった。また、この装置には液滴の生成状態や、液滴の粒子径をチェックする機構がないため、作製条件の変動等により粒子径の均一性が損なわれてもそのまま作製を続行してしまうため、得られる樹脂微粒子の均一性が悪いという問題点があった。
【特許文献1】特開昭57−102905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、化学、医療、電子材料分野等に使用される均一粒子径の樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子及び樹脂微粒子の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、連続相中に、分散相として重合性単量体からなる液体を吐出し、機械的振動を与えることにより前記重合性単量体からなる液体を分裂させて液滴を形成し、前記液滴が分裂、合着しない状態で重合することにより樹脂微粒子を製造する方法であって、前記形成された液滴の粒子径を測定し、その結果を前記重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件にフィードバックする樹脂微粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明の樹脂微粒子の製造方法は、連続相中に、分散相として重合性単量体からなる液体を吐出し、機械的振動を与えることにより前記重合性単量体からなる液体を分裂させて液滴を形成し、前記液滴が分裂、合着しない状態で重合することにより樹脂微粒子を製造する方法である。
【0007】
上記連続相としては、気体、液体に限定されない。上記気体としては、例えば、空気、窒素、アルゴン等の不活性ガス等が挙げられる。上記液体としては、連続相を水系とし重合性単量体を油系とする水中油相系の場合には、例えば、水、水とアルコール等の水溶性有機溶剤との混合溶液等が挙げられる。また、連続相を油系とし重合性単量体を水系とする油中水相系の場合には、例えば、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0008】
上記連続相には、形成した液滴が分裂、合着しないように分散安定剤を添加することが好ましい。上記分散安定剤としては特に限定されず、水中油相系の場合には、例えば、ポリビニルアルコール;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース;でんぷん、ゼラチン等の水溶性高分子;リン酸三カルシウム等の難水溶性無機塩等が挙げられ、油中水相系の場合には、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記連続相には、また、表面張力調整のための界面活性剤、比重調整剤等を添加してもよい。
【0009】
上記分散相としては、重合性単量体からなる液体が用いられる。上記重合性単量体としては、水中油相系の場合には、例えば、スチレン、ビニルナフタレン、アルキル置換スチレン等のモノビニル芳香族化合物;ブロモスチレン、クロロスチレン等のハロ置換スチレン;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ジビニルジフエニルエーテル、ジビニルジフエニルスルホン等のポリビニル芳香族化合物;塩化ビニル等のハロオレフイン又はハロゲン化ビニル;アクリル酸又はメタアクリル酸のエステル等のα−β−エチレン性不飽和カルボン酸のエステル;メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。なかでも、電子材料分野に使用される場合には、耐熱性が得られる架橋性の重合性単量体であるジビニルベンゼン、ジビニルベンゼンと多官能アクリレートとを混合したものが好適である。これらの重合性単量体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0010】
また、上記重合性単量体としては、油中水相系の場合には、例えば、アクリルアミド、メタアクリルアミド、フマルアミド、エタクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボキザミド;不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル;酸無水物;アクリル酸、メタアクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸等の水溶性の重合性単量体が挙げられる。
【0011】
上記分散相には、重合開始剤を添加してもよい。上記重合開始剤としては従来公知のものを用いることができ、水中油相系の場合には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等が挙げられ、油中水相系の場合には、例えば、過硫酸塩、過酸化水素、ハイドロパーオキサイド等の水溶性の重合開始剤が挙げられる。また、光で重合させる場合には、光重合開始剤が使用され、その他の連鎖移動剤等の重合助剤を添加してもよい。
