説明

樹脂微粒子の製造方法及び樹脂微粒子

【課題】高帯電量の樹脂微粒子を高収率で製造する樹脂微粒子の製造方法及びそれによって得られる樹脂微粒子を提供する。
【解決手段】母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法であって、
分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー及び分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを含む重合成分の一部を重合させて粒子核を形成させる予備重合工程と、残りの重合成分を添加して重合させる本重合工程とを順に行い、
前記予備重合工程及び前記本重合工程における重合性モノマー及び架橋性モノマーの合計に対する架橋性モノマーの割合を25質量%以上とすることを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入した表示用粒子を移動させて画像等の情報を表示する情報表示パネルに用いる複合型の表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法、及びそれを用いて製造される樹脂微粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報表示装置として液晶表示装置(LCD)が広く普及している。しかし、一般に液晶表示装置は電力消費量が大きく、視野角が狭いなどの欠点があることが知られていた。そこで、液晶表示装置に代わるものとして、少なくとも一方が透明な2枚の基板(例えばガラス基板)間に隔壁によって仕切られた複数のセルを形成し、このセル内に粒子群として構成した表示用粒子を封入して、この表示用粒子を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルについての提案がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような情報表示用パネルは、例えば基板間の表示用粒子を、画像等の情報に応じて電気的に移動させることにより所期の画像等の情報を表示するようにしている。ここでは、表示要求のあった情報に応じて、粒子群(表示用粒子)が基板間の空間を繰り返し移動する。よって、表示用粒子とする粒子群を構成する、均質で耐久性を備えた表示用粒子が求められる。
【0004】
そこで、表示用粒子に対して、その電気特性の安定化や繰り返し表示書き換えを行った場合の耐久性を改善する意図で、表示用粒子の母体となる大きな粒子に、他の微小粒子を付加した、いわゆる複合型の粒子に係る技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術は、母粒子の表面に子粒子を付加した複合型の表示用粒子、およびこれを用いる情報表示用パネルについて開示する。所定条件の子粒子を母粒子に付加した形態とすることで、表示書き換えのために表示用粒子を繰り返し移動させた場合の耐久性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/050606号パンフレット
【特許文献2】特開2006−72283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表示用粒子の基板への付着を長期間維持するためには、高付着力、すなわち高帯電量の表示用粒子が求められ、また、子粒子を母粒子と複合化する際には、一定の粒子強度が求められる。しかしながら、高帯電量・高強度の子粒子を得るために多量の架橋性モノマーを添加して子粒子を製造した場合、多量の凝集塊が生成してしまい、収率に著しい悪影響を与えてしまう。
【0007】
本発明は、高帯電量かつ高強度の樹脂微粒子を高収率で製造する樹脂微粒子の製造方法及びそれによって得られる樹脂微粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、重合成分の一部を重合させて粒子核を形成させる予備重合工程と、残りの重合成分を添加して重合させる本重合工程とを順に行うことで、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1]母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法であって、
分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー及び分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを含む重合成分の一部を重合させて粒子核を形成させる予備重合工程と、残りの重合成分を添加して重合させる本重合工程とをこの順に行い、
前記予備重合工程及び前記本重合工程における重合性モノマー及び架橋性モノマーの合計に対する架橋性モノマーの割合を25質量%以上とすることを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
[2]前記本重合工程において、前記残りの重合成分の添加が複数回行われる[1]に記載の樹脂微粒子の製造方法。
[3]前記分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーが、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル及びエチレングリコールジメタクリレートから選択される少なくとも一種である[1]又は[2]に記載の樹脂微粒子の製造方法。
[4]前記分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマーが、ビニル基を1つ有するモノマーである[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
[5]前記予備重合工程及び前記本重合工程が、乳化重合法により行われる[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
[6]少なくとも重合反応終了直前の回に添加される重合成分における架橋性モノマーの比率が30質量%以上50質量%以下である[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
[7]母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子であって、
[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法を用いて製造される樹脂微粒子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高帯電量の樹脂微粒子を高収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明により得られる樹脂微粒子を用いて構成された表示用粒子の一例を説明するための模式図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ情報表示用パネルの一例を示す拡大断面図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ情報表示用パネルの他の一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の理解を容易にするために、先ず、本発明に係る樹脂微粒子(子粒子)を用いた表示用粒子の概要について説明し、次いで、本発明に係る樹脂微粒子及びその製造方法を説明し、その後に、上記表示用粒子の詳細及びこの表示用粒子を用いた情報表示用パネルについて説明する。
【0012】
<表示用粒子の概要>
図1は、後述する本発明に係る樹脂微粒子を用いて構成された複合型の表示用粒子の一例を示す模式図である。
【0013】
図1において、表示用粒子31は、母粒子32表面に本実施形態に係る樹脂微粒子33を固着してなる。すなわち、母粒子32の表面に樹脂微粒子33を固着させて複合型の表示用粒子31として構成される。
ここで、前記「固着」とは、樹脂微粒子33が母粒子32の表面に埋設、接着、粘着などにより固定されているため、繰り返して表示書き換えを行った時に樹脂微粒子33の移動がないものを意味する。
【0014】
<樹脂微粒子及びその製造方法>
次に、本発明に係る樹脂微粒子及びその製造方法について説明する。
本発明者らは、原料重合成分として多量の架橋性モノマーを用いた場合にあっても、重合成分の一部を重合させて粒子核を形成させる予備重合工程と、残りの重合成分を添加して重合させる本重合工程とをこの順に行うことにより、高帯電量・高強度の樹脂微粒子を高収率で得ることができることを見出した。
