説明

樹脂成形品用補強シート、樹脂成形品の補強構造および補強方法

【課題】軽量でかつ良好な外観を保つことができ、樹脂成形品の劣化または溶融を防止できながら、樹脂成形品を簡易に補強することができ、しかも、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下において優れた補強力を維持することのできる、樹脂成形品用補強シート、樹脂成形品の補強構造および補強方法を提供すること。
【解決手段】拘束層3と、拘束層3に積層される補強層2とを備え、補強層2が、ポリマーおよび粘着付与剤を含有する粘着剤組成物から形成され、粘着付与剤が、軟化点が120℃以上の高軟化点粘着付与剤を含有する、樹脂成形品用補強シート1を、樹脂成形品4に貼着し、樹脂成形品用補強シート1を80℃以上に加熱して、樹脂成形品用補強シート1を樹脂成形品4に密着させることにより、樹脂成形品4を補強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品用補強シート、樹脂成形品の補強構造および補強方法、詳しくは、樹脂成形品用補強シート、それを用いた樹脂成形品の補強構造および樹脂成形品の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種産業製品に用いられる樹脂板または鋼板は、その製品の重量を軽減するために、薄板状に加工されている。
【0003】
そのため、薄板状の樹脂板の補強を図るべく、例えば、樹脂板の内側にリブを設けることが知られている。
【0004】
また、薄板状の鋼板の補強を図るべく、例えば、鋼板の内側に鋼板補強シートを設けることが知られている。
【0005】
例えば、拘束層と、発泡性組成物からなる補強層とを備える鋼板補強シートを、自動車の車体鋼板に貼着した後、電着塗装時の高温(例えば、160〜200℃)の熱を利用して、補強層を発泡および硬化させることにより、自動車の車体鋼板を補強することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−41210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、リブは、通常、樹脂板と一体的に成形されており、その成形時に、リブで補強された部分の樹脂板の表面にヒケを生じ、そのため、樹脂板の外観が損なわれるという不具合がある。
【0008】
また、特許文献1に記載される鋼板補強シートを用いて補強する場合には、鋼板補強シートの補強層を160〜200℃に加熱して硬化させる必要がある。そのため、そのような鋼板補強シートを樹脂板に貼着して、160〜200℃に加熱すると、樹脂板が劣化したり、溶融してしまうという不具合がある。
【0009】
また、鋼板補強シートを含む補強シートは、樹脂板または鋼板へ貼着した後、それとともに高温(樹脂板が溶融しない程度の高温)雰囲気下に置かれる場合があり、その場合でも、優れた補強力を維持することが望まれている。
【0010】
本発明の目的は、軽量でかつ良好な外観を保つことができ、樹脂成形品の劣化または溶融を防止できながら、樹脂成形品を簡易に補強することができ、しかも、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下において優れた補強力を維持することのできる、樹脂成形品用補強シート、樹脂成形品の補強構造および補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂成形品用補強シートは、拘束層と、前記拘束層に積層される補強層とを備え、前記補強層が、ポリマーおよび粘着付与剤を含有する粘着剤組成物から形成され、前記粘着付与剤が、軟化点が120℃以上の高軟化点粘着付与剤を含有することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の樹脂成形品用補強シートでは、前記高軟化点粘着付与剤が、テルペンフェノール樹脂および/または水素添加テルペン樹脂であることが好適である。
【0013】
また、本発明の樹脂成形品用補強シートでは、前記粘着付与剤の配合割合が、前記ポリマー100質量部に対して、40〜200質量部であることが好適である。
【0014】
また、本発明の樹脂成形品用補強シートでは、前記粘着付与剤が、さらに、軟化点が120℃未満の低軟化点粘着付与剤を含有し、前記低軟化点粘着付与剤が、脂環族飽和炭化水素系樹脂であることが好適である。
【0015】
また、本発明の樹脂成形品用補強シートでは、前記ポリマーが、共役ジエン類を含む単量体の重合体の水素添加物を含有することが好適である。
【0016】
また、本発明の樹脂成形品用補強シートは、拘束層と、前記拘束層に積層される補強層とを備え、前記補強層が、ポリマーを含有する粘着剤組成物から形成され、前記ポリマーが、共役ジエン類および共役ジエン類と共重合可能な共重合性単量体を含有する単量体の重合体の水素添加物を含有し、前記共重合性単量体の含有割合が、前記単量体に対して、35質量%以上であることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の樹脂成形品の補強構造は、上記した樹脂成形品用補強シートを樹脂成形品に貼着し、次いで、80℃以上に加熱して、前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に密着させることにより、前記樹脂成形品が補強されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の樹脂成形品の補強構造では、前記樹脂成形品用補強シートを、予め、80℃以上に加熱し、次いで、前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に貼着することが好適である。
【0019】
また、本発明の樹脂成形品用の補強方法は、上記した樹脂成形品用補強シートを樹脂成形品に貼着する工程、および、前記樹脂成形品用補強シートおよび/または前記樹脂成形品を80℃以上に加熱して、前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に密着させることにより、前記樹脂成形品を補強する工程を備えていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の樹脂成形品の補強方法においては、前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に貼着する工程では、前記樹脂成形品用補強シートを、予め、80℃以上に加熱し、次いで、前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に貼着することが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の樹脂成形品用補強シートを用いる、本発明の樹脂成形品の補強構造および補強方法によれば、樹脂成形品用補強シートの補強層を樹脂成形品に貼着することによって、拘束層と樹脂成形品とを強固に密着させることができる。
