説明

樹脂成形体の製造方法

【課題】フィッシュアイなどの異物が少なく、押出成形性、製品外観性などに優れた樹脂成形体を製造する。
【解決手段】ブレーカープレートにフィルターを設置して、ろ過することによりフィッシュアイの個数を一定量以下にしたポリアセタール樹脂と脂肪族エステル構造を有する重合体を使用して押出成形加工すると、押出成形性、製品外観性などに優れ、特に紡糸性及びフィルム加工性に優れていることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッシュアイなどの異物が少なく、押出成形性、製品外観性などに優れた樹脂成形体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模での環境問題に対して、産業廃棄物が環境を汚染することを防止するために、生分解性(微生物分解性、または自然分解性)の素材を使用することが注目されている。更に最近では、地球資源の枯渇、温暖化に伴うCO排出量に対する自主規制が強く求められるなか、石油由来でなく天然物由来からなる素材や、焼却処理の際に必要な熱量やCO発生量の少ない素材が注目されている。
従来より、脂肪族エステル構造を有する重合体に生分解性があることが知られており、微生物によって生産されるポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(PHB)、合成高分子であるポリカプロラクトン(PCL)、コハク酸およびブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリブチレンサクシネート・アジペート(PBSA)、および発酵法により生産されるL−乳酸および/またはD−乳酸を主たる原料としたポリ乳酸(PLA)などが代表的なものである。
これら脂肪族エステル構造を有する重合体はPLAを除くと、一般にポリエチレン類似の物性を有する成形性・生分解性の良好なポリマーである。しかし、剛性が要求される分野や引張強度が要求される分野では充分な強度を持たない。剛性を改善するためには、タルクなどの充填材やナノコンポジット化技術による改善が可能であるが、流動性の低下なども問題があり、この改良が望まれていた。PLAについては耐熱性や耐加水分解性の向上が強く求められている。
【0003】
一方、オキシメチレン構造を有する重合体は、脂肪族エーテル型、もしくは脂肪族エーテルを主成分としたポリマーであり、主として石油に依存しない原料であるメタノールから誘導され、環境負荷の低い材料と考えられる。剛性などの機械的特性も高く、エンジニアリングプラスチックスとして使用される優れた材料である。しかし、市場のニーズとして更に高いレベルの剛性、靭性に対する要求がある上、結晶性が高いためにフィルムや繊維などへの成形性が悪く、その改良が望まれていた。
弊社では、脂肪族エステル構造を有する重合体と特定のオキシメチレン構造を有する重合体とを混合することで、実用上充分な耐熱性を有し、剛性、靭性、耐熱性、成形性、生分解性に優れた、脂肪族エステル構造を有する重合物と特定のオキシメチレン構造を有する重合体とからなる樹脂組成物を見出している(特許文献1参照)が、フィルムや繊維などへの成形性の改良、製品外観製、フィッシュアイなどの成形時の異物の低減が求められている。
また、特許文献2では、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂にカルボキシル基反応性末端封鎖剤を溶融混練することで耐熱性や耐加水分解性を向上させる試みがなされているが、細繊化に関する記載やフィルムの製品外観に関する記載がなく、成形品に発生するフィッシュアイについて具体的な示唆はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−38040号公報
【特許文献2】特開2003−321602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フィッシュアイなどの異物が少なく、押出成形性、製品外観性などに優れた樹脂成形体を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ブレーカープレートにフィルターを設置して、ろ過することによりフィッシュアイの個数を一定量以下にしたポリアセタール樹脂と脂肪族エステル構造を有する重合体を使用して押出成形加工すると、押出成形性、製品外観性などに優れ、特に紡糸性及びフィルム加工性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂成形体の製造方法により、押出成形性、製品外観性などに優れた成形体を製造することが可能となった。特に、紡糸性に優れ、フィルムやシートに成形した場合の光学ムラ等も少ない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の樹脂成形体の製造方法に使用するポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(−OCH)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、実質的にオキシメチレン単位の繰返しのみからなるポリアセタールホモポリマー又はポリオキシメチレン、オキシメチレン単位以外に、他のコモノマー単位を少なくとも一種含有するポリアセタールコポリマーなどが代表的な樹脂である。
さらに、ポリアセタール樹脂には、慣用のポリアセタール樹脂、例えば、分岐形成成分や架橋形成成分を共重合することにより分岐構造や架橋構造が導入された共重合体、更には、オキシメチレン基の繰返しを構成単位として有するブロック共重合体やグラフト共重合体なども含まれる。これらのポリアセタール樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0009】