すなわち、本実施の形態に係る樹脂微粒子の製造方法は、母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法であって、
分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー及び分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを含む重合成分の一部を重合させて粒子核を形成させる予備重合工程と、残りの重合成分を添加して重合させる本重合工程とをこの順に行い、
前記予備重合工程及び前記本重合工程における重合性モノマー及び架橋性モノマーの合計に対する架橋性モノマーの割合を25質量%以上とすることを特徴とする。
上記の樹脂微粒子の製造方法について、以下に詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る樹脂微粒子の製造方法においては、先ず、分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー及び分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを含む重合成分の一部を重合させて粒子核を形成させる予備重合工程と、残りの重合成分を添加して重合させる本重合工程とをこの順に行う。
上記重合性モノマー及び架橋性モノマーの合計に対する架橋性モノマーの比率は、25質量%以上80質量%以下であると好ましく、30質量%以上70質量%以下であるとより好ましい。架橋性モノマーの含有量を上記範囲とすることにより、樹脂微粒子の硬度を十分高くすることができ、また、前述の樹脂微粒子における未反応のビニル基量を所望の範囲とすることができる。
上記本重合工程においては、前記重合成分を一括して、あるいは複数回に亘って添加することができるが、複数回の添加を行うと、架橋性モノマーの濃度を均一に維持しやすいため、凝集塊の生成を抑制する観点から好ましい。本重合工程における重合成分の添加は、2〜6回に分割して行うことが好ましく、3〜4回に分割して行うことがより好ましい。
また、各回において添加される重合成分における架橋性モノマーの比率も、上記範囲内にあることが好ましいが、特に重合反応終了直前の回や、さらにその直前の回において添加される重合成分における架橋性モノマーの比率は、30質量%以上50質量%以下であると好ましい。重合終了間際に添加される重合成分における架橋性モノマーの比率が30質量%以上であると、本発明の効果が効果的に発現し、架橋性モノマーの比率が50質量%以下であると、ビニル基残存率が少なくなり、光照射下における帯電特性の劣化を防ぐ観点から好ましい。
【0016】
上記樹脂微粒子は、架橋オレフィン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂及び架橋エポキシ樹脂から選択される1つ以上の架橋樹脂を含むことが好適である。これらの架橋樹脂を含むことにより、樹脂微粒子における硬度を十分に高くすることができ、またこれらの架橋樹脂を含むことにより、帯電性、帯電安定性にも優れた帯電性樹脂微粒子を得ることができる。
上記架橋樹脂は、架橋スチレン樹脂又は架橋アクリル樹脂を含むことがより好ましい。
【0017】
前記分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン及びα−クロロスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸シクロヘキシル等のアクリル系モノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル系モノマー;ビニルシクロヘキサン等のシクロオレフィン系モノマー;ビニルナフタレン、4−ビニルフェニル、等のビニル基を1つ有するモノマーなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数種組み合わせて使用してもよい。
【0018】
架橋性モノマー(架橋剤)としては、樹脂微粒子の強度の観点から、分子中にビニル基を2つ以上有する化合物が用いられる。この架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数種組み合せて使用してもよい。
【0019】
前記予備重合工程及び前記本重合工程は、乳化重合法や非水分散重合法等に従って行うことができ、具体的には、乳化重合法としては界面活性効果を有する乳化剤を用いて、適宜選択した溶媒中で、重合開始剤の存在下で行うことができる。重合に用いる溶媒は、特に限定されず、通常の乳化重合法で用いられる溶媒を使用することができ、例えば、精製水や精製水とメタノールとの任意比率の混合液等が挙げられる。
また、前記非水分散重合法としては上記モノマー、重合開始剤及び分散安定剤を適切な溶媒に溶解させた溶液を所定の温度下に置いて、上記モノマーを重合させる。得られた重合溶液を濾過し、適宜選択した溶媒で洗浄した後、遠心分離機等によって微小粒子を回収し、所定の温度のオーブン等で乾燥させることによって、樹脂微粒子を得ることができる。
【0020】
なお、樹脂微粒子製造の際に採用する乳化重合は、従来において粒子を製造する際に用いた要領で同様に実施すればよく、場合により、乳化剤を使用しても、使用しなくてもよい。乳化剤を使用する場合には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸アンモニウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸アンモニウムなどの直鎖および分岐アルキル硫酸エステル塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ミリスチルスルホン酸ナトリウム、ミリスチルスルホン酸アンモニウム、セチルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸アンモニウム、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸アンモニウム、オレイルスルホン酸ナトリウム、オレイルスルホン酸アンモニウムなどの直鎖および分岐アルキルスルホン酸塩;α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸アンモニウムなどのα−オレフィンスルホン酸塩;ノニルフェノール硫酸エステルナトリウム塩、ノニルフェノール硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルフェノール硫酸エステルナトリウム塩(ラウリル硫酸エステルナトリウム塩)、ドデシルフェノール硫酸エステルアンモニウム塩(ラウリル硫酸エステルアンモニウム塩)などのアルキルフェノール硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム(ラウリルベンゼンスルホン酸アンモニウム)などのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸アンモニウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸塩;ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム(ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム)などのアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩などのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩などのポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体のドデシルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレンブロック共重合体のドデシルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩などのポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のアルキルエーテルの硫酸エステル塩等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種類以上を組合せて使用してもよい。
【0021】