【0022】
また、本発明の樹脂成形品用補強シートは、補強層が、ポリマーおよび粘着付与剤を含有する粘着剤組成物から形成され、粘着付与剤が、軟化点が120℃以上の高軟化点粘着付与剤を含有するため、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下においても、高軟化点粘着付与剤が軟化することなく、そのため、補強層を保形することがでる。その結果、高温雰囲気下における樹脂成形品用補強シートの剛性を向上させることができる。
【0023】
あるいは、本発明の樹脂成形品用補強シートは、補強層が、ポリマーを含有する粘着剤組成物から形成され、ポリマーが、共役ジエン類および共役ジエン類と共重合可能な共重合性単量体を含有する単量体の重合体の水素添加物を含有し、共重合性単量体の含有割合が、単量体に対して、35質量%以上であるため、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下においても、水素添加物が軟化することなく、そのため、補強層を保形することができる。その結果、高温雰囲気下における樹脂成形品用補強シートの剛性を向上させることができる。
【0024】
その結果、かかる樹脂成形品用補強シートによって樹脂成形品を確実に補強することができる。
【0025】
とりわけ、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下においても、軽量でかつ良好な外観を保つことができ、樹脂成形品の劣化または溶融を防止できながら、樹脂成形品の補強構造の優れた補強力を維持することができる。
【0026】
しかも、樹脂成形品における補強したい部分のみに、樹脂成形品用補強シートを貼着することにより、その部分のみを簡単に補強することができる。
【0027】
また、拘束層および補強層を備える、簡易な構成により、薄型化および軽量化を図りながら、樹脂成形品を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の樹脂成形品用補強シートを、樹脂成形品に貼着することにより補強する、本発明の樹脂成形品の補強方法の一実施形態を示す説明図であって、(a)は、樹脂成形品用補強シートを用意して、離型フィルムを剥がす工程、(b)は、樹脂成形品用補強シートを樹脂成形品に貼着する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明(第1の発明)の樹脂成形品用補強シートは、拘束層と、拘束層に積層される補強層とを備えている。
【0030】
拘束層は、貼着および加熱後の補強層に靱性を付与するために設けられ、シート状をなし、また、軽量および薄膜で、好ましくは、補強層と密着一体化できる材料から形成されている。そのような材料としては、例えば、ガラスクロス、樹脂含浸ガラスクロス、不織布、金属箔、カーボンファイバー、ポリエステルフィルムなどが挙げられる。
【0031】
ガラスクロスは、ガラス繊維を布にしたものであって、公知のガラスクロスが挙げられる。
【0032】
樹脂含浸ガラスクロスは、上記したガラスクロスに、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸処理されているものであって、公知のものが挙げられる。なお、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂、EVA−塩化ビニル樹脂共重合体などが挙げられる。また、上記した熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、それぞれ、単独使用または併用することができる。
【0033】
不織布は、例えば、木材繊維(木材パルプなど)、セルロース系繊維(例えば、レーヨンなどの再生セルロース系繊維、例えば、アセテートなどの半合成セルロース系繊維、例えば、麻、綿などの天然セルロース系繊維、例えば、それらの混紡糸など)、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、セルロース系繊維(麻、あるいは麻および他のセルロース系繊維)などの繊維から形成される不織布が挙げられる。
【0034】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔やスチール箔などの公知の金属箔が挙げられる。
【0035】
カーボンファイバーは、炭素を主成分とする繊維を布にしたものであって、公知のものが挙げられる。
【0036】
ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムなどが挙げられる。好ましくは、PETフィルムが挙げられる。
【0037】
これら拘束層のうち、密着性、強度およびコストを考慮すると、好ましくは、樹脂含浸ガラスクロスが挙げられる。
【0038】
また、拘束層の厚みは、例えば、0.05〜2.0mm、好ましくは、0.1〜1.0mmである。
【0039】
補強層は、粘着剤組成物をシート状に成形することにより、形成されている。
【0040】
粘着剤組成物は、熱可塑性であり、詳しくは、加熱によって、熱融着性(粘着性)を発現する。
【0041】
粘着剤組成物は、ポリマーおよび粘着付与剤を含有している。
【0042】
ポリマーとしては、例えば、共役ジエン類を含有する単量体の重合体の水素添加物(水素化物)が挙げられる。
【0043】
単量体は、好ましくは、共役ジエン類を必須成分として含有し、共役ジエン類と共重合可能な共重合性単量体を任意成分として含有している。
【0044】
共役ジエン類としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)などが挙げられる。
【0045】
