説明

樹脂微粒子及びその製造方法

【目的】乳化重合法により平均粒径が1μm未満でより粒度分布が揃った(CV値が15%以下)樹脂微粒子を提供する。
【構成】少なくともモノマー(重合性単量体)を含有する組成物を水系媒体中に乳化分散し、乳化分散したモノマーを乳化重合せしめて体積平均粒径1μm未満の樹脂微粒子を製造する方法において、重合反応中、前記モノマーを全量添加以後に、連鎖移動剤が2回以上分割添加され、且つ前記連鎖移動剤が、モノマー重合転化率が10〜80%に到達するまでにその全量が分割添加されることを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積平均粒径1μm未満で、且つ粒径分布が揃っている、好ましくは体積基準におけるメディアン径(D50)10nm以上300nm以下の範囲にあり、且つ体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が15%以下である樹脂微粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂微粒子の製造方法として、一般的に用いられる手法として乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などがある。これらの重合方法及びこの生成樹脂微粒子にはそれぞれ特徴があり、例えば、乳化重合法により生成される樹脂微粒子は、その平均粒径(体積平均粒径。以下同じ。)が通常1μm未満で、またその粒度分布は比較的揃ったものとなる。懸濁重合法により生成される樹脂微粒子は、その平均粒径が通常では数μm以上となり、またその粒度分布は非常にブロードなものとなる。更に、分散重合により生成される樹脂微粒子は、用いられる溶媒を選択することにより比較的任意に平均粒径を選択でき、且つその粒度分布は均一なものとなるが、溶媒系であるために後処理に大きな問題を残す。
【0003】
このような背景で、平均粒径が通常1μm未満の粒度分布の揃った樹脂微粒子の製造方法は、主に乳化重合法により行われているのが現状である。しかしながら、近年、平均粒径が1μm未満で、且つより粒度分布が揃った、例えば体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が15%以下の樹脂微粒子を作製することが望まれている。
【0004】
平均粒径が1μm未満でより粒度分布が揃った(CV値が15%以下)樹脂微粒子は、電子写真用トナー(コア・シェル構造トナーを含む。)、液晶表示板のギャップ調節剤、医学診断用担体、粒径測定用の標準粒子、クロマトグラフィ用充填剤、化粧品用填剤、合成皮革の風合い改善剤等、その用途は広い。例えば、特許文献1には、トナーの形状係数SF−1の標準偏差と形状係数SF−2の標準偏差がそれぞれ特定範囲内にあり、且つシェルの最大厚と最小厚との比が特定範囲内にあるコア・シェル構造のトナーが開示されており、この発明は、樹脂微粒子分散液に重合開始剤を添加した後に、連鎖移動剤を含む、モノマー混合液を、1時間ないし3時間かけて滴下する技術であるため、平均粒径1μm未満でより粒度分布が揃った(CV値が15%以下)トナー用樹脂微粒子を得ることはできなかった。
そこで、本発明の目的は、乳化重合法により平均粒径が1μm未満でより粒度分布が揃った(CV値が15%以下)樹脂微粒子を提供することにある。
【特許文献1】特開2007−57575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、平均粒径が1μm未満でより粒度分布が揃った(CV値が15%以下)樹脂微粒子は幅広い分野で望まれているが、その製造方法は難しい。そこで、本発明は、平均粒径が1μm未満でより粒度分布が揃った(CV値が15%以下)樹脂微粒子及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
1.少なくともモノマー(重合性単量体)を含有する組成物を水系媒体中に乳化分散し、乳化分散したモノマーを乳化重合せしめて体積平均粒径1μm未満の樹脂微粒子を製造する方法において、重合反応中、前記モノマーを全量添加以後に、連鎖移動剤が2回以上分
割添加され、且つ前記連鎖移動剤が、モノマー重合転化率が10〜80%に到達するまでにその全量が分割添加されることを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【0007】
2.連鎖移動剤が、一定時間間隔で分割添加されることを特徴とする前記1に記載の樹脂微粒子の製造方法。
3.連鎖移動剤が、等分量で分割添加されることを特徴とする前記1又は2に記載の樹脂微粒子の製造方法。
4.樹脂粒子が、体積基準におけるメディアン径(D50)が10nm以上300nm以下であり、且つ体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が15%以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【0008】
5.連鎖移動剤が、分配係数(logP)が1以上10以下であり、且つ連鎖移動定数(Cx)が2以上30以下であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