上記重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素水、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネイト、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、及びt−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス[2−(トリフルオロメチルスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)]プロパン、2,2’−アゾビス[2−(2−メチルイミダゾリン−2−イル)]プロパン塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−メチルイミダゾリン−2−イル)]プロパン硫酸塩、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2’−アゾビス[2−(トルエンスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2’−アゾビス[2−(ベンゼンスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン等のイミダゾリン基を有するアゾ開始剤;4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルピリジン)アミド]等のピリジン基を有するアゾ開始剤;4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルアミン)アミド]、4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルシクロヘキシルアミン)アミド]、2,2−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアミノ基を有するアゾ開始剤;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のその他のアゾ開始剤が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種類以上を組合せて使用してもよい。
これらの中で、乳化重合下での反応性の高さから、アゾ開始剤が好ましく、帯電性への影響を少なくする必要性から、末端に水酸基を持ったアゾ化合物がより好ましい。また、上記重合開始剤の使用量としては、モノマー量に対し、0.03〜5質量%の範囲で用いられるのが好ましい。なお、前記重合開始剤は重合の初期に一括で投入してもよいし、重合中に追加してもよい。
【0022】
また、上記分散安定剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合物、ポリオキシエチレンポリイソプレン共重合物、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリシクロヘキサン、ポリトリシクロデシルメタクリレート、ポリ−4−メチルペンテン−1、シクロオレフィン重合物、エチレン−シクロオレフィン共重合物等が挙げられる。シクロオレフィン重合物としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、クロロノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、シクロヘキシルノルボルネン、ジシクロヘキシルノルボルネン、フェニルノルボルネン、ジフェニルノルボルネン、ピリジニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びそのアルキルもしくはアリール置換体、トリシクロペンタジエン及びそのアルキルもしくはアリール置換体、テトラシクロドデセン及びそのアルキルもしくはアリール置換体等が挙げられる。
【0023】
前記予備重合工程は、重合成分の重合転化率が10〜100質量%となるまで実施し、残りの重合成分の少なくとも一部を添加して本重合工程を行うことが好ましい。重合転化率がこの範囲内であると、凝集塊の生成を低減することが可能となると共に、重合反応後に未重合の成分量を少なくすることができる。この観点からは、この重合転化率は、より好ましくは30〜100質量%であり、更に好ましくは50〜100質量%である。なお、重合転化率とは、予備重合工程で添加される重合性モノマー及び架橋性モノマーを全て含む重合成分全体の重合転化率のことを意味する。
この重合転化率は、重合反応の反応時間を変化させることによって所定値に制御することができる。
例えば、予備実験として、所定の配合の重合成分について、所定の重合温度で、反応時間のみを異ならせて複数の重合反応を実施し、重合転化率を測定する。この予備実験で得られた反応時間と重合転化率との関係に基づいて、上記所定の重合転化率とするために必要な反応時間を導出することができる。
【0024】
前記重合における重合温度は、好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは60〜110℃である。また、重合の反応時間は、上述のように目的とする重合転化率に応じて設定することができるが、例えば、予備重合工程においては好ましくは1〜10時間、さらに好ましくは2〜6時間であり、本重合工程においては好ましくは1〜16時間、さらに好ましくは2〜12時間である。
【0025】
重合の停止は、重合停止剤の添加及び重合温度の低下により行うことが好ましい。
上記重合停止剤としては、ハイドロキノン等のキノン系材料、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバミン酸塩類、4−ターシャリー・ブチルカテコール等のフェノール系材料、ジエチルヒドロキシルアミン等が好適に用いられる。これらの重合停止剤は単独で用いてもよく、複数種組み合せて用いてもよい。
重合停止剤の添加量は、その種類によって適宜選択されるが、例えば重合成分に対して0.5〜3mol%程度である。重合停止温度は、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは0〜40℃である。
【0026】
上述したようにして重合の停止を行った後、得られた重合溶液を濾過し、適宜選択した溶媒(例えばメタノール、アセトン、n−ヘキサン等)で洗浄し、次いで遠心分離を行うことによって重合物(微粒子)を回収し、適宜選択した温度及び乾燥期間、例えば60〜120℃で2〜24時間乾燥させることによって樹脂微粒子を得ることができる。
なお、本実施形態における樹脂微粒子を乳化剤を用いた乳化重合や界面活性剤を用いた分散重合により作製する場合、前記溶媒による洗浄により、樹脂微粒子における残存乳化剤や残存界面活性剤量は500ppm以下とすることが好ましく、2000ppm以下とすることがより好ましい。
【0027】
上記で得られる樹脂微粒子の平均粒子径は、50〜500nmの範囲とすることが好ましく、80〜350nmの範囲とすることがより好ましい。樹脂微粒子の平均粒子径が50nm以上であると、母粒子への樹脂微粒子の埋め込みの進行が早くなり過ぎることが防止され、複合構造を有する粒子として十分な使用耐久性能が得られる。一方、樹脂微粒子の平均粒子径が500nm以下であると、樹脂微粒子としての埋め込みが良好になり、複合構造を有する粒子を良好に作製できる。
【0028】
(未反応基量の低減処理工程)
前記の樹脂微粒子中に、未反応のビニル基が存在している場合には、この未反応ビニル基量を低減させる処理を実施してもよい。当該処理としては、樹脂微粒子中の未反応のビニル基を酸化あるいは付加反応させることにより、その量を低減できる処理であれば特に制限されないが、例えばオゾン処理、加熱処理、再付加反応処理、電子線処理、過酸化水素処理等を挙げることができる。
【0029】
前記オゾン処理は、重合、乾燥後の微粒子をオゾン雰囲気中に晒すことにより、未反応のビニル基を酸化させる処理である。処理条件としては、例えばオゾン濃度50ppm以上の雰囲気下、室温で4時間以上放置することが好ましい。
前記加熱処理は、重合、乾燥後の微粒子を空気中で加熱し、未反応のビニル基を酸化させる処理である。処理条件としては、例えば加熱温度を190℃以上250℃以下の雰囲気下で4時間以上放置することが好ましい。
【0030】
