説明

樹脂微粒子の製造方法及び樹脂微粒子

【課題】母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子において、所望の組成を有する樹脂微粒子を短時間で製造する方法を提供する。
【解決手段】重合性モノマー及び架橋性モノマーを含む重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成後、重合を停止させる樹脂微粒子作製工程を有し、得られる樹脂微粒子における重合成分由来の構成単位全体に対する架橋性モノマー由来の構成単位の割合が20mol%以上であり、重合成分に占める架橋性モノマーの割合をA1mol%、目標組成の樹脂微粒子における重合成分由来の構成単位全体に対する架橋性モノマーに由来する構成単位の割合をA2mol%とすると、樹脂微粒子作製工程で不等式(1)を満たす間に重合を停止させる樹脂微粒子の製造方法。
(A1/A2)×74−27≦前記重合成分の重合転化率
≦(A1/A2)×90−20 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入した表示用粒子を移動させて画像等の情報を表示する情報表示パネルに用いる複合型の表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法、及びそれを用いて製造される樹脂微粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報表示装置として液晶表示装置(LCD)が広く普及している。しかし、一般に液晶表示装置は電力消費量が大きく、視野角が狭いなどの欠点があることが知られていた。そこで、液晶表示装置に代わるものとして、少なくとも一方が透明な2枚の基板(例えばガラス基板)間に隔壁によって仕切られた複数のセルを形成し、このセル内に粒子群として構成した表示用粒子を封入して、この表示用粒子を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルについての提案がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような情報表示用パネルは、例えば基板間の表示用粒子を、画像等の情報に応じて電気的に移動させることにより所期の画像等の情報を表示するようにしている。ここでは、表示要求のあった情報に応じて、粒子群(表示用粒子)が基板間の空間を繰り返し移動する。よって、表示用粒子とする粒子群を構成する、均質で耐久性を備えた表示用粒子が求められる。
【0004】
そこで、表示用粒子に対して、その電気特性の安定化や繰り返し表示書き換えを行った場合の耐久性を改善する意図で、表示用粒子の母体となる大きな粒子に、他の微小粒子を付加した、いわゆる複合型の粒子に係る技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術は、母粒子の表面に子粒子を付加した複合型の表示用粒子、およびこれを用いる情報表示用パネルについて開示する。所定条件の子粒子を母粒子に付加した形態とすることで、表示書き換えのために表示用粒子を繰り返し移動させた場合の耐久性を改善することができる。
【0005】
この子粒子は、一般に、重合性官能基を有する重合性モノマーを重合させることにより製造される。また、この子粒子を高硬度化するために、原料として、1つの重合性基を有する重合性モノマーと共に複数個の重合性基を有する架橋性モノマーを含むものを用いることも行われている。例えば特許文献3には、ビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを原料モノマー全体に対して1mol%以上含む原料を重合させることにより、高硬度の子粒子を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/050606号パンフレット
【特許文献2】特開2006−72283号公報
【特許文献3】特開2010−39249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3のように、高硬度の子粒子を得るために、1つの重合性官能基を有する単官能モノマーと複数の重合性官能基を有する架橋性モノマーとを含む原料モノマーを用いた場合、所望の組成を有する子粒子を短時間で製造することが困難である。
すなわち、これら単官能モノマーと架橋性モノマーとでは、1分子中における重合性官能基数が異なること等により重合速度に違いがあるため、重合後の組成を予測することが難しく、所望の組成を有する子粒子を製造することが困難である。また、これらの原料モノマーを十分に重合させることにより、原料モノマーの混合比と同一組成の子粒子を得ることも考えられるが、この場合には重合に長時間を要する。
【0008】
本発明は、1つの重合性官能基を有する単官能モノマー及び複数の重合性官能基を有する架橋性モノマーを含む原料重合成分を用いて、所望の組成を有する樹脂微粒子を短時間で製造する方法、及びそれを用いて製造される樹脂微粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、原料重合成分の配合及び重合転化率の両方を制御することにより、所望の組成を有する樹脂微粒子を短時間で得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法であって、分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー及び分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを含む重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成させた後、前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子作製工程を有し、得られる樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合が20mol%以上であり、前記重合成分に占める架橋性モノマーの割合をA1mol%とし、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合をA2mol%とすると、前記樹脂微粒子作製工程において、下記不等式(1)を満たしている間に前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子の製造方法。
(A1/A2)×74−27≦前記重合成分の重合転化率
≦(A1/A2)×90−20 (1)
[2]母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法において、分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー、分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマー、及び帯電性モノマーを含む重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成させた後、前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子作製工程を有し、得られる樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合が20mol%以上であり、前記重合成分に占める帯電性モノマーの割合をB1mol%とし、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記帯電性モノマーに由来する構成単位の割合をB2mol%とすると、前記樹脂微粒子作製工程において、下記不等式(2)を満たしている間に前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子の製造方法。
(B1/B2)×80−12≦前記重合成分の重合転化率
≦(B1/B2)×82 (2)
[3]前記重合成分が帯電性モノマーを含んでおり、前記重合成分に占める帯電性モノマーの割合をB1mol%とし、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記帯電性モノマーに由来する構成単位の割合をB2mol%とすると、前記樹脂微粒子作製工程において、下記不等式(2)を満たしている間に前記重合成分の重合を停止させ、かつ上記不等式(1)を満たす様に、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合:A2mol%に対して、前記重合成分に占める架橋性モノマーの割合:A1mol%を調整する[1]に記載の樹脂微粒子の製造方法。
