説明

樹脂成形品の成形方法および成形装置、並びに熱可塑性樹脂製シートの厚みの調整装置

【課題】一対のローラーにより熱可塑性樹脂製シートの厚み調整をするに際し、成形効率を確保しつつローラーの外表面とシートの表面との間の滑りを防止する一方、二次成形に適した状態を保持しながら、シートのローラーの外表面による巻き付きを防止することが可能な樹脂成形品の成形方法および成形装置、並びに熱可塑性樹脂製シートの厚みの調整装置を提供する。
【解決手段】Tダイ28の押出スリット34から単位時間当たり所定押出量を間欠的に、かつ所定の厚みにて所定押出速度で下方に押し出された溶融状態のシートをそのシート温度より低い表面温度に設定され、外表面に凹凸状のシボを設けた一対のローラー30A,30Bで挟み込み、所定押出速度以上の速度で下方へ送り出し、シートと金型32A,32Bとの間に形成された密閉空間を減圧、および/または加圧によって金型形状に賦形する樹脂成形品の成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形方法および成形装置、並びに熱可塑性樹脂製シートの厚みの調整装置に関し、より詳細には、一次成形により下方に垂下形態で押し出され、二次成形により成形される熱可塑性樹脂を利用する樹脂成形品の成形方法および成形装置、並びに熱可塑性樹脂製シートの厚みの調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえばサンドイッチパネルを製造するのに、押出による一次成形と、ブロー(あるいは真空)による二次成形とを組み合わせた成形方法が用いられている。
このような成形方法によれば、押出された溶融状態の樹脂をそのまま利用して、ブロー(あるいは真空)成形することにより、いったん成形した樹脂を再加熱することに起因する加熱の不均一性等の技術的問題点を引き起こすことなしに、サンドイッチパネルを成形することが可能である。
特に、押出された溶融状態の樹脂をそのまま下方に垂下させ、鉛直方向に延びる樹脂を型締することによりブロー(あるいは真空)成形することにより、たとえば樹脂を横方向に押出する場合に比べて、二次成形の型締まで溶融状態の樹脂を支持する必要なしに非接触状態で押出ダイより送り出すことが可能である。
このような成形技術が、たとえば、特許文献1ないし特許文献3に開示されている。
【0003】
特許文献1は、2枚の表面材により挟まれた発泡性芯材により構成されるサンドイッチパネルを対象に、一対のシート状パリソンを押出ヘッドから下方に押出し、分割金型間に配置する一方、予め成形した発泡体を一対のシート状パリソン間に配置した状態で、分割金型を型締して、ブロー成形することにより、発泡体を内装した樹脂中空成形品であるサンドイッチパネルを成形する方法を開示する。
より詳細には、一対のシート状パリソンの各々について、押出ヘッドから押し出されるシート状パリソンと装飾シートとが、一対の圧着ロールにより互いに圧着され、内側がシート状パリソン、外側が装飾シートからなる加飾パリソンとされたうえで、分割金型間に配置されるようにしている。
【0004】
特許文献2は、2枚の合成樹脂シートをダイから押出て鏡面ヒートローラーの間を通し、その表面を鏡面化した後、ブロー成形型に供給して2枚のシート間へ加圧空気を送り込み、シートを成形空間に合致するように変形させて製品を得る点を開示する。
より詳細には、鏡面ヒートローラーの間隔をポリプロピレンシートの厚さより僅かに狭くするとともに、鏡面ヒートローラーを130℃に加熱しておき、ポリプロピレンシートを鏡面ヒートローラーの間を通すことにより、シートを熱圧して、シートの表面の押出筋を消し、ローラーの表面を転写することにより、ローラーと同様の鏡面肌に矯正する点が開示されている。
【0005】
特許文献3は、押出成形機に接続した少なくとも2つのダイから1枚宛のシートを押出し、この直後において、各シートを一対の挟持ローラーで挟持し、各シートの少なくとも表面を加熱して、そのしわをのばし、光沢出しを行い、この光沢出しされた少なくとも2枚のシートをけん引し、ブロー成形金型内に供給し、ブロー成形金型を閉じて2枚のシートを張り合わせ、ブロー成形する点を開示する。
より詳細には、各シートのドローダウンに応じて、シートのけん引速度を制御したり、あるいは押出成形機のスクリュー回転数を調整することにより、光沢出しされた両シートがほぼ同時に成型金型内に供給されるようにしている。ここに、ドローダウンとは、時間経過とともにシートの自重により溶融状態のシートが引き伸ばされてシートの上方ほど薄肉となる現象をいい、ちなみにネックインとは、ドローダウンに起因してシートの幅方向に収縮してシート幅が小さくなる現象をいう。
【0006】
以上より、特許文献1ないし3において、下方に押し出された溶融樹脂を金型により成形する前に、溶融樹脂を一対のローラー間に通している点では共通であるが、特許文献1における一対のローラーは、押出ヘッドから押し出されるシート状パリソンと装飾シートとを圧着する圧着ローラーに過ぎず、一方、特許文献2および特許文献3においては、一対のローラーの間隔を溶融状態のシート状樹脂の厚みより小さく設定するとともに、ローラーの温度を溶融状態のシート状樹脂の温度に近接させた状態で、シート状樹脂をして一対のローラーの間を通過させることにより、シート状樹脂が賦形されて、そのシート面に鏡面化あるいは光沢化することが可能である。
しかしながら、これらの先行の成形技術においては、二次成形前に押し出された溶融状態の樹脂をそのまま下方に垂下させることに起因して、以下のような技術的問題点が引き起こされる。
【0007】
第1に、溶融状態のシートに生じるドローダウンあるいはネックインにより、シートの押出方向あるいは幅方向に金型による成形前のシート厚みが不均一となる点である。
ブローあるいは吸引(真空)による二次成形により最終的にシートの賦形を行う場合、二次成形前のシートの厚みが押出方向に不均一であると、二次成形後の最終的なシートの厚みに影響を及ぼす。
このような点に対処するために、たとえば、シートの成形中に、ドローダウンに応じて成形の進行に伴いシートの押出速度を増大するように変動させるとすれば、それにより成形終盤に相当するシートの上部ほどシートの厚みを厚肉化することが可能であり、ドローダウンに伴うシートの上部の薄肉化に対処可能であるように考えられる。
しかしながら、このようなシートの押出速度の変動は、シートの押出圧力の変動を引き起こすことから、押出スリットから押し出される溶融樹脂のスウェルの変動を生じ、かえってスウェルの変動に伴ってシート厚みが不均一となる。
ちなみに、特許文献3において、各シートのドローダウンに応じて、シートのけん引速度を制御したり、あるいは押出成形機のスクリュー回転数を調整する点が開示されているが、これは各シートのドローダウンの発生を抑制あるいは解消するのではなく、両シートにドローダウンが生じることを前提に、シートのけん引速度を制御したり、あるいは押出成形機のスクリュー回転数を調整することにより、両シートがほぼ同時に成型金型内に供給されるようにしているに過ぎない。
【0008】
また、シートに用いる樹脂として、そのMFR値あるいはメルトテンション値が所定値以下である種類を採用すれば、このようなドローダウンあるいはネックインある程度防止可能だが、採用可能な材料の制約となってしまい実用的でない。特に、薄肉シートを成形する場合には、MFR値としては大きいほうが好ましいため、MFR値の制限では対処できない場合もある。
【0009】
第2に、第1の技術的問題点である成形前のシート厚みの不均一性を解消するために、一対のローラーを用いて溶融状態のシート状樹脂を下方に送り出すとすれば、かえってシート状樹脂のローラーによる巻き込みを生じてしまう点である。
より詳細には、一対のローラーにより溶融状態のシート状樹脂を確実に送り出すためには、ローラーの表面とシートの表面との間の動摩擦力を確保することが重要である一方、一対のローラーが溶融状態のシート状樹脂を挟み込んで下方に送り出すことにより、一対のローラーはシート状樹脂により熱伝導を通じて加熱されるため、定常状態において、一対のローラーの外表面温度は、シート状樹脂の温度に近接する。
この場合、定常状態において、一対のローラーによるシート状樹脂の押圧力を増大するほど溶融状態のシート状樹脂が一対のローラーの外表面にへばりつきやすくなり、ローラーの回転とともに下方に送り出されずに、ローラーの外表面に巻き付いてしまうことがある。
だからといって、押圧力の低減により動摩擦力を低下すれば、一対のローラーの外表面とシート状樹脂の表面との間に滑りを生じ、シート状樹脂を確実に下方に送り出すことが困難となる。
【0010】
この点、特許文献4は、押出ヘッドより横断面形状が半弦状の一対のシート状パリソンを押し出し、この両シート状パリソンそれぞれをローラー状の案内部材にて両シート状パリソンの対向間隔を広げるように支持するとともに平板状にしながら、分割金型の合わせ面近傍に垂下し、分割金型を締めるとともにシート状パリソン内に圧力流体を導入して中空体を形成する中空成形方法を開示する。
より詳細には、押出ヘッドより押し出し垂下される2枚のシート状パリソンが、案内部材にて対向間隔が広がる方法に案内され、このときの案内抵抗により押し出しヘッドから案内部材間におけるパリソンのドローダウンが防止されるとともに、パリソンは案内部材に沿って均一な平板状に成形される。また、特許文献4においては、一対のローラーに相当する案内部材を同期回転駆動するとともに、案内部材の内部に温度調整装置を設け、案内部材の表面温度をシート状パリソンの温度に近い温度にコントロールするようにしてもよいと記載されている。
【0011】
しかしながら、特許文献4においては、パリソンのドローダウン防止を開示するものの、それは一対のローラー状の案内部材の対向間隔を広がる方向に配置することにより実現するものであり、案内部材を同期回転駆動するとともに、案内部材の内部に温度調整装置を設け、案内部材の表面温度をシート状パリソンの温度に近い温度にコントロールする点は、任意的な構成に過ぎず、同期回転駆動のための具体的構成を開示するものでなく、また温度調整装置について案内部材の表面温度をシート状パリソンの温度より低く設定する点を開示するものでもなく、ましてや案内部材によるシート状パリソンの送り出しに起因する、案内部材とシート状パリソンとの間の滑り、あるいは案内部材によるシート状パリソンの巻き付きという技術的問題点について開示はおろか示唆すらなされていない。
【0012】
第3に、成形効率を向上するためにローラーの回転速度を増大するほど、ローラーの外表面への巻き付きが顕著となる点である。かといって、ローラーの外表面への巻き付きを防止するために、ローラーの回転速度を低減するとすれば、成形効率の低下を引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、一対のローラーにより熱可塑性樹脂製シートの厚み調整をするに際し、成形効率を確保しつつローラーの外表面とシートの表面との間の滑りを防止する一方、二次成形に適した状態を保持しながら、シートのローラーの外表面による巻き付きを防止することが可能な樹脂成形品の成形方法および成形装置、並びに熱可塑性樹脂製シートの厚みの調整装置を提供する。
【特許文献1】特開2000−218682号公報
【特許文献2】特開平3−27922号公報
【特許文献3】特開平11−5248号公報
【特許文献4】特公告04−2087号公報
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の樹脂成形品の成形方法は、
熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
Tダイに設けられた所定間隔の押出スリットから溶融状態のシート状に下方に垂下するように、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出す段階と、を有し、
それにより、押出スリットから溶融状態のシート状樹脂が所定の厚みにて所定押出速度で下方に押し出され、
下方に押し出された溶融状態のシート状樹脂の最下部が、押出スリットの下方に配置され、かつ間隔がシート状樹脂の前記所定の厚みより広げられた一対のローラー間を通過した後に、一対のローラー同士を相対的に近接させることにより、一対のローラーでシート状樹脂を挟み込み、ローラーの回転駆動により前記所定押出速度以上の速度で下方へ送り出す段階と、
ローラーにより送り出された溶融状態のシート状樹脂を一対のローラーの下方に配置された金型の側方に配置する段階と、
