説明

樹脂成形品硬化物

【課題】軟化温度や引張り弾性率が向上した樹脂成形品硬化物を提供する。
【解決手段】 液晶性ポリエステルセグメント(A)30〜90質量%、及びビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物及びその誘導体、アクリル酸系化合物及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を重合して得られるビニル重合体セグメント(B)70〜10重量%からなり、溶融開始温度が300℃以下であるブロック共重合体を含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品を硬化させてなる樹脂成形品硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特に全芳香族ポリエステルや液晶性ポリエステル等は、優れた耐熱性を有する樹脂として近年注目を集めている。その中でも特に液晶性ポリエステルは、液晶構造に起因して特異的な性質(例えば線膨張係数が低い、高周波特性が良い、耐熱性が高いなど)を有するため、多くの検討がなされてきている。
【0003】
上市されている液晶性ポリエステルは、その耐熱性からI型〜III型の3つに分類することができる。住友化学工業株式会社製の「スーパーLCP E−5000」シリーズや新日本石油化学株式会社製の「サイダー RC」シリーズ等に代表されるI型液晶性ポリマーは、最も高い耐熱性を有し、熱変形温度は300℃近いが、その反面、成形温度も樹脂の熱分解温度付近である380℃と非常に高く、成形が難しい問題を有する。
【0004】
反対にユニチカ株式会社製の「ロッドラン」シリーズや、三菱化学株式会社製の「ノバキュエート」シリーズ等に代表されるIII型液晶性ポリマーは、270℃程度の低い温度で成形可能であるが、耐熱温度が200℃程度と低い問題を有している。
【0005】
I型とIII型の中間的な材料もいくつか上市されているが、いずれの場合も、耐熱温度と成形温度は相反する性質であるため、成形性が良好で、かつ耐熱性や機械特性に優れた材料が求められている。そこで、成形した成形品を硬化反応させることで特性向上を目指す検討がなされている。
【0006】
例えば特開平2−199722号公報では、イオンビームによって架橋させることが報告されているが、本手法は硬化に長時間を有し、生産性が悪いという欠点を有している。
【0007】
また特開平5−156032号公報においては、成形品を電子線架橋させることで特性を向上し、また生産性を向上した方法であるが、硬化の際には事前にイオン照射プロセス等の前処理が必要である欠点を要する。
【0008】
特に液晶ポリエステルは、その構造から化学的に極めて安定であるため、電子線やイオンビームなどの照射による架橋反応が起こりにくい。一方でビニル系重合体は、分子鎖中にイオンビームや電子線で活性ラジカルを発生しやすい2級炭素や3級炭素を多く含むため、前記手法で硬化しやすい利点を有しており、多くのEB硬化性樹脂が上市されるに至っている。
【0009】
液晶ポリエステルとビニル系重合体からなるブロック共重合体の例としては、特開平5−97988号公報が挙げられるが、用途としては相溶化剤が中心であり、ブロック共重合体単独の特性や硬化性などは一切議論されていない。そこで成形後に硬化反応が可能な、液晶ポリエステルとビニル系重合体を有するようなブロック共重合体を考えるに至った。
【特許文献1】特開平2−199722号公報
【特許文献2】特開平5−156032号公報
【特許文献3】特開平5−097988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、軟化温度と引張り弾性率が向上した樹脂成形品硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(1)液晶性ポリエステルセグメント(A)30〜90質量%、及びビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物及びその誘導体、アクリル酸系化合物及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を重合して得られるビニル重合体セグメント(B)70〜10重量%からなり、溶融開始温度が300℃以下であるブロック共重合体を含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品を硬化させてなる樹脂成形品硬化物に関する。
【0012】
また、本発明は、(2)前記樹脂組成物が無機フィラー及び有機フィラーから選ばれる少なくとも1種のフィラーを含むことを特徴とする前記(1)に記載の樹脂成形品硬化物に関する。
【0013】
また、本発明は、(3)前記フィラーの含有量が、前記樹脂組成物総質量に対して5〜40質量%であることを特徴とする前記(2)に記載の樹脂成形品硬化物に関する。
【0014】
また、本発明は、(4)前記樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の樹脂成形品硬化物に関する。
【0015】
また、本発明は、(5)前記硬化を、紫外線照射、電子線照射、γ線照射、熱処理から選ばれる少なくとも1種の手法により行なうことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の樹脂成形品硬化物に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軟化温度と引張り弾性率が向上した樹脂成形品硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の樹脂成形品硬化物は、液晶性ポリエステルセグメント(A)30〜90質量%、及びビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物及びその誘導体、アクリル酸系化合物及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を重合して得られるビニル重合体セグメント(B)70〜10重量%からなり、溶融開始温度が300℃以下であるブロック共重合体を含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品を硬化させてなるものである。