共重合性単量体としては、少なくとも1つの二重結合を有する単量体であって、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン(2−メチルプロペン)などの脂肪族ビニル単量体、例えば、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル単量体、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル単量体などが挙げられる。
【0046】
これら共重合性単量体は、単独または2種以上併用することができる。
【0047】
これら共重合性単量体のうち、好ましくは、芳香族ビニル単量体が挙げられる。
【0048】
重合体として、具体的には、共役ジエン類および共重合体性単量体のブロックまたはランダム共重合体が挙げられ、好ましくは、ブロック共重合体が挙げられる。具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)などが挙げられる。
【0049】
なお、共重合性単量体の配合割合は、共役ジエン類100質量部に対して、例えば、5〜80質量部、好ましくは、15〜50質量部である。
【0050】
つまり、共重合性単量体(好ましくは、芳香族ビニル単量体、さらに好ましくは、スチレン)と共役ジエン類(好ましくは、1,3−ブタジエン)との配合割合は、質量基準で、例えば、50質量%以下/50質量%以上(共重合性単量体と共役ジエン類との質量比)、好ましくは、40質量%以下/60質量%以上であり、通常、10質量%以上/90質量%以下である。
【0051】
上記した重合体の水素添加物は、共役ジエン類に由来する不飽和結合(二重結合部分)が完全水素化または部分水素化され、好ましくは、完全水素化されている。水素添加物は、具体的には、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS、より具体的には、SEBSブロック共重合体)が挙げられる。
【0052】
水素添加物は、上記した重合体の水素化により、不飽和結合を実質的に含有していないため、高温雰囲気下において熱劣化しにくく、そのため、補強層の耐熱性を向上させることができる。
【0053】
また、水素添加物のメルトフローレート(MFR)は、温度190℃、質量2.16kgで、例えば、10g/10分以下、好ましくは、5g/10分以下、通常、0.1g/10分以上である。
【0054】
また、水素添加物のメルトフローレート(MFR)は、温度200℃、質量5kgで、例えば、50g/10分以下、好ましくは、20g/10分以下であり、通常、0.1g/10分以下である。
【0055】
また、水素添加物のメルトフローレート(MFR)は、温度230℃、質量2.16kgで、例えば、50g/10分以下、好ましくは、20g/10分以下であり、通常、0.1g/10分以下である。
【0056】
これら水素添加物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0057】
これら水素添加物のうち、好ましくは、SEBSが挙げられる。
【0058】
また、ポリマーとしては、例えば、SBS、SISなどの重合体(水素添加物を製造するに際し、水素添加される前の重合体を含む)と、水素添加物との組合せも挙げられる。
【0059】
粘着付与剤は、高軟化点粘着付与剤を含有している。
【0060】
高軟化点粘着付与剤は、補強層と、樹脂成形品および拘束層との密着性を向上させたり、あるいは、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下における、樹脂成形品の補強時の補強性を向上させるために、粘着付与剤に含有される。高軟化点粘着付与剤は、軟化点が120℃以上であり、例えば、軟化点が120℃以上のロジン系樹脂、軟化点が120℃以上のテルペン系樹脂(テルペンフェノール共重合体、水素添加テルペン樹脂などを含む。)、軟化点が120℃以上のクマロンインデン系樹脂、軟化点が120℃以上の脂環族飽和炭化水素系樹脂、軟化点が120℃以上の石油系樹脂(例えば、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、芳香族系石油樹脂などの炭化水素系石油樹脂など)などが挙げられる。
【0061】
高軟化点粘着付与剤の軟化点が上記範囲に満たないと、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下における、樹脂成形品の補強時の補強性を向上させることができない。
【0062】
高軟化点粘着付与剤の軟化点は、好ましくは、130℃以上、さらに好ましくは、140℃以上、とりわけ好ましくは、150℃以上であり、例えば、200℃以下でもある。
【0063】
なお、高軟化点粘着付与剤の軟化点は、環球法によって測定される。
【0064】
高軟化点粘着付与剤の重量平均分子量は、例えば、100〜10000、好ましくは、500〜5000である。
【0065】
なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、GPC装置(HLC−8120GPC、東ソー社製)を用いて測定され、標準ポリスチレンによる換算値として算出される。
【0066】
高軟化点粘着付与剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0067】
高軟化点粘着付与剤の配合割合は、粘着付与剤100質量部に対して、例えば、20〜100質量部、好ましくは、25〜100質量部である。
【0068】
高軟化点粘着付与剤の配合割合が上記範囲に満たないと、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下において、樹脂成形品の補強時の補強性を十分に発揮させることができない場合がある。高軟化点粘着付与剤の配合割合が上記範囲を超えると、補強層と、樹脂成形品および拘束層との密着性を十分に向上させることができない場合がある。
【0069】
粘着付与剤は、必要により、低軟化点粘着付与剤を含有している。
【0070】
低軟化点粘着付与剤は、高温時における補強性を向上させつつ粘着力を向上させるために、粘着付与剤に含有される。低軟化点粘着付与剤は、軟化点が120℃未満であり、例えば、軟化点が120℃未満のロジン系樹脂、軟化点が120℃未満のテルペン系樹脂(テルペンフェノール共重合体、水素添加テルペン樹脂などを含む。)、軟化点が120℃未満のクマロンインデン系樹脂、軟化点が120℃未満の脂環族飽和炭化水素系樹脂、軟化点が120℃未満の石油系樹脂(例えば、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、芳香族系石油樹脂などの炭化水素系石油樹脂など)などが挙げられる。