前記再付加反応処理は、樹脂微粒子を再分散させた溶液に重合開始剤等を再度投入し、未反応のビニル基を再付加反応させる処理である。処理方法としては、前記反応液に重合開始剤等のラジカル発生剤を投入し加熱して反応を進行させる。この場合、当該ラジカル発生剤等を微粒子中に含浸させることが好ましく、その観点からは有機溶剤を併用することが望ましく、例えば前記ラジカル発生剤等をトルエンに溶解させたものを前記反応液中に投入する方法をとってもよい。添加するラジカル発生剤等の添加量は樹脂微粒子に対し20質量%以下とすることが好ましい。
前記過酸化水素処理は、重合終了後の反応液に過酸化水素を投入し、未反応のビニル基を酸化反応させる処理でもよく、樹脂微粒子を過酸化水素を含む溶液と再分散して処理を行ってもよい。処理方法は、上記再付加反応処理におけるラジカル発生剤等を過酸化水素とする以外はほぼ同様である。
【0031】
上記未反応基量の低減処理によるビニル基量の低減の度合いは、樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルの解析により判断することができる。
すなわち、前記赤外分光吸収スペクトルにおける1630cm-1の吸収(ピーク)がビニル基に由来するため、ベンゼン環に由来する1600cm-1の吸収強度を100%、1640cm-1の吸収強度を0%として規格化したとき、1630cm-1の吸収強度(%)は粒子中の残存ビニル基量に比例する。
【0032】
本実施形態では、1630cm-1の吸収強度を10%以下となるまで加熱酸化処理することが好ましい。前記吸収強度が10%以下であれば、本実施形態の樹脂微粒子を用いてなる複合型の表示用粒子を用いた情報表示用パネルにおいて表示書き換えを繰り返し行ったときに、表示用粒子の帯電性を安定化させることができ、それによって該表示用粒子の繰り返し表示書き換え時の耐久性、さらには前記情報表示用パネルの表示安定性を向上させることが可能となる。
前記1630cm-1の吸収強度は8%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましい。理想的には下限は0%である。
【0033】
以上説明した工程を経ることにより、本実施形態の樹脂微粒子を得ることができるが、本実施形態の樹脂微粒子の製造方法は、前記樹脂微粒子作製工程を少なくとも有していればよく、その他の工程を含んでもよい。該その他の工程としては、特に制限されるものではない。
【0034】
<表示用粒子の詳細>
前述のように、本実施形態に係る製造方法により得られた樹脂微粒子は、図1に示すような樹脂微粒子が母粒子表面に付着または固着されてなる表示用粒子の当該樹脂微粒子として用いられる。以下、前記樹脂微粒子を用いた表示用粒子について説明する。
図1における母粒子32には、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ませることができる。以下に、樹脂、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0035】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、メチルペンテン樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルペンテン樹脂、シクロオレフィン系樹脂が好適である。
【0036】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0037】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
【0038】
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
【0039】
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0040】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。また、上記着色剤を配合して所望の色の表示用粒子を作製できる。
【0041】
母粒子33を得るためには、まず、前記樹脂を凍結粉砕機で粉砕し、これを乾燥、秤量する。これと並行して、樹脂に配合する配合剤(例えば二酸化チタン)を準備してこれを秤量する。秤量したベース樹脂と配合剤とをへンシェルミキサーで予備混合し、これを乾燥してから、2軸混練り機を用いて混練りして押出して、例えば直径2mm、長さ5mm程度のペレットを製造する。
次いで上記ペレットを、更に凍結粉砕機で例えば粒子径100〜250μm程度となるよう粗粉砕して粗粉砕品を得る。この粗粉砕品を乾燥してから、粒子径が8〜10μm程度となるように微粉砕処理し、分級して目的サイズの母粒子を得る。ここまでの工程は、常法により樹脂原料を混練り、粉砕、分級して母粒子を得るものと同様である。
【0042】
後述する母粒子32表面に樹脂微粒子33を均一に付加するには、母粒子32に熱処理を施して球状化することが有効である。このため本実施形態では、上記のように得た母粒子を更に熱処理装置で処理する。ここでの熱処理装置は、例えば粒子を熱風中に噴出し、分散させ、熱風により該粒子を溶融状態とし、表面張力により球状化させるものである。上記熱処理装置としては、溶融球状化装置(MR−3、日本ニューマチック工業(株)製)等を用いることができる。
このように熱処理(サフュージョン処理)を施した処理済母粒子は、その表面に樹脂微粒子を付加するとき(樹脂微粒子複合化処理をするとき)に、いわゆる樹脂微粒子の自己組織化配列(Ordered Mixture)が円滑に進行して、母粒子表面に樹脂微粒子が均一に配置付加できる。よって、樹脂微粒子複合化処理で、球形母粒子の表面に樹脂微粒子が均一配置付加されている理想的形状の複合型粒子を製造できる。
【0043】
表示用粒子31は、上記のようにして得た母粒子32に本実施形態による樹脂微粒子33を埋設(固着)することによって得られる。埋設は、母粒子32と樹脂微粒子33とを、高速攪拌機を用いて混合・攪拌することによって行うことができる。高速攪拌機としては、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山社製)、スーパーミキサー(商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(商品名、三井鉱山社製)、メカノフュージョンシステム(商品名、ホソカワミクロン社製)、ノビルタミル(商品名、ホソカワミクロン(株)製)、メカノミル(商品名、岡田精工社製)、ハイブリダイザー(商品名、奈良機械製作所製)等が挙げられる。
【0044】
上記母粒子32に樹脂微粒子33を埋設することによって得られる複合型粒子(表示用粒子)には、無機物微粒子を外添剤として表面処理することができる。
上記外添剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、窒化チタン等が挙げられる。この中ではシリカ、酸化チタンが好ましい。また、これらの無機物微粒子の平均一次粒径は、1〜300nmの範囲が好ましく、5〜100nmの範囲がより好ましい。また、必要に応じ、これら無機微粒子に表面処理を施したものを使用しても良い。
【0045】
得られた表示用粒子は、平均粒子径dが、1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径dがこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠ける場合があり、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示用粒子としての移動に支障をきたすようになる場合がある。
【0046】
また、前記表示用粒子の粒子径分布に関しては、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満とすることが好ましく、3未満とすることがより好ましい。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(上記式中、d(0.5)は粒子の50体積%がこれより大きく、50体積%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10体積%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90体積%である粒子径をμmで表した数値である。)
上記式で表されるSpanを5未満に収めることにより、各表示用粒子のサイズが揃い、均一な表示用粒子としての移動が可能となる。
【0047】
