説明

樹脂担持触媒および樹脂担持触媒の製造方法

【課題】触媒の繰り返し特性と利用効率に優れた担持触媒を提供する。
【解決手段】フェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂の硬化物と、その熱硬化性樹脂の硬化物の表面に担持された触媒活性を有する微粒子とを含む樹脂担持触媒である。熱硬化性樹脂には、フェノール性水酸基当量が、30g/eq以上500g/eq以下の物を用いる。触媒活性を有する微粒子は、金属、金属酸化物および金属化合物のいずれか一種以上を含めばよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂担持触媒および樹脂担持触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒を担体に担持させて使用すると、反応後の複雑な系から触媒と反応生成物を容易に分離することができる。そのため、担体に担持した触媒(以下、担持触媒という。)は、回収や再使用が容易であり、とくに触媒として高価な貴金属が用いられる場合に有効な手段になるとされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−140643号公報
【特許文献2】特開2010−22980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、触媒と担体との結合力は必ずしも強いものではないため、使用時に担体から触媒が脱離してしまう場合があった。その場合は、担持触媒を繰り返し使用すると触媒活性が徐々に低下してしまう。
【0005】
このような課題を解決する手段として、例えば、特許文献1(特開2000−140643号公報)に記載の方法がある。特許文献1では、熱硬化性樹脂と金属または金属化合物とからなる触媒またはその前駆物質との混合物を非酸化性雰囲気で500℃以上に加熱して熱硬化性樹脂を炭化させることにより該金属または金属化合物を炭化物に担持している。熱硬化性樹脂の硬化物を炭化すると縮小はするもののその形状を保ったまま炭化する。
一方、金属や金属化合物からなる触媒は熱硬化性樹脂が炭化する条件では安定なものが多いことから、触媒などを熱硬化性樹脂に混合させたのち、熱硬化性樹脂を硬化させ炭化すると触媒物質を強固に固定化した炭素材料になるとされている。
【0006】
また、特許文献2(特開2010−22980号公報)には、球状の樹脂粒子の表面に触媒活性を有する微粒子を担持させると共に、この球状の樹脂粒子を覆うように熱硬化性樹脂からなる特定の厚みの被覆層を形成することが記載されている。このように熱硬化性樹脂からなる被覆層を設けることにより、使用時における触媒活性を有する微粒子の脱離が抑制され、使用後における反応生成物などからの分離、回収が容易になるとされている。
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、熱硬化性樹脂と触媒またはその前駆物質との混合物を加熱して熱硬化性樹脂を炭化させることにより、触媒を炭化物に担持させると、触媒が炭化物の内部にまで取り込まれてしまう。一般的に触媒反応は、反応物が到達できる担体表面で進行するため、炭化物の内部、とくに反応物が到達しにくい部位に取り込まれた触媒は、触媒反応に利用されにくい。したがって、特許文献1の方法は、触媒の利用効率の点では改善の余地があった。
【0008】
また、特許文献2のように、触媒を熱硬化性樹脂からなる被覆層で覆うと、被覆層により触媒と反応物との接触が阻害されてしまう。そのため、とくに反応物と接触しにくい部位に固定された触媒は、触媒反応に利用されにくい。したがって、特許文献2の方法も特許文献1と同様に、触媒の利用効率の点では改善の余地があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、触媒の繰り返し特性と利用効率に優れた担持触媒を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、フェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂の硬化物を触媒担持用の担体として用いると、利用時の触媒の脱離が抑制され、かつ、触媒の利用効率に優れた担持触媒が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明によれば、
フェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂の硬化物と、
前記熱硬化性樹脂の硬化物の表面に担持された触媒活性を有する微粒子と
を含む、樹脂担持触媒が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、
フェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂を硬化処理する硬化工程と、
前記熱硬化性樹脂の硬化物の表面に触媒活性を有する微粒子を担持させる担持工程と
を含む、樹脂担持触媒の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、触媒の繰り返し特性と利用効率に優れた担持触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の樹脂担持触媒について説明する。
(樹脂担持触媒)
本実施形態における樹脂担持触媒は、フェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂の硬化物と、その熱硬化性樹脂の硬化物の表面に担持された触媒活性を有する微粒子(以下、触媒微粒子と呼ぶ。)と、を含んでいる。
本実施形態における樹脂担持触媒は、触媒微粒子が熱硬化性樹脂の硬化物の表面に担持されているため、反応物が触媒微粒子に到達しやすい。そのため、触媒の利用効率が優れている。
