説明

樹脂微粒子

【課題】耐熱性の良好な樹脂微粒子の提供。
【解決手段】式(1)の環状オレフィン官能性シロキサン、又はこれと重合可能な環状オレフィン化合物とを、下記化合物(A)、(B)及び(C)を含む多成分触媒系の存在下、付加重合することにより得られ、式(1)の構造単位の割合が、付加重合体中5〜100モル%である環状オレフィン付加重合体からなる樹脂微粒子。


(R1は脂肪族不飽和結合を有さない一価有機基、sは0〜2の整数、iは0又は1、jは0又は1〜4の整数。)化合物(A):0価のパラジウム化合物、(B):イオン性ホウ素化合物、(C):炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂の滑り性、耐摩耗性、光拡散性付与剤、プラスチックフィルムへのブロッキング防止性付与剤、コーティング剤の表面滑り性付与剤、化粧品、ワックスの伸展性、表面滑り性、撥水性付与剤、洗浄剤の研磨性付与剤等として好適な樹脂微粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエチレン、ポリスチレン、メチルメタクリレート樹脂、ウレタン樹脂、6,6−ナイロンなどの各種樹脂粉末が提案されており、合成樹脂、インキ、塗料、化粧料、トナー、顔料、コーティング剤等の添加剤や、液晶スペーサーとして広く使用されている。しかし、これらの樹脂粉末は、一般に耐熱性が乏しいため、加熱あるいは攪拌時の摩擦熱などにより変形、融解あるいは融着凝集してしまうという問題がある。
【0003】
融着凝集を解決する方法として、ハイドロジェンポリシロキサンによる表面処理や、オルガノシラザン化合物による表面処理が知られている。しかしながら、ハイドロジェンポリシロキサンによる処理は、300℃以上の高温が必要であり、耐熱性が不十分な樹脂粉末には適しておらず、また処理中に凝集物が生成するという問題がある。オルガノシラザン化合物による処理は、樹脂粉末表面に水酸基などの官能基が必要であり、適用は限定的である。近年になり、樹脂粉末の表面にシリコーン樹脂を被覆する方法(特許第4580481号公報:特許文献1)が提案されている。しかしながら、工程が煩雑で被覆時に凝集物ができる場合があり、また、樹脂自体の熱安定性が向上するわけではなく、根本的な解決には至らない。
【0004】
熱時での変形や融解を防ぐため、樹脂中に架橋構造を導入する方法は、古くから知られている。しかしながら、架橋点が多いと、粒子が脆くなるという別の問題があり、また、架橋点が少ないとその効果は薄くなる。以上のことから、調製が容易で、樹脂自体の耐熱性が優れる微粒子の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4580481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐熱性の良好な樹脂微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、このような問題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造の環状オレフィン付加重合体からなる樹脂微粒子、詳細には、下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサン、又はこの式(1)の環状オレフィン官能性シロキサンと下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンに由来する構造単位の割合が、付加重合体中5〜100モル%である環状オレフィン付加重合体からなる樹脂微粒子が、容易に調製でき、耐熱性に優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記に示す樹脂微粒子を提供する。
〔請求項1〕
下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサン、又はこの式(1)の環状オレフィン官能性シロキサンと下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンに由来する構造単位の割合が、付加重合体中5〜100モル%である環状オレフィン付加重合体からなる樹脂微粒子。
【化1】

(式(1)中のR1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基であり、sは0〜2の整数であり、iは0又は1であり、jは0又は1〜4の整数を示す。)
【化2】

(式(2)中のA1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又はオキセタニル基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。kは0又は1を示す。)
〔請求項2〕
ガラス転移温度が200℃以上である請求項1記載の樹脂微粒子。
〔請求項3〕
下記化合物(A)、(B)及び(C)を含む多成分系触媒の存在下、下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサン、又はこの式(1)の環状オレフィン官能性シロキサンと下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られる請求項1又は2記載の樹脂微粒子。
〔化合物(A)〕
0価のパラジウム化合物。
〔化合物(B)〕
イオン性ホウ素化合物。
〔化合物(C)〕
炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物。
【化3】

(式(1)中のR1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基であり、sは0〜2の整数であり、iは0又は1であり、jは0又は1〜4の整数を示す。)
【化4】