[4]前記樹脂微粒子作製工程が、乳化重合法により樹脂微粒子を作製する工程である[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
[5]前記樹脂微粒子が、架橋スチレン樹脂を含むものである[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
[6]前記樹脂微粒子作製工程において、前記重合成分の重合転化率が20〜90%である間に、前記重合成分の重合を停止させる[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
[7]母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子であって、[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法を用いて製造される樹脂微粒子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つの重合性官能基を有する単官能モノマー及び複数の重合性官能基を有する架橋性モノマーの両方を含む原料重合成分を用いて、所望の組成を有する樹脂微粒子を短時間で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明により得られる樹脂微粒子を用いて構成された表示用粒子の一例を説明するための模式図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ情報表示用パネルの一例を示す拡大断面図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ情報表示用パネルの他の一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の理解を容易にするために、先ず、実施の形態に係る樹脂微粒子(子粒子)を用いた表示用粒子の概要について説明し、次いで、実施の形態に係る樹脂微粒子及びその製造方法を説明し、その後に、上記表示用粒子の詳細及びこの表示用粒子を用いた情報表示用パネルについて説明する。
【0013】
<表示用粒子の概要>
図1は、後述する本実施形態に係る樹脂微粒子を用いて構成された複合型の表示用粒子の一例を示す模式図である。
【0014】
図1において、表示用粒子31は、母粒子32表面に本実施形態に係る樹脂微粒子33を固着してなる。すなわち、母粒子32の表面に樹脂微粒子33を固着させて複合型の表示用粒子31として構成される。
ここで、前記「固着」とは、樹脂微粒子33が母粒子32の表面に埋設、接着、粘着などにより固定されているため、繰り返して表示書き換えを行った時に樹脂微粒子33の移動がないものを意味する。
【0015】
<樹脂微粒子及びその製造方法(第1の実施の形態)>
次に、第1の実施の形態に係る樹脂微粒子及びその製造方法について説明する。
本発明者らは、原料重合成分として重合速度の異なる重合性モノマーと架橋性モノマーとを含むものを用いた場合にあっても、これら原料重合成分の配合及び重合転化率の両方を制御することにより、所望の組成を有する樹脂微粒子を短時間で得ることができることを見出した。詳しくは、原料重合成分の配合、樹脂微粒子の目標組成、及び重合転化率との間に所定の関係式が成立するように制御することで、所望の組成の樹脂微粒子を得ることができることを見出した。
すなわち、本実施の形態に係る樹脂微粒子の製造方法は、母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法であって、分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー及び分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを含む重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成させた後、前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子作製工程を有し、得られる樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合が20mol%以上であり、前記重合成分に占める架橋性モノマーの割合をA1mol%とし、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合をA2mol%とすると、前記樹脂微粒子作製工程において、下記不等式(1)を満たしている間に前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子の製造方法である。
(A1/A2)×74−27≦前記重合成分の重合転化率
≦(A1/A2)×90−20 (1)
上記の樹脂微粒子作製工程について、以下に詳細に説明する。なお、この樹脂微粒子作製工程では、重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成させた後(樹脂微粒子の形成)、重合を停止させる(重合の停止)。そこで、先ず樹脂微粒子の形成に関して説明し、次いで重合の停止について説明する。
【0016】
(樹脂微粒子の形成)
上記工程では、先ず、分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー及び分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを含む重合成分を重合させて、樹脂微粒子を形成させる。
本実施の形態では、この重合成分は、分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマーと分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーとからなる。なお、この重合成分に更に帯電性モノマーを含ませた例については、後述する第2の実施の形態で説明する。
上記樹脂微粒子は、架橋オレフィン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂及び架橋エポキシ樹脂から選択される1つ以上の架橋樹脂を含むことが好適である。これらの架橋樹脂を含むことにより、樹脂微粒子における硬度を十分に高くすることができ、またこれらの架橋樹脂を含むことにより、帯電性、帯電安定性にも優れた帯電性樹脂微粒子を得ることができる。
上記架橋樹脂の中では、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂を用いることがより好ましい。
【0017】
前記分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン及びα−クロロスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸シクロヘキシル等のアクリル系モノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル系モノマー;ビニルシクロヘキサン等のシクロオレフィン系モノマー;ビニルナフタレン、4−ビニルフェニル、等のビニル基を1つ有するモノマーなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数種組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本実施形態では、樹脂微粒子は分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーにより架橋された架橋樹脂を含むが、該架橋は前記重合性モノマーの重合中に行われる。架橋性モノマー(架橋剤)としては、微粒子の強度をより向上させるという観点から、ビニル基を少なくとも2つ以上有する化合物が用いられる。この架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数種組み合せて使用してもよい。
【0019】
上記架橋性モノマーは、この樹脂微粒子作製工程で作製される樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合が20mol%以上である。架橋性モノマーの含有量を上記範囲とすることにより、樹脂微粒子における硬度を十分高くすることができ、また、前述の樹脂微粒子における未反応のビニル基量を所望の範囲とすることができる。この換算架橋性モノマーの割合は25mol%以上70mol%以下であることがより好ましい。
【0020】