また、本実施形態における樹脂担持触媒は触媒の繰り返し特性に優れている。その理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。本実施形態における樹脂担持触媒は担体として表面にフェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂の硬化物を用いている。そのため、触媒微粒子が担持される部位にはフェノール性水酸基が存在し、触媒微粒子はそのフェノール性水酸基によって安定化される。したがって、利用時の触媒の脱離が抑制され、触媒の繰り返し特性に優れていると考えられる。
【0015】
本実施形態における熱硬化性樹脂の硬化物は、熱硬化性樹脂のフェノール性水酸基当量が30g/eq以上であり、好ましくは35g/eq以上である。熱硬化性樹脂のフェノール性水酸基当量が上記下限値以上であると、表面に水酸基を有する硬化物が得られ、利用時の触媒の脱離が抑制される。
また、本実施形態における熱硬化性樹脂の硬化物は、熱硬化性樹脂のフェノール性水酸基当量が500g/eq以下であり、好ましくは400g/eq以下であり、さらに好ましくは350g/eq以下である。熱硬化性樹脂のフェノール性水酸基当量が上記上限値を超えると、硬化物表面のフェノール性水酸基が少なくなり、触媒の保持力が弱くなるため好ましくない。なお、フェノール性水酸基当量はアセチル化法などの公知の方法によって定量できる。
【0016】
(熱硬化性樹脂の硬化物)
本実施形態における熱硬化性樹脂の硬化物は、触媒微粒子を担持する担体となるものである。そして、加熱あるいは硬化剤により3次元的網目構造を形成する一般的な熱硬化性樹脂を硬化処理して得られる。硬化処理前の熱硬化性樹脂としては、フェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂であればとくに限定されないが、とくにフェノール樹脂またはその誘導体を含むことが好ましい。
【0017】
本実施形態におけるフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを、アルカリ性、または、酸性触媒の存在下で反応させて得られるものであり、芳香族環に少なくとも1つ以上のフェノール性水酸基を有している。
例えば、フェノール樹脂、クレゾール樹脂、レゾルシン樹脂、キシレノール樹脂、ナフトール樹脂、ビスフェノールA樹脂、アラルキルフェノール樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール樹脂、およびフェノール性水酸基を有するカシューナッツ油などによる変性フェノール樹脂などが挙げられる。また、フェノール性水酸基を有する物質を含む、キシレン変性フェノール樹脂、およびフェノール類とロジン、テルペン油などで変性した油変性フェノール樹脂、ゴムで変性したゴム変性フェノール樹脂などの各種変性フェノール樹脂なども使用することができる。
【0018】
上記フェノール樹脂を得るために用いるフェノール類としては、芳香族環にフェノール性水酸基を有するものが好ましく、さらにはフェノール性水酸基以外の置換基を有していてもかまわない。例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのクレゾール、混合クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノールなどのエチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノールなどのブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノールなどのアルキルフェノール、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノールなどのハロゲン化フェノール、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノールなどの1価フェノール置換体、および1−ナフトール、2−ナフトールなどの1価のナフトール、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリンなどの多価フェノール類、フェノール性水酸基を有する物質より構成されるカシューナッツ油、などが挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。また、これらフェノール性水酸基を有するフェノール類と他のフェノール性水酸基を含有しない物質との共重合体を使用してもかまわない。これにより、分子中に少なくとも1つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂を得ることができる。
【0019】
また、上記フェノール樹脂を得るために用いるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、パラキシレンジメチルエーテルなどが挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することもできる。
【0020】
上記フェノール類とアルデヒド類とを反応させる方法としてはとくに限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0021】
上記フェノール樹脂を得る場合の触媒としてはとくに限定されず、酸触媒、塩基触媒、遷移金属塩触媒などが挙げられる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸類などの無機酸、蓚酸、p−トルエンスルホン酸、有機ホスホン酸などの有機酸を用いることができる。また、塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、アルキルアミンなどのアミン類などを用いることができる。さらに遷移金属塩触媒としては、シュウ酸亜鉛、酢酸亜鉛などが挙げられる。
【0022】
本実施形態におけるフェノール樹脂の形状としてはとくに限定されない。固形、粉末状、溶液状、液状などが挙げられ、いずれの形態でも用いることができる。
【0023】
つぎに、上記の熱硬化性樹脂を硬化処理する方法について説明する。