【0018】
前記ブロック共重合体は、液晶性ポリエステルセグメント(A)30〜90質量%及びビニル重合体セグメント(B)70〜10重量%からなる。前記液晶性ポリエステルセグメント(A)が30質量%未満では液晶性を発現できず、耐熱性や強度に劣り、90質量%を超えると成形品が硬化しなくなる。ブロック共重合体は、液晶性ポリエステルセグメント(A)50〜90質量%及びビニル重合体セグメント(B)50〜10重量%からなることが好ましい。
【0019】
また、前記ブロック共重合体の溶融開始温度が300℃を超えると、成形又は硬化工程においてビニル重合体セグメント(B)の熱分解が生じてしまう。前記ブロック共重合体の溶融開始温度は、材料のハンドリング性などから30〜300℃であるのが好ましく、160〜300℃であることがより好ましい。
【0020】
本発明における液晶性ポリエステルセグメント(A)は、例えば、ジカルボン酸類とジオール類との組み合わせからなるもの、ヒドロキシカルボン酸類からなるもの、ジカルボン酸類、ジオール類及びヒドロキシカルボン酸類との組み合わせからなるものであり、既知の方法で合成可能である。かかる液晶性ポリエステルセグメント(A)は、例えば下記一般式(1)〜(3)から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する。
【化1】

【化2】

【化3】

【0021】
前記一般式(1)〜(3)のR〜Rはそれぞれ同じでも異なっていても構わない。またx,y,nは1以上の整数を表す。a,bはモル分率を表し、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1.0である。またR及びRは原材料のジカルボン酸類に起因する骨格であり、R及びRはジオール類に起因する骨格であり、R及びRはヒドロキシカルボン酸類に起因する骨格である。ここでR〜Rは特に制限はないが、例えばその一部を例示するのであれば、構造はそれぞれ、下記一般式(4)〜(21)で表される。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0022】
(ここでm、pは2〜18の整数であることを表す)
前記一般式(4)のR及び一般式(5)のRは、それぞれ下記一般式(22)〜(28)のいずれかであることが好ましい。またRとRは同じでも異なっていてもかまわない。
【化8】

【0023】
(ここでqは1〜18の整数であることを表す)
前記一般式(10)のR、一般式(15)のR10は、それぞれ下記一般式(29)〜(33)のいずれかであることが好ましい。またRとR10は同じでも異なっていてもかまわない。
【化9】

【0024】
本発明では液晶性ポリエステルセグメント(A)の繰り返し単位中に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環から選ばれる少なくとも1種を含むことが望ましい。セグメント(A)がこのような骨格を有することでブロック共重合体の耐熱性や液晶性をより向上することが可能になる。
【0025】
液晶性ポリエステルは通常、ジオール類とジカルボン酸類とによる重縮合反応、又はヒドロキシカルボン酸類による重縮合反応、又はジオール類、ジカルボン酸類及びヒドロキシカルボン酸類とによる重縮合反応により合成される。
【0026】
ジオール類は、一分子中にヒドロキシル基を二つ有するものであれば特に制限はなく、例えば、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジフェニルプロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシテルフェニル、2,6−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,6−ナフタレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等の芳香族ジオール、またはクロロハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、フェノキシハイドロキノン、4−クロロレゾルシン、4−メチルレゾルシン等の芳香族ジオールのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体やこれらの誘導体、これらのジアセテート類、ジベンゾエート類などが挙げられる。これらのなかでも、芳香族ジオールが好ましい。
【0027】
ジカルボン酸類は、一分子中にカルボキシル基を二つ有するものであれば特に制限はなく、例えば、テレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−テルフェニルジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、またはクロロテレフタル酸、ジクロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、メトキシテレフタル酸、エトキシテレフタル酸等で代表される上記芳香族ジカルボン酸のアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸、又はそれらのジアルキルエステル類、ジフェニルエステル類、塩化物、アルキル金属塩等が挙げられる。これらのなかでも、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0028】