【0071】
低軟化点粘着付与剤としては、水素添加物との相溶性の観点から、好ましくは、脂環族飽和炭化水素系樹脂が挙げられる。
【0072】
低軟化点粘着付与剤の軟化点は、好ましくは、110℃以下、例えば、50℃以上でもある。
【0073】
なお、低軟化点粘着付与剤の軟化点は、環球法によって測定される。
【0074】
低軟化点粘着付与剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0075】
低軟化点粘着付与剤の配合割合は、粘着付与剤に対して、例えば、20〜80質量%、好ましくは、25〜75質量%である。また、高軟化点粘着付与剤100質量部に対して、例えば、10〜300質量部、好ましくは、30〜250質量部である。
【0076】
低軟化点粘着付与剤の配合割合が上記範囲に満たないと、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下において、補強層と、樹脂成形品および拘束層との密着性を十分に向上させることができない場合がある。低軟化点粘着付与剤の配合割合が上記範囲を超えると、補強層が脆くなる場合がある。
【0077】
粘着付与剤の配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、40〜200質量部、好ましくは、50〜170質量部である。
【0078】
粘着付与剤の配合割合が上記した範囲に満たないと、補強層と、樹脂成形品および拘束層との密着性を十分に向上させたり、あるいは、樹脂成形品の補強時の補強性を十分に向上させることができない場合がある。
【0079】
一方、粘着付与剤の配合割合が上記した範囲を超えると、補強層が脆くなる場合がある。
【0080】
また、粘着剤組成物には、上記した成分の他に、充填剤、老化防止剤、さらには、軟化剤(例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイルなど)、揺変剤(例えば、モンモリロナイトなど)、滑剤(例えば、ステアリン酸など)、顔料、スコーチ防止剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤、難燃剤などの添加剤を適宜の割合で添加することもできる。
【0081】
充填剤は、着色剤を含み、例えば、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、白艶華など)、ケイ酸マグネシウム(例えば、タルクなど)、マイカ、クレー、雲母粉、ベントナイト(例えば、有機ベントナイトなど)、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、酸化チタン、カーボンブラック(例えば、絶縁性カーボンブラック、アセチレンブラックなど)、アルミニウム粉、ガラスバルーンなどが挙げられる。充填剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0082】
充填剤としては、好ましくは、炭酸カルシウム、カーボンブラックが挙げられる。
【0083】
老化防止剤としては、例えば、アミン−ケトン化合物、芳香族第二級アミン化合物、フェノール化合物(例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど)、ベンズイミダゾール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾールなど)、チオウレア化合物、亜リン酸化合物などが挙げられる。老化防止剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、フェノール化合物、ベンズイミダゾール化合物が挙げられる。
【0084】
添加剤の添加割合は、ポリマー100質量部に対して、とりわけ、充填剤の場合では、例えば、1〜200質量部、老化防止剤の場合では、例えば、0.1〜5質量部である。
【0085】
そして、粘着剤組成物は、上記した各成分を上記した配合割合において配合することにより調製することができ、さらに、補強層を形成し、これを拘束層に積層するには、上記した各成分を、上記した配合割合において、公知の溶媒(例えば、トルエンなどの有機溶媒)または水中に、溶解または分散させて、溶液または分散液を調製した後、得られた溶液または分散液を、拘束層の表面に塗布した後、乾燥する方法(直接形成法)が挙げられる。
【0086】
あるいは、得られた溶液または分散液を、後述する離型フィルムの表面に塗布した後、乾燥することにより、補強層を形成し、その後、補強層を拘束層の表面に転写する方法(転写法)が挙げられる。
【0087】
また、粘着剤組成物を調製して、補強層を形成し、これを拘束層に積層するには、上記した各成分(上記した溶媒および水を除く。)を、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機などによって直接混練して混練物を調製した後、例えば、カレンダー成形、押出成形あるいはプレス成形などによって、混練物をシート状に成形して補強層を形成し、これを拘束層の表面に積層する方法(直接形成法)も挙げられる。具体的には、混練物を、拘束層と離型フィルム(後述)との間に配置して挟み、その後、それらを、例えば、プレス成形によって、シート状に圧延する。あるいは、形成された補強層を離型フィルムの表面に積層し、その後、補強層を拘束層の表面に転写する方法(転写法)が挙げられる。
【0088】
このようにして形成される補強層の厚みは、例えば、0.02〜3.0mm、好ましくは、0.03〜1.3mmである。
【0089】
このようにして得られる樹脂成形品用補強シートの厚みは、例えば、0.25〜5.0mm、好ましくは、0.4〜2.3mmである。
【0090】
樹脂成形品用補強シートの厚みが上記した範囲を超える場合には、樹脂成形品用補強シートの軽量化を図ることが困難となる場合があり、また、製造コストが増大する場合がある。樹脂成形品用補強シートの厚みが上記した範囲に満たない場合には、補強性を十分に向上させることができない場合がある。
【0091】
なお、得られた樹脂成形品用補強シートには、必要により、補強層の表面(拘束層が貼積層されている裏面に対して反対側の表面)に、実際に使用するまでの間、離型フィルム(セパレータ)を貼着しておくこともできる。
【0092】
離型フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどの合成樹脂フィルムなど、公知の離型フィルムが挙げられる。