シート状樹脂と金型との間に形成された密閉空間を減圧、および/またはシート状樹脂を金型に向かって加圧することによって金型形状に沿った形状に成形する段階とを有し、
該シート状樹脂の送り出し段階は、それぞれ外表面に凹凸状のシボを設けた前記一対のローラーへ供給される該シート状樹脂の厚みに係わらず、前記一対のローラーにより挟み込まれる該シート状樹脂が押しつぶされないように一方のローラーを他方のローラーに向かって押圧しつつ、前記一対のローラーそれぞれの表面温度を前記一対のローラーに向かって押し出される溶融状態のシート状樹脂の温度より所定温度範囲内で低く設定する段階を有する、構成としている。
【0015】
以上の構成を有する樹脂成形品の成形方法によれば、一次成形(押出成形)により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態のシート状樹脂として押し出し、二次成形(ブロー成形あるいは真空成形)により押し出されたシート状樹脂を金型を用いて成形することが可能である。
より詳細には、まず、溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留し、Tダイに設けられた所定間隔の押出スリットから、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。
次いで、押出スリットの下方に配置された一対のローラー同士の間隔をシート状樹脂の厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態のシート状樹脂の最下部が一対のローラー間に円滑に供給されるようにする。
次いで、一対のローラー同士を互いに近接させて、一対のローラー同士の間隔を狭めてシート状樹脂を挟み込み、ローラーの回転によりシート状樹脂を下方に送り出す。その際、一対のローラー間に供給されるスウェルした状態のシート状樹脂の厚みに係わらず、一対のローラーにより挟み込まれるシート状樹脂が押しつぶされないように一方のローラーを他方のローラーに向かって押圧することにより、一対のローラー同士の間隔が供給されるシート状樹脂の厚みに追従するようにするとともに、シート状樹脂が一対のローラーに供給されている間、一対のローラーによるシート状樹脂の下方への送り出し速度が、シート状樹脂の押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整する一方、一対のローラーそれぞれの表面温度を供給されるシート状樹脂の温度より所定温度範囲内で低く設定する。
一対のローラーによるシート状樹脂の下方への送り出しは、一対のローラーの外表面とシート状樹脂の外表面との間に作用する動摩擦力が支配因子であり、この動摩擦力は、ローラーとシート状樹脂それぞれの材質により定まる動摩擦係数と、ローラーからのシート状樹脂への押圧力とにより定まるところ、一対のローラーによるシート状樹脂の押圧力を制限しつつ、一対のローラーの表面それぞれに凹凸状のシボを設けて動摩擦係数を増大させることにより、一対のローラーそれぞれの外表面と対応するシート状樹脂の表面との間に滑りを生じることなしに確実にシート状樹脂を下方に送り出すとともに、一対のローラーそれぞれの表面温度をシート状樹脂の温度より所定温度以上低くすることにより、ローラーの回転速度を低減することなしに一対のローラーによるシート状樹脂の巻き付きを防止する一方、シート状樹脂の温度より所定温度以上低くならないようにすることにより、シート状樹脂を二次成形に適した溶融状態に保持することが可能となる。
【0016】
この状態で、スウェルした状態のシート状樹脂が一対のローラーにより下方に送り出されるにつれて、鉛直方向に垂下するシート状樹脂の長さが長くなり、それに起因して垂下するシート状樹脂の上部ほどシート状樹脂の自重により薄肉化されるところ(ドローダウンあるいはネックイン)、その一方で一対のローラーによる送り出し速度を押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整することにより、シート状樹脂は一対のローラーに下方に引っ張られ、シート状樹脂は延伸薄肉化される。
このとき、時間経過とともにローラーの回転速度を低下させて、送り出し速度を熱可塑性樹脂製シートの押出速度に近づけるように調整する。これにより、シート状樹脂の上部ほど一対のローラーによる下方への引っ張り力が低下することから、相対的にこのような引っ張り力に伴う延伸薄肉化が低減され、ドローダウンあるいはネックインに伴う薄肉化を相殺し、ドローダウンあるいはネックインを有効に防止し、以て押出方向に一様な厚みを形成することが可能である。
次いで、押出方向に一様な厚みを形成したシート状樹脂を一対のローラーの下方に配置された分割金型間に配置して、所定量のシート状樹脂の押出が完了する時点で分割金型を型締めし、シート状樹脂と分割金型との間の空気を加圧および/または減圧することによって金型形状に沿った形状に成形することにより、二次成形の際の賦形に悪影響を与えることなく、押し出し方向に所望の厚みを備えた樹脂成形品を成形することが可能となる。
【0017】
また、前記一対のローラーの表面温度の設定段階は、前記一対のローラーそれぞれの内部を水冷することにより、前記一対のローラーの表面温度を低下させる段階を有し、シート状樹脂の種類に応じて、冷媒の温度を設定するのがよい。
さらに、シート状樹脂が非晶性樹脂の場合、前記所定温度範囲は、約80度ないし約95度の範囲であるのがよい。
さらにまた、シート状樹脂が結晶性樹脂の場合、前記所定温度範囲は、約50度ないし約90度の範囲であるのがよい。
加えて、冷媒の温度は、シート状樹脂を成形中、一定温度に保持するのがよい。

【0018】
上記課題を解決するために、本発明の樹脂成形品の成形方法は、
第1熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した第1熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
貯留された第1熱可塑性樹脂を第1Tダイから溶融状態のシート状に下方に垂下するように間欠的に押し出す段階と、
下方に押し出された第1シート状樹脂を第1Tダイの下方に配置された第1組の一対のローラーで挟み込み、ローラーの回転駆動により第1シート状樹脂を下方へ送り出す段階とを有し、
前記送り出し段階は、第1シート状樹脂の押出速度に応じて、前記送り出し速度が該押出速度以上となる範囲で前記ローラーの回転速度を調整する段階を有し、
該第1シート状樹脂の送り出し段階は、それぞれ外表面に凹凸状のシボを設けた前記第1組の一対のローラーへ供給される該第1シート状樹脂の厚みに係わらず、前記第1組の一対のローラーにより挟み込まれる該第1シート状樹脂が押しつぶされないように一方のローラーを他方のローラーに向かって押圧しつつ、前記第1組の一対のローラーそれぞれの表面温度を前記第1組の一対のローラーに向かって押し出される溶融状態の第1シート状樹脂の外表面温度より所定温度範囲内で低く設定する段階を有し、
さらに、第2熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した第2熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
貯留された第2熱可塑性樹脂を第2Tダイから溶融状態のシート状に下方に垂下するように間欠的に押し出す段階と、
下方に押し出された第2熱シート状樹脂を第2Tダイの下方に配置された第2組の一対のローラーで挟み込み、ローラーの回転駆動により第2シート状樹脂を下方へ送り出す段階とを有し、
前記送り出し段階は、第2シート状樹脂の押出速度に応じて、前記送り出し速度が該押出速度以上となる範囲で前記ローラーの回転速度を調整する段階を有し、
該第2シート状樹脂の送り出し段階は、それぞれ外表面に凹凸状のシボを設けた前記第2組の一対のローラーへ供給される該第2シート状樹脂の厚みに係わらず、前記第2組の一対のローラーにより挟み込まれる該第2シート状樹脂が押しつぶされないように一方のローラーを他方のローラーに向かって押圧しつつ、前記第2組の一対のローラーそれぞれの表面温度を前記第2組の一対のローラーに向かって押し出される溶融状態の第2シート状樹脂の外表面温度より所定温度範囲内で低く設定する段階を有し、
さらに、ローラーにより送り出された第1および第2の溶融状態のシート状樹脂を、第1組および第2組の一対のローラーの下方に配置された分割金型間に配置して、分割金型の一方の金型と第1シート状樹脂の間の空気を減圧することによって第1シート状樹脂を一方の金型キャビティに密着させるとともに、分割金型の他方の金型と第2シート状樹脂の間の空気を減圧することによって第2シート状樹脂を他方の金型キャビティに密着させた後、分割金型を型締めする段階を有し、
分割金型の型締めにより金型外周のピンチオフ形成部を通じて第1および第2シート状樹脂を溶着一体化することにより、密閉中空部を有する樹脂成形品を形成する構成としている。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の熱可塑性樹脂製シートの厚み調整装置は、
押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの厚み調整装置であって、
それぞれ外表面に凹凸状のシボが設けられ、押出ダイの下方の所定位置に設けられた一対のローラーであって、各々の回転軸が互いに平行に略水平に配置された一対のローラーと、
前記一対のローラーを回転駆動するローラー回転駆動手段と、
前記一対のローラーのうち、いずれか一方のローラーを対応するローラーに対して、あるいは両ローラーを前記一対のローラーを包含する平面内で移動させることにより、前記一対のローラー同士の間隔を調整する間隔調整手段と、
押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの押出速度と、前記一対のローラー間に挟み込まれた熱可塑性樹脂製シートの前記一対のローラーによる下方への送り出し速度との相対速度差を調整する相対速度差調整手段と、
前記一対のローラーの表面温度を前記一対のローラーに向かって押し出される溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの温度より所定温度範囲内で低く設定するように、前記一対のローラーそれぞれの表面温度を調整するローラー表面温度調整手段とを有する、構成としている。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の熱可塑性樹脂の成形装置は、
熱可塑性樹脂を押出成形により賦形し、一次成形された熱可塑性樹脂を垂下する形態で押し出す一次成形部と、一次成形部により押し出された熱可塑性樹脂をブロー成形あるいは真空成形により二次成形する二次成形部とを有する、熱可塑性樹脂の成形装置において、
前記一次成形部は、
熱可塑性樹脂を溶融混練する溶融混練手段と、
溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する貯留手段と、
貯留された熱可塑性樹脂を溶融状態のシート状に垂下するように、間欠的に押し出す押出スリットと、を有し、
前記二次成形部は、
垂下するシート状樹脂を挟んで、開位置と閉位置との間でシート面に対して略直交する向きに可動であり、互いに対向する面にキャビティを形成した一対の分割金型と、
開位置と閉位置との間でシート面に対して略直交する向きに一対の分割金型を移動させる金型移動手段と、
を有し、
さらに、それぞれ外表面に凹凸状のシボが設けられ、前記押出ダイの下方かつ前記一対の分割金型の上方の所定位置に位置決めされた一対のローラーであって、各々の回転軸が互いに平行に略水平に配置され、一方が回転駆動ローラーであり、他方が被駆動ローラーである一対のローラーと、
前記回転駆動ローラーを回転駆動するローラー回転駆動手段と、
前記一対のローラーのうち、いずれか一方のローラーを対応するローラーに対して、あるいは両ローラーを前記一対のローラーを包含する平面内で移動させるローラー移動手段と、
前記一対のローラーの表面温度を前記一対のローラーに向かって押し出される溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの温度より所定温度範囲内で低く設定するように、前記一対のローラーそれぞれの表面温度を調整するローラー表面温度調整手段と、
