説明

樹脂材料

【課題】傷の修復性に優れた樹脂材料を提供する。
【解決手段】OH基を含む側鎖を有し、前記OH基を含む側鎖全体に対して炭素数6以上の前記OH基を含む側鎖が75モル%より多いアクリル樹脂と、イソシアネートと、を含有する組成物の重合体を含む樹脂材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な分野において、表面での傷付きを抑制する観点から保護膜として表面に樹脂材料を設けることが行われている。保護用の樹脂材料の用途としては、例えば、携帯電話やポータブルゲーム機等の画面を有するポータブル機器、窓ガラス、眼鏡のレンズ、車の窓ガラスやボディ、CD,DVD,BD等の光ディスクの記録面、太陽光電池パネルや太陽光を反射させるパネル、画像形成装置における定着部材、中間転写部材、記録媒体搬送部材等に用いられる画像形成装置用の無端ベルトやロールなどを保護するための保護膜が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、ローラ状基材の外面に、ゴム層を介して、フッ素樹脂層を形成してなる定着ローラにおいて、フッ素樹脂層が、平均粒子径1μm以上15μm以下のテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)20重量%以上97重量%以下と、平均粒子径1μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)3重量%以上80重量%以下を含有するフッ素樹脂混合物により形成されていることを特徴とする定着ローラが開示されている。
【0004】
特許文献2には、アクリル樹脂とポリイソシアナートプレポリマーを必須とし、ポリラクトンポリオールを、定められた範囲内で含むことがあり、前記アクリル樹脂は、短側鎖ヒドロキシル基と長側鎖ヒドロキシル基を定められた比率で有していて、合計ヒドロキシル価が100乃至200である樹脂である塗料組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする硬化性粘着性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−142990号公報
【特許文献2】特開2007−31690号公報
【特許文献3】特開平2−279710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、傷の修復性に優れた樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、
OH基を含む側鎖を有し、前記OH基を含む側鎖全体に対して炭素数6以上の前記OH基を含む側鎖が75モル%より多いアクリル樹脂と、
イソシアネートと、
を含有する組成物の重合体を含む樹脂材料である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記重合体は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の樹脂材料である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、重合に用いられるアクリル樹脂における炭素数6以上の前記ヒドロキシル基を含む側鎖の割合が上記範囲から外れる場合に比べ、傷の修復性に優れた樹脂材料が提供される。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、重合体がフッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方を有する場合において、重合に用いられるアクリル樹脂における炭素数6以上の前記ヒドロキシル基を含む側鎖の割合が上記範囲から外れる場合に比べ、傷の修復性に優れた樹脂材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る無端ベルトの概略構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る無端ベルトの断面図である。
【図3】本実施形態に係る無端ベルトを用いた画像形成装置を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態に係る無端ベルトを用いた画像定着装置を示す概略構成図である。
【図5】本実施形態に係る無端ベルトを用いた他の画像定着装置を示す概略構成図である。
【図6】本実施形態に係る無端ベルトを用紙搬送ベルトとして用いた画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[樹脂材料]
本実施形態に係る樹脂材料は、OH基を含む側鎖を有し、前記OH基を含む側鎖全体に対し、炭素数6以上の前記OH基を含む側鎖が75モル%より多いアクリル樹脂と、イソシアネートと、を含有する組成物の重合体を含むものである。ここで、OH基を含む側鎖としては、具体的には、例えば、アルコール性OH基を含む側鎖、フェノール性OH基を含む側鎖、カルボキシル基を含む側鎖(すなわちカルボキシル基中にOH基を含む側鎖)等が挙げられる。
以下、「OH基を含む側鎖」を「側鎖ヒドロキシル基」と称する場合がある。また「炭素数6以上の側鎖ヒドロキシル基」を「長側鎖ヒドロキシル基」と称する場合がある。また、アクリル樹脂における側鎖ヒドロキシル基全体に対する炭素数6以上の前記側鎖ヒドロキシル基の割合を、「長側鎖ヒドロキシル基の割合」と称する場合がある。
本実施形態の樹脂材料は、上記構成であることにより、長側鎖ヒドロキシル基の割合が上記範囲から外れる場合に比べ、傷の修復性に優れている。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0014】
本実施形態の樹脂材料に含まれる重合体は、アクリル樹脂の側鎖ヒドロキシル基とイソシアネートとが結合して架橋構造が形成されたものであり、その架橋構造によって傷の修復性が発現していると考えられる。具体的には、例えば樹脂材料の表面に部分的な強い衝撃が生じたときに、その衝撃に直に反発するのではなく、いったん柔軟に凹んで衝撃を弱めた後に復元すること(いわゆる自己修復)で元の状態に戻り、傷の修復性(一旦ついた傷を復元する性質)が実現されると考えられる。
【0015】
そして本実施形態では、特に長側鎖ヒドロキシル基の割合が上記範囲であるアクリル樹脂を用いる。そのため、アクリル樹脂における側鎖の長さにおけるばらつきが小さく、アクリル樹脂とイソシアネートとの相溶性が良好であることにより、重合時においても組成物中に含まれるそれぞれの成分が偏在しにくく、満遍なく存在した状態で重合すると考えられる。
例えば重合時に上記偏在が起こった重合体においては、部分的に弾力性が弱い箇所が発生することが考えられ、結果として樹脂材料における傷の修復性が得られにくくなると考えられる。これに対して本実施形態では、満遍なく重合が行われ、全体にわたって自己修復力を有すると考えられるため、上記偏在が起こりやすい形態に比べて樹脂材料における傷の修復性が高くなると推測される。
【0016】
また本実施形態では、前記の通り組成物におけるアクリル樹脂とイソシアネートとの相溶性が良好であるため、特に樹脂材料が膜状である場合、透明性が高く、表面荒れが抑制されると考えられる。
【0017】
本実施形態では、重合体がフッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方を有するものであってもよい。アクリル樹脂のOH基とイソシアネートとが結合して生じるウレタン結合は親水性であり、フッ素原子及びケイ素原子は疎水性である。そのため、フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方の存在により、アクリル樹脂とイソシアネートとの相溶性が低下することが考えられる。しかし本実施形態では、上記の通り長側鎖ヒドロキシル基の割合が上記範囲である。そのため、重合体がフッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方を有する場合であっても、長側鎖ヒドロキシル基の割合が上記範囲から外れる場合に比べて、アクリル樹脂とイソシアネートとの相溶性が良好であり、傷の修復性が良好になると考えられる。
【0018】
フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方を有する重合体は、組成物に含まれる前記アクリル樹脂、前記イソシアネート、及びその他の成分(すなわち前記アクリル樹脂及び前記イソシアネート以外の成分)の少なくともいずれかに、フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方が含まれていればよい。その中でも、前記アクリル樹脂がフッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方を有する形態が好ましい。具体的には、例えば、前記アクリル樹脂が、フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方を含む側鎖を有する形態が挙げられる。
また重合体は、フッ素原子及びケイ素原子のいずれか一方のみを有していてもよく、フッ素原子及びケイ素原子の両方を有していてもよい。
【0019】
<戻り率>
上記傷の修復性は、例えば戻り率で表される。すなわち戻り率は、樹脂材料の自己修復性(応力によってできた歪を応力の除荷時に復元する性質、即ち傷の修復の度合い)を示す指標である。
戻り率の測定は、例えば、測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用いて行われる。具体的には、例えば、アクリル樹脂及びイソシアネートを含む組成物を、ポリイミドフィルムに塗布して重合させることでサンプル樹脂層を得る。そして、得られたサンプル樹脂層をスライドガラスに接着剤で固定し、上記測定装置にセットする。サンプル樹脂層に室温(23℃)で0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持する。その際の最大変位を(h1)とする。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率〔(h1−h2)/h1〕を計算する。
【0020】
ついで、本実施形態に係る樹脂材料の組成について説明する。
【0021】
<アクリル樹脂>
本実施形態におけるアクリル樹脂は、長側鎖ヒドロキシル基が、側鎖ヒドロキシル基全体の75モル%より多いものである。
前記アクリル樹脂は、少なくともヒドロキシル基を有するモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーの少なくとも1種が用いて重合させたものであり、重合に用いるモノマーとして、その他にヒドロキシル基を有さないモノマーをさらに用いてもよい。
アクリル樹脂における長側鎖ヒドロキシル基の割合を前記範囲内とする方法としては、例えば、アクリル樹脂の重合に用いるモノマーの比率を調整する方法が挙げられる。具体的には、例えば、アクリル樹脂の重合に用いるヒドロキシル基を有するモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーの総量に対し、後述する長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーの割合を前記範囲内とする方法が挙げられる。
【0022】
ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、N−メチロールアクリルアミン等のヒドロキシ基を有するエチレン性モノマー等が挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有するモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーの少なくとも1種は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0023】
また、長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーとしては、例えば、上記ヒドロキシル基を有するモノマー又は上記カルボキシル基を有するモノマーにε−カプロラクトンを付加させたもの、又は炭素数6以上のジオール化合物を付加させたもの等が挙げられる。
具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル1モルに対しε−カプロラクトンを1モル以上10モル以下の範囲で付加させたもの、又はヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、若しくはデカンジオールを付加させたもの等が挙げられる。
長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーは、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよいが、1種のみ用いた方が側鎖の長さが揃ったアクリル樹脂が得られやすい。
【0024】
ヒドロキシル基を有さないモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、前記ヒドロキシル基を有するモノマーと共重合するエチレン性モノマーであれば特に限定されず、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0025】