ポリアセタール樹脂の原料であるコモノマーとしては、環状ホルマールやエーテルが用いられる。例えば、1,3−ジオキソラン、2−エチル−1,3−ジオキソラン、2−プロビル−1,3−ジオキソラン、2−ブチルー1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−フェニルー2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−プチルオキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−フェノキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−クロルメチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキカビシクロ[3,4,0]ノナン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、プチレンオキシド、エビクロルヒドリン、スチレンオキシド、オキシタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、およびオキセパン等が挙げられる。これらの中でも1,3ージオキソランが特に好ましい。
【0010】
コモノマーの配合量は、トリオキサン100重量部に対して0.2〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜20重量部である。コモノマーの配合量が50重量部より多い場合は重合収率が低下し、0.2重量部より少ない場合は熱安定性が低下する。
【0011】
本発明で使用するポリアセタール樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、一般的にはトリオキサンとコモノマーである環状エーテル化合物あるいは環状ホルマール化合物とを、主としてカチオン重合触媒を用いて塊状重合させる方法で得ることができる。重合装置としては、連続式、バッチ式などの公知の装置が何れも使用できる。
重合触媒の失活を行ったポリアセタール樹脂は、各種安定剤を練りこみ加熱溶融処理し、不安定構造を熱的に分解除去し、造粒される。代表的な安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩などを挙げることができる。
【0012】
更に、ポリアセタール樹脂には、必要に応じて、着色剤、核剤、可塑剤、蛍光増白剤、又はペンタエリスリトールテトラステアレート等の脂肪酸エステル系又はシリコン系化合物等の離型剤、摺動剤、ポリエチレングリコール、グリセリンのような帯電防止剤、高級脂肪酸塩、ベンゾトリアゾール系またはベンゾフェノン系化合物のような紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系のような光安定剤等の添加剤を所望により添加することができる。
【0013】
本発明の樹脂成形体の製造方法に使用する脂肪族エステル構造を有する重合体としては、PHB、PCL、PBS、PBSA、PLAなどの脂肪族ポリエステルや、脂肪族ポリエステルカーボネートなどが例示される。その中でも、PLAが特に好ましい。
【0014】
本発明におけるPLAとは、L−乳酸のみ、D−乳酸のみ、L−乳酸とD−乳酸の混合物の何れかを主たる構成成分とするポリマー、もしくはその混合物であるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、ε―カプロラクトンなどの環状ラクトン類、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸などのα−オキシ酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコール化合物、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸などのジカルボン酸を挙げることができる。この中でも、グリコール類および環状ラクトン類が好ましい。
【0015】
PLAの重合方法としては、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などが例示される。開環重合法としては、L−ラクチド、更には共重合成分(コモノマー、またはオリゴマー)を触媒存在下にて開環重合し、必要に応じて再沈殿精製して得ることができる。
PLAの分子量や分子量分布は特に制限されるものではないが、数平均分子量としては1万以上が好ましく、より好ましくは5万以上である。
PLAの融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、更に150℃以上であることが好ましい。
【0016】
上記ポリアセタール樹脂と脂肪族エステル構造を有する重合の配合割合は、重量比(ポリアセタール樹脂/脂肪族エステル構造を有する重合)で、1/99〜99/1であり、好ましくは5/95〜95/5でありより好ましくは60/40〜95/5である。
【0017】
本発明の樹脂成形体の製造方法に使用するポリアセタール樹脂と脂肪族エステル構造を有する重合体成分は予め混合することができる。また、ポリアセタール樹脂と脂肪族エステル構造を有する重合体の混合樹脂組成物は、少なくとも一方の樹脂が溶融する温度以上で機械的に混合することにより得ることができ、また、両樹脂を機械的に粉砕したものを混合し、加圧することにより製造する方法や、両樹脂を溶剤に溶解した後に貧溶媒と混合し沈殿化することにより得ることにより製造することも可能であるが、それらに限定されるものではない。
【0018】
混合装置については特に限定されるものではないが、押出機を用いて混合する方法が短時間で連続的に処理できる点で工業的には推奨される。
混合時の温度は100℃以下では樹脂の溶融粘度が高いか、または溶融しないため、具体的には100℃から300℃の範囲が好適である。300℃以上では樹脂の熱分解が起こるため好ましくない。300℃以下であっても高温下での着色や劣化、熱分解等を防止するために窒素雰囲気下で短時間に混合することが好ましい。具体的な混合時間としては20分以内が推奨される。また、樹脂中のオリゴマー、残存モノマー、発生ガス等の除去のためにベント口を設置して減圧下に混合することも可能である。
【0019】
ポリアセタール樹脂と脂肪族エステル構造を有する重合体の混合樹脂組成物は、脂肪族エステル構造を有する重合体とオキシメチレン構造を有する重合体との単純ブレンドのみに限定されるものではなく、触媒の存在下に溶融状態でのエステル交換反応等により生成する共重合体等も含まれる。また、オキシメチレン構造を有する重合体の安定化工程で脂肪族エステル構造を有する重合物を添加する製造方法は均一な樹脂組成物を与える。
【0020】
本発明の樹脂成形体の製造方法に使用するカルボキシル基と反応性を有する化合物としては、樹脂組成物のカルボキシル末端基を封鎖することのできる化合物であれば特に制限はなく、PLAやポリアセタール樹脂の熱分解や加水分解などで生成する乳酸やギ酸などのカルボキシル基も封鎖することができる。
【0021】
