説明

樹脂成形品の製造方法および繊維強化複合材料の製造方法

【課題】高い耐熱性を有し、曲げ強度、曲げ伸度をも備える樹脂成形品および繊維強化複合材料をその耐熱温度よりも低い硬化温度で、効率よく低コストで製造する方法の提供。
【解決手段】樹脂組成物として、2官能以上の(メタ)アクリレート(A)と下記式(1)および/または(2)で表されるラジカル重合開始剤(B)とを含むものを使用し、かつ、熱硬化の温度を145〜155℃とする。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法および繊維強化複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニルエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性のラジカル重合性樹脂からなる樹脂成形品は、熱可塑性樹脂の成形品に比べると耐熱性に優れ、樹脂の取り扱い性も容易であることから、様々な分野で幅広く使用されている。また、マトリクス樹脂が強化繊維で補強された成形品である繊維強化複合材料(FRP)は、比強度、比剛性、靭性等に優れ、かつ軽量であることから、航空機用構造材料などの航空宇宙用途、船舶用船体、自動車用部品から、ラケット、ゴルフシャフト等のスポーツ用品部材等にまで広く用いられているが、そのマトリクス樹脂としても、取り扱い性が容易である上述のラジカル重合性樹脂が古くから利用されている。また、これらラジカル重合性樹脂には、有機過酸化物系の重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイドが一般に使用されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−48907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ベンゾイルパーオキサイドを重合開始剤として使用した従来のラジカル重合性樹脂は、取り扱い性が容易な分、その硬化物のガラス転移点が低く耐熱性が不充分であって、近年成長が著しい航空機用構造材料への適用は困難である。
耐熱性を向上させるためには、ラジカル重合性樹脂の単位質量当たりのビニル基の数を多くしたり官能基数を多くしたりして、得られる硬化物の架橋密度を上げる方法等があるが、これらの方法でもその効果には限度がある。また、硬化させる際の温度を上げたり加熱時間を長くしたりして、熱履歴を増す方法もあるが、これらの方法は生産効率の点で制約がある。
【0004】
また、熱硬化性樹脂のように熱硬化により架橋構造を形成させる樹脂の場合、一般には、得ようとする硬化物の耐熱温度(ガラス転移点)よりも高い硬化温度で硬化させる必要がある。よって、特に高い耐熱性が要求される航空機用構造材料用途の樹脂成形品や繊維強化複合材料を製造する場合などには、硬化の際に非常に高い温度が必要になり、熱エネルギーコストが嵩むだけでなく、特別な設備(高温に耐えうる成形型、硬化炉などの成形装置)や副資材の選定など、製造コスト面で問題があった。
【0005】
このような事情から、充分な耐熱性を有する樹脂成形品や繊維強化複合材料を効率よく低い製造コストで製造する技術が求められている。また、その際には、樹脂成形品や繊維強化複合材料の有する曲げ強度、曲げ伸度などの特性を低下させないことも重要である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、航空機用構造材料などの航空宇宙用途にも充分に使用できる高い耐熱性を有し、曲げ強度、曲げ伸度をも備える樹脂成形品および繊維強化複合材料をその耐熱温度よりも低い硬化温度で、効率よく低コストで製造できる方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、驚くべきことに、特定の構造のラジカル重合開始剤を選定し、特定の硬化温度で硬化させることで、生産効率や製造コストに悪影響を与えることなく、硬化温度よりも高いガラス転移点を発現する硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の樹脂成形品の製造方法は、樹脂組成物を熱硬化させる樹脂成形品の製造方法であって、前記樹脂組成物は2官能以上の(メタ)アクリレート(A)と下記式(1)および/または(2)で表されるラジカル重合開始剤(B)とを含み、かつ、前記熱硬化の温度が145〜155℃であることを特徴とする。
【化1】