フッ素原子を含む側鎖を有するアクリル樹脂は、例えば、フッ素原子を含むモノマーを用いることで得られる。フッ素原子を含むモノマーは特に限定されないが、例えば、フッ素原子を含む側鎖における炭素数が2以上20以下となるモノマーが挙げられる。またフッ素原子を含むモノマー1分子中に含まれるフッ素原子の数も特に限定されず、例えば、1以上25以下が挙げられ、9以上17以下であってもよい。
フッ素原子を含むモノマーの具体例としては、例えば、ヘキサフルオロ−2−プロピルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、ヘキサフルオロ−2−プロピルメタクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、パーフルオロヘキシルエチレン等が挙げられ、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0026】
ケイ素原子を含む側鎖を有するアクリル樹脂は、例えば、ケイ素原子を含むモノマーを用いることで得られる。
ケイ素原子を含むモノマーは特に限定されないが、例えば、シロキサン結合を含むモノマーが挙げられ、具体的には、例えば、一般式(A)で示されるシリコーンが挙げられる。
【0027】
【化1】



【0028】
一般式(A)中、Rは炭素数1乃至10のアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数1乃至10のアルキルアミノ基、炭素数1乃至10のアミノアルキル基、炭素数1乃至10のヒドロキシアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、アルキル基の炭素数が1乃至10のメトキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1乃至10のエトキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1乃至10のメタクリル酸アルキル基、又はアルキル基の炭素数が1乃至10のアクリル酸アルキル基を表し、Rはメチル基、フェニル基、又はエチル基を表し、Rはアルキル基の炭素数が1乃至10のメタクリル酸アルキル基又はアルキル基の炭素数が1乃至10のアクリル酸アルキル基を表す。尚、上記一般式(A)における−[Si(R−O]−におけるカッコ内の基の数(n)は、特に限定されるものではないが、例えば3以上1000以下が挙げられる。
【0029】
シロキサン結合を含むモノマーの数平均分子量としては、例えば250以上50000以下が挙げられ、500以上20000以下であってもよい。
シロキサン結合を含むモノマーの具体例としては、例えば、サイラプレーンFM−0701、FM−0711、FM−0721、FM−0725(以上JNP株式会社)等が挙げられる。
【0030】
フッ素原子及びケイ素原子の両方を含むアクリル樹脂は、例えば、前記フッ素原子を含むモノマー及び前記ケイ素原子を含むモノマーの両方を用いることで得られる。フッ素原子及びケイ素原子の両方を含むアクリル樹脂としては、例えば、前記フッ素原子を含むモノマー及び前記シロキサン結合を含むモノマーを用いて得られたアクリル樹脂が挙げられる。
【0031】
本実施形態におけるアクリル樹脂は、例えば前述のモノマーを混合し、ラジカル重合又はイオン重合等を行った後、精製することによって合成される。
本実施形態で用いるアクリル樹脂は、1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
【0032】
アクリル樹脂における長側鎖ヒドロキシル基の割合は、前記の通り75モル%より多いものであり、85モル%以上が望ましく、100モル%であってもよい。
長側鎖ヒドロキシル基の炭素数は、前記の通り6以上であるが、例えば6以上60以下が挙げられ、10以上30以下であってもよい。
アクリル樹脂が、互いに炭素数の異なる2種以上の長側鎖ヒドロキシル基を有する場合、最も炭素数の多い長側鎖ヒドロキシル基の炭素数と最も炭素数の少ない長側鎖ヒドロキシル基の炭素数の差としては、例えば10以下が挙げられ、6以下であってもよい。
アクリル樹脂における側鎖全体に対する側鎖ヒドロキシル基の割合は、例えば10モル%以上80モル%以下が挙げられる。
【0033】
アクリル樹脂がフッ素原子を含む側鎖を有する場合、側鎖全体に対するフッ素原子を含む側鎖の割合は、例えば1モル%以上70モル%以下が挙げられ、5モル%以上50モル%以下であってもよい。
アクリル樹脂がケイ素原子を含む側鎖を有する場合、アクリル樹脂の合成に用いるモノマー全体に対するケイ素原子を含むモノマーの割合は、例えば5質量%以上50質量%以下が挙げられ、10質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0034】
尚、上記アクリル樹脂としては、水酸基価が30mgKOH/g以上250mgKOH/g以下のものを用いることが好ましい。
水酸基価が上記下限値以上であることにより、架橋密度が高いウレタン樹脂が重合され、一方、上記上限値以下であることにより、適度な柔軟性をもつウレタン樹脂が得られるものと推察される。
上記水酸基価は、さらに50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0035】
尚、上記水酸基価とは、試料1g中の水酸基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数を表す。本実施形態における上記水酸基価の測定は、JIS K0070−1992に定められた方法(電位差滴定法)に準じて測定される。但しサンプルが溶解しない場合は溶媒にジオキサン、THF等の溶媒が用いられる。
【0036】
<イソシアネート>
前記イソシアネートは、前記アクリル樹脂同士、又は後述する長鎖ポリオールを用いる場合は、前記アクリル樹脂と前記長鎖ポリオール若しくは長鎖ポリオール同士を架橋する架橋剤として機能する。
前記イソシアネートは、特に制限されるものではないが、例えば、メチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート、これらのジイソシアネートモノマーをイソシアヌレート変性、アダクト変性、またはビウレット変性させたイソシアネート化合物等の多官能イソシアネートが具体例として挙げられる。イソシアネートは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
尚、上記イソシアネートの含有量としては、イソシアネート基のモル数として、前記アクリル樹脂のヒドロキシル基のモル数(前記長鎖ポリオールを用いる場合は、前記アクリル樹脂と前記ポリオールとにおけるヒドロキシル基の合計モル数)に対して0.5倍量以上3倍量以下が挙げられる。
【0037】
<長鎖ポリオール>
本実施形態では、必要に応じて組成物中に長鎖ポリオールを含んでもよい。長鎖ポリオールは、複数のヒドロキシル基を有し、且つその全てのヒドロキシル基同士が炭素数(ヒドロキシル基同士を結ぶ直鎖の部分における炭素数)6以上の鎖によって連結されるポリオールである。
長鎖ポリオールとしては、特に制限はないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物等の2官能ポリカプロラクトンジオール類、下記一般式(2)で表される化合物等の3官能ポリカプロラクトントリオール類、その他4官能ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。長鎖ポリオールは1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
【0038】
【化2】



【0039】
(式(1)中、Rは、C、COC、C(CH(CHのいずれかであり、mおよびnは4以上35以下の整数である。)
【0040】
【化3】



【0041】
(式(2)中、Rは、CHCHCH、CHC(CH、CHCHC(CHのいずれかであり、l+m+nは3以上30以下の整数である。)
【0042】
上記長鎖ポリオールは、フッ素原子を含んでもよい。フッ素原子を含む長鎖ポリオールとしては、例えば、1H,1H,9H,9H−Perfluoro−1,9−nonanediol,Fluorinated tetraethylene glycol,1H,1H,8H,8H−Perfluoro−1,8−octanediol等が挙げられる。
【0043】
前記長鎖ポリオールは、官能基数(すなわち、長鎖ポリオール1分子中に含まれるヒドロキシル基の数)としては、例えば2以上5以下の範囲が挙げられ、2以上3以下であってもよい。
【0044】
長鎖ポリオールの添加量としては、例えば、重合に用いられる全ての前記アクリル樹脂に含有されるヒドロキシル基の総モル量(A)と、重合に用いられる全ての前記長鎖ポリオールに含有されるヒドロキシル基の総モル量(B)との比率(B)/(A)が、0.1以上10以下の範囲が挙げられ、1以上4以下であってもよい。
【0045】
尚、上記長鎖ポリオールとしては、水酸基価が30mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のものを用いることが好ましい。水酸基価が上記下限値以上であることにより、架橋密度が高いウレタン樹脂が重合され、一方、上記上限値以下であることにより、適度な柔軟性をもつウレタン樹脂が得られるものと推察される。
上記水酸基価は、さらに50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0046】
尚、上記水酸基価とは、試料1g中の水酸基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数を表す。本実施形態における上記水酸基価の測定は、JIS K0070−1992に定められた方法(電位差滴定法)に準じて測定される。但しサンプルが溶解しない場合は溶媒にジオキサン、THF等の溶媒が用いられる。
【0047】
<ケイ素原子を含む化合物>
本実施形態では、必要に応じて組成物中に、ケイ素原子を含む化合物を含有してもよい。
前記ケイ素原子を含む化合物としては、例えば前記イソシアネートと反応する置換基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基、及びエトキシ基から選択される少なくとも1種を有する化合物が挙げられる。
【0048】
また前記ケイ素原子を含む化合物としては、ケイ素原子を含んでいれば特に限定されないが、例えばシロキサン結合を含む化合物が挙げられ、具体的には一般式(B)で示されるシリコーンが挙げられる。
【0049】
【化4】



【0050】
一般式(B)中、R及びRは、各々独立に、炭素数1乃至10のアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数1乃至10のアルキルアミノ基、炭素数1乃至10のアミノアルキル基、炭素数1乃至10のヒドロキシアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、アルキル基の炭素数が1乃至10のメトキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1乃至10のエトキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1乃至10のメタクリル酸アルキル基、又はアルキル基の炭素数が1乃至10のアクリル酸アルキル基を表し、Rは前記一般式(A)中のRと同義である。また、上記一般式(B)における−[Si(R−O]−におけるカッコ内の基の数(n)は、特に限定されるものではないが、例えば3以上1000以下が挙げられる。
なお、R及びRは同一でも異なっていてもよいが、R及びRの少なくとも一方が、アミノ基、ヒドロキシル基、メトキシ基、及びエトキシ基から選択される少なくとも1種を有することが望ましい。
【0051】
シロキサン結合を含む化合物の重量平均分子量としては、例えば250以上50000以下が挙げられ、500以上20000以下であってもよい。
シロキサン結合を含む化合物の具体例としては、例えば、KF9701、KF8008、KF8010、KF6001(以上信越シリコーン社製)、TSR160、TSR145、TSR165、YF3804(以上モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0052】
シロキサン結合を含む化合物の添加量としては、例えば、組成物全体の1質量%以上60質量%以下が挙げられ、2質量%以上40質量%以下であってもよく、5質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0053】
<重合方法>
ついで、本実施形態に係る樹脂材料の形成方法(組成物の重合方法)について説明する。
まず樹脂材料の形成方法の一例として、ポリイミドのフィルムに樹脂材料が形成された樹脂層サンプルの形成方法について説明する。具体的には、例えば、前記アクリル樹脂と前記イソシアネートと必要に応じて前記長鎖ポリオールとを混合し、組成物を調整する。次に、前記組成物を減圧下で脱泡したのち、前記組成物を、例えば90μmのポリイミドのフィルム上に塗布(キャスト)する。その後、組成物が塗布されたポリイミドのフィルムを85℃で60分、160℃で1時間加温して硬化させ、組成物の重合体を含む樹脂材料を得る。