カルボキシル基と反応性を有する化合物としては、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物及びアミド化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を使用できる。
【0022】
本発明で用いるカルボキシル基との反応性化合物として用いることのできるオキサゾリン化合物の例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−5,5−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、4,4,6−トリメチル−2−ビニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、スチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のビニルオキサゾリン、1,3−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、1,4−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2−ビス(2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4,4−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2−エチレンビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2−テトラエチレンビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2−シクロヘキシレンビス(4−エチル−2−オキサゾリン)等のビスオキサゾリン化合物が挙げられ、好ましくは、スチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、1,3−フェニレンビス(2−オキサゾリン)が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明で用いるカルボキシル基との反応性化合物として用いることのできるカルボジイミド化合物の例としては、少なくとも分子中に1個以上のカルボジイミド基を有しており、一般的に良く知られた方法で合成されたものを使用することができ、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0024】
本発明で用いるカルボキシル基との反応性化合物として用いることのできるエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。より好ましく用いられるエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物や、グリシジルエステル化合物が挙げられる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリエチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−グリシジルエーテル、4,4’−ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本発明で用いるカルボキシル基との反応性化合物として用いることのできるアミド化合物としては、PA6/12共重合体、PA66/12共重合体、PA6/66/610共重合体、PA6/66/12共重合体、PA6/66/610/12共重合体及びダイマー酸ポリアミドからなる群から選ばれる、1種類以上のポリアミドが好適に使用できる。
【0026】
上記カルボキシル基との反応性化合物は1種または2種以上の化合物を任意に選択して使用することができる。カルボキシル基との反応性化合物の配合量は、ポリアセタール樹脂と脂肪族エステル構造を有する重合体成分の合計100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、0.05〜10重量部であることがさらに好ましい。また、脂肪族エステル構造を有する重合体と予め溶融混練した後、ポリアセタール樹脂と配合することができる。
さらに、本発明においては、ポリマー末端や酸性低分子化合物のカルボキシル基との反応性化合物の反応触媒を添加することが好ましい。
【0027】
次に、本発明の樹脂成形体の製造方法について説明する。使用する装置は、特に限定されるものではなく、例えば、溶融混練装置、ギヤポンプ、所望の形状のダイによって構成することができ、溶融混練する際のブレーカープレートにフィルターを設置してフィッシュアイを除去する。
かかるフィッシュアイとは、本発明の製造方法によって得られた樹脂をフィルムに成形し、該フィルムを目視にて観察して存在する異物を定義したものである。フィッシュアイの形状としては、例えば丸型、楕円状型等様々な形状が観察される。フィッシュアイの大きさは、丸型以外の場合は長軸の長さで規定した。
【0028】
フィルターは、金網、焼結フィルターなどが挙げられる。金網は、平織り、綾織、平畳織、クリンプ網、溶接金網、亀甲金網など何れを使用しても良い。焼結フィルターは、ステンレスに代表される金属金網を多積層させたものを焼結により一体化したもの、金属繊維からならフェルトを焼結処理して得られる不織布フィルター、金属、セラミック、プラスッチク等の粉体を熱および圧力により粉体同士を直接接着した物など何れを使用しても良い。この焼結フィルターは金網などの平面に1種類の孔を有するものでなく、押し付けられた金属繊維等が絡み合った各種孔径を有する立体構造のフィルターである。また、これらのフィルターメディアを加工して得られる、ディスク型フィルター、チューブ型フィルター、フラット型円筒フィルター、プリーツ型円筒フィルターを使用しても良い。
【0029】
低フィッシュアイ数レベルを達成するには、絶対ろ過精度が50μm以下、好ましくは10μm以下の焼結フィルターの方が有利ではあるが、500メッシュ以上、好ましくは700メッシュ以上であれば平面上の金網フィルターからなるスクリーンパックも同様に使用できる。
ここで、スクリーンパックとは、複数のフィルターを重ね合わせた構成フィルターの呼称として使用する。また、絶対ろ過精度とは「そのろ過材により95%以上が補足可能な最小グラスビーズ径」として定義されるため、数値が低い程、その精度が高いことを示している。