6.前記1〜5のいずれかに記載の製造方法によって得られた樹脂微粒子。
【発明の効果】
【0009】
前記1及び6に記載の発明によれば、従来は製造が困難視されていた樹脂微粒子、例えば、平均粒径が1μm未満でより粒度分布が揃った(CV値が15%以下)樹脂微粒子であっても、これを作製することができる。
【0010】
前記2及び3に記載の発明によれば、より微粒子でありながら粒径の揃った樹脂微粒子を作製することができる。
前記4に記載の発明によれば、樹脂粒子が、体積基準におけるメディアン径(D50)が10nm以上300nm以下であり、且つ体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が15%以下である前記1に記載の樹脂微粒子であっても、これを作製することができる。
前記5に記載の発明によれば、より効率的に前記1〜4に記載の樹脂微粒子を作製することができる。
【0011】
本発明者らは、いわゆる連鎖移動剤が、乳化重合法において重合禁止剤の役割を担うことに着目した。即ち、従来の乳化重合法では、重合開始剤を添加し重合反応を開始させたとき、重合開始剤が重合後期まで働くために、重合初期に生成した粒子と、重合後期に生成した粒子が混在しており、重合初期と後期では粒子の成長時間が異なるため、重合完了時の樹脂微粒子の粒径が揃ったものにならないものと考えられる。
【0012】
そこで、重合後期における新たな粒子生成を防ぐ為に、重合反応中、前記モノマーを全量添加以後に、連鎖移動剤を2回以上分割添加することによって、連鎖移動剤が重合後期の重合開始剤の働きを阻害し、新たな粒子生成を防ぎ、重合完了時にCV値が15%以下の樹脂微粒子を得ることができることを、本発明者らは見出した。
重合開始剤を添加した後で、連鎖移動剤を全量一括添加した場合は、重合完了時にCV値が15%以下の樹脂微粒子を得ることはできない。なぜならば、新たな粒子生成を生じさせる重合開始剤は、乳化重合法による場合、水溶性であるのに対し、連鎖移動剤は油溶性であるので、連鎖移動剤は重合後期まで水相側に留まることができずに重合開始剤の働きを阻害することができないからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る樹脂微粒子は、粒度分布が揃ったものであり、好ましくは体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が15%以下のものである。尚、本発明では「樹脂微粒
子」という用語を用いているが、これは、重合により生成される樹脂粒子が平均粒径1μm未満の大きさのものであることを意味する。より好ましくは、後述する体積基準におけるメディアン径(D50)10nm以上300nm以下を大きさを有することを意味する。体積基準メディアン径(D50)の測定方法については後述する。
【0014】
本発明に係る樹脂微粒子は、例えば、以下に示す手順で作製することが可能である。
(1)先ず、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中にモノマーを添加する。このとき、分子量調整のための連鎖移動剤はモノマーと共に添加してもよい。
(2)次に、機械的エネルギーを加えてモノマー溶液又はその液滴を形成する。尚、上記モノマー溶液の液滴を形成するための機械的エネルギー付与手段としては、ホモミキサー、クレアミクス、マントンゴーリン、超音波振動装置などが挙げられる。
【0015】
(3)形成したモノマー溶液の液滴に対して所定量の水溶性のラジカル重合開始剤を添加後、加熱等により重合を開始させた後、連鎖移動剤を下記(a)〜(c)の条件で添加することにより、樹脂微粒子が形成される。尚、本発明における連鎖移動剤の1回目の添加は、重合開始剤の添加と同時であっても構わない。
(a)モノマー重合転化率が10〜80%、好ましくは20〜60%に到達するまでに全量を分割添加する。
(b)上記(a)の分割添加は、2回以上の回数(連続滴下を含む。)で分割添加する。
(c)上記(a)のモノマー重合転化率の間に、一定時間間隔・等分量で分割添加することが好ましい。
重合転化率の測定は、重合反応中の反応液をサンプリングし、残存するモノマー量をガスクロマトグラフィーにより定量することにより算出することが可能である。ガスクロマトグラフィーの測定条件を下記に挙げる。
測定装置 :Agilent 6890 Series GC System
キャリア :N2,1.5ml/min
Split比:1/20
カラム :DB−624 30m×0.25mm,1.4μm
【0016】
本発明における分割添加は、一定時間間隔であることが好ましいが、例えば、添加間隔が最も短い時間を基準として1.1〜5倍の添加時間間隔であっても構わない。
また、本発明における分割添加は、等分量であることが好ましいが、例えば、添加量が最も少ない量を基準として1.1〜5倍の添加量であっても構わない。具体的には、例えば奇数回の添加量を1質量部で行い、偶数回の添加量を1.5質量部で行っても構わない。
分割添加する方法は、添加毎に一括注入ないし投下してもよいし、いわゆる滴下であってもよい。
【0017】