なお、実用において組成物を塗布する基材は、上記ポリイミドのフィルムに限定されず、表面を保護したい部材を用いればよい。
【0054】
以上のようにして得られた樹脂材料に含まれる重合体が、長側鎖ヒドロキシル基の割合が前記範囲内であるアクリル樹脂とイソシアネートとを含有する組成物の重合体であるかどうかを確認する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。具体的には、例えば、得られた樹脂材料を、熱分解GC−MS(熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析)で分析する方法が挙げられる。すなわち、得られた樹脂材料を熱分解させることで、前記アクリル樹脂のモノマー単位まで分解される。そして、分解によって得られた分解生成物の質量分析によって、アクリル樹脂の合成に用いられたモノマーの構造及び比率がわかり、長側鎖ヒドロキシル基の割合が求められる。
【0055】
[用途]
上記のようにして得られる、本実施形態に係る樹脂材料は、異物との接触により表面に擦り傷が発生し得る物に対してであれば、特に限定されることなく用い得る。表面に異物が接触し該異物との接触により擦り傷が発生し得る物の例としては、例えば、携帯電話やポータブルゲーム機等のポータブル機器の画面、窓ガラス、眼鏡のレンズ、車の窓ガラスやボディ、CD,DVD,BD等の光ディスクの記録面、太陽光電池パネルや太陽光を反射させるパネル、画像形成装置における定着部材、中間転写部材、記録媒体搬送部材等に用いられる画像形成装置用の無端ベルトやロール、床、鏡、ミラー等が挙げられる。
特に、定着装置における定着ベルト、定着ロール、中間転写装置における中間転写ベルト、中間転写ロール、その他記録媒体搬送ベルトや記録媒体搬送ロール、又躯体表面等に好適に用いられる。
【0056】
携帯電話やポータブルゲーム機等のポータブル機器の画面においては、指の先(爪)や操作用のスティックの先端が接触して擦れることにより擦り傷がつくことがあった。
また、窓ガラス、車の窓ガラスやボディ等は、野外環境に曝されるため風によって運ばれる砂、葉、木の枝等との接触や、虫等との接触など、様々な要因により擦り傷がつくことがあった。
また、眼鏡のレンズ等には、表面に細かい粒子(汚れ)が付着していることがあり、その上から乾拭きを行うことで擦り傷がつくことがあった。
また、CD,DVD,BD等の光ディスクの記録面等には、ケースからの出し入れの際に該ケースの角に接触したり、再生装置,記録装置等からの出し入れの際に該装置の角に接触したり、また指の先(爪)が接触することがあり、これらとの擦れにより擦り傷がつくことがあった。
また、太陽光電池パネルや太陽光を反射させるパネルは、野外環境に曝されるため風によって運ばれる砂、葉、木の枝等との接触や、虫等との接触など、様々な要因により擦り傷がつくことがあった。
また、画像形成装置における定着部材、中間転写部材、記録媒体搬送部材等に用いられる画像形成装置用の無端ベルトやロールは、画像形成装置内において紙等の記録媒体と接触したり、その他部材と接触するため、これらとの擦れにより擦り傷がつくことがあった。
また、上記の態様に限らず、表面に異物が接触する物であれば、該異物との擦れによって、表面に擦り傷がつくことがあった。
【0057】
これらの異物と接触する物の表面に、本実施形態に係る樹脂材料を保護膜として設けることにより、異物との接触により生じた傷を効率的に修復される。
【0058】
ついで、本実施形態に係る樹脂材料を備える画像形成装置用部材について説明する。
【0059】
[無端ベルト]
本実施形態に係る画像形成装置用無端ベルトは、ベルト状の基材と、前記ベルト状の基材上に設けられた、前述の本実施形態に係る樹脂材料と、を有する。
【0060】
上記本実施形態に係る画像形成装置用無端ベルトによれば、樹脂材料の重合に用いられるアクリル樹脂における炭素数6以上の前記ヒドロキシル基を含む側鎖の割合が上記範囲から外れる場合に比べ、傷の修復性に優れた画像形成装置用無端ベルトが提供される。
【0061】
図1は、本実施形態に係る無端ベルトを示す斜視図(一部、断面で表わしている)であり、図2は、図1において矢印Aの方向から見た、無端ベルトの端面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の無端ベルト1は、基材2と、基材2の表面に積層された表面層3と、を有する無端状のベルトである。
尚、上記表面層3としては、前述の本実施形態に係る樹脂材料が適用される。
【0062】
無端ベルト1の用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ベルト、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト等が挙げられる。
【0063】
以下、無端ベルト1を定着ベルトとして用いる場合について説明する。
基材2に用いられる材質としては、耐熱性の材料が好ましく、具体的には、公知の各種プラスチック材料および金属材料のものの中から選択して使用される。
【0064】
プラスチック材料のなかでは一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものが適しており、例えばフッソ樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)などが好ましい。また、この中でも機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れる熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂などが好ましい。
【0065】
また、基材2に用いられる金属材料としては、特に制限は無く、各種金属や合金材料が使用され、例えばSUS、ニッケル、銅、アルミ、鉄などが好適に使用される。また、前記耐熱性樹脂や前記金属材料を複数積層してもよい。
【0066】
以下、無端ベルト1を中間転写ベルトまたは記録媒体搬送ベルトとして用いる場合について説明する。
【0067】
基材2に用いる素材としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらの中でもポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂を用いることがより好ましい。なお、基材は環状(無端状)であればつなぎ目があってもなくてもよく、また基材2の厚さは、通常0.02から0.2mmが好ましい。
【0068】
無端ベルト1を画像形成装置の中間転写ベルトや記録媒体搬送ベルトとして用いる場合、1×10Ω/□から1×1014Ω/□の範囲に表面抵抗率を、1×10から1×1013Ωcmの範囲に体積抵抗率を制御することが好ましい。そのため前記のように必要に応じて、基材2や表面層3に、導電剤として、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属または合金、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化スズ−酸化インジウムまたは酸化スズ−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性ポリマーなどを添加することが好ましい(ここで、前記ポリマーにおける「導電性」とは体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する)。これら導電剤は、単独または2種以上が併用して使用される。
【0069】
ここで、上記表面抵抗率および体積抵抗率は、(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブを用いて、22℃、55%RHの環境下で、JIS−K6911に従い測定される。
【0070】
定着用途の場合において、無端ベルト1は、基材2と表面層3との間に弾性層を含んでもよい。弾性層の材料としては、例えば、各種ゴム材料が用いられる。各種ゴム材料としては、例えば、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられ、特に耐熱性、加工性に優れたシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0071】
電磁誘導方式の定着装置における定着ベルトとして無端ベルト1を用いる場合は、基材2と表面層3との間に、発熱層を設けてもよい。
発熱層に用いられる材料としては、例えば非磁性金属が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリュウム、アンチモン、およびこれらの合金(これらを含む合金)等の金属材料が挙げられる。
発熱層の膜厚としては、5から20μmの範囲とすることが好ましく、7から15μmの範囲とすることがより好ましく、8から12μmの範囲とすることが特に好ましい。
【0072】
[ロール]
本実施形態に係る画像形成装置用ロールは、円筒状の基材と、前記円筒状の基材上に設けられた、前述の本実施形態に係る樹脂材料と、を有する。
【0073】
上記本実施形態に係る画像形成装置用ロールによれば、樹脂材料の重合に用いられるアクリル樹脂における炭素数6以上の前記ヒドロキシル基を含む側鎖の割合が上記範囲から外れる場合に比べ、傷の修復性に優れた画像形成装置用ロールが提供される。
【0074】
ついで、本実施形態に係るロールについて説明する。本実施形態のロールは、基材と、基材の表面に積層された表面層と、を有する円筒状のロールである。
尚、上記表面層としては、前述の本実施形態に係る樹脂材料が適用される。
【0075】
上記円筒状のロールの用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ロール、中間転写ロール、記録媒体搬送ロール等が挙げられる。
【0076】
以下、円筒状ロールを定着ロールとして用いる場合について説明する。
図4に示す定着部材としての定着ロール610としては、その形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、円筒状のコア611上に表面層613を備えてなる。また、図4に示す通り、コア611と表面層613との間に弾性層612を有していてもよい。
【0077】
円筒状のコア611の材質としては、例えば、アルミニウム(例えば、A−5052材)、SUS、鉄、銅等の金属、合金、セラミックス、FRMなどが挙げられる。本実施形態の定着装置72では外径φ25mm、肉厚0.5mm、長さ360mmの円筒体で構成されている。
【0078】
弾性層612の材質としては、公知の材質の中から選択されるが、耐熱性の高い弾性体であればどの材料を用いてもよい。特に、ゴム硬度が15から45°(JIS−A)程度のゴム、エラストマー等の弾性体を用いるのが好ましく、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0079】
本実施形態においては、これらの材質の中でも、表面張力が小さく、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0080】
なお、弾性層612の厚みとしては、3mm以下であることが好ましく、0.5から1.5mmの範囲であることがより好ましい。第1実施形態の定着装置72では、ゴム硬度が35°(JIS−A)のHTVシリコーンゴムを72μmの厚さでコアに被覆している。
【0081】
表面層613の厚みとしては、例えば5μm以上50μm以下が挙げられ、10μm以上30μm以下であってもよいる。
【0082】
定着ロール610を加熱する加熱源としては、上述のように、例えばハロゲンランプ660が用いられ、上記コア611の内部に収容する形状、構造のものであれば特に制限はなく、目的に応じて選択される。ハロゲンランプ660により加熱された定着ロール610の表面温度は、定着ロール610に設けられた感温素子690により計測され、制御手段によりその温度が一定に制御される。感温素子690としては、特に制限はなく、例えば、サーミスタ、温度センサなどが挙げられる。
【0083】
[画像形成装置、画像定着装置]
本実施形態に係る画像定着装置は、第1の回転体と、前記第1の回転体に接触して記録媒体を挟み込む挟込領域を形成する第2の回転体と、を有し、前記第1の回転体及び前記第2の回転体の少なくとも一方が、前述の本実施形態に係る画像形成装置用無端ベルト又は本実施形態に係る画像形成装置用ロールである。
上記本実施形態に係る画像定着装置によれば、樹脂材料の重合に用いられるアクリル樹脂における炭素数6以上の前記ヒドロキシル基を含む側鎖の割合が上記範囲から外れる場合に比べ、画質に優れた画像が定着される画像定着装置が提供される。
【0084】
本実施形態に係る画像形成装置は、静電潜像保持体と、前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記静電潜像保持体上の前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着する前述の本実施形態に係る画像定着装置と、を備える。