前記重合成分の重合は、乳化重合法や非水分散重合法等に従って行うことができ、具体的には、乳化重合法としては界面活性効果を有する乳化剤として用いて、適宜選択した溶媒中で、重合開始剤の存在下で行うことができる。重合に用いる溶媒は、特に限定されず、通常の乳化重合法で用いられる溶媒を使用することができ、例えば、精製水や精製水とメタノールとの任意比率の混合液等がある。
また、前記非水分散重合法としては上記モノマー、重合開始剤及び分散安定剤を適切な溶媒に溶解させた溶液を所定の温度下に置いて、上記モノマーを重合させる。得られた重合溶液を濾過し、適宜選択した溶媒で洗浄した後、遠心分離機等によって微小粒子を回収し、所定の温度のオーブン等で乾燥させることによって、樹脂微粒子を得ることができる。
【0021】
なお、樹脂微粒子製造の際に採用する乳化重合は、従来において粒子を製造する際に用いた要領で同様に実施すればよく、場合により、乳化剤を使用しても、使用しなくてもよい。乳化剤を使用する場合には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸アンモニウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸アンモニウムなどの直鎖および分岐アルキル硫酸エステル塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ミリスチルスルホン酸ナトリウム、ミリスチルスルホン酸アンモニウム、セチルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸アンモニウム、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸アンモニウム、オレイルスルホン酸ナトリウム、オレイルスルホン酸アンモニウムなどの直鎖および分岐アルキルスルホン酸塩;α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸アンモニウムなどのα−オレフィンスルホン酸塩;ノニルフェノール硫酸エステルナトリウム塩、ノニルフェノール硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルフェノール硫酸エステルナトリウム塩(ラウリル硫酸エステルナトリウム塩)、ドデシルフェノール硫酸エステルアンモニウム塩(ラウリル硫酸エステルアンモニウム塩)などのアルキルフェノール硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム(ラウリルベンゼンスルホン酸アンモニウム)などのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸アンモニウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸塩;ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム(ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム)などのアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩などのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩などのポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体のドデシルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレンブロック共重合体のドデシルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩などのポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のアルキルエーテルの硫酸エステル塩等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種類以上を組合せて使用してもよい。
【0022】
上記バインダー樹脂のモノマーの重合に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素水、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネイト、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、及びt−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス[2−(トリフルオロメチルスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)]プロパン、2,2’−アゾビス[2−(2−メチルイミダゾリン−2−イル)]プロパン塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−メチルイミダゾリン−2−イル)]プロパン硫酸塩、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2’−アゾビス[2−(トルエンスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2’−アゾビス[2−(ベンゼンスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン等のイミダゾリン基を有するアゾ開始剤;4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルピリジン)アミド]等のピリジン基を有するアゾ開始剤;4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルアミン)アミド]、4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルシクロヘキシルアミン)アミド]、2,2−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアミノ基を有するアゾ開始剤;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のその他のアゾ開始剤が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種類以上を組合せて使用してもよい。
これらの中で、乳化重合下での反応性の高さから、アゾ開始剤が好ましく、帯電性への影響を少なくする必要性から、末端に水酸基を持ったアゾ化合物がより好ましい。 また、上記重合開始剤の使用量としては、モノマー量に対し、0.03〜5質量%の範囲で用いられるのが好ましい。なお、前記重合開始剤は重合の初期に一括で投入してもよいし、重合中に追加してもよい。
【0023】
また、モノマーの重合の際に用いる分散安定剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合物、ポリオキシエチレンポリイソプレン共重合物、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリシクロヘキサン、ポリトリシクロデシルメタクリレート、ポリ−4−メチルペンテン−1、シクロオレフィン重合物、エチレン−シクロオレフィン共重合物等が挙げられる。シクロオレフィン重合物としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、クロロノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、シクロヘキシルノルボルネン、ジシクロヘキシルノルボルネン、フェニルノルボルネン、ジフェニルノルボルネン、ピリジニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びそのアルキルもしくはアリール置換体、トリシクロペンタジエン及びそのアルキルもしくはアリール置換体、テトラシクロドデセン及びそのアルキルもしくはアリール置換体等が挙げられる。
【0024】
この重合反応は、前記重合成分の重合転化率X(mol%)が上記の不等式(1)の成立する範囲内となるまで実施する。
重合転化率を上記不等式(1)の範囲内とすることにより、目的組成の樹脂微粒子を作製することができる。具体的には、実際に作製される樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合をA3mol%とすると、上記(1)を満足させることにより、樹脂微粒子中における架橋性モノマーの目標割合A2mol%と実際の割合A3mol%との誤差ΔA(=(A3−A2)A2/×100%)を±10%以内とすることができる。