また、上記分散相には、重合に影響を与えない範囲において、増感剤、粘度調整剤、溶媒、表面張力調整のための界面活性剤等を添加してもよい。
【0012】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、上記連続相中に上記分散相として重合性単量体からなる液体を吐出し、機械的振動を与えることにより重合性単量体からなる液体を分裂させて液滴を形成する。例えば、上記重合性単量体からなる液滴をノズルやオリフィス等の開口部より層流になるような条件で上記連続相中に吐出すると、上記開口部付近で重合性単量体の液柱が形成される。この液柱に機械的振動を与えることにより液柱に表面波を与えると、液柱が変形し、くびれが生じて、その部分から分裂して液滴が形成される。この液滴形成の様子を図1に示した。振動の周波数に従ってくびれ部分が発生するので、単位時間あたりの流量を周波数で除した値から液滴1個の容量を算出することができる。
【0013】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、上記重合性単量体からなる液体が分裂して液滴になる状態、即ち、重合性単量体の液柱から液滴が形成する瞬間を認識し、その結果を前記重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件にフィードバックする。
【0014】
上記液体が分裂して液滴になる状態を認識する手段としては特に限定されないが、例えば、高速な液滴形成の状態を静止状態で捉えるのに充分な高速のシャッタースピードで撮影可能なカメラ、又は、このようなカメラとストロボ照明とを組み合わせる方法等が好ましい。また、微小な液滴を視認可能な大きさに拡大するために、上記カメラには拡大撮影装置が装着されることが好ましく、上記カメラでとらえた画像はディスプレイ等で表示され認識しやすくすることが好ましい。
【0015】
上記フィードバックとしては、例えば、液滴が図1に示すように正常に生成するか否かを確認し、異常が生じた場合その状況により生成条件を調整したり、場合によっては生成を中止したりすることを言う。異常の例として図2に示すようなものがあり、この場合のフィードバックの例としては、与える機械的振動の振幅を大きくしてくびれを生じさせ、液滴が分裂するように調整する。このようなフィードバックを行うことにより、均一な粒子径を有する樹脂微粒子を製造することができる。
【0016】
本発明の樹脂微粒子の製造方法では、形成された重合性単量体の液滴を、液滴が分裂、合着しない状態で重合を行うことにより樹脂微粒子を得ることができる。上記液滴が合着しない状態にする方法としては、例えば、連続相に分散安定剤を添加する方法等が挙げられる。上記液滴を分裂しない状態にする方法としては、例えば、液滴に過剰な機械的剪断力がかからないよう連続相を緩やかに攪拌する方法等が挙げられる。このような状態で、加熱又は活性光を照射することにより重合性単量体を重合させる。
【0017】
また、形成された液滴の粒子径を測定し、その結果を前記重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件にフィードバックすることによっても、均一な粒子径を有する樹脂微粒子を製造することができる。
【0018】
連続相中に、分散相として重合性単量体からなる液体を吐出し、機械的振動を与えることにより重合性単量体からなる液体を分裂させて液滴を形成し、液滴が分裂、合着しない状態で重合することにより樹脂微粒子を製造する方法であって、形成された液滴の粒子径を測定し、その結果を重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件にフィードバックする樹脂微粒子の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0019】
上記液滴の粒子径を測定する方法としては特に限定されず、例えば、分散相中で形成された液滴の画像をコンピュータに取り込んで計測する方法等が挙げられる。その際に計測される液滴は、液滴状態であれば特に限定されない。具体的には、例えば、上述のカメラにより撮影された画像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトウエアにより形成された液滴の粒子径を測定することができる。得られた測定値を演算処理し、平均値や標準偏差等の値を求め、この結果から液滴の粒子径を調整するようにフィードバックする。上記フィードバックとしては、例えば、コンピュータから、又は、シーケンサーを介して制御信号を機械的振動を与える装置又は重合性単量体の吐出を調整する装置等に送ることにより制御する。例えば、粒子径が大きすぎる場合には、機械的振動の周波数を上げたり、重合性単量体の吐出量を下げたりすることで調整し、粒子径が小さすぎる場合にはその逆を行うことで調整を行う。
【0020】