上記本実施形態に係る画像形成装置によれば、樹脂材料の重合に用いられるアクリル樹脂における炭素数6以上の前記ヒドロキシル基を含む側鎖の割合が上記範囲から外れる場合に比べ、画質に優れた画像が形成される画像形成装置が提供される。
【0085】
本実施形態に係る別の態様の画像形成装置は、静電潜像保持体と、前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前述の本実施形態に係る画像形成装置用無端ベルト又は本実施形態に係る画像形成装置用ロールを備えた中間転写体と、前記静電潜像保持体上の前記トナー像を前記中間転写体に転写する一次転写装置と、前記中間転写体上の前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、を備える。
上記本実施形態に係る画像形成装置によれば、樹脂材料の重合に用いられるアクリル樹脂における炭素数6以上の前記ヒドロキシル基を含む側鎖の割合が上記範囲から外れる場合に比べ、画質に優れた画像が形成される画像形成装置が提供される。
【0086】
本実施形態に係る別の態様の画像形成装置は、静電潜像保持体と、前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前述の本実施形態に係る画像形成装置用無端ベルト又は本実施形態に係る画像形成装置用ロールを備え、記録媒体を搬送する記録媒体搬送体と、前記静電潜像保持体上の前記トナー像を、前記記録媒体搬送体上の前記記録媒体に転写する転写装置と、を備える。
上記本実施形態に係る画像形成装置によれば、樹脂材料の重合に用いられるアクリル樹脂における炭素数6以上の前記ヒドロキシル基を含む側鎖の割合が上記範囲から外れる場合に比べ、画質に優れた画像が形成される画像形成装置が提供される。
【0087】
<第1実施形態>
次に、本実施形態の無端ベルトおよび本実施形態のロールを用いた第1実施形態の画像形成装置について説明する。図3は、本実施形態に係る無端ベルトを定着装置の加圧ベルトとして備え、本実施形態に係る無端ベルトを中間転写ベルトとして備え、且つ本実施形態に係るロールを定着装置の定着ロールとして備えたタンデム式の、画像形成装置の要部を説明する模試図である。
【0088】
具体的には、画像形成装置101は、感光体79(静電潜像保持体)と、感光体79の表面を帯電する帯電ロール83と、感光体79の表面を露光し静電潜像を形成するレーザー発生装置78(静電潜像形成手段)と、感光体79表面に形成された潜像を、現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像器85(現像手段)と、現像器85により形成されたトナー像が感光体79から転写される中間転写ベルト86(中間転写体)と、トナー像を中間転写ベルト86に転写する1次転写ロール80(一次転写手段)と、感光体79に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体清掃部材84と、中間転写ベルト86上のトナー像を記録媒体に転写する2次転写ロール75(二次転写手段)と、記録媒体上のトナー像を定着する定着装置72(定着手段)と、を含んで構成されている。感光体79と1次転写ロール80は、図3に示すとおり感光体79直上に配置していてもよく、感光体79直上からずれた位置に配置していてもよい。
【0089】
さらに、図3に示す画像形成装置101の構成について詳細に説明する。
画像形成装置101においては、感光体79の周囲に、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された1次転写ロール80、感光体清掃部材84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体79に対して、帯電ロール83の(感光体79の回転方向)下流側であって現像器85の上流側の感光体79表面に画像情報に応じたレーザー光を照射するレーザー発生装置78が設けられている。
【0090】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置101内において水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体79と1次転写ロール80との転写領域を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内面側に以下の順序で反時計回りに設けられた、支持ロール73、支持ロール74、および駆動ロール81により支持され、ベルト支持装置90を形成している。なお、4つの1次転写ロールは支持ロール73の(中間転写ベルト86の回転方向)下流側であって支持ロール74の上流側に位置する。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面を清掃する転写清掃部材82が駆動ロール81に対して接触するように設けられている。
【0091】
また、中間転写ベルト86を介して支持ロール73の反対側には用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール75が、支持ロール73に対して接触するように設けられている。
【0092】
また、画像形成装置101の底部には記録媒体を収容する用紙供給部77が設けられ、用紙供給部77から用紙経路76を経由して2次転写部を構成する支持ロール73と2次転写ロール75との接触部を通過するように、記録媒体が供給される。この接触部を通過した記録媒体は、更に定着装置72の接触部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送され、最終的に画像形成装置101の外へと排出される。
【0093】
次に、図3に示す画像形成装置101を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する感光体79表面を帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された感光体79表面に潜像(静電潜像)を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール80と感光体79との接触部に運ばれたトナー像を矢印C方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体清掃部材84により清掃され、次のトナー像の形成に備える。
【0094】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写ベルト86の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写部に運ばれ2次転写ロール75により、用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着装置72の接触部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
【0095】
―定着装置(画像定着装置)―
図4は、本実施形態に係る画像形成装置101内に設けられた定着装置72の概略構成図である。図4に示す定着装置72は、回転駆動する回転体としての定着ロール610と、無端ベルト620(加圧ベルト)と、無端ベルト620を介して定着ロール610を加圧する圧力部材である圧力パッド640とを備えて構成されている。なお、圧力パッド640は、無端ベルト620と定着ロール610とが相対的に加圧されていればよい。従って、無端ベルト620側が定着ロール610に加圧されても良く、定着ロール610側が無端ベルト620に加圧されても良い。
【0096】
定着ロール610の内部には、挟込領域において未定着トナー像を加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンランプ660が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0097】
一方、定着ロール610の表面には感温素子690が接触して配置されている。この感温素子690による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ660の点灯が制御され、定着ロール610の表面温度が設定温度(例えば、150℃)に維持される。
【0098】
無端ベルト620は、内部に配置された圧力パッド640とベルト走行ガイド630と、図示しないエッジガイドによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域Nにおいて定着ロール610に対して加圧された状態で接触して配置されている。
【0099】
圧力パッド640は、無端ベルト620の内側において、無端ベルト620を介して定着ロール610に加圧される状態で配置され、定着ロール610との間で挟込領域Nを形成している。圧力パッド640は、幅の広い挟込領域Nを確保するためのプレ挟込部材641を挟込領域Nの入口側に配置し、定着ロール610に歪みを与えるための剥離挟込部材642を挟込領域Nの出口側に配置している。
【0100】
さらに、無端ベルト620の内周面と圧力パッド640との摺動抵抗を小さくするために、プレ挟込部材641および剥離挟込部材642の無端ベルト620と接する面に低摩擦シート680が設けられている。そして、圧力パッド640と低摩擦シート680とは、金属製のホルダ650に保持されている。
【0101】
さらに、ホルダ650にはベルト走行ガイド630が取り付けられ、無端ベルト620がスムーズに回転するように構成されている。すなわち、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620内周面と摺擦するため、静止摩擦係数の小さな材質で形成されている。また、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620から熱を奪い難いように熱伝導率の低い材質で形成されている。
【0102】
そして定着ロール610は、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転に従動して無端ベルト620は、定着ロール610の回転方向と反対の方向へ回転する。すなわち、定着ロール610が図4における時計方向へ回転するのに対して、無端ベルト620は反時計方向へ回転する。
【0103】
未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイド560によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上のトナー像は挟込領域Nに作用する圧力と、定着ロール610から供給される熱とによって定着される。
【0104】
上記定着装置72では、定着ロール610の外周面に倣う凹形状のプレ挟込部材641により挟込領域Nが確保される。
【0105】
また、本実施形態に係る定着装置72では、定着ロール610の外周面に対し突出させて剥離挟込部材642を配置することにより、挟込領域Nの出口領域において定着ロール610の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。この構成により、定着後の用紙Kが定着ロール610から剥離する。
【0106】
また、剥離の補助手段として、定着ロール610の挟込領域Nの下流側に、剥離部材700が配設されている。剥離部材700は、剥離バッフル710が定着ロール610の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール610と近接する状態でホルダ720によって保持されている。
【0107】
以下、本実施形態に係る定着装置72に使用される無端ベルト620および定着ロール610以外の部材について詳細に説明する。
【0108】
無端ベルト620の内部に配置された圧力パッド640は、上述したように、プレ挟込部材641と剥離挟込部材642とで構成され、バネや弾性体によって定着ロール610を、例えば32kgfの荷重で押圧するようにホルダ650に支持されている。定着ロール610側の面は、定着ロール610の外周面に倣う凹状曲面で形成されている。また、それぞれの材質は耐熱性を具備するもので構成することが好ましい。
【0109】
なお、無端ベルト620の内部に配置された圧力パッド640は、無端ベルト620を介して定着ロール610を加圧し、無端ベルト620と定着ロール610との間に、未定着トナー像を保持する用紙Kが通過する挟込領域Nが形成する機能を有していれば形状や材質に特に制限はなく、さらには圧力パッド640に加え、定着ロール610に対して加圧しつつ回転する加圧ローラなどを並設してもよい。
【0110】
プレ挟込部材641には、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーや板バネ等の弾性体が用いられ、これらの材質の中でも、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。硬度の点からJIS−A硬度10から40°のシリコーンゴムが好適に用いられる。弾性体の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて選択される。本実施形態の定着装置72では、幅10mm、厚さ5mm、長さ320mmのシリコーンゴムを用いている。
【0111】