【0025】
上記重合転化率Xは、20〜90mol%であることが好ましい。この重合転化率Xがこの範囲内であると、重合反応の継続時間を短くすることができると共に、重合反応後に未重合の成分量を少なくすることができる。この観点からは、この重合転化率Xは、より好ましくは40〜80mol%であり、更に好ましくは50〜70%である。なお、重合転化率Xとは、重合成分全体の重合転化率のことを意味する。
【0026】
前記重合における重合温度は、好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは60 〜90℃である。また、重合の反応時間は、好ましくは1〜16時間であり、さらに好ましくは2〜12時間である。
【0027】
(重合の停止)
上記の樹脂微粒子の形成において、重合転化率X(mol%)が上記不等式(1)の範囲内になった時点で、重合反応を停止させる。
【0028】
この重合転化率X(mol%)は、重合反応の反応時間を変化させることによって所定値に制御することができる。
例えば、予備実験として、所定の配合の重合成分について、所定の重合温度で、反応時間のみを異ならせて複数の重合反応を実施し、重合転化率を測定する。この予備実験で得られた反応時間と重合転化率との関係に基づいて、上記所定の重合転化率X(mol%)とするために必要な反応時間を導出することができる。
【0029】
この重合の停止は、重合停止剤の添加及び重合温度の低下により行うことが好ましい。
上記重合停止剤としては、ハイドロキノン等のキノン系材料、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバミン酸塩類、4-ターシャリー・ブチルカテコール等のフェノール系材料、ジエチルヒドロキシルアミン等が好適に用いられる。これらの重合停止剤は単独で用いてもよく、複数種組み合せて用いてもよい。
重合停止剤の添加量は、その種類によって適宜選択されるが、例えば重合成分に対して0.5〜3mol%程度である。重合停止温度は、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは0〜40℃である。
【0030】
上述したようにして重合の停止を行った後、得られた重合溶液を濾過し、適宜選択した溶媒(例えばメタノール、アセトン、n−ヘキサン等)で洗浄し、次いで遠心分離を行うことによって重合物(微粒子)を回収し、適宜選択した温度及び乾燥期間、例えば60〜120℃で2〜24時間乾燥させることによって樹脂微粒子を得ることができる。
なお、本実施形態における樹脂微粒子を乳化剤を用いた乳化重合や界面活性剤を用いた分散重合により作製する場合、前記溶媒による洗浄により、樹脂微粒子における残存乳化剤や残存界面活性剤量は500ppm以下とすることが好ましく、2000ppm以下とすることがより好ましい。
【0031】
上記で得られる樹脂微粒子の平均粒子径は、50〜500nmの範囲とすることが好ましく、80〜350nmの範囲とすることがより好ましい。樹脂微粒子の平均粒子径が50nm以上であると、母粒子への樹脂微粒子の埋め込みの進行が早くなり過ぎることが防止され、複合構造を有する粒子として十分な使用耐久性能が得られる。一方、樹脂微粒子の平均粒子径が500nm以下であると、樹脂微粒子としての埋め込みが良好になり、複合構造を有する粒子を良好に作製できる。
【0032】
(未反応基量の低減処理工程)
前記の樹脂微粒子中に、未反応のビニル基が存在している場合には、この未反応ビニル基量を低減させる処理を実施してもよい。当該処理としては、樹脂微粒子中の未反応のビニル基を酸化あるいは付加反応させることにより、その量を低減できる処理であれば特に制限されないが、例えばオゾン処理、加熱処理、再付加反応処理、電子線処理、過酸化水素処理等を挙げることができる。
【0033】
前記オゾン処理は、重合、乾燥後の微粒子をオゾン雰囲気中に晒すことにより、未反応のビニル基を酸化させる処理である。処理条件としては、例えばオゾン濃度50ppm以上の雰囲気下、室温で4時間以上放置することが好ましい。
前記加熱処理は、重合、乾燥後の微粒子を空気中で加熱し、未反応のビニル基を酸化させる処理である。処理条件としては、例えば加熱温度を190℃以上250℃以下の雰囲気下で4時間以上放置することが好ましい。
【0034】
前記再付加反応処理は、樹脂微粒子を再分散させた溶液に重合開始剤等を再度投入し、未反応のビニル基を再付加反応させる処理である。処理方法としては、前記反応液に重合開始剤等のラジカル発生剤を投入し加熱して反応を進行させる。この場合、当該ラジカル発生剤等を微粒子中に含浸させることが好ましく、その観点からは有機溶剤を併用することが望ましく、例えば前記ラジカル発生剤等をトルエンに溶解させたものを前記反応液中に投入する方法をとってもよい。添加するラジカル発生剤等の添加量は反応液中の2質量%以下とすることが好ましい。
前記過酸化水素処理は、重合終了後の反応液に過酸化水素を投入し、未反応のビニル基を酸化反応させる処理でもよく、樹脂微粒子を過酸化水素を含む溶液と再分散して処理を行ってもよい。処理方法は、上記再付加反応処理におけるラジカル発生剤等を過酸化水素とする以外はほぼ同様である。
【0035】
上記未反応基量の低減処理によるビニル基量の低減の度合いは、樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルの解析により判断することができる。
すなわち、前記赤外分光吸収スペクトルにおける1630cm-1の吸収(ピーク)がビニル基に由来するため、ベンゼン環に由来する1600cm-1の吸収強度を100%、1640cm-1の吸収強度を0%として規格化したとき、1630cm-1の吸収強度(%)は粒子中の残存ビニル基量に比例する。
【0036】
本実施形態では、1630cm-1の吸収強度を10%以下となるまで加熱酸化処理することが好ましい。前記吸収強度が10%以下であれば、本実施形態の樹脂微粒子を用いてなる複合型の表示用粒子を用いた情報表示用パネルにおいて表示書き換えを繰り返し行ったときに、表示用粒子の帯電性を安定化させることができ、それによって該表示用粒子の繰り返し表示書き換え時の耐久性、さらには前記情報表示用パネルの表示安定性を向上させることが可能となる。
前記1630cm-1の吸収強度は8%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましい。理想的には下限は0%である。
【0037】
以上説明した工程を経ることにより、本実施形態の樹脂微粒子を得ることができるが、本実施形態の樹脂微粒子の製造方法は、前記樹脂微粒子作製工程を少なくとも有していればよく、その他の工程を含んでもよい。該その他の工程としては、特に制限されるものではない。
【0038】
<樹脂微粒子及びその製造方法(第2の実施の形態)>
次に、第2の実施の形態に係る樹脂微粒子及びその製造方法について説明する。
本発明者らは、原料重合成分として、分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー、分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマー、及び帯電性モノマーを含む重合成分を用いた場合にあっても、これら原料重合成分の配合及び重合転化率の両方を制御することにより、所望の組成を有する樹脂微粒子を短時間で得ることができることを見出した。具体的には、本発明者らは、原料重合成分の配合、樹脂微粒子の目標組成、及び重合転化率の間に所定の関係式が成立するように制御することで、所望の組成の樹脂微粒子を得ることができることを見出した。
すなわち、第2の実施の形態に係る樹脂微粒子の製造方法は、母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法において、分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー、分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマー、及び帯電性モノマーを含む重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成させた後、前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子作製工程を有し、得られる樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合が20mol%以上であり、前記重合成分に占める帯電性モノマーの割合をB1mol%とし、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記帯電性モノマーに由来する構成単位の割合をB2mol%とすると、前記樹脂微粒子作製工程において、下記不等式(2)を満たしている間に前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子の製造方法である。