【0093】
樹脂成形品用補強シート(の補強層)を厚み2.0mmのポリプロピレン板に貼着し、80℃で10分間加熱した後、90℃における1mm変位の曲げ強度は、例えば、0.8〜5.0N、好ましくは、1.0〜4.0N、さらに好ましくは、1.2〜3.0Nである。
【0094】
具体的には、ポリプロピレン板に貼着された樹脂成形品用補強シートの90℃における1mm変位の曲げ強度を測定するには、まず、補強層と厚み2.0mmのポリプロピレン板とを接触させることにより、樹脂成形品用補強シートをポリプロピレン板に貼着し、次いで、それらを80℃(密着温度)に設定された乾燥機に10分間投入して、それらを密着させて、積層板を得る。
【0095】
その後、乾燥機から取り出した積層板を、長さ150mm×幅25mmの大きさに外形加工して試験片を得る。
【0096】
その後、90℃(測定温度)に設定された恒温槽が設けられた万能試験機において、試験片を恒温槽に設置するとともに、支点間距離を100mmとし、試験片の中央(長さ方向および幅方向中央)を、直径10mmの圧子で50mm/分の速度でポリプロピレン板側から押圧する三点曲げ試験により、90℃における試験片の1mm変位の曲げ強度を測定する。
【0097】
これを、ポリプロピレン板に貼着された樹脂成形品用補強シートの90℃における1mm変位の曲げ強度とする。
【0098】
なお、上記した説明では、測定温度を90℃として、変位1mmとして曲げ強度を算出しているが、常温(25℃)および後述する測定温度変位(1mm以外の変位)においても、同様に処理することによって、曲げ強度を算出する。
【0099】
なお、上記した1mm変位の曲げ強度は、押圧開始から圧子が1mm変位した時における曲げ強度(強さ)として測定される。
【0100】
90℃における1mm変位の曲げ強度が上記した範囲内であれば、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下において、樹脂成形品を十分に補強することができる。
【0101】
また、樹脂成形品用補強シート(の補強層)を厚み2.0mmのポリプロピレン板に貼着し、80℃で10分間加熱した後、90℃における2mm変位の曲げ強度は、例えば、1.2〜8.0N、好ましくは、2.0〜6.0Nである。
【0102】
さらに、樹脂成形品用補強シート(の補強層)を厚み2.0mmのポリプロピレン板に貼着し、80℃で10分間加熱した後、90℃における最大曲げ強度は、例えば、6.0〜40.0N、好ましくは、7.5〜30.0Nである。
【0103】
なお、最大曲げ強度は、押圧開始時と試験片破断時との間における最大曲げ強度(強さ)として得られる。
【0104】
90℃における上記した曲げ強度が上記した範囲内であれば、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下において、樹脂成形品を十分に補強することができる。
【0105】
またさらに、樹脂成形品用補強シート(の補強層)を厚み2.0mmのポリプロピレン板に貼着し、80℃で10分間加熱した後、常温(25℃)における1mm変位の曲げ強度は、例えば、6.0〜20.0N、好ましくは、7.0〜16.0N、さらに好ましくは、8.0〜15.0Nである。
【0106】
また、樹脂成形品用補強シート(の補強層)を厚み2.0mmのポリプロピレン板に貼着し、80℃で10分間加熱した後、常温(25℃)における2mm変位の曲げ強度は、例えば、11.0〜40.0N、好ましくは、12.0〜40.0N、さらに好ましくは、14.0〜36.0Nである。
【0107】
さらに、樹脂成形品用補強シート(の補強層)を厚み2.0mmのポリプロピレン板に貼着し、80℃で10分間加熱した後、常温(25℃)における最大曲げ強度は、例えば、65.0〜150.0N、好ましくは、80.0〜140.0Nである。
【0108】
25℃における上記した曲げ強度が上記した範囲内であれば、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下において、樹脂成形品を十分に補強することができる。
【0109】
樹脂成形品用補強シートは、補強層をポリプロピレン板に常温で貼着し、80℃で10分間加熱後に、剥離速度300mm/分で90度ピール試験により測定されるポリプロピレン板に対する粘着力(加熱後粘着力)が、例えば、2N/25mm以上、好ましくは、3N/25mm以上、さらに好ましくは、4N/25mm以上であり、また、例えば、50N/25mm以下でもある。
【0110】
樹脂成形品用補強シートの加熱後粘着力が上記した範囲内であれば、加熱により、補強層が粘着性を示すことにより、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下において、樹脂成形品用補強シートを樹脂成形品に確実に貼着することができる。
【0111】
上記した粘着力は、JIS Z0237(2009年)に準拠して測定される。
【0112】
なお、上記した樹脂成形品用補強シートの粘着力は、対応する補強層の各粘着力と実質的に同一である。
【0113】
そして、本発明の樹脂成形品用補強シートは、樹脂成形品の補強に用いられる。
【0114】
樹脂成形品としては、補強が必要な樹脂成形品であれば、特に限定されず、例えば、各種産業製品に用いられる樹脂成形品が挙げられる。
【0115】
樹脂成形品を形成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィンなどの低極性樹脂などが挙げられる。
【0116】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられ、好ましくは、ポリプロピレンが挙げられる。
【0117】
このような樹脂成形品としては、具体的には、自動車のバンパ、インストルメントパネルなどが挙げられる。
【0118】
図1は、本発明の樹脂成形品用補強シートを、樹脂成形品に貼着することにより補強する、本発明の樹脂成形品の補強方法の一実施形態を示す説明図であって、(a)は、樹脂成形品用補強シートを用意して、離型フィルムを剥がす工程、(b)は、樹脂成形品用補強シートを樹脂成形品に貼着する工程を示す。
【0119】
次に、図1を参照して、本発明の樹脂成形品用補強シートを、樹脂成形品に貼着することにより補強する、本発明の樹脂成形品の補強構造および補強方法の一実施形態について説明する。
【0120】