本発明の樹脂微粒子の製造方法によれば、非常に均一な粒子径を有する樹脂微粒子を得ることができる。本発明の樹脂微粒子の製造方法により製造された樹脂微粒子であって、平均粒子径が10〜3000μmであり、かつ、80%以上が平均粒子径の±10%の範囲内に含まれる樹脂微粒子もまた、本発明の1つである。
【0021】
ここで本発明の樹脂微粒子の粒子径の好ましい下限を10μm、好ましい上限を3000μmとしたのは、このような粒子径を有する樹脂微粒子は、懸濁重合での作製が困難であるため、本発明の樹脂微粒子の製造方法が特に有効となる範囲であるからである。本発明の樹脂微粒子が、平均粒子径の±10%の範囲内に含まれる樹脂微粒子が80%未満であると、粒子径が不均一になり、分別工程が必要になることがある。
【0022】
本発明の樹脂微粒子の製造方法を実施するための製造装置は、少なくとも、分散容器、分散容器内に開口しており分散媒中に重合性単量体からなる液体を吐出する噴出口、分散媒中に噴出された重合性単量体からなる液体に機械的振動を与える手段、及び、形成される液滴を撮影する撮影装置を有することが好ましい。
【0023】
このような分散容器、分散容器内に開口しており液状分散媒中に重合性単量体からなる液体を吐出する噴出口、液状分散媒中に噴出された重合性単量体からなる液体に機械的振動を与える手段、及び、形成される液滴を撮影する撮影装置を有する樹脂微粒子の製造装置もまた、本発明の1つである。
【0024】
上記分散容器としては特に限定されないが、液滴の形成状態をCCDカメラ等で撮影することや液滴形成後の反応を考慮して、透明で100℃程度の加熱に耐えられるものが好ましい。このような分散容器としては、例えば、ガラス製の丸形や筒形のセパラブルフラスコ容器等が挙げられる。
【0025】
上記噴出口は、上記分散容器内に開口しており液状分散媒中に重合性単量体からなる液体を吐出するものである。上記噴出口の開口部の形状としては、円が好ましく、開口部の流路形状は円筒状又は円錐台状が好ましい。上記噴出口の材質としては、分散相、連続相の成分によって侵されず、化学的に影響されないものが好ましく、例えば、ステンレス、テフロン(登録商標)等が挙げられる。
【0026】
なお、上記噴出口は特に限定されないが、1つであることが好ましい。噴出口を複数個並設すると、各噴出口からの重合性単量体の噴出量にばらつきを生じ、加振されて生成される液滴の大きさが不均一となるとともに、液滴が重なって明確な映像の撮影が困難となることがある。
【0027】
上記噴出口から上記重合性単量体を吐出する方法としては特に限定されず、例えば、ポンプ等により送液する方法等が挙げられる。上記ポンプとしては、脈動の少ないものが好ましく、回転数により流量が制御し易いギヤポンプが好適に用いられる。上記ポンプとしてプランジャーポンプを用いる場合には、整流装置を併用することが必要である。また、噴出口に配管によって接続された単量体容器に圧縮空気を送入して単量体を容器から押出し、流量調整弁を用いて定量を送出するようにしてもよい。
【0028】
上記機械的振動を与える手段としては特に限定されず、例えば、振動子を噴出口を支持する部材に接続して機械的に振動させる方法;規則的な振動数を有する電気信号を発生する発振器に接続されたピストンにより生ずる往復運動を単量体又は分散媒に伝える方法等が挙げられる。なかでも、直接噴出口を支持する部材を振動させる方法が好ましい。機械振動を発生させる方法としては、例えば、ファンクションジェネレータを用いて振動を発生し、これを増幅器により増幅し、振動子に供給する方法等が挙げられる。上記振動子としては、外部からの信号により周波数、振幅が調整可能なものが好ましい。
【0029】
上記撮影装置としては特に限定されないが、高速な液滴の形成を静止状態で捉えるに充分な高速のシャッター又はストロボ照明と、微小な液滴を視認可能な大きさに拡大して表示することが出来るディスプレイとを備えたCCDカメラ等が好適に用いられる。
【0030】
分散容器、分散容器内に開口しており液状分散媒中に重合性単量体からなる液体を吐出する噴出口、液状分散媒中に噴出された重合性単量体からなる液体に機械的振動を与える手段、及び、形成される液滴の粒子径の計測手段を有する樹脂微粒子の製造装置もまた、本発明の1つである。
【0031】
上記液滴の粒子径の計測手段としては特に限定されないが、例えば、上記撮影装置により液滴の形成の状態を撮影した画像をコンピュータに取込んで、画像処理装置により液滴の粒子径を計測するのが好ましい。
【0032】
本発明の樹脂微粒子の製造装置は、更に液滴の粒子径の計測結果に基いて、重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件を調整する手段を有することが好ましい。液状分散媒中に噴出された単量体が加振されて形成される液滴の粒子径は、重合性単量体の噴出量に正比例し、重合性単量体を加振する振動数に反比例することから、液滴の粒子径が大き過ぎる場合には、重合性単量体の吐出量を減少させるか振動数を増加させる操作、液滴の径が小さ過ぎる場合には、重合性単量体の吐出量を増加させるか振動数を減少させる操作を手動又は自動操作により行い、液滴の粒子径を均一化させる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、化学、医療、電子材料分野等に使用される均一粒子径の樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子及び樹脂微粒子の製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