(B1/B2)×80−12≦前記重合成分の重合転化率
≦(B1/B2)×82 (2)
【0039】
上記の樹脂微粒子作製工程について、以下に詳細に説明する。この樹脂微粒子作製工程では、重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成させた後(樹脂微粒子の形成)、重合を停止させる(重合の停止)。そこで、先ず樹脂微粒子の形成に関して説明し、次いで重合の停止について説明する。
なお、本実施形態において帯電性モノマーとは、分子内に極性基を1つ以上有するモノマーであって、このモノマーを含む重合成分を重合して得られた樹脂微粒子が、このモノマーを含まないこと以外は同様の重合成分を重合して得られた樹脂微粒子と比べて、帯電量(正、負)が高くなるものを意味する。
【0040】
(樹脂微粒子の形成)
本工程では、先ず、分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー、分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマー、及び帯電性モノマーを含む重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成させる。
このように本実施の形態では、上記第1の実施の形態とは異なり、重合成分中に帯電性モノマーが含まれる。
上記帯電性モノマーとしては、2−ビニルピリジン等のビニルピリジン類、N−ビニルイミダゾール等のビニルイミダゾール類、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、スチレンスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸、アクリル酸等が好適に用いられる。
【0041】
この重合反応は、前記重合成分の重合転化率X(mol%)が上記の不等式(2)の成立する範囲内となるまで実施する。
重合転化率を上記不等式(2)の範囲内とすることにより、目的組成の樹脂微粒子を作製することができる。具体的には、実際に作製される樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記帯電性モノマーに由来する構成単位の割合をB3mol%とすると、上記(2)を満足させることにより、樹脂微粒子中における帯電性モノマーの目標割合B2mol%と実際の割合B3mol%との誤差ΔB(=(B3−B2)B2/×100%)を±10%の範囲内とすることができる。
【0042】
さらに、この重合転化率X(mol%)は、第1の実施の形態と同様に、不等式(1)の成立する範囲内とすることが好ましい。これら不等式(1)及び(2)の両方を満たすように重合反応を実施することにより、所望の組成の樹脂微粒子をより組成の誤差なく製造することが可能となる。
【0043】
上記重合転化率Xは、20〜90mol%であることが好ましい。この重合転化率Xがこの範囲内であると、重合反応の継続時間を短くすることができると共に、重合反応後における未重合の成分量を少なくすることができる。この観点からは、この重合転化率Xは、より好ましくは40〜80mol%であり、更に好ましくは50〜70mol%である。なお、重合転化率Xとは、重合成分全体の重合転化率のことを意味する。
第2の実施の形態に関するその他の内容は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0044】
<表示用粒子の詳細>
前述のように、本実施形態に係る製造方法により得られた樹脂微粒子は、図1に示すような樹脂微粒子が母粒子表面に付着または固着されてなる表示用粒子の当該樹脂微粒子として用いられる。以下、前記樹脂微粒子を用いた表示用粒子について説明する。
図1における母粒子32には、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ませることができる。以下に、樹脂、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0045】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、メチルペンテン樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルペンテン樹脂、シクロオレフィン系樹脂が好適である。
【0046】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0047】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
【0048】
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
【0049】
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0050】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。また、上記着色剤を配合して所望の色の表示用粒子を作製できる。
【0051】
母粒子33を得るためには、まず、前記樹脂を凍結粉砕機で粉砕し、これを乾燥、秤量する。これと並行して、樹脂に配合する配合剤(例えば二酸化チタン)を準備してこれを秤量する。秤量したベース樹脂と配合剤とをへンシェルミキサーで予備混合し、これを乾燥してから、2軸混練り機を用いて混練りして押出して、例えば直径2mm、長さ5mm程度のペレットを製造する。
次いで上記ペレットを、更に凍結粉砕機で例えば粒子径100〜250μm程度となるよう粗粉砕して粗粉砕品を得る。この粗粉砕品を乾燥してから、粒子径が8〜10μm程度となるように微粉砕処理し、分級して目的サイズの母粒子を得る。ここまでの工程は、常法により樹脂原料を混練り、粉砕、分級して母粒子を得るものと同様である。
【0052】
後述する母粒子32表面に樹脂微粒子33を均一に付加するには、母粒子32に熱処理を施して球状化することが有効である。このため本実施形態では、上記のように得た母粒子を更に熱処理装置で処理する。ここでの熱処理装置は、例えば粒子を熱風中に噴出し、分散させ、熱風により該粒子を溶融状態とし、表面張力により球状化させるものである。上記熱処理装置としては、溶融球状化装置(MR−3、日本ニューマチック工業(株)製)等を用いることができる。
このように熱処理(サフュージョン処理)を施した処理済母粒子は、その表面に樹脂微粒子を付加するとき(樹脂微粒子複合化処理をするとき)に、いわゆる樹脂微粒子の自己組織化配列(Ordered Mixture)が円滑に進行して、母粒子表面に樹脂微粒子が均一に配置付加できる。よって、樹脂微粒子複合化処理で、球形母粒子の表面に樹脂微粒子が均一配置付加されている理想的形状の複合型粒子を製造できる。
【0053】
表示用粒子31は、上記のようにして得た母粒子32に本実施形態による樹脂微粒子33を埋設(固着)することによって得られる。埋設は、母粒子32と樹脂微粒子33とを、高速攪拌機を用いて混合・攪拌することによって行うことができる。高速攪拌機としては、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山社製)、スーパーミキサー(商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(商品名、三井鉱山社製)、メカノフュージョンシステム(商品名、ホソカワミクロン社製)、ノビルタミル(商品名、ホソカワミクロン(株)製)、メカノミル(商品名、岡田精工社製)、ハイブリダイザー(商品名、奈良機械製作所製)等が挙げられる。
【0054】
上記母粒子32に樹脂微粒子33を埋設することによって得られる複合型粒子(表示用粒子)には、無機物微粒子を外添剤として表面処理することができる。
上記外添剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、窒化チタン等が挙げられる。この中ではシリカ、酸化チタンが好ましい。また、これらの無機物微粒子の平均一次粒径は、1〜300nmの範囲が好ましく、5〜100nmの範囲がより好ましい。
【0055】
無機物微粒子を表面処理することによって、表示用粒子の帯電を調整することもできる。
無機物微粒子に正帯電性を付与できる表面処理剤としては、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤等が挙げられる。