本発明に好ましく用いられる連鎖移動剤は、分配係数が1以上10以下であり、且つ50℃における連鎖移動定数が2以上30以下のものである。
本発明によって得られる好ましい樹脂微粒子は、体積基準におけるメディアン径(D50)10nm以上300nm以下、より好ましくは30nm以上200nm以下である。
樹脂微粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)は、公知の「マイクロトラックUPA−150(日機装社製)」を用いて動的光散乱法で測定して求めた値である。
【0018】
具体的には、以下の手順で行われる。
先ず、50mlのメスシリンダーに測定用樹脂微粒子を数滴滴下し、純水を25ml加え、超音波洗浄機「US−1(as one社製)」を用いて3分間分散させ測定用試料
を作成する。次いで、測定用試料3mlを「マイクロトラックUPA−150」のセル内に投入し、Sample Loadingの値が0.1〜100の範囲にあることを確認する。そして、下記測定条件にて測定する。
【0019】
測定条件
Transparency(透明度):Yes
Refractive Index(屈折率):1.59
Particle Density(粒子比重):1.05gm/cm3
Spherical Particles(球形粒子):Yes
溶媒条件
Refractive Index(屈折率):1.33
Viscosity(粘度):High(temp)0.797×10-3Pa・S
Low(Temp) 1.002×10-3Pa・S
【0020】
樹脂微粒子の体積基準の粒度分布における変動係数は、以下の式より算出される。
変動係数(CV値)(%)=(S2/Dn)×100
式中、S2は体積基準の粒度分布における標準偏差を示し、Dnは体積基準におけるメディアン径(D50)を示す。
【0021】
モノマー溶液を水系に分散させる乳化剤は、公知のカオチン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を特別の制限なく用いることができ、これらを単独又は2種以上併用することが可能である。
カオチン系界面活性剤としては、例えばドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0022】
アニオン系界面活性剤としては、例えばステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪族石鹸や、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えばドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0023】
本発明で用いられるモノマーは、公知のモノマーを特別の制限なく用いることができ、モノマーは単独又は2種以上併用することが可能である。
酸性の極性基を有するモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマーや、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー等が挙げられる。
【0024】
塩基性の極性基を有するモノマーとしては、例えばアミノスチレン及びその4級塩、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環を含有するモノマーや、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、及びこれらのアミノ基を4級化したアンモニウム塩を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、アクリル酸アミド等が挙げられる。
【0025】
その他のモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロス
チレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0026】
本発明では、極性基を有するモノマーとしてメタクリル酸が、また、その他のモノマーとしてスチレン、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルが好適に用いられる。これらのモノマーは、単独又は2種以上併用して用いることが可能である。
【0027】
本発明に用いられる重合開始剤は、公知の重合開始剤を特別の制限なく用いることができ、重合開始剤は単独又は2種以上併用することが可能である。