【化2】

(式(2)中、RおよびR’はそれぞれ独立に、下記式(3)または(4)である。)
【化3】

また、本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維の存在下で、樹脂組成物を熱硬化させる繊維強化複合材料の製造方法であって、前記樹脂組成物は2官能以上の(メタ)アクリレート(A)と下記式(1)および/または(2)で表されるラジカル重合開始剤(B)とを含み、かつ、前記熱硬化の温度(以下、硬化温度という。)が145〜155℃であることを特徴とする。
【化4】

【化5】

(式(2)中、RおよびR’はそれぞれ独立に、下記式(3)または(4)である。)
【化6】

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、航空機用構造材料などの航空宇宙用途にも充分に使用できる高い耐熱性を有し、曲げ強度、曲げ伸度をも備える樹脂成形品および繊維強化複合材料をその耐熱温度よりも低い硬化温度で、効率よく低コストで製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂成形品の製造方法は、樹脂組成物を熱硬化させる樹脂成形品の製造方法であって、樹脂組成物として、2官能以上の(メタ)アクリレート(A)と特定の構造のラジカル重合開始剤(B)とを含むものを使用し、かつ、熱硬化の温度、すなわち硬化温度を145〜155℃とするものである。
【0010】
[(メタ)アクリレート(A)]
本発明で使用される2官能以上の(メタ)アクリレート(A)は、樹脂組成物の主剤として用いられるものであって、市販のものを使用できる。
2官能以上の(メタ)アクリレート(A)の市販品としては、商品名として、共栄社化学株式会社製のライトアクリレート4EG−A、9EG−A、BP−4EA、BP−4PA、BP−10EA、HPP−A、TMP−A、エポキシエステル3000M、3000A、3002M、3002A、昭和高分子株式会社製のリポキシSP1509、リポキシVR77、SP1507、VR−60、VR−90、東亞合成株式会社製アロニックスM203、M208、M210、M211B、M215、M220、M225、M240、M243、M245、M260、M270、M305、M309、M310、M313、M315、M320、M325、M350、M360、M402、M408、M450、M1100,M1200、M1210,M1600,M1960,M6100、M6200、M6250、M6500、M7100、M7030K、M8030、M8060、M8100、M9050、日本化薬株式会社製カヤラッドR−526、NPGDA、PEG400DA、MANDA、R−167、R−551、R−604、R−684、R−712、R−790、HX−220、HX−620、TMPTA、TPA−320、TPA−330、PET−30、T−1420、DPHA、UX−2201、UX−2301、UX−3204UX−0397、R−381、R−115等が挙げられる。
【0011】
[ラジカル重合開始剤(B)]
本発明で使用されるラジカル重合開始剤(B)は、下記式(1)および/または(2)で表される有機過酸化物であり、加熱によりラジカルを発生するものである。
このような特定の構造のラジカル重合開始剤(B)を上述の(メタ)アクリレート(A)とともに使用し、硬化温度を145〜155℃とすることによって、ガラス転移温度が硬化温度よりも高い160〜175℃であって充分な耐熱性を有し、曲げ強度、曲げ伸度をも備えた優れた硬化物(樹脂成形品)を特別な設備や副資材を使用することなく、効率的に得ることができる。
【0012】
【化7】