本発明の樹脂成形体の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、繊維を製造する際には、メルトブロー法や溶融紡糸法などの公知の方法で製造することができる。また、フィルムを製造する際には、Tダイ法又はインフレーション法などの公知の方法で製造することができる。
製造時の押出温度は、特に限定されるものではなく、通常は原料として用いるポリアセタール樹脂及び脂肪族エステル構造を有する重合体の両方またはいずれかが溶融する温度以上、具体的には、原料樹脂の流動開始温度以上で行うのが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。
なお、実施例中で示された評価試験は、以下の方法で行った。
【0031】
[フィッシュアイ測定]
本発明の製造方法で得られた樹脂を、Tダイで厚み30μmのフィルムに成形し、5cm角中に含まれる長軸の長さが30μm以上のフィッシュアイを目視で確認した。
【0032】
[可紡性の評価]
シリンダー設定温度200℃の溶融混練装置、ギアポンプ、吐出ノズル(0.8mm径、120ホール)で構成される紡糸装置を用いて、吐出量を3kg/hに固定して巻取り、ノズル直下で糸切れするときの回転数を記録し、これを可紡性の指標として次の通り判定した。最高巻取り回転数が300m/min以上のときを◎、100m/min以上300m/min未満のときを○、100m/min以下のときを×として示した。
【0033】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
二つの円が一部重なった内断面を有し、内断面の長径が20cmであり、周囲にジャケットを有する、長いケース内に1対のシャフトを備え、それぞれのシャフトには互いにかみ合う擬三角形板が多数はめ込まれ、擬三角形板の先端でケース内面および相手の擬三角形板の表面をクリーニングできる連続混合機を重合装置として2台、更には、シャフトには互いにかみ合う擬三角形板の代わりにスクリュー様の羽根が多数はめ込まれた構造を有し、供給口部分から停止剤溶液を注入し、連続的に重合体と混合せしめる停止剤混合機を直列に接続したものを使用し、オキシメチレン共重合体の製造を実施した。
第1段目の重合機の入口に、80kg/hr(889kmo1/hr)のトリオキサンおよび8kg/hr(0.1kmol/hr)の1,3−ジオキソランと、触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートのベンゼン溶液を用い、モノマー合計量に対して三フッ化ホウ素として20ppmになるように連続的に供給した。また分子量調節剤としてメチラールを、極限粘度1.1〜1.5dl/gに調節するのに必要な量を連続的に供給した。ベンゼンの合計使用量はトリオキサンに対して1重量%以下であった。また、停止剤混合機の入口より、使用した触媒量の2倍モルのトリフェニルホスフィンをベンゼン溶液で連続的に供給して重合を停止し、出口より粗共重合体を収得した。なお、連続重合機は、各々シャフト回転数を約40rpmとし、また第1段目ジャケット温度を65℃、第2段目および停止剤混合機ジャケット温度を各々40℃に設定して重合運転を行った。また、得られた粗共重合体100重量部に、トリエチレングリコールービス[3−(3−t−ブチルー5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバガイギー社製、商品名イルガノックス245)0.3重量部、メラミン0.025重量部を添加、混合した後、ベント付同方向回転型二軸押出し機と二軸攪拌翼型重合機とを組み合わせて、220℃で加熱溶融した。その後、ギアポンプで抜き出し水中下で冷却してペレット化した。得られたペレットを120℃、24時間熱風乾燥機で乾燥して最終サンプルとした。
脂肪族エステル構造を有する重合体は、PLA:ユニチカ株式会社製テラマック TE−2000、PEC:三菱ガス化学株式会社製ユーペックPEC−350、PBS:昭和高分子株式会社製ビオノーレ♯1001、PBSA:昭和高分子株式会社製ビオノーレ♯3001をそのまま用いた。
カルボキシル基との反応性化合物は、カルボジイミド基含有ポリマー(日清紡株式会社製、カルボジライト LA-1)を用いた。
上記の各材料を表1に示す組成に従い、シリンダー設定温度200℃の押出成形機により可塑化・溶融し、各種フィルターを通過させた後、評価試験を行った。結果を表1に示した。
【0034】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂と脂肪族エステル構造を有する重合体を、加熱溶融し押出加工する際に、ブレーカープレートにフィルターを取り付け、フィッシュアイを低減させることを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
ポリアセタール樹脂、脂肪族エステル構造を有する重合体およびカルボキシル基と反応性を有する少なくとも1種の化合物を、加熱溶融し押出加工する際に、ブレーカープレートにフィルターを取り付け、フィッシュアイを低減させることを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
フィルターが、500メッシュ以上のスクリーンパックであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
フィルターが、絶対ろ過精度が50μm以下である焼結フィルターであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
焼結フィルターが、金属繊維又は粉体からなることを特徴とする請求項4に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
脂肪族エステル構造を有する重合体が、ポリ乳酸、ポリエステルカーボネート、ポリブチレンサクシネート又はポリブチレンサクシネートアジペートである請求項1〜5何れか1項記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
樹脂成形体が、繊維又はフィルムである請求項1〜6何れか1項記載の樹脂成形体の製造方法。

【公開番号】特開2011−37172(P2011−37172A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187575(P2009−187575)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】