(式(2)中のA1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又はオキセタニル基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。kは0又は1を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明のオリゴシロキサンをペンダントとして有する環状オレフィン付加重合体からなる樹脂微粒子は、調製が容易で球状や不定形等形状選択が可能であり、優れた耐熱性を有する。該樹脂微粒子は、合成樹脂の滑り性、耐摩耗性、光拡散性付与剤、プラスチックフィルムへのブロッキング防止性付与剤、コーティング剤の表面滑り性付与剤、化粧品、ワックスの伸展性、表面滑り性、撥水性付与剤、洗浄剤の研磨性付与剤等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1で得られたポリマー微粒子P(1)の電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の実施例2で得られたポリマー微粒子P(2)の電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の実施例3で得られたポリマー微粒子P(3)の電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の実施例4で得られたポリマー微粒子P(4)の電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施例4で得られたポリマー微粒子P(4)の表面拡大写真である。
【図6】本発明の実施例1で得られたポリマー微粒子P(1)の耐熱試験後の電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の実施例2で得られたポリマー微粒子P(2)の耐熱試験後の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂微粒子は、下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサン、又はこの式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンと、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより製造される環状オレフィン付加重合体からなるものである。
【化5】

(式(1)中のR1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基であり、sは0〜2の整数であり、iは0又は1であり、jは0又は1〜4の整数を示す。)
【化6】

(式(2)中のA1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又はオキセタニル基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。kは0又は1を示す。)
【0012】
上記式(1)中、R1は、互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基であり、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の1個又は2個以上がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子などで置換された基などが挙げられる。
【0013】
式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンとしては、以下の化合物が例示できるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。ここで、Meはメチル基、Phはフェニル基を表す(以下、同様)。
【化7】

【0014】
【化8】

【0015】
式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンは、一種単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
一方、上記式(2)中、A1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜10のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリーロキシ基、3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基から選ばれる基、又はオキセタニル基、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の好ましくはアルコキシ基の炭素数が1〜10、特に炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とは、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。
【0017】
この場合、式(2)中の脂環構造としては炭素数4〜10のものが挙げられ、芳香環構造としては、炭素数6〜12のものが挙げられる。これらの構造を例示すると下記の通りである。
【化9】