【化8】

(式(2)中、RおよびR’はそれぞれ独立に、下記式(3)または(4)である。)
【化9】

【0013】
ラジカル重合開始剤(B)としては、10時間半減期温度が100〜150℃のものが好ましい。10時間半減期温度が100℃以上であれば、ラジカル重合開始剤(B)を含有する樹脂組成物の常温での可使時間が充分となる。10時間半減期温度が150℃以下であれば、145〜155℃の硬化温度で硬化した際の繊維強化複合材料の耐熱性、曲げ強度、曲げ伸度が向上する。10時間半減期温度は、110〜130℃であるものがより好ましい。
【0014】
このようなラジカル重合開始剤(B)は市販品として入手できる。具体的には、商品名として、日本油脂株式会社製のパーブチルP、パーブチルP−40、パーブチルC、パークミルD、パークミルD−40、パーブチルD等が挙げられる。これらのなかでは、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度や曲げ強度が高い点から、パーブチルPが好ましい。
【0015】
[樹脂組成物]
樹脂組成物における上述の(メタ)アクリレート(A)とラジカル重合開始剤(B)との比率は、(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、ラジカル重合開始剤(B)0.05〜10質量部が好ましい。ラジカル重合開始剤(B)の量が0.05質量部以上であれば、硬化時間を充分に短くできる。ラジカル重合開始剤(B)の量が10質量部以下であれば、充分な耐熱性を有する樹脂成形品が得られるとともに、樹脂成形品に残存するラジカル重合開始剤(B)の量が抑えられ、樹脂成形品からラジカル重合開始剤(B)が滲出することがない。
【0016】
樹脂組成物は、上述の(メタ)アクリレート(A)とラジカル重合開始剤(B)以外に、樹脂成形品の諸物性(耐熱性、曲げ強度、曲げ伸度、剛性、難燃性、表面平滑性、ひずみ、成形型からの剥離性、色調等)の調整や、樹脂組成物の粘度等の調整を目的として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマー、無機フィラー、添加剤等の他の成分を含んでもよい。また、特に後述の繊維強化複合材料を製造する場合には、強化繊維に樹脂組成物を含浸させたプリプレグを用いる場合が多いが、プリプレグの粘着性を調整する目的のために、これら他の成分を樹脂組成物に添加してもよい。
【0017】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、トリアジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂等の硬化性樹脂やその硬化剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルフォルマール、ポリアミド、フェノキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
【0018】
エラストマーとしては、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、カボキシル末端変性ブタジエン−アクリロニトリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
無機フィラーとしては、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム等の水酸化金属類;酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化金属類;炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウム等の炭酸金属類;ガラスバルーン、シリカ、マイカ、タルク、ウォラストナイト等が挙げられる。
添加剤としては、脱泡剤、湿潤剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0019】
このような樹脂組成物は、上述の(メタ)アクリレート(A)およびラジカル重合開始剤(B)と、必要に応じて使用される上述の他の成分とを適当な温度下、攪拌脱泡装置等などで混合することにより調製できる。
【0020】
[樹脂成形品の製造方法]
本発明の樹脂成形品の製造方法は、上述の樹脂組成物を145〜155℃の硬化温度で熱硬化させるものである。硬化温度が145℃未満になると、樹脂組成物の硬化物は硬化温度以上のガラス転移点を発現しにくくなり、耐熱性が不充分となる。一方、155℃を超えると、熱エネルギーコストが嵩むだけでなく、通常の副資材の耐用温度を超えるために特殊な副資材を用いたり、特別な装置を選択したりする必要が生じる。
硬化時間には制限はないが、好ましくは1〜5時間である。このような範囲であると、短時間、低コストで、充分に硬化させることができる。
具体的な成形方法としては、熱硬化性樹脂の成形に一般に使用される各種成形装置を用いた公知の方法がいずれも採用可能である。
【0021】
[繊維強化複合材料の製造方法]
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維の存在下で、上述の樹脂組成物を145〜155℃の硬化温度で熱硬化させるものである。硬化温度が145℃未満になると、樹脂成形品についても説明したとおり、樹脂組成物の硬化物は硬化温度以上のガラス転移点を発現しにくくなり、耐熱性が不充分となる。一方、155℃を超えると、熱エネルギーコストが嵩むだけでなく、通常の副資材の耐用温度を超えるために特殊な副資材を用いたり、特別な装置を選択したりする必要が生じる。