熱可塑性シート状樹脂を前記一対のローラー間に挟み込んだ状態で、熱可塑性シート状樹脂の押出速度に応じて、前記一対のローラーによる熱可塑性シート状樹脂の下方への送り出し速度が該押出速度以上となる範囲で、前記回転駆動ローラーの回転速度を調整するローラー回転速度調整手段とを、有する構成としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る樹脂成形品の成形装置の第1実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
本実施形態では、樹脂成形品として、単一のシート状の成形品を対象としている。
図1に示すように、樹脂成形品の成形装置10は、押出装置12と、押出装置12の下方に配置された型締装置14とを有し、押出装置12から押出された溶融状態のパリソンPを型締装置14に送り、型締装置14により溶融状態のパリソンPを成形するようにしている。
【0022】
押出装置12は、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー16が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ24と、アキュムレータ24内に設けられたプランジャー26とを有し、ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ24に移送されて一定量貯留され、プランジャー26の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送り、押出スリット34を通じて連続的なシート状のパリソンPが押し出され、間隔を隔てて配置された一対のローラー30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、後に詳細に説明するように、シート状のパリソンPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置される。
【0023】
押出装置12の押出の能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、パリソンPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択する。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、パリソンPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、パリソンPの押出工程はなるべく短いのが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時cm以上、より好ましくは150kg/時cm以上である。例えば、スリット間隔が0.5mm、スリットの幅方向の長さが1000mmのTダイ28の押出スリット34から、密度0.9g/cmの熱可塑性樹脂を用いて厚さ1.0mm、幅1000mm、押出方向の長さが2000mmのシート状のパリソンPとして15秒間で押し出す場合、1.8kgの熱可塑性樹脂を1ショット15秒間で押し出したこととなり、押出速度は432kg/時であり、単位面積当りの押出速度は約86kg/時cmと算出することができる。
【0024】
後に説明するように、一対のローラー30の回転により一対のローラー30間に挟み込まれたシート状樹脂を下方に送り出すことで、シート状樹脂を延伸薄肉化することが可能であり、押し出されるシート状樹脂の押出速度と一対のローラー30によるシート状樹脂の送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるから、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
【0025】
図1に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された連続シート状のパリソンは、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット34は、後に説明するように、その間隔を可変とすることにより、連続シート状のパリソンPの厚みを変更することが可能である。
【0026】
図2(図2は、図面上左側が図1の下向きである)に示すように、Tダイ28の本体は、先端にダイリップ36aを有するダイ38aと、先端にダイリップ36bを有するダイ38bとを重ね合わせることにより構成され、ダイリップ36a、36b同士の間隔が押出スリット34の間隔を形成し、押出スリットの間隔を調整するのに、スリット隙間調整装置42およびスリット隙間駆動装置44が設けられる。ダイリップ36aおよびダイリップ36bそれぞれの近傍には、凹溝56aおよび56bが設けられ、ダイリップ36aおよびダイリップ36bを図面上上下方向に撓みやすくし、以てスリット隙間調整装置42およびスリット隙間駆動装置44それぞれにより、押出スリット34の間隔を調整するようにしている。スリット隙間調整装置42およびスリット隙間駆動装置44ともに既知の構成であるが、スリット隙間調整装置42は、ダイリップ36aを変形させて、シートの幅方向(図面の裏から表の方向)における厚みの均一性を調整するように機能し、一方スリット隙間駆動装置44は、ダイリップ36bを変形させて、シートの押出し方向(図面の左右方向)の厚みを調整するように機能し、Tダイ28に供給された熱可塑性樹脂は、図2に示すTダイ28の本体のマニホールドから樹脂流路33を通って押出スリット34からシートとして押出される。
【0027】
スリット隙間調整装置42としては熱膨張式または機械式があり、その両方の機能を併せ持つ装置を用いることが好ましい。スリット隙間調整装置42は押出スリット34の幅方向に沿って等間隔に複数配置され、各スリット隙間調整装置42によってスリット隙間Aをそれぞれ狭くしたり、広くしたりすることで幅方向におけるシートの厚みを均一なものとする。
【0028】
各スリット隙間調整装置42は、ダイボルト46と、ダイボルト46に連結された調整軸50と、調整軸50に締結ボルト52を介して連結された係合片54とから構成され、ダイボルト46、調整軸50および係合片54により、凹溝56aをまたぐように設けられる。より詳細には、スリット隙間調整装置42は一方のダイリップ36aに向けて進退自在に設けたダイボルト46を有し、その先端に圧力伝達部を介して調整軸50が配置されている。調整軸50には締結ボルト52により係合片54が結合されており、係合片54は一方のダイリップ36aに連結されている。ダイボルト46を前進させると圧力伝達部を介して調整軸50が先端方向に押出されて、一方のダイリップ36aが押圧される。これにより、ダイリップ36aは凹溝56aの部位で変形されてスリット隙間Aが狭くなる。スリット隙間Aを広くするにはこれと逆にダイボルトを後退させる。
【0029】
さらに、上記機械式の調整手段に合わせて熱膨張式の調整手段を用いることで精度良くスリット隙間Aを調整することができる。具体的には、図示しない電熱ヒーターにより調整軸50を加熱して熱膨張させることで一方のダイリップ36aが押圧され、スリット隙間Aが狭くなる。また、スリット隙間Aを広くするには電熱ヒーターを停止させ、図示しない冷却手段により調整軸50を冷却して収縮させる。
【0030】
それに対して、スリット隙間駆動装置44は、摺動バー58および駆動片60からなる。摺動バー58は摺動溝62内に配置されており、後述する駆動手段によってスリットの幅方向に可動される。駆動片60は他方のダイリップ36bに対して連結されている。摺動バー58がスリットの幅方向に進退するとこれに連動して駆動片60が他方のダイリップ36bを押し引きする。これにより、ダイリップ36bは凹溝56bの部位で変形されてスリット隙間Aを変動させることができる。
【0031】
Tダイ28より押出されたシートは、分割金型32間に垂下された状態で、つまり型締めされる時点において押出し方向の厚みが均一となるように調整することが好ましい。この場合、スリット隙間Aを押出し開始から徐々に広げ、押出し終了時に最大となるように変動させる。これによりTダイ28より押出されるシートの厚みは押出し開始から徐々に厚くなるが、溶融状態で押出されたシートは自重により引き伸ばされてシートの下方から上方へ徐々に薄くなるため、スリット隙間Aを広げて厚く押出した分とドローダウン現象により引き伸ばされて薄くなった分が相殺されて、シート上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
【0032】
図3乃至図5は、スリット隙間駆動装置の実施態様を示す図である。図3乃至図5それぞれにおいて、図面上左右方向が、図2の表から裏の方向に相当し、図示しないダイリップは、図面下方に位置する。他方のダイ38bには摺動バー58を収容し、摺動バー58の可動ガイドとなる摺動溝62がダイリップ36と平行して設けられている。さらに、摺動バー58には突起64が設けられており、破線で示す駆動片60には同様に破線で示す傾斜溝66が設けられている。傾斜溝66は摺動バー58の移動方向に対して傾斜角をもって一定の長さで形成されている。傾斜溝66内には前記摺動バー58の突起64が係合されており、摺動バー58を摺動溝62に沿って摺動させると突起64が傾斜溝66の壁面を押して摺動バー58の移動方向と垂直方向に駆動片60が移動される構造となっている。
【0033】
具体的には、後述する駆動手段によって、摺動バー58を図3上において右に摺動させると、摺動バー58に設けられた突起64が、傾斜溝66のダイリップ36側の壁面(図3において下側の壁面)を押圧して駆動片60を他方のダイリップ36bの側(図3において下方)へ移動させる。これにより駆動片60に連結された他方のダイリップ36bに力が伝達されて、スリット隙間Aを狭くするように他方のダイリップ36bが変形する。逆に、駆動手段によって、摺動バー58を図3上において左に摺動させると、突起64が傾斜溝66のダイリップ36から離れた側の壁面(図3において上側の壁面)を押圧して駆動片60を他方のダイリップ36bの反対側(図3において上方)へ移動させる。これにより、駆動片60に連結された他方のダイリップ36bはスリット隙間Aを広くするように変形する。以上の操作をアキュムレータ24からTダイ28に供給された熱可塑性樹脂の押出しに連動させることで、シートの押出し方向の肉厚調整が可能となる
【0034】
駆動手段としては、摺動バー58を図3において左右方向に移動させるためのものであれば適宜選択することが可能であるが、押圧力および送り精度などの観点からアクチュエータを用いて制御することが好ましい。例えば、ACサーボモータ68等の回転方向の動力を駆動源とする場合には、たとえば減速比1/64程度の精密減速機70を介してボールネジ72を回転させる。ボールネジ72にはボールナット74を一体に設けたスライドブロック76を配置させて、ボールネジ72の回転をダイリップ36の幅方向の動力に変換する。スライドブロック76にはブラケット80を介して摺動バー58が締結ボルト81により固定されている。スライドブロック76がガイドバー78に沿って移動することで、摺動バー58は図3において左右方向に移動される。
【0035】
他の駆動手段の態様を図4に示す。図4に示す通り、油圧シリンダー82等の直線方向の動力を駆動源とする場合には、摺動バー58の移動方向と平行に油圧シリンダー82を配置することができ、動力を直接摺動バー58に与えることができる。油圧シリンダー82は位置センサー84により移動距離を精度良く調整することが可能である。油圧シリンダー82のピストンロッド86先端にスライドブロック76を一体に固定する。スライドブロック76にはブラケット80を介して摺動バー58が締結ボルト81により固定されている。スライドブロック76がガイドバー78に沿って移動することで、摺動バー58は図4において左右方向に移動される。
【0036】
また、他の駆動手段の態様を図5に示す。ナット収納部88に回動自在のナット90を内蔵させ、摺動バー58に溶接した軸ネジ92をナット90の内ネジと噛み合わせる。ナット90は回動自在の調整ボルトと連動させて、回転ベルト等の動力源93により調整ボルトを回転させる構造とする。これにより、ナット90の回転方向によって軸ネジ92を介して摺動バー58を図5において左右方向に移動させることができる。
【0037】