本実施形態における熱硬化性樹脂の硬化処理方法としてはとくに限定されないが、公知の方法を採用することができる。
熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を用いた場合は、加熱により硬化させることができる。あるいは、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸などの酸類を混合し、常温または加熱により硬化させる方法などが挙げられる。
また、フェノール樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を用いた場合は、ヘキサメチレンテトラミンなどの硬化剤を添加化合物とともに混合し、加熱して硬化させる方法、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂を添加化合物とともに混合し、加熱により硬化させる方法などが挙げられる。
【0024】
本実施形態における熱硬化性樹脂の硬化処理温度としてはとくに限定されないが、250℃以下であることが好ましい。硬化温度が上記上限値以下であると、経済的な硬化速度が得られ、かつ、フェノール樹脂の主鎖の分解を抑制できる。
【0025】
本実施形態における樹脂担持触媒のBET法による比表面積は、好ましくは300m/g以下であり、とくに好ましくは200m/g以下である。比表面積が上記上限値以下であると、熱硬化性樹脂の硬化物の内部まで取り込まれる触媒微粒子の量を抑制できる。そのため、触媒の利用効率をより一層向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態における熱硬化性樹脂の硬化物の形状は、とくに限定されない。固形、粉末状、球状などが挙げられ、いずれの形態でも用いることができる。あるいは、熱硬化性樹脂を有機物や無機物のフィラーと混合して成形後に硬化処理したり、他の基材に含浸した後に硬化処理しても構わない。
【0027】
(触媒微粒子)
本実施形態における熱硬化性樹脂の硬化物の表面に担持される触媒微粒子としては、触媒活性を有するものであれば金属、金属酸化物および金属化合物のいずれであってもよく、とくに限定されるものではない。例えばチタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミニウム、白金、鉄、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム、銀、バナジウム、スズなどの金属ならびにその酸化物、その他の有機チタンなどの金属化合物および錯体などの中から選ばれる少なくとも1種からなるものが挙げられる。また、これらのうちの少なくとも二種類以上を含む複合体も使用することもできる。これらの中でも、とくにパラジウムまたは白金が好適に用いられる。
【0028】
触媒微粒子は平均粒子径が1μm以下であることが好ましい。また、平均粒子径が1nm以上100nm以下といったナノサイズの金属微粒子などを用いることもできる。熱硬化性樹脂の硬化物と触媒微粒子の質量比は適宜決定することができるが、例えば熱硬化性樹脂の硬化物:触媒微粒子=1:1〜10000:1程度である。
【0029】
(触媒微粒子の担持方法)
つづいて、本実施形態における熱硬化性樹脂の硬化物への上記触媒微粒子の担持方法について詳細に説明する。本実施形態においては、熱硬化性樹脂の硬化物を作製後、その硬化物の表面に触媒微粒子を担持させることが好ましい。こうすることで、触媒微粒子が硬化物の内部に取り込まれるのを抑制することができる。
【0030】
熱硬化性樹脂の硬化物への触媒微粒子の担持は、本実施形態としてはとくに限定されないが、公知の方法を採用することができる。例えば熱硬化性樹脂の硬化物と、触媒となる金属化合物のコロイド溶液を混合し、金属化合物を還元させた後、固液分離し乾燥する方法がある。
【0031】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
(フェノール樹脂の硬化物の作製)
撹拌装置、還流冷却器および温度計を備えた5Lの円筒型セパラブルフラスコ中にフェノール1300部、43%ホルムアルデヒド水溶液1600部、水800部およびトリエチルアミン30部および懸濁剤としてポリビニルアルコール(クラレポバールPVA117、けん化度98%、重合度1700)30部を入れ100℃で3時間加熱し球状フェノール樹脂硬化物を合成した。なお、反応1時間経過時に反応物を採取し、凍結乾燥しアセチル化法でのフェノール性水酸基当量を測定したところ、フェノール性水酸基当量は115g/eqだった。合成した球状フェノール樹脂硬化物を固液分離し、150℃で乾燥し平均粒径100μmの球状フェノール樹脂硬化物を得た。
【0034】
(樹脂担持触媒の調製)
酢酸パラジウム(和光純薬工業社製)5mgと、担体である上記の球状フェノール樹脂硬化物500mgと、トリエチルアミン(和光純薬工業社製)0.15mLと、アセトニトリル(和光純薬工業社製)5mLを配合し、封管中、100℃で12時間加熱した。つづいて、分散液をろ過した後、ろ過物を洗浄し、乾燥することで、パラジウム粒子が表面に担持された樹脂担持触媒を得た。樹脂担持触媒中におけるパラジウム触媒の担持量は1wt%であった。また、この樹脂担持触媒の比表面積は、10m/g以下であった。なお、パラジウム触媒の担持量は、市販の原子吸光分光光度計を用いて測定し、比表面積は窒素ガス、BET3点法で測定した。
【0035】
(実施例2)
市販のレゾール型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、スミライトレジン(r)PR−50087、フェノール性水酸基当量130g/eq)50部にメチルエチルケトン50部を混合し、濾紙(ADVANTEC(r)No.590)に含浸して180℃で1時間乾燥しフェノール樹脂硬化物(フェノール樹脂分50wt%)を得た。さらに、実施例1と同様の方法で樹脂担持触媒を得た。この樹脂担持触媒のパラジウム触媒の担持量は1wt%、比表面積は、20m/gであった。
【0036】
(実施例3)