剥離挟込部材642は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離挟込部材の形状としては、挟込領域Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸状曲面に形成されている。そして、本実施の形態の定着装置72では、無端ベルト620は、圧力パッドにより定着ロール610に40°の巻き付き角度でラップされ、8mm幅の挟込領域Nを形成している。
【0112】
低摩擦シート680は、無端ベルト620内周面と圧力パッド640との摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減するために設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性・耐熱性に優れた材質が適している。
【0113】
この低摩擦シート680の材質としては、金属、セラミックス、樹脂等各種材料が採用されるが、具体的には、耐熱性樹脂であるフッ素樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の他、6−ナイロンあるいは6,6−ナイロンのナチュラル材や、これらにカーボンやガラス繊維等を添加した材料が用いられる。
【0114】
この中でも無端ベルト620との接触面側が、無端ベルト620内面との摺動抵抗が小さくかつ潤滑剤が保持される表面に微細な凹凸形状を有するフッ素樹脂シートが好ましい。
【0115】
具体的には、シンタード成型したPTFE樹脂シート、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート、またガラス繊維にフッ素樹脂からなるスカイブフィルムシートを加熱融着サンドした積層シートやあるいはフッ素樹脂シートに筋状の凹凸を設けたもの等が用いられる。
【0116】
なお、低摩擦シート680は、プレ挟込部材641や剥離挟込部材642と別体に構成しても、プレ挟込部材641や剥離挟込部材642と一体的に構成しても、いずれでもよい。
【0117】
さらに、ホルダ650には、定着装置72の長手方向に亘って潤滑剤塗布部材670が配設されている。潤滑剤塗布部材670は、無端ベルト620内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤を適量供給する。これにより、無端ベルト620と低摩擦シート680との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート680を介した無端ベルト620と圧力パッドとの摺動抵抗をさらに低減して、無端ベルト620の円滑な回転を図っている。また、無端ベルト620の内周面や低摩擦シート680表面の摩耗を抑制する効果も有している。
【0118】
潤滑剤としてはシリコーンオイルが好ましく、シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩およびヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等が用いられるが、濡れ性に優るアミノ変性シリコーンオイルがより好ましい。
なお、本実施形態の画像定着装置72では、潤滑剤塗布部材670により無端ベルト620内周面に潤滑剤を供給しているが、潤滑剤塗布部材および潤滑剤を用いない形態としてもよい。
【0119】
また、メチルフェニルシリコーンオイルあるいはフッ素オイル(パーフルオロポリエーテルオイル、変性パーフルオロポリエーテルオイル)などを使用することも好適である。なお、シリコーンオイル中に酸化防止剤を添加してもよい。その他固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース、例えばシリコーングリス、フッ素グリス等、さらにはこれらを組み合わせたものも用いられる。本実施形態の定着装置72では、粘度300csのアミノ変性シリコーンオイル(KF96:信越化学(株)製)を用いている。
【0120】
また、ベルト走行ガイド630は、上述したように、無端ベルト620の内周面と摺擦するため、摩擦係数が低く、かつ、無端ベルト620から熱を奪い難いように熱伝導率が低い材質が適しており、PFAやPPS等の耐熱性樹脂が用いられる。
【0121】
なお、本実施形態の画像形成装置101では、定着装置72の無端ベルト620として上記実施形態の無端ベルトを用いているが、中間転写ベルト86として上記実施形態の無端ベルトが用いられてもよい。
【0122】
<第2実施形態>
第2実施形態の画像形成装置は、上記第1実施形態の画像形成装置101内に備えられた定着装置72の代わりに、加熱源を備えた定着ベルト(本実施形態の無端ベルト)と加圧ロール(本実施形態のロール)と備えた定着装置を用いた形態である。なお、定着装置が異なること以外の事項については、上記と同様であるため説明を省略する。
【0123】
―定着装置(画像定着装置)―
図5は、本実施形態の定着装置の概略構成図である。具体的には、図5は、本実施形態に係る無端ベルトを定着ベルトとして備え、且つ本実施形態に係るロールを加圧ロールとして備えた定着装置である。なお、第1実施形態に係る定着装置と同様な構成については、同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0124】
図5に示すように、第2実施形態に係る定着装置900は、無端ベルトとしての定着ベルト920と、回転駆動する回転体の一例としての加圧ロール910とを備えて構成されている。定着ベルト920は、上述した無端ベルト620と同様に構成されている。
【0125】
そして、定着ベルト920が用紙Kのトナー像保持面側に配置されるとともに、定着ベルト920の内側には、加熱手段の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ820が配設され、セラミックヒータ820から挟込領域Nに熱を供給するように構成している。
【0126】
セラミックヒータ820は、加圧ロール910側の面がフラットに形成されている。そして、定着ベルト920を介して加圧ロール910に加圧される状態で配置され、挟込領域Nを形成している。したがって、セラミックヒータ820は圧力部材としても機能している。挟込領域Nを通過した用紙Kは、挟込領域Nの出口領域(剥離挟込部)において定着ベルト920の曲率の変化によって定着ベルト920から剥離される。
【0127】
さらに、定着ベルト920内周面とセラミックヒータ820との間には、定着ベルト920の内周面とセラミックヒータ820との摺動抵抗を小さくするため、低摩擦シート680が配設されている。この低摩擦シート680は、セラミックヒータ820と別体に構成しても、セラミックヒータ820と一体的に構成してもよい。
【0128】
一方、加圧ロール910は定着ベルト920に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転に従動して定着ベルト920が回転するように構成されている。加圧ロール910は、コア(円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性層912と、さらに耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成され、必要に応じて各層はトナーのオフセット対策としてカーボンブラックなどの添加により半導電性化されている。
【0129】
また、剥離の補助手段として、定着ベルト920の挟込領域Nの下流側に、剥離部材700を配設してもよい。剥離部材700は、剥離バッフル710が定着ベルト920の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト920と近接する状態でホルダ720によって保持されている。
【0130】
未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイド560によって導かれて、定着装置900の挟込領域Nに搬送される。用紙Kが挟込領域Nを通過する際には、用紙K上のトナー像は、挟込領域Nに作用する圧力と、定着ベルト920側のセラミックヒータから供給される熱とによって定着される。
【0131】
ここで、本実施形態の定着装置900においては、加圧ロール910は、両端部の外径が中央部の外径よりも大きい逆クラウン形状(フレア形状)に形成されるとともに、定着ベルト920も、内面に凹凸形状を有し、この凹凸形状は挟込領域においては前記加圧ロール910の表面形状に沿った形状に広がり変形するように構成されている。このように構成することによって、用紙が挟込領域を通過するに際して、加圧ロール910による用紙への中央部から両端部に向かって幅方向に引張力が作用することによって用紙が伸びるのとともに定着ベルト920の表面幅方向の長さも伸びる。
【0132】
このため、本実施形態の定着装置900でも、中央部から両端部に亘る全領域において、定着ベルト920は用紙Kに対してスリップを抑制される。
【0133】
なお、加熱源としてはセラミックヒータ820以外に、定着ベルト920内部に設けたハロゲンランプであったり、あるいは定着ベルト920内部あるいは外部に設けた電磁誘導コイルによる電磁誘導発熱を利用したものであったりしてもかまわない。
【0134】
また、定着ベルト920内部にフラットな圧力部材に加え加圧ロール910に対して加圧しつつ回転する加圧ローラなどを並設してもよい。
【0135】
<第3実施形態>
次に、本実施形態の無端ベルトを、用紙搬送ベルトとして用いた第3実施形態の画像形成装置について説明する。
図6は、第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。図6に示す画像形成装置において、ユニットY、M、C、BKは、矢印の時計方向に回転するように、それぞれ感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKが備えられる。感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの周囲には、帯電器202Y、202M、202C、202BKと、露光器203Y、203M、203C、203BKと、各色現像装置(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204BK)と、感光体ドラム清掃部材205Y、205M、205C、205BKとがそれぞれ配置されている。
【0136】
ユニットY、M、C、BKは、用紙搬送ベルト206に対して4つ並列に、ユニットBK、C、M、Yの順に配置されているが、ユニットBK、Y、C、Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序が設定される。
【0137】
用紙搬送ベルト206は、ベルト支持ロール210、211、212、213によって内面側から支持され、画像形成装置用のベルト支持装置220を形成している。該用紙搬送ベルト206は、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと同じ周速度をもって回転するようになっており、ベルト支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとそれぞれ接するように配置されている。用紙搬送ベルト206は、ベルト用清掃部材214が備えられている。
【0138】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、用紙搬送ベルト206の内側であって、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと、用紙搬送ベルト206を介してトナー画像を用紙(被転写体)216に転写する転写領域を形成している。転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、図6に示すとおり、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの直下に配置していても、直下からずれた位置に配置してもよい。
【0139】
定着装置209は、用紙搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送されるように配置されている。
【0140】
用紙搬送ロール208により、用紙216は用紙搬送ベルト206に搬送される。
【0141】
図6に示す第3の実施形態に係る画像形成装置において、ユニットBKにおいては、感光体ドラム201BKを回転駆動させる。これと連動して帯電器202BKが駆動し、感光体ドラム201BKの表面を目的の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体ドラム201BKは、次に、露光器203BKによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0142】
続いて該静電潜像は、ブラック現像装置204BKによって現像される。すると、感光体ドラム201BKの表面にトナー画像が形成される。なお、このときの現像剤は一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0143】