図6を参照して、一対のローラー30について説明すれば、一対のローラー30は、押出スリット34の下方において、各々の回転軸が互いに平行にほぼ水平に配置され、一方が回転駆動ローラー30Aであり、他方が被回転駆動ローラー30Bである。より詳細には、図1に示すように、一対のローラー30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出されるシート状樹脂に関して、線対称となるように配置される。
それぞれのローラーの直径およびローラーの軸方向長さは、成形すべきシート状樹脂の押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、後に説明するように、一対のローラー30間にシート状樹脂を挟み込んだ状態で、ローラーの回転によりシート状樹脂を円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラー30Aの径は、被回転駆動ローラー30Bの径より若干大きいのが好ましい。ローラーの径は50〜300mmの範囲であることが好ましく、シート状パリソンとの接触においてローラーの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎてもシート状パリソンがローラーへ巻き付く不具合の原因となる。
一対のローラー30それぞれの外表面には、凹凸状のシボが設けられる。凹凸状のシボは、外表面において、シート状樹脂と接触する面全体に亘って均一に分布するように設けるのが好ましく、その深さおよび密度は、一対のローラー30によりシート状樹脂を円滑に下方に送り出すことが可能なように、一対のローラー30それぞれの外表面と、対応するシート状樹脂の表面との間に滑りが生じない観点から適宜に定めればよい。このような凹凸状のシボは、たとえば、従来既知のサンドブラスト処理によって形成されるが、ブラスト機において、たとえば粗さ60番程度を採用する。
なお、一対のローラー30それぞれに設ける凹凸状のシボは、シート状樹脂の表面にシボ模様を転写するために設けるのでなく、あくまで一対のローラー30と対応するシート状樹脂の表面との間に滑りが生じるのを防止するために設けている。そのために、シート状樹脂の表面にシボ模様を転写する場合には、一対のローラーのうち、一方をシボロールとし、他方をゴムロールとするのが通常であるところ、今回の一対のローラーにおいては、一対のローラーそれぞれの外表面にシボを設けることにより、一対のローラーそれぞれがシート状樹脂の対応する表面を確実に把持するようにする半面、一対のローラーによるシート状樹脂の押圧力を制限することにより、一対のローラーによりシート状樹脂を送り出す直後に、シート状樹脂の表面にシボ模様が転写されないようにしてもよい。
【0038】
回転駆動ローラー30Aには、ローラー回転駆動手段94およびローラー移動手段96が付設され、ローラー回転駆動手段94により、回転駆動ローラー30Aは、その軸線方向を中心に回転可能とされ、一方ローラー移動手段96により、回転駆動ローラー30Aは、一対のローラー30を包含する平面内で被回転駆動ローラー30Bとの平行な位置関係を保持しつつ、被回転駆動ローラー30Bに向かって近づき、あるいは被回転駆動ローラー30Bから離れるように移動されるようにしている。
【0039】
より詳細には、ローラー回転駆動手段94は、回転駆動ローラー30Aに連結した回転駆動モータ98であり、回転駆動モータ98の回転トルクをたとえば歯車減速機構(図示せず)を介して回転駆動ローラー30Aに伝達するようにしている。回転駆動モータ98は、従来既知のものであり、その回転数を調整可能なように回転数調整装置100が付設されている。この回転数調整装置100は、たとえば電動モーターに対する電流値を調整するものでよく、後に説明するように、シート状樹脂が押出スリット34から押し出される押出速度と、一対のローラー30の回転によりシート状樹脂が下方に送り出される送り出し速度との相対速度差を、シート状樹脂の押出速度に応じて、調整するようにしている。シート状パリソンPのローラーによる送り出し速度は、例えば直径100mmの一対のローラーを用いて、送り出し方向に長さ2000mmのシート状パリソンPを15秒間で送り出す場合、1ショット15秒間で約6.4回転することとなり、ローラーの回転速度は約25.5rpmと算出することができる。ローラーの回転速度を上げ下げすることでシート状樹脂であるパリソンPの送り出し速度を容易に調整することができる。
【0040】
図7に示すように、被回転駆動ローラー30Bが回転駆動ローラー30Aと同調して回転駆動するように、被回転駆動ローラー30Bは、その端周面102に亘ってローラーの回転軸を中心に回転可能な第1歯車104を有し、一方回転駆動ローラー30Aは、その端周面106に亘ってローラーの回転軸を中心に回転可能な、第1歯車104と噛み合う第2歯車108を有する。
図6に示すように、ローラー移動手段96は、ピストンーシリンダ機構97からなり、ピストンロッド109の先端が、回転駆動ローラー30Aをその軸線方向に回転可能に支持するカバー111に連結され、たとえば空気圧を調整することにより、ピストン113をシリンダー115に対して摺動させ、それにより回転駆動ローラー30Aを水平方向に移動するようにし、以て一対のローラー30同士の間隔を調整可能としている。この場合、後に説明するように、シート状樹脂の最下部が一対のローラー30の間に供給される前に、一対のローラー30同士の間隔を供給されるシート状樹脂の厚みより広げて(図6(A)の間隔D1を構成する開位置)、シート状樹脂が円滑に一対のローラー30の間に供給されるようにし、その後に一対のローラー30同士の間隔を狭めて、一対のローラー30によりシート状樹脂を挟み込み(図6(B)の間隔D2を構成する閉位置)、ローラーの回転によりシート状樹脂を下方に送り出すようにしている。ピストン113のストロークは、開位置と閉位置との距離となるように設定すればよい。
この場合、図6(B)の間隔D2を構成する閉位置において、回転駆動ローラー30Aと被回転駆動ローラー30Bとが間隔D2を隔てつつ、被回転駆動ローラー30Bが回転駆動ローラー30Aと同調して回転駆動するように、第1歯車104の歯先は、被回転駆動ローラー30Bの外周面より突出し、第2歯車108の歯先は、回転駆動ローラー30Aの外周面より突出するように設定している。これにより、回転駆動ローラー30Aの回転駆動力を被回転駆動ローラー30Bに伝達させることで両ローラーの回転速度を一致させた状態で、両ローラーによりシート状樹脂を挟み込んで、下方に送り出すことが可能となる。
また、空気圧を調整することにより、シート状樹脂が一対のローラー30の間を通過する際、ローラーからシート状樹脂に作用する押圧力を調整することも可能である。押圧力の範囲は、一対のローラー30が回転することにより、一対のローラー30の表面とシート状樹脂の表面との間に滑りが生じない一方で、一対のローラー30によりシート状樹脂が引きちぎられることのないようにしてシート状樹脂が確実に下方に送り出されるように定められ、樹脂の種類に依存するが、たとえば0.05MPaないし6MPaである。
【0041】
一対のローラー30は、金属製、たとえばアルミニウム製であり、一対のローラー30にはそれぞれ、溶融状態のシート状樹脂の温度に応じて、ローラーの表面温度を調整する表面温度調整手段が付設され、その構成は、ローラーの内部に冷媒を通し、この冷媒を循環させることにより、ローラーの表面が一対のローラー30により挟み込まれた溶融状態のシート状樹脂により過度に加熱されないように熱交換するようにしている。
より詳細には、図26に示すように、ローラーは、歯車機構が設けられる端部と反対側の端部200において、固定部202に対してベアリング204を介して回転自在に支承されている。ローラーの内部には、ローラーの軸線方向に延びる冷媒供給管206が固定部202に支持された状態で設けられる。冷媒供給管206は、固定部202において、ジョイント208を介して、冷媒供給源(図示せず)に接続されたホース210に接続され、冷媒である水をホース210、冷媒供給管206を通じてローラーの内部に供給するようにしている。冷媒供給管206は、ローラーとほぼ同心状に、開口端212をローラーの歯車機構が設けられる端部の内面214に対向させて配置される。それにより、開口端212から供給される冷媒は、ローラー端部の内面214において流れの向きを反転させて、ローラーの内周面216と冷媒供給管206の外周面218との間に形成される環状スペース220内を固定部202に向けて流れることにより、ローラーの周面全体を内側から冷却するようにしている。環状スペース220内を固定部202に向けて流れる冷媒は、固定部202に設けた排水管路222を通じてローラーから外部に排出される。
一対のローラー30の外表面は、一対のローラ30が溶融状態のシート状樹脂に接触することにより熱伝導を通じて加熱されるところ、上記の形態で一対のローラー30の外表面を内側から冷却することにより、一対のローラー30により挟み込まれた溶融状態のシート状樹脂がローラーの外表面にへばり付き、ローラーの回転によりローラーに巻き付き、2次成形に向けて下方に送り出されないような事態を有効に防止するようにしている。
この場合、巻き付き防止の観点からは、ローラーの表面温度を低くするのが好ましいが、一方二次成形の観点からは、ローラーの表面温度を低くし過ぎると、ローラーの表面により逆に溶融状態のシート状樹脂が過冷却され、二次成形に支障が生じることから、一対のローラー30それぞれの表面温度を一対のローラー30に向かって押し出される溶融状態のシート状樹脂の温度より所定温度範囲内で低く設定する必要がある。
この所定温度範囲は、溶融状態のシート状樹脂の種類に応じて定められ、たとえば、シート状樹脂が非晶性樹脂の場合、所定温度範囲は、約80度ないし約95度の範囲であり、シート状樹脂が結晶性樹脂の場合、所定温度範囲は、約50度ないし約90度の範囲である。この場合、一対のローラー30の表面温度を温度調整するために一対のローラー30それぞれの内部を水冷する際、シート状樹脂の種類に応じて、冷媒の温度を設定するのがよく、冷媒の温度は、シート状樹脂を成形中、一定温度に保持するのでもよい。
【0042】
一方、型締装置14も、押出装置12と同様に、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bと、金型32A,Bを溶融状態のシート状パリソンPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置とを有する。
【0043】
図1に示すように、2つの分割形式の金型32A,Bは、キャビティ116を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ116が略鉛直方向を向くように配置される。それぞれのキャビティ116の表面には、溶融状態のシート状パリソンPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられる。2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれにおいて、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部118が形成され、このピンチオフ部118は、キャビティ116のまわりに環状に形成され、対向する金型32A,Bに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型32A,Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、溶融状態のパリソンPの周縁にパーティングラインPLが形成されるようにしている。
なお、単一のシート状の樹脂成形品を成形する場合、分割形式の金型を用いて金型同士を型締めする代替として、単一の金型を用いて、かかる金型の側方に押出されたシート状パリソンPを配置し、型締めすることなしに、シート状樹脂と金型との間に形成された密閉空間を減圧、および/またはシート状樹脂を金型に向かって加圧することによって金型形状に沿った形状に成形してもよい。
【0044】
2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれの外周部には、型枠33A,Bが摺動可能の外嵌し、図示しない型枠移動装置に対して、型枠33A,Bそれぞれが、金型32A,Bに対して相対的に移動可能としている。より詳細には、型枠33Aは、金型32Aに対して金型32Bに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置されたパリソンPの一方の側面に当接可能であり、型枠33Bは、金型32Bに対して金型32Aに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置されたパリソンPの他方の側面に当接可能である。