さらにまた、帯電極性が互いに異なる2種類の表示用粒子を用いた情報表示パネルを使用する場合には、使用した情報表示パネルを構成する表示用粒子の内、最大の平均粒子径d(0.5)を示す表示用粒子のd(0.5)に対する最小の平均粒子径d(0.5)を示す表示用粒子のd(0.5)の比を3以下とすることが好ましい。すなわち、上記のようにたとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる表示用粒子が互いに反対方向に動くので、互いの表示用粒子サイズを同程度にして容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0048】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。すなわち、測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。ここで、本実施形態における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0049】
<情報表示用パネル>
次に、上記の実施形態の樹脂微粒子を用いた表示用粒子を使用した情報表示用パネルの例を、図2、図3に基づき説明する。
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率と帯電性とを有する粒子群として構成される、互いに光学的反射率および帯電特性が異なる表示用粒子を少なくとも2種以上(ここでは白色表示用粒子3Waを含んで構成した白色表示粒子群3Wと黒色表示用粒子3Baを含んで構成した黒色表示粒子群3Bを示す)基板間に封入し、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(TFT付き画素電極)と基板2に設けた電極6(画素電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、各表示用粒子を基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように、白色表示粒子群3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図2(b)に示すように、黒色表示粒子群3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0050】
また、図3(a)、(b)に示す例では、光学的反射率と帯電性とを有する粒子群として構成される、互いに光学的反射率および帯電特性が異なる表示用粒子を少なくとも2種以上(ここでは白色表示用粒子3Waを含んで構成した白色表示粒子群3Wと黒色表示用粒子3Baを含んで構成した黒色表示粒子群3Bを示す)基板間に封入し、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(ライン電極)と基板2に設けた電極6(ライン電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、表示用粒子を基板1、2と垂直に移動させる。そして、図3(a)に示すように、白色表示粒子群3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図3(b)に示すように黒色表示粒子群3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図3(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0051】
また、図示しないが、少なくとも光学的反射率と帯電性とを有する粒子群として構成される表示用粒子を1種(例えば白色表示用粒子を含んで構成した白色表示粒子群)を、一方の基板に黒色板を設けた基板間に封入し、各基板に設けた電極間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、表示用粒子を基板1、2と平行方向に移動させることにより、白色表示粒子群を観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、黒色板の色を観察者に視認させて黒色ドット表示を行ってもよい。
【0052】
また、図2、図3において、基板1、2の各々の外側に外部電界形成手段を設け、該外部電界形成手段間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、表示用粒子を基板1、2と垂直に移動させ、同様に白色ドット表示、あるいは、黒色ドット表示を行うこともできる。
さらに、図2、図3における3つのセルの観察者側に、図の左側から順に赤色カラーフィルター、緑色カラーフィルター、青色カラーフィルターを設けてこれら3つのセルで表示単位を構成して、同様に白色ドット表示、あるいは、黒色ドット表示を行い、各セルにおける表示のさせ方を変えることにより多色カラー表示を行うこともできる。
【0053】
以下、上記情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
前記基板については、少なくとも一方の基板は情報表示用パネル外側から表示用粒子の色が確認できる透明な基板2であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。基板1は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適である。2μmより薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0054】
必要に応じて情報表示用パネルに電極を設ける場合の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類;酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、アンチモン錫酸化物(ATO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、金属箔(例えば圧延銅箔)をラミネートする方法や、導電部材を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。視認側であり透明である必要のある表示面側基板2に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板1に設ける電極は透明である必要はない。いずれの場合もパターン形成可能で導電性である上記材料を好適に用いることができる。
なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmである。背面側基板1に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。
【0055】
必要に応じて基板に設ける隔壁4については、その形状は表示にかかわる表示用粒子の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μmの範囲、好ましくは3〜50μmの範囲に、隔壁の高さは10〜500μmの範囲、好ましくは10〜200μmの範囲に調整される。
また、隔壁4を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。本実施形態では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0056】
これらのリブからなる隔壁4により形成されるセルは、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示の鮮明さが増す。
ここで、隔壁4の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0057】
さらに、表示用粒子で構成する表示粒子群を気体中空間で駆動させる方式の情報表示用パネルに適用する場合には、基板間の表示粒子群を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下とすることが好ましく、50%RH以下とすることがより好ましい。この空隙部分とは、図2、図3において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示粒子群3の占有部分、隔壁4の占有部分(隔壁を設けた場合)、情報表示用パネルシール部分を除いた、いわゆる表示粒子群が接する気体部分を指すものとする。
【0058】
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示用粒子の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが好ましい。
【0059】