ヒドロキシカルボン酸類は、一分子中に一つのカルボキシル基と一つのヒドロキシル基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、グリコール酸、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、または3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−メチル−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ナフトエ酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドキシ−5−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−7−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5,7−ジクロロ−2−ナフトエ酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、これらの誘導体が挙げられる。これらのなかでも、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が好ましい。
【0029】
液晶性ポリエステルの合成は既知の手法で可能であるが、例えば溶液重合法、界面重縮合法、溶融重縮合法などが利用できる。またこの際、各成分の仕込みモル比を調整することで、両末端にカルボキシル基及びその誘導体、ヒドロキシル基及びその誘導体を導入することが可能である。
【0030】
一方、ビニル重合体セグメント(B)は、ビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物、アクリル酸系化合物から選ばれる少なくとも1種を重合して得られるものである。これらの単量体を用いると、分子末端の構造を制御しやすく、また幅広い材料設計が可能である。ビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物、アクリル酸系化合物としては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド(ここで、(メタ)アクリルとは、メタクリル及びアクリルであることを表す)、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−メチルマレイミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、3−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクロイルモルホリンなどの(メタ)アクリルアミド系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、4−フルオロスチレン、4−メトキシスチレン、4−アミノスチレン、4−ニトロスチレン、4−ビニルフェノール、ビニルナフタレン等に代表されるビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メトキシ)コポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等に代表される(メタ)アクリレート系単量体、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等に代表される(メタ)アクリロキシシラン系単量体、メタクリロニトリル、アクリロニトリルに代表されるシアノビニル系化合物、酢酸ビニル、塩化ビニル、弗化ビニル等に代表されるビニル系単量体、スチレンスルホン酸アルカリ金属塩、ビニルスルホン酸アルカリ金属塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸−3−スルホプロピルアルカリ金属塩、末端スルホン酸塩変性ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の金属塩型単量体などが挙げられ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、スチレン、(メタ)アクリル酸エステルは、入手も容易で安価であり、幅広い材料設計が可能であるので好ましい。ビニル重合体を得る重合方法は一般に既知の重合方法、すなわち溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が利用でき、重合反応としてはラジカル重合、イオン重合、配位重合等が利用できる。
【0031】
本発明のブロック共重合体は、液晶性ポリエステルセグメント(A)とビニル重合体セグメント(B)とが結合したものである。かかるブロック共重合体の合成法は特に制限はなく、既知の手法を用いて合成可能である。例えば、片末端又は両末端に官能基を有する液晶性ポリエステルと、片末端又は両末端に官能基を有するビニル重合体を別途合成し、これらを末端間で反応させる方法(以下、手法1と記す)や、液晶性ポリエステルに重合性官能基を導入し、これをマクロイニシエーターとして、ビニル重合体の構成単量体であるビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物又はアクリル酸系化合物を重合する手法(以下、手法2と記す)などが挙げられる。いずれの手法においてもブロック共重合体は合成可能であり、手法1ではAB型や(AB)x型、ABA型、BAB型のブロック共重合体が得られ、手法2では主にABA型ブロック共重合体が得られる。