硬化時間には制限はないが、好ましくは1〜5時間である。このような範囲であると、短時間、低コストで、充分に硬化させることができる。
【0022】
繊維強化複合材料の成形方法としては、例えば樹脂組成物を強化繊維に含浸させたプリプレグを調製し、これをオートクレーブ成形、真空バッグ成形、プレス成形等により硬化、成形する方法が挙げられる。なかでも低コストな成形方法としては、プレプレグを積層しながら1層ずつ順次硬化していくオートファイバープレイスメント(AFP)成形法が挙げられる。また、樹脂を含浸したファイバートウをマンドレルに巻き付けながら順次硬化していくフィラメントワインディング(FW)成形法も低コストな成形方法として挙げられる。
【0023】
強化繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、高強度ポリエチレン繊維、タングステンカーバイド繊維、PBO繊維、ガラス繊維等が挙げられる。強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、好ましくは炭素繊維を使用する。
【0024】
強化繊維の形態としては、トウの形態、トウを一方向に引き揃えた一方向材の形態、製織した織物の形態、短く裁断した強化繊維からなる不織布の形態等が挙げられる。織物の形態としては、平織、綾織、朱子織;ノン・クリンプト・ファブリックに代表される、繊維束を一方向に引き揃えたシート、または繊維束が角度を変えて積層されたシートをほぐれないようにステッチしたステッチングシート等が挙げられる。強化繊維の形態としては、繊維強化複合材料の機械特性が優れる点からは、一方向材の形態が好ましく、取扱性の点からは、織物の形態が好ましい。
【0025】
強化繊維の目付は、10〜650g/m2 が好ましく、50〜500g/m2 がより好ましく、50〜300g/m2 がさらに好ましい。強化繊維の目付が10g/m2 以上であれば、繊維幅のムラおよび目開きが目立たず、繊維強化複合材料の意匠性が良好となる。強化繊維の目付が650g/m2 以下であれば、樹脂組成物の強化繊維への含浸性が良好となる。
【0026】
強化繊維として炭素繊維を用いた場合、繊維強化複合材料中の樹脂組成物の含有率は、30〜70質量%が好ましい。樹脂組成物の含有率が30質量%以上であれば、強化繊維に充分樹脂が含浸できる。樹脂組成物の含有率が70質量%以下であれば、充分な機械特性を有する繊維強化複合材料が得られる。
【0027】
以上説明したように、特定の構造のラジカル重合開始剤(B)を上述の(メタ)アクリレート(A)とともに使用し、硬化温度を145〜155℃とすることによって、ガラス転移温度が硬化温度よりも高い160〜175℃であって充分な耐熱性を有し、曲げ強度、曲げ伸度も備えた優れた硬化物を特別な設備や副資材を使用することなく、効率的に製造することができる。よって、上述の(メタ)アクリレート(A)とこのようなラジカル重合開始剤(B)とを有する樹脂組成物を使用することによって、航空機用構造材料などの航空宇宙用途にも充分に使用できる樹脂成形品および繊維強化複合材料を低コストで効率的に提供することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
〔実施例1〜4〕
表1に示す配合(質量部数)の樹脂組成物を得た。具体的には、(メタ)アクリレート(A)(エポキシエステル3000M)を株式会社キーエンス製のハイブリッドミキサーHM−500で攪拌、溶解し、ついでその中に、室温にてラジカル重合開始剤(B)を添加し、再度HM−500で攪拌・脱泡した。
【0029】
各例で得られた樹脂組成物について、下記に示す各種測定と評価を実施した。結果を表1に示す。
(1)DMA測定によるガラス転移温度測定
厚さ2mmのポリテトラフルオロエチレンのスペーサーを挟んだ2枚のガラス(厚さ2mm)の間に樹脂組成物を注入し、ISUZU製乾燥機HT−310Sにて150℃×1時間の条件で加熱硬化させ、樹脂板を得た。
この樹脂板から試験片(長さ45mm×幅10mm×厚さ2mm)を切り出し、ジャスコインターナショナル社製のレオメーターVAR−100を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で、貯蔵弾性率G’を測定した。貯蔵弾性率G’を温度に対して対数プロットし、logG’の平坦領域の近似直線と、G’が転移する領域の近似直線との交点から求まる温度をG’−Tg(表中では単に「Tg」と表記)とした。
(2)示差走査熱量測定による反応開始温度の測定
樹脂組成物を数十mg計り取り、TAインスツルメンツ社製Q1000DSC装置を用いて5℃/minの昇温スピードで示差走査熱量を測定し、そのチャートから反応開始温度を読み取った。
(3)曲げ特性の測定
上記(1)と同様の方法にて製造された樹脂板から試験片(長さ50mm×幅8mm×厚さ2mm)を切り出し、3点曲げ治具(圧子、サポートとも3.2mmR、サポート間距離36mm)を設置したインストロン社製の万能試験機を用い、曲げ特性を測定した。具体的には、試験片の破断時点で加えられた荷重を「曲げ強度」とし、破断時点での伸度を「曲げ伸度」とした。
【0030】
【表1】