【0018】
なお、これらがノルボルネン環と結合した状態を例示すると下記の通りである。式(2)において、k=0の場合を示す。
【0019】
【化10】

【0020】
式(2)で表される環状オレフィン化合物としては、以下の化合物が例示できるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−デシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−アリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−イソプロピリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸エチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸ブチル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸エチル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸プロピル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸トリフロロエチル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エニル酢酸エチル、アクリル酸2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル、メタクリル酸2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸ジメチル、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどを例示することができる。これらは、一種単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンと、上記式(2)で表される環状オレフィン化合物との仕込み比率は、得られる本発明の樹脂微粒子の耐熱性や溶解性を考慮し、得られた重合体中の式(1)由来の構造単位は合計で5〜100モル%が好ましく、より好ましくは10〜100モル%となるように使用することが好ましい。
【0022】
本発明において、環状オレフィン付加重合体は、下記化合物(A)、(B)及び(C)を含む多成分系触媒を用いて、式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサン、又はこの式(1)の環状オレフィン官能性シロキサンと、式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することで得られる。
【0023】
〔化合物(A)〕
0価のパラジウム化合物。
〔化合物(B)〕
イオン性ホウ素化合物。
〔化合物(C)〕
炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物。
【0024】
従来の環状オレフィン化合物の付加重合触媒としては、周期律表第8族元素、第9族元素及び第10族元素より選択された、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)などを中心金属とする遷移金属錯体が挙げられる。しかしながら、式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンへの反応性が高いこと、更に、得られる重合体が高分子量体であることから、パラジウムを中心金属とした特定の配位子を有する化合物(A)、イオン性ホウ素化合物(B)、ホスフィン化合物(C)を併せて使用する必要がある。
【0025】
更に、パラジウムを中心金属とする化合物(A)は、重合活性、分子量調節能、取り扱い性の点から、0価のパラジウム錯体がよい。
【0026】
〔化合物(A)〕
化合物(A)は、周期律表第10族元素であるパラジウムを中心金属とした化合物であり、特に0価のパラジウム化合物である。この具体例としては、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、0価のパラジウム1個にエチレンが1個、トリシクロヘキシルホスフィンが2個配位した錯体である(エテン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、0価のパラジウム1個に一酸化炭素が1個、トリフェニルホスフィンが3個配位した錯体であるカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、0価のパラジウム1個に、t−ブチルイソシアニドが2個配位した錯体であるビス(t−ブチルイソシアニド)パラジウムなどが挙げられる。これらのなかで、取り扱い性の面や、入手しやすい点及び錯体の安定性を考慮すると、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
【0027】
〔化合物(B)〕
化合物(B)は、イオン性ホウ素化合物である。この具体例としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、あるいはリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックスなどが挙げられる。これらのなかで、有機溶媒への溶解性、入手しやすい点を考慮するとトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0028】
〔化合物(C)〕
化合物(C)は、炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物である。この具体例としては、トリイソプロピルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジt−ブチルフェニルホスフィンなどが挙げられる。これらのなかで、触媒の活性と安定性の両立の面から、トリシクロヘキシルホスフィンが好ましい。
【0029】
本発明では、化合物(A)としてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムあるいはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、化合物(B)としてトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、化合物(C)としてトリシクロヘキシルホスフィンを用いて、環状オレフィン付加重合体を製造することが好ましい態様の一つである。
【0030】
上記多成分系触媒を構成する化合物(A)、(B)、(C)は、以下の範囲の使用量で用いられる。
【0031】
化合物(A)は、式(1)及び(2)で示される単量体の合計1モルに対して100万分の1〜100分の1モル原子が好ましく、より好ましくは10万分の1〜1,000分の1モル原子である。化合物(A)の使用量が多すぎると耐熱性に優れる重合体が得られない場合があり、少なすぎると重合活性が低下する場合がある。
【0032】