このトナー画像は、感光体ドラム201BKと用紙搬送ベルト206との転写領域を通過し、用紙216が静電的に用紙搬送ベルト206に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207BKから印加される転写バイアスによって形成される電界により、用紙216の表面に順次転写される。
【0144】
この後、感光体ドラム201BK上に残存するトナーは、感光体ドラム清掃部材205BKによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201BKは、次の画像転写に供される。
【0145】
以上の画像転写は、ユニットC、MおよびYでも上記の方法によって行われる。
【0146】
転写ロール207BK、207C、207Mおよび207Yによってトナー画像を転写された用紙216は、さらに定着装置209に搬送され、定着が行われる。
以上により用紙上に所望の画像が形成される。
【0147】
次いで、その他の用途について説明する。
【0148】
<ポータブル機器>
本実施形態に係る樹脂材料は、少なくとも画像を表示する画面を有するポータブル機器において、該画面の保護膜として用い得る。
携帯電話やポータブルゲーム機等のポータブル機器における画面(例えば液晶画面)には、操作の際に指の先(爪)が接触したり、更に操作用のスティックがある場合には該スティックの先端が接触して擦れることにより擦り傷がつくことがあった。これに対し、本実施形態に係る樹脂材料を保護膜として有することで、たとえ擦り傷が発生した場合であっても該擦り傷が修復されるため、表面に永久に残る擦り傷(永久傷)の発生が効率的に抑制される。
【0149】
<窓ガラス、車のボディ>
本実施形態に係る樹脂材料は、建物や車等における窓ガラスの保護膜として用い得る。また、本実施形態に係る樹脂材料は、車のボディの保護膜として用い得る。
建物の窓ガラス、車の窓ガラスやボディ等は、野外環境に曝されるため風によって運ばれる砂、葉、木の枝等との接触や、虫等との接触など、様々な要因により擦り傷がつくことがあった。これに対し、本実施形態に係る樹脂材料を保護膜として有することで、たとえ擦り傷が発生した場合であっても該擦り傷が修復されるため、表面に永久に残る擦り傷(永久傷)の発生が効率的に抑制される。
【0150】
<眼鏡のレンズ>
本実施形態に係る樹脂材料は、眼鏡のレンズの保護膜として用い得る。
眼鏡のレンズには、表面に細かい粒子(汚れ)が付着していることがあり、その上から乾拭きを行うことで擦り傷がつくことがあった。これに対し、本実施形態に係る樹脂材料を有することで、たとえ擦り傷が発生した場合であっても該擦り傷が修復されるため、表面に永久に残る擦り傷(永久傷)の発生が効率的に抑制される。
【0151】
<光ディスク>
本実施形態に係る樹脂材料は、光ディスクの記録面の保護膜として用い得る。
CD,DVD,BD等の光ディスクの記録面等には、ケースからの出し入れの際に該ケースの角に接触したり、再生装置,記録装置等からの出し入れの際に該装置の角に接触したり、また指の先(爪)が接触することがあり、これらとの擦れにより擦り傷がつくことがあった。その結果、記録面についた傷に起因して、読み取りエラーが生じることがあった。これに対し、本実施形態に係る樹脂材料を保護膜として有することで、たとえ擦り傷が発生した場合であっても該擦り傷が修復されるため、表面に永久に残る擦り傷(永久傷)の発生が効率的に抑制される。その結果、読み取りエラーの発生も効率的に抑制される。
【0152】
<太陽光パネル>
本実施形態に係る樹脂材料は、太陽光パネルの反射面の保護膜として用い得る。
太陽光電池パネルや太陽光を反射させるパネルは、野外環境に曝されるため風によって運ばれる砂、葉、木の枝等との接触や、虫等との接触など、様々な要因により擦り傷がつくことがあった。これに対し、本実施形態に係る樹脂材料を保護膜として有することで、たとえ擦り傷が発生した場合であっても該擦り傷が修復されるため、表面に永久に残る擦り傷(永久傷)の発生が効率的に抑制される。
【実施例】
【0153】
以下、実施例を交えて本発明を詳細に説明するが、以下に示す実施例のみに本発明は限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0154】
[サンプル樹脂層の調製]
・実施例1
<アクリル樹脂プレポリマーA1の合成>
炭素数2の側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)9部と、炭素数14の長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM2(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、)81部と、ヒドロキシル基を有さないモノマーであるブチルメタクリレート(BMA)10部と、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))6部と、メチルエチルケトン100部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマー溶液A1を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA1中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合を表1に示す。
【0155】
<組成物A1の調整>
下記A1液に下記C1液を加え、組成物A1を得た。
・A1液(上記アクリル樹脂プレポリマーA1のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA1の濃度:40質量%、水酸基価:163) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :22部
【0156】
<樹脂層サンプルA1の形成>
上記組成物A1を減圧下で10分間脱泡した後、それを90μm厚のポリイミドフィルムに塗布(キャスト)して、85℃で1時間、さらに160℃で60分硬化して40μmの膜厚の樹脂層サンプルA1を得た。
【0157】
・実施例2
<アクリル樹脂プレポリマーA2の合成>
ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を4部とし、プラクセルFM2の添加量を87部とした以外は、アクリル樹脂プレポリマーA1の合成と同様にして、アクリル樹脂プレポリマーA2を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA2中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合を表1に示す。
【0158】
<組成物A2の調整>
上記A1液の代わりに下記A2液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A2を得た。
・A2液(上記アクリル樹脂プレポリマーA2のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA2の濃度:40質量%、水酸基価:151) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :20部
【0159】
<樹脂層サンプルA2の形成>
組成物A1の代わりに組成物A2を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA2を得た。
【0160】
・実施例3
<アクリル樹脂プレポリマーA3の合成>
ヒドロキシエチルメタクリレートを用いず、プラクセルFM2の添加量を91部とした以外は、アクリル樹脂プレポリマーA1の合成と同様にして、アクリル樹脂プレポリマーA3を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA3中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合を表1に示す。
【0161】
<組成物A3の調整>
上記A1液の代わりに下記A3液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A3を得た。
・A3液(上記アクリル樹脂プレポリマーA3のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA3の濃度:40質量%、水酸基価:142) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :20部
【0162】
<樹脂層サンプルA3の形成>
組成物A1の代わりに組成物A3を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA3を得た。
【0163】
・実施例4
<アクリル樹脂プレポリマーA4の合成>
炭素数14の長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM2(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、)80部と、ヒドロキシル基を有さずフッ素原子を含むモノマーであるCHEMINOX FAMAC6(ユニマテック株式会社製、化合物名:2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)20部と、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))6部と、メチルエチルケトン100部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマーA4を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA4中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、及びアクリル樹脂における側鎖全体に対するフッ素原子を含む側鎖の割合を表1に示す。
【0164】
<組成物A4の調整>
上記A1液の代わりに下記A4液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A4を得た。
・A4液(上記アクリル樹脂プレポリマーA4のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA4の濃度:40質量%、水酸基価:125) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :16部
【0165】
<樹脂層サンプルA4の形成>
組成物A1の代わりに組成物A4を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA4を得た。
【0166】
・実施例5
<アクリル樹脂プレポリマーA5の合成>
炭素数14の長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM2(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、)80部と、ヒドロキシル基を有さないモノマーであるブチルメタクリレート(BMA)4部と、ヒドロキシル基を有さずシロキサン結合を含むモノマーであるサイラプレーンFM0711(チッソ株式会社製)16部と、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))6部と、メチルエチルケトン100部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマーA5を合成した。
なお、上記シロキサン結合を含むモノマーは、前記一般式(A)におけるRがブチル基であり、Rがブチル基であり、Rがメタクリル酸プロピル基であり、数平均分子量が1000である。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA5中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、及びアクリル樹脂の合成に用いるモノマー全体に対するシロキサン結合を含むモノマーの割合を表1に示す。
【0167】
<組成物A5の調整>
上記A1液の代わりに下記A5液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A5を得た。
・A5液(上記アクリル樹脂プレポリマーA5のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA5の濃度:40質量%、水酸基価:125) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :16部
【0168】
<樹脂層サンプルA5の形成>
組成物A1の代わりに組成物A5を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA5を得た。
【0169】
・実施例6
<アクリル樹脂プレポリマーA6の合成>