樹脂成形品用補強シート1は、図1(a)に示すように、拘束層3に補強層2が積層され、補強層2の表面(拘束層3が積層されている裏面に対して反対側の表面)に必要により離型フィルム6が貼着されている。
【0121】
また、樹脂成形品4は、図1(b)に示すように、上記した各種産業製品に用いられるものであって、例えば、板状に形成されており、より具体的には、外観に現れる外面7と、内部に向き、外観に現れない内面8とを備えるように形成されている。
【0122】
そして、樹脂成形品用補強シート1を樹脂成形品4に貼着するには、図1(a)の仮想線で示すように、まず、補強層2の表面から離型フィルム6を剥がして、次いで、図1(b)に示すように、その補強層2の表面を、樹脂成形品4の内面8に接触させ、必要により、圧着する。樹脂成形品用補強シート1の圧着では、例えば、0.15〜10MPa程度の圧力で、加圧する。
【0123】
さらに、必要により、加圧とともに加熱(熱圧着)することもできる。つまり、樹脂成形品用補強シート1を予め加熱し、次いで、加熱した樹脂成形品用補強シート1を樹脂成形品4に貼着する。
【0124】
熱圧着の条件は、温度が、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上、さらに好ましくは、100℃以上、通常、樹脂成形品4の耐熱温度以下であり、具体的には、例えば、130℃以下、好ましくは、30〜120℃、さらに好ましくは、80〜110℃である。
【0125】
その後、好ましくは、樹脂成形品用補強シート1が貼着された樹脂成形品4を加熱する。
【0126】
加熱温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上、さらに好ましくは、100℃以上、通常、樹脂成形品4の耐熱温度以下であり、具体的には、例えば、130℃以下、好ましくは、30〜120℃、さらに好ましくは、80〜110℃である。また、加熱時間は、例えば、0.5〜20分間、好ましくは、1〜10分間である。
【0127】
加熱温度および加熱時間が上記した範囲に満たないと、樹脂成形品4と拘束層3とを十分に密着させることができず、あるいは、樹脂成形品4の補強時の補強性を十分に向上させることができない場合がある。加熱温度および加熱時間が上記した範囲を超えると、樹脂成形品4が劣化したり、溶融してしまう場合がある。
【0128】
上記した樹脂成形品4の加熱は、樹脂成形品用補強シート1が貼着された樹脂成形品4を、樹脂成形品4の製造の乾燥工程における乾燥炉に投入することにより、実施する。
【0129】
あるいは、樹脂成形品4の製造において、乾燥工程がない場合には、上記した乾燥炉への投入に代えて、ヒートガンなどの部分的な加熱装置を用いて、樹脂成形品用補強シート1のみを加熱する。
【0130】
あるいは、上記した加熱装置を用いて、樹脂成形品4のみ、さらには、樹脂成形品用補強シート1と樹脂成形品4との両方を加熱することもできる。なお、樹脂成形品4のみを加熱する場合には、加熱装置の熱が樹脂成形品4を介して樹脂成形品用補強シート1に伝導(熱伝導)する。
【0131】
そして、樹脂成形品用補強シート1を樹脂成形品4に貼着し、必要により、その後、さらに、樹脂成形品用補強シート1および/または樹脂成形品4を加熱することにより、樹脂成形品用補強シート1を樹脂成形品4に密着させて、樹脂成形品用補強シート1が補強された樹脂成形品4の補強構造が形成される。
【0132】
そして、樹脂成形品4の補強構造および補強方法によれば、樹脂成形品用補強シート1の補強層2を樹脂成形品4に貼着することによって、拘束層3と樹脂成形品4とを強固に密着させることができる。
【0133】
また、本発明の樹脂成形品用補強シート1は、補強層2が、ポリマーおよび粘着付与剤を含有する粘着剤組成物から形成され、粘着付与剤が、軟化点が120℃以上の高軟化点粘着付与剤を含有するため、樹脂成形品4が溶融しない程度の高温雰囲気下においても、高軟化点粘着付与剤が軟化することなく、そのため、補強層2を保形することがでる。その結果、高温雰囲気下における樹脂成形品用補強シート1の剛性を向上させることができる。
【0134】
また、その結果、かかる樹脂成形品用補強シート1によって樹脂成形品4を確実に補強することができる。
【0135】
とりわけ、樹脂成形品4が溶融しない程度の高温雰囲気下においても、軽量でかつ良好な外観を保つことができ、樹脂成形品4の劣化または溶融を防止できながら、樹脂成形品4の補強構造の優れた補強力を維持することができる。
【0136】
すなわち、樹脂成形品4が溶融しないが、樹脂成形品4が熱変形し易い高温(具体的には、60〜90℃)雰囲気下において、軽量でかつ良好な外観を保つことができ、樹脂成形品4の劣化または溶融を防止できながら、樹脂成形品4の補強構造の優れた補強力を維持することができる。
【0137】
しかも、樹脂成形品4における補強したい部分のみに、樹脂成形品用補強シート1を貼着することにより、その部分のみを簡単に補強することができる。
【0138】
また、拘束層3および補強層2を備える、簡易な構成により、薄型化および軽量化を図りながら、樹脂成形品4を補強することができる。
【0139】
なお、上記した説明では、補強層2を粘着剤組成物からなる1枚のシートのみから形成しているが、例えば、図1の破線で示すように、補強層2の厚み方向途中に、不織布5を介在させることもできる。
【0140】
不織布5は、上記した不織布と同様のものが挙げられる。不織布5の厚みは、例えば、0.01〜0.3mmである。
【0141】
このような樹脂成形品用補強シート1を製造するには、例えば、直接形成法では、拘束層3の表面に、第1補強層を積層し、また、第1補強層の表面(拘束層3が積層されている裏面に対して反対側の表面)に不織布5を積層し、その後、不織布5の表面(第1補強層が積層されている裏面に対して反対側の表面)に第2補強層を積層する。
【0142】
転写法では、不織布5を、第1補強層および第2補強層によって、不織布5の表面側および裏面側の両側から挟み込む。詳しくは、まず、2枚の離型フィルム6の表面に、第1補強層および第2補強層をそれぞれ形成し、次いで、第1補強層を不織布5の裏面に転写し、また、第2補強層を不織布5の表面に転写する。
【0143】
不織布5を介在させることにより、補強層2を、補強したい樹脂成形品4の強度に応じて、厚い厚みで容易に形成することができる。
【0144】
次に、第2の発明である樹脂成形品用補強シートについて説明する。
【0145】
なお、第2の発明の樹脂成形品用補強シートについては、層、材料、配合割合、方法、物性(評価)が上記した第1の発明の樹脂成形品用補強シートのそれらと同様である場合には、それらの詳細な説明を省略する。