フェノール樹脂を市販のノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、スミライトレジン(r)PR−310、フェノール性水酸基当量105g/eq)30部をメチルエチルケトン70部に溶解した以外は、実施例2と同様の方法で樹脂担持触媒(担体中のフェノール樹脂分50wt%)を得た。この樹脂担持触媒のパラジウム触媒の担持量は1wt%、比表面積は、25m/gであった。
【0037】
(比較例1)
実施例1で得られた球状フェノール樹脂硬化物を市販の炭化賦活炉で、窒素気流下および空気気流下で900℃で炭化賦活した。さらに、実施例1と同様の方法で樹脂活性炭担持触媒を得た。この樹脂活性炭担持触媒のパラジウム触媒の担持量は1wt%、比表面積は、950m/gであった。
【0038】
(比較例2)
フェノール性水酸基を含有しない熱硬化性樹脂の硬化物を担体とした、市販のパラジウム‐尿素樹脂(和光純薬工業社製、Pdエンキャット30)を比較例2とした。このパラジウム‐尿素樹脂のパラジウム触媒の担持量は4.2wt%、比表面積は10m/g以下であった。
【0039】
(比較例3)
市販のパラジウム‐活性炭(和光純薬工業社製、パラジウム‐活性炭素)を比較例3とした。このパラジウム‐活性炭素のパラジウム触媒の担持量は5wt%、比表面積は650m/gであった。
【0040】
(評価試験)
担持触媒の触媒活性は、ヨードベンゼンと、アクリル酸メチルとのヘック反応で得られるトランス−桂皮酸メチルの反応収率により評価した。
ヨードベンゼン23μL(0.20mmol)、アクリル酸メチル23μL(0.25mmol)、トリエチルアミン35μL(0.25mmol)をアセトニトリル(2mL)に溶解した。得られた溶液に担持触媒を50mg加えた。混合物をオイルバスを用いて加熱し、120℃で12時間攪拌した。反応終了後、担持触媒をろ別した。
ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、トランス−桂皮酸メチルを得た。
なお、必要に応じて、トランス−桂皮酸メチルを取り出すことなく、反応液を一定量取り出し、液体クロマトグラフィーを用いて分析した。以下、とくに断らない限り、反応前後のクロマトグラムの面積比から反応収率を算出した。ここで、反応収率は、(C−C)/C×100(%)で定義され、Cは反応前のヨードベンゼンのモル数、Cは反応後のヨードベンゼンのモル数である。
【0041】
(繰り返し試験)
反応終了後、反応液から担持触媒を一旦取り出し、洗浄した。その後、再度担持触媒として上記のヘック反応をおこなった。これらのヘック反応の一連の操作を4回繰り返した。
【0042】
ヘック反応の反応収率の結果を表1に示す。従来の担持触媒に比べ、本実施形態における樹脂担持触媒は、高い反応収率を有していた。すなわち、担持した触媒の利用効率が優れていた。また、繰り返し使用してもその高い反応収率を維持していた。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂の硬化物と、
前記熱硬化性樹脂の硬化物の表面に担持された触媒活性を有する微粒子と
を含む、樹脂担持触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂担持触媒において、
前記熱硬化性樹脂のフェノール性水酸基当量が30g/eq以上500g/eq以下である、樹脂担持触媒。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂担持触媒において、
前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂を含む、樹脂担持触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の樹脂担持触媒において、
BET法による比表面積が、300m/g以下である、樹脂担持触媒。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の樹脂担持触媒において、
前記熱硬化性樹脂の硬化物は、前記熱硬化性樹脂を250℃以下で硬化することにより得られる、樹脂担持触媒。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の樹脂担持触媒において、
前記熱硬化性樹脂の硬化後に、前記触媒活性を有する微粒子を前記硬化物の表面に担持させた、樹脂担持触媒。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の樹脂担持触媒において、
前記触媒活性を有する微粒子が、金属、金属酸化物および金属化合物のいずれか1種以上を含む、樹脂担持触媒。
【請求項8】
フェノール性水酸基を有する熱硬化性樹脂を硬化処理する硬化工程と、
前記熱硬化性樹脂の硬化物の表面に触媒活性を有する微粒子を担持させる担持工程と
を含む、樹脂担持触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂担持触媒の製造方法において、
前記熱硬化性樹脂の水酸基当量が30g/eq以上500g/eq以下である、樹脂担持触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の樹脂担持触媒の製造方法において、
前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂を含む、樹脂担持触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項8乃至10いずれか一項に記載の樹脂担持触媒の製造方法において、
前記硬化工程は前記熱硬化性樹脂を250℃以下で硬化する工程を含む、樹脂担持触媒の製造方法。

【公開番号】特開2013−52373(P2013−52373A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193647(P2011−193647)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)
【Fターム(参考)】