【0032】
以下にブロック共重合体の各合成手法について詳細を述べる。
【0033】
手法1は、まず、末端に官能基を有する液晶性ポリエステルと末端に官能基を有するビニル重合体とをそれぞれ合成する。液晶性ポリエステルの末端に官能基を導入する方法としては、ポリエステルを得る一般的な重合法を行うことでポリエステルの両末端にカルボキシル基又はその誘導体、ヒドロキシル基又はその誘導体を導入することが可能であるが、ビニル重合体との反応性を高めるために末端カルボキシル基を塩化チオニル等を用いて酸クロリド化してもよいし、あるいはジイソシアナート類を用いてイソシアネート化してもよいし、ジアミン化合物を用いてアミノ化してもよい。ビニル重合体の末端に官能基を導入する方法としては、一般に既知の手法が利用可能である。例えば、特公平5−062125号公報記載の方法のように、官能基を有する連鎖移動剤、例えばメルカプトプロピオン酸を用いてエチレン性不飽和単量体をラジカル重合することによりカルボキシル基を片末端に有する重合体を合成することができる。また、停止剤を用いたリビングラジカル重合法(上垣外ら、Polymer Preprints,Japan ,48(7),1999)も利用できる。また特開平5−155995号公報記載の方法のように、カルボキシル基を有するラジカル重合開始剤を用いて単量体を重合することによりカルボキシル基を有する重合体を合成することができる。カルボキシル基以外の例えば水酸基などの官能基を有するラジカル重合開始剤は、和光純薬工業株式会社より市販されており、これらを用いて上記方法を行うことにより簡便に官能基を導入できる。更にこれら方法の組み合わせ、すなわち官能基を有する重合開始剤と官能基を有する連鎖移動剤の組み合わせにより両末端に官能基が導入されたビニル重合体も容易に得ることが可能である。
【0034】
末端に官能基を有する液晶性ポリエステルと末端に官能基を有するビニル重合体とを末端間で反応させる方法としては制限はなく、溶融重合、溶液重合、界面重縮合等が利用できる。この際、必要に応じて熱安定剤や縮合触媒、脱水剤、脱ハロゲン化水素剤等を用いても良い。
【0035】
末端間の反応で形成される結合形式は特に制限はなく、既知の二分子間反応で形成される結合形式である。例えば、縮合反応系で形成されるエステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、尿素結合、エーテル結合などの他、Diels−Alder反応、マイケル付加反応、カップリング反応等の一般的に既知の二分子間反応で形成される結合形式などが挙げられる。
【0036】
手法2においては、まず液晶性ポリエステルを合成する。この際、液晶性ポリエステルの末端、分子内のいずれか又は双方に重合性官能基を導入し、これをマクロイニシエーターとして用いて、ビニル重合体の構成単量体であるビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物又はアクリル酸系化合物を重合することでブロック共重合体が得られる。ここで重合性官能基とは、ビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物又はアクリル酸系化合物を重合しうる官能基であれば特に制限はないが、例えば、アゾ基、パーオキシル基、パーエステル基、チオール基、ジスルフィド基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化フェニル基などが挙げられる。これらのなかでも、アゾ基を有するマクロイニシエーターを用いることが好ましい。
【0037】
液晶性ポリエステルへ重合性官能基を導入する方法としては様々な方法が挙げられるが、例えば、液晶性ポリエステルを合成する際に重合性官能基を有するジオール類またはその誘導体、重合性官能基を有するジカルボン酸類またはその誘導体を共重合してもよいし、または液晶性ポリエステルの末端に重合性官能基を有するアルコール類及びその誘導体、フェノール類及びその誘導体、カルボン酸類及びその誘導体等を用いて導入しても良い。
【0038】
このようにして得られたマクロイニシエーターを用いてビニル重合体の構成単量体であるビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物又はアクリル酸系化合物を重合することで、簡便にブロック共重合体を合成することができる。この際用いる手法に制限はなく、溶液重合や懸濁重合、乳化重合、塊状重合等が利用できる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は無機フィラー及び有機フィラーから選ばれる少なくとも1種のフィラーを含むことができる。無機フィラー又は有機フィラーは特に制限されず、例えば、繊維状無機フィラー、シート状無機フィラー、球状無機フィラー、繊維状有機フィラー、シート状有機フィラーなどを用いることができる。繊維状無機フィラー又はシート状無機フィラーとしては、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、ピッチ系カーボン繊維、ポリアクリロニトリル系カーボン繊維、活性炭繊維、ゼピオライト繊維、チタン酸カリウム繊維、セラミック繊維、ウォラストナイト繊維、ロックウール、それらからなるシートなどが例示される。球状無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボン、クレイ、炭化ケイソ、タルク、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、マイカ、水酸化カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。繊維状有機フィラー又はシート状有機フィラーとしては、アラミド繊維、アラミド繊維からなるシート、ポリエステル繊維、ポリエステル繊維からなるシートなどが例示される。これらフィラーは一種類を用いても、数種類を併用しても良い。これらフィラーのなかでもガラス繊維又はカーボン繊維は安価であり、また用いると更なる特性向上が可能になるため好ましい。