炭素数14の長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM2(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、)67部と、CHEMINOX FAMAC6(ユニマテック株式会社製、化合物名:2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)17部と、ヒドロキシル基を有さずシロキサン結合を含むモノマーであるサイラプレーンFM0711(チッソ株式会社製)16部と、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))6部と、メチルエチルケトン100部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマーA6を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA6中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、アクリル樹脂における側鎖全体に対するフッ素原子を含む側鎖の割合、及びアクリル樹脂の合成に用いるモノマー全体に対するシロキサン結合を含むモノマーの割合を表1に示す。
【0170】
<組成物A6の調整>
上記A1液の代わりに下記A6液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A6を得た。
・A6液(上記アクリル樹脂プレポリマーA6のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA6の濃度:40質量%、水酸基価:104) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :14部
【0171】
<樹脂層サンプルA6の形成>
組成物A1の代わりに組成物A6を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA6を得た。
【0172】
・実施例7
<アクリル樹脂プレポリマーA7の合成>
ヒドロキシエチルメタクリレート、プラクセルFM2、及びブチルメタクリレートに代えて、炭素数21の長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM3(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、)100部を用いた以外は、アクリル樹脂プレポリマーA1の合成と同様にして、アクリル樹脂プレポリマーA7を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA7中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合を表1に示す。
【0173】
<組成物A7の調整>
上記A1液の代わりに下記A7液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A7を得た。
・A7液(上記アクリル樹脂プレポリマーA7のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA7の濃度:40質量%、水酸基価:119) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :16部
【0174】
<樹脂層サンプルA7の形成>
組成物A1の代わりに組成物A7を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA7を得た。
【0175】
・実施例8
<アクリル樹脂プレポリマーA8の合成>
炭素数2の側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)3部と、炭素数14の長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM2(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、)73部と、ヒドロキシル基を有さずフッ素原子を含むモノマーであるCHEMINOX FAMAC6(ユニマテック株式会社製、化合物名:2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)24部と、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))6部と、メチルエチルケトン100部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマー溶液A8を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA8中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、及びアクリル樹脂における側鎖全体に対するフッ素原子を含む側鎖の割合を表1に示す。
【0176】
<組成物A8の調整>
上記A1液の代わりに下記A8液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A8を得た。
・A8液(上記アクリル樹脂プレポリマーA8のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA8の濃度:40質量%、水酸基価:126) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体):16部
【0177】
<樹脂層サンプルA8の形成>
組成物A1の代わりに組成物A8を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA8を得た。
【0178】
・実施例9
<アクリル樹脂プレポリマーA9の合成>
炭素数2の側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2部と、炭素数14の長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM2(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、)61部と、ヒドロキシル基を有さずフッ素原子を含むモノマーであるCHEMINOX FAMAC6(ユニマテック株式会社製、化合物名:2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)20部と、ヒドロキシル基を有さずシロキサン結合を含むモノマーであるサイラプレーンFM0711(チッソ株式会社製)16部と、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))6部と、メチルエチルケトン100部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマー溶液A9を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA9中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、アクリル樹脂における側鎖全体に対するフッ素原子を含む側鎖の割合、及びアクリル樹脂の合成に用いるモノマー全体に対するシロキサン結合を含むモノマーの割合を表1に示す。
【0179】
<組成物A9の調整>
上記A1液の代わりに下記A9液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A9を得た。
・A9液(上記アクリル樹脂プレポリマーA9のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA9の濃度:40質量%、水酸基価:105) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体):14部
【0180】
<樹脂層サンプルA9の形成>
組成物A1の代わりに組成物A9を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA9を得た。
【0181】
・実施例10
<アクリル樹脂プレポリマーA10の合成>
炭素数2の側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)3部と、炭素数14の長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM2(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、)66部と、ヒドロキシル基を有さずフッ素原子を含むモノマーであるCHEMINOX FAMAC6(ユニマテック株式会社製、化合物名:2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)22部と、ヒドロキシル基を有さずシロキサン結合を含むモノマーであるサイラプレーンFM0711(チッソ株式会社製)8部と、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))6部と、メチルエチルケトン100部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマー溶液A10を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA10中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、アクリル樹脂における側鎖全体に対するフッ素原子を含む側鎖の割合、及びアクリル樹脂の合成に用いるモノマー全体に対するシロキサン結合を含むモノマーの割合を表1に示す。
【0182】
<組成物A10の調整>
上記A1液の代わりに下記A10液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A10を得た。
・A10液(上記アクリル樹脂プレポリマーA10のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA10の濃度:40質量%、水酸基価:115) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体):15部
【0183】
<樹脂層サンプルA10の形成>
組成物A1の代わりに組成物A10を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA10を得た。
【0184】
・実施例11
<アクリル樹脂プレポリマーA11の合成>
炭素数2の側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)3部と、炭素数14の長側鎖ヒドロキシル基となるモノマーであるプラクセルFM2(ダイセル化学社製、化合物名:ラクトン変性メタアクリレート、)69部と、ヒドロキシル基を有さずフッ素原子を含むモノマーであるCHEMINOX FAMAC6(ユニマテック株式会社製、化合物名:2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)12部と、ヒドロキシル基を有さずシロキサン結合を含むモノマーであるサイラプレーンFM0711(チッソ株式会社製)16部と、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))6部と、メチルエチルケトン100部と、からなるモノマー溶液を滴下ロートに入れ、窒素還流下で80℃に昇温したメチルエチルケトン100部中に、攪拌下3時間かけて滴下し重合した。さらにメチルエチルケトン50部とAIBN2部とからなる液を1時間かけて滴下、更に1時間攪拌して反応を完結させた。尚、反応中は80℃に保持して攪拌し続けた。反応液を濃縮して濃度を40%に調整してアクリル樹脂プレポリマーが溶媒に溶解したアクリル樹脂プレポリマー溶液A11を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーA11中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、アクリル樹脂における側鎖全体に対するフッ素原子を含む側鎖の割合、及びアクリル樹脂の合成に用いるモノマー全体に対するシロキサン結合を含むモノマーの割合を表1に示す。
【0185】
<組成物A11の調整>
上記A1液の代わりに下記A11液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物A11を得た。
・A11液(上記アクリル樹脂プレポリマーA11のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーA11の濃度:40質量%、水酸基価:120) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体):16部
【0186】
<樹脂層サンプルA11の形成>
組成物A1の代わりに組成物A11を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルA11を得た。
【0187】
・比較例1
<アクリル樹脂プレポリマーB1の合成>
ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を10部とし、プラクセルFM2の添加量を81部とした以外は、アクリル樹脂プレポリマーA1の合成と同様にして、アクリル樹脂プレポリマーB1を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーB1中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合を表1に示す。