好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩や、これらの過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の水溶性重合開始剤、及びこれらの水溶性重合開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソビチロニトリル等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる連鎖移動剤は、乳化重合法において重合禁止剤の役割を担うことができるものであれば、公知のいずれのものであってもよい。連鎖移動剤としては、分配係数(logP)が1以上10以下であり、且つ連鎖移動定数が2以上30以下のものであることが好ましく、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、n−ブチルメルカプタン、n−アミルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘプチルメルカプタン、n−ノリルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。例えば、n−オクチルメルカプタンのスチレン(50℃)に対する連鎖移動定数は19、logPは4であり、n−ドデシルメルカプタンのスチレンに対する連鎖移動定数は13、logPは6である。連鎖移動剤は、単独又は2種以上併用することが可能である。また、連鎖移動剤の添加量は、全モノマー量に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。
本発明に用いられる連鎖移動剤は、モノマーに分子量調整のため混合して用いられる連鎖移動剤と同一種であってもよいし、異なってもよい。
【実施例1】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を例証する。
・実施例1
アニオン系界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.766gをイオン交換水597gに溶解させた溶液に、スチレン113.6g、アクリル酸ブチル32.8g、メタクリル酸(20%含水)17.0gからなるモノマーを加え、機械式分散機「クレアミクス(エム・テクニック社製)」を用い、3500rpmの処理条件で1分間分散を行いモノマー液滴の分散液を調整した。この分散液を「分散液A1」とする。
【0030】
また、アニオン系界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.12gをイオン交換水89.7gに溶解させた溶液に連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)9.0gを加え、機械式分散機「クレアミクス(エム・テクニック社製)」を用い、3500rpmの処理条件で1分間分散を行い乳化粒子の分散液を調整した。この分散液を「分散液B1」とする。
【0031】
次いで、「分散液A1」を予め攪拌装置、温度計、冷却管、窒素導入装置を付けた1Lの丸底フラスコに窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しつつ、内温を80℃に昇温させた。次いで、重合開始剤(過硫酸カリウム)2.03gをイオン交換水38.64gに溶解させた溶液を添加し、その後、「分散液B1」を重合転化率80%に到達するまでに全量を添加できるように、全量の1/2ずつを一定のタイミング(1回目の添加を重合開始剤の添加と同時に行い、2回目の添加は、重合転化率が80%となる時間(重合開始剤添加後30分後)に添加するものとする。尚、重合転化率の測定はあらかじめ同処方の重合実験により測定し、重合時間に対する重合転化率を測定しておくものとする。)で添加する。最終の連鎖移動剤添加後、80℃で2時間加熱攪拌することにより重合を行い、樹脂微粒子を作製した。この樹脂微粒子について、体積基準におけるメディアン径(D50)を前記の方法で測定し、その結果を表2に示す。また、重量平均分子量及び体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)についても表2に示す。
【0032】
・実施例2〜8
実施例2は、実施例1において、連鎖移動剤種、添加終了時の重合転化率を表1に示すように変更する他は同様にして樹脂微粒子を作製した。
実施例3〜4は、実施例1において、添加終了時の重合転化率を表1に示すように変更する他は同様にして樹脂微粒子を作製した。
実施例5〜8は、実施例1において、連鎖移動剤の添加のタイミングを重合転化率60%となる重合時間20分までに、一定時間間隔で表1に記載の添加回数に分割して添加した。
これらの樹脂微粒子について、体積基準におけるメディアン径(D50)を前記の方法で測定し、その結果を表2に示す。また、重量平均分子量及び体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)についても表2に示す。
【0033】
・比較例1
アニオン系界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)0.766gをイオン交換水597gに溶解させた溶液に、連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)9.0gとスチレン113.6g、アクリル酸ブチル32.8g、メタクリル酸(20%含水)17.0gからなるモノマーを加え、機械式分散機「クレアミクス(エム・テクニック社製)」を用い、3500rpmの処理条件で1分間分散を行いモノマー液滴の分散液を調整した。この分散液を「分散液A2」とする。
【0034】