【0031】
〔比較例1〜3〕
配合を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得て、同様に各種測定と評価を実施した。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
エポキシエステル3000M:ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物(分子量:512)
パーブチルP:式(1)の化合物(C2034)、分子量338.49、10時間半減期温度119.2℃
パーブチルD:式(2)において、RおよびR’がいずれも式(4)である化合物、分子量146.23、10時間半減期温度123.7℃
パーブチルC:式(2)において、Rが式(3)で、R’が式(4)である化合物、分子量208.30、10時間半減期温度119.5℃
パークミルD:式(2)において、RおよびR’がいずれも式(3)である化合物、分子量270.38、10時間半減期温度116.4℃
パークミルP:下記式(5)の化合物
パーメンタH:下記式(6)の化合物
パーブチルE:下記式(7)の化合物
【0034】
【化10】

【0035】
表の結果から各実施例では、150℃×1時間の加熱条件で硬化させることによって、この硬化温度よりも高い160〜175℃のガラス転移温度を示し、優れた耐熱性を有する硬化物(樹脂成形品)が得られることが示された。また、この硬化物は、曲げ強度、曲げ伸度のいずれもが良好であった。
よって、これらの結果から、各実施例の樹脂組成物を強化繊維の存在下で、上記加熱条件で硬化させることによって、耐熱性、曲げ強度、曲げ伸度などに優れた繊維強化複合材料が得られることも示された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、高い耐熱性を有し、曲げ強度、曲げ伸度をも備える樹脂成形品および繊維強化複合材料をその耐熱温度よりも低い硬化温度で、効率よく低コストで製造できる。こうして製造された樹脂成形品および繊維強化複合材料は、航空機用構造材料などの航空宇宙用途を始めとした幅広い各種産業用途で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物を熱硬化させる樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂組成物は2官能以上の(メタ)アクリレート(A)と下記式(1)および/または(2)で表されるラジカル重合開始剤(B)とを含み、かつ、前記熱硬化の温度が145〜155℃であることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【化1】

【化2】

(式(2)中、RおよびR’はそれぞれ独立に、下記式(3)または(4)である。)
【化3】

【請求項2】
強化繊維の存在下で、樹脂組成物を熱硬化させる繊維強化複合材料の製造方法であって、
前記樹脂組成物は2官能以上の(メタ)アクリレート(A)と下記式(1)および/または(2)で表されるラジカル重合開始剤(B)とを含み、かつ、前記熱硬化の温度が145〜155℃であることを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法。
【化4】

【化5】

(式(2)中、RおよびR’はそれぞれ独立に、下記式(3)または(4)である。)
【化6】




【公開番号】特開2008−143968(P2008−143968A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330474(P2006−330474)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)本発明は経済産業省「民間航空機基盤技術プログラム」のうち、「次世代構造部材創製・加工技術開発」プログラムの1テーマである「非加熱成形技術開発」の一環として行った発明である。
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】