【0188】
<組成物B1の調整>
上記A1液の代わりに下記B1液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物B1を得た。
・B1液(上記アクリル樹脂プレポリマーB1のメチルエチエルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーB1の濃度:40質量%、水酸基価:170) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :23部
【0189】
<樹脂層サンプルB1の形成>
組成物A1の代わりに組成物B1を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルB1を得た。
【0190】
・比較例2
<アクリル樹脂プレポリマーB2の合成>
ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を10部とし、プラクセルFM2の添加量を67部とした以外は、アクリル樹脂プレポリマーA4の合成と同様にして、アクリル樹脂プレポリマーB2を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーB2中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、及びアクリル樹脂における側鎖全体に対するフッ素原子を含む側鎖の割合を表1に示す。
【0191】
<組成物B2の調整>
上記A1液の代わりに下記B2液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物B2を得た。
・B2液(上記アクリル樹脂プレポリマーB2のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーB2の濃度:40質量%、水酸基価:144) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :20部
【0192】
<樹脂層サンプルB2の形成>
組成物A1の代わりに組成物B2を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルB2を得た。
【0193】
・比較例3
<アクリル樹脂プレポリマーB3の合成>
ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を11部とし、プラクセルFM2の添加量を84部とした以外は、アクリル樹脂プレポリマーA5の合成と同様にして、アクリル樹脂プレポリマーB3を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーB3中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、及びアクリル樹脂の合成に用いるモノマー全体に対するシロキサン結合を含むモノマーの割合を表1に示す。
【0194】
<組成物B3の調整>
上記A1液の代わりに下記B3液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A1と同様にして組成物B3を得た。
・B3液(上記アクリル樹脂プレポリマーB3のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーB3の濃度:40質量%、水酸基価:148) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :21部
【0195】
<樹脂層サンプルB3の形成>
組成物A1の代わりに組成物B3を用いた以外は、樹脂層サンプルA1と同様にして、40μmの膜厚の樹脂層サンプルB3を得た。
【0196】
・比較例4
<アクリル樹脂プレポリマーB4の合成>
ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を8部とし、プラクセルFM2の添加量を70部とした以外は、アクリル樹脂プレポリマーA6の合成と同様にして、アクリル樹脂プレポリマーB4を合成した。
得られたアクリル樹脂プレポリマーB4中における側鎖ヒドロキシル基全体に対する長側鎖ヒドロキシル基の割合、アクリル樹脂における側鎖全体に対するフッ素原子を含む側鎖の割合、及びアクリル樹脂の合成に用いるモノマー全体に対するシロキサン結合を含むモノマーの割合を表1に示す。
【0197】
<組成物B4の調整>
上記A6液の代わりに下記B4液を用い、C1液の添加量を下記の通りにした以外は、組成物A6と同様にして組成物B4を得た。
・B4液(上記アクリル樹脂プレポリマーB4のメチルエチルケトン溶液、アクリル樹脂プレポリマーB4の濃度:40質量%、水酸基価:120) :100部
・C1液(イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製、品番:デュラネートTPA100、化合物名:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体) :16部
【0198】
[樹脂層サンプルの評価]
−戻り率−
上記実施例及び比較例で得られた樹脂層サンプルについて、下記の方法により戻り率を測定した。結果を表1に示す。
測定装置としてフィッシャースコープHM2000(フィッシャー社製)を用い、得られたサンプル樹脂層をスライドガラスに接着剤で固定して上記測定装置にセットした。サンプル樹脂層に室温(23℃)で0.5mNまで15秒間かけて荷重をかけていき0.5mNで5秒間保持した。その際の最大変位を(h1)とした。その後、15秒かけて0.005mNまで除荷していき、0.005mNで1分間保持したときの変位を(h2)として、戻り率(%)「〔(h1−h2)/h1〕×100(%)」を計算した。
【0199】
−透明性の評価−
上記実施例及び比較例で得られた樹脂層サンプルについて、目視により樹脂層の透明性を評価した。評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
○:透明
△:濁っているが透過性あり
×:白濁して透過性なし
【0200】
−表面荒れの評価−
上記実施例及び比較例で得られた樹脂層サンプルについて、目視により樹脂層の表面荒れを評価した。評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
○:表面荒れなし
△:部分的に表面荒れ
×:全体に表面荒れ
【0201】
−砂による傷の評価−
上記実施例及び比較例で得られた樹脂層サンプルについて、樹脂層サンプル上に砂1gを置き、この砂の上に100gのおもりをのせて5往復擦り樹脂層サンプル上に傷を付け、傷の存在を目視により確認した。その後、23℃の環境に放置し、10秒以内でついた傷が消えるか否かを目視により確認した。
○:傷なし
△:部分的に傷あり
×:全体に傷あり
【0202】
−スチールウールによる傷の評価−
上記実施例及び比較例で得られた樹脂層サンプルについて、スチールウール(♯0000)を用い100gfで樹脂層サンプル表面を20往復擦った。この擦り試験直後に測定したヘイズ値をHa、擦り試験前に測定したヘイズ値をHbとし、ヘイズ値の差ΔH(ΔH=Ha−Hb)が、0未満である場合は自己修復あり(○)、0以上の場合は自己修復なし(×)とした。
尚、ヘイズ値は、ヘイズメータ(NDH2000型、日本電色工業社製、D65光源)により測定した。
【0203】
−耐汚れ性の評価−
・接触角
上記実施例及び比較例で得られた樹脂層サンプルを、水またはヘキサデカンを用いて、接触角を測定した。なお、上記接触角の測定は、接触角計(協和界面科学社製、型番:CA−S−ルガタ)を用いて、20℃においてθ/2法で行った。
【0204】
・油性インク付着性評価
上記実施例及び比較例で得られた樹脂層サンプル上に、黒の油性ペンでマークした後ベンコットでふき取り、残ったインクを目視により評価した。
○:インク完全に拭きとれ、残存なし
△:インク拭きとれたが、一部残存
×:インク拭きとれず
【0205】
・大気中での汚れ性の評価
上記実施例及び比較例で得られた樹脂層サンプルを屋外に10日間放置し、砂、埃等の大気中の汚れが付着したサンプルに水をかけ、残存した汚れを目視により評価した。
◎:汚れ付着なし
○:汚れ一部付着
×:汚れ付着
【0206】
【表1】

【0207】
上記表1の結果より、実施例では、比較例に比べて戻り率が高く、透明性及び表面荒れの評価も高いことがわかった。また、フッ素原子を含む側鎖を有する実施例4は比較例2に比べて戻り率が高く、シロキサン結合を含む側鎖を有する実施例5は比較例3に比べて戻り率が高く、フッ素原子を含む側鎖及びシロキサン結合を含む側鎖を有する実施例6は比較例4に比べて戻り率が高いことがわかった。
【0208】
【表2】

【0209】
[携帯電話の実施例]
・実施例
A9液にC1液を加えて調製した組成物を、接着層を有する厚さ50μmのPETフィルム(ニッパ株式会社製CPF50−SA)上に塗布(キャスト)して、85℃で30分間、および室温(23℃)で24時間硬化して100μmの膜厚の透明保護フィルムを得た。これを携帯電話(アップル社製iPhone4S)の液晶面、および筺体部に貼った。液晶面、筺体部に爪で引っ掻き傷を付けたが、10秒以内で傷は修復した。
【0210】
・比較例
組成物を塗布しないPETフィルム(ニッパ株式会社製CPF50−SA)を携帯電話(アップル社製iPhone4S)の液晶面、および筺体部に貼った。液晶面、筺体部に爪で引っ掻き傷を付けたが、傷は付いたままであった。
【0211】
[窓ガラスの実施例]
・実施例
A9液にC1液を加えて調製した組成物を、窓ガラス(旭ガラス社製、フロートガラス、厚さ3mm)に塗布し、85℃で30分間、および室温(23℃)で24時間硬化して40μmの膜厚の透明保護膜を形成した。透明保護膜を設けた窓ガラス上に紙やすり(#120、1cm×5cm)を置き、その端に300gの重りを乗せて1cm/secで引っ張った。目視で傷が発生したが、速やかに修復し、傷がない状態になった。
【0212】
・比較例
窓ガラス(旭ガラス社製、フロートガラス、厚さ3mm)の上に紙やすり(#120、1cm×5cm)を置き、その端に300gの重りを乗せて1cm/secで引っ張った。目視で傷が発生した。
【0213】
[光ディスクの実施例]
・実施例
A9液にC1液を加えて調製した組成物を、厚さ50μmのPETフィルム(ニッパ株式会社製CPF50−SA)上に塗布(キャスト)して、85℃で30分間、および室温(23℃)で24時間硬化して150μmの膜厚の透明保護膜を得た。この透明保護膜を直径120mmに切りだし、中央に15mmの穴を設けた。動画を録画したDVD−R(マクセル社製 DRD120CPWW)ディスクの記録面に上記透明保護膜を貼った。保護膜を設けたDVDの記録面を人の爪で600gの荷重をかけながら左右に数回引掻いて傷をつけた後、目視による傷の有無を確認し、DVDの動画を再生して評価を行った。傷は付いたが速やかに修復し、DVDは問題なく再生された。
【0214】
・比較例
組成物を塗布しないPETフィルム(ニッパ株式会社製CPF50−SA)を直径120mmに切りだし、中央に15mmの穴を設けた。動画を録画したDVD−R(マクセル社製 DRD120CPWW)ディスクの記録面に上記PETフィルムを貼った。保護膜を設けたDVDの記録面を人の爪で600gの荷重をかけながら左右に数回引掻いて傷をつけた後、目視により傷の発生を確認した。DVDの動画を再生したところ、画像の乱れが発生した。
【符号の説明】
【0215】
1 無端ベルト
2 基材
3 表面層
72 定着装置
75 2次転写ロール
78 レーザー発生装置
79 感光体
80 1次転写ロール
83 帯電ロール
85 現像器
86 中間転写ベルト
101 画像形成装置
201Y、201M、201C、201BK 感光体ドラム
202Y、202M、202C、202BK 帯電器
203Y、203M、203C、203BK 露光器
204Y イエロー現像装置
204M マゼンタ現像装置
204C シアン現像装置
204BK ブラック現像装置
206 用紙搬送ベルト
207Y、207M、207C、207BK 転写ロール
209 定着装置
216 用紙
610 定着ロール
620 無端ベルト
900 定着装置
910 加圧ロール
920 定着ベルト
K 用紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
OH基を含む側鎖を有し、前記OH基を含む側鎖全体に対して炭素数6以上の前記OH基を含む側鎖が75モル%より多いアクリル樹脂と、
イソシアネートと、
を含有する組成物の重合体を含む樹脂材料。
【請求項2】
前記重合体は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の樹脂材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−60586(P2013−60586A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181837(P2012−181837)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】