【0040】
前記フィラーの含有量は、前記樹脂組成物総質量に対して好ましくは5〜40質量%、より好ましくは15〜40質量%である。前記フィラーの含有量が5質量%未満ではフィラーの添加効果が得られ難くなり、40質量%を超えると成形性が低下する傾向にある。
【0041】
本発明の樹脂組成物は熱可塑性樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂としては、加熱により溶融可能な樹脂であれば制限はないが、溶融開始温度が300℃以下である熱可塑性樹脂が好ましい。前記熱可塑性樹脂の溶融開始温度が300℃を超えると、成形工程又は硬化工程においてブロック共重合体と混合した際に、ブロック共重合体中のビニル重合体セグメント(B)が熱分解する可能性がある。熱可塑性樹脂の具体例としては、6,6−ナイロン、11−ナイロン、6,10−ナイロン、6−ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリフェニレンスルフィド、ポリジメチルシロキサン、セルロース、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル及びこれらの共重合体などの他、ゴム強化熱可塑性樹脂、繊維強化熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらは1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
【0042】
前記熱可塑性樹脂の含有量は、前記樹脂組成物総質量に対して好ましくは1〜90質量%、より好ましくは10〜90質量%である。前記熱可塑性樹脂の含有量が1質量%未満では熱可塑性樹脂の特徴が全く発揮できない傾向にあり、90質量%を超えるとブロック共重合体の特徴が発揮できない傾向にある。
本発明の樹脂成形品硬化物は、上記樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品を硬化させてなるものである。
上記樹脂組成物は、所望の形状に成形して成形品とすることにより、様々な用途に用いることが可能である。成形品としては、例えばフィルムまたはシートなどが挙げられる。樹脂組成物を成形する方法は特に制限されず、成形すべき形状に応じて最適な成形方法を選択することが可能であり、例えば、射出成形、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、圧縮成形、粉末成形などの方法が挙げられる。これらの成形方法を用いることで、様々な形状の成形品を安価に得ることが可能である。また成形時には、必要に応じて前もって離型剤、滑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、光重合開始剤、熱重合開始剤、着色剤、難燃剤、シランカップリング剤などの添加剤を樹脂組成物に混合することも可能である。これらを混合することによって、例えば成形流動性や熱安定性、耐候性、耐熱性、硬化性、難燃性などのほか、繊維との密着性を向上することで更に強度を上昇させたり、顔料や染料を配合しておくことで、意匠性を持たせることも可能である。これらを使用する際は、1種とは限らず2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0043】
上記樹脂成形品を硬化することにより、耐熱性や強度が向上した本発明の樹脂成形品硬化物が得られる。
【0044】
樹脂成形品を硬化する方法としては、特に限定されず、例えば、紫外線照射、電子線照射、γ線照射、熱処理から選ばれる少なくとも1種の手法が挙げられる。これらのなかでも、電子線照射を用いる方法が好ましい。これらの方法は一つに限らず、異なる方法を二つ以上組み合わせて行うこともできる。このように硬化することで、成形品全体に架橋構造を形成することが可能となり、その結果、強度や耐熱性が向上できる。
【0045】
かくして得られる本発明の樹脂成形品硬化物は軟化温度と引張り弾性率に優れているため、各種配線板用材料や電子材料用の部材、機械部品など種々の用途に有用である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例を用いて更に具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらに制限されるものではない。また実施例で用いた材料、各種物性の測定法、評価法は以下の通りである。なお使用した材料は断りのない限り、試薬を使用した。
【0047】
[ブロック共重合体中の液晶性ポリエステルの質量割合]
ブルカー・バイオスピン株式会社製多核NMR測定装置、AV300Mを用いた。重溶媒にはブロックピリジンd−5を用い、積算回数1064回にてH−NMR測定を行い、ビニル成分に起因するシグナルと、全芳香族に起因するシグナルの積分比から求めた。
【0048】
[ブロック共重合体の溶融開始温度]
粉末状のブロック共重合体0.05gを2枚のカバーガラス(50x40mm、厚さ0.12〜0.17mm)で挟み、ホットプレート(アズワン製セラミックホットプレート CH−250)上に載せて加熱した。カバーガラスの上面より接触型温度計(アズワン製サーモメータTM300+面接触式K型熱電対IK−500)を用いて温度を測定しつつ観察し、目視により流動性が観察され始めた温度を溶融開始温度とした。
【0049】
[樹脂成形品及び樹脂成形品硬化物の液晶性の評価方法]