また、化合物(B)は、化合物(A)1モルに対して1.0〜2.0モルが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5モルである。化合物(B)の使用量が多すぎると重合体中に残存し、着色する場合があり、少なすぎると重合活性が低下する場合がある。
【0033】
化合物(C)は、化合物(A)1モルに対して、0.25〜2.0モルが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モルである。化合物(C)の使用量が多すぎると重合活性が低下する場合があり、少なすぎると触媒の安定性が低下する場合がある。
【0034】
本発明において、環状オレフィン付加重合体は、上記化合物(A)、(B)、(C)からなる多成分系触媒を用い、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状ポリシロキサン溶媒などから選ばれる一種又は二種以上の溶媒中で重合を行うことにより製造することができる。
【0035】
溶媒の使用量は、溶媒(S)と上記環状オレフィン単量体(上記式(1)、(2)で表される化合物の合計量)(M)の質量比(S/M)が、0.2〜30の範囲、特に0.5〜20の範囲とすることが好ましい。溶媒の使用量が、上記質量比より少ないと溶液粘度が高く、取り扱い性が困難になる場合があり、上記質量比より多いと重合活性の点で劣る場合がある。
【0036】
本発明の樹脂微粒子の調製方法については特に限定されず、従来から公知の方法を用いることができる。直接的に重合反応を利用する場合は、分散重合、乳化重合、懸濁重合が一般的である。また、溶液重合反応後の重合体溶液に、メタノール、エタノールなどのアルコール類又はアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類を徐々に添加し、重合体を凝固沈殿させ調製してもよい。更に、上記重合により得られた環状オレフィン付加重合体を所定の溶媒に再溶解し、乳化分散液とした後、調製してもよい。
【0037】
ここで、上記化合物(A)、(B)、(C)からなる多成分系触媒を上記環状オレフィン単量体と接触混合させる場合、(操作手順1)化合物(B)、(C)、環状オレフィン単量体及び上記溶媒からなる溶液に、化合物(A)を上記溶媒に溶解した溶液を投入混合してもよく、(操作手順2)化合物(B)、環状オレフィン単量体及び溶媒からなる溶液に、化合物(A)、(C)を上記溶媒に溶解した溶液を投入混合してもよく、(操作手順3)環状オレフィン単量体及び溶媒からなる溶液に、化合物(A)、(B)、(C)を上記溶媒に溶解した溶液を投入混合してもよい。このなかでも、触媒活性種の効率的な発生の点から、操作手順3がより好ましい。
【0038】
分散重合方法としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、上述した操作手順により反応容器中に仕込み、0〜150℃、特に20〜100℃の範囲の温度で1〜72時間、特に2〜48時間重合することが好ましい。ただし、反応温度が低すぎると重合活性の点で劣る場合があり、高すぎるとゲル化を引き起こしたり、分子量の調節が困難になる場合がある。
【0039】
また、乳化分散液を得るためには、溶解物に界面活性剤及び水を加え、プロペラ羽根、パドル翼、ブレンダー、ホモミキサー、ディスパーミキサーなどの攪拌装置、又は高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機等の乳化装置を用いる。
【0040】
乳化に使用する界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン変性オルガノポリシロキサン等の非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩などのカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルヒドロキシスルホベタイン等の両イオン性界面活性剤が挙げられる。
これらの界面活性剤は、一種を単独で又は二種以上を併用することができるが、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを併用することはできない。また、乳化重合を行う場合は、触媒の性質から、カチオン性界面活性剤と両イオン界面活性剤は使用することはできない。
【0041】
乳化分散液中における界面活性剤の配合量は、0.01質量%未満では、十分に乳化分散することができず、30質量%を超えると、乳化又は乳化重合が困難となるため、0.01〜30質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%である。
【0042】
乳化重合を行う場合、水の使用量(W)は、気質(上記式(1)、(2)で表される化合物の合計量)(M)と溶媒(S)の総量(S+M)に対し、質量比(W)/(S+M)で1〜10、好ましくは1.5〜8の範囲である。水の使用量が上記質量比より少なくても多くても乳化が困難となる場合がある。
【0043】
乳化重合方法としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、上述した操作手順により単量体、多成分系触媒、溶媒を仕込み、次いで界面活性剤を溶解した水溶液を添加し、乳化分散液を調製後、50〜95℃、特に60〜90℃の範囲の温度で1〜72時間、特に2〜48時間重合することが好ましい。ただし、反応温度が低すぎると重合活性の点で劣る場合があり、高すぎるとゲル化を引き起こす場合がある。
【0044】
上述した方法において、溶媒と単量体の比率、重合温度、重合時間などは一概に限定することが難しい。上記特定構造の重合体を得るべく、目的に応じて使い分ける必要がある。
【0045】
重合の停止は、水、アルコール、ケトン、有機酸などから選ばれた化合物によって行われる。重合体溶液に、乳酸、リンゴ酸、シュウ酸などの酸の水とアルコール混合物を添加することで、触媒残渣を重合体溶液から分離・除去することができる。また、触媒残渣の除去には、活性炭、珪藻土、アルミナ、シリカなどを用いての吸着除去や、フィルターなどによる濾過分離除去などが適用できる。
【0046】
重合体は、重合体溶液をメタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類中に入れて、凝固し、60〜150℃で6〜48時間減圧乾燥することにより得ることができる。この工程で、重合体溶液中に残存する触媒残渣や未反応モノマーも除去される。また、本発明において用いられる、シロキサンを含有する未反応モノマーは、上記アルコール類やケトン類にオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状ポリシロキサンを混合した溶媒を用いることで、容易に除去することができる。
【0047】
重合体凝固沈殿物の洗浄乾燥、乳化分散液の濃縮乾燥などにより、本発明の樹脂微粒子を得ることができる。乳化分散液の乾燥には、気流乾燥装置、噴霧乾燥装置(スプレードライヤ)などの液状物から固形成分を直接得る装置を用いてもよい。
【0048】
このようにして得られる環状オレフィン付加重合体は、上記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンを単量体として付加重合することにより形成される、下記式(3)で示される繰り返し単位を含む。
【0049】
【化11】