【0045】
金型駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bはそれぞれ、金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型32A,Bの間に、溶融状態の連続シート状パリソンPが配置可能なようにされ、一方閉位置において、2つの分割金型32A,Bのピンチオフ部118が当接し、環状のピンチオフ部118が互いに当接することにより、2つの分割金型32A,B内に密閉空間が形成されるようにしている。なお、開位置から閉位置への各金型32A,Bの移動について、閉位置は、溶融状態の連続シート状パリソンPの中心線の位置とし、各金型32A,Bが金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている。
【0046】
図9に示すように、一方の分割金型32の内部には、真空吸引室120が設けられ、真空吸引室120は吸引穴122を介してキャビティ116に連通し、真空吸引室120から吸引穴122を介して吸引することにより、キャビティ116に向かってシート状樹脂を吸着させて、キャビティ116の外表面に沿った形状に賦形するようにしている。
【0047】
シート状パリソンPは、ポリプロピレン、エンジニアリングプラスチックス、オレフィン系樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、シート状パリソンPは、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分でかつ、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。
【0048】
また、シート状パリソンPには衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴムおよびその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で、かつ1.0g/10分以上あるものがよい。
【0049】
さらに、シート状パリソンPには添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
【0050】
以上の構成を有する樹脂成形品の成形装置10の作用を、図面を参照しながら以下に説明する。
まず、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレータ24内に所定量貯留し、Tダイ28に設けられた所定間隔の押出スリット34から、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。
【0051】
次いで、ピストンーシリンダー機構96を駆動することにより、図6(A)に示すように、一対のローラー30を開位置に移動し、押出スリット34の下方に配置された一対のローラー30同士の間隔をシート状樹脂の厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態のシート状樹脂の最下部が一対のローラー30間に円滑に供給されるようにする。なお、ローラー30同士の間隔をシート状樹脂の厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショットごとに二次成形が終了時点で行ってもよい。
次いで、ピストンーシリンダー機構96を駆動することにより、図6(B)に示すように、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めてシート状樹脂を挟み込み、ローラーの回転によりシート状樹脂を下方に送り出す。
その際、一対のローラー30間に供給されるスウェルした状態のシート状樹脂の厚みに係わらず、一対のローラー30により挟み込まれるシート状樹脂が押しつぶされないように一方のローラーを他方のローラーに向かって押圧することにより、一対のローラー30同士の間隔が供給されるシート状樹脂の厚みに追従するようにするとともに、一対のローラー30それぞれの表面温度を供給されるシート状樹脂の温度より所定温度範囲内で低く設定する。
より詳細には、一対のローラー30によりシート状樹脂を挟み込んで下方に送り出す間には、溶融状態のシート状樹脂により一対のローラー30の外表面は加熱される一方、ワンショットが完了し、次のショットまで一対のローラー30がシート状樹脂に接触していない間には、一対のローラー30の外表面は冷媒により冷却されるが、一対のローラー30それぞれの内部に冷媒を供給し、循環させることにより、一対のローラー30それぞれを内部から冷却するとともに、成形中、冷媒温度を所定温度に保持することにより、何回もショットを繰り返す定常状態においては、一対のローラー30それぞれの表面温度を冷媒温度に収束させることが可能である。
一対のローラー30によるシート状樹脂の下方への送り出しは、一対のローラー30の外表面とシート状樹脂の外表面との間に作用する動摩擦力が支配因子であり、この動摩擦力は、ローラーとシート状樹脂それぞれの材質により定まる動摩擦係数と、ローラーからのシート状樹脂への押圧力とにより定まるところ、一対のローラー30によるシート状樹脂の押圧力を制限しつつ、一対のローラー30の表面それぞれに凹凸状のシボを設けて動摩擦係数を増大させることにより、一対のローラー30それぞれの外表面と対応するシート状樹脂の表面との間に滑りを生じることなしに確実にシート状樹脂を下方に送り出すとともに、一対のローラー30それぞれの表面温度をシート状樹脂の温度より所定温度以上低くすることにより、ローラーの回転速度を低減することなしに一対のローラー30によるシート状樹脂の巻き付きを防止する一方、シート状樹脂の温度より所定温度以上低くならないようにすることにより、シート状樹脂を二次成形に適した溶融状態に保持することが可能となる。
その際、ローラー30の回転によりスウェルした状態のシート状樹脂が一対のローラー30に送られている間、一対のローラー30によるシート状樹脂の下方への送り出し速度が、熱可塑性樹脂製シートの押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整する。
より詳細には、スウェルした状態のシート状樹脂が一対のローラー30に下方に送り出されるにつれて、鉛直方向に垂下するシート状樹脂の長さが長くなり、それに起因して垂下するシート状樹脂の上部ほどシート状樹脂の自重により薄肉化されるところ(ドローダウンあるいはネックイン)、その一方で一対のローラー30による送り出し速度を押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整することにより、シート状樹脂は一対のローラー30により下方に引っ張られ、シート状樹脂は延伸薄肉化される。
このとき、時間経過とともにローラーの回転速度を低下させて、送り出し速度を熱可塑性樹脂製シートの押出速度に近づけるように調整する。
【0052】
たとえば、図10(A)に示すように、熱可塑性樹脂製シートの押出速度を一定にする一方、ローラーの回転速度を時間経過とともに段階的に減少させてもよいし、図10(B)に示すように、ローラーの回転速度を一定にする一方、熱可塑性樹脂製シートの押出速度を時間経過とともに段階的に減少させてもよいし、図10(C)に示すように、ローラーの回転速度の方が大きい範囲内でローラーの回転速度および熱可塑性樹脂製シートの押出速度ともに時間経過とともに段階的に変動させてもよい。
いずれの場合であっても、時間経過とともに、一対のローラー30の回転によるシート状樹脂の下方への送り出し速度と、シート状樹脂の押出速度との相対速度差が縮まることから、シート状樹脂の上部ほど一対のローラー30による下方への引っ張り力が低下し、相対的にこのような引っ張り力に伴う延伸薄肉化が低減され、ドローダウンあるいはネックインに伴う薄肉化を相殺し、ドローダウンあるいはネックインを有効に防止し、以て押出方向に一様な厚みを形成することが可能である。
【0053】
この場合、変形例として、押出スリット34の間隔の調整とローラーの回転速度の調整とを連動させてもよい。より詳細には、時間経過とともに、ローラーの回転速度を低下することにより、一対のローラー30によるシート状樹脂の下方への送り出し速度を低下させるとともに、スリット隙間調整装置42および/または44を用いて、押出スリット34の間隔を広げてもよい。これにより、一次成形の段階で、時間経過とともに、押出スリット34から下方に押し出されるシート状樹脂の厚みが厚肉化すると同時に、一対のローラー30によるシート状樹脂の延伸薄肉効果が低減することから、シート状樹脂の上部ほど、シート状樹脂の厚肉化およびシート状樹脂の延伸薄肉効果の低減の相乗効果により、より有効にドローダウンあるいはネックインを防止することが可能となる。
【0054】
特に、図10(B)および図10(C)のように、シート状樹脂の成形中に、シート状樹脂の押出速度を変動させる場合には、通常、プランジャー26による単位時間当たりの溶融樹脂の押出量を変動させる必要があり、溶融樹脂の押出量を変動させれば押出スリット34から押し出された直後の溶融樹脂のスウェルが影響を受けることから、このようなスウェルに伴うシート状樹脂の厚肉化の影響を防止するために、ローラーの回転速度の調整とともに押出スリット34の間隔の調整を併行して行うのが好ましい。
より具体的には、単位時間当たりの押出量を増大するほど一次成形の開始から二次成形終了までの成形時間を短縮し、それにより成形効率を向上するとともに、二次成形前にシート状樹脂が垂下している時間を短縮することでドローダウンあるいはネックイン発生の可能性を低減することが可能であるが、一方において、単位時間当たりの押出量を増大するほど押出スリット34から押し出されるシート状樹脂のスウェルが促進され、そのスウェルに伴う厚肉化に応じて、一対のローラー30同士の間隔の調整が必要となることがある。この点において、押出スリット34の間隔を調整することにより、シート状樹脂のスウェルによる厚肉化自体を調整すれば技術的に有利である。
【0055】
この場合、押出スリット34の間隔の調整のみを単独で行うことにより、押し出されるシート状樹脂の厚みを調整することは可能であるが、一対のローラー30の回転速度の調整によりシート状樹脂の厚みを調整する方が、以下の点で技術的に有利である。
【0056】
第1に、一対のローラー30の回転速度の調整の方が押出スリット34の間隔の調整よりシート状樹脂の厚みを容易に調整できる点である。より詳細には、溶融樹脂の単位時間当たりの押出量が一定の場合、押出スリット34の間隔が狭いほどシート状樹脂のスウェルが低減するが、その一方で押出圧力が高まることからシート状樹脂のスウェルが促進されるため、押出スリット34から押し出された直後のシート状樹脂の厚みを所望に調整するのは困難であり、現場での試行錯誤により押出スリット34の間隔を決定する必要があり、ましてや成形中に押出スリット34の間隔を変動させて、スウェル後の厚みを調整するのは困難である。
【0057】
第2に、一対のローラー30の回転速度の調整の方が押出スリット34の間隔の調整よりシート状樹脂の厚みに対する応答性に優れる点である。より詳細には、押出スリット34の間隔を変動させる場合、押出スリット34から押し出された直後のシート状樹脂の厚みが定常状態に達するまでに時間を要し、そのために押し出し直後のシート状樹脂の部分は二次成形に利用することができず、歩留りの低下が引き起こされる。それに対して、一対のローラー30の回転速度の調整の場合、回転速度の変動に伴い、一対のローラー間に挟み込まれたシート状樹脂の下方への送り出し速度が変動し、それにより一対のローラーによるシート状樹脂の引っ張り力が変動し、シート状樹脂の延伸薄肉化が行われることから、シート状樹脂の厚みに対する応答性に優れ、歩留りの低下を抑制することが可能である。
【0058】
第3に、一対のローラー30の回転速度の調整の方が押出スリット34の間隔の調整より二次成形による型締直前のシート状樹脂の厚みを調整できる点である。より詳細には、ドローダウンあるいはネックインにより型締前のシート状樹脂の厚みが押出方向に不均一であると、ブロー成形あるいは真空成形による賦形作用に悪影響を及ぼすところ、金型の型締直前にシート状樹脂の厚みの均一性を確保するのがより好ましく、この点で、押出による一次成形と、ブロー成形あるいは真空成形による二次成形との間で厚みを調整する方が有利である。