液晶性の評価は、株式会社リガク製、X線回折装置「ATX−G」により行なった。樹脂成形品の測定試料は、溶融プレスにより調整したシート状の樹脂成形品を用いた。また、樹脂成形品硬化物の測定試料は、前記樹脂成形品を電子線照射にて硬化させて得た、厚さ1mm、大きさ20mm×20mmの樹脂成形品硬化物を用いた。Cu−Kα線を用い、出力電圧50kV、S1:1mm×10mm、S2:1mm×10mm、RS:なし、YD:0.5mm×10mmの各スリットを用い、1〜60°まで2°/minにて2ω/Θスキャンを実施した。2Θ=20°付近に観察されるベンゼン環の配列に起因するピークの明瞭さから、液晶性を以下の3段階で評価した。◎がもっとも優れており、実用上は○以上であることが望ましい。
【0050】
◎:ピークが明瞭でベースラインから独立しており、良好な液晶性を示す。
【0051】
○:やや不明瞭なピークが確認でき、液晶性を確認できる。
【0052】
△:明瞭なピークが全く確認されず、液晶性が確認できない。
【0053】
[樹脂成形品及び樹脂成形品硬化物の軟化温度]
Seiko Instruments製、TMA/SS測定装置「SII EXSTAR TMS/SS6000」を用いた。測定は圧縮・針入モードとし、プローブは先端針径φ0.5mmのものを用いた。針の沈み点より軟化温度を求め、耐熱性の評価とした。樹脂成形品の測定試料は、下記樹脂成形品の作成方法に従い作成したシート状の成形品から切り出して得た、直径5mmの円形樹脂成形品を用いた。また、樹脂成形品硬化物の測定試料は、下記樹脂成形品硬化物の作成方法に従い硬化させたシート状の成形品硬化物から切り出して得た、直径5mmの円形樹脂成形品硬化物を用いた。
[樹脂成形品及び樹脂成形品硬化物の引張り弾性率]
引張り試験により測定した。チャック間距離20mm、引張り速度、1mm/minにて実施した。樹脂成形品の測定試料は、下記樹脂成形品の作成方法に従い作成したシート状の成形品から切り出して得た、長さ30mm、幅10mmの短冊状樹脂成形品を用いた。また、樹脂成形品硬化物の測定試料は、下記樹脂成形品硬化物の作成方法に従い硬化させたシート状の成形品硬化物から切り出して得た、長さ30mm、幅10mmの短冊状樹脂成形品硬化物を用いた。
[樹脂成形品硬化物のゲル分率]
樹脂成形品硬化物1.0gをN−メチル−2−ピロリドン19.0g中に分散し、100℃で24時間放置した。その後、残存する固形分を取り出し、この固形分をN−メチル−2−ピロリドンで洗浄後、180℃で2時間乾燥した。残存固形分の重量から、以下の式に従ってゲル分率を算出した。
【0054】
(ゲル分率)=(残存固形分量(g))/1.0g×100%
ゲル分率が80質量%以上のものを◎、50〜79質量%のものを○、49質量%以下のものを×とした。◎がもっとも好ましく、実用上は○以上であれば問題ない。×では硬化性が足りないため好ましくない。
【0055】
[樹脂成形品の作成方法]
下記合成例で得られたブロック共重合体を用い、表2〜4に示す内容にて材料の配合を行った。この混合粉末を220〜250℃、窒素気流中にて予備混合し、得られた樹脂をミキサーで粉砕した。窒素気流中、260℃に加熱したフッ素樹脂基板上に、粉砕した樹脂を約5gのせ、その上からフッ素樹脂基板を介して5分間加重をかけた。フッ素樹脂基板で挟まれた溶融樹脂をそのまま冷却した後にフッ素樹脂基板からはがし、厚さ1mmのシート状の樹脂成形品を得た。
【0056】
[樹脂成形品硬化物の作成方法]
前記樹脂成形品の作成方法で得られたシート状の樹脂成形品を、三菱重工株式会社製、広域電子線照射装置「MIWEL」を用い、加速電圧300kVにて10分間照射することで、シート状の樹脂成形品硬化物を得た。
【0057】
(合成例1)
1−(1)両末端ヒドロキシ化アクリルポリマー(ポリマーB1)の合成
200mlの三口フラスコにスリーワンモーター、フッ素樹脂製攪拌翼、ジムロート、滴下漏斗を取り付けた。別に、200mlビーカーを用意し、これにアクリル酸ブチル50.0g、ジチオエタノール10.0g、及び2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬工業株式会社製、VA−086)を配合し、均一になるまで良く撹拌した。これを滴下漏斗に入れ、110〜120℃にて1時間かけてフラスコに滴下した。滴下後、更に3時間加熱撹拌し、非常に粘調なポリマー溶液を得た。前記ポリマー溶液を大量のメタノール・水混合溶液(メタノール:水=2:1vol比)にて沈澱させ、再度メタノール・水混合溶液にて洗浄したあと、80℃真空にて乾燥した。得られたポリマーの収率は77.5質量%、GPCより算出した重量平均分子量は7,000であった。得られたポリマーを以下、ポリマーB1と記載する。
【0058】
1−(2)末端カルボキシル化ポリエステル(ポリマーA1)の合成
100ml三口フラスコにスリーワンモーター、三方コック付きジムロートを取り付け、これに4,4’−ジヒドロキシビフェニル3.385gと9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン4.052gを仕込み、フラスコ内を窒素置換した。これにジオキサン28.0mlとピリジン12.0mlを加え、材料を溶解した。次にN−メチルー2−ピロリドン21.0mlにテレフタル酸ジクロリド3.179g及びイソフタル酸ジクロリド3.244gを溶解した溶液を一気にフラスコへ加え、室温(25℃)にて1時間反応させ、末端がカルボキシル化ポリエステル(ポリマーA1)の重合溶液を得た。得られたポリマーA1の重量平均分子量は8,000であった。この重合溶液をそのまま用いた。
【0059】
1−(3)ブロック共重合体(ポリマーC1)の合成