正帯電性を付与できる無機微粒子は、特に好ましくはアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランまたはジメチルアミノプロピルトリメトキシシランで表面処理したシリカ微粒子である。
【0056】
前記無機微粒子に負帯電性を付与できる表面処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン系カップリング剤が挙げられる。
負帯電性を付与できる無機微粒子は、特に好ましくはヘキサメチルジシラザンで表面処理したシリカ微粒子である。
【0057】
表面処理は無機物微粒子と表面処理剤を撹拌することによって行われる。さらに溶媒を加えてもよく、加熱することにより処理を促進することもできる。また、表面処理剤の量および処理時間、温度を変えることによって、また正帯電性の表面処理剤と負帯電性の表面処理剤を併用することで帯電量を調整できる。
【0058】
得られた表示用粒子は、平均粒子径dが、1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径dがこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠ける場合があり、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示用粒子としての移動に支障をきたすようになる場合がある。
【0059】
また、前記表示用粒子の粒子径分布に関しては、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満とすることが好ましく、3未満とすることがより好ましい。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(上記式中、d(0.5)は粒子の50体積%がこれより大きく、50体積%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10体積%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90体積%である粒子径をμmで表した数値である。)
上記式で表されるSpanを5未満に収めることにより、各表示用粒子のサイズが揃い、均一な表示用粒子としての移動が可能となる。
【0060】
さらにまた、帯電極性が互いに異なる2種類の表示用粒子を用いた情報表示パネルを使用する場合には、使用した情報表示パネルを構成する表示用粒子の内、最大の平均粒子径d(0.5)を示す表示用粒子のd(0.5)に対する最小の平均粒子径d(0.5)を示す表示用粒子のd(0.5)の比を3以下とすることが好ましい。すなわち、上記のようにたとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる表示用粒子が互いに反対方向に動くので、互いの表示用粒子サイズを同程度にして容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0061】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。すなわち、測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。ここで、本実施形態における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0062】
<情報表示用パネル>
次に、上記の実施形態の樹脂微粒子を用いた表示用粒子を使用した情報表示用パネルの例を、図2、図3に基づき説明する。
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率と帯電性とを有する粒子群として構成される、互いに光学的反射率および帯電特性が異なる表示用粒子を少なくとも2種以上(ここでは白色表示用粒子3Waを含んで構成した白色表示粒子群3Wと黒色表示用粒子3Baを含んで構成した黒色表示粒子群3Bを示す)基板間に封入し、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(TFT付き画素電極)と基板2に設けた電極6(画素電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、各表示用粒子を基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように、白色表示粒子群3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図2(b)に示すように、黒色表示粒子群3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0063】
また、図3(a)、(b)に示す例では、光学的反射率と帯電性とを有する粒子群として構成される、互いに光学的反射率および帯電特性が異なる表示用粒子を少なくとも2種以上(ここでは白色表示用粒子3Waを含んで構成した白色表示粒子群3Wと黒色表示用粒子3Baを含んで構成した黒色表示粒子群3Bを示す)基板間に封入し、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(ライン電極)と基板2に設けた電極6(ライン電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、表示用粒子を基板1、2と垂直に移動させる。そして、図3(a)に示すように、白色表示粒子群3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図3(b)に示すように黒色表示粒子群3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図3(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0064】
また、図示しないが、少なくとも光学的反射率と帯電性とを有する粒子群として構成される表示用粒子を1種(例えば白色表示用粒子を含んで構成した白色表示粒子群)を、一方の基板に黒色板を設けた基板間に封入し、各基板に設けた電極間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、表示用粒子を基板1、2と平行方向に移動させることにより、白色表示粒子群を観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、黒色板の色を観察者に視認させて黒色ドット表示を行ってもよい。
【0065】
また、図2、図3において、基板1、2の各々の外側に外部電界形成手段を設け、該外部電界形成手段間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、表示用粒子を基板1、2と垂直に移動させ、同様に白色ドット表示、あるいは、黒色ドット表示を行うこともできる。
さらに、図2、図3における3つのセルの観察者側に、図の左側から順に赤色カラーフィルター、緑色カラーフィルター、青色カラーフィルターを設けてこれら3つのセルで表示単位を構成して、同様に白色ドット表示、あるいは、黒色ドット表示を行い、各セルにおける表示のさせ方を変えることにより多色カラー表示を行うこともできる。
【0066】
以下、上記情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
前記基板については、少なくとも一方の基板は情報表示用パネル外側から表示用粒子の色が確認できる透明な基板2であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。基板1は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適である。2μmより薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0067】
必要に応じて情報表示用パネルに電極を設ける場合の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類;酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、アンチモン錫酸化物(ATO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、金属箔(例えば圧延銅箔)をラミネートする方法や、導電部材を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。視認側であり透明である必要のある表示面側基板2に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板1に設ける電極は透明である必要はない。いずれの場合もパターン形成可能で導電性である上記材料を好適に用いることができる。
なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmである。背面側基板1に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。
【0068】
必要に応じて基板に設ける隔壁4については、その形状は表示にかかわる表示用粒子の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μmの範囲、好ましくは3〜50μmの範囲に、隔壁の高さは10〜500μmの範囲、好ましくは10〜200μmの範囲に調整される。
また、隔壁4を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。本実施形態では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0069】
これらのリブからなる隔壁4により形成されるセルは、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示の鮮明さが増す。
ここで、隔壁4の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0070】
さらに、表示用粒子で構成する表示粒子群を気体中空間で駆動させる方式の情報表示用パネルに適用する場合には、基板間の表示粒子群を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下とすることが好ましく、50%RH以下とすることがより好ましい。この空隙部分とは、図2、図3において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示粒子群3の占有部分、隔壁4の占有部分(隔壁を設けた場合)、情報表示用パネルシール部分を除いた、いわゆる表示粒子群が接する気体部分を指すものとする。
【0071】
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示用粒子の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが好ましい。
【0072】
情報表示用パネルにおける基板1と基板2との間隔は、表示粒子群が移動できて、コントラストを維持できればよいが、帯電性の表示用粒子を含んで構成した表示粒子群を気体中空間で駆動させる場合には、通常10〜100μmの範囲、好ましくは10〜50μmの範囲に調整される。対向する基板間の気体中、空間における表示粒子群の体積占有率は5〜70%の範囲が好ましく、さらに好ましくは5〜60%の範囲である。70%を超えると表示粒子群の移動に支障をきたす場合があり、5%に満たないとコントラストが不明確となり易い場合がある。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、測定評価法は以下の通りに実施した。
【0074】
<重合転化率の定量>
後述する3口フラスコ内で作製された樹脂微粒子の重合分散液:質量P(g)を、熱風乾燥機内にて120℃にて60分間乾燥して、分散媒及び未反応の原料重合成分を樹脂微粒子中より揮発させた後の樹脂微粒子の重量Q(g)を求めた。重合転化率は、以下の式で算出した。
重合転化率(%)=100×Q/(P×(重合分散液中の重合成分の割合))
【0075】
<樹脂微粒子の組成の測定>
得られた樹脂微粒子0.5mgをガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、以下の条件にて測定し、それぞれの重合成分のピーク面積から含有量を計算した。重合成分の実含有量は、事前にそれぞれの重合成分単独の重合体を合成し、それを用いて以下の条件で測定し得られた検量線から算出した。
GC:島津製作所社製GCMS−QP2010
カラム:DB−5(30mm×0.25mmI.D.)
熱分解温度:590℃×1分
カラム温度:50〜300℃(5℃/分昇温)
検出器温度:200℃
【0076】
<原料>
また、本実施例及び比較例では、以下の原料を使用した。
重合性モノマー:スチレン(関東化学試薬製)
架橋性モノマー:ジビニルベンゼン「DVB−960」 (新日鐵化学製)
帯電性モノマー:2−ビニルピリジン(東京化成試薬製)
乳化剤 :ドデシル硫酸ナトリウム(関東化学試薬製)
重合開始剤 :2,2’−Azobis[2−methyl−N−(2−hyd
roxyethyl)propionamide]
「VA−086」(和光純薬製)
重合停止剤 :ハイドロキノン(和光純薬製)
【0077】
<実施例1〜7及び比較例1,2>
(不等式(1)の計算)
表1に示す配合の原料重合成分を用いて、表1に示す目標組成の樹脂微粒子を作製することとした。すなわち、原料重合成分中における架橋性モノマー(ジビニルベンゼン)の配合割合A1(mol%)及び重合性モノマー(スチレン)の配合割合C1(mol%)を表1に示すとおりとし、目標組成の樹脂微粒子中における架橋性モノマー(ジビニルベンゼン)の割合A2(mol%)及び重合性モノマー(スチレン)の割合C2(mol%)を表1に示すとおりとした。
上記値A1,A2を上記不等式(1)に代入して、当該不等式(1)の左辺及び右辺の値を算出した。その値を表1に示す。
【0078】
(目標重合転化率X’(mol%))
実施例1〜7については、上記不等式(1)を満足するように目標重合転化率X’(mol%)を設定し、比較例1,2については、上記不等式(1)を満足しないように目標重合転化率X’(mol%)を設定した。
【0079】
(樹脂微粒子の作製工程の実施)
実施例1
3口フラスコに、上記乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.5gと、上記重合開始剤(VA−086)0.6gとを、500gの精製水に溶解させた。次いで上記重合性モノマー(スチレン)及び上記架橋性モノマー(ジビニルベンゼン)を表1に示す配合で混合した混合物100gを加えた後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、80℃で表1に示す反応時間、重合を実施した。
その後、フラスコ内に重合停止剤0.5gを添加すると共にフラスコ内の温度を40℃以下にまで低下させ、重合反応を停止させた。これにより、樹脂微粒子が分散した白濁の重合分散液を得た。
上述する測定評価方法により、実際の重合転化率X(mol%)及び得られた樹脂微粒子の組成を測定した。その結果を表1に示す。
【0080】
実施例2,3及び比較例1,2
目標重合転化率X’(mol%)及び反応時間を表1に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を実施し、上記測定評価方法を実施した。その結果を表1に示す。
【0081】
実施例4〜7
原料重合成分の配合、微粒子の目標組成、目標重合転化率X’(mol%)及び反応時間を表1に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして重合反応を実施し、上記測定評価方法を実施した。その結果を表1に示す。
【0082】
(結果)
表1から明らかなとおり、不等式(1)を満たすようにして重合を行った実施例1〜7では、樹脂微粒子における架橋性モノマーの目標組成A2(mol%)と実際の組成A3(mol%)との誤差が10%以下であり、目標組成の樹脂微粒子を得ることができた。これに対し、不等式(1)を満たさないようにして重合を行った比較例1,2では、樹脂微粒子における架橋性モノマーの目標組成A2(mol%)と実際の組成A3(mol%)との誤差が共に14%と大きくなり、目標組成の樹脂微粒子を得ることができなかった。
【0083】
<実施例8〜12及び比較例3,4>
(不等式(1)、(2)の計算)
表1に示す配合の原料重合成分を用いて、表1に示す目標組成の樹脂微粒子を作製することとした。すなわち、原料重合成分中における架橋性モノマー(ジビニルベンゼン)の配合割合A1(mol%)、重合性モノマー(スチレン)の配合割合C1(mol%)、及び帯電性モノマーの配合割合B1(mol%)を表1に示すとおりとし、目標組成の樹脂微粒子中における架橋性モノマー(ジビニルベンゼン)の割合A2(mol%)、重合性モノマー(スチレン)の割合C2(mol%)及び帯電性モノマーの割合B2(mol%)を表1に示すとおりとした。
次いで、上記値A1,A2を上記不等式(1)に代入して、当該不等式(1)の左辺及び右辺の値を算出した。また、上記値B1,B2を上記不等式(2)に代入して、当該不等式(2)の左辺及び右辺の値を算出した。その値を表1に示す。