情報表示用パネルにおける基板1と基板2との間隔は、表示粒子群が移動できて、コントラストを維持できればよいが、帯電性の表示用粒子を含んで構成した表示粒子群を気体中空間で駆動させる場合には、通常10〜100μmの範囲、好ましくは10〜50μmの範囲に調整される。対向する基板間の気体中、空間における表示粒子群の体積占有率は5〜70%の範囲が好ましく、さらに好ましくは5〜60%の範囲である。70%を超えると表示粒子群の移動に支障をきたす場合があり、5%に満たないとコントラストが不明確となり易い場合がある。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、測定評価法は以下の通りに実施した。
【0061】
(樹脂微粒子)
<圧縮変形率>
(高温(175℃)圧縮変形率)
正帯電性子粒子等の変形率は、子粒子の変形性の程度の指標として、以下のように測定した。具体的にはフローテスター(CFT−500D:島津製作所製)の試料充填室の底を封じて、試料1.0gを投入し、試料を175℃に加熱した状態で、その試料に300kg/cm2(2.94×107Pa)の荷重を加え、下記式(1)にて変形率を算出した。
変形率(%)={〔最密充填高さ(mm)−加重後の高さ(mm)〕/最密充填高さ(mm)}×100 ・・・(1)
なお、最密充填高さとは、前記試料を投入して子粒子が変形せずに球状に保ったまま、最密充填した時の高さであり、下記式(2)から算出される。
最密充填高さ(cm)=投入した子粒子重量(g)/子粒子の比重(g/cm3)/フローテスター充填室の底面積(cm2) ・・・ (2)
(硬度の判定)
上記高温(175℃)圧縮変形率が30%以下の場合をOK、30%を超える場合をNGとした。
(複合化の可否の判定)
また、複合化後の子粒子の変形程度は、走査型電子顕微鏡(JSM−7500F、日本電子(株)製)を用いて、複合粒子総個数が200個となるように写真を撮影し、複合粒子の子粒子の形状を目視により、変形した子粒子を含む複合粒子の数を求め、その割合から、変形した子粒子を含む複合粒子の数が10%未満であれば(可)、10%以上であれば(変形)と判断した。
【0062】
<ゼータ電位>
正帯電性子粒子等のゼータ電位は、試料0.02gを入れたサンプル瓶に、10cm3のメタノールを入れ、10分間超音波洗浄機にて分散させた後、シメックス株式会社製ゼータサイザーナノシリーズを用いて測定した。
【0063】
<ビニル基残存率>
樹脂微粒子等に残存するビニル基(ビニル基残存率)は以下に示すようにして測定した。
赤外分光計((株)デジラボ製、FTS7000)を用い、粒子の赤外吸収スペクトルを測定する。1600cm-1の吸収量を100%、1640cm-1の吸収量を0%として規格化し、それに対する1630cm-1の吸収量からビニル基残存率を求めた。
【0064】
(複合粒子)
<摩擦帯電量>
複合粒子の摩擦帯電量は下記装置を用い、下記の条件にて一般的なブローオフ法に基づいて測定した。
・測定装置:ブローオフ方式帯電量測定機(京セラケミカル社製、TB−203)
・メッシュアパーチャ:32[μm]
・ブロー圧/サクション圧:4.5[kPa]/9.5[kPa]
・キャリア:F96−80(パウダーテック社製)
・振とう回数:1000回
【0065】
<電荷保持率>
複合粒子の電荷保持特性(電荷保持率)は、下記に示す条件にて測定した。
(1)銅セルに粒子を層厚300(μm)で充填する。
(2)スコロトロン帯電器(ニードル印加電圧:±10(kV)、グリッド電圧:±1(kV))により粒子表面電位が±1(kV)となるように電荷を付与する。
(3)グラウンド(GND)結線し、室温(22℃)、50RH%にて測定開始する。24時間後経過した時の表面電位を初期表面電位で割ったものを電荷保持率(%)とした。
電荷保持特性の判断は、複合粒子の電荷保持率が90(%)以上であれば、電荷保持特性が高いと判断した。
【0066】
<原料>
また、本実施例及び比較例では、以下の原料を使用した。
重合性モノマー:スチレン(東京化成工業株式会社製)
架橋性モノマー:ジビニルベンゼン(DVB)「DVB−960」 (新日鐵化学株式会社製)
正帯電性モノマー:2−ビニルピリジン(東京化成試薬製)
乳化剤 :ドデシル硫酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)
重合開始剤 :2,2’−Azobis[2−methyl−N−(2−hydroxyethyl)propionamide]「VA−086」(和光純薬工業株式会社製)
【0067】
<実施例及び比較例>
【0068】
(樹脂微粒子の作製)
実施例1
3口フラスコに、上記重合開始剤(VA−086)1.2g、上記乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.6g、精製水500g(家田ケミカル株式会社製)の順に加え、重合開始剤及び乳化剤を溶解させた。上記スチレン及びジビニルベンゼンの質量比3:2の混合溶液80gを加えた後、ホモジナイザーを使用し、室温にて3000rpm、5分間プレ乳化を行った後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。次に、フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、90℃で予備重合を行った。予備重合開始から2時間後、4時間後、6時間後に、それぞれ精製水140gに乳化剤0.2g、並びにスチレン及びジビニルベンゼンの質量比3:2の混合液40gを加え乳化した溶液を添加し、予備重合開始から9時間重合して、樹脂微粒子が分散した白濁の重合分散液を得た。
尚、予備重合後の重合転化率(質量%)を、以下のようにして求めた。その結果を表1に示す。
(重合転化率の測定)
所定の時間に到達後、3口フラスコから反応液を5g程度抜き取り、バイアル瓶に移したものを室温まで急冷した。その後、アルミカップに反応液を3g程度秤量し、熱風オーブン(アドバンテック社製、DRA430DA)を用いて120℃で1時間乾燥させ、残ったポリマーの重量を測定した。下記式(a)により反応液中のポリマー固形分率を算出し、下記式(b)により重合転化率を算出した。
【数1】

【0069】
この分散液1000gにメタノール800gを加え、5分間撹拌した後に遠心分離機(コクサン(株)製、HL−7)を用いて、6900rpmで1時間遠心分離を行った。1時間後、固形分(樹脂微粒子)と溶液とに固液分離がなされており、溶液は透明であった。溶液を除去した後、メタノール400gを加え、2時間撹拌した後、遠心分離機を用いて、6900rpmで15分間遠心分離を行い、上澄液を除去した。この操作をさらに4回繰り返した後、80℃で1日真空乾燥し、その後樹脂微粒子30gをガラスシャーレ(直径20cm)に入れ、熱風オーブン(アドバンテック社製、DRA430DA)を用いて、200℃で8時間加熱処理を行った。加熱処理後、樹脂微粒子を回収し、樹脂微粒子を得た。
上述する測定評価方法により、得られた樹脂微粒子の性状を評価した。その結果を表1に示す。
【0070】
(白色母粒子の作製)
エチレン−シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチック(株)製、TOPAS6013)100質量部と二酸化チタン(石原産業(株)製、タイペークCR−50)100質量部とを混合し、2軸混練機で混練して混練物を得た。これをジェットミル(日本ニューマチック(株)製、ラボジェットミルIDS−LJ型)で粉砕分級することにより、平均粒子径10μmの白色母粒子を得た。
【0071】
(複合粒子の作製)
上記で得られた樹脂微粒子を子粒子とし、これと母粒子とからなる複合粒子を作製した。
複合粒子は、母粒子として前述の平均粒子径10μmのエチレン−シクロオレフィンコポリマー球状粒子、子粒子として上記で得られた樹脂微粒子を用い、複合化装置(ホソカワミクロン株式会社製、ノビルタミル(NOB−130))を用いて、投入エネルギーが2400kJとなるようにして母粒子に子粒子を埋設して複合化することにより作製した。
上述する測定評価方法により、得られた複合粒子の性状を評価した。その結果を表1に示す。
【0072】
実施例2
(樹脂微粒子の作製)