(式(3)中のR1、i、j及びsは式(1)と同じである。)
【0050】
また、環状オレフィン付加重合体は、式(2)で表される環状オレフィン化合物を用いた場合、式(2)で表される環状オレフィン化合物を単量体として付加重合することにより形成される、下記式(4)で示される繰り返し単位を含む。
【0051】
【化12】

(式(4)中のA1〜A4及びkは式(2)と同じである。)
【0052】
ここで、式(4)で示される繰り返し単位は、例えばkが0、A1〜A4がいずれも水素原子の場合、2,3付加構造単位を示すものであるが、上記式(2)で表される環状オレフィン化合物を単量体として付加重合することによる2,7付加構造単位となっているものが含まれていてもよい。また、この構造単位については、式(3)で示される繰り返し単位においても、同様である。
【0053】
本発明において、環状オレフィン付加重合体中の式(3)で表される構造単位の割合は、通常5〜100モル%、好ましくは10〜100モル%である。式(3)で表される構造単位の割合が、5モル%未満では溶解性が不十分になり取り扱い性が困難となる場合がある。また、式(3)及び式(4)で表される構造単位は、ランダムに存在してもよく、またブロック状に偏在してもよい。
【0054】
本発明において、環状オレフィン付加重合体の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が好ましくは10,000〜2,000,000であり、より好ましくは50,000〜1,500,000である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(分散度:Mw/Mn)が、1.0〜6.0が好ましく、より好ましくは1.0〜5.5の範囲である。数平均分子量が小さすぎると、耐熱性が乏しくなる場合がある。一方、数平均分子量が大きすぎると、溶媒類への溶解性が低下したり、溶液粘度が高くなり、取り扱い性が困難となることがある。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、大きすぎると、割れや脆さの点で劣るものとなる場合がある。
【0055】
本発明において、環状オレフィン付加重合体のガラス転移温度は、TMA(Thermal Mechanical Analysis)を用いて測定される。こうして評価されるガラス転移温度は、200℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が200℃未満の場合、本発明の樹脂微粒子を含む成形体の加工時あるいは加熱時に、凝集や熱変形などの問題が生じる可能性がある。
【0056】
本発明において、環状オレフィン付加重合体は、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,29Si−NMR)を用いて、その構造を確認することができる。例えば、1H−NMR(重クロロホルム中)においては、7.8〜6.5ppmの−O−Si(C65)−O−の−C65による吸収、0.6〜3.0ppmの脂環式炭化水素に由来する吸収、0.0〜0.6ppmの−Si−CH2−、−Si−CH3、−O−Si−CH3の吸収、−0.1〜0.0ppmの−O−Si(CH3)−O−の吸収、また29Si−NMR(重ベンゼン中)においては、下記式(5)に記載のM単位(R2:メチル基、10.0〜5.0ppm)に由来する吸収、D単位(R2:メチル基、−15.0〜−25.0ppm、R2:フェニル基、−45.0〜−50.0ppm)に由来する吸収、T単位(R2:アルキル基、−65.0〜−70.0)に由来する吸収とその積分比から構造を確認できる。
【化13】