【0084】
(目標重合転化率X’(mol%)及び反応時間の設定)
実施例8〜12については、上記不等式(1)及び(2)のうち少なくとも(2)を満足するように目標重合転化率X’(mol%)を設定し、比較例1,2については、上記不等式(1)及び(2)のうち少なくとも(2)を満足しないように目標重合転化率X’(mol%)を設定した。また、当該目標重合転化率X’(mol%)を得るために必要な反応時間を、上述した第2の反応時間の決定方法によって決定した。これらの値を表1に示す。
【0085】
(樹脂微粒子作製工程の実施)
実施例8
3口フラスコに、上記乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.5gと、上記重合開始剤(VA−086)0.6gとを、500gの精製水に溶解させた。次いで上記重合性モノマー(スチレン)、上記架橋性モノマー(ジビニルベンゼン)、及び上記帯電性モノマー(ビニルピリジン)を表1に示す配合で混合した混合物100gを加えた後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、80℃で表1に示す反応時間、重合を実施した。
その後、フラスコ内に重合停止剤0.5gを添加すると共にフラスコ内の温度を40℃以下にまで低下させ、重合反応を停止させた。これにより、樹脂微粒子が分散した白濁の重合分散液を得た。
上述する測定評価方法により、実際の重合転化率X(mol%)及び得られた樹脂微粒子の組成を測定した。その結果を表1に示す。
【0086】
実施例9,10
目標重合転化率X’(mol%)及び反応時間を表1に示すとおりとしたこと以外は実施例8と同様にして重合反応を実施し、上記測定評価方法を実施した。その結果を表1に示す。
【0087】
実施例11,12及び比較例3,4
原料重合成分の配合、微粒子の目標組成、目標重合転化率X’(mol%)及び反応時間を表1に示すとおりとしたこと以外は実施例8と同様にして重合反応を実施し、上記測定評価方法を実施した。その結果を表1に示す。
【0088】
(結果)
表1から明らかなとおり、不等式(2)を満たすようにして重合を行った実施例8〜12では、樹脂微粒子における帯電性モノマーの目標組成B2(mol%)と実際の組成B3(mol%)との誤差が10%以下であり、目標組成の樹脂微粒子を得ることができた。これに対し、不等式(2)を満たさないようにして重合を行った比較例1,2では、樹脂微粒子における帯電性モノマーの目標組成B2(mol%)と実際の組成B3(mol%)との誤差が共に10%超と大きくなり、目標組成の樹脂微粒子を得ることができなかった。
【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の製造方法により得られる樹脂微粒子を用いて複合化された表示用粒子を採用する情報表示用パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞、電子マニュアル(電子取扱説明書)等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板やホワイトボード等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence、Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部のほか、表示書換え時にのみ外部電界形成手段や外部書換え手段を用いて表示を書換えるいわゆるリライタブルペーパーとしても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0091】
1、2 基板
3W 白色表示粒子群
3Wa 白色表示用粒子
3B 黒色表示粒子群
3Ba 黒色表示用粒子
4 隔壁
5、6 電極
31 表示用粒子
32 母粒子
33 帯電性樹脂微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法であって、
分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー及び分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを含む重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成させた後、前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子作製工程を有し、
得られる樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合が20mol%以上であり、
前記重合成分に占める架橋性モノマーの割合をA1mol%とし、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合をA2mol%とすると、前記樹脂微粒子作製工程において、下記不等式(1)を満たしている間に前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子の製造方法。
(A1/A2)×74−27≦前記重合成分の重合転化率
≦(A1/A2)×90−20 (1)
【請求項2】
母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法において、
分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー、分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマー、及び帯電性モノマーを含む重合成分を重合させて樹脂微粒子を形成させた後、前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子作製工程を有し、
得られる樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合が20mol%以上であり、
前記重合成分に占める帯電性モノマーの割合をB1mol%とし、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記帯電性モノマーに由来する構成単位の割合をB2mol%とすると、前記樹脂微粒子作製工程において、下記不等式(2)を満たしている間に前記重合成分の重合を停止させる樹脂微粒子の製造方法。
(B1/B2)×80−12≦前記重合成分の重合転化率
≦(B1/B2)×82 (2)
【請求項3】
前記重合成分が帯電性モノマーを含んでおり、
前記重合成分に占める帯電性モノマーの割合をB1mol%とし、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記帯電性モノマーに由来する構成単位の割合をB2mol%とすると、前記樹脂微粒子作製工程において、下記不等式(2)を満たしている間に前記重合成分の重合を停止させ、かつ上記不等式(1)を満たす様に、目標組成の樹脂微粒子における前記重合成分に由来する構成単位全体に対する前記架橋性モノマーに由来する構成単位の割合:A2mol%に対して、前記重合成分に占める架橋性モノマーの割合:A1mol%を調整する請求項1に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂微粒子作製工程が、乳化重合法により樹脂微粒子を作製する工程である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂微粒子が、架橋スチレン樹脂を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂微粒子作製工程において、前記重合成分の重合転化率が20〜90%である間に、前記重合成分の重合を停止させる請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項7】
母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子であって、
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法を用いて製造される樹脂微粒子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−173425(P2012−173425A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33747(P2011−33747)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】