次いで、「分散液A2」を予め攪拌装置、温度計、冷却管、窒素導入装置を付けた1Lの丸底フラスコに窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しつつ、内温を80℃に昇温させた。次いで、重合開始剤(過硫酸カリウム)2.03gをイオン交換水38.64gに溶解させた溶液を添加し、80℃で2時間加熱攪拌することにより重合を行い、樹脂微粒子を作製した。この樹脂微粒子について、体積基準におけるメディアン径(D50)を前記の方法で測定し、その結果を表2に示す。また、重量平均分子量及び体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)についても表2に示す。
【0035】
・比較例2
比較例1において、連鎖移動剤9.0gを重合転化率が20%になる時点で添加することに変更する他は同様にして、樹脂微粒子を作製した。この樹脂微粒子について、体積基準におけるメディアン径(D50)を前記の方法で測定し、その結果を表2に示す。また、重量平均分子量及び体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)についても表2に示す。
【0036】
・比較例3〜4
実施例1において、添加回数及び添加終了時の重合転化率を表1に示すように変化させ
たことのみ異ならせて、樹脂微粒子を作製した。これらの樹脂微粒子について、体積基準におけるメディアン径(D50)を前記の方法で測定し、その結果を表2に示す。また、重量平均分子量及び体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)についても表2に示す。
【0037】
【表1】

【表2】

【0038】
・実施例9
実施例6において、添加時間を重合開始後、0分、5分、20分に変更する他は同様に、樹脂微粒子を作製した。この樹脂微粒子について、体積基準におけるメディアン径(D50)を前記の方法で測定し、その結果を表3に示す。また、重量平均分子量及び体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)についても表3に示す。
【0039】
・実施例10
実施例6において、添加分量を5g、3g、1gに変更する他は同様にして、樹脂微粒子を作製した。この樹脂微粒子について、体積基準におけるメディアン径(D50)を前記の方法で測定し、その結果を表3に示す。また、重量平均分子量及び体積基準の粒度分布
における変動係数(CV値)についても表3に示す。
【0040】
・実施例11
実施例1において、分散液A1に分子量調整のための連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)1.5gを添加したことのみ異ならせて、樹脂微粒子を作製した。この樹脂微粒子について、体積基準におけるメディアン径(D50)を前記の方法で測定し、その結果を表3に示す。また、重量平均分子量及び体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)についても表3に示す。
・実施例12
実施例1において、連鎖移動剤を重合転化率が80%となる30分まで連続滴下する他は同様にして、樹脂微粒子を作製した。
【0041】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る樹脂微粒子は、電子写真用トナー(コア・シェル構造トナーを含む。)、液晶表示板のギャップ調節剤、医学診断用担体、粒径測定用の標準粒子、クロマトグラフィ用充填剤、化粧品用填剤、合成皮革の風合い改善剤等、その用途は広い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともモノマー(重合性単量体)を含有する組成物を水系媒体中に乳化分散し、乳化分散したモノマーを乳化重合せしめて体積平均粒径1μm未満の樹脂微粒子を製造する方法において、重合反応中、前記モノマーを全量添加以後に、連鎖移動剤が2回以上分割添加され、且つ前記連鎖移動剤が、モノマー重合転化率が10〜80%に到達するまでにその全量が分割添加されることを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項2】
連鎖移動剤が、一定時間間隔で分割添加されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項3】
連鎖移動剤が、等分量で分割添加されることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項4】
樹脂粒子が、体積基準におけるメディアン径(D50)が10nm以上300nm以下であり、且つ体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が15%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
連鎖移動剤が、分配係数(logP)が1以上10以下であり、且つ連鎖移動定数(Cx)が2以上30以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂微粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって得られた樹脂微粒子。