【0146】
粘着剤組成物は、ポリマーを含有している。
【0147】
ポリマーは、共役ジエン類および共役ジエン類と共重合可能な共重合性単量体を含有する単量体の重合体の水素添加物(水素化物)を含有している。
【0148】
共重合性単量体としては、好ましくは、芳香族ビニル単量体、さらに好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0149】
共重合性単量体の含有割合は、単量体に対して、35質量%以上である。
【0150】
共重合性単量体の含有割合が上記範囲に満たないと、樹脂成形品の補強時の補強性を十分に向上させることができない。
【0151】
また、共重合性単量体の含有割合は、好ましくは、40質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下でもある。
【0152】
つまり、共重合性単量体(好ましくは、スチレン)と共役ジエン類(好ましくは、1,3−ブタジエン)との配合割合は、質量基準で、35質量%以上/65質量%以下、好ましくは、40質量%以上/60質量%以下であり、例えば、70質量%以下/30質量%以上、好ましくは、60質量%以下/40質量%以上でもある。
【0153】
換言すれば、共重合性単量体の配合割合は、共役ジエン類100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、55〜200質量部、さらに好ましくは、60〜150質量部である。
【0154】
また、粘着剤組成物は、補強層と、樹脂成形品および拘束層との密着性を向上させたり、あるいは、樹脂成形品の補強時の補強性を向上させるために、好ましくは、粘着付与剤をさらに含有している。
【0155】
粘着付与剤としては、例えば、上記した高軟化点粘着付与剤、低軟化点粘着付与剤などが挙げられる。
【0156】
これら粘着付与剤のうち、好ましくは、低軟化点粘着付与剤、さらに好ましくは、水素添加物との相溶性の観点から、軟化点が120℃未満の脂環族飽和炭化水素系樹脂が挙げられる。
【0157】
そして、第2の発明の樹脂成形品用補強シートは、補強層が、ポリマーを含有する粘着剤組成物から形成され、ポリマーが、共役ジエン類および共役ジエン類と共重合可能な共重合性単量体を含有する単量体の重合体の水素添加物を含有し、共重合性単量体の含有割合が、単量体に対して、35質量%以上であるため、樹脂成形品が溶融しない程度の高温雰囲気下(具体的には、60〜90℃)においても、水素添加物が軟化することなく、そのため、補強層を保形することができる。その結果、高温雰囲気下における樹脂成形品用補強シートの剛性を向上させることができる。
【0158】
次に、第3の発明の樹脂成形品用補強シートについて説明する。
【0159】
第3の発明の樹脂成形品用補強シートは、第1の発明および第2の発明の両方に含まれる樹脂成形品用補強シートであって、第3の発明の樹脂成形品用補強シートは、補強層が、第1の発明の粘着付与剤と第2の発明のポリマーとを含有する粘着付与剤組成物から形成されている。
【0160】
すなわち、補強層において、粘着付与剤は、軟化点が120℃以上の高軟化点粘着付与剤を含有するとともに、ポリマーは、共役ジエン類および共役ジエン類と共重合可能な共重合性単量体の重合体の水素添加物を含有し、共重合性単量体の含有割合が、単量体に対して、35質量%以上である。
【0161】
そして、第3の発明の樹脂成形品用補強シートは、上記した第1の発明の樹脂成形品用補強シートと第2の発明の樹脂成形品用補強シートと同様の作用効果を奏する。
【実施例】
【0162】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らそれらに限定されない。
【0163】
実施例1〜10
表1に示す配合処方において、各成分を質量部基準で配合して、120℃に予め加熱したミキシングロールで混練することにより、熱可塑性の粘着剤組成物の混練物を調製した。
【0164】
次いで、調製した粘着剤組成物の混練物を、エポキシ樹脂が含浸された厚み0.18mmの樹脂含浸ガラスクロス(拘束層)と、離型フィルムとの間に挟み、120℃のプレス成形により、混練物をシート状に圧延して、厚み0.8mmの樹脂成形品用補強シートを作製した。(図1(a)参照)。なお、補強層の厚みは、0.62mmであった。
【0165】
比較例1
表1に示す配合処方において、各成分を質量部基準で配合して、実施例1〜10と同様に処理して、厚み0.78mmの樹脂成形品用補強シートを作製した。(図1(a)参照)。なお、補強層の厚みは、0.60mmであった。
【0166】
【表1】

【0167】
なお、表1の粘着剤組成物(補強層)の各成分の数値は、配合部数を示す。
【0168】
また、表1に示す各成分の詳細を以下に示す。
【0169】
タフテックH1041:スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレンおよびブタジエン比:30質量%/70質量%、MFR(190℃、2.16kg):0.3g/10分、MFR(200℃、5kg):3.5g/10分、MFR(230℃、2.16kg):5.0g/10分、旭化成ケミカルズ社製
タフテックH1043:スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレンおよびブタジエン比:67質量%/33質量%、MFR(200℃、5kg):5.0g/10分、MFR(230℃、2.16kg):2.0g/10分、旭化成ケミカルズ社製
タフテックH1051:スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレンおよびブタジエン比:42質量%/58質量%、MFR(200℃、5kg):0.5g/10分、MFR(230℃、2.16kg):0.8g/10分、旭化成ケミカルズ社製
アサプレンT432:商品名、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン比:30質量%/70質量%、旭化成ケミカルズ社製
タフプレンA:商品名、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン比:40%/60質量%、旭化成ケミカルズ製
YSポリスターT160:テルペンフェノール共重合体、軟化点(環球法)160℃、重量平均分子量1200(標準PS換算に基づくGPC法)、ガラス転移点(DSC法)103℃、ヤスハラケミカル社製