100ml二口フラスコにラバーセプタム、スターラーチップを取り付け、これに前記ポリマーB1 10.0gを入れ窒素置換を実施した。これにN−メチル−2−ピロリドン27.0mlを加え、60℃で加熱しつつ溶解した。この溶液を上述のポリマーA1の入っている三口フラスコへ一気に添加後、120℃に加熱し、24時間撹拌した。得られたポリマー溶液は薄白濁で液晶状態を呈していた。ポリマー溶液を大量の水中に入れてポリマーを析出させた後、メタノールで2回洗浄し、100℃にて真空乾燥してブロック共重合体(ポリマーC1)を得た。収率は92.5%であった。またH−NMRより、ポリマーC1中のポリマーA1の質量割合は50質量%、ポリマーC1はポリマーA1及びポリマーB1からなる2元ブロック共重合体であった。ポリマーC1の溶融開始温度は320℃であった。
【0060】
(合成例2)
2−(1)両末端ヒドロキシ化アクリルポリマーはポリマーB1を用いた。
【0061】
2−(2)末端カルボキシル化ポリエステル(ポリマーA2)の合成
100ml三口フラスコにスリーワンモーター、三方コック付きジムロートを取り付け、これにビスフェノールAを3.192gと、4,4‘−ジヒドロキシビフェニルを2.604gを配合し、フラスコ内を窒素置換した。これにN−メチルー2−ピロリドン14.0mlを加え70℃に加熱し溶解した。これにセバシン酸クロリド7.648gを一気にフラスコへ加え、70℃にて5分反応させ、末端がカルボキシル化ポリエステル(ポリマーA2)の重合溶液を得た。得られたポリマーA2の重量平均分子量は11,000であった。この重合溶液をそのまま用いた。
【0062】
2−(3)ブロック共重合体(ポリマーC2)の合成
前記2−(2)で得られたポリマーA2の重合溶液、次に、ポリマーB1の50%N−メチル−2−ピロリドン溶液22.0gを一気に加え、70℃で2時間、次いで150℃で3時間反応させた後、室温まで冷却した。得られたポリマー溶液を大量の水中に入れてポリマーを析出させた後、メタノールで2回洗浄し、100℃にて真空乾燥してブロック共重合体(ポリマーC2)を得た。収率は97.5%であった。またH−NMRより、ポリマーC2中のポリマーA2の質量割合は50質量%、ポリマーC2はポリマーA2及びポリマーB1からなる2元ブロック共重合体であった。ポリマーC2の溶融開始温度は200℃であった。
【0063】
(合成例3)
前記合成例1で得たポリマーB1の50%N−メチル−2−ピロリドン溶液22.0gを9.4gに変えること以外は前記2−(3)と同様に操作してブロック共重合体(ポリマーC3)を得た。収率は98%でした。ポリマーC3中のポリマーA2の質量割合は70質量%、ポリマーC3はポリマーA2及びポリマーB1からなる2元ブロック共重合体であった。ポリマーC3の溶融開始温度は220℃であった。
【0064】
であった。
【0065】
(合成例4)
前記合成例1で得たポリマーB1の50%N−メチル−2−ピロリドン溶液22.0gを2.4gに変えること以外は前記2−(3)と同様に操作してブロック共重合体(ポリマーC4)を得た。収率は98%でした。ポリマーC4中のポリマーA2の質量割合は90質量%、ポリマーC4はポリマーA2及びポリマーB1からなる2元ブロック共重合体であった。ポリマーC4の溶融開始温度は250℃であった。
【0066】
(合成例5)
前記合成例1で得たポリマーB1の50%N−メチル−2−ピロリドン溶液22.0gを51.2gに変えること以外は前記2−(3)と同様に操作してブロック共重合体(ポリマーC5)を得た。収率は89%でした。ポリマーC5中のポリマーA2の質量割合は30質量%、ポリマーC5はポリマーA2及びポリマーB1からなる2元ブロック共重合体であった。ポリマーC5の溶融開始温度は160℃であった。
【0067】
(合成例6)
前記合成例1で得たポリマーポリマーB1の50%N−メチル−2−ピロリドン溶液22.0gを198gに変えること以外は前記2−(3)と同様に操作してブロック共重合体(ポリマーC6)を得た。収率は87%でした。ポリマーC6中のポリマーA2の質量割合は10質量%、ポリマーC6はポリマーA2及びポリマーB1からなる2元ブロック共重合体であった。ポリマーC6の溶融開始温度は20℃であった。
【0068】
(合成例7)
前記合成例1で得たポリマーB1の50%N−メチル−2−ピロリドン溶液22.0gを1.2gに変えること以外は前記2−(3)と同様に操作してブロック共重合体(ポリマーC7)を得た。収率は98%でした。ポリマーC7中のポリマーA2の質量割合は95質量%、ポリマーC7はポリマーA2及びポリマーB1からなる2元ブロック共重合体であった。ポリマーC7の溶融開始温度は250℃であった。
【0069】
合成例1〜7で得られたブロック共重合体(ポリマーC1〜C7)について表1に示す。
【表1】

【0070】
(実施例1)
合成例2で得られたポリマーC2を8.0g、ガラスフレーク(日本板硝子株式会社製ガラスフレークREFG−101)2.0gをミキサーで混合し、粉末状混合物を作成した。これを270℃に加熱したPTFE(四フッ化エチレン樹脂)シート上、窒素気流下で金属へらを用いて溶融混錬し、その後ミキサーで粉砕することで、樹脂組成物を作成した。これを前述記載の樹脂成形品の作成方法によりシート状に成形し、シート状の樹脂成形品を作成し、液晶性、軟化温度及び引っ張り弾性率を評価した。その後、更に前述記載の樹脂成形品硬化物の作成方法により硬化処理を行うことで、シート状の樹脂成形品硬化物を作成し、液晶性、軟化温度及び引っ張り弾性率及びゲル分率を評価した。
【0071】
(実施例2)
ポリマーC2の変わりにポリマーC3を用いること以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。
【0072】
(実施例3)
ポリマーC2の変わりにポリマーC4を用いること以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。
【0073】
(実施例4)