(式(5)中のR2は、式(1)中のR1と同じである。)
【0057】
こうして得られる本発明の樹脂微粒子の形状は、球状でも扁平上でもよく、また不定形でもよい。
【0058】
得られた樹脂微粒子の粒径は特に制限されず、調製方法や用途にあわせ適宜調整すればよいが、通常、平均粒径が0.1〜500μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは、0.3〜300μmである。小さすぎると凝集性が高くなる場合があり、大きすぎると、滑り性、伸展性付与等の効果が低下する場合がある。
【0059】
得られた樹脂微粒子に凝集が見られる場合には、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミルなどの粉砕器を適宜使用してもよい。
【0060】
本発明の樹脂微粒子には、必要に応じ、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤などを添加し、含有させてもよい。
【0061】
酸化防止剤としては、従来から公知のものを全て使用することができ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。これらは、一種単独でも二種以上を組み合わせても使用することができる。
なお、この酸化防止剤を使用する場合、その配合量は、酸化防止剤としての有効量であればよく、特に制限されないが、樹脂成分に対して、好ましくは0.01〜1.0質量%、特に好ましくは0.02〜0.1質量%程度配合するのがよい。前記範囲内の配合量とすることによって、酸化防止能力が十分発揮され、着色、酸化劣化等の発生を抑制できる。
【0062】
光安定剤としては、光酸化劣化で生成するラジカルを補足するヒンダードアミン系安定剤が適しており、酸化防止剤と併用することで、酸化防止効果はより向上する。光安定剤の具体例としては、ビス(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
この光安定剤を使用する場合、その配合量は、光安定剤としての有効量であればよく、特に制限されないが、樹脂成分に対して、好ましくは0.01〜1.0質量%、特に好ましくは0.02〜0.1質量%程度配合するのがよい。
【0063】
紫外線吸収剤としては、具体例として2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、パラメトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸フェニル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンなどの有機系紫外線吸収剤が挙げられる。
この紫外線吸収剤を使用する場合、その配合量は、紫外線吸収剤としての有効量であればよく、特に制限されないが、樹脂成分に対して、好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.2〜5質量%程度配合するのがよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Cyはシクロヘキシル基をそれぞれ表す。
【0065】
重合体の分子量、分子量分布、単量体の組成比、ガラス転移温度、粒子形状は下記の方法で評価した。
1)実施例中で得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、THFを溶媒とするGPCによりポリスチレンを標準物質として用いて求めた。
2)共重合体中のノルボルネン誘導体/ノルボルネンの組成比は、1H−NMRにより得られたピークの積分比から求めた。
3)ガラス転移温度は、TMA装置を用い、膜厚100μm、幅3mm、長さ20mmの試料をプローブに固定し、室温から10℃/minで昇温して測定した。
4)粒子形状は、シリコンウエハー上の導電テープに樹脂微粒子を接着させ、白金−パラジウムコーティング後、電子顕微鏡写真を撮影することで確認した。
【0066】
[実施例1]
(分散重合による微粒子の調製)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C1714O)2]0.0057g(1.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C654]}0.0092g(1.0×10-5mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)0.0028g(1.0×10-5mol)をそれぞれトルエン10mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス製容器中で、下記式(6)で表される単量体A311g(0.8mol)をトルエン800mlに溶解した。そこへ調製した触媒溶液を添加し、55℃で16時間重合反応を行った。反応溶液は徐々に白濁し、白色の沈殿物が析出した。
反応終了後、多量のメタノールを注いでポリマーを洗浄濾別後、85℃で12時間減圧乾燥し、152g(収率49%)のポリマー微粒子P(1)が得られた。
【0067】
得られたポリマー微粒子P(1)は不溶性であり、また形状は不定形であった。図1に、ポリマー微粒子P(1)の電子顕微鏡写真を示す。
【0068】
【化14】

【0069】
[実施例2]
(重合体の乳化による微粒子の調製)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C1714O)2]0.0057g(1.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C654]}0.0092g(1.0×10-5mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)0.0028g(1.0×10-5mol)をそれぞれトルエン10mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス製容器中で、上記式(6)で表される単量体A217.7g(0.56mol)と、下記式(7)で表される単量体B22.5g(0.24mol)をトルエン600mlに溶解した。そこへ調製した触媒溶液を添加し、55℃で16時間重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、156g(収率65%)のポリマー微粒子P(2)が得られた。
【0070】
得られたポリマー微粒子P(2)のGPC測定による分子量はMn=520,000、分子量分布はMw/Mn=2.51であった。1H−NMRスペクトルにより、重合体中の単量体A由来の構造体及び単量体B由来の構造体の組成比はA/B=70/30(mol/mol)であることを確認した。また、TMA測定によりガラス転移温度を測定したところ、318℃であった。
【0071】
次に、得られたポリマー微粒子P(2)50gをシクロヘキサン溶液200gに溶解し、ポリマー溶液を調製した。ここに、ラウリル硫酸ナトリウム7.5gと水500gを添加し、ブレンダーにて乳化を行った。乳化液を濃縮乾燥後、メタノールで洗浄し、85℃で12時間減圧乾燥した。
得られたポリマー微粒子P(2)は、球状であった。図2に、ポリマー微粒子P(2)の電子顕微鏡写真を示す。
【0072】
【化15】