まず、図3に示したような樹脂微粒子の製造装置を作製した。
図3に示した装置において、1は液状重合性単量体Mの容器であって、容器1にポンプPを経由して接続された内径0.3mmのノズルからなる噴出口2が、透明な分散容器3内に収納された液状分散媒D内に開口されている。
【0036】
噴出口2から液状分散媒D中に噴出された単量体Mは、噴出口2を支持する部材に接続された振動子4によって加振されて液滴が生成される。分散容器3の右方には液滴の分裂の状態を5秒毎に断続的に撮影するよう設定され、1/10000秒の高速のシャッターと拡大レンズを有する撮影装置5が、左方には光源Iに接続され、液状分散媒Dの背面から光量を与える照明装置6が付設されている。
【0037】
撮影装置5によって撮影された画像は、画像のコントローラC2を経由して14インチのCRTディスプレイ7に拡大表示され、生成された液滴の径の状態を目視により観察した結果に基づいて、手動操作により液滴の径を均一化させる調整を行うことが出来る。即ち、液滴の径が大き過ぎる場合には、ポンプのコントローラC1を操作して液状重合性単量体Mの噴出量を減少させるか、増幅器Aに接続されたファンクションジェネレータFGを操作して液状重合性単量体Mを加振する振動数を増加させることにより、液滴の径を縮小させ、液滴の径が小さ過ぎる場合には、逆に、噴出量を増加させるか、振動数を減少させることにより、液滴の径を拡大させて、手動操作により液滴の径を均一化させる調整が行われる。
【0038】
次いで、この装置を用いて樹脂微粒子の製造を行った。
ジビニルベンゼン50重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート50重量部とを混合して液状重合性単量体Mを作製し、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2重量部を添加して、容器1に注入した。
単量体Mは、ガラス製の分散容器3に収納された、水にポリビニルアルコールが3%添加された液状分散媒D内に、内径0.3mmの噴出口2より4.96mL/分の割合で噴出され、振動子4は200Hzの振動数で単量体Mが噴出された液状分散媒Dを加振して液滴を生成させた。
撮影装置5によって撮影され、CRTディスプレイ7に拡大表示された画像により、生成された液滴の径の状態を目視観察した結果に基づいて、手動操作により液滴の径を均一化させる調整を行った。
【0039】
所定量の単量体Mの噴出後、分散容器3に攪拌機と冷却管とを設置して加熱攪拌することにより、単量体Mを重合させて樹脂微粒子を得た。得られた樹脂微粒子の平均粒子径は602μmであって、平均粒子径の±10%の範囲に92%の樹脂微粒子が含まれていた。
【0040】
(実施例2)
図4に示した樹脂微粒子の製造装置を作製した。
図4に示した装置では、分散容器3の右方に液滴の粒子径の計測装置Sが付設されており、撮影装置5によって撮影された画像は、画像のコントローラC2を経由して計測装置Sに送られて、形成された液滴の粒子径が測定され、測定値を演算処理した結果が、ポンプのコントローラC1又はファンクションジェネレータFGにフィードバックされて、自動操作により液滴の径を均一化させる調整が行われる。
【0041】
次いで、この装置を用いて樹脂微粒子の製造を行った。
図4に示した装置を用い、トリメチロールプロパントリメタクリレートに代えて、テトラメチロールメタンテトラアクリレートを用いて液状重合性単量体Mを調製したこと以外は実施例1と同様にして樹脂微粒子を製造した。
得られた樹脂微粒子の平均粒子径は599μmであって、平均粒子径の±10%の範囲に89%の樹脂微粒子が含まれていた。
【0042】
(実施例3)
図4に示した装置を用いた以外は実施例1同様にして樹脂微粒子を製造した。即ち、液状重合性単量体Mが吐出された液状分散媒Dを加振して液滴を生成させた。計測装置Sにより、生成された液滴の径が測定され、測定値を演算処理した結果が、ポンプのコントローラC1にフィードバックされて、自動操作により液滴の径を均一化させる調整を行った。所定量の単量体Mの噴出後、分散容器3に攪拌機と冷却管とを設置して加熱攪拌することにより、単量体Mを重合させて樹脂微粒子を得た。
得られた樹脂微粒子の平均粒子径は601μmであって、平均粒子径の±10%の範囲に95%の樹脂微粒子が含まれていた。
【0043】
(比較例1)
CCDカメラ及びCRTモニターを使用せず、吐出条件や周波数条件の調整を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂微粒子を得た。