ポリマーC2の変わりにポリマーC5を用いること以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。
【0074】
(実施例5)
ポリマーC2を9.5g、ガラスフレークを0.5gとしたこと以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。
【0075】
(実施例6)
ポリマーC2を8.5g、ガラスフレークを1.5gとしたこと以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。
【0076】
(実施例7)
ポリマーC2を6.0g、ガラスフレークを4.0gとしたこと以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。
【0077】
(実施例8)
ポリマーC2を4.0g、ポリスチレン樹脂(重量平均分子量:10万)を4.0g、ガラスフレークを2.0gとしたこと以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。
【0078】
(実施例9)
ポリマーC2を4.0g、PET樹脂(カネボウ合繊株式会社製ポレエチレンテレフタレート樹脂IP104B)を4.0g、ガラスフレークを2.0gとしたこと以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。
【0079】
(実施例10)
合成例2で得られたポリマーC2 10.0gを270℃に加熱したPTFE(四フッ化エチレン樹脂)シート上、窒素気流下で金属へらを用いて溶融混錬し、その後ミキサーで粉砕することで、樹脂組成物を作成した。これを前述記載の樹脂成形品の作成方法によりシート状に成形し、シート状の樹脂成形品を作成し、液晶性、軟化温度及び引っ張り弾性率を評価した。その後、更に前述記載の樹脂成形品硬化物の作成方法により硬化処理を行うことで、シート状の樹脂成形品硬化物を作成し、液晶性、軟化温度及び引っ張り弾性率及びゲル分率を評価した。
【0080】
実施例1〜10の評価結果を表2及び3に示す。
【表2】

【表3】

【0081】
(比較例1)
合成例1で得られたポリマーC1を8.0g、ガラスフレーク(日本板硝子株式会社製ガラスフレークREFG−101)2.0gをミキサーで混合し、粉末状混合物を作成した。これを270℃に加熱したPTFEシート上、窒素気流下で金属へらを用いて溶融混錬しようとしたが、ポリマーが溶融せず、混錬はできなかった。そこで330℃まで更に温度を上げて実施したところ、溶融はしたものの、樹脂が発煙し、熱分解が生じてしまったため、サンプルは得られなかった。
【0082】
(比較例2)
ポリマーC1の変わりにポリマーC6を用いること以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。なお、硬化前の引っ張り弾性率は、樹脂が試験片の形状を保持することが出来なかったため測定できなかった。
【0083】
(比較例3)
ポリマーC1の変わりにポリマーC7を用いること以外は実施例1と同様に操作を行いシート状の樹脂成形品、シート状の樹脂成形品硬化物を得、それらの評価を行なった。
【0084】
比較例1〜3の評価結果を表4に示す。
【表4】

【0085】
上記表2〜4からわかるように、実施例1〜10における樹脂成形品硬化物は、硬化をしないものに比べて軟化温度と引張り弾性率が上昇しており、また液晶性を有していた。一方、溶融開始温度が320℃であるブロック共重合体を用いた比較例1では、成形工程中に熱分解が生じてしまい成形できなかった。ブロック共重合体中の液晶ポリエステルセグメントが10質量%であるポリマーC6を用いた比較例2では液晶性を発現できず、ブロック共重合体中の液晶ポリエステルセグメントが95質量%であるポリマーC7を用いた比較例3は、十分な硬化が進行せず、軟化温度や引張り弾性率の向上効果がみられなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性ポリエステルセグメント(A)30〜90質量%、及びビニル系化合物、ビニリデン系化合物、メタクリル酸系化合物及びその誘導体、アクリル酸系化合物及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を重合して得られるビニル重合体セグメント(B)70〜10重量%からなり、溶融開始温度が300℃以下であるブロック共重合体を含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形品を硬化させてなる樹脂成形品硬化物。
【請求項2】
前記樹脂組成物が無機フィラー及び有機フィラーから選ばれる少なくとも1種のフィラーを含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品硬化物。
【請求項3】
前記フィラーの含有量が、前記樹脂組成物総質量に対して5〜40質量%であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂成形品硬化物。
【請求項4】
前記樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂成形品硬化物。
【請求項5】
前記硬化を、紫外線照射、電子線照射、γ線照射、熱処理から選ばれる少なくとも1種の手法により行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂成形品硬化物。

【公開番号】特開2008−274208(P2008−274208A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202769(P2007−202769)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】