【0059】
次いで、図8に示すように、押出方向に一様な厚みを形成したシート状樹脂を一対のローラー30の下方に配置された分割金型32間に配置する。
次いで、図9に示すように、所定量のシート状樹脂の押出が完了する時点で分割金型32を型締めし、真空吸引室120から吸引穴122を介して吸引することにより、シート状樹脂と分割金型32との間の空気を加圧および/または減圧することによって金型形状に沿った形状に成形することにより、二次成形の際の賦形に悪影響を与えることなく、押し出し方向に所望の厚みを備えた樹脂成形品を成形することが可能となる。
次いで、図11に示すように、分割金型32を型開きして、成形された樹脂成形品を取り出し、パーティングラインまわりに形成されたバリを除去する。これで二次成形が完了する。
一次成形において溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、シート状の樹脂成型品を次々に成形することが可能である。
以上のように、一次成形(押出成形)により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態のシート状樹脂として押し出し、二次成形(ブロー成形あるいは真空成形)により押し出されたシート状樹脂を金型を用いて成形することが可能である。

【0060】
以下に、本発明の第2実施形態について、図12ないし図15を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
樹脂成形品について、第1実施形態においては、中実の単一のシート状成形品であるのに対して、本実施形態においては、二条のシート状樹脂を用いた、中空部を有する成形品である。
【0061】
本実施形態に関し、一次成形において、溶融状態の熱可塑性樹脂をシート状にTダイ28の押出スリット34より下方に垂下する形態で押し出し、二次成形において、下方に押し出されたシート状樹脂を用いて分割金型32の型締を通じて真空成形により樹脂成形品を成形する点では、第1実施形態と共通であるが、本実施形態において、二条のシート状樹脂を同時に成形し、その際、各シート状樹脂について、溶融状態の熱可塑性樹脂をシート状にTダイ28の押出スリット34より下方に垂下する形態で押し出し、二次成形において、下方に押し出された二条のシート状樹脂を用いて分割金型32の型締を通じて真空成形により樹脂成形品を成形する点が第1実施形態と相違する。
二条のシート状樹脂それぞれの一次成形については、第1実施形態と同様に、それぞれのシート状樹脂の押出速度に応じて、この押出速度と、シート状樹脂が一対のローラー30により下方に送り出される送り出し速度との相対速度差を一対のローラー30の回転速度を調整することにより調整し、以てシート状樹脂が一対のローラー30の間を通過する際、一対のローラー30により下方に引っ張られ、それによりシート状樹脂が延伸薄肉化され、その結果、ドローダウンあるいはネックインの発生を有効に防止するようにしている。
この場合、第1実施形態と同様に、一対のローラー30A、30Bそれぞれにおいて、ローラーの表面に凹凸状のシボを設けるとともに、ローラーの一端に歯車機構を設けることにより、回転駆動ローラー30BAの回転駆動力を被回転駆動ローラー30BBに、回転駆動ローラー30AAの回転駆動力を被回転駆動ローラー30ABに、それぞれ伝達することにより、回転駆動ローラーと被回転駆動ローラーとの間で回転速度差が生じないようにし、それによりシート状樹脂の表面に皺あるいはせん断痕が発生するのを防止している。
また、第1実施形態と同様に、一対のローラー30A、30Bそれぞれにおいて、ローラーの内部に冷媒を循環させることによりローラーを冷却し、ローラーそれぞれの外表面の温度を溶融状態のシート状樹脂の温度より所定温度範囲内で低く設定することにより、溶融状態のシート状樹脂が一対のローラーにより挟み込まれる際、溶融状態のシート状樹脂がローラーの表面にへばりつき、ローラーの回転によりローラーに巻き付くのを防止する一方、二次成形に適した溶融状態に保持するようにしている。
なお、一対のローラー30の回転数の調整とともに、押出スリット34の間隔の調整を連動して行ってもよい。
【0062】
二次成形に関し、まず、図12に示すように、二条のシート状樹脂が分割金型32A,Bの間に配置される。
次いで、図13に示すように、分割金型32A,Bそれぞれの型枠33A,Bを対応する分割金型に対して、二条のシート状樹脂の対応する方に向かって移動させて、二条のシート状樹脂の側面に当接させる。これにより、それぞれのシート状樹脂、対応する型枠33およびキャビティ116により、密閉空間が形成される。
【0063】
次いで、図14に示すように、密閉空間内の空気を真空吸引室120から吸引孔122を介して吸引することにより、二条のシート状樹脂はそれぞれ、対応するキャビティ116に対して吸着し、それにより二条のシート状樹脂はそれぞれ、対応するキャビティ116の表面に沿った形状に賦形される。この場合、吸引前の二条のシート状樹脂の上下方向の厚みを一様としていることから、ブロー比により引き起こされる厚みの分布に起因して、賦形工程が満足に行われないような事態を防止することが可能である。
次いで、図15に示すように、型枠33A,Bと分割金型32A,Bとを一体で、互いに近接するように移動させることにより、分割金型32A,Bの型締を行い、分割金型32A,Bそれぞれのピンチオフ部により二条のシート状樹脂の周縁部同士を溶着する。これにより、二条のシート状樹脂の内部に密閉中空部151が形成される。
【0064】
次いで、図16に示すように、型枠33A,Bと分割金型32A,Bとを一体で、互いに遠ざかるように移動させることにより、分割金型32A,Bの型開きを行い、成形された樹脂成型品を取り出し、外周部のバリを除去して、二次成形が完了する。
【0065】
従来のように、筒状パリソンを利用して中空部を有する樹脂成形品を成形すると、ブロー比の関係で、一様な厚みの成形品を成形するのが技術的に困難であるところ、本実施形態によれば、一様な厚みを備えた二条のシート状樹脂を利用して、二次成形により二条のシート状樹脂の周縁部同士を溶着することにより、一様な厚みを備えた中空部を有する成形品を成形することが可能である。
以上のように、本実施形態によれば、二条のシート状樹脂を利用して内部に中空部を有する樹脂成形品を成形する場合に、一対のローラー30の回転数の調整を通じて各シート状樹脂を二次成形する前に押し出し方向に厚みが一様となるようにすることにより、二次成形の賦形に悪影響を与えることなしに二次成形により所望の厚みを有するシート状に成形することが可能であることから、このような二条のシート状樹脂を利用して、金型の型締によりシート状樹脂の周縁同士を溶着させて内部に中空部を有する樹脂成型品を成形するのに、シート状樹脂の周縁同士を確実に溶着させ、それにより内部に中空部を有するにも係わらず十分な強度を具備した樹脂成形品を得ることが可能である。

【0066】
以下に、本発明の第3実施形態について、図17ないし図25を参照しながら説明する。以下の説明において、第2実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
樹脂成形品について、第2実施形態においては、二条のシート状樹脂を用いた、中空部を有する成形品であるのに対して、本実施形態においては、中空部に補強芯材を配置したサンドイッチパネル成形品である。
本実施形態に関し、一次成形において、二条のシート状樹脂を成形し、その際、各シート状樹脂について、溶融状態の熱可塑性樹脂をシート状にTダイ28の押出スリット34より下方に垂下する形態で押し出し、二次成形において、下方に押し出された二条のシート状樹脂を用いて分割金型32の型締を通じてブロー成形あるいは真空成形により樹脂成形品を成形する点では、第2実施形態と共通であるが、第2実施形態において、二次成形に関し、二条のシート状樹脂の内部に密閉中空部が形成されるのに対して、本実施形態においては、このような密閉中空部内に別途成形された補強芯材を配置して、補強芯材を二条のシート状樹脂により挟み込んだサンドイッチパネルを形成する点が相違する。
【0067】
サンドイッチパネルの成形装置に関し、分割金型32A,Bの間には、一対の金型32A,Bと入れ子式に、キャビティ116と略平行に一対の枠部材128A,Bが配置され、一対の枠部材128A,Bはそれぞれ、開口130A,Bを有し、図示しない枠部材駆動装置により一対の枠部材128A,Bを水平方向に移動させるようにしている。これにより、一対の枠部材128A,Bそれぞれを対応する溶融状態のパリソンPに向かって移動して、パリソンPを保持し、その状態で逆向きに、対応する金型32A,Bのピンチオフ部118の先端が開口130を通じてパリソンPの表面に当接まで移動させることが可能としている。
【0068】
本実施形態において、補強芯材150の材質としては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のアクリル誘導体、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン−ジエン類等のターポリマー、ABS樹脂、ポリオレフィンオキサイド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0069】
なお、これらは一種類を単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。特に、熱可塑性樹脂のなかでもオレフィン系樹脂またはオレフィン系樹脂を主体にした樹脂、ポリプロピレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂を主体にした樹脂が、繊維層との溶着性、機械的強度および成形性のバランスに優れている点で好ましい。補強芯材150は、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
【0070】
表皮材160を構成するシート状パリソンPは、第1実施形態と共通でよいが、特に強度材としてのサンドイッチパネルの場合には、補強芯材150の両側に設けられる一対の表皮材160間の間隔、すなわち補強芯材150の嵩(厚み)を確保することにより、サンドイッチパネル全体としての剛性、特に曲げ剛性を確保する観点から、表皮材160の剛性としては、少なくとも補強芯材150の剛性より高い材質が要求される。
【0071】
表皮材160の表面に化粧材シート170を設ける場合において、化粧材シート170とは、外観性向上、装飾性、成形品と接触する物(例えば、カーゴフロアボードの場合、ボード上面に載置される荷物など)の保護を目的として構成されるものである。化粧材シート170の材質は、繊維表皮材シート状表皮材、フィルム状表皮材等が適用される。かかる繊維表皮材の素材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ビニロン等の合成繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、又はこれらのブレンド繊維が挙げられる。
【0072】
これらの中でも、触感、耐久性及び成形性の観点から、ポリプロピレン又はポリエステルであることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。繊維表皮材に用いられる糸は、例えば、ポリエステル:(3〜5)デニール×(50〜100)mm等の繊度が3〜15デニール、繊維長さが2〜5インチ程度のステープルの紡績糸と、細い柔軟なフィラメントを束にしたポリエステル:約150〜1000デニール/30〜200フィラメント=約5デニール×30〜200本等のマルチフィラメント、又は、ポリエステル:400〜800デニール/1フィラメント等の太いモノ・フィラメントと、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0073】