アルコンP150:水素添加テルペン樹脂、軟化点(環球法)150℃、重量平均分子量750(標準PS換算に基づくGPC法)、ガラス転移点(DSC法)93℃、荒川化学工業社製
アルコンP100:脂環族飽和炭化水素系樹脂、軟化点(環球法)100℃、荒川化学工業社製
アルコンM100:脂環族飽和炭化水素系樹脂、軟化点(環球法)100℃、荒川化学工業社製
ペトロタック90HM:炭化水素系石油樹脂、軟化点(環球法)88℃、東ソー社製
重質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製
旭カーボン♯50:カーボンブラック、旭カーボン社製
イルガノックス1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チバ・ジャパン社製
ノクラックMB:2−メルカプトベンズイミダゾール、大内新興化学工業社製
(評価)
得られた実施例1〜10および比較例1について、曲げ強度および粘着力を次のように評価した。
【0170】
それらの結果を表2に示す。
1)樹脂成形品用補強シートの曲げ強度
実施例1〜10および比較例1の樹脂成形品用補強シートを、厚み2.0mmのポリプロピレン板に、補強層とポリプロピレン板とが接触するように、貼着し、次いで、それらを80℃(密着温度)に設定された乾燥機に10分間投入して、それらを密着させて、積層板を得た。その後、乾燥機から取り出した積層板を、長さ150mm×幅25mmの大きさに外形加工して試験片を得た。
【0171】
得られた試験片を、表2に記載の測定温度(25℃、90℃)に設定された、万能試験機(ミネベア社製)の恒温槽にそれぞれ設置し、三点曲げ試験により、1mm変位の曲げ強度、2mm変位の曲げ強度および最大曲げ強度を、それぞれ測定した。
【0172】
なお、三点曲げ試験では、万能試験機(ミネベア社製)において、支点間距離を100mmとし、試験片の中央(長さ方向および幅方向中央)を、直径10mmの圧子で50mm/分の速度でポリプロピレン板側から押圧した。
2)加熱後の補強層の粘着力(加熱後粘着力)
実施例1〜10および比較例1において形成した補強層のみについて、剥離速度300mm/分でJIS Z0237(2009年)の90度ピール試験によって、ポリプロピレン板に対する加熱後粘着力をそれぞれ測定した。
【0173】
まず、実施例1〜10および比較例1の補強層のみを、常温(25℃)でポリプロピレン板に貼着し、次いで、それらを80℃で10分間加熱した後に、ポリプロピレン板に対する補強層の粘着力(加熱後粘着力)を測定した。
【0174】
【表2】

【符号の説明】
【0175】
1 樹脂成形品用補強シート
2 補強層
3 拘束層
4 樹脂成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束層と、前記拘束層に積層される補強層とを備え、
前記補強層が、ポリマーおよび粘着付与剤を含有する粘着剤組成物から形成され、
前記粘着付与剤が、軟化点が120℃以上の高軟化点粘着付与剤を含有することを特徴とする、樹脂成形品用補強シート。
【請求項2】
前記高軟化点粘着付与剤が、テルペンフェノール樹脂および/または水素添加テルペン樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂成形品用補強シート。
【請求項3】
前記粘着付与剤の配合割合が、前記ポリマー100質量部に対して、40〜200質量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂成形品用補強シート。
【請求項4】
前記粘着付与剤が、さらに、軟化点が120℃未満の低軟化点粘着付与剤を含有し、
前記低軟化点粘着付与剤が、脂環族飽和炭化水素系樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂成形品用補強シート。
【請求項5】
前記ポリマーが、共役ジエン類を含む単量体の重合体の水素添加物を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂成形品用補強シート。
【請求項6】
拘束層と、前記拘束層に積層される補強層とを備え、
前記補強層が、ポリマーを含有する粘着剤組成物から形成され、
前記ポリマーが、共役ジエン類および共役ジエン類と共重合可能な共重合性単量体の重合体の水素添加物を含有し、
前記共重合性単量体の含有割合が、前記単量体に対して、35質量%以上であることを特徴とする、樹脂成形品用補強シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂成形品用補強シートを樹脂成形品に貼着し、次いで、80℃以上に加熱して、前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に密着させることにより、前記樹脂成形品が補強されていることを特徴とする、樹脂成形品の補強構造。
【請求項8】
前記樹脂成形品用補強シートを、予め、80℃以上に加熱し、次いで、前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に貼着することを特徴とする、請求項7に記載の樹脂成形品の補強構造。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂成形品用補強シートを樹脂成形品に貼着する工程、および、
前記樹脂成形品用補強シートおよび/または前記樹脂成形品を80℃以上に加熱して、前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に密着させることにより、前記樹脂成形品を補強する工程
を備えていることを特徴とする、樹脂成形品の補強方法。
【請求項10】
前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に貼着する工程では、前記樹脂成形品用補強シートを、予め、80℃以上に加熱し、次いで、前記樹脂成形品用補強シートを前記樹脂成形品に貼着することを特徴とする、請求項9に記載の樹脂成形品の補強方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−60567(P2013−60567A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201603(P2011−201603)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】