3口フラスコに、上記重合開始剤(VA−086)1.2g、上記乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.6g、精製水500g(家田ケミカル株式会社製)の順に加え、重合開始剤及び乳化剤を溶解させた。上記スチレン及びジビニルベンゼンの質量比4:1の混合溶液80gを加えた後、ホモジナイザーを使用し、室温にて3000rpm、5分間プレ乳化を行った後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。次に、フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、90℃で予備重合を行った。重合開始から2時間後、精製水140gに対し、乳化剤0.2g、並びにスチレン及びジビニルベンゼンの質量比3:2の混合液40gを加え乳化した溶液を添加し、継続して本重合を行った。また、予備重合開始から4時間後、6時間後に、それぞれ精製水140gに乳化剤0.2g、スチレン及びジビニルベンゼンの質量比2:3の混合液27.5gを加え乳化した溶液を添加し、予備重合開始から9時間重合して、樹脂微粒子が分散した白濁の重合分散液を得た。実施例1と同様に洗浄、乾燥、残存ビニル基の加熱処理を行い、上述する測定評価方法により、得られた樹脂微粒子の性状を評価した。その結果を表1に示す。
(複合粒子の作製)
実施例1と同様にして複合粒子を作製し、その性状を評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
実施例3
(樹脂微粒子の作製)
3口フラスコに、上記重合開始剤(VA−086)1.2g、上記乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.6g、精製水500g(家田ケミカル株式会社製)の順に加え、重合開始剤及び乳化剤を溶解させた。上記スチレン及びジビニルベンゼンの質量比3:1の混合溶液90gを加えた後、ホモジナイザーを使用し、室温にて3000rpm、5分間プレ乳化を行った後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。次に、フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、90℃で予備重合を行った。重合開始から2時間後、精製水140gに対し、乳化剤0.2g、並びにスチレン及びジビニルベンゼンの質量比3:2の混合溶液55gを加え乳化した溶液を添加し、継続して本重合を行った。また、予備重合開始から4時間後、6時間後に、それぞれ精製水140gに乳化剤0.2g、スチレン及びジビニルベンゼンの質量比3:2の混合溶液27.5gを加え乳化した溶液を添加し、予備重合開始から9時間重合して、樹脂微粒子が分散した白濁の重合分散液を得た。実施例1と同様に洗浄、乾燥、残存ビニル基の加熱処理を行い、上述する測定評価方法により、得られた樹脂微粒子の性状を評価した。その結果を表1に示す。
(複合粒子の作製)
実施例1と同様にして複合粒子を作製し、その性状を評価した。その結果を表1に示す。
【0074】
比較例1
使用するスチレンの量を100g、ジビニルベンゼンの量を100gにそれぞれ変更し、重合開始剤、乳化剤、精製水、スチレン及びジビニルベンゼンの全量を一括して3口フラスコに仕込み、重合を開始した以外は実施例1と同様にして樹脂微粒子及び複合粒子を製造し、得られた樹脂微粒子及び複合粒子の性状を評価した。その結果を表1に示す。
【0075】
比較例2
使用するスチレンの量を134g、ジビニルベンゼンの量を66gにそれぞれ変更し、重合開始剤、乳化剤、精製水、スチレン及びジビニルベンゼンの全量を一括して3口フラスコに仕込み、重合を開始した以外は実施例1と同様にして樹脂微粒子及び複合粒子を製造し、得られた樹脂微粒子及び複合粒子の性状を評価した。その結果を表1に示す。
【0076】
比較例3
(樹脂微粒子の作製)
3口フラスコに、上記重合開始剤(VA−086)1.2g、上記乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.6g、精製水500g(家田ケミカル株式会社製)の順に加え、重合開始剤及び乳化剤を溶解させた。上記スチレン及びジビニルベンゼンの質量比7:1の混合溶液80gを加えた後、ホモジナイザーを使用し、室温にて3000rpm、5分間プレ乳化を行った後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。次に、フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、90℃で予備重合を行った。重合開始から2時間後、精製水140gに対し、乳化剤0.2g、並びにスチレン及びジビニルベンゼンの質量比6:1の混合液70gを加え乳化した溶液を添加し、継続して本重合を行った。また、予備重合開始から4時間後、6時間後に、それぞれ精製水140gに乳化剤0.2g、スチレン及びジビニルベンゼンの質量比3:2の混合液25gを加え乳化した溶液を添加し、予備重合開始から9時間重合して、樹脂微粒子を製造し、得られた樹脂微粒子及び複合粒子の性状を評価した。その結果を表1に示す。
(複合粒子の作製)
実施例1と同様にして複合粒子を作製し、その性状を評価した。その結果を表1に示す。
【0077】
比較例4
3口フラスコに、上記重合開始剤(VA−086)1.2g、上記乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.8g、精製水500g(家田ケミカル株式会社製)の順に加え、重合開始剤及び乳化剤を溶解させた。上記スチレン及びジビニルベンゼンの質量比16:1の混合溶液85gを加えた後、ホモジナイザーを使用し、室温にて3000rpm、5分間プレ乳化を行った後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。次に、フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、90℃で予備重合を行った。重合開始から2時間後、精製水140gに対し、乳化剤0.2g、並びにスチレン及びジビニルベンゼンの質量比6:1の混合溶液35gを加え乳化した溶液を添加し、継続して本重合を行った。また、予備重合開始から4時間後、6時間後に、それぞれ精製水140gに乳化剤0.2g、スチレン及びジビニルベンゼンの質量比3:1の混合溶液40gを加え乳化した溶液を添加し、予備重合開始から9時間重合して、樹脂微粒子を製造し、得られた樹脂微粒子及び複合粒子の性状を評価した。その結果を表1に示す。
(複合粒子の作製)
実施例1と同様にして複合粒子を作製し、その性状を評価した。その結果を表1に示す。
【0078】
【表1】


【0079】
比較例1のように、高帯電量・高強度の子粒子を得ようとして架橋剤量を増やすと、多量の凝集塊が生成してしまい、収率に著しい悪影響を与えてしまう。一方、比較例2のように、架橋剤量を低減することでビニル基残存率が低下し、表示パネルの光耐久性は向上するが、子粒子の硬度及びゼータ電位が低下してしまう。それに対し、実施例1〜3のように予備重合工程と本重合工程からなる重合手法を用いることにより、一括仕込みに比べ収率良く高帯電量・高強度の粒子の作製が可能であることが分かる。これは以下に起因するためであると考えられる。架橋剤量の増加に伴いゼータ電位の負帯電性が高くなる傾向にあるが、スチレンに比べジビニルベンゼンの重合速度が速く、一括仕込みでは、重合後期にほとんどジビニルベンゼンが反応液中に残っておらず、粒子表面の組成はスチレンが豊富な構造を形成していると考えられる。これに対し、重合途中にジビニルベンゼンを添加する(本手法を用いる)ことにより、重合後期においても反応液中にジビニルベンゼンが存在し、低架橋剤量でも帯電量や硬度を確保でき、ビニル基残存率の低減にも有利に働くと考えられる。
【0080】
実施例4
(黒色母粒子の作製)
エチレン−シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチック(株)製、TOPAS6013)100質量部とカーボンブラック(エボニック−デグッサ(株)製、SPECIAL BLACK4)5質量部とを混合し、これを2軸混練機により混練して混練物を得た。これをジェットミル(日本ニューマチック(株)製、ラボジェットミルIDS−LJ型)で粉砕分級し、次いで溶融球状化装置(メテオレインボーMR−3:日本ニューマチック工業(株)製)を用いて溶融球状化して、平均粒子径10μmの黒色母粒子を得た。
【0081】
(正帯電性子粒子の作製)
3口フラスコに、上記重合開始剤(VA−086)1.2g、上記乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.7g、精製水500g(家田ケミカル株式会社製)の順に加え、重合開始剤及び乳化剤を溶解させた。上記スチレン114g、ジビニルベンゼン66g、2−ビニルピリジン 20gを加えた後、ホモジナイザーを使用し、室温にて3000rpm、5分間プレ乳化を行った後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、90℃で9時間重合して、樹脂微粒子が分散した白濁の重合分散液を得た。