得られた樹脂微粒子の平均粒子径は688μmであって、±10%範囲に78%の粒子しか含まれていなかった。
【0044】
(比較例2)
液状分散媒D内に、内径0.3mmの噴出口2が3個並設して開口されている以外は実施例1で用いた装置と同様の樹脂微粒子製造装置を作製した。
この装置を用いて、3個の噴出口2より15.9mL/分の割合で液状重合性単量体Mを噴出させたこと以外は、実施例1と同様にして液滴を生成させた。撮影装置5によって撮影され、CRTディスプレイ7に拡大表示された画像は、液滴が重なり合って個別に視認することが出来なかった。
手動操作により液滴の径を均一化させる調整を行うことなく、単量体Mを重合させて得た樹脂微粒子の平均粒子径は610μmであって、平均粒子径の±10%の範囲には65%の樹脂微粒子しか含まれていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、化学、医療、電子材料分野等に使用される均一粒子径の樹脂微粒子の製造方法、樹脂微粒子及び樹脂微粒子の製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】重合性単量体の液柱から液滴が正常に形成される場合を表す模式図である。
【図2】くびれが悪いため重合性単量体の液柱から液滴が形成されない場合を示す模式図である。
【図3】実施例1で用いた樹脂微粒子の製造装置を示す概念図である。
【図4】実施例2で用いた樹脂微粒子の製造装置を示す概念図である。
【符号の説明】
【0047】
1 液状重合性単量体の容器
2 噴出口
3 分散容器
4 振動子
5 撮影装置
6 照明装置
7 CRTディスプレイ
A 増幅器
C1 ポンプのコントローラ
C2 画像のコントローラ
D 液状分散媒
FG ファンクションジェネレータ
M 液状重合性単量体
P ポンプ
S 計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相中に、分散相として重合性単量体からなる液体を吐出し、機械的振動を与えることにより前記重合性単量体からなる液体を分裂させて液滴を形成し、前記液滴が分裂、合着しない状態で重合することにより樹脂微粒子を製造する方法であって、
前記形成された液滴の粒子径を測定し、その結果を前記重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件にフィードバックする
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂微粒子の製造方法により製造された樹脂微粒子であって、平均粒子径が10〜3000μmであり、かつ、80%以上が平均粒子径の±10%の範囲内に含まれることを特徴とする樹脂微粒子。
【請求項3】
請求項1記載の樹脂微粒子の製造方法を行うための装置であって、分散容器、分散容器内に開口しており液状分散媒中に重合性単量体からなる液体を吐出する噴出口、液状分散媒中に噴出された重合性単量体からなる液体に機械的振動を与える手段、及び、形成された液滴を撮影する撮影装置を有し、
前記撮影装置により液滴の形成の状態を撮影した画像をコンピュータに取込んで、画像処理装置により液滴の粒子径を計測し、その結果を前記重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件にフィードバックする
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造装置。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂微粒子の製造方法を行うための装置であって、分散容器、分散容器内に開口しており液状分散媒中に重合性単量体からなる液体を吐出する噴出口、液状分散媒中に噴出された重合性単量体からなる液体に機械的振動を与える手段、及び、形成された液滴の粒子径の計測手段を有し、
前記計測手段により計測した液滴の粒子径を前記重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件にフィードバックする
ことを特徴とする樹脂微粒子の製造装置。
【請求項5】
更に、液滴の粒子径の計測結果に基いて、重合性単量体からなる液体の吐出条件及び/又は機械振動条件を調整する手段を有することを特徴とする請求項4記載の樹脂微粒子の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−95115(P2008−95115A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305706(P2007−305706)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【分割の表示】特願2003−507144(P2003−507144)の分割
【原出願日】平成14年6月21日(2002.6.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】