【0073】
[実施例3]
(重合体溶液の凝固沈殿による微粒子の調製)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C1714O)2]0.0057g(1.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C654]}0.0092g(1.0×10-5mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)0.0028g(1.0×10-5mol)をそれぞれトルエン10mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス製容器中で、下記式(8)で表される単量体C233.5g(0.56mol)と、上記式(7)で表される単量体B22.5g(0.24mol)をトルエン600mlに溶解した。そこへ調製した触媒溶液を添加し、55℃で2時間重合反応を行った。
反応終了後、メタノールを徐々に滴下しポリマーをゆっくりと析出させた。洗浄濾別後、85℃で12時間減圧乾燥し、192g(収率75%)のポリマー微粒子P(3)が得られた。
【0074】
得られたポリマー微粒子P(3)のGPC測定による分子量はMn=1,330,000、分子量分布はMw/Mn=3.04であった。1H−NMRスペクトルにより、重合体中の単量体A由来の構造体及び単量体B由来の構造体の組成比はC/B=67/33(mol/mol)であることを確認した。また、TMA測定によりガラス転移温度を測定したところ、237℃であった。
得られたポリマー微粒子P(3)は、不定形であった。図3に、ポリマー微粒子P(3)の電子顕微鏡写真を示す。
【0075】
【化16】

【0076】
[実施例4]
(乳化重合による微粒子の調製)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C1714O)2]0.0057g(1.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C654]}0.0092g(1.0×10-5mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)0.0028g(1.0×10-5mol)をそれぞれトルエン10mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス製容器中で、下記式(9)で表される単量体D107.4g(0.4mol)をトルエン100mlに溶解した。そこへ調製した触媒溶液を添加し、更にイオン交換水400gにラウリル硫酸ナトリウム6gを溶解させた水溶液を添加した。攪拌乳化後、85℃で24時間重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、洗浄濾別後、85℃で12時間減圧乾燥し、43g(収率40%)のポリマー微粒子P(4)が得られた。
【0077】
得られたポリマー微粒子P(4)のGPC測定による分子量はMn=775,000、分子量分布はMw/Mn=2.00であった。また、TMA測定によりガラス転移温度を測定したところ、250℃であった。
得られたポリマー微粒子P(4)は、一部凝集が見られたが、球状であった。またその表面には、微細な孔が確認された。図4に、ポリマー微粒子P(4)の電子顕微鏡写真を示す。また、図5に、ポリマー微粒子P(4)の表面拡大写真を示す。
【0078】
【化17】

【0079】
上記実施例1〜4で得られたポリマー微粒子P(1)〜(4)を150℃の乾燥機中で24時間放置し、耐熱試験を行った。その後、電子顕微鏡写真により、形状を確認した。その結果を表1に示す。また、図6、図7に、ポリマー微粒子P(1)及びポリマー微粒子P(2)の耐熱試験後の電子顕微鏡写真を示す。
【0080】
[比較例1,2]
合成樹脂微粒子であるPE{ポリエチレン・フロービーズLE−1080[住友精化(株)製商品名]}とPS{架橋ポリスチレンパウダーSBX−4[積水化成(株)製商品名]}を150℃の乾燥機中で24時間放置し、耐熱試験を行った。その後、電子顕微鏡写真により、形状を確認した。その結果を表1に示す。
【0081】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサン、又はこの式(1)の環状オレフィン官能性シロキサンと下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンに由来する構造単位の割合が、付加重合体中5〜100モル%である環状オレフィン付加重合体からなる樹脂微粒子。
【化1】

(式(1)中のR1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基であり、sは0〜2の整数であり、iは0又は1であり、jは0又は1〜4の整数を示す。)
【化2】

(式(2)中のA1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又はオキセタニル基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。kは0又は1を示す。)
【請求項2】
ガラス転移温度が200℃以上である請求項1記載の樹脂微粒子。
【請求項3】
下記化合物(A)、(B)及び(C)を含む多成分系触媒の存在下、下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサン、又はこの式(1)の環状オレフィン官能性シロキサンと下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られる請求項1又は2記載の樹脂微粒子。
〔化合物(A)〕
0価のパラジウム化合物。
〔化合物(B)〕
イオン性ホウ素化合物。
〔化合物(C)〕
炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物。
【化3】

(式(1)中のR1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基であり、sは0〜2の整数であり、iは0又は1であり、jは0又は1〜4の整数を示す。)
【化4】

(式(2)中のA1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又はオキセタニル基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。kは0又は1を示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91759(P2013−91759A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236261(P2011−236261)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】