【0082】
この分散液1000gにメタノール800gを加え、5分間撹拌した後に遠心分離機(コクサン(株)製、HL−7)を用いて、6900rpmで1時間遠心分離を行った。1時間後、固形分(樹脂微粒子)と溶液とに固液分離がなされており、溶液は透明であった。溶液を除去した後、メタノール400gを加え、2時間撹拌した後、遠心分離機を用いて、6900rpmで15分間遠心分離を行い、上澄液を除去した。この操作をさらに4回繰り返した後、80℃で1日真空乾燥し、正帯電性子粒子を得た。
【0083】
(黒色表示用粒子の作製)
母粒子と子粒子とからなる複合粒子である表示用粒子を作製した。母粒子としては、前述の平均粒子径10μmの黒色母粒子を用い、子粒子としては、前述の正帯電性子粒子を用いた。複合化装置(ホソカワミクロン(株)製、ノビルタミル(NOB−130))を用い、黒色母粒子100質量部と正帯電性子粒子10質量部とを混合し、投入エネルギーが2400kJとなるようにして母粒子に子粒子を埋設して複合化し、黒色の複合粒子を作製した。
【0084】
さらに、複合粒子(1)100gと外添剤として正帯電性シリカ(WACKER社製、HDK H3050VP)4.9g(被覆率:1000%)とを予め混合した後、カーボンミキサー処理機(SMT(株)製、HFM−001C)を用い、4000rpmで撹拌して、複合粒子表面に外添剤が均一に付与するように処理を行い、黒色表示用粒子を作製した。
【0085】
(白色表示用粒子の作製)
さらに、実施例1で作製した複合粒子100gと外添剤として負帯電性シリカ(HDK H3004:WACKER社製)1.7g(被覆率:350%)とをあらかじめ混合した後、カーボンミキサー処理機(SMT(株)製:HFM−001C)を4000rpmで撹拌して、複合粒子表面に外添剤が均一付与するように処理を行い、白色表示用粒子を作製した。
【0086】
(表示パネルの作製)
表示パネルの作製は、上述のようにして作製した黒色表示用粒子と白色表示用粒子とを質量比6:8の割合で組み合わせて、透明電極(ITO)が製膜されているパネル間に、粒子充填量が5g/m2となるように充填することにより行った。なお、用いたパネルは電極間距離が40μmとなるもので、80Vの電圧印加において2×106(V/m)の電界を表示用粒子に作用させるものとなる。
得られた表示パネルについて、以下に示す耐久試験及び光耐久試験を行った。結果を表2に示す。
【0087】
[耐久試験]
上記のように作製したパネルの電極間に80Vの電圧を電圧の向きを各々逆向に印加することで、評価パネルにおいて白表示および黒表示を行った。そして、白表示及び黒表示のそれぞれにおいて、光学濃度計(サカタインクスエンジニアリング(株)製、RD19I)を用いてOD値(光学濃度)の測定を行った。白表示のOD値(WOD)及び黒表示のOD値(BOD)を元にコントラスト比(CR=10(BOD-WOD))を算出し、これをパネル性能の指標とした。80V印加での白黒反転表示駆動を1000回行った後のCRを初期CRとして評価し、耐久試験は、蛍光灯(東芝社製、パラライトフラットD65FL20)を用いて、照度が600lxとなるようにした状態で、80V印加での白黒反転表示駆動を80万回行った後のCRを測定した。
[光耐久試験]
蛍光灯の照度が4000lxとなるようにした以外は、耐久試験と同様にして測定した。
【0088】
実施例5
実施例1で作製した複合粒子に代えて、実施例2で作製した複合粒子を用いて白色表示用粒子を作製した以外は、実施例4と同様にして表示パネルを作製し、その性能を評価した。評価結果を表2に示す。
【0089】
実施例6
実施例1で作製した複合粒子に代えて、実施例3で作製した複合粒子を用いて白色表示用粒子を作製した以外は、実施例4と同様にして表示パネルを作製し、その性能を評価した。評価結果を表2に示す。
【0090】
比較例5
実施例1で作製した複合粒子に代えて、比較例1で作製した複合粒子を用いて白色表示用粒子を作製した以外は、実施例4と同様にして表示パネルを作製し、その性能を評価した。評価結果を表2に示す。
【0091】
比較例6
実施例1で作製した複合粒子に代えて、比較例2で作製した複合粒子を用いて白色表示用粒子を作製した以外は、実施例4と同様にして表示パネルを作製し、その性能を評価した。評価結果を表2に示す。
【0092】
比較例7
実施例1で作製した複合粒子に代えて、比較例3で作製した複合粒子を用いて白色表示用粒子を作製した以外は、実施例4と同様にして表示パネルを作製し、その性能を評価した。評価結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の製造方法により得られる樹脂微粒子を用いて複合化された表示用粒子を採用する情報表示用パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞、電子マニュアル(電子取扱説明書)等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板やホワイトボード等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence、Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部のほか、表示書換え時にのみ外部電界形成手段や外部書換え手段を用いて表示を書換えるいわゆるリライタブルペーパーとしても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0095】
1、2 基板
3W 白色表示粒子群
3Wa 白色表示用粒子
3B 黒色表示粒子群
3Ba 黒色表示用粒子
4 隔壁
5、6 電極
31 表示用粒子
32 母粒子
33 帯電性樹脂微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子の製造方法であって、
分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマー及び分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーを含む重合成分の一部を重合させて粒子核を形成させる予備重合工程と、残りの重合成分を添加して重合させる本重合工程とをこの順に行い、
前記予備重合工程及び前記本重合工程における重合性モノマー及び架橋性モノマーの合計に対する架橋性モノマーの割合を25質量%以上とすることを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記本重合工程において、前記残りの重合成分の添加が複数回行われる請求項1に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記分子中にビニル基を2つ以上有する架橋性モノマーが、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル及びエチレングリコールジメタクリレートから選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記分子中に1つの重合性官能基を有する重合性モノマーが、ビニル基を1つ有するモノマーである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記予備重合工程及び前記本重合工程が、乳化重合法により行われる請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項6】
少なくとも重合反応終了直前の回に添加される重合成分における架橋性モノマーの比率が30質量%以上50質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項7】
母粒子表面に樹脂微粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する樹脂微粒子であって、
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法を用いて製造される樹脂微粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−54131(P2013−54131A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191030(P2011−191030)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】