化粧材シート170の組織としては、不織布、織物、編物、それらを起毛した布地等が挙げられる。なお、織物には、織組織が縦糸、横糸が順次上下に交絡する平組織のほか、何本かの糸を跳び越して交絡する種々の変化織も含まれる。これらの中でも、伸びに対する方向性がないため、立体形状に成形し易く、且つ表面の触感、風合いに優れることから、不織布であることが好ましい。ここで、不織布とは、繊維を平行に又は交互させて積上げるか又はランダムに散布してウエブを形成し、次いでウエブとなった繊維を接合してなる布状品を意味する。これらの中でも、成形品の立体形状再現性及び外観特性の観点から、ニードルパンチ法により製造された不織布であることが好ましい。また、ニードルパンチ法にて得られた不織布は、織物に比べて強度が小で伸度が大であり任意方向に対する変形度合いが大きいので、不織布としての強度を向上させると共に寸法の安定化を図るために、不織布にバインダーを付着させる、又は、ウエブと不織布を重ね針でパンチさせておくことがより好ましい。これらのことから、化粧材シート170は、ポリプロピレン不織布又はポリエステル不織布であることがより好ましい。この場合、化粧材シート170自体が熱可塑性であるので、剥離回収後、加熱して変形させることによって、別の用途に用いることも可能である。例えば主体樹脂層をポリプロピレンにて構成し、化粧材シート170をポリプロピレン不織布で構成すると、成形品の主体樹脂層と化粧材シート170とが同じ素材であることから、リサイクルが容易になる。
【0074】
一方、化粧材シート170がポリエステル不織布であると、ポリプロピレンにて構成した主体樹脂層と繊維表皮材との融点が異なるので、成形品に化粧材シート170を接着する際、熱により変質、変形したり、正しい位置に接着できない等の不具合が生じるのを抑制できる。また、この場合、成形性、剛性、外観及び耐久性にも優れる。また、化粧材シート170の引張強度は、立体形状再現性及び成形性の観点から、15kg/cm
2以上であることが好ましく、伸度は、30%以上であることが好ましい。なお、かかる引張強度及び伸度の値は、温度20℃においてJIS−K−7113に準拠して測定したものである。シート状表皮材、フィルム状表皮材としては、熱可塑性エラストマ−、エンボス加工された樹脂層、印刷層が外面に付された樹脂層、合成皮革、滑り止め用メッシュ形状の表皮層等が使用できる。
【0075】
次に、このようなサンドイッチパネル10の成形方法について説明する。
まず、図18に示すように、シート状の化粧材シート170を2つの分割金型32の側方から一方の分割金型32と一方の枠部材128との間に挿入し、一方の分割金型32に設けた仮止ピン(図示せず)により、シート状の化粧材シート170を一方の分割金型32のキャビティ116を覆うように仮止めする。
【0076】
次いで、図19に示すように、二条の溶融状態の熱可塑性樹脂製パリソンPそれぞれを各押出スリット34から鉛直下方に押し出す。
その際、第1実施形態および第2実施形態と同様に、一対のローラ30の回転により一対のローラー30により挟み込まれた熱可塑性樹脂製パリソンPを下方に送り出す速度が押出速度以上となる範囲で、一対のローラ30の回転速度を調整することにより、一対のローラ30の回転により熱可塑性樹脂製パリソンPを延伸薄肉化し、以てドローダウンあるいはネックインの発生を防止し、二次成形による型締前に、各熱可塑性樹脂製パリソンPについて押出方向に一様な厚みを形成することが可能である。
この場合、第1実施形態と同様に、一対のローラー30A、30Bそれぞれにおいて、ローラーの表面に凹凸状のシボを設けるとともに、ローラーの一端に歯車機構を設けることにより、回転駆動ローラー30BAの回転駆動力を被回転駆動ローラー30BBに、回転駆動ローラー30AAの回転駆動力を被回転駆動ローラー30ABに、それぞれ伝達することにより、回転駆動ローラーと被回転駆動ローラーとの間で回転速度差が生じないようにし、それによりシート状樹脂の表面に皺あるいはせん断痕が発生するのを防止している。
また、第1実施形態と同様に、一対のローラー30A、30Bそれぞれにおいて、ローラーの内部に冷媒を循環させることによりローラーを冷却し、ローラーそれぞれの外表面の温度を溶融状態のシート状樹脂の温度より所定温度範囲内で低く設定することにより、溶融状態のシート状樹脂が一対のローラーにより挟み込まれる際、溶融状態のシート状樹脂がローラーの表面にへばりつき、ローラーの回転によりローラーに巻き付くのを防止する一方、二次成形に適した溶融状態に保持するようにしている。
なお、一対のローラー30の回転数の調整とともに、押出スリット34の間隔の調整を連動して行ってもよい。
【0077】
次いで、2条の連続シート状パリソンPを2つの分割金型32の間に供給し、それとともに枠部材駆動装置により一対の枠部材128を対応する連続シート状パリソンPに向けて移動する。
次いで、図20に示すように、連続シート状パリソンPを保持した枠部材128を、対応する分割金型32に向かって枠部材128の開口130を通じて金型32のピンチオフ部118が連続シート状パリソンPのキャビティ116に対向する面に当接するまで移動する。これにより、連続シート状パリソンPのキャビティ116に対向する面、ピンチオフ部118およびキャビティ116により密閉空間が形成される。
【0078】
次いで、図21に示すように、それぞれの分割金型32を通じて密閉空間内を吸引し、それにより対応する連続シート状パリソンPがキャビティ116に対して押圧され、キャビティ116に沿った形状に賦形される。なお、図面上左側の連続シート状パリソンPについては、賦形されるとともに、連続シート状パリソンPとキャビティ116との間に介在する化粧材シート170に溶着する。
【0079】
次いで、図22に示すように、マニピュレータ(図示せず)の吸着盤119により保持された補強芯材150を2つの分割金型32の間に側方より挿入する。
【0080】
次いで、図23に示すように、マニピュレータを右側の分割金型32に向かって水平方向に移動させることにより、右側の分割金型32のキャビティ116に吸着された連続シート状パリソンPに対して補強芯材150を押し付ける。これにより、補強芯材150を連続シート状パリソンPに溶着する。次いで、吸着盤119を補強芯材150から脱着して、マニピュレータを2つの分割金型32の間から引き抜き、型締の準備を行う。
次いで、図24に示すように、金型駆動装置により2つの分割金型32を開位置より互いに近づく向きに閉位置まで移動させて、型締する。これにより、一方の連続シート状パリソンP(図面右側)に溶着された補強芯材150は、他方のシート状パリソンPに溶着されるとともに、連続シート状パリソンP同士の周縁が溶着されてパーティングラインPLが形成される。なお、型締の際、補強芯材150自体は、表皮材シート160とは異なり、予め成形された状態で溶融状態の表皮材シート160に対して溶着するため、補強芯材150自体は、型締により変形を受けないように予め位置決めされている。
【0081】
以上で、化粧材シート170、表皮材シート160、補強芯材150、および表皮材シート160が積層されたサンドイッチパネル10が完成する。
次いで、図25に示すように、2つの分割金型32を型開きし、完成したサンドイッチパネル10からキャビティ116を離間させ、パーティングラインPLまわりに形成されたバリを除去する。以上で、サンドイッチパネルの成形が完了する。
本実施形態によれば、一対のローラー30の回転数の調整を通じて各シート状樹脂を二次成形する前に押し出し方向に厚みが一様となるようにすることにより、二次成形の賦形に悪影響を与えることなしに二次成形により所望の厚みを有するシート状に成形することが可能であることから、このような二条のシート状樹脂を表皮材として利用して、金型の型締によりシート状樹脂の周縁同士を溶着させて内部に補強芯材を有するパネルサンドイッチを成形するのに、表皮材であるシート状樹脂の周縁同士を確実に溶着させ、それによりたとえば自動車用カーゴフロアボード等のように十分な強度、特に曲げ剛性が要求されるサンドイッチパネルを得ることが可能である。
【0082】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の変更あるいは修正が可能である。たとえば、第1実施形態において、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止して樹脂成形品の厚みを一様にする場合を説明したが、それに限定されることなく、より積極的に、二次成形の型締前に樹脂成形品の厚みが押し出し方向に所望の厚み分布となるように、一対のローラーの回転速度を調整してもよい。また、第2実施形態において、中空部を有する樹脂成形品として、樹脂の種類および色彩が同じ二条のシート状樹脂を利用して成形する場合を説明したが、それに限定されることなく、たとえばゲーム機のケーシング用に、種類あるいは色彩が相違する二条のシート状樹脂を裏面およびおもて面として構成してもよい。また、第3実施形態において、化粧材シートを分割金型の間に配置し、分割金型の型締により表皮材シートに溶着する場合を説明したが、それに限定されることなく、表皮材シート用のシート状樹脂とともに化粧材シートを一対のローラ間に供給し、一対のローラーの回転速度を調整することによりシート状樹脂の厚みを調整するとともに、化粧材シートをシート状樹脂に圧着してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置の概略側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置のTダイの押出スリットまわりの詳細を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置のTダイの押出スリット駆動装置の詳細を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置のTダイの押出スリット駆動装置の変形例の詳細を示す図3と同様な図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置のTダイの押出スリット駆動装置の別の変形例の詳細を示す図3と同様な図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置の一対のローラーまわりを示す概略側面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置の一対のローラーまわりを示す概略平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、シート状樹脂が分割金型の間に配置された状態を示す概略側面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、分割金型が型締される状態を示す概略側面図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、シート状樹脂の押出速度およびローラーの回転速度の時間による変化を示す簡略グラフである。
【図11】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、分割金型が型開きされる状態を示す概略側面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る樹脂成形品の成形装置の図1と同様な図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、二条のシート状樹脂を分割金型により吸引した状態を示す概略側面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、二条のシート状樹脂それぞれを分割金型により真空成形した状態を示す概略側面図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、分割金型を型締した状態を示す概略側面図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、分割金型を型開きした状態を示す概略側面図である。
【図17】本発明の第3実施形態に係るサンドイッチパネルの成形装置の概略を示す図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係るサンドイッチパネルの成形工程において、化粧材シートを分割形式の金型間に配置した状態を示す図である。
【図19】本発明の第3実施形態に係るサンドイッチパネルの成形工程において、表皮材シートを分割形式の金型間に配置した状態を示す図である。
【図20】本発明の第3実施形態に係るサンドイッチパネルの成形工程において、表皮材シートを分割形式の金型に当接させた状態を示す図である。
【図21】本発明の第3実施形態に係るサンドイッチパネルの成形工程において、表皮材シートを賦形した状態を示す図である。
【図22】本発明の第3実施形態に係るサンドイッチパネルの成形工程において、芯材シートを分割形式の金型間に配置した状態を示す図である。
【図23】本発明の第3実施形態に係るサンドイッチパネルの成形工程において、芯材シートを一方の表皮材シートに押し付けた状態を示す図である。
【図24】本発明の第3実施形態に係るサンドイッチパネルの成形工程において、分割形式の金型を型締めした状態を示す図である。
【図25】本発明の第3実施形態に係るサンドイッチパネルの成形工程において、分割形式の金型を型開きした状態を示す図である。
【図26】本発明の第1実施形態に係る樹脂成形品の成形装置の一方のローラーの温度調整装置まわりを示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0084】
P パリソン
PL パーティングライン
10 成形装置
12 押出装置
14 型締装置
16 ホッパー
18 シリンダー
22 油圧モーター
24 アキュムレータ
26 プランジャー
28 Tダイ
30 ローラー
32 分割金型
34 押出スリット
36 ダイリップ
38 ダイ
40 スリット隙間
42 スリット間隔調整装置
44 スリット間隔駆動装置
46 ダイボルト
48 圧力伝達部
50 調整軸
52 締結ボルト
54 係合片
56 凹溝
58 摺動バー
60 駆動片
62 摺動溝
64 突起
66 傾斜溝
68 ACサーボモータ
70 精密減速機
72 ボールネジ
74 ボールナット
76 スライドブロック
78 ガイドバー
80 ブラケット
82 油圧シリンダー
84 位置センサー
86 ピストンロッド
88 ナット収納部
90 ナット
92 軸ネジ
94 ローラー回転駆動手段
96 ローラー移動手段
98 回転駆動モータ
100 回転数調整装置
102 端周面
104 第1歯車
106 端周面
108 第2歯車
110 ピストンーシリンダ機構
112 浅溝
114 ローラー表面温度調整手段
116 キャビティ
118 ピンチオフ部
120 真空吸引室
122 吸引穴
124 圧力流体導入孔
126 型枠
128 枠部材
130 開口
200 端部
202 固定部
204 ベアリング
206 冷媒供給管
208 ジョイント
210 ホース
212 開口端
214 内面
216 内周面
218 外周面
220 環状スペース
222 排水管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
Tダイに設けられた所定間隔の押出スリットから溶融状態のシート状に下方に垂下するように、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出す段階と、を有し、
それにより、押出スリットから溶融状態のシート状樹脂が所定の厚みにて所定押出速度で下方に押し出され、
下方に押し出された溶融状態のシート状樹脂の最下部が、押出スリットの下方に配置され、かつ間隔がシート状樹脂の前記所定の厚みより広げられた一対のローラー間を通過した後に、一対のローラー同士を相対的に近接させることにより、一対のローラーでシート状樹脂を挟み込み、ローラーの回転駆動により前記所定押出速度以上の速度で下方へ送り出す段階と、
ローラーにより送り出された溶融状態のシート状樹脂を一対のローラーの下方に配置された金型の側方に配置する段階と、
シート状樹脂と金型との間に形成された密閉空間を減圧、および/またはシート状樹脂を金型に向かって加圧することによって金型形状に沿った形状に成形する段階とを有し、
該シート状樹脂の送り出し段階は、それぞれ外表面に凹凸状のシボを設けた前記一対のローラーへ供給される該シート状樹脂の厚みに係わらず、前記一対のローラーにより挟み込まれる該シート状樹脂が押しつぶされないように一方のローラーを他方のローラーに向かって押圧しつつ、前記一対のローラーそれぞれの表面温度を前記一対のローラーに向かって押し出される溶融状態のシート状樹脂の温度より所定温度範囲内で低く設定する段階を有する、ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記一対のローラーの表面温度の設定段階は、前記一対のローラーそれぞれの内部を水冷することにより、前記一対のローラーの表面温度を低下させる段階を有し、シート状樹脂の種類に応じて、冷媒の温度を設定する、請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
シート状樹脂が非晶性樹脂の場合、前記所定温度範囲は、約80度ないし約95度の範囲である、請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
シート状樹脂が結晶性樹脂の場合、前記所定温度範囲は、約50度ないし約90度の範囲である、請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
冷媒の温度は、シート状樹脂を成形中、一定温度に保持する、請求項2ないし4いずれか1項に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
第1熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した第1熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
貯留された第1熱可塑性樹脂を第1Tダイから溶融状態のシート状に下方に垂下するように間欠的に押し出す段階と、
下方に押し出された第1シート状樹脂を第1Tダイの下方に配置された第1組の一対のローラーで挟み込み、ローラーの回転駆動により第1シート状樹脂を下方へ送り出す段階とを有し、
前記送り出し段階は、第1シート状樹脂の押出速度に応じて、前記送り出し速度が該押出速度以上となる範囲で前記ローラーの回転速度を調整する段階を有し、
該第1シート状樹脂の送り出し段階は、それぞれ外表面に凹凸状のシボを設けた前記第1組の一対のローラーへ供給される該第1シート状樹脂の厚みに係わらず、前記第1組の一対のローラーにより挟み込まれる該第1シート状樹脂が押しつぶされないように一方のローラーを他方のローラーに向かって押圧しつつ、前記第1組の一対のローラーそれぞれの表面温度を前記第1組の一対のローラーに向かって押し出される溶融状態の第1シート状樹脂の外表面温度より所定温度範囲内で低く設定する段階を有し、
さらに、第2熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した第2熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
貯留された第2熱可塑性樹脂を第2Tダイから溶融状態のシート状に下方に垂下するように間欠的に押し出す段階と、
下方に押し出された第2熱シート状樹脂を第2Tダイの下方に配置された第2組の一対のローラーで挟み込み、ローラーの回転駆動により第2シート状樹脂を下方へ送り出す段階とを有し、
前記送り出し段階は、第2シート状樹脂の押出速度に応じて、前記送り出し速度が該押出速度以上となる範囲で前記ローラーの回転速度を調整する段階を有し、
該第2シート状樹脂の送り出し段階は、それぞれ外表面に凹凸状のシボを設けた前記第2組の一対のローラーへ供給される該第2シート状樹脂の厚みに係わらず、前記第2組の一対のローラーにより挟み込まれる該第2シート状樹脂が押しつぶされないように一方のローラーを他方のローラーに向かって押圧しつつ、前記第2組の一対のローラーそれぞれの表面温度を前記第2組の一対のローラーに向かって押し出される溶融状態の第2シート状樹脂の外表面温度より所定温度範囲内で低く設定する段階を有し、
さらに、ローラーにより送り出された第1および第2の溶融状態のシート状樹脂を、第1組および第2組の一対のローラーの下方に配置された分割金型間に配置して、分割金型の一方の金型と第1シート状樹脂の間の空気を減圧することによって第1シート状樹脂を一方の金型キャビティに密着させるとともに、分割金型の他方の金型と第2シート状樹脂の間の空気を減圧することによって第2シート状樹脂を他方の金型キャビティに密着させた後、分割金型を型締めする段階を有し、
分割金型の型締めにより金型外周のピンチオフ形成部を通じて第1および第2シート状樹脂を溶着一体化することにより、密閉中空部を有する樹脂成形品を形成する
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの厚み調整装置であって、
それぞれ外表面に凹凸状のシボが設けられ、押出ダイの下方の所定位置に設けられた一対のローラーであって、各々の回転軸が互いに平行に略水平に配置された一対のローラーと、
前記一対のローラーを回転駆動するローラー回転駆動手段と、
前記一対のローラーのうち、いずれか一方のローラーを対応するローラーに対して、あるいは両ローラーを前記一対のローラーを包含する平面内で移動させることにより、前記一対のローラー同士の間隔を調整する間隔調整手段と、
押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの押出速度と、前記一対のローラー間に挟み込まれた熱可塑性樹脂製シートの前記一対のローラーによる下方への送り出し速度との相対速度差を調整する相対速度差調整手段と、
前記一対のローラーの表面温度を前記一対のローラーに向かって押し出される溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの温度より所定温度範囲内で低く設定するように、前記一対のローラーそれぞれの表面温度を調整するローラー表面温度調整手段とを有する、
ことを特徴とする熱可塑性樹脂製シートの厚み調整装置。
【請求項8】
熱可塑性樹脂を押出成形により賦形し、一次成形された熱可塑性樹脂を垂下する形態で押し出す一次成形部と、一次成形部により押し出された熱可塑性樹脂をブロー成形あるいは真空成形により二次成形する二次成形部とを有する、熱可塑性樹脂の成形装置において、
前記一次成形部は、
熱可塑性樹脂を溶融混練する溶融混練手段と、
溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する貯留手段と、
貯留された熱可塑性樹脂を溶融状態のシート状に垂下するように、間欠的に押し出す押出スリットと、を有し、
前記二次成形部は、
垂下するシート状樹脂を挟んで、開位置と閉位置との間でシート面に対して略直交する向きに可動であり、互いに対向する面にキャビティを形成した一対の分割金型と、
開位置と閉位置との間でシート面に対して略直交する向きに一対の分割金型を移動させる金型移動手段と、
を有し、
さらに、それぞれ外表面に凹凸状のシボが設けられ、前記押出ダイの下方かつ前記一対の分割金型の上方の所定位置に位置決めされた一対のローラーであって、各々の回転軸が互いに平行に略水平に配置され、一方が回転駆動ローラーであり、他方が被駆動ローラーである一対のローラーと、
前記回転駆動ローラーを回転駆動するローラー回転駆動手段と、
前記一対のローラーのうち、いずれか一方のローラーを対応するローラーに対して、あるいは両ローラーを前記一対のローラーを包含する平面内で移動させるローラー移動手段と、
前記一対のローラーの表面温度を前記一対のローラーに向かって押し出される溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの温度より所定温度範囲内で低く設定するように、前記一対のローラーそれぞれの表面温度を調整するローラー表面温度調整手段と、
熱可塑性シート状樹脂を前記一対のローラー間に挟み込んだ状態で、熱可塑性シート状樹脂の押出速度に応じて、前記一対のローラーによる熱可塑性シート状樹脂の下方への送り出し速度が該押出速度以上となる範囲で、前記回転駆動ローラーの回転速度を調整するローラー回転速度調整手段とを、有することを特徴とする熱可塑性樹脂の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−51227(P2011−51227A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201